説明

小粒子低比重リポ蛋白の定量法

迅速かつ簡便な小粒子LDLの分別測定法の提供。 被検試料中の小粒子低比重リポ蛋白をそれ以外の低比重リポ蛋白と分離する第1工程と、分離した小粒子低比重リポ蛋白中のコレステロールまたは中性脂肪または蛋白質を測定する第2工程から成る、被検試料中の小粒子低比重リポ蛋白の定量方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は動脈硬化症の臨床診断に重要な小粒子低比重リポ蛋白の分別定量法に関する。
【背景技術】
低密度リポ蛋白(LDL)は血液中におけるコレステロール運搬の主役であり、動脈硬化性疾患の危険因子であるが、LDLの中でも特に粒子サイズが小さく平均的なLDLより高比重な、小粒子低比重リポ蛋白(以下、「小粒子LDL」という)は動脈硬化惹起性が通常のLDLより数倍高くなることが知られている。小粒子LDLの増加は動脈硬化性疾患の主要な危険因子の1つであり、分別測定することは臨床上極めて重要である。
従来の小粒子LDL測定法は、超遠心法、電気泳動法、高速液体クロマトグラフィーを用いる方法などがある。超遠心法は比重の差を利用して小粒子LDLを分離し、そのコレステロール量や蛋白量を定量する方法であり、小粒子LDLは比重1.040〜1.063に分画される(Atherosclerosis,48 p.33−49,1993:Atherosclerosis,106,p.241−253,1994等)。しかしながら、この方法は高価な設備を必要とし、測定に非常に時間を要する。電気泳動法はポリアクリルアミドゲルを用いてLDLの移動度や粒子直径を測る方法で、小粒子LDLは粒子サイズ25.5nm以下(JAMA,260,p.1917−21,1988等)または、LDLの相対移動度(VLDLからLDLまでの移動距離をVLDLからHDLまでの移動距離で除したもの)が0.4以上である(動脈硬化,25,p.67−70,1997)。しかしながら、これらの方法はLDLの小粒子化の程度を測定する方法であって定量法ではない。また、一度に測定する検体数が限られており、測定に時間がかかる。最近、アガロース電気泳動において泳動後のゲルを脂質染色し、その染色パターンをコンピューター解析しリポ蛋白を定量する方法(特開2000−356641号公報)が発明されたが、これは酸化LDL、アセチルLDL、糖化LDL、MDA−LDLなどの変性LDLを分析する方法であり、小粒子LDLは正確に測定することができない。また解析に非常に高価な装置を必要とすることから一般的でない。
従来、HDL測定においてHDL以外のリポ蛋白を凝集させHDLを分離させるための分離剤として、ポリアニオンと2価の陽イオンを組み合わせて用いることが知られていた。例えば、デキストラン硫酸−Mg2+を用いる方法(Clin.Chem.,28,p.1379−88,1982等)、ヘパリン−Mn2+を用いる方法(J Lipid Res..19,p.65−76,1978等)、ヘパリン−Ca2+を用いる方法(Arch.Biochem.Biophys.,170,p.334−40,1975等)、リンタングステン酸−Mg2+を用いる方法(Clin.Chem.,23,p.882−84,1977等)などがある。また、複数の分離剤を使用してリポ蛋白を段階的に沈殿させ、計算によりLDLやVLDLの分画を測定する方法がすでに報告されている(特開平7−294532号公報、臨床病理 臨時増刊特集第21号,82,1975等)。さらに、ポリエチレングリコールを用いてHDLを分離する方法も報告されている(Ann.Clin.Biochem.18 p.177−81 1981)。
さらに、従来、複数の分離剤を使用してリポ蛋白を段階的に沈殿させ、濁度の差により各リポ蛋白を測定する方法(臨床病理 臨時増刊特集第21号,82,1975等)、イオン強度の差により小粒子LDLを混濁または溶解させ吸光度の差により小粒子LDLを測定する方法(特開2003−28882号公報)などがあった。しかし、吸光度を測定しているため、特異性や精度が不十分であった。
特許文献1 特開2000−356641号公報
特許文献2 特開平7−294532号公報
特許文献3 特開2003−28882号公報
非特許文献1 Atherosclerosis,48,p.33−49,1993
非特許文献2 Atherosclerosis,106,p.241−253,1994
非特許文献3 JAMA,260,p.1917−21,1988
非特許文献4 動脈硬化,25,p.67−70,1997
非特許文献5 Clin.Chem.,28,p.1379−88,1982
非特許文献6 J Lipid Res..19,p.65−76,1978
非特許文献7 Arch.Biochem.Biophys.,170,p.334−40,1975
非特許文献8 Clin.Chem.,23,p.882−84,1977
非特許文献9 臨床病理 臨時増刊特集第21号,82,1975
非特許文献10 Ann.Clin.Biochem.18 p.177−81 1981
【発明の開示】
本発明の目的は、迅速かつ簡便な小粒子LDLの分別測定法を提供することである。
上記のように、ポリアニオン、2価の陽イオン等を分離剤として用いてリポ蛋白中のHDL以外のリポ蛋白を凝集させるために用いることは報告されていた。しかし、リポ蛋白の代表的な分画であるVLDL、LDLおよびHDLはそれぞれ物性が異なるので分離剤により分離することができるが、LDLを同様の方法で亜分画に分離することは試みられていなかった。
本発明者等は小粒子LDLを分離する方法について鋭意検討を行い、被検体試料にポリアニオンおよび2価の陽イオンを適当な濃度で作用させることにより、小粒子LDLとそれ以外のLDLが分離されることを見いだした。さらに1価の陽イオンを追加して作用させた場合に、1価の陽イオンはイオン強度調整剤として作用し、より良好な小粒子LDLの分離を達成することができた。また、ポリアニオンと2価の陽イオンおよび1価の陽イオンの代わりにPEGを用いても同様の効果を得ることができた。
本発明者等は、ポリアニオンと2価の陽イオンおよび1価の陽イオンを組み合わせた場合、またはPEGを用いた場合のそれぞれの濃度について詳細な検討を行い、これら濃度範囲を規定することで、LDL粒子の中でも小粒子LDL以外のLDLを凝集させ小粒子LDLを分離する条件を見いだした。この反応により小粒子LDL以外のLDLは凝集物を形成し、遠心分離やフィルター処理により反応液中から取り除くことができる。さらに分離後の反応液にLDLコレステロール測定用試薬またはLDL中中性脂肪測定用試薬または抗ヒトアポ蛋白B抗体を作用させることにより、小粒子LDL中のコレステロールまたは中性脂肪または蛋白質を定量することが可能となり、本発明を完成するに至った。
上述のイオン強度の差により小粒子LDLを混濁または溶解させ吸光度の差により小粒子LDLを測定する方法(特開2003−28882号公報)と比べて、本発明では分離後の小粒子LDLをコレステロール、中性脂肪、蛋白質の形で測定するため特異性や精度において優れている。
すなわち、本発明は以下の方法およびキットを提供する。
(1) 被検試料中の小粒子低比重リポ蛋白をそれ以外の低比重リポ蛋白と分離する第1工程と、分離した小粒子低比重リポ蛋白中のコレステロール、中性脂肪または蛋白質を測定する第2工程から成る、被検試料中の小粒子低比重リポ蛋白の定量方法、
(2) 前記第1工程において小粒子低比重リポ蛋白とそれ以外の低比重リポ蛋白の分離にポリアニオンおよび2価の陽イオンを用いることを特徴とする(1)の方法、
(3) 前記第1工程において小粒子低比重リポ蛋白とそれ以外の低比重リポ蛋白の分離に、さらに1価の陽イオンを用いることを特徴とする(1)または(2)の方法、
(4) 前記第1工程で使用されるポリアニオンがヘパリン、リンタングステン酸およびデキストラン硫酸からなる群から選択されるポリアニオンであることを特徴とする(2)または(3)の方法、
(5) 前記第1工程で使用される2価の陽イオンがMn2+、Mg2+およびCa2+からなる群から選択される2価の陽イオンであることを特徴とする(2)から(4)のいずれかの方法、
(6) 前記第1工程で使用される1価の陽イオンがNa、KおよびLiからなる群から選択される1価の陽イオンであることを特徴とする(3)または(5)の方法、
(7) 被検体試料にポリアニオンを添加したときのポリアニオンの最終濃度が、ヘパリンの場合10〜250U/mL、デキストラン硫酸の場合0.02〜1.25%、リンタングステン酸の場合0.02〜1.25%である(4)から(6)のいずれかの方法、
(8) 被検体試料に2価の陽イオンを添加したときの2価の陽イオンの最終濃度が、Mn2+の場合2.5〜35mmol/L、Mg2+の場合2.5〜125mmol/L、Ca2+の場合1〜75mmol/Lである(5)から(7)のいずれかの方法、
(9) 被検体試料に1価の陽イオンを添加したときの1価の陽イオンの最終濃度が、0〜50mmol/Lである(6)から(8)のいずれかの方法、
(10) 前記第1工程において小粒子低比重リポ蛋白とそれ以外の低比重リポ蛋白の分離にPEGを用いることを特徴とする(1)の方法、
(11) 被検体試料にPEGを添加したときのPEGの最終濃度が、2〜5%である(10)の方法、
(12) 前記第2工程のコレステロール測定が、分画操作を要しない低比重リポ蛋白中コレステロールの定量試薬を用いることを特徴とする(1)から(11)のいずれかの方法、
(13) 前記第2工程の中性脂肪測定が、分画操作を要しない低比重リポ蛋白中中性脂肪定量試薬を用いることを特徴とする(1)から(11)のいずれかの方法、
(14)前記第2工程の蛋白測定が、抗ヒトアポ蛋白B抗体を用いることを特徴とする(1)から(11)のいずれかの方法、
(15) 被検体試料にポリアニオンおよび2価の陽イオンを添加し、小粒子低比重リポ蛋白以外の低比重リポ蛋白を沈殿させることを含む、被検体試料から小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法、
(16) 被検体試料に、さらに1価の陽イオンを添加し、小粒子低比重リポ蛋白以外の低比重リポ蛋白を沈殿させることを含む、(15)の方法、
(17) ポリアニオンがヘパリン、リンタングステン酸およびデキストラン硫酸からなる群から選択されるポリアニオンであることを特徴とする(15)または(16)の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法、
(18) 2価の陽イオンがMn2+、Mg2+およびCa2+からなる群から選択される2価の陽イオンであることを特徴とする(15)から(17)のいずれかの小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法、
(19) 1価の陽イオンがNa、KおよびLiからなる群から選択される1価の陽イオンであることを特徴とする(15)から(18)のいずれかに記載の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法、
(20)被検体試料にポリアニオンを添加したときのポリアニオンの最終濃度が、ヘパリンの場合10〜250U/mL、デキストラン硫酸の場合0.02〜1.25%、リンタングステン酸の場合0.02〜1.25%である(17)から(19)のいずれかの小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法、
(21) 被検体試料に2価の陽イオンを添加したときの2価の陽イオンの最終濃度が、はMn2+の場合2.5〜35mmol/L、Mg2+の場合2.5〜125mmol/L、Ca2+の場合1〜75mmol/Lである(18)から(20)のいずれかの小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法、
(22) 被検体試料に1価の陽イオンを添加したときの1価の陽イオンの最終濃度が、0〜50mmol/Lである(19)から(21)のいずれかの小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法、
(23) 被検体試料にPEGを添加し、小粒子低比重リポ蛋白以外の低比重リポ蛋白を沈殿させることを含む、被検体試料から小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法、
(24)被検体試料にPEGを添加したときのPEGの最終濃度が2〜5%である(23)の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法、
(25)ポリアニオンおよび2価の陽イオンを含む分離剤および低比重リポ蛋白測定試薬を含む、小粒子低比重リポ蛋白中のコレステロールまたは中性脂肪または蛋白質を測定することによる小粒子低比重リポ蛋白測定用キット、
(26) 分離剤が、さらに1価の陽イオンを含む(25)の小粒子低比重リポ蛋白測定用キット、
(27) PEGを含む分離剤および低比重リポ蛋白測定試薬を含む、小粒子低比重リポ蛋白中のコレステロールまたは中性脂肪または蛋白質を測定することによる小粒子低比重リポ蛋白測定用キット、
(28) ポリアニオンがヘパリン、リンタングステン酸およびデキストラン硫酸からなる群から選択されるポリアニオンであることを特徴とする(25)または(16)のキット、
(29) 2価の陽イオンがMn2+、Mg2+およびCa2+からなる群から選択される2価の陽イオンであり,1価の陽イオンがNa、KおよびLiからなる群から選択される1価の陽イオンであであることを特徴とする(26)または(28)のキット。
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2002−355119号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1工程の方法を示す図である。
図2は、実施例1における本発明の第一工程の効果を示す図である。
図3は、実施例2における本発明法による小粒子LDL中コレステロールの測定値と、超遠心法による小粒子LDL中コレステロールの測定値との相関性を示す図である。
図4は、実施例3における本発明法による小粒子LDL中アポBの測定値と、超遠心法による小粒子LDL中アポBの測定値との相関性を示す図である。
図5は、実施例4における本発明法による小粒子LDL中コレステロールの測定値と、超遠心法による小粒子LDL中コレステロールの測定値との相関性を示す図である。
図6は、実施例5における本発明法による小粒子LDL中コレステロールの測定値と、超遠心法による小粒子LDL中コレステロールの測定値との相関性を示す図である。
図7は、実施例6における本発明法による小粒子LDL中コレステロールの測定値と、超遠心法による小粒子LDL中コレステロールの測定値との相関性を示す図である。
図8は、実施例7における本発明法による小粒子LDL中コレステロールの測定値と、超遠心法による小粒子LDL中コレステロールの測定値との相関性を示す図である。
図9は、実施例8における本発明法による小粒子LDL中中性脂肪の測定値と、超遠心法による小粒子LDL中中性脂肪の測定値との相関性を示す図である。
図10は、実施例9における本発明法による小粒子LDL中コレステロールの測定値と、超遠心法による小粒子LDL中コレステロールの測定値との相関性を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の方法は、第1工程および第2工程からなる。第1工程では被検体試料にポリアニオンおよび2価の陽イオンからなる分離液、ポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンからなる分離液またはPEGを添加し、一定時間反応後VLDLおよび小粒子LDL以外のLDLを凝集させ、遠心分離やフィルターにより除去する。続く第2工程では小粒子LDL中のコレステロールや中性脂肪や蛋白質を定量する。第1工程では上記リポ蛋白除去後の溶液中に小粒子LDLの他HDLが残るが、LDLコレステロール測定試薬またはLDL中の中性脂肪測定試薬または抗ヒトアポB抗体を作用させることにより、小粒子LDLの成分のみを分別測定することができる。
上述のように、リポタンパク質は大きくVLDL、LDLおよびHDLの分画に分けられ、LDLはさらに小粒子LDLとそれ以外の亜分画に分けられる。小粒子LDLをSLDL(small LDL)、Small dense LDL、dense LDLと呼ぶこともあり、またそれ以外のLDLをLLDL(large LDL)、Light LDLと呼ぶこともある。これらの分画および亜分画は、粒子サイズまたは比重により区別できる。その粒子サイズの直径は、報告者により異なるがVLDLが30nm〜80nm(30nm〜75nm)で、LDLが22nm〜28nm(19nm〜30nm)、HDLが直径7〜10nmである。比重は、VLDLが1.006以下、LDLが1.019〜1.063、HDLが1.063〜1.21である。LDL粒子直径はグラジエントゲル電気泳動(GGE)(JAMA,260,p.1917−21,1988)、NMR(HANDBOOK OF LIPOPROTEIN TESTING 2nd Edition、Nader Rifai他編、p.609−623、AACC PRESS:TheFats of Life Summer 2002、LVDD 15 YEAR ANNIVERSARY ISSUE、Volume AVI No.3、p.15−16)により測定でき、比重は超遠心分離による分析(Atherosclerosis,106,p.241−253,1994:Atherosclerosis,83,p.59,1990)に基づいて決定できる。
本発明の方法で測定しようとする小粒子LDLは、一般的にはLDL画分のうち直径が約22.0〜約25.5nmの亜分画、比重1.040〜1.063の亜分画を指す。LDLを大きさにより亜分画に分けているのは、LDLのうち粒子径が小さいものが動脈硬化惹起性が高く、LDLの中でもより悪性度が高いので、LDLの中でも小さいものを分別測定する必要があったからである。LDL内で直径分布や比重分布は連続しており、比重がどの程度以上のものが特に悪性度が高いというように明確に区別できるものではない。従って、上記の比重1.040〜1.063という値も小粒子LDLの特性として確立したものではなく、広く用いられており確立した値といえるLDLの比重範囲1.019〜1.063を中央点で分けたものである。例えば、別の報告では1.044〜1.060に分画される(Atherosclerosis:106 241−253 1994)。小粒子LDLの比重をどの範囲にするかは、報告者により若干の違いがあるが、いずれもその範囲で分別した場合の小粒子LDLの存在が臨床的な悪性度と関連している。
本発明において、小粒子LDLという場合、LDLのうち比重が小さいものであって、臨床的に動脈硬化惹起性がそれ以外のLDLよりも大きいもの、好ましくはLDLの比重範囲のうち中央点より上の比重範囲に属するもの、さらに好ましくは比重1.040〜1.063の範囲に属するLDLをいう。
本発明の方法で用いる被検体試料は、血清または血漿、好ましくは血清である。第1工程において、適当な体積の被検体試料にポリアニオンおよび2価の陽イオン、またはポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンをポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンの最終濃度が特定の範囲内になるように添加する。小粒子LDLとそれ以外のLDLの分離はポリアニオンと2価の陽イオンの存在下で行うことができるが、さらに1価の陽イオンを存在させることにより1価の陽イオンがイオン強度調整剤として作用し、より良好な小粒子LDLおよびHDLを含む画分の分離を達成することができる。この際、特定の濃度のポリアニオンおよび2価の陽イオンからなる分離液、または特定の濃度のポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンからなる分離液をあらかじめ調製しておいて、これを添加してもよいし、特定の濃度のポリアニオンおよび2価の陽イオンおよび1価の陽イオンを別々に調整しておいて、それぞれを別々に添加してもよい。別々に添加する場合の被検体試料への添加順序は限定されない。ポリアニオンおよび2価の陽イオンからなる分離剤、またはポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンからなる分離液を用いる場合、分離液の溶媒として、精製水、生理食塩水および各種緩衝液を用いることができる。分離液のpHは3〜8が好ましい。
第1工程で用いるポリアニオンとしてはヘパリン、リンタングステン酸、デキストラン硫酸などを好適に用いることができる。被検体試料にポリアニオンおよび2価の陽イオン、またはポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンを添加した後のポリアニオンの最終濃度は濃度はヘパリンの場合10〜250U/mL、リンタングステン酸の場合0.02〜1.25%、デキストラン硫酸の場合0.02〜1.25%が好ましい。
第1工程で用いる2価金属イオンにはMn2+、Mg2+、Ca2+、Co2+を用いることができ、好適にはMn2+、Mg2+、Ca2+が用いられる。被検体試料にポリアニオンおよび2価の陽イオンを添加した後の2価の陽イオンの最終濃度は、ポリアニオンとしてヘパリンを用いた場合のMn2+濃度は7.5〜35mmol/L、Mg2+濃度は40〜125mmol/L、Ca2+濃度は50〜75mmol/Lが好ましく、リンタングステン酸を用いた場合のMn2+濃度は2.5〜7.5mmol/L、Mg2+濃度は2.5〜50mmol/L、Ca2+濃度は1〜30mmol/Lが好ましい。デキストラン硫酸を用いた場合のMn2+濃度は2.5〜10mmol/L、Mg2+濃度は7.5〜30mmol/L、Ca2+濃度は5〜20mmol/Lが好ましい。
また、さらに第1工程で1価の陽イオンを用いる場合、1価金属イオンにはNa、K、Liを好適に用いることができる。1価の陽イオンの最終濃度は、0〜50mmol/Lが望ましい。
例えば、被検体試料100μLにポリアニオンと2価の陽イオンを含む分離剤、またはポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンを含む分離剤100μLを添加する。この際の、分離剤中のポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンの濃度は被検体試料と分離剤を混合したときのポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンの濃度が上記最終濃度になるように調製しておけばよい。分離剤中のポリアニオンの濃度は、ヘパリンの場合20〜500U/mL、リンタングステン酸の場合0.04〜2.5%、デキストラン硫酸の場合0.04〜2.5%が好ましい。また、分離剤中の2価陽イオンの濃度は、ポリアニオンとしてヘパリンを用いた場合のMn2+濃度は15〜70mmol/L、Mg2+濃度は80〜250mmol/L、Ca2+濃度は100〜150mmol/Lが好ましく、リンタングステン酸を用いた場合のMn2+濃度は5〜15mmol/L、Mg2+濃度は5〜100mmol/L、Ca2+濃度は2〜60mmol/Lが好ましい。デキストラン硫酸を用いた場合のMn2+濃度は5〜20mmol/L、Mg2+濃度は15〜60mmol/L、Ca2+濃度は10〜40mmol/Lが好ましい。1価の陽イオンの濃度は0〜100mmol/Lが好ましい。
被検体試料にポリアニオンおよび2価の陽イオン、またはポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンを添加した後、反応混液を攪拌し、第1工程の反応を行わせる。
第1工程での反応は2℃〜45℃の温度で行うことが好ましく、20℃〜37℃で行うことがさらに好ましい。
第1工程での反応は1分〜30分間の時間で行うことが好ましく、5分〜15分間の時間で行うことがさらに好ましい。
なお、第1工程において被検体試料に添加するポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンの至適濃度はポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンの種類の組み合わせによっても変わり、また被検体試料のpH、イオン強度等の条件によっても変わってくる。従って、本発明の第1工程の反応を行う場合、常に同じ比重範囲のものが得られるとは限らず、特に上述の一般的に小粒子LDLの比重範囲とされている1.040〜1.063のものが得られるとは限らない。但し、上記濃度条件で第1工程の反応を行えば、ほぼ同等の比重を有するLDLが得られ、そのLDLは上記定義のLDLに含まれる。さらに、小粒子LDLの比重を1.040〜1.063に固定して考えた場合であって、本発明の第1工程により得られるLDLの比重がこの範囲から若干ずれたとしても、そのずれは大きくない。またLDL全体における比較的小粒子のLDLを含んでいることには変わりはないので、本発明の第1工程により得られる小粒子LDLの量は、ある被検体の動脈硬化を罹患するリスクを反映している。
第1工程の小粒子LDLおよびHDLを含む画分の分離は、ポリアニオンおよび2価の陽イオン、またはポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンの代わりにポリエチレングリコール(PEG)を被検体試料に添加することによっても行うことができる。この際に用いられるPEGの分子量は、4,000〜20,000が望ましく、PEGの最終濃度は4〜10%が望ましい。
第1工程の反応が終了した後、遠心分離を行い上清を得ることにより、小粒子LDLおよびHDLを含む画分を採取することができる。この際の遠心分離条件は、9,000g〜36,000gで1〜30分である。
また、第1工程の反応が終了した後、反応混液をフィルターにかけてもパススルーとして小粒子LDLおよびHDLを含む画分を採取することができる。フィルターは圧力を加えてろ過するタイプのものであっても、遠心操作によりろ過するタイプのものであってもよい。この際用いるフィルターの分画サイズは、0.10〜0.80μmであり、例えば、市販のマイレクス、ウルトラフリー(MILLIPORE社製),ミニザルト(Sartorius社製),DISMIC(ADVANTEC社製),HTタフリン・アクロディスク・シリンジフィルター(PALL Gelman Laboratory社製)等を用いることができる。
第1工程で得られた小粒子LDLおよびHDLを含む画分中のLDLのみを測定することにより、被検体試料中の小粒子LDLを定量することができる。
この際、LDLの測定は、LDL中のコレステロールを測定するか、LDL中の中性脂肪を測定するか、LDL中のアポBタンパク質を測定することにより行える。
第2工程で用いられる分画操作を要しないLDLコレステロール測定方法としていくつかの方法(特開平11−318496号公報、特開2002−202314号公報、特開平10−080300号公報、特開平09−313200号公報、特開平11−155595号公報、特許第3256241号公報)等があるが、これらを好適に用いることができる。
例えば、特開平11−318496号公報の記載に従って、以下のようにして第1工程で得られた小粒子LDLおよびHDLを含む画分中のLDLを定量することができる。第1工程で得られた小粒子LDLおよびHDLを含む画分を試料とし、LDL以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤の存在下でコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼを作用させ、生じた過酸化水素を消去することにより、試料中のLDL以外のリポタンパク質を消去し(ステップA)、次いで試料中の残存LDLを定量することができる(ステップB)。この際、LDL以外のリポタンパク質に作用する界面活性剤としては、HLB値が13以上15以下のポリアルキレンオキサイド誘導体が挙げられ、具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等でHLB値が13以上15以下の化合物がある。ステップAで用いられる上記界面活性剤の濃度は、0.1〜10g/L程度が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5.0g/L程度である。過酸化水素を消去する方法としては、カタラーゼを作用させて水と酸素に分解する方法、及びペルオキシダーゼを用いてフェノール系又はアニリン系水素供与体化合物と過酸化水素を反応させて無色キノンに転化する方法を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ステップAの反応液中のコレステロールエステラーゼ濃度は0.2〜1.0U/mL程度が好ましく、由来としてはシュードモナス属細菌から生成されるものが効果的である。また、コレステロールオキシダーゼの濃度は0.1〜0.7U/mL程度が好ましく、細菌や酵母由来のものを用いることが好ましい。さらに、カタラーゼの濃度は40〜100U/mL程度が好ましい。また、過酸化水素を無色キノンへ転化する場合のペルオキシダーゼの濃度は0.4〜1.0U/mLが好ましく、フェノール系又はアニリン系水素供与体化合物の濃度としては0.4〜0.8mmol/Lが好ましい。ステップBでは、被検試料中の残存コレステロールを定量する。これは、例えば、少なくともLDLに作用する界面活性剤を加え、第1工程で加えたコレステロールエステラーゼ及びコレステロールオキシダーゼの作用により生じた過酸化水素を定量することにより行なうことができる。この際LDLに作用する界面活性剤としてHLB値が11以上13未満のポリアルキレンオキサイド誘導体が挙げられ、具体例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等でHLB値が11以上13未満の化合物が挙げられる。ステップBのその他の好ましい反応条件は、第1工程における好ましい反応条件と同様である。
LDLを測定するための測定キットが市販されており、これらの市販の測定キットを利用して、LDLを測定してもよい。市販のキットとしては、例えばLDL−EX(N)(デンカ生研)がある。
第2工程で用いられる分画操作を要しないLDL中の中性脂肪測定方法としていくつかの方法(WO00/43537号公報)等があるが、これらを好適に用いることができる。
第2工程で用いられる抗ヒトアポB抗体を作用させる方法としていくつかの方法(特許第2638137号公報,特開平02−64458号公報)等があるが、これらを好適に用いることができる。
本発明には、小粒子LDLを含む画分を分離するための第1工程を行うための試薬および分離した小粒子LDLを測定するための試薬を含むキットも包含される。該キットは、例えば、上述のLDL測定試薬キットならびにポリアニオンおよび2価の陽イオン(またはポリアニオンと2価の陽イオンを含む分離剤)等を含む。該キットはさらに遠心分離用チューブ、小粒子LDL分離用フィルターを含んでいてもよい。また、該キットは、ポリアニオンおよび2価の陽イオンに加えて1価の陽イオンを含んでいてもよく、この場合ポリアニオン、2価の陽イオンおよび1価の陽イオンを含む分離剤としてこれらの物質を含んでいてもよい。さらに、該キットは、ポリアニオンおよび2価の陽イオンの代わりにポリエチレングリコールを含んでいてもよい。
以下、本発明を実施例に基づきさらに具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
電気泳動法により小粒子LDLを多く含むことが確認される検体及びそれ以外のLDLを多く含む検体を用いて第一工程の効果を求めた。血清50μLに60U/mLヘパリンナトリウム及び40mmol/L MnClからなる分離液50μLを添加し、25℃で15分間反応させた。その後18,500gで15分間遠心分離を行い、上清を回収し、市販のディスク型ポリアクリルアミドゲルリポフォーを用いて反応性を比較した。分離液と反応前の血清は等量の生理食塩水にて希釈した後泳動した。図1に本発明の第1工程の方法を示す図を、図2に結果を示す。図2は正常なLDLのみが選択的に取り除かれていることを示している。図2中、レーンNo.1は小粒子LDL以外のLDLを多く含む検体の反応前の泳動結果を、レーンNo.2は小粒子LDLを多く含む検体の反応前の泳動結果を、レーンNo.3は小粒子LDL以外のLDLを多く含む検体の反応後の泳動結果を、レーンNo.4は小粒子LDLを多く含む検体の反応後の泳動結果を示す。
【実施例2】
血清を試料とし、本発明法により小粒子LDLを測定し、その測定値を超遠心法によって得られる値と比較した。この結果を図3に示す。
すなわち、検体100μLに300U/mLヘパリンナトリウム及び150mmol/L MgClからなる分離液100μLを添加し、37℃で10分間反応させた。その後18,500gで15分間遠心分離を行い、上清を回収し、市販されているキットLDL−EX(N)(デンカ生研社製)を使用して日立7170型自動分析装置によって小粒子LDL中のコレステロールを測定した。超遠心法は血清と比重液を混合後、遠心を行い比重1.040〜1.063の分画を回収し、コレステロールを測定して小粒子LDL中コレステロール値とした。図3に示すように本発明法による結果は超遠心法による結果と良好な相関性を示した。
【実施例3】
血清からなる検体100μLに平均分子量5000の1.5%デキストラン硫酸ナトリウム及び40mmol/L MgClからなる分離液100μLを添加し、25℃で10分間反応させた。その後18,500gで15分間遠心分離を行い、上清を回収し、抗ヒトアポB抗体を用いた免疫比濁法(第一化学薬品 アポBオート・N「第一」を使用)によって小粒子LDL中のアポB量を測定した。超遠心法は血清と比重液を混合後、遠心を行い比重1.040〜1.063の分画を回収し、アポBを測定して小粒子LDL中アポB値とした。その結果を図4に示す。図4に示すように、実施例2と同様に本発明法による結果は超遠心法による結果と良好な相関性を示した。
【実施例4】
実施例2において、分離液を0.3%リンタングステン酸ナトリウム及び7.5mmol/L CaClとする以外は同様の試薬を用いて同様の操作を行い、本発明法による測定値と超遠心法によって得られる値と比較した。その結果を図5に示す。図5に示すように、実施例2と同様に本発明法による結果は超遠心法による結果と良好な相関性を示した。
【実施例5】
実施例2において、分離液を40U/mLヘパリンナトリウム及び30mmol/L MnClとする以外は同様の試薬を用いて同様の操作を行い、本発明法による測定値と超遠心法によって得られる値と比較した。その結果を図6に示す。図6に示すように、実施例2と同様に本発明法による結果は超遠心法による結果と良好な相関性を示した。
【実施例6】
実施例2において、分離液を500U/mLヘパリンナトリウム及び140mmol/L MgCl及び34mmol/L KClとする以外は同様の試薬を用いて同様の操作を行い、本発明法による測定値と超遠心法によって得られる値と比較した。その結果を図7に示す。図7に示すように、実施例2と同様に本発明法による結果は超遠心法による結果と良好な相関性を示した。
【実施例7】
実施例2において、分離液を8%PEG(分子量6,000)とする以外は同様の試薬を用いて同様の操作を行い、本発明法による測定値と超遠心法によって得られる値と比較した。その結果を図8に示す。図8に示すように、実施例2と同様に本発明法による結果は超遠心法による結果と良好な相関性を示した。
【実施例8】
血清からなる検体100μLに150U/mLヘパリンNa及び90mmol/L MgClからなる分離液100μLを添加し、37℃で10分間反応させた。その後18,500gで15分間遠心分離を行い、上清を回収し、LDL中中性脂肪測定試薬によって小粒子LDL中の中性脂肪を測定した。超遠心法は血清と比重液を混合後、遠心を行い比重1.040〜1.063の分画を回収し、中性脂肪を測定して小粒子LDL中中性脂肪値とした。その結果を図9に示す。図9に示すように、実施例2と同様に本発明法による結果は超遠心法による結果と良好な相関性を示した。
【実施例9】
血清からなる検体100μLに150U/mLヘパリンNa及び90mmol/L MgClからなる分離液100μLを添加し、37℃で10分間反応させた。その後遠心タイプのフィルター濾過(MILLIPORE社のUltrafree−MC(0.1μm Filter Unit)を使用)を用いて10,000gで1分間遠心分離を行い、ろ液を回収後、小粒子LDL中のコレステロールを測定し超遠心法によって得られる値と比較した。その結果を図10に示す。図10に示すように、実施例2と同様に本発明法による結果は超遠心法による結果と良好な相関性を示した。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用の可能性】
本発明によれば簡便な操作で小粒子LDLをそれ以外のLDLと分離することができ、小粒子LDL中のコレステロールまたは中性脂肪またはアポBを分別測定することができるため臨床上極めて有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料中の小粒子低比重リポ蛋白をそれ以外の低比重リポ蛋白と分離する第1工程と、分離した小粒子低比重リポ蛋白中のコレステロール、中性脂肪または蛋白質を測定する第2工程から成る、被検試料中の小粒子低比重リポ蛋白の定量方法。
【請求項2】
前記第1工程において小粒子低比重リポ蛋白とそれ以外の低比重リポ蛋白の分離にポリアニオンおよび2価の陽イオンを用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1工程において小粒子低比重リポ蛋白とそれ以外の低比重リポ蛋白の分離に、さらに1価の陽イオンを用いることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記第1工程で使用されるポリアニオンがヘパリン、リンタングステン酸およびデキストラン硫酸からなる群から選択されるポリアニオンであることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1工程で使用される2価の陽イオンがMn2+、Mg2+およびCa2+からなる群から選択される2価の陽イオンであることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1工程で使用される1価の陽イオンがNa、KおよびLiからなる群から選択される1価の陽イオンであることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
被検体試料にポリアニオンを添加したときのポリアニオンの最終濃度が、ヘパリンの場合10〜250U/mL、デキストラン硫酸の場合0.02〜1.25%、リンタングステン酸の場合0.02〜1.25%である請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
被検体試料に2価の陽イオンを添加したときの2価の陽イオンの最終濃度が、Mn2+の場合2.5〜35mmol/L、Mg2+の場合2.5〜125mmol/L、Ca2+の場合1〜75mmol/Lである請求項5から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
被検体試料に1価の陽イオンを添加したときの1価の陽イオンの最終濃度が、0〜50mmol/Lである請求項6から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1工程において小粒子低比重リポ蛋白とそれ以外の低比重リポ蛋白の分離にPEGを用いることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項11】
被検体試料にPEGを添加したときのPEGの最終濃度が、2〜5%である請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記第2工程のコレステロール測定が、分画操作を要しない低比重リポ蛋白中コレステロールの定量試薬を用いることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2工程の中性脂肪測定が、分画操作を要しない低比重リポ蛋白中中性脂肪の定量試薬を用いることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記第2工程の蛋白測定が、抗ヒトアポ蛋白B抗体を用いることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
被検体試料にポリアニオンおよび2価の陽イオンを添加し、小粒子低比重リポ蛋白以外の低比重リポ蛋白を沈殿させることを含む、被検体試料から小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法。
【請求項16】
被検体試料に、さらに1価の陽イオンを添加し、小粒子低比重リポ蛋白以外の低比重リポ蛋白を沈殿させることを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
ポリアニオンがヘパリン、リンタングステン酸およびデキストラン硫酸からなる群から選択されるポリアニオンであることを特徴とする請求項15または16に記載の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法。
【請求項18】
2価の陽イオンがMn2+、Mg2+およびCa2+からなる群から選択される2価の陽イオンであることを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法。
【請求項19】
1価の陽イオンがNa、KおよびLiからなる群から選択される1価の陽イオンであることを特徴とする請求項15から18のいずれか1項に記載の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法。
【請求項20】
被検体試料にポリアニオンを添加したときのポリアニオンの最終濃度が、ヘパリンの場合10〜250U/mL、デキストラン硫酸の場合0.02〜1.25%、リンタングステン酸の場合0.02〜1.25%である請求項17から19のいずれか1項に記載の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法。
【請求項21】
被検体試料に2価の陽イオンを添加したときの2価の陽イオンの最終濃度が、Mn2+の場合2.5〜35mmol/L、Mg2+の場合2.5〜125mmol/L、Ca2+の場合1〜75mmol/Lである請求項18から20のいずれか1項に記載の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法。
【請求項22】
被検体試料に1価の陽イオンを添加したときの1価の陽イオンの最終濃度が、0〜50mmol/Lである請求項19から21のいずれか1項に記載の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法。
【請求項23】
被検体試料にPEGを添加し、小粒子低比重リポ蛋白以外の低比重リポ蛋白を沈殿させることを含む、被検体試料から小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法。
【請求項24】
被検体試料にPEGを添加したときのPEGの最終濃度が2〜5%である請求項23記載の小粒子低比重リポ蛋白を分離する方法。
【請求項25】
ポリアニオンおよび2価の陽イオンを含む分離剤および低比重リポ蛋白測定試薬を含む、小粒子低比重リポ蛋白中のコレステロールまたは中性脂肪または蛋白質を測定することによる小粒子低比重リポ蛋白測定用キット。
【請求項26】
分離剤が、さらに1価の陽イオンを含む請求項25記載の小粒子低比重リポ蛋白測定用キット。
【請求項27】
PEGを含む分離剤および低比重リポ蛋白測定試薬を含む、小粒子低比重リポ蛋白中のコレステロールまたは中性脂肪または蛋白質を測定することによる小粒子低比重リポ蛋白測定用キット。
【請求項28】
ポリアニオンがヘパリン、リンタングステン酸およびデキストラン硫酸からなる群から選択されるポリアニオンであることを特徴とする請求項25または26記載のキット。
【請求項29】
2価の陽イオンがMn2+、Mg2+およびCa2+からなる群から選択される2価の陽イオンであり,1価の陽イオンがNa、KおよびLiからなる群から選択される1価の陽イオンであることを特徴とする請求項26または28に記載のキット。

【国際公開番号】WO2004/053500
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【発行日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558427(P2004−558427)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015633
【国際出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(591125371)デンカ生研株式会社 (72)
【Fターム(参考)】