説明

小火器用可調照準装置

【課題】小火器例えばショットガン用の照準器レールの可調性が高い可調照準装置を提供する。
【解決手段】小火器の銃身1又は銃身群上に固定可能なレール躯体3上に、その位置を調整できるよう照準器レール4を配置する。照準器レール4上に照準器8を配置する。可調性を向上させるため、レール躯体3に対する照準器レール4の上下位置を、調整要素13によりその両端で調整可能とする。この照準装置を銃身1上に固定することによって、小火器を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の通り、ショットガン等の小火器用の可調照準装置に関する。本発明は、また、当該照準装置を備える小火器に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツショットガン射撃、特にアメリカントラップには様々なスポーツディシプリンがあり、弾着点や標的像が異なっているため銃に求められる条件も異なっている。例えばアメリカンシングルトラップでは、ピジョンバンカー(標的放出器)と射撃選手の立ち位置の間の距離が難度に応じて変わるので、射撃選手はそれに対処する必要がある。そのため射撃選手は可調性のある照準器レールを求めているが、既存の可調型照準装置の可調性には制限乃至限界があり、通常は一次元的な調整しかできなかった。
【0003】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10 2004 026 439号
【特許文献2】ドイツ特許第1 156 002号
【特許文献3】ドイツ特許第38 32 684号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、明細書冒頭で言及したタイプの可調照準装置及びそれを備える小火器、特にその可調性が従来より高いものを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1記載の特徴を有する可調照準装置及び請求項16記載の特徴を有する小火器によって達成される。各請求項の主題となっているのは、本発明による適切な対策及び有益な改良点である。
【0006】
本発明に係る照準装置によれば、レール躯体に対する照準器レールの上下位置を調整要素によってレール躯体の両端で調整できる。即ち、照準器レールの上下位置を銃口部でも後部でも調整できる。従って、照準器レールに曲げ応力を発生させることなく、照準器レールの平行調整及び角度調整双方を行える。また、本発明に係る照準装置にはその照準器レールを簡便に交換できるという利点もある。即ち、本発明に係る照準装置では照準器レールを簡便に装着できまた必要に応じ迅速且つ簡便に交換できる。更に、本発明に係る照準装置では銃身の自由度がかなり高いので、温度変化による銃身の膨張量がレール躯体のそれと大きく異なっていてもかまわない。
【0007】
特に、レール躯体に対する照準器レールの位置を無段階的に調整できる実施形態においては、好適にもかなり正確に調整できる。
【0008】
また、照準器レール側に配置した複数本の調整用ボルトと、これに対応してレール躯体側に配置した複数個の調整用ナットとにより、関節をなすよう調整要素を形成した実施形態では、操作が簡便になる。調整用ナットの表面に竜頭状のギザギザを付けておけば、好ましくも、単純なやり方で手動調整できる。
【0009】
或いは、その高さを調整できる中間位置要素上に例えば回動可能に照準器レールを配置する実施形態では、より多数の手段で照準器レールをレール躯体に支持できる。これに伴って案内手段が増えるが、それにもかかわらず、照準器レールの平行調整及び角度調整は双方共歪み無しで行える。
【0010】
レール躯体と照準器レールの間に複数個の加圧バネを挟み込むことにより、好適にも、照準器レールの遊動をなくせる。
【0011】
また、レール躯体を銃身上で可動案内し且つ一端のみで銃身に堅密連結する構成とするのが望ましい。そのような構成では、熱によって銃身が膨張してもレール躯体に歪みや変形は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて説明する。本発明にはまだ説明していない新規な構成要素及び利点があるが、それらについても以下の説明から演繹することができよう。
【0013】
図1に、ショットガンの銃身1及びその係止要素2と、そのレール躯体3が銃身1に締結されまたその照準器レール4がレール躯体3上に可調配置された照準装置とを示す。
【0014】
照準器レール4は、図2に取り出して示してあるように銃身1のほぼ全長に亘って延設されており、その両端には調整用ボルト6が付設されている。各調整用ボルト6は横断ピン5を中心に回転しうるよう支持されており、また各調整用ボルト6のネジ山付の軸7は下向きに突出している。これら2本の調整用ボルト6の頭部は横から見ると平坦であるので、照準器レール4における案内性は良い。照準器8はこの照準器レール4の前部上側に固定されている。照準器レール4上の中間位置から下向き突出している中間位置要素9は、横断ピン10を中心に回転しうるよう、照準器レール4によって支持されている。
【0015】
図3に、照準器レール4を保持可能で且つ銃身1上に装着可能なレール躯体3を示す。このレール躯体3は銃身1及び係止要素2の全長に亘って延設されており、その前端及び後部には、調整用ボルト6を保持するための刳り孔(ボアホール)11と、図1に示すように調整用ナット13が入る横断長孔12とが、つながって形成されている。刳り孔11と刳り孔11の中間位置に図中貫通長孔として形成されている開口14は中間位置要素9を保持するための開口である。中間位置要素9の形状は開口14に入る形状でありその断面は丸端フェザーキー状である。中間位置要素9の進入経路の片側には図示の如く長孔15が設けられており、その周辺には図示しないがカウンタネジが入る貫通孔がある。中間位置要素9には図1に示すようにネジ山付の横刳り孔16が設けられており、貫通孔に通されたカウンタネジは更にこの横刳り孔16に螺入される。また、レール躯体3の上面には、刳り孔11と隣り合うよう且つ上向きに、加圧バネ19を保持するための盲孔18を有する2本のペグ17が突設されており、下面には、T字溝22及び23を有する2個のストップ20及び21が下向きに且つ間隔をおいて突設されている。この図では、一方のストップ20がレール躯体3の前端に配置されており、他方のストップ21が中間位置開口14の近傍に配置されている。また、この図に示すように、レール躯体3の後部端面には、レール躯体3を係止要素2に締結できるようネジ山付の端部刳り孔24が設けられている。
【0016】
図1から読み取れるように、ネジ山付の軸7を有する2本の調整用ボルト6は、それぞれ、長孔12内に配置されている2個の調整用ナット13のうち対応するものに螺入されている。各調整用ナット13の表面には竜頭状のギザギザがついており、その一部がレール躯体3から横方向にはみ出している。図6から読み取れるように、照準器レール4の不要調整を防ぐため、調整用ナット13は、ラジアル方向にネジが形成され且つロッキングネジ26が付設された刳り孔25を有している。調整用ナット13は、更に、図示しないがその下側に配置されているカップバネによって長孔12内で軸方向に付勢されている。また、2本あるペグ17(図6ではそのうち1個を示す)に設けられている盲孔18内には、レール躯体3から見て上方へと照準器レール4を付勢する加圧バネ19が配置され、照準器レール4が遊動しないようにしている。
【0017】
照準器レール4を調整する際には、まず、ネジ山付の刳り孔16内に差し込まれているカウンタネジを緩めればよい。そうすれば、レール躯体3に対する照準器レール4の位置を変えられる状態になる。更に2個の調整用ナット13を回すことで、銃口又は係止要素2の近傍で照準器レール4の上下位置を調整できる。即ち、照準器レール4に曲げ応力を発生させることなく且つ無段階的に平行調整及び角度調整双方を行える。この調整は、照準器レール4、レール躯体3又はその双方に位置を示すマーキング乃至スケール27が付されているのでやりやすい。また、図1から読み取れるように、レール躯体3の左右側面には前部軸カバー28が固定されている。
【0018】
また、照準装置を取り付けられるようにするため、図4に詳細に示すように、レール躯体3から下向きに突出しているストップ20及び21を保持できる2個のベース29及び30が、銃身1の上面に互いに間隔をおいて設けられている。これに関連して、図5から読み取れるように、各ベース29及び30の輪郭は、ストップ20及び21に設けられているT字溝22及び23に嵌められるT字状の形状になっている。従って、レール躯体3を銃身1に乗せて前方から押し、係止要素2から上向きに突出しているストップ32にレール躯体3の裏側31がぶつかったら(図6)保持ネジ33をネジ山付の刳り孔24内に螺入させることにより、係止要素2上にレール躯体3を固定することができる。2個のベース29及び30は、溶接その他の手法によって銃身1上に固定すればよい。
【0019】
また、図示実施形態に係る銃身1は、上下二連式ショットガンのレシーバ用の交互銃身として構成されているが、その銃身係止要素2上にあるのは上部銃身ではなく照準装置である。レール躯体3を係止要素2上に固定するための保持ネジ33は、図6によれば上部撃針の高さに配置されており、またその中間位置貫通孔34に設けられているストップピン36は、図示しない二連銃身ショットガン用上部撃針に代わり、バネ35によって後方に作動する。これにより、上部撃針がストライクしたときクッションとなり上部撃針を保護する撃針緩衝器が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る照準装置を備えたショットガンの銃身を示す部分切欠側面図である。
【図2】図1に示した照準装置用の照準器レールを示す部分切欠側面図である。
【図3】図1に示した照準装置用のレール躯体を示す部分切欠側面図である。
【図4】銃身係止要素を備えたショットガンの銃身を示す側面図である。
【図5】図4中のA−A線に沿った断面図である。
【図6】銃身係止要素を備えた銃身の後部を示す拡大部分切欠側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小火器の銃身(1)又は銃身群に締結可能なレール躯体(3)と、レール躯体(3)上での位置を調整できるようレール躯体(3)上に配置される照準器レール(4)と、を備え、ショットガン等の小火器に用いられる可調型の照準装置であって、レール躯体(3)に対する照準器レール(4)の上下位置を二端で調整できるよう調整要素(6,13)を設けたことを特徴とする照準装置。
【請求項2】
請求項1記載の照準装置であって、レール躯体(3)に対する照準器レール(4)の位置を無段階的に調整できるようにしたことを特徴とする照準装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の照準装置であって、照準器レール(4)側に複数本の調整用ボルト(6)が、またこれに対応してレール躯体(3)側に複数個の調整用ナット(13)が配置され、関節をなすようそれらによって調整要素(6,13)が形成されたことを特徴とする照準装置。
【請求項4】
請求項3記載の照準装置であって、レール躯体(3)を横方向に貫通する長孔(12)内に調整用ナット(13)が配置されたことを特徴とする照準装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項記載の照準装置であって、その高さを調整できる中間位置要素(9)上に照準器レール(4)が回動可能に配置されたことを特徴とする照準装置。
【請求項6】
請求項5記載の照準装置であって、レール躯体(3)の上下位置を調整できるよう中間位置要素(9)がレール躯体(3)の開口(14)内に配置されたことを特徴とする照準装置。
【請求項7】
請求項5又は6記載の照準装置であって、横断ピン(10)を中心に照準器レール(4)を回転させうるよう中間位置要素(9)が照準器レール(4)により保持されたことを特徴とする照準装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか一項記載の照準装置であって、レール躯体(3)と照準器レール(4)の間に複数個の加圧バネ(19)が挟まれたことを特徴とする照準装置。
【請求項9】
請求項8記載の照準装置であって、レール躯体(3)の上面から上向きに突設されたペグ(17)の盲孔(18)内に加圧バネ(19)が配置されたことを特徴とする照準装置。
【請求項10】
請求項2乃至9の何れか一項記載の照準装置であって、横断ピン(5)を中心に回転させうるよう調整用ボルト(6)が照準器レール(4)側に配置されたことを特徴とする照準装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか一項記載の照準装置であって、銃身(1)上で可動案内されるようレール躯体(3)を設けその一端のみを銃身(1)に堅密連結させたことを特徴とする照準装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか一項記載の照準装置であって、レール躯体(3)から下向きに複数個のストップ(20,21)が突設され、そのストップ(20,21)に設けた案内溝(22,23)によって、銃身(1)又は銃身群の上側にあるベース(29,30)にストップ(20,21)が連結されたことを特徴とする照準装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか一項記載の照準装置であって、保持ネジ(33)によってレール躯体(3)が銃身(1)の係止要素(2)に締結されたことを特徴とする照準装置。
【請求項14】
請求項13記載の照準装置であって、撃針緩衝器(35,36)が保持ネジ(33)に一体化されたことを特徴とする照準装置。
【請求項15】
請求項14記載の照準装置であって、撃針緩衝器(35,36)がストップピン(36)を有し、ストップピン(36)が保持ネジ(33)の中間位置貫通孔(34)内で可動案内され且つ加圧バネ(35)によって後方に向け作動することを特徴とする照準装置。
【請求項16】
銃身(1)と、銃身(1)上に固定された照準装置と、を備える小火器であって、照準装置が請求項1乃至15のうち何れか一項に記載の照準装置であることを特徴とする小火器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−240142(P2007−240142A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53689(P2007−53689)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(503280444)エス.アー.テー.スイス アームス テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト (3)
【Fターム(参考)】