説明

小豆を原料とした飲料の製造方法並びに当該製造方法によって製造される飲料。

【課題】小豆に含有されるポリフェノール、ミネラル成分を有効に抽出させると共に小豆本来の風味を備えた新規な飲料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】小豆を洗浄する洗浄工程と、25°Cに調整した硬度0の軟水中に15時間浸漬する浸漬工程と、当該浸漬工程により抽出した抽出液を減圧下0.070MPa、70°Cの沸騰状態を5時間維持した後、序々に常圧に戻しながら10時間自然冷却させて発色させる発色工程と、前記発色工程によって得られた発色液を130%希釈する希釈工程と、次に上記希釈工程によって得られた希釈液を加圧下0.150MPa、125°Cで40分間殺菌する殺菌工程と、続いて常圧に戻し自然冷却した希釈液を容器に充填する充填工程から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マメ科ササゲ属の植物である小豆を原料として、当該小豆に含有されるポリフェノール、ミネラル成分を有効に抽出させると共に小豆本来の風味を備えた新規な飲料の製造方法並びに当該製造方法によって製造される飲料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
古来より小豆は、赤飯や和菓子の餡に使用され、栄養豊富な有用食物として知られている。その成分は、炭水化物、蛋白質、食物繊維、鉄分、ビタミンB群、アントシアニンなどのポリフェノール、葉酸、サポニンなどとなっている。特に、ポリフェノールは、機能性成分として近年注目されている。ここで、一般的にポリフェノールは、ほとんどの植物に含まれている色素や渋み・苦味の成分のことで、約5000種類以上存在することが知られており、その特徴は強い抗酸化作用であり、生活習慣病や老化の原因と言われる活性酸素を除去する働きがある。ここで、小豆は他の植物に比べポリフェノールの含有量が多く、ポリフェノールを多く含有することで近年脚光を浴びている赤ワインと比べても、約1.5倍も多く含有することが判明した。また、小豆のポリフェノールは皮に多く含まれる色素のアントシアニン、タンニンの一種のD−カテキンなどであることも近年の分析によって明らかとなっている。更に、小豆はカリウムや鉄などのミネラル成分も多く含有する食物であり、カリウムを多く含有する食物として知られているバナナに比べても、バナナ100g中のカリウムが360mgであるのに対して、小豆においては約4倍もの1500mgという値を示している。ここで、カリウムは高血圧の原因とされる細胞内に溜まるナトリウムを尿中に追い出す作用があることが知られている。

【0003】
近年、上記小豆が有する有効成分を利用して健康飲料を開発することが行なわれている。具体的には、小豆に含まれるナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄、タンニン等のミネラル成分とポリフェノール成分を含有し、糖質、脂質、蛋白質などのエネルギー類の含有量が少ない健康飲料を提供しようとするものである(例えば、特開2002−171948)。
【0004】
ここで、上記特開2002−171948は、「小豆を原料とする健康飲料及びその製造方法」に関するものであり、その製造方法における要旨は「所望量の小豆を洗浄した後に、80〜100°Cの熱水による20〜60分間の加熱条件での煮出しにより小豆に含まれるミネラル成分とポリフェノール成分を抽出し、該抽出液を所定濃度に希釈して得られた調整液を120〜135°Cで加熱した後5〜40分間保持して、前記調整液を発色させると共に風味を生成し、次いで冷却した後に容器に充填して密封し、さらに15〜30°Cで3〜7日の条件で静置して、該容器内の調整液の発色をさらに深めると共に風味を安定させること。」との記載があった。また、健康飲料としては要旨は、「小豆から抽出したナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄、タンニン等のミネラル成分とポリフェノール成分を含有してなる小豆を原料とする健康飲料であって、上記ミネラル成分におけるカリウムの含有割合が10〜20mg/100ml、鉄の含有割合が0.01〜0.05mg/100ml、タンニンの含有割合が25〜35mg/100mlであること。」、更に別な要旨としては、「小豆から抽出したナトリウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム、鉄、タンニン等のミネラル成分とポリフェノール成分を含有してなる小豆を原料とする健康飲料であって、上記ミネラル成分におけるナトリウムの含有割合が0.5〜1mg/100ml、カルシウムの含有割合が1〜2mg/100ml、マグネシウムの含有割合が1〜2mg/100mlであること。」等の記載がある。
【特許文献1】特開2002−171948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景技術の項に記載のように、小豆は栄養豊富な有用食物として知られているが、その利用が本格的に進んでいるとは言い難いと思料されると共に、近年当該小豆に含有されるポリフェノールなどの機能性成分を抽出した健康飲料の提案(特開2002−171948)が成されているが、小豆に含有されているポリフェノール等の機能成分の有効な抽出と小豆本来の風味を抽出するまでには未だ至っていないと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
しかして、本発明は上記記載のような課題について鋭意研究を重ねた結果漸く到達したものであって、小豆に含有されるポリフェノール、ミネラル成分を有効に抽出させると共に小豆本来の風味を備えた新規な飲料及びその製造方法を提供することを目的とする。また、ここでの技術的な観点は、小豆の皮の部分に多く含有されているタンニンには抗酸化作用があり、体内の過酸化脂質の発生を抑制し発癌抑制力があるという機能成分であるが、熱湯によって分解するという性質がある。また、熱湯における抽出方法の場合、小豆に具備されている独特の風味を損なうと共に小豆に含有されている蛋白質、脂質等のエネルギー類が抽出されることになり、当該蛋白質、脂質等のエネルギー類を含まない飲料とするためには、製造工程としては抽出液に対するろ過が必要となる等の不具合が見受けられる。そこで、本発明においては小豆に含有される有効成分の抽出については、低温抽出による方法を採用するものとした。
【0007】
即ち、上記目的を達成するため、本発明は、所望量の小豆を洗浄する洗浄工程と、20〜30°Cに調整した硬度0の軟水中に14〜16時間浸漬する浸漬工程と、当該浸漬工程により抽出した抽出液を減圧下0.070〜0.075MPa、60〜70°Cの沸騰状態を5時間維持した後、序々に常圧に戻しながら5時間〜16時間自然冷却させて発色させる発色工程と、前記発色工程によって得られた発色液を所定濃度に希釈する希釈工程と、次に上記希釈工程によって得られた希釈液を加圧下0.147〜0.177MPa、120〜130°Cで30〜45分間殺菌する殺菌工程と、続いて常圧に戻し自然冷却した希釈液を容器に充填する充填工程から成る、製造方法であることを第一の要旨とする。
【0008】
更に、本発明は、所望量の小豆を洗浄する洗浄工程と、20〜30°Cに調整した硬度0の軟水中に14〜16時間浸漬する浸漬工程と、当該浸漬工程により抽出した抽出液を減圧下0.070〜0.075MPa、60〜70°Cの沸騰状態を5時間維持した後、序々に常圧に戻しながら5時間〜16時間自然冷却させて発色させる発色工程と、前記発色工程によって得られた発色液を所定濃度に希釈する希釈工程と、次に上記希釈工程によって得られた希釈液を加圧下0.147〜0.177MPa、120〜130°Cで30〜45分間殺菌する殺菌工程と、続いて常圧に戻し自然冷却した希釈液を容器に充填する充填工程から成る製造方法によって製造された飲料であることを第二の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る製造方法によれば、小豆に含有されるポリフェノール、ミネラル成分の抽出方法として、20〜30°Cに調整した硬度0の軟水中に14〜16時間浸漬する方法を採用したので、当初からその抽出液には蛋白質、脂質等のエネルギー類が含まれていないため、背景技術に例示の特開2002−171948のように、抽出工程の後段にろ過工程を設ける必要がなく、健康飲料として必要なポリフェノール、ミネラル成分のみを抽出できるという効果がある。
【0010】
本発明に係る飲料によれば、小豆に含有されるポリフェノール、ミネラル成分の抽出方法として、20〜30°Cに調整した硬度0の軟水中に14〜16時間浸漬する方法を採用したので、ミネラル成分中のタンニンの抽出量及びポリフェノールの抽出量が高い飲料が得られると共に、小豆に具備されている独特の風味を損なうことなく飲料に添加できるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0012】
先ず、図1は本発明に係る小豆を原料とした飲料の製造方法に関する工程図を示したものである。当該工程図に従い本発明に係る小豆を原料とした飲料の製造方法について説明するものとする。第一に、主原料となる小豆については、北海道産の小豆を使用したが、その他の産地のものであっても差し支えない。図1における洗浄工程では、小豆について付着しているホコリ等を清水によって洗い除去する目的で成される。次に、浸漬工程においては、洗浄して得られた小豆を浸漬容器に移し、軟水生成機によって硬度0に調整された軟水を上記浸漬容器に張り、水温を20〜30°Cに維持して、14〜16時間浸漬する。更に、発色工程では浸漬容器から小豆の抽出液のみを真空釜に投入し、減圧下0.070〜0.075MPa、60〜70°Cの沸騰状態を5時間維持した後、序々に常圧に戻しながら5時間〜16時間自然冷却させる。これによって、抽出液は濃い小豆色に変色した。更にまた、希釈工程では、上記濃い小豆色に変色した抽出液原液を上記軟水によって130%に割り水して、希釈液を得る。この際の希釈液は適度な小豆色を呈したものとなった。続いて、殺菌工程では、上記希釈工程によって得られた希釈液を加圧釜に投入し、加圧下0.147〜0.177MPa、120〜130°Cで30〜45分間殺菌する。続いてまた、充填工程では、上記殺菌工程における加圧釜の加圧を徐々に解除して常圧に戻すと共に上記希釈液の自然冷却を行なう。また、当該充填工程においてはペットボトル容器への充填や缶容器への充填などが一般的であるが、ベットボトル容器への充填の場合には、当該ペットボトル容器が熱変形を起こさないように、希釈液の温度が85°C以下に冷却された状態で充填を実施する。
【0013】
次に、本発明に係る小豆を原料とした飲料の製造方法によって製造される飲料は、上記図1に基づき製造された飲料であるから、実施するための最良の形態についての説明の詳細は省略するが、本発明に係る小豆を原料とした飲料の製造方法によって製造される飲料においては、小豆が含有する有効諸成分の抽出手段として、20〜30°Cに調整した硬度0の軟水中に14〜16時間浸漬する浸漬工程によって抽出する抽出液を使用しているので、脂質、蛋白質、繊維質等の不要成分が当初の段階から含有されていないため、当該抽出液を濾過する必要がない。また、上記の抽出方法を採用することによって、体内の過酸化脂質の発生を抑制し発癌抑制力があるという機能成分と共に熱湯によって分解するというタンニンの抽出量を増加することができる。更に、詳細な理由については不明であるが、硬度0の軟水によって小豆が含有する有効諸成分の抽出を行なった結果、上記のようにタンニン成分量が多量にも拘らず、甘み、苦味、小豆本来の風味のバランスが取れた飲料を得ることができる。
【実施例1】
【0014】
更に、実施例に基づき本発明について詳説するものとする。そこで、本発明に係る小豆を原料とした飲料の製造方法について例示すれば、図1における洗浄工程では、北海道産の小豆60kgに対して当該小豆に付着している塵やホコリを除去するために清水によって充分洗浄した。次に、浸漬工程においては、上記洗浄した小豆60kgを煮釜に移すと共に軟水生成機によって硬度0に調整した軟水を煮釜に張り水温25°Cに設定し15時間浸漬して小豆の抽出液を得た。ここでの抽出液は透明な黄色であった。
【0015】
続いて、発色工程において、上記抽出液を真空釜に投入し、減圧下0.070MPa、70°Cで5時間沸騰状態を維持した後、序々に常圧に戻しながら10時間自然冷却し、上記抽出液の発色を促した。これによって得られた抽出液は、濃い小豆色に変色し液量は145lであった。続いてまた、希釈工程においては、当該145lの抽出液原液に対して硬度0に調整した軟水を加え130%希釈して液色を調整し赤みを有した小豆色の希釈液188lと成した。ここでの希釈液は、仄かに小豆特有の風味を醸し出した液体であった。
【0016】
更にまた、殺菌工程においては上記希釈液188lを加圧釜に投入し、0.150MPa、125°Cで40分間殺菌処理を行なった。続いてまた、充填工程では、上記殺菌工程における加圧釜の加圧を解除して凡そ30分をかけて徐々に常圧に戻すと共に上記希釈液の自然冷却を行なった。当該充填工程としては、希釈液の液温が82°Cになった段階でペットボトル容器に充填して製品を得た。
【0017】
一方、上記製品に係る液体について分析を行なったところ、下記の結果であった。
エネルギー 0(kcal/100g)計算法
0(kJ/100g)
水分 99.7(g/100g)減圧加熱乾燥法
タンパク質 0(g/100g)ケルダール法
脂質 0(g/100g)エーテル抽出法
炭水化物 0(g/100g)計算法
灰分 0(g/100g)直接灰化法
タンニン 300(mg/100g)吸光光度法
ナトリウム 1(mg/100g)原子吸光光度法
カルシウム 1(mg/100g)原子吸光光度法
カリウム 13(mg/100g)原子吸光光度法
鉄 0(mg/100g)原子吸光光度法
リン 1(mg/100g)モリブデン酸青吸光光度法
マグネシウム 1(mg/100g)原子吸光光度法
ポリフェノール 94(mg/100g)Folin−Denis法
[備考]タンパク質換算係数:6.25、炭水化物=100−(水分+タンパク質+脂質+灰分+タンニン)

【0018】
また、上記分析結果のように、タンニン量が300(mg/100g)という高い値を示しているにも拘らず、上記小豆を原料とした飲料の製造方法によって製造される飲料について試飲したところ、甘み、苦味、小豆本来の風味のバランスが取れた飲料であった。この事について考察するところ、通常タンニン成分は苦味成分となるため一般の飲料においてはその含有割合を制限したテースティングとなるが、硬度0の軟水によって抽出したことに由来し、嫌な苦味を感じることがなかったものと考察された。一方、ポリフェノールの含有量についても94(mg/100g)という高い値を示し、優良な健康飲料として判断できた。

【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係る小豆を原料とした飲料の製造方法並びに当該製造方法によって製造される飲料は、上述の通りであり、従来の公知技術が高温の熱水によって煮出す方法によって、小豆の有効成分を抽出しているものであるのに対して、硬度0の軟水中に浸漬して小豆の有効成分を抽出するという全く異なる手段を採用している。このことによって小豆が含有するタンニン、ポリフェノール等の有効成分を損なうことなく高い値で抽出することができると共に硬度0の軟水を使用して上記成分の抽出を行なうことから、嫌な苦味のない健康飲料とすることができた。従って、上記飲料は小豆という天然素材を原料とした機能性飲料としてして使用できる他、健康飲料として常用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る製造方法に関する工程図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望量の小豆を洗浄する洗浄工程と、20〜30°Cに調整した硬度0の軟水中に14〜16時間浸漬する浸漬工程と、当該浸漬工程により抽出した抽出液を減圧下0.070〜0.075MPa、60〜70°Cの沸騰状態を5時間維持した後、序々に常圧に戻しながら5時間〜16時間自然冷却させて発色させる発色工程と、前記発色工程によって得られた発色液を所定濃度に希釈する希釈工程と、次に上記希釈工程によって得られた希釈液を加圧下0.147〜0.177MPa、120〜130°Cで30〜45分間殺菌する殺菌工程と、続いて常圧に戻し自然冷却した希釈液を容器に充填する充填工程から成ることを特徴とする、小豆を原料とした飲料の製造方法。
【請求項2】
所望量の小豆を洗浄する洗浄工程と、20〜30°Cに調整した硬度0の軟水中に14〜16時間浸漬する浸漬工程と、当該浸漬工程により抽出した抽出液を減圧下0.070〜0.075MPa、60〜70°Cの沸騰状態を5時間維持した後、序々に常圧に戻しながら5時間〜16時間自然冷却させて発色させる発色工程と、前記発色工程によって得られた発色液を所定濃度に希釈する希釈工程と、次に上記希釈工程によって得られた希釈液を加圧下0.147〜0.177MPa、120〜130°Cで30〜45分間殺菌する殺菌工程と、続いて常圧に戻し自然冷却した希釈液を容器に充填する充填工程から成る製造方法によって製造されることを特徴とする、小豆を原料とした飲料の製造方法によって製造される飲料。


【図1】
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【公開番号】特開2007−53911(P2007−53911A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−239742(P2005−239742)
【出願日】平成17年8月22日(2005.8.22)
【出願人】(505315801)有限会社 餡のおおすか (1)
【Fターム(参考)】