説明

小型船舶用梯子

【課題】人が海中に転落したときや、水泳をしたときに、海面から船上に戻る際に使用する小型船舶用梯子を提供する。
【解決手段】船舶の舷側の上縁に跨設する取付部材3と、この取付部材3の一端部に上端部が回動自在に支持され、下部の両側面に対向する2つの長穴11を長手方向にあけた角パイプよりなる第1の支柱部材1と、上部の両側面に対向する2つの長穴21を長手方向にあけた角パイプよりなり、第1の支柱部材1に挿通される第2の支柱部材2と、第2の支柱部材2の中に収められて蝶番により開閉自在であって、開いたときに2つの長穴11、21より突出できる2つの踏板41、42と、第2の支柱部材2の下部に回動自在に取り付けされた手で掴める輪5と、第1の支柱部材1に対する第2の支柱部材1の昇降範囲を規制する手段22、8とにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、レジャーボート、漁船など小型船舶から人が海中に転落したときや、水泳をしたときに、海面から船上に戻る際に使用する小型船舶用梯子に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶用梯子として、従来より船舶に固定した梯子が知られているが、嵩張るためにあまり使用されていない。しかし、最近のレジャーボートや漁船は大型化されたものが多く、もし一人だけの乗船で水中に転落した場合には、自力で船内に戻らなければならず、舷側までは泳ぎ着いても、体が衰弱していると容易に船内に戻ることはできない。梯子がなければ海面から船上に上がることができず、人命にかかわる事故の原因になることがあった。
【0003】
そこで、縦方向に伸縮可能な梯子であって、不使用時には短縮して嵩張らないように畳み込める梯子が下記特許文献1などにより提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−81178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の伸縮可能な船舶用梯子は、小型船に限らず中型船にも適用できるように作られているので、畳み込んでも嵩張り、構造が複雑であった。
【0006】
そこで、この発明は、主として小型の船舶に適用するために、廉価であって、取扱いおよび構造が簡単な船舶用梯子を提供するために考えられたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の小型船舶用梯子は、船舶の舷側の上縁に跨設する取付部材と、上記取付部材の一端部に上端部が回動自在に支持され、下部の両側面に対向する2つの長穴が長手方向にあけた角パイプよりなる第1の支柱部材と、上部の両側面に対向する2つの長穴を長手方向にあけた角パイプよりなり、上記第1の支柱部材に挿通される第2の支柱部材と、上記第2の支柱部材の中に収められて蝶番により開閉自在であって、開いたときに上記2つの長穴より突出できる2つの踏板と、上記第2の支柱部材の下部に回動自在に取り付けされた手で掴める輪と、上記第1の支柱部材に対する上記第2の支柱部材の昇降範囲を規制する手段とにより構成される。
【発明の効果】
【0008】
この発明の小型船舶用梯子によると、小型船舶の舷側に設置しておくことにより、一人だけで乗船している場合であっても、海中に転落したときや、水泳をしたときに、自力で海面から船内に容易に戻ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の船舶用梯子を船舶の舷側に横向けに保持させた不使用状態を示す正面図、
【図2】船舶用梯子の不使用状態における縦断面図、
【図3】この発明の船舶用梯子を船舶の舷側から垂下させた途中の状態を示す正面図、
【図4】船舶用梯子を舷側から垂下させた途中の状態における縦断面図、
【図5】この発明の船舶用梯子を船舶の舷側から垂下させてさらに引き下げた使用状態を示す正面図、
【図6】船舶用梯子の使用状態における縦断面図、
【図7】梯子を構成する第1の支柱部材および第2の支柱部材の縦断面図、
【図8】第2の支柱部材の詳細を示す縦断面図、
【図9】この発明の船舶用梯子を船舶の舷側から垂下させて引き下げた使用状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明の船舶用梯子は、図1の正面図に示すように、船舶の舷側9に横向きに格納しておき、使用する際には、楕円形の輪5を手で掴んで引き下げると、図3に示すように、縦向きに回動し、さらに楕円形の輪5を引き下げると、図5に示すように、2つの踏板41、42が横向きに突出して2段の梯子を形成するように構成されている。
【0011】
このように、輪5および踏板41、42よりなる2段のステップがあれば、海面から小型船舶の船上に戻ることが容易である。
【0012】
この発明の船舶用梯子は、図9(a)、(b)の側面図に示すように、船舶の舷側9を挟んで固定する断面形状がコ字形の2つの狭持部材31、32よりなり、これら2つの狭持部材31、32を両端に支持する取付部材3と、一方の狭持部材31に上端が回動自在に支持される梯子Aとにより構成される。
【0013】
取付部材3の2つの狭持部材31、32は、船舶の舷側の上縁に跨設されるもので断面形状がコ字形であって、内面側312、322には舷側9の上縁を挟み付ける蝶螺子35をねじ込む螺子穴があけられている。
【0014】
図9(a)に示すように、一方の狭持部材31の外面側に傾斜面311が固定されており、この傾斜面311には、梯子Aの上端を回動自在に支持するボルト7が植設されている。
【0015】
図9(b)に示すように、他方の狭持部材32の外面側には、梯子Aを船舶の舷側に横向きに格納するための弾性板をコ字形に曲げ加工した保持部材33が固定されている。
【0016】
梯子Aは、図7(a)、(b)に示すように、太さが異なる2本の角パイプよりなり、一端部(上端部)が、取付部材3の一方の狭持部材31の傾斜面311に植設したボルト7により回動自在に取り付けられる第1の支柱部材1と、この第1の支柱部材1の中に挿通される第2の支柱部材2とにより構成される。
【0017】
第1の支柱部材1は、図7(a)に示すように、正面および裏面の上部に狭持部材31に設けたボルト7を挿通する穴12があけられ、下部の両側面に対向する2つの四角形の長穴11が長手方向にあけられ、正面および裏面の中間部に棒状のストッパー部材8(図6参照)を挿通する穴13があけられている。
【0018】
第2の支柱部材2は、図7(b)に示すように、上部の両側面に対向する2つの四角形の長穴21が長手方向にあけられており、正面および裏面に第1の支柱部材1に固定されたストッパー部材8を摺動して、第2の支柱部材2の昇降範囲を制限するスリット22があけられている。
【0019】
第1の支柱部材1の長穴11および第2の支柱部材2の長穴21の形状はほぼ同じで、その長さは、踏板41、42の長さよりも長く設定されている。
【0020】
図8に示すように、蝶番40の半体41a、42aを一端部にそれぞれ固定した2つの踏板41、42を用意し、第2の支柱部材2の正面および裏面に予め穴23をあけておく。これら2つの穴23は、第2の支柱部材2の両側面にあけた長穴21の最下部より踏板41、42の厚み分bだけ高い位置にあけられている。
【0021】
この第2の支柱部材2の長穴21に両方向より2つの踏板41、42を挿し込んで、第2の支柱部材2の中で両踏板41、42の蝶番4の半体41a、42aを組み合わせ、これら半体41a、42aに蝶番の軸43を第2の支柱部材2の正面および裏面にあけた穴23を経て挿通して蝶番4を形成する。
【0022】
このように第2の支柱部材2の中で、両踏板41、42を組み合わせて蝶番4を形成することにより、図8に点線で示すように、両踏板41、42を折り畳んで第2の支柱部材2の中に収めたり、図8に実線で示すように、両踏板41、42を一直線状に広げて第1の支柱部材1および第2の支柱部材2の長穴11、21より突出させることができる。
【0023】
図1〜図6に示すように、第2の支柱部材2の下端には、手で掴まる楕円形の輪5が回動自在に取り付けられている。なお、この輪5は梯子Aの第一段目となるもので、楕円形に限ることなく、円形、三角形などの手で掴まえ易くかつ足を入れ易い形状であればよいのである。
【0024】
この梯子Aを組み立てる際には、図7(b)に示すように、踏板41、42を折り畳んだ状態で第2の支柱部材2を第1の支柱部材1の下端から浅く挿通する。そして、第1の支柱部材1の長穴11と第2の支柱部材2の長穴21を一致させると、踏板41、42が、両長穴11、21から突出させることができる。
【0025】
踏板41、42を両長穴11、21から突出させた状態で、第1の支柱部材1の穴13を経て第2の支柱部材2のスリット22に棒状のストッパー部材8を挿通させる。このとき、図2、図4および図6に示すように、踏板41、42と第2の支柱部材2との間にコイルスプリング6を設けて、踏板41、42が開く方向に弾力を作用させておく。
【0026】
このように、第1の支柱部材1に固定されたストッパー部材8を第2の支柱部材2のスリット22が摺動するように構成することにより、第1の支柱部材1に対する第2の支柱部材2が昇降範囲が制限される。
【0027】
第1の支柱部材1に対して第2の支柱部材2が最も降下した状態においては、図6に示すように、第1の支柱部材1の長穴11と第2の支柱部材2の長穴21が一致して、踏板42、44が両長穴11、21から突出し、このとき、踏板41、42の下面が両長穴11、21の両下端面に当接して静止する。突出した踏板41、42は、梯子の第二段目となるものである。
【0028】
第2の支柱部材2を第1の支柱部材1の中に挿入するときには、コイルスプリング6の弾力に抗して踏板41、42を折り畳んで第2の支柱部材2を第1の支柱部材1の中に挿し押し込むと、第2の支柱部材2のスリット22の下端が、第1の支柱部材1に固定されたストッパー部材8に突き当たるまで押し込むことができる。
【0029】
このように第2の支柱部材2を押し込むときに、コイルスプリング6の弾力によって、両踏板41、42に対して拡げる力が作用するので、踏板41、42の両先端が第1の支柱部材1の内面を摺動しながら挿し込まれる。
【0030】
このように組み立てて、取付部材3の狭持部材31のボルト7に上端を回動自在に支持された梯子Aは、図1および図2に示すように、舷側9に固定された取付部材3と平行(水平)にして、梯子の下端部を弾性を有するコ字形の保持部材33に挟み込んで支持させる。このとき、第2の支柱部材2の下端に回動自在に支持された楕円形の輪5は、回動して舷側と平行(水平)になる。
【0031】
人が海面から船上に戻るために使用する際には、楕円形の輪5を引き下げると、図3および図4に示すように、梯子Aを構成する第1の支柱部材1が、取付部材3の保持部材33から外れ、梯子Aは回動して垂直になる。さらに楕円形の輪5を引き下げると、図5および図6に示すように、第2の支柱部材2が支柱部材1から抜け出す。
【0032】
第2の支柱部材2のスリット22の上端が、第1の支柱部材1に固定されたストッパー部材8に突き当たるまで引き下げると、第1の支柱部材1の長穴11と第2の支柱部材2の長穴21が一致するので、折り畳まれていた踏板41、42は、コイルスプリング6の弾力により外向きに拡げられるので、長穴11、21から両側方へ突出して梯子の第二段目を形成する。
【0033】
このように船舶の舷側に垂下した2段の小型船舶用梯子を利用すると、海面から船上へ容易に戻ることができる。
【0034】
梯子Aは、狭持部材31の外面側に形成された傾斜面311により斜め下向きに支持されているので、梯子Aの下端が船舶の舷側から離れており、船舶が波で揺れても梯子Aの下端を容易に掴まえることができる。
【0035】
(その他の実施形態)
以上で説明した実施の形態においては、梯子Aを船舶の舷側に横向きに格納したとき、梯子Aが露出しているが、図9に点線で示すように、断面形状がL字形の合成樹脂のカバーCで覆ってもよいのである。カバーCの水平な一辺を取付部材3の上面に固定し、カバー8の他の垂直な一辺で梯子Aを覆うように構成する。このカバーCの垂直な一辺に船名などを表示してもよいのである。
【0036】
梯子Aを船舶の舷側に横向きに格納した状態において、楕円形の輪5を手で掴んで引き下げるとき、船舶が揺れて手で輪5を掴むことが困難な場合もあるので、輪5に紐の上端を結び付けて紐を垂れ下げておくと、横向きに格納された梯子を容易に使用状態にすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 第1の支柱部材
2 第2の支柱部材
3 取付部材
4 蝶番
5 楕円形の輪
6 コイルスプリング
7 ボルト
8 ストッパー
9 舷側
11、21 長穴
22 スリット
31、32 狭持部材
33 保持部材
41、42 踏板
41a、42a 蝶番の半体
43 蝶番の軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の舷側の上縁に跨設する取付部材と、
上記取付部材の一端部に上端部が回動自在に支持され、下部の両側面に対向する2つの長穴が長手方向にあけた角パイプよりなる第1の支柱部材と、
上部の両側面に対向する2つの長穴を長手方向にあけた角パイプよりなり、上記第1の支柱部材に挿通される第2の支柱部材と、
上記第2の支柱部材の中に収められて蝶番により開閉自在であって、開いたときに上記2つの長穴より突出できる2つの踏板と、
上記第2の支柱部材の下部に回動自在に取り付けされた手で掴める輪と、
上記第1の支柱部材に対する上記第2の支柱部材の昇降範囲を規制する手段と、
により構成されることを特徴とする小型船舶用梯子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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