説明

小径側孔を用いた坑井構築

本発明は、主坑井からの小径の側方坑井の掘削を利用した技術を用いた坑井、例えば油井及びガス井の構築に関する。圧力窓の幅が狭いという問題は、側方ボーリング孔、即ち主ボーリング孔を掘削した副ボーリング孔を利用した構築技術の使用により解決され、坑井を構築する方法は、1つ又は2つ以上の地下地層を通って地表から延びる主ボーリング孔を掘削するステップと、主ボーリング孔から周りの地層中に延びる複数本の側方ボーリング孔を掘削するステップとを有し、側方ボーリング孔は、主ボーリング孔よりも実質的に短く且つ小径であり、各側方ボーリング孔は、比較的短い距離だけその隣りの側方ボーリング孔から分離されている。側方ボーリング孔の掘削は、主ボーリング孔から5〜60メートルにわたり直径が3.8〜10cmの状態で主ボーリング孔内に数メートル未満の軸方向間隔で実施されるのが良い。2つ以上の側方ボーリング孔の掘削は、主ボーリング孔から10°未満だけ逸れた坑跡で又は主ボーリング孔を含まない平面内において延びる坑跡で主ボーリング孔内に同一深さで実施されるのが良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主坑井からの小径側方坑井の掘削を利用した技術を用いる坑井、例えば油井及びガス井の構築に関する。
【背景技術】
【0002】
坑井構築は、坑井を掘削する地層からの油の回収能力又は極端な場合をいえば、坑井を仕上げ、坑井を産出に供するための状況に悪影響を及ぼすことのある、多くの周知の問題を抱えている。
【0003】
油を貯留している地層中に水平坑井を掘削する場合、成功のための重要な要因は、坑井を油の下に位置する地下水面よりも一定距離上方に保とうと努力することである。これが達成されず、坑跡が変化すると、坑井の低いところに位置する箇所又は「谷部」が問題の源となる場合が多い。開放孔の仕上げが用いられる場合又はその領域の有孔密度が一様である場合、水の坑井谷部へのコーニング(coning)の危険性が高い。被覆(ケーシング)が施された孔であっても、又、谷部に孔がなくても、坑井の幾分かの長さは、貯留層との接触状態を依然として失う場合がある。稀な状況においては、坑井の掘削部分を放棄しなければならず、枝掘りを行って坑井を正確な深さに再び位置決めする。
【0004】
同様の問題は、坑井から油の上に位置するガス層までの距離が短すぎる場合、坑井の「アップヒル(上り坂)」に現われる場合がある。この場合、ガスを産出することができるが、上述した「谷部」及び水の問題と同様な結果及び処理に直面する。
【0005】
幾つかの坑井では、掘削プロセスそれ自体が、坑井ボア近くの領域において或る程度の地層の損傷を生じさせる。これは、高いスキン効果として現われ、その結果、産出が制限される。以前、岩石細孔をクリーニングし、適正な透過性を再び確立するために岩石マトリックス中に或る特定の化学的処理を行うことが提案されたが、これらは、いつでも効果的であるというわけではない。
【0006】
産出中の砂の制御に関し、一般的な対策は、砂利パッキング(充填)及びスクリーンを用いることである。水平坑井では、砂利の配置は、非常に難題である場合があり、それと同時に、仕上げの際に流通部分(坑井の開放ボア)が減少する。砂利によるパッキング及びフラクチャリング(“Pack&Frac”技術)を利用した仕上げを行うには、パックの配置に関して問題があり、しかも、生じた短い割れ目の方向の制御が得られない。
【0007】
岩石中の応力(及び坑井ボアの近くの応力集中)に起因する地層崩壊の問題に関し、唯一の対策は、坑井の掘削中に用いられる泥水(マッド)密度を適合させることであるが、他の層を破砕又は破壊する場合があり、又は、坑井のこの部分を放棄し、別の坑井ボア坑跡又は軌道で再開するかのいずれかである。
【0008】
掘削中に掘削流体が損失するので、この問題は、幾分かのセメントスラリーを坑井の底部に配置し、その一部を地層中に絞り出すことにより解決される場合が多い。しかしながら、その結果として行われる処理は、非常に深くはない場合が多く、掘削は、セメントプラグを横切って再び開始され、坑井ボアは、未開拓地層に再び入る場合があり、又、損失が再開される場合が多い。
【0009】
圧力窓の幅が狭いという問題は、解決するのが困難な場合が多く、地層の破壊又は坑井ボア中への地層流体の流入を回避しながら泥水密度を調節する自由度は、制約されている。多くの場合、ケーシングを据え付けてその地層を隔離する必要がある。
【0010】
本発明の目的は、これら処理方法に代わる手段となり、潜在的に上述の問題の幾つか又は全てを解決する構築技術を提供することにある。本発明は、側方ボーリング孔、即ち主ボーリング孔から掘削された副ボーリング孔の使用に基づいている。側孔は、種々の用途に、特に、地層との接触状態を改善するために従来提案されていた。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一観点は、坑井を構築する方法であって、
−1つ又は2つ以上の地下地層を通って地表から延びる主ボーリング孔を掘削するステップと、
−主ボーリング孔から周りの地層中に延びる複数本の側方ボーリング孔を掘削するステップとを有し、
−側方ボーリング孔は、主ボーリング孔よりも実質的に短く且つ小径であり、
−各側方ボーリング孔は、比較的短い距離だけその隣りの側方ボーリング孔から分離されていることを特徴とする方法を提供する。
【0012】
側方ボーリング孔は、好ましくは、主ボーリング孔から5〜30メートルにわたって延びると共に3.8〜10cmの直径を有する。
【0013】
側方ボーリング孔は、典型的には、主ボーリング孔内で数メートル未満の軸方向間隔で掘削され、2つ以上の側方ボーリング孔が、主ボーリング孔内で同一深さで掘削されるのが良い。
【0014】
好ましい一実施形態では、側方ボーリング孔を主ボーリング孔から10°未満だけ逸れた坑跡をもつように掘削する。別の好ましい実施形態では、側方ボーリング孔は、本質的に主ボーリング孔に垂直に延びるのが良い。
【0015】
或る特定の場合、側方ボーリング孔を主ボーリング孔を含まない平面内に延びる坑跡をもつよう掘削することが好ましい場合がある。側方ボーリング孔は、主ボーリング孔周りにS字形となり又は螺旋を描くのが良い。
【0016】
この方法の好ましい使用は、側方ボーリング孔を、これが主ボーリング孔の周り、例えばスキン又は掘削損傷の改質された地層特性の領域を通って、実質的にバルク地層特性を有する領域の中に延びるよう掘削するステップを有する。
【0017】
掘削後に側方ボーリング孔にゲル化流体を充填して主ボーリング孔からの流体による側方ボーリング孔の汚染を阻止するのが良い。この方法は、側方ボーリング孔中の流体のゲルを破壊して側方ボーリング孔の内部へのアクセスを可能にするステップを更に有するのが良い。
【0018】
この方法の別の実施形態は、実質的に、側方ボーリング孔の全体に砂利を充填するステップを有する。好ましくは、主ボーリング孔の近くに位置する側方ボーリング孔の領域のところの砂利を安定化させて、砂利が主ボーリング孔中に入るのを阻止する。
【0019】
各側方ボーリング孔を掘削した直後であって別の側方ボーリング孔を掘削する前に各側方ボーリング孔にゲル化流体又は砂利を充填、又は側方ボーリング孔の全ての掘削に続き側方ボーリング孔の全てに次々にゲル化流体又は砂利を充填するのが良い。
【0020】
主ボーリング孔を側方ボーリング孔が延びる起点の領域について砂利パック及びスクリーン、膨張可能なスクリーン、スロット付きライナ、又はセメント塗りケーシングによって仕上げるのが良い。
【0021】
本発明の方法は、側方ボーリング孔を通して地層処理流体を圧送して坑井の近くの地層特性を改質するステップを更に有するのが良い。処理流体を地層中に圧送してその透過性を改質して坑井中への水又はガスの流れを制限し又は処理流体を地層中に圧送して掘削プロセス中、その機械的性質を安定化させるのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明により掘削された坑井の簡略化された図である。
【図2】本発明により掘削された坑井の簡略化された図である。
【図3】側方坑井の一形態を示す図である。
【図4】側方坑井の別の形態を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態による地層の処理及びこれとの接触状態の改善状態を示す図である。
【図6】本発明の別の実施形態による坑井の仕上げ状態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態による水平坑井の構築状態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態による水平坑井の構築状態を示す図である。
【図9】本発明の実施形態による水平坑井の構築状態を示す図である。
【図10】本発明による水平坑井の構築の別の実施形態を示す図である。
【図11】本発明による水平坑井の構築の別の実施形態を示す図である。
【図12】本発明の技術を用いた掘削中の地層の処理状態を示す図である。
【図13】本発明の技術を用いた掘削中の地層の処理状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、親の坑井又はボーリング孔(ボアホール)から掘削された多数の小径側孔の技術的思想に基づいている。本発明は又、主坑井の性能、地層特性、地層流体、地層の多孔性及び透過性の変化を適合させ又は修正するよう小径側孔に又はこれから実施できる処理を含む。側孔は、典型的には、長さが5〜30mであり(主坑井の深さは数千メートルであることと比較されたい)、直径が1.5〜4インチ(3.8〜10cm)である(主坑井の直径が典型的には20〜40cmであることと比較参照されたい)。これら側孔の坑跡は、主坑井にほぼ平行であるか(ずれが10°未満)、主坑井からできる限りずれているか(これに垂直)かのいずれかである。親坑井への連続した側孔接合部相互間の距離は、かなり短い場合があり、即ち、その軸方向間隔は、互いに異なる方位角では側方ボーリング孔に関しゼロに近い場合(即ち、2つ以上の側方ボーリング孔が同一深さに存在する場合)がある。主坑井の1メートル毎に数個の側孔を掘削する場合がある(岩石強度が制限条件とならない場合)。側孔は、或る特定の場合において主坑井の周りにS字形であり又は螺旋である場合がある。
【0024】
本発明により提供される新規な処理は、側孔における又は側孔からのマトリックス処理における流体又はスラリー配置技術を利用している。例えば次の通りである。
−将来の作業の際における主ボーリング孔からの側孔の汚染を回避するために小径側孔にゲル化流体を充填すること。
−砂管理の目的で側孔に砂利を充填すること。多数の側孔を処理すると、全体的な結果として、長い水平ドレンにおいて従来型“Pack&Frac”又は「砂管理」の改良が得られる。
−掘削の問題を解決するために側孔を介するマトリックス処理、例えば、掘削流体損失の制御、流れ出し及び流れ込みの管理、岩石強化等。
−産出上の問題、例えば、水平坑井内への水の到来又は水平坑井の谷部又は丘部内に位置しているときの適正な深さにおける貯留層との接触の再発生を解決するためのマトリックス処理。
−スキン層を通過すると共に圧力低下及びPVT状態変化の恐れを制限することによる産出率の向上(PI)。
【0025】
図1及び図2は、主ボーリング孔10が互いに密に間隔を置いた多数の側方ボーリング孔12を備えている場合のある状態を示している。多くの場合、2次元で見て、魚の骨の形をした配列を与える従来型湾曲坑跡が側孔12に(図1参照)に用いられるのが良い。また、側孔12が図2に示されているように主ボーリング孔10から直接遠ざかって延びるようにすることが有用な場合がある。側孔は、主坑井とは異なる角度で配置されるのが良い。
【0026】
幾つかの地層処理のため、例えば図3及び図4に示されているような他の坑跡を採用しても良い。図3は、S字形側孔12が貯留層との接触を保証することができることを示しており、貯留層は、主ボーリング孔10に対してより「平行」である場合がある。これは、例えば、水平主ボーリング孔の近くでの処理に有利な場合がある。
【0027】
図4に示されている螺旋形状の側孔12は、主ボーリング孔10周りの非対称処理に有利な場合がある。これは、坑井ボア近接領域に処理を施す際に有益な場合がある。
【0028】
坑井産出量を貯留層への広い接触表面により増大させることができる。さらに、主坑井ボアからかなりの距離を置いたところで接触を保証することができ、従って、同心流に起因した圧力低下が制限されるようになる。これは、ハイスキン(high skin)が存在している場合及び地層流体が重油である場合に特に有用な場合がある。図5は、かかる実施を示している。この場合、小径側孔12が、親坑井10から高い圧力損失特性をもって親坑井10周りのスキン16を通過して適正なバルク特性を示す地層14中に入るのに十分な距離にわたり地層14中に掘削されている。
【0029】
坑井産出量を、断熱シェールにより分離されたレンズ(凸レンズ状の岩体又は鉱床)により形成された貯留層の産出のために掘削された水平孔の状況において、小径側孔によっても増大させることができる。小さな各側孔は、多数のレンズに接触することができ、回収量を劇的に増大させる。
【0030】
坑井産出量は、単一の主疑似垂直坑井によって破壊度の高い貯留層を産出する場合に、小径の側孔によっても増大可能であり、側孔は、相互連結部を保証するために割れ又は破壊部にほぼ垂直な方向に掘削されるのが良い。
【0031】
本発明の一実施形態では、側孔にはその掘削後にゲル化流体が充填される。この流体により、側孔は、他の流体、例えば掘削泥水及び/又は親坑井中のセメントスラリーによって汚染されることはなく、側孔は、後での使用のために必要になるまで清浄なままである。その側孔を掘削するために用いられたツールを別の場所に移動させる前に、かかるツールにより流体ピルとしてゲル化流体を側孔に配置するのが良い。例えば、主坑井を標的深さ(TD)まで掘削するのが良く、次に、多数の小径側孔を掘削し、これらにゲルを充填する。ケーシング被覆及びセメント充填による隔離を主坑井について実施するのが良い。最後に、高密度穿孔を実施して側孔を主坑井に連結し、それにより貯留層の良好な排出を保証するのが良い。
【0032】
側孔の掃除を可能にするゲル化流体の破壊は、時間に起因している場合がある。また、他の方法、例えば、ゲル化破壊流体を壊すために用いられる技術と同様に、適当な破壊流体を側孔中に注入する方法を用いても良い。
【0033】
本発明の一実施形態では、側孔の全容積に例えば砂利パッキングに用いられる砂利を充填する。これは、坑井の中心がスクリーンにより開放状態に保たれる従来型砂利パッキングとは異なっている。産出された流体は、側孔に入り、次に側孔中のパッキングを経て主坑井に流れる。このパッキングは、好ましくは、プロパント(proppant)による破壊と類似した透過性特性を備える。しかしながら、この用途では、砂利は、破壊部中に存在するように高い閉鎖応力を受けない。これにより、砂利を選択する自由度が大きくなる。関心のある主要な特性は、次の通りである。
−地層砂の流れに対する遮蔽。
−高い軸方向透過性。
−側孔の頂部のところの砂利安定性。
【0034】
側孔を充填するのに用いられる砂利は、親坑井中に同伴されるべきでないことが好ましい。この効果を達成するため、側孔の上方部分には繊維を含む砂利、粗い砂利、布片、樹脂で覆われた砂等を充填してパックを安定化させるのが良い。これは、接合部の近くの側孔の最後の数メートルについて必要であるに過ぎない。
【0035】
この処理のため、側孔は、有利には、貯留層中の圧力降下を減少させるために主坑井から遠ざかって(できるだけ垂直に)向けられるのが良い。
【0036】
各坑井のパッキングは、側孔を掘削するために用いられる掘削システムが依然として定位置にある場合に実施されるのが良い。しかしながら、この状況では、パッキングのために主坑井の底部への少量のスラリーの循環は、主坑井が比較的深い場合があるので、長い時間を必要とする場合がある。側孔の各々の個々の処理のために時間が繰り返し失われるのを回避するため、パッキングを一ステップで全ての側孔中に配置することが好ましい場合がある。この方法に関し、側孔中に再入することが必要である。適当なツールを用いると、この再入を容易にすることができる(例えば、コイル状チュービングが多数の側孔のある坑井内に位置した状態での作業のため)。側孔パッキング中、側孔内の管の先端部を通って砂利スラリーをゆっくりと圧送し、その間、管をゆっくりと後方にひっぱる。流量と管の引張を正しく協調させることは、小径側孔の完全パッキングを保証するのに必要である。
【0037】
主坑井内では、産出インターバルを以下に説明する多くの仕方で保護することができる。
【0038】
開放孔砂利パッキング及びスクリーンを用いるのが良い。これは、“Pack&Frac”の状況に対応している。これにより、パッキングの損傷を回避するよう低い産出速度で良好なPI接触が貯留層に与えられる。
変形例として、坑井中の流れのための幅の広いボアを与える拡張可能なスクリーンを用いても良い。
【0039】
また、図6に示されているように小径の充填済み側孔と組み合わせてスロット付きライナを用いても良い。ライナ18は、主坑井10が例えば圧密されていない地層20の存在により潰れることがないようにする。かかる場合、産出が小径側孔12を介してだけ起こるようにすることが必要な場合がある。配慮を別途することなしに、主坑井10の表面を直接介して或る程度の産出を達成することができ、それにより、潜在的に、砂の産出がそれに関連した危険性を伴って生じる。主坑井10を存続させるため、ボア近接領域22の処理が、主坑井ボア10の付近の地層を安定化するために実施される。このマトリックス処理は、主坑井の掘削直後に(側孔の掘削前に)実施されるのが良い。適当な処理流体が主坑井10内に所望の間隔で配置される。次に、かかる処理流体を坑井の間隔にわたり地層22中に注入して岩石を安定化し(その耐腐食強度を増大させ)又はこれを短い深さ(例えば、1フィート(30cm))にわたって密封して砂フェースを介する産出が阻止されるようにする(産出24は、砂利の産出を阻止するために主坑井10との接合部26の近くで処理された側孔12を介して行われる)。
【0040】
セメント塗りケーシングが主坑井内に配置される。この場合、恐らくは、ケーシングの設置後に、小径側孔を掘削するのが良い。
【0041】
砂利によるパッキングなしに多数の小径側孔を用いることは、砂まきが通常起こる場合に産出のための適当な解決策である場合がある。以下の理由で、小径側孔のパッキングを行うことは必要ではない場合がある。
−貯留層との接触の増大による圧力低下の減少、
−小径側孔の付近における低い流体速度、及び/又は
−直径が小さいことによる小径坑井ボアの高い安定性。
【0042】
水平坑井では、坑井軌跡は、いつでも完全に水平又は地下水面に平行であるというわけではない(地下水面は、油貯留ゾーンの下に位置している)。幾分かの間隔で、坑井と地下水面との間の距離は、他の距離よりも短い場合がある。開放孔産出又はスロット付きライナを用いた場合又はそれどころか密度の高い穿孔方式では、水のコーニングがこの位置で迅速に現われる場合がある。
【0043】
この問題は、図7〜図9に示されている本発明による小径側孔の使用により解決できる。多数の小径側孔112を地下水面114に向かって親坑井110から下方に掘削する。次に、マトリックス処理を小径側孔112を介して行って密封製品を地層の細孔中に注入する。これら注入の目的は、地下水面114と坑井110との間の不透過性ディスク116を形成することにある。この場合、これらディスク116は、水の上向きの移動を制限する不透過性層を形成する。
【0044】
これら処理は、典型的には、例えば地下水面が近いことが検出された場合に掘削直後に坑井の寿命中の非常に早期に行われる。しかしながら、産出が開放孔で行われる場合、処理を後で行っても良い。
【0045】
この用途に関し、S字形側孔118が好ましい。というのは、これらS字形側孔は、図10及び図11に示されているように地層中の流体の良好な配置を保証するからである。
【0046】
ケーシング被覆が施された孔では、側方掘削は、ケーシング内の窓の開放に起因して僅かに複雑である。
【0047】
本発明の技術は、水平坑井内における水産出管理に利用できる。例えば、主(水平)坑井を貯留層の頂部で(又は実際には貯留層の上方で)掘削するのが良く、次に、多数の小径側孔を下方に掘削して貯留層との良好な連結を保証する。これら小径側孔には、上述したように砂利が充填されるのが良い(これら部分全体にわたって)。パッキングは、「従来型粒子」例えば従来型パッキング又は“Pack&Frac”に用いられている粒子を含むが、水との接触時に膨潤する物質を含んでいる。このことは、水(地下水面又は水コーニング)と接触状態にある側孔長さにより、水が限られた期間にわたり生じることを意味している。この場合、膨潤物質は、水湿潤間隔にわたりドレンの透過を遮断する。これにより、側孔(及び主坑井)中への水の流入が確実に自動的に制限される。
【0048】
水平坑井では、坑井は、油貯留ゾーン上に位置するガスキャップとのインターフェイスの近くに局所的に位置している場合がある。この場合、ガスが坑井に流入する恐れがあり、それにより、全坑井産出能力が低下する。というのは、ガスは、液体産出に関与する坑井部分を制限する場合があるからである。さらに、主坑井中へのガス産出によっても、貯留層中の迅速な圧力低下が生じる場合があり、その結果、自然な流れが減少する。坑跡のピーク中のガス産出は、トラフの水産出に類似しており、同様な処理を適用してガスコーニング効果を制限することができる。
【0049】
実際の現場状況に示されているように、水平坑井は、貯留層の油貯留部分への適正な連結のために地下水面に近すぎるトラフを有する場合がある。上述の技術(例えば、図11に示されている技術)を水平坑井のトラフに局所的に適用して局所水コーニング効果を抑制することが有益な場合がある。
【0050】
本発明の別の実施形態では、小径側孔を上方に掘削して油貯留地層の高いゾーンからの排出を保証する。
【0051】
また、掘削上の問題を解決するために本発明の技術を用いることができる。
これら問題としては以下のことが挙げられる。
−掘削流体の高い(全)損失(循環損失の場合を含む)。これは、透過性が高く又は破損度が高い層を含む圧力の低い地層に起因している場合が多い。
−圧力の高い地層からの坑井ボア流れ込み。幾つかの場合、泥水密度を増大させて他の地層を破壊することなく、高圧ゾーンに関して適正な圧力平衡状態に到達することは困難な場合がある。
−不適切な機械的性質を備えた地層の割れ。岩石は、「引張」荷重下で破損する場合があり(フラクチャリングと通称されている)、1つの通常の処理は、泥水密度を減少させることであるが、これにより、坑井ボアフープ応力が高すぎるので(これは、水平坑井においては通例である)坑井ボアが潰れるという問題が生じる場合があり、もう1つの通常の処理は、泥水密度を増大させることであるが、この場合も又、泥水密度調節は、他の地層による制約のために制限される場合がある。
【0052】
正しい泥水密度を見出して潜在的な掘削上の問題を全て解決し、安全且つ効果的な掘削の続行を可能にすることは困難な場合が多い。最終的な解決策は、ケーシングストリングを設置して問題の地層を隔離することである場合が多い。しかしながら、ケーシングは、高価であり、連続したケーシングストリングの伸縮効果により、貯留層の前での正確な坑井ボアサイズを提供することが困難である。最悪の場合、坑井は、ドレンの直径が小さすぎて産出性があまりにも低いので放棄されなければならない場合がある。
【0053】
本発明は、種々の仕方で重大な地層における問題の解決を可能にする。本発明の一実施形態では、多数の小径側孔120を主坑井ボア122から僅かな距離のところで掘削する(図12及び図13参照)。この用途では、側孔120を主坑井122からほんの僅か(例えば、5°)ずらす。しかしながら、幾つかの側孔を互いに異なる方位角で同一深さに掘削する。螺旋側孔(例えば、図4を参照して上述した螺旋側孔)によっても、同一の結果を達成することができる。小径側孔120は、産出物を地層124中に注入し、未処理の地層126の地層強度と比較して地層強度を密封し又は改質するために用いられている。かくして、問題の地層126は、通常の地層128から隔離可能であり、それにより、それ以上の掘削の続行が可能になる。
【0054】
種々の流体を地層中に注入する(絞り出す)のが良く、かかる流体の例示は次の通りである。
−細孔を塞ぎ、岩石強度を増大させる細かいセメントスラリー(例えば、シュルムバーガー(Schlumberger)のSqueezeCrete)、
−岩石細孔中を流れ、次に凝固する(他方、流れを遮断すると共に岩石強度を増大させる)ポリマー、及び、
−細孔を流れから遮断し、次に適正なトリガ機構(時間を含む)後に壊れるゲル(この方式は、初期多孔性及び透過性が掘削完了後に回復されることが必要な場合に興味を引く場合がある)。
【0055】
これら処理は、典型的には、重要な地層を掘削するやいなや行われる。
【0056】
本発明の範囲内における他の変更は、明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑井を構築する方法であって、
−1つ又は2つ以上の地下地層を通って地表から延びる主ボーリング孔を掘削するステップと、
−前記主ボーリング孔から周りの地層中に延びる複数本の側方ボーリング孔を掘削するステップとを有し、
−前記側方ボーリング孔は、前記主ボーリング孔よりも実質的に短く且つ小径であり、
−各側方ボーリング孔は、比較的短い距離だけその隣りの側方ボーリング孔から分離されている、方法。
【請求項2】
前記主ボーリング孔から5〜60メートルにわたって延びるよう前記側方ボーリング孔を掘削するステップを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
3.8〜10cmの直径を有するよう前記側方ボーリング孔を掘削するステップを有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
2つ以上の側方ボーリング孔を前記主ボーリング孔に数メートル未満の軸方向間隔で掘削するステップを有する、請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
2つ以上の側方ボーリング孔を前記主ボーリング孔に同一深さに掘削するステップを有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記側方ボーリング孔を前記主ボーリング孔から10°未満だけ逸れた坑跡をもつように掘削するステップを有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記側方ボーリング孔を前記主ボーリング孔を含まない平面内に延びる坑跡をもつよう掘削するステップを有する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記側方ボーリング孔を前記主ボーリング孔周りにS字形となるように又は螺旋を描くように掘削するステップを有する、請求項1乃至7のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記側方ボーリング孔を、前記主ボーリング孔の周りの改質された地層特性の領域を通って実質的にバルク地層特性を備えた領域中に延びるよう掘削するステップを有する、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
掘削後に前記側方ボーリング孔にゲル化流体を充填して前記主ボーリング孔からの流体による前記側方ボーリング孔の汚染を阻止するステップを更に有する、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記側方ボーリング孔中の流体のゲルを破壊して前記側方ボーリング孔の内部へのアクセスを可能にするステップを更に有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
実質的に、前記側方ボーリング孔の全体に砂利を充填するステップを有する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記主ボーリング孔の近くに位置する前記側方ボーリング孔の領域の砂利を安定化させて砂利が前記主ボーリング孔中に入るのを阻止するステップを更に有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
各側方ボーリング孔を掘削した直後であって別の側方ボーリング孔を掘削する前に、各側方ボーリング孔にゲル化流体又は砂利を充填するステップを有する、請求項10乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記側方ボーリング孔の全ての掘削に続き、前記側方ボーリング孔の全てに次々にゲル化流体又は砂利を充填するステップを有する、請求項10乃至13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記主ボーリング孔を前記側方ボーリング孔が延びる起点の領域について砂利パック及びスクリーン、膨張可能なスクリーン、スロット付きライナ、又はセメント塗りケーシングによって仕上げるステップを更に有する、請求項1乃至15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記側方ボーリング孔を通して地層処理流体を圧送して前記坑井の近くの地層特性を改質するステップを更に有する、請求項1乃至16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
処理流体を前記地層中に圧送してその透過性を改質して前記坑井中への水又はガスの流れを制限するステップを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
処理流体を前記地層中に圧送して掘削プロセス中、その機械的性質を安定化させるステップを有する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
水平の主坑井から掘削された1組の小径側孔を設け、例えば、地層処理流体を前記側孔の端部分から前記地層中に注入して、前記水平主坑井に向かう水又はガスのコーニングを止める「広がったバリヤ」を形成する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
主坑井と貯留層の接触状態を多くの小さな側方坑井としてのインターフェイスにより改善する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2010−537089(P2010−537089A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521806(P2010−521806)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際出願番号】PCT/RU2007/000455
【国際公開番号】WO2009/025574
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(500177204)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】Schlnmberger Holdings Limited