説明

小型無人飛行機の翼構造

【課題】手投げ発進等に好適で分解して個人携行が可能な小型軽量化を実現すると共に、不整地面への着陸時や機体の姿勢が崩れた際の接地時等に衝撃荷重を緩和させる小型無人飛行機の翼構造を提供することにある。
【解決手段】無尾翼型の空力面を有する全翼機型の主翼と、前記主翼の後縁部左右両側に配設された操舵翼と、少なくとも一の推進手段と、を具える小型無人飛行機において、前記主翼が、中央翼と、その中央翼の両端部にそれぞれ配置された二枚の外翼とを具え、前記外翼が前記中央翼に、位置決め部材と連結部材とにより分離可能に固定されており、前記位置決め部材が、所定以上の衝撃により破損する少なくとも一つの緩衝部材を含み、前記連結部材が、前記緩衝部材の破損により分離することを特徴とする、小型無人飛行機の翼構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携行型の小型無人飛行機に関するものであり、特には機体を分解して運搬し、飛行を行う現場にて組み立てて離着陸運用を行う組立式の小型無人飛行機の翼構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型の無人飛行機(UAV)は一般に、場所を選ばず離着陸できることを特徴としている。特に、携行型の小型無人飛行機においては、機体を分解して運搬し、現場で組み立てて発進をさせるという方法を採るのが通常である。
【0003】
ところで、小型無人飛行機の着陸の際には、滑走路のないエリアへの着陸が多いことから、パラシュートを用いたり、自動制御による胴体着陸を行ったりすることが多く、何れの場合も、着陸時の衝撃は大きく、また、石の多い地面や藪への胴体接触が頻繁に起こるため、機体が損傷する可能性が高い。
【0004】
特に主翼については、着陸衝撃が加わった際に、上下あるいは前後方向に加わる曲げモーメントが大きくなるため、翼根の構造強度の確保が必要となる。一方で、構造強度の増加のために許される重量増加は限られており、また、自重が増加すると衝撃荷重も増加するため、壊れないようにする構造設計は困難である。
【0005】
尾翼式小型無人機の従来の製品としては例えば「(製品名)レイブン」(Raven:AeroVironment社製)が知られている。この無人飛行機は、プロペラを持つ胴体、中央翼、左右外翼、垂直および水平尾翼並びにセンサ部の5つの部位から構成されており、使用時にこれらの部位を組み合わせることで機体を組み立てて飛行させる方式となっている(非特許文献1参照)。
【0006】
この無人機は、着陸の際に衝撃によって各部位間の結合が外れ、衝撃の荷重を内部に伝達しない方式となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】AeroVironment社ホームページ 2011年5月24日ダウンロード、レイブン紹介サイトhttp://www.avinc.com/uas/small_uas/raven/、http://www.avinc.com/downloads/Raven_Domestic_1210.pdf
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、飛行荷重や突風荷重に対しては接続を保証し、着陸衝撃に対しては分離させる接続方式は、機体サイズが大きくなる程接続の保証が困難であり、接続部分の重量増加を招いてしまうという問題がある。
【0009】
すなわち、不整地面への着陸時や機体の姿勢が崩れた際の接地時等に衝撃荷重を緩和させるためには、以下のような課題がある。
1)頑丈な構造とした場合には、構造重量の増加が問題となる。
2)荷重を受けた際に各部位が機構的に分離する方式では、分離機構の信頼性の確保および機構重量の増加が問題となる。
【0010】
それゆえこの発明は、手投げ発進等に好適で分解して個人携行が可能な小型軽量化を実現すると共に、不整地面への着陸時や機体の姿勢が崩れた際の接地時等に衝撃荷重を緩和させる小型無人飛行機の翼構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するこの発明の小型無人飛行機の翼構造は、無尾翼型の空力面を有する全翼機型の主翼と、前記主翼の後縁部左右両側に配設された操舵翼と、少なくとも一の推進手段と、を具える小型無人飛行機において、前記主翼が、中央翼と、その中央翼の両端部にそれぞれ配置された二枚の外翼とを具え、前記外翼が前記中央翼に、位置決め部材と連結部材とにより分離可能に固定されており、前記位置決め部材が、所定以上の衝撃により破損する少なくとも一つの緩衝部材を含み、前記連結部材が、前記緩衝部材の破損により分離することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
かかるこの発明の小型無人飛行機の翼構造を持つ小型無人飛行機にあっては、例えば手投げやランチャーでの発進等によって離陸し、少なくとも一の推進手段によって推力を得るとともに、主翼の後縁部左右両側に配設された操舵翼の作動や推進手段の推力の調節によって上昇、下降、旋回等を行い、胴体着陸などによって着陸あるいは着水する。
【0013】
従って、この発明の小型無人飛行機の翼構造を持つ小型無人飛行機によれば、自在な飛行が可能であり、しかも、全翼機型の主翼を持つことから、全長が短くなるとともに全幅も抑えられるので、手投げ発進等に好適で個人携行が可能な小型軽量化を実現することができる。
【0014】
さらに、この発明の小型無人飛行機の翼構造によれば、主翼が、中央翼と、その中央翼の両端部にそれぞれ着脱可能に固定された二枚の外翼とを具え、外翼が中央翼に、位置決め部材と連結部材とにより分離可能に固定されており、その位置決め部材が、所定以上の衝撃により破損する少なくとも一つの緩衝部材を含み、前記連結部材が、前記緩衝部材の破損により分離することから、重くて頑丈な接続部材や重くて複雑な分離機構を用いなくても、不整地面への着陸時や機体の姿勢が崩れた際の接地時等によって緩衝部材に通常の着陸時以上の衝撃が加わると緩衝部材が破損して連結部材が分離するため、衝撃荷重を緩和させて機体の再使用を容易にすることができるので、この点でも小型無人飛行機の手投げ発進等に好適で個人携行が可能な小型軽量化を実現することができる。
【0015】
なお、この発明の小型無人飛行機の翼構造においては、前記連結部材は、前記中央翼と前記外翼とにそれぞれ設けられた例えばネジ等の掛合部と、それらの掛合部に着脱可能に掛合する例えば輪ゴム等の掛合部材とを有していても良い。かかる小型無人飛行機の翼構造によれば、中央翼への外翼の分離可能な固定を、軽量かつ安価で容易に分離可能な構造で行うことができる。
【0016】
また、この発明の小型無人飛行機の翼構造においては、前記緩衝部材は、筒状をなしていてその内部に発光液または蛍光液を収容し、その緩衝部材が破損すると前記発光液または蛍光液の光を周囲に放散させるものでも良い。かかる小型無人飛行機の翼構造によれば、着陸の際に主翼の外翼等が衝撃荷重を受けて緩衝部材が破損すると、発光液または蛍光液の光が着陸地点の周囲に放散されるので、その発光液または蛍光液の光を目印とすることで、草原等に着陸した小型無人飛行機の発見および回収を速やかに行うことができる。
【0017】
さらに、この発明の小型無人飛行機の翼構造においては、前記小型無人飛行機は、標識信号発信機を搭載し、前記標識信号発信機は、前記緩衝部材の破損により通電されて標識信号を発信するものでも良い。かかる小型無人飛行機の翼構造によれば、着陸の際に主翼の外翼等が衝撃荷重を受けて緩衝部材が破損すると、当該小型無人飛行機に搭載された標識信号発信機が通電されて無線信号あるいは発光信号として標識信号を発信するので、その標識信号を探知することで、草原等に着陸した小型無人飛行機の発見および回収を速やかに行うことができる。
【0018】
さらに、この発明の小型無人飛行機の翼構造においては、前記操舵翼は、前記中央翼の後縁部の左右両端部のみに配設されていても良い。かかる小型無人飛行機の翼構造によれば、主翼が、中央翼と、その中央翼の両端部にそれぞれ着脱可能に固定された二枚の外翼とを具え、操舵翼が、その中央翼の後縁部の左右両端部のみに配設されているので、機体の組立時に操舵用サーボモータと操舵翼とを着脱可能に連結するための連結機構が不要になって、主翼を軽量化できるとともに、繰り返し運用での外翼の分解組立で操舵の再現性が低下することがなくなる。
【0019】
しかも、着地の際に外翼が地面と接触して緩衝部材が破損し、外翼が中央翼から外れても、操舵翼は中央翼に配設されているため操舵用サーボモータと操舵翼との連結部が変形して操舵の再現性が低下することがない。従って、その翼構造を持つ小型無人飛行機について、手投げ発進等に好適で分解して個人携行が可能な小型軽量化を実現することができると共に、十分な操舵再現性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a),(b),(c)は、この発明の小型無人飛行機の翼構造の一実施例を示す平面図、正面図および側面図である。
【図2】上記実施例の翼構造を持つ小型無人飛行機を斜め前方かつ上方から見た状態で示す斜視図である。
【図3】上記実施例の小型無人飛行機の翼構造を示す分解斜視図である。
【図4】上記実施例の翼構造を持つ小型無人飛行機の制御系を示す説明図である。
【図5】上記実施例の小型無人飛行機の翼構造の主要部を一部切り欠いて示す分解平面図である。
【図6】(a),(b),(c)は、上記実施例の小型無人飛行機の翼構造に用い得る各種接続パイプを例示する断面図である。
【図7】上記実施例の翼構造を持つ小型無人飛行機の着地の際の外翼の分離状態を示す正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1(a),(b),(c)は、この発明の小型無人飛行機の翼構造の一実施例を示す平面図、正面図および側面図、図2は、上記実施例の翼構造を持つ小型無人飛行機を斜め前方かつ上方から見た状態で示す斜視図、図3は、上記実施例の小型無人飛行機の翼構造を示す分解斜視図、図4は、上記実施例の翼構造を持つ小型無人飛行機の制御系を示す説明図である。
【0022】
この実施例の翼構造を持つ小型無人飛行機は、図1乃至図3に示すように、主翼1と、操舵翼としての左右二枚のエレボン2と、左右二枚の垂直安定板3と、胴体4と、センサ部5と、推進手段としての左右二つのプロペラ6とを具えるとともに、図4に示すように、左右二つの駆動用モータ7と、左右二つの操舵用サーボモータ8と、自動操縦用の中央処理ユニット(CPU)ボード9と、バッテリ10と、センサ11とを具えている。
【0023】
主翼1は、全翼機型のもので、下面がほぼ平らになるキャンバー翼型をなすとともに翼端に向けてテーパ状に細くなっていて、翼前縁が後退角を持つ、低縦横比で無尾翼型の空力面を有するもの(例えばNACA2408修正型のもの)であって、中央翼12と、その中央翼12の両端部にそれぞれ着脱可能に固定された二枚の外翼13とを具えており、この実施例の翼構造では、左右二枚のエレボン2は、その中央翼12の後縁部の左右両端部にそれぞれそのエレボン2の前端部を図示しないヒンジで支持されて上下方向へ揺動可能に配設され、左右二枚の垂直安定板3は、二枚の外翼13の翼端にそれぞれ立設固定されている。
【0024】
胴体4は、緩衝材としての発泡スチロールで全体を形成されるとともに、中央翼12の中央部下面に着脱可能に固定されており、胴体4の底部4aは、前部と後部とが上がって概略そり状に形成されている。センサ部5はその胴体4の前端に着脱可能に装着されており、センサ部5内には飛行目的に応じたセンサ11が搭載されている。
【0025】
左右二つのプロペラ6は、各々基部で弾性的に折り曲げ可能なフォールディングタイプとされ、中央翼12の前縁部の左右両端部にそれぞれ配置されて、中央翼12内に搭載された左右二つの駆動用モータ7により、例えば互いに逆方向に回転駆動される。中央翼12内には、左右二つの操舵用サーボモータ8も搭載されており、左右二枚のエレボン2は、それらの操舵用サーボモータ8により揺動駆動される。左右二つの駆動用モータ7はそれぞれ、モータドライバ14およびコネクタ15を介して中央処理ユニット(CPU)ボード9に接続され、左右二つの操舵用サーボモータ8もコネクタ15を介してCPUボード9に接続されている。
【0026】
CPUボード9とバッテリ10とは、胴体4内に搭載されており、CPUボード9はCPUの他、メモリやインターフェース等を搭載していて、バッテリ10から給電されて作動し、あらかじめメモリ内に記憶したプログラムに基づき、モータドライバ14を介して左右の駆動用モータ7をそれぞれ作動させて左右のプロペラ6を例えば互いに逆回転させることにより機体に推力を与えるとともに、操舵用サーボモータ8を作動させて左右のエレボン2をそれぞれ上下方向へ揺動させることにより機体を昇降制御および操舵して、当該小型無人飛行機をあらかじめ任意に設定された航路に沿って自動操縦で飛行させ、さらに、その飛行中にセンサ11が取得した周囲の状況等の情報をそのセンサ11からコネクタ16を介して取り込んでメモリ内に記憶する。
【0027】
従って、この小型無人飛行機によれば、例えば手投げやランチャーでの発進等によって離陸し、左右のプロペラ6によって推力を得るとともに垂直安定板3で方向を安定させ、左右のエレボン2の作動やプロペラ6の推力の調節によって上昇、下降、旋回等を行い、あらかじめ任意に設定された航路に沿って自動操縦で飛行して周囲の状況等の情報を記憶した後、胴体着陸などによって着陸あるいは着水することができる。
【0028】
しかも、この小型無人飛行機によれば、低縦横比の全翼機型の主翼1を持つことから、全長が短くなるとともに全幅も抑えられるので、手投げ発進等に好適で個人携行が可能な小型軽量化を実現することができ、また、主翼1の前方に配設されたプロペラ6からの後流が主翼1の表面に沿う気流を早めるので、大きな揚力を得ることができ、その後流をエレボン2が受けて後方斜め上方へ向けるので、推力増加時の頭下げモーメントを後下げモーメントで釣り合わせて機体の飛行安定性を高めることができる。
【0029】
図5は、この実施例の小型無人飛行機の翼構造の主要部を一部切り欠いて示す分解平面図であり、図5に拡大して示すとともに、図3,4にも示すように、中央翼12と、その中央翼12の両端部に固定された二枚の外翼13との少なくとも一方、この実施例では二枚の外翼13の端面にはそれぞれ、位置決め部材としての接続パイプ17および位置決めピン18が、他方である中央翼12の端面に向けて突設固定されており、中央翼12の端面には、それらの接続パイプ17および位置決めピン18にそれぞれ嵌合する筒状部19および前後方向に僅かに長円状をなす凹部20が形成されている。
【0030】
図6(a)は、その接続パイプ17を示す断面図であり、この実施例における接続パイプ17は、図6(a)の上部にように、両端が閉じた透明な筒状をなすとともにその長手方向中央部の外周面に周方向溝17aを形成されている。これにより接続パイプ17は、通常の飛行時を大きく越える曲げモーメントが加わると、図6(a)の下部に示すように、その周方向溝17aの位置で応力集中により破断するよう構成されている。そして透明な筒状の接続パイプ17の内部には、この実施例では例えば硫化亜鉛等の蛍光(蓄光)液17bが充填され、その蛍光液17bはあらかじめ十分に蓄光している。
【0031】
また、図5に拡大して示すとともに、図1〜4にも示すように、中央翼12と、その中央翼12の両端部に固定された二枚の外翼13との少なくとも一方、この実施例では中央翼12の両端部の上面および下面にはそれぞれ、二本のネジ21で固定された押さえ金具22で輪ゴム23が装着され、また、他方である二枚の外翼13の基端部の上面および下面にはそれぞれ、中央翼12の両端部の輪ゴム23が掛かる位置に二本のネジ24が立設されていて、輪ゴム23はそれらのネジ21,24に巻き掛けられており、これら二本ずつ二組のネジ21,24、押さえ金具22および輪ゴム23が連結部材を構成している。
【0032】
従って、この実施例の小型無人飛行機の翼構造によれば、主翼1が、中央翼12と、その中央翼12の両端部にそれぞれ着脱可能に固定された二枚の外翼13とを具え、外翼13が中央翼12に、接続パイプ17および位置決めピン18と、二組のネジ21,24、押さえ金具22および輪ゴム23とにより分離可能に固定されており、その接続パイプ17および位置決めピン18が、所定以上の衝撃により破損する一つの緩衝部材として接続パイプ17を含み、輪ゴム23が、接続パイプ17の破損により二組のネジ21,24の少なくとも一方から分離することから、重くて頑丈な接続部材や重くて複雑な分離機構を用いなくても、図7に示すように、不整地面への着陸時や機体の姿勢が崩れた際の接地時等によって接続パイプ17に通常の着陸時以上の衝撃が加わると、接続パイプ17が破損するとともに位置決めピン18が凹部20から外れて輪ゴム23が二組のネジ21,24の少なくとも一方から分離するため、衝撃荷重を緩和させて機体の再使用を容易にすることができるので、この点でも小型無人飛行機の手投げ発進等に好適で個人携行が可能な小型軽量化を実現することができる。
【0033】
しかもこの実施例の小型無人飛行機の翼構造によれば、連結部材として、中央翼12と外翼13とにそれぞれ設けられた掛合部としての二組のネジ21,24と、それらのネジ21,24に着脱可能に掛合する掛合部材としての輪ゴム23とを有しているので、中央翼12への外翼13の分離可能な固定を、軽量かつ安価で容易に分離可能な構造で行うことができる。
【0034】
さらにこの実施例の小型無人飛行機の翼構造によれば、緩衝部材としての接続パイプ17が、透明な筒状をなしていてその内部に蛍光(蓄光)液17bを収容しており、図7に示すように、着陸の際に主翼1の外翼13等が衝撃荷重を受けてその接続パイプ17が破損すると、図6(a)の下部に示すように、蛍光液17bが接続パイプ17内から流出してその燐光が着陸地点の周囲に放散されるので、その蛍光液17bの光を目印とすることで、草原等に着陸した小型無人飛行機の発見および回収を速やかに行うことができる。
【0035】
さらにこの実施例の小型無人飛行機の翼構造によれば、主翼1が、中央翼12と、その中央翼12の両端部にそれぞれ着脱可能に固定された二枚の外翼13とを具え、操舵翼としてのエレボン2が、その中央翼12の後縁部の左右両端部のみに配設されているので、機体の組立時に操舵用サーボモータ8とエレボン2とを着脱可能に連結するための連結機構が不要になって、主翼1を軽量化できるとともに、繰り返し運用での外翼13の分解組立で操舵の再現性が低下することがなくなり、しかも外翼13が軽量化することから、図7に示すように、垂直安定板3が地面Gと接触し、あるいは外翼13が地面Gと接触しても、外翼13への衝撃モーメント荷重が小さくなるため、外翼13が変形して操舵の再現性が低下する可能性が減少するので、この点からも、手投げ発進等に好適で分解して個人携行が可能な小型軽量化を実現することができると共に、十分な操舵再現性を有することができる。
【0036】
さらに、この実施例の小型無人飛行機の翼構造によれば、推進手段は中央翼12の前縁部の左右両端部に配設されたプロペラ6を有していることから、推進手段のプロペラ6の後流がエレボン2に流れて左右のエレボン2で制御されるので、左右のエレボン2の制御と左右のプロペラ6の推力制御とを組み合わせることで、高度な機動性を持ち、高い飛行性能あるいは操縦性を有する無人飛行機を実現することができ、しかも機体の組立時に制御手段としてのCPUボード9と推進手段としての駆動用モータ7とを接続するコネクタ15を、CPUボード9と操舵用サーボモータ8とを接続するコネクタと共用し得て、それぞれのモータ専用のコネクタが不要になるので、この点でも主翼を軽量化することができる。
【0037】
図6(b)は、この発明の小型無人飛行機の翼構造の他の一実施例における位置決め部材および緩衝部材としての接続パイプ17を示す断面図であり、この実施例における接続パイプ17は、先の実施例におけると同様、図6(b)の上部にように、両端が閉じた筒状をなすとともにその長手方向中央部の外周面に周方向溝17aを形成されている。これにより接続パイプ17は、通常の飛行時を大きく越える曲げモーメントが加わると、図6(b)の下部に示すように、その周方向溝17aの位置で応力集中により破断するよう構成されている。
【0038】
そして接続パイプ17の内部には、この実施例では筒状の例えばポリエチレン等の軟質容器に充填された例えばシュウ酸ジフェニル等の発光液17cが収容されるとともに、その軟質容器内に入れられた筒状の例えばガラス等の硬質容器に充填された例えば過酸化水素等の反応液17dが収容されており、他の点では、先の実施例の翼構造と同様の構成を具えている。
【0039】
この実施例の小型無人飛行機の翼構造によれば、先の実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、図7に示すように、着陸の際に主翼1の外翼13等が衝撃荷重を受けてその接続パイプ17が破損すると、図6(b)の下部に示すように、筒状の硬質容器も破壊されて、その硬質容器内の反応液17dが軟質容器内の発光液17cと混ざり合って反応し、軟質容器が接続パイプ17から露出すると同時に発光液17cが発光して、軟質容器がケミカルライトとなり、その光が着陸地点の周囲に放散されるので、そのケミカルライトの光を目印とすることで、草原等に着陸した小型無人飛行機の発見および回収を速やかに行うことができる。
【0040】
図6(c)は、この発明の小型無人飛行機の翼構造のさらに他の一実施例における位置決め部材および緩衝部材としての接続パイプ17を示す断面図であり、この実施例における接続パイプ17は、図6(c)の上部にように、例えば落花生の殻のように長手方向に合わせ目を延在させて薄い銅板等からなる二つの樋状部材を互いに接合することで、先の実施例におけると同様、両端が閉じた筒状をなすとともにその長手方向中央部の外周面に周方向溝17aを形成されている。これにより接続パイプ17は、通常の飛行時を大きく越える曲げモーメントが加わると、図6(c)の下部に示すように、その周方向溝17aの位置で応力集中により破断するよう構成されている。
【0041】
そして接続パイプ17の内部には、この実施例では断線検出回路17eが収容されており、その断線検出回路17eは、例えばマイクロコンピュータの如きデジタル式の信号処理回路により構成されるとともに、接続パイプ17外に引き出された信号回路17fを介して、胴体4内に搭載された図示しない標識信号発信機に接続され、そこから電源を給電される。ここで、断線検出回路17eは、飛行開始時に標識信号発信機から与えられる開始信号(例えば電源の給電開始)により、接続パイプ17の内面の長手方向両端部のそれぞれ接続した配線と接続パイプ17自体とを通る回路の導通状態の検出を開始し、その回路が上記配線や接続パイプ17自体の破断等により遮断されると、信号回路17fを介して標識信号発信機に断線検出信号を出力する。この断線検出信号を受けると標識信号発信機は、例えば無線通信で標識信号としての電波信号を発信する。この実施例の小型無人飛行機の翼構造は、他の点では、先の実施例の翼構造と同様の構成を具えている。
【0042】
この実施例の小型無人飛行機の翼構造によれば、先の実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、図7に示すように、着陸の際に主翼1の外翼13等が衝撃荷重を受けてその接続パイプ17が破損して、図6(c)の下部に示すように、上記配線と接続パイプ17自体とを通る回路が配線や接続パイプ17自体の破断等により遮断されると、標識信号発信機が、無線通信で標識信号としての電波信号を発信するので、その電波信号を複数箇所で受信して発信元の方向や位置を知ることで、草原等に着陸した小型無人飛行機の発見および回収を速やかに行うことができる。
【0043】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上記例に限定されるものでなく、例えば位置決め部材は、複数の緩衝部材を含んでも良く、あるいは複数の緩衝部材のみで構成しても良い。また連結部材は、中央翼12と外翼13とのうちの一方または両方の端部の上下面に設けられた掛合部としての凹部と、中央翼12と外翼13とのうちの一方または両方の端部の上下面に設けられてそれらの凹部に弾性的に着脱可能に掛合する掛合部材としての弾性フックとを有するように構成しても良い。そして標識信号発信機は、標識信号として、電波信号に代えてあるいは加えて、音声信号または光信号もしくはそれらの両方を発信するように構成しても良い。
【0044】
さらに、この発明においては、小型無人飛行機が、CUPボードによる自律飛行でなく、あるいはそれに加えて、無線操縦によって推進手段やエレボンもしくは可動フラップを制御することで飛行するようにしても良い。また操舵翼が、中央翼の後縁部の左右両端部でなく、あるいはそれに加えて外翼に配設されていても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
かくしてこの発明の小型無人飛行機の翼構造を持つ小型無人飛行機によれば、自在な飛行が可能であり、しかも、全翼機型の主翼を持つことから、全長が短くなるとともに全幅も抑えられるので、手投げ発進等に好適で個人携行が可能な小型軽量化を実現することができる。
【0046】
さらに、この発明の小型無人飛行機の翼構造によれば、主翼が、中央翼と、その中央翼の両端部にそれぞれ着脱可能に固定された二枚の外翼とを具え、外翼が中央翼に、位置決め部材と連結部材とにより分離可能に固定されており、その位置決め部材が、所定以上の衝撃により破損する少なくとも一つの緩衝部材を含み、前記連結部材が、前記緩衝部材の破損により分離することから、重くて頑丈な接続部材や重くて複雑な分離機構を用いなくても、不整地面への着陸時や機体の姿勢が崩れた際の接地時等によって緩衝部材に通常の着陸時以上の衝撃が加わると緩衝部材が破損して連結部材が分離するため、衝撃荷重を緩和させて機体の再使用を容易にすることができるので、この点でも小型無人飛行機の手投げ発進等に好適で個人携行が可能な小型軽量化を実現することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 主翼
2 エレボン
3 垂直安定板
4 胴体
4a 底部
5 センサ部
6 プロペラ
7 駆動用モータ
8 操舵用サーボモータ
9 CPUボード
10 バッテリ
11 センサ
12 中央翼
13 外翼
14 モータドライバ
15,16 コネクタ
17 接続パイプ
17a 周方向溝
17b 蛍光(蓄光)液
17c 発光液
17d 反応液
17e 断線検出回路
17f 信号回路
18 位置決めピン
19 筒状部
20 凹部
21,24 ネジ
22 押さえ金具
23 輪ゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無尾翼型の空力面を有する全翼機型の主翼と、
前記主翼の後縁部左右両側に配設された操舵翼と、
少なくとも一の推進手段と、
を具える小型無人飛行機において、
前記主翼が、中央翼と、その中央翼の両端部にそれぞれ配置された二枚の外翼とを具え、
前記外翼が前記中央翼に、位置決め部材と連結部材とにより分離可能に固定されており、
前記位置決め部材が、所定以上の衝撃により破損する少なくとも一つの緩衝部材を含み、
前記連結部材が、前記緩衝部材の破損により分離することを特徴とする、小型無人飛行機の翼構造。
【請求項2】
前記連結部材は、前記中央翼と前記外翼とにそれぞれ設けられた掛合部と、それらの掛合部に着脱可能に掛合する掛合部材とを有することを特徴とする、請求項1記載の小型無人飛行機の翼構造。
【請求項3】
前記緩衝部材は、筒状をなしていてその内部に発光液または蛍光液を収容し、その緩衝部材が破損すると前記発光液または蛍光液の光を周囲に放散させることを特徴とする、請求項1または2記載の小型無人飛行機の翼構造。
【請求項4】
前記小型無人飛行機は、標識信号発信機を搭載し、
前記標識信号発信機は、前記緩衝部材の破損により通電されて標識信号を発信することを特徴とする、請求項1から3までの何れか1項記載の小型無人飛行機の翼構造。
【請求項5】
前記操舵翼は、前記中央翼の後縁部の左右両端部のみに配設されていることを特徴とする、請求項1から4までの何れか1項記載の小型無人飛行機の翼構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−245832(P2012−245832A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117524(P2011−117524)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(591210600)川田工業株式会社 (57)