説明

少なくとも1人の人の生理的パラメータ及びある領域内での動きを捕捉し観察する方法及びシステム

少なくとも1人の人の少なくとも1つの生理的パラメータ及びある領域内での動きを捕捉して観察する方法が提供される。領域はそれぞれの場所識別子を有するセルに分割される。各人は各自の器具を提供されてその人の少なくとも1つの生理的パラメータが測定される。生理的パラメータはその人がある健康状態にあるかどうかを示す。各器具は器具識別子を有する。器具が用いられて各器具を用いている人の生理的パラメータを少なくとも完結的に測定し、各測定に対する生理的パラメータ測定値を得る。生理的パラメータ測定値は、生理的パラメータ測定値が得られるセルの識別子及び時間によって器具の各器具識別子と関連付けられる。関連付けられた情報が遠隔位置で記憶される。システム及び生理的パラメータ器具も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ある領域内の一群の人々の動きを追跡し、一群の中の1人がある健康状態を有することが検出されると、その人の位置が示されるようにする方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
重症急性呼吸器症候群(SARS)は伝染病である。SARSに感染した疑いがある人々を、緊急に特定し、所在を確認し、隔離して、病気が他の人々に拡がることを阻止する必要がある。SARSの症状のうちの1つは発熱である。従って、人々の体温を観察して、彼らが熱が出るかどうか、即ち発熱しているかどうかについて判定することが重要になってきた。
【0003】
該して、オフィスビルまたは病院といった建物を訪問している人々は、建物の入口で自分たちの体温を測ることが求められる。特定の人の体温が予め定められた閾値より上である場合、その人は建物に入ることを禁じられて、代わりに医者の診察を受けるよう要求されるかもしれない。このような1回だけの体温測定は理想的ではないかもしれない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、ある人は建物に入るときに、平熱であるかもしれない。しかしながら、その人は建物に入った後に熱を出すかもしれない。そして、その人がSARSウイルスにかかっていて何時間も建物にとどまった場合、その人は建物内の他の人々にウイルスを感染させて病気をうつすことになりかねない。かかる状況は、SARSに感染した人々の大集団を生じて、重大な健康への脅威を引き起こすかもしれない。
【0005】
1回だけの体温測定が理想的でないもう1つの理由は、誰もが全く同じ体温であるわけではないからである。人の平熱は、年齢、性別、最近の活性、食べ物及び水の消費、時刻、その他、さらに、女性については月経周期の段階、に依存して変化する。同様に、ある特定の時間の人の体温は、体の様々な部分で測ると変化する。平熱は、36.5℃から37.2℃までさまざまである。しかしながら、37.8℃の閾値がしばしば用いられて、人に熱があるかどうかが判定される。人口の約5%は通常の範囲からはずれる体温を有していることは公知であるので、このような固定された閾値を用いることは理想的ではない。人に熱があるかどうかを測定する単一の固定された閾値を用いることは、その範囲の熱より高い体温を有する人々に熱があるという間違った診断を生じさせ、よってそれらの人々に不要な迷惑と苦痛を生じさせるだろう。より悪いことは、このような固定された閾値を用いることがその範囲内の熱より低い平熱がある人々の熱を検出することができないかもしれないということである。換言すれば、熱の本当の症例が検出可能でないかもしれない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、少なくとも1人の人の少なくとも1つの生理的パラメータ及びある領域内での動きを捕捉して観察する方法が提供される。該方法は、該領域をそれぞれ場所識別子を有するセルに分割するステップと、各人に各人の少なくとも1つの生理的パラメータを測定する各自の器具を提供するステップを含む。該生理的パラメータがその人がある健康状態にあるかどうかを示す。各々の器具は器具識別子を有する。該方法は、各自の器具を用いて各人の生理的パラメータを少なくとも間欠的に測定して各測定に対する生理的パラメータ測定値を得るステップさらに含む。該方法はまた、該生理的パラメータが得られるセルのそれぞれの場所識別子及び時間によって、該生理的パラメータ測定値の選択された数の各々を少なくとも選択された数の該器具のそれぞれの器具識別子と関連させるステップ含む。該方法は、該関連する生理的パラメータ測定値、器具識別子、場所識別子及び時間を記憶するステップさらに含む。
【0007】
該観察が遠隔場所から実施されてもよい。該方法は、次に、該関連する生理的パラメータ測定値、器具識別子、場所識別子及び時間を該遠隔場所に送信してそこで記憶させるステップを更に含んでもよい。
【0008】
1つの実施例によれば、ある領域をセルに分割するステップは、建物の様々な場所にアクセスステーションを配置することを含む。アクセスステーションの各々は、場所識別子として機能するそれぞれのステーション識別子を有する。該器具が生理的パラメータ測定値を得ると、該器具はそれぞれの器具識別子とともに該測定値を送信する。該器具があるセル内にある場合、該セルのアクセスステーションは該測定値及び該器具識別子を受信して、それらをそれぞれのステーション識別子と関連させることができる。該アクセスステーションは、その次に、該関連する測定値、器具識別子、ステーション識別子を遠隔制御装置に送ってそこで記憶させる。該遠隔制御装置はさらに、該アクセスステーションから受信した該測定値、器具識別子及びステーション識別子と時間を関連させる。時間は、また、日付を含んでいてもよい。本発明の本実施例は、後に詳述される。
【0009】
該方法は、該生理的パラメータ測定値を第1の予め定められた生理的パラメータ閾値と比較してその人が適切に前記装置を装着しているかどうか判定するステップをさらに含んでいてもよい。このような場合には、該方法は、その人が適切に器具を装着していないと判定される場合に、生理的パラメータ測定値と関連する該器具識別子及び該場所識別子を用いている人を識別して位置を示すステップを更に含んでいてもよい。
【0010】
該方法は、また、該生理的パラメータ測定値を第2の予め定められた生理的パラメータ閾値と比較して、該人がある健康状態にあるかどうかを判定するステップをさらに含んでいてもよい。このような場合には、該方法は、前記人が前記健康状態にあると判定される場合に、該生理的パラメータ測定値に関連する該器具識別子及び該場所識別子を用いている人を識別して位置を示すステップを更に含む。第2の予め定められた生理的パラメータ閾値が、個々に予め定められてもよい。
【0011】
該方法は、該人に対して個々に判定される生理的パラメータ修正要因によって該生理的パラメータ測定値を調整してから該調整された生理的パラメータ測定値を該第1または該第2の予め定められた生理的パラメータ閾値と比較するステップを含んでも良い。
【0012】
該方法は、少なくとも1人の別の人のそれぞれの器具から測られる少なくとも1つの生理的パラメータ測定値に関連する時間及び場所識別子を該識別されて位置を示された人の該時間及び場所識別子と一致させるステップと、一致する場合に該他の人が該識別されて位置を示された人の物理的近傍にいたと識別するステップと、をさらに含んでもよい。
【0013】
本発明の他の態様によれば、上記した実施例による方法を実施するシステムが提供される。該システムは、該領域内の空間的配置において提供される遠隔制御装置及び2以上のアクセスステーションを含む。かかる構成は、それによって該領域をそれぞれのセルに分割する。各々のアクセスステーションにはそれぞれのステーション識別子があり、該制御装置に接続されていて、第1の人に取付けられた少なくとも1つの生理的パラメータ測定器具から生理的パラメータ測定値及びそれぞれの器具識別子を受信するようになされる。該アクセスステーションは、そのステーション識別子とともに該受信された生理的パラメータ測定値及び該器具識別子を該制御装置に送信する。該関連する情報及び生理的パラメータ測定値が該器具によって取得される時間が該遠隔制御装置において第1の記録に記憶される。
【0014】
該制御装置が用いられて、該生理的パラメータ測定値を第1の予め定められた生理的パラメータ閾値と比較して該第1の人が適切に該装置を装着しているかどうか判定してもよい。該制御装置がさらに用いられて、該生理的パラメータ測定値に関連する該器具識別子及び該場所識別子に対応する情報を提供し、該第1の人が該器具を適切に装着していないと判定される場合に該第1の人を識別して位置を示してもよい。
【0015】
該制御装置がさらに用いられて、該生理的パラメータ測定値を第2の予め定められた閾値と比較して、該第1の人がある健康状態にあるかどうか判定してもよい。該制御装置がさらに用いられて、該生理的パラメータと関連する該器具識別子及び該場所識別子に対応する情報を提供し、該第1の人が該健康状態にあると判定される場合に該第1の人を識別して位置を示してもよい。該第2の予め定められた生理的パラメータ閾値が、該第1の人に対して個々に予め定められていてもよい。
【0016】
該制御装置が用いられて、少なくとも1人の別の人の別のそれぞれの器具から得られる少なくとも1つの別の記録の時間及び場所識別子に前記第1の記録の時間及び場所識別子を一致させ、一致する場合に該他の人が該第1の人の物理的近傍にいるということを識別してもよい。
【0017】
該生理的パラメータ測定値が調整されて、該生理的パラメータ測定値を第1か第2の生理的パラメータ閾値のいずれかと比較する前に、該第1の人に対して個々に判定される生理的パラメータ修正要因を含んでいてもよい。
【0018】
該制御装置が用いられて、該器具を適切に装着していないことかまたは該健康状態にあることのいずれかを第1の人が判定される場合に警告メッセージを生成してもよい。該警告メッセージは、該ステーション識別子及び該器具識別子に対応する情報を含む。該警告メッセージは、制御装置が接続可能である通信ネットワークを介して予め定められた受取人に送信されてもよい。該通信ネットワークは、公共通信ネットワークであってもよい。
【0019】
該制御装置がさらに用いられて、該器具識別子及びそれとともに測定された生理的パラメータ測定値を送信するように器具に指示してもよい。該制御装置は少なくとも1つの選択されたアクセスステーションを介して対応する指示を放送することによって器具に指示してもよい。そして、指示は少なくとも1つの選択されたアクセスステーションのサービスエリアの全ての器具によって受信可能である。
【0020】
該システムは、該第1の人に取付けられて該第1の人の少なくとも1つの生理的パラメータを観察する少なくとも1つの生理的パラメータ測定器具をさらに含んでもよい。各々の器具は器具識別子を有して、それがセル内にある場合にセルのそれぞれのアクセスステーションに接続されている。
【0021】
本発明の別の態様によれば、生理的パラメータ測定器具が提供される。該器具は、変換器、送信器及びプロセッサを含む。該プロセッサは該変換器及び該送信器に接続されている。該プロセッサが用いられて、測定値が少なくとも予め定められた閾値から逸脱していると判断される場合に、該変換器を制御して少なくとも間欠的に人の生理的パラメータを測定し、さらに該送信器を制御して測定された生理的パラメータに対応する測定値を送信する。
【0022】
該器具が、プロセッサに接続された受信器をさらに含み、該プロセッサが受信器を介して送信するようにという指示を受信する場合に測定値が同様に送信されてもよい。
【0023】
該器具は、第1の部分、第2の部分及び該第1の部分と第2の部分との間で接続される可撓性中間部分を含む筐体を更に含んでもよい。該器具は人の体温を測定する体温計であってもよい。該プロセッサ、該送信器及び該受信器が該第1の筐体部分に収容され、該変換器が該第2の筐体部分で支持されてもよい。
【0024】
該第1及び第2の部分が互いの方へ屈曲可能であって、衣類の一部に引っかかるU字形の器具を画定し、該変換器が人の腹部と接触してそこで体温を測定してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、図面を参照してよりよく理解される。
【0026】
以下に、本発明の好適な実施例が、建物の中で移動可能である人々の体温を観察するシステムという背景で説明される。しかしながら、本発明は、所定の領域内の一群の人々の、例えば、脈拍数、呼吸数、血圧及び血糖値などの他の生理的パラメータやまた心電図信号を観察する他の生理的パラメータ観察システムにおいて使用可能であるということが理解されるべきである。
【0027】
図1は、本発明の1実施例による建物内の一群の人々の体温を常に観察するシステム2のブロック図である。システム2は遠隔制御装置4及び制御装置4に接続されている多数のアクセスステーション6を含む。制御装置4は、サーバコンピュータであってもよい。アクセスステーション6は、専用線ネットワークまたはローカルエリアネットワーク(LAN)を介して制御装置4に接続されていてもよい。ネットワークは、有線ネットワークまたは無線ネットワークのいずれでもよい。無線ネットワークの例には、IEEE802.11b仕様書によるネットワークがある。システム2のそれぞれのアクセスステーション6には、固有のステーション識別子(ID)がある。
【0028】
アクセスステーション6は、建物の様々な場所に及ぶように配置される。アクセスステーション6は、様々な場所のそれぞれの天井に設置されてもよい。それぞれのアクセスステーション6には動作範囲域があり、サービスエリアまたはセル8を範囲としよって画定する。それぞれのアクセスステーション6は、アクセスステーション6がネットワークに接続することを可能にする第1のインタフェース(図示せず)と、アクセスステーション6がそのセル8の範囲内にある1つ以上の体温検出器具または体温計10と通信することを可能にする第2のインタフェース(図示せず)とを含む。第1のインタフェースは、ネットワーク種別に依存する。第2のインタフェースは、アクセスステーション6が同時に複数の体温計10と通信することが可能である無線タイプの通信プロトコルをサポートするためであってもよい。通信プロトコルのかかる無線タイプの例は、既存のブルートゥース、ワイヤレスLAN、IEEE802.11bプロトコルである。
【0029】
あるいは、振幅変調、周波数変調、位相変調、拡散赤外線信号変調または赤外線信号変調を用いる自己定義された無線プロトコルもあり得る。例えば、ブルートゥースプロトコルを用いると、アクセスステーション6は同時に、多くて7台の体温計10と通信することができる。かかるプロトコルを用いるアクセスステーション6は、アクセスステーション6の周囲に約半径10メートルのサービスエリア8を有する。ブルートゥースの用語では、アクセスステーション6はマスター装置であり、体温計10はスレーブ装置である。
【0030】
各々の体温計10は、送信されるデータとして測定された体温に対応する固有の器具識別子(ID)及び測定値を、少なくとも間欠的に送信するかまたは放送することが可能である。アクセスステーション6は、送信されるデータを取り出すか受信し、データにそのステーションIDを追加して制御装置4に転送されるデータパケットを形成することが可能である。各々のアクセスステーション6及びそのサービスエリア8の範囲内の体温計10は、ピコネット(piconet)を形成すると考えられてもよい。体温計10は、第1のセル8から第2のセル8へと移動する場合に、体温計の送信されるデータが第1のセル8のアクセスステーション6によって受信され、次に第2のセル8の別のアクセスステーション6によって受信される。第2のセル8のアクセスステーション6は、次に制御装置4に別のデータパケットを送出する。このように、人が建物内で動き回るにつれて、体温計10の送信を受信するアクセスステーションのステーションIDに基づいて、体温計10の場所が追跡されてもよい。
【0031】
制御装置4において、それぞれの受信データパケットが図2Aに示したような体温情報表12の記録として記憶される。器具ID、ステーションID及び体温測定値に加えて、パケットが受信される時間も記録14に含まれる。時間には、また、日付が含まれてもよい。かかる体温情報表12が、図2Aに示されている。体温情報表12は、制御装置4において、例えばハードディスク、フロッピー(登録商標)・ディスク、テープなどのいかなる記憶装置(図示せず)で記憶されてもよい。制御装置4は、ソフトウェアアプリケーションを用いてこれらの記録を処理し、分析し、体系化し、示すことが可能である。その例は後述される。
【0032】
次に、体温計10がより詳細に説明される。体温計10の各々は、図3Aに示すような温度センサ20及びプロセッサ24に接続されたワイヤレス通信モジュール22を含む。通信モジュール22は、送信器(図示せず)またはトランシーバ(図示せず)を含んでもよい。トランシーバは送信器及び受信機を含む。各々の体温計10も、プロセッサによって読み込み可能な器具IDを含む。器具IDは、体温計10において配線で接続されていてもよいしまたはその中にプログラムされていてもよい。体温計10は、ディスプレイ(図示せず)を含んでいてもよいし含んでいなくてもよい。ディスプレイのない体温計10はより小さくて、よって人の体に装着するのにより快適であるだろう。ディスプレイのないこのような体温計に対して、体温測定値は、人によって持ち運ばれるブルートゥース使用可能な携帯電話またはPDAに送信されてそこで表示してもよい。あるいは、制御装置4が体温計10によって送信されるデータパケットを受信するときに、測定値が制御装置4のディスプレイスクリーン(図示せず)上に単に表示されてもよい。
【0033】
温度センサ20は、対応する電気信号に体温を変換することができる任意の変換器である。かかる変換器の例にはサーミスタアセンブリがある。プロセッサ24は、電気信号を体温測定値に変換する関連するソフトウェア(図示せず)を有する内蔵アナログ‐ディジタル(A/D)コンバータを含む。プロセッサ24の制御または命令の下で、ワイヤレス通信モジュール22は、データパケット内の体温測定値及びその器具IDを送信することができる。体温計10は、少なくとも間欠的に体温を測定して、体温測定値を送信する。言い換えると、断続的な間隔でまたは周期的な間隔で、体温計は連続的にデータを送信することができる。いくつかの実施例では、体温計10は例えば10秒毎の周期的に体温を測定して、体温測定値を送信する。
【0034】
図3Bは体温計10の筐体25の平面図を示す。図3C及び3Dは、体温計10の筐体25の側面図であり、それぞれまっすぐな位置及び曲がった位置で示される。筐体25は、プロセッサ24及びワイヤレス通信モジュール22を収容する第1の本体部分26を有する。筐体25は、温度センサ20を支持する第2の測温部分28有する。測温部分28は、可撓性中間部分30を介して本体部分26に接続されていて、体温計10が可撓性中間部分30で折れ曲がることを可能にする。可撓性中間の部分30は、例えば熱可塑性ゴムなどの弾力材であって、測温部分28が本体部分26の方へ折れ曲がってU字形を形成することを可能にしてもよい。体温計10のこの位置において、温度センサ20は外側へ面している。
【0035】
人の腹部で温度を測定するための用いる間、例えば硬質プラスチックなどの硬質材料でできているホルダ32は、体温計10を支持するために提供される。図3Eは、ホルダ32の図である。ホルダ32は、2枚のパネル36を有するクリップ34を含む。ポケット40を画定して体温計10の本体部分26を受ける2つの突出部材38が、クリップ34の1枚のパネル36上にある。体温計10が曲げられて、ホルダ32に置かれる場合に、所定の位置の温度感知端28を受けて保持する留め金(図示せず)がクリップのもう1枚のパネル36の上にある。クリップ34が、1着のパンツのウエスト部分に取付けられて温度センサ20が人の腹部と接触するようになることが便利である。この位置において、体温計の本体部分26が、人から見て外方に向く。
【0036】
建物内で一群の人々の動きを追跡して体温を観察する建物内で用いて、発熱などの健康状態にあることが検出された人の位置を示すようにするシステム2の配置が、図4を用いて次に説明される。図4は、主手順50のステップからなるフローチャートを示す。主手順50は「開始」ステップ52において開始され、「領域を分割する」ステップ54へ進む。そこで、アクセスステーション6が建物の様々な場所に配置される。セル8を画定するそれぞれのアクセスステーション6を用いて、このような配置が識別可能なセル8に建物を分割することに役立つ。オペレータは、それぞれのアクセスステーション6が図2Bに示すようなステーション場所表58内の記録56として配置される場所に入る。各々の記録56は、このようにステーションIDフィールド及び場所フィールドの2つのフィールドを含む。アクセスステーション6のステーションIDは、セル8の場所IDとして役立つ。
【0037】
主手順50が次に「体温計を支給する」ステップ60へ進み、そこで建物の入口に到着している各々の人が体温計10を提供されるかまたは支給される。器具ID、体温計10を支給された人の名前及び接触の詳細が、図2Cに示す氏名表64に記録62として入力される。この氏名表64の各々の記録62は、従って、器具IDフィールド、氏名フィールド及び接触詳細フィールドを含む。人は、体温が体温計10を用いて少なくとも間欠的に測られるように、支給された体温計10を装着させられる。
【0038】
主手順50は次に「体温を測って送信する」ステップ66へ進む。そこで、体温計10は少なくとも間欠的にその人の体温を測定して、その器具IDとともに体温に対応する測定値を送信する。
【0039】
体温計10を装着している人が入口に隣接してセル8に入ると、主手順50は次に「受信し転送する」ステップ68へ進む。セル8を範囲とするアクセスステーション6は、体温計10の送信データを受信する。上記したように、次にアクセスステーション6は、制御装置4にデータパケットにおいてその位置IDとともにデータを転送する。このような方法で、読出及び器具IDは位置IDと関連づけられる。
【0040】
制御装置4がアクセスステーション6によって転送されたデータパケットを受信すると、主手順50は次に「情報を処理する」ステップ70へ進む。データパケットで得られる情報を用いて、制御装置4がセルレベルで建物内でその人の位置を知ることができる。
【0041】
制御装置4において情報が処理される方法の詳細が次に説明される。「情報を処理する」ステップ70に入るとすぐ主手順50は、「体温測定値が低い?」判定ステップ72に進む。そこで制御装置4は、データパケットの体温測定値が低閾値未満であるかどうかについて判定する。体温測定値が低閾値未満であると判定される場合、主手順50は「警告メッセージを生成する」ステップ74へ進む。そこで、制御装置4は様々な表12、58、64から集められる情報に基づいて、第1の警告メッセージを生成する。制御装置4は、制御装置4のディスプレイスクリーン上に第1の警告メッセージを表示する。制御装置4は、また、例えば公衆ページングまたは移動通信ネットワーク(図示せず)などの通信ネットワークを介して、例えばオペレータなどの選択された受取人に、第1の警告メッセージを送出してもよい。
【0042】
「体温測定値が低い?」判定ステップ72が用いられて、体温計10が適切に人に装着されているかどうか検出してもよい。この場合、低閾値が、例えば36.5から37.2℃の平熱の範囲より低い32℃の体温に設定されてもよい。体温計10が適切に装着されていないかまたは人から取り除かれるようになる場合に、体温測定値が低閾値未満になるだろう。このような状態に対して、第1の警告メッセージが、例えば、「使用法の警告:A氏の体温は、2003年4月2日、午後1:25に31.9℃である。彼は会議室Bにいる。」であってもよい。または、単に「使用法の警告:会議室BにいるA氏は適切に自分の体温計を装着していないかもしれない。」であってもよい。かかるメッセージを受信するオペレータは、次にA氏に接近して、彼が自分の体温計を適切に装着していることを調べて確実にしてもよい。主手順50は次に、すぐに説明する「記録を入力する」ステップ76に進む。
【0043】
「体温測定値が低い?」判定ステップ72で、体温測定値が閾値未満でないと判定される場合、主手順50は「体温測定値が高い?」判定ステップ78に進む。そこで制御装置4が体温計10を高閾値と比較して、体温測定値が高閾値より上かどうかを判定する。高閾値は、38℃に設定されてもよい。体温測定値が高閾値値を上回ると判定される場合、主手順50は再び「警告メッセージを生成する」ステップ74に進む。ステップ74では、制御装置4が、セル8が建物の入口に隣接しているということをステーションIDから認識して、入り口に駐在している保安要員に第2の警告メッセージを送出して、体温計10を装着している人が許容可能体温より高い体温を有しているということを示す。この第2の警告メッセージは、「入館を拒否する:A氏は38.5℃の体温を有している」であってもよい。保安要員は、例えば医者によってより完全に診察されるべき人に対して、離れてその人に付き添うことによって第2の警告メッセージに応答してもよい。
【0044】
体温計10の体温測定値が高い閾値と等しいかそれより低いということが「体温測定値が高い?」判定ステップ78において判定される場合、制御装置4は警備員に警告メッセージを送出しない。主手順50は次に「記録を入力する」ステップ76へ進む。そこで、制御装置4は受信したデータパケットから体温情報表12の記録を生成する。制御装置4は、データパケットの制御装置4による受信時間を用いて記録の時間フィールドを更新して、時間を記録14の他のフィールドと関連させる。即ち、体温情報表の各々の記録は、器具ID、体温測定値、ステーションID及び時間情報を含む。このようにして、制御装置4は記録内でデータパケットを捕捉する。
【0045】
ステップ72、78によって判定されるように、第2の警告メッセージが入口で保安要員によって受信されない場合、人は建物に入って、移動することが許される。体温計10は、少なくとも間欠的に体温測定値及びその器具IDを送信する。アクセスステーション6のうちの1つによって受信される体温計10のそれぞれの送信に対して、主手順50は、「測って送信する」ステップ66、「受信して転送する」ステップ68及び「情報を処理する」ステップ70をループする。時間とともに、制御装置4は各々の体温計10に対して体温情報表12内に多数の記録を生成する。このようにしてこれらの記録が中心位置で利用できる。
【0046】
建物内の会議室Bへ移動している人の1つのシナリオを次に説明する。会議室Bにいる間に人の体温が38.1℃に上昇するということを想定せよ。会議室Bを範囲とするアクセスステーション6が、上記したように人の体温計10の温度測定値及び器具IDを受信して制御装置4にそれを転送する。制御装置4は、その人の体温が「体温測定値が高い?」判定ステップ78における高閾値より上にあることを検出する。次に、制御装置4は、表12、58、64から得られるデータから、例えば「発熱警告:A氏は2003年4月2日、午後1:25に体温が38.1℃である。彼は会議室Bにいる。」などの第3の警告メッセージを生成する。第1の警告メッセージと同様に、第3の警告メッセージがディスプレイスクリーンに表示され、かつ/またはオペレータに送出されてもよい。この第3の警告メッセージを受信するとすぐオペレータは、保安要員またはヘルスケア要員が会議室Bを行くように知らせて指定エリアまでA氏に付き添って、彼を隔離してもよい。このように、熱のある人が識別されて位置が示されてもよい。
【0047】
「記録を入力する」ステップ76の後に、主手順50は、「接触探知が起動される?」判定ステップ80に進み、そこで制御装置4は、オペレータが接触探知アプリケーションまたは機能を開始したかどうかについて判定する。制御装置4によって受信された体温計測定値が高閾値を上回ったとみなされる場合に、この接触探知アプリケーションが自動的に起動されてもよい。あるいは、オペレータが選択した記録について機能を起動してもよい。接触探知機能が起動されるとこのステップ80において判定される場合、主手順50は「接触探知を実施する」ステップ82へ進む。そこで、制御装置8は図5で示すような接触探知手順84に従って接触探知を実施する。
【0048】
接触探知手順84が、次に図5を用いて説明される。接触探知手順84は「開始」ステップ86で開始される。そこで、制御装置4は、ある期間にわたって集められた体温情報表12の中の記録を抽出する。期間は、過去10日であってもよい。接触探知手順84は次に「記録を読み込む」ステップ88へ進む。そこで、制御装置4が抽出された記録から1つの記録を読み込む。接触探知手順84は、次に「IDが一致する?」判定ステップ90へ進む。そこで、制御装置4は、読み込まれた記録の器具IDが選択された記録の器具IDに等しいかどうかについて判定する。2つ記録のIDが一致すると判定される場合、接触探知手順84は「追加の記録が利用可能?」判定ステップ92へ進む。「IDが一致する?」判定ステップ90において、読み込まれた記録の器具IDが選択された記録の器具IDと等しくないと判定される場合、接触探知手順84は「近くのID?」判定ステップ94に進む。そこで制御装置4は、読み込まれた記録の器具IDを有する体温計10がまたは選択された記録の器具IDを有する体温計10の付近または物理的近接にあるかどうかを判定する。1実施例において、読み込まれた記録が同じステーションID及び選択された記録とほぼ同じ時間である場合に、読み込まれた記録の器具IDを有する体温計10が選択された記録内の器具IDを有する体温計10の付近にあると考えられる。もう1つの実施例では、読み込まれた記録が同じ位置ID及び選択された記録と同じ器具IDを有するすべての抽出された記録のいずれか1つとほぼ同じ時間を有する場合に、読み込まれた記録の器具IDを有する体温計10が、選択された記録の器具IDを有する体温計10の付近にあると考えられる。
【0049】
この「近くのID?」判定ステップ94では、読み込まれた記録が得られる体温計10は選択された記録の器具IDを有する体温計10の物理的近傍にないということが判定される場合、接触探知シークエンス84は「追加の記録が利用可能?」判定ステップ92に進む。2台の体温計が同じ近傍にあったと判定される場合、接触探知手順84は「記録をつける」ステップ96に進む。そこで、制御装置4は接触探知表(図示せず)に読み込まれた記録をつける。接触探知手順84は、次に、「追加の記録が利用可能?」判定ステップ92に進む。そこで制御装置4は、抽出された記録の中に読み込まれるべき更なる記録がまだあるかどうかを判定する。処理されるべき追加の記録があると判定される場合、接触探知手順84は「記録を読み出す」ステップ88に戻る。一方、接触探知手順84は、「終了」ステップ98で終わる。
【0050】
制御装置4は、接触記録表の中の記録、より具体的には記録の中の器具IDを用いて、氏名表64にアクセスして接触探知リスト(図示せず)を生成する。選択された記録が、上記で説明した第3の警告メッセージの生成を生じさせるように処理されるものである場合に、接触探知リストはまたディスプレイスクリーン上で、「探知された接触:C氏が2003年4月2日午後1:25に会議室BにてA氏と一緒だった」などのメッセージとして表示されてもよい。メッセージを読むオペレータは、次にそれに応じて、隔離命令でその氏名が接触探知リストに現れる人々に接触するかまたは扱うように行動してもよい。
【0051】
上記のシステム2では、体温計10がアクセスステーション6によって取得されるデータが間欠的にまたは周期的に送信されることが説明されている。特に無線周波数伝送を含んでいるかかる断続的または周期的なデータ送信は、有効な電池を消費して短期間で電池を使い果たすかもしれない。従って、体温計10によってかかる送信数を最小にして電池を節約することが望ましい。
【0052】
送信数を最小にする1つの方法が、それぞれ制御装置4及び体温計10において実施される主手順110及び従属手順112を示す、図6A及び6Bのフローチャートを用いて説明される。
【0053】
体温計10の従属手順112は、体温測定値が取得される「開始」ステップ114において開始される。次に従属手順112は、「測定値を送信する?」判定ステップ116へ進む。そこでプロセッサ24が、制御装置4からの測定値送信指示が体温計10によって前に受信されているかどうかについて判定する。測定値送信指示が受信されていると判定される場合、従属手順112は「データを送信する」ステップ118へ進み、そこで、体温計10が上記に説明したようにデータを送信する。
【0054】
しかしながら、測定値送信指示が受信されていないと判定される場合、従属手順112は、「体温測値が高い?」判定ステップ120へ進む。そこでプロセッサ24が体温測定値を送信閾値と比較する。体温測定値が送信閾値を上回ると判定される場合、従属手順は「データを送信する」ステップ118へ進み、上記の通りにデータを送信する。「データを送信する」ステップ118の後に、従属手順112は、「終了」ステップ122で終了する。体温測定値が送信閾値と等しいかまたはそれより低いと判定される場合、従属手順112は任意のデータを送信している体温計10を用いずに「終了」ステップ122へ進む。かかる一連の動作を用いて、人が熱を出す疑いがある、即ち熱がある場合にだけ、体温計10はデータを送信する。送信閾値は高閾値に等しいかまたはそれ未満であるように設定されてもよい。簡単にするために、送信閾値を、全ての人々に対して固定値に設定してもよい。例えば、高閾値が38℃に設定される場合、送信閾値は37.5℃に設定されてもよい。
【0055】
制御装置4の対応する主手順110が次に説明される。主手順は「開始」ステップ124において開始される。そこで、制御装置4が上記の通りにアクセスステーション6から体温測定値、器具ID及びステーションIDを受信する。次に主手順110は、「体温測定値が高い?」ステップ126へ進む。そこで制御装置4は、体温測定値を送信閾値と比較する。体温測定値が送信測定値を上回らないと判定される場合、主手順110は「終了」ステップ128で終了する。
【0056】
しかしながら、「体温測定値が高い?」判定ステップ126において、体温測定値が送信閾値を越えると判定される場合、主手順110は「測定値送信指示を出す」ステップ130に進む。そこで制御装置4は、体温測定値が受信されるアクセスステーション6に、そのセル8において体温計10によって受信可能である測定値送信指示を放送する。あるいは、制御装置4は、他のアクセスステーション6または全てのアクセスステーション6に測定値送信指示を送信するように指示してもよい。主手順110は、次に終了ステップ128へ進む。このように、セル8にある体温計10が、送信測定値指示を受信してデータを送信することが可能である。
【0057】
次にシナリオを説明して、主手順110及び従属手順112の動作を詳述する。A氏が会議室BでX氏、Yさん及びZ氏と一緒にいると仮定する。午後1時に、彼らの体温はすべて、37.5℃に設定された送信閾値より低い。従って、会議室Bの彼らの体温計10及びアクセスステーション6は、いかなるデータも送信しない。次に午後1:25に、A氏の体温が37.5℃の送信閾値より高い37.6℃であると彼の体温計10で検出される。A氏の体温計10はそのとき従属手順112に従って、体温測定値及びその器具IDを含むデータを送信する。アクセスステーション6は、上記の通りに送信を取り出して制御装置4にステーションIDとともに送信データを転送する。主手順110に従って、制御装置4は、A氏の体温が送信閾値より上であることを検出して、会議室Bを範囲とする1つ以上のアクセスステーション6に測定値送信指示を送出する。会議室BにいるX氏、Yさん及びZ氏の体温計10が測定値送信指示を受信して、それらはそれぞれの体温測定値及び器具IDを送信し始める。1つ以上のアクセスステーション6がこれらの送信を受信して、制御装置4に転送する。これら送信データを用いて、制御装置4は、A氏の体温が送信閾値を超えると検出されたときに、A氏の付近または物理的近傍に誰がいるかを示すデータを捕捉することができる。
【0058】
システム2が単に、熱を出すと疑われる、即ち熱があるか、または、適切に自分の体温計10を装着していない人の位置を示す場合、上記に説明した主手順110及び従属手順112は必要ではない。かかる場合、体温測定値を得た後で体温計がそれをTH1閾値及びTH2閾値と比較する。体温測定値がTH1閾値より高いかまたはTH2閾値未満であると判定される場合、体温計10がデータを送信して制御装置4が待機態勢を取る。一方、体温計10はいかなるデータも送信しない。TH1閾値は38℃の高閾値と同じであってもよいし、TH2閾値は32℃の低閾値と同じであってもよい。
【0059】
上記のシステム2の別の態様は改良されていてもよい。この態様は人の腹部から得る体温測定値の精度に関する。口腔で、即ち人の舌下に体温計10の測温端部28を置くことによって測定される体温が、人の中核体温の合理的に正確な指標を与えるということは公知である。しかしながら、口腔方法は連続的な体温観察に適当でない。なんとなれば、長い期間口の中に体温計10を入れさせることは不快であり不便であるからである。例えば腋の下、腹部または手首などの、連続的な体温観察についてより快適であり便利である人体の特定部位がある。しかしながら、これらの体の部分からの測定は、通常、中核体温を反映する測定値を与えない。これらの部分から測定される体温は、口腔から測定される体温よりかなり低い(例えば、0.5から3℃)かもしれない。1つ常套手段は、体の一部から得られる測定された体温に、人口から得る平均値である修正要因を加えることである。例えば、0.5℃の修正要因が36.5℃の腋の下で測定された体温に加えられて、実際の中核体温により近い37℃の体温測定値を与えてもよい。腋の下及び口腔で測られる体温の差が人と人とで変化するので、単一の共通修正要因を用いることによって中核体温の正確な判定が生じないかもしれない。よって、各個人に対して体温修正要因を判定することが望ましい。
【0060】
図7は、人に支給された体温計10における使用についての修正要因を得る較正手順132のフローチャートを示す。較正手順132は、例えば体温計10のボタン(図示せず)を押している人によって体温計10の較正モードが起動されると、「開始」ステップ134において開始される。較正手順132は次に、「口腔体温を測る」ステップ136へ進む。そこで、体温計10は、測られるべき口腔体温のために自分の口の舌下に体温計10を置くように指示する。指示は、点等されたLED(図示せず)の形であってもよい。体温計10が可聴式または可視のいずれかの警告信号を生成して、口腔体温が測られることを示し、測られるべき腹部体温ついて自分の腹部に体温計10を置くように人に促してもよい。次に人はホルダ32へ体温計10を入れて、上記の通りにホルダ32を自分のパンツにとめる。この点で、較正手順132は、「腹部体温を測る」ステップ138へ進み、そこで、体温計10は腹部体温を測定する。次に較正手順132は、「修正要因を計算する」ステップ140へ進み、そこで、体温計10は口腔体温及び腹部体温に基づいて修正要因を計算する。修正要因は、単に口腔温度と腹部温度との差であってもよい。修正要因は、体温計10に記憶される。
【0061】
較正手順132は「終了」ステップ142で終了し、そこで、体温計10は較正モードを終了して、体温観察モードへ切り替わる。体温観察モードにおいて、体温測定値を得た後で体温計10が、それを送信する前に修正要因を例えば加えることによってなどの含むことによってそれを調整する。このように、送信される調整された体温測定値は、人の中核体温により近い。人が建物の入口で体温計10を支給されるときに、または人が最初に熱がないと判定された後に建物内への入館を許可されるときに、かかる較正手順132が実施されてもよい。
【0062】
システム2の更なる態様は、改良されてもよい。この更なる態様は、人に熱があるかどうかを判定するために用いられる高閾値に関係する。システム2が上記に説明されて、全ての人々に対する単一の共通の高閾値を有する。平熱が人と人とで異なるので、各個々人に対して高閾値を判定することが望ましいかもしれない。
【0063】
人の高閾値を判定する1つの方法は、その人の最近得られた体温測定値を用いている高閾値を統計学的に計算することによってである。これらの最も最近測定された体温測定値が体温計10または制御装置4のいずれかに記憶されてもよい。
【0064】
人に対する高い閾値を統計学的に計算する体温計10において閾値判定手順150が、図8を用いて次に説明される。閾値判定手順150は、「開始」ステップ152において開始される。そのとき、人は体温計10上のボタン(図示せず)を押して、次に体温計10を装着する。方法は「周期的測定」ステップ154へ進み、そこで、例えば10秒毎といった周期的に、体温計10が人の体温測定値を測って記憶する。次に手順150は、「十分なデータが収集された?」判定ステップ156へ進む。そこで体温計10は、体温測定値数が予め定められた数に達したかどうかを判定する。ステップ156において、体温測定値数が予め定められた数より少ないと判定される場合、手順150は、測られた測定値数が、例えば100の測定値などの予め定められた数に達するのを待っている「十分なデータが収集された?」判定ステップ156の周りをループする。測定値数が予め定められた数に達すると、手順150は「十分なデータが収集された?」判定ステップ156を終了して、「高閾値を計算する」ステップ158へ進む。このステップ158では、体温計10のプロセッサ24が次の式を用いて人の高閾値を計算してもよい。
【0065】
高閾値=μ+kσ
ここで、μは平均値であり、σは測定値の予め定められた数の標準偏差であり、kは正の数である。
【0066】
収集された体温測定値は通常分布していて、k=3である場合、体温測定値の99.9%は次に上記の式によって計算される高い閾値より低いだろう。
【0067】
あるいは、高閾値が単に体温測定値の最大値の合計であって例えば0.5℃のマージン値であるように設定されてもよい。例として、体温測定値の予め定められた数の最大値は37.5℃であり、得られる高閾値は38℃になる。単一の体温測定値が同様に用いられて高閾値を判定してもよい。
【0068】
高閾値はオペレータによって制御装置4に入力されてもよいし、または、指定されたデータパケットを用いてアクセスステーション6を介して制御装置4に送信されてもよい。制御装置4が体温計10からかかる高閾値を受け取る場合、制御装置4が、主手順50の「体温測定値が高い?」判定ステップ78におけるさらなる比較のためにこの高閾値を用いる。そうでなければ、制御装置4は、制御装置4において利用できる既定値の共通の高閾値を単に用いる。閾値判定シーケンス150は、終了ステップ160で終わる。
【0069】
説明したばかりの高閾値を判定する方法が、例えば低閾値、送信閾値、TH1及びTH2閾値などの、他の上記した閾値を判定するために同様に適用可能であるということに注意が必要である。
【0070】
高閾値を判定する方法が体温計10の代わりに制御装置4で実施されてもよいとういことにも注意されるべきである。このような場合に、高閾値は、その測定値が制御装置4によって捕捉される全ての体温計10から受信される体温測定値に基づいて判定される単一の共通の高閾値であってもよい。
【0071】
本発明は上記した実施例において実施されるように説明されるが、このように制限されて解釈されるべきでない。例えば、システムが多数のアクセスステーション6を含むことは必要でない。単一のアクセスステーション6だけを含むシステムも同様に機能する。このような場合、アクセスステーション6は、制御装置4と統合されてもよい。即ち、アクセスステーション6は、物理的な通信リンクを介してよりはむしろ内部バスを介して制御装置4と通信する。かかるシステムは、例えば建物、局、病院への入口、並びに空港の出入国管理チェックポイントまたは国境検問所などで配備されてもよい。そのように配備される場合、システムは人々の位置を探知するよりはむしろこれらのチェックポイントを通過する人々の体温を単に「走査する」ために用いられる。これらのチェックポイントのうちの1つを通過する人は、上記したような体温計を用いて自分の体温を測られることが要求される。体温計の測定値は、アクセスステーションに送信される。制御装置は、アクセスステーションを介して体温測定値を順番に受信する。測定値が予め定められた高閾値より上にあると制御装置によって判定される場合、人は入国を拒否されて、例えばその人を医者に診察させて隔離下におくといった治療上の措置がとられてもよい。
【0072】
別の実施例として、家庭で用いるためのシステムが、制御装置としてブルートゥースを利用可能な携帯電話またはパーソナルデジタル携帯情報機器(PDA)を含んでもよい。このような場合には、ブルートゥース・リピータがアクセスステーションとしてもちいられてもよい。ブルートゥース・リピータは、ブルートゥース・リピータが受信する信号を単に再送する器具である。かかるシステムの体温計は、ブルートゥーストランシーバを含む。
【0073】
また別の例として、体温計が、体温計について起動されてもよい非常ボタンを更に含み、体温計の器具IDを含む医学的注意に対する非常事態要請を送信してもよい。体温計の近くのアクセスステーションは、送信された非常事態要請を受信して制御装置にそのステーションIDと共にそれを転送する。制御装置は非常事態要請を受信するとすぐ、ディスプレイスクリーン上にメッセージを表示する。メッセージは、「警告:会議室BにいるA氏は、即座の配慮が必要である。2003年4月2日、午後1:25にメッセージが記録された。」であってもよい。そのときオペレータは、ヘルスケア要員を直ちに召集してA氏の世話をさせることができる。
【0074】
また別の実施例として、体温計が、固有の器具IDを含み、セキュリティアクセス器具としても倍加する。例えば、体温計を携帯する人が保安エリアへの入口に近づくと、入口のアクセスステーションが器具IDを認証し、よってその人に接近を許すかまたは許さない。
【0075】
さらにまた別の例として、領域をセルへ分割することは、建物のいくつかの場所の各々に送信器を配置することを含んでもよい。各々の送信器が用いられてビーコンとしてそれぞれの場所識別子を送信する。各々の器具がある場所へと移動するときに、器具は送信された場所識別子を受信して、測定値及び器具を用いて測定値が得られる時間をそれに関連させることができる。測定値が得られるたびに、関連する測定値、時間及び場所識別子が器具によって遠隔場所に送信されてもよい。あるいは、器具識別子とともに、関連する測定値、時間及び場所識別子が、器具に記憶されて後の時間に遠隔位置でにアップロードされてもよい。後者の実施は、ある健康状態にある人の即時の検出、識別及び場所を可能しないにもかかわらず、集められて器具に記憶されたデータは、人が該健康状態を有しているまさにそのときにその人の物理的近接にいた人々がその後識別されることを可能にする。データはまた、人が該健康状態を有しているとその後検出される前のある選択された期間その人と物理的近傍にいた人々を識別するために用いられてもよい。場所識別子は、また、建物の各々の場所でタグに記録される情報であってもよい。かかる場合において、体温計はタグを読むために用いられてもよい。体温計が上記したようなセキュリティアクセス器具として用いられる場合、それが各々の場所に接近するために用いられると、場所識別子が体温計に送信されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の実施例による、少なくとも1人の人の少なくとも1つの生理的パラメータ及びある領域内での動きを捕捉し、制御装置に接続された多数のアクセスステーションを含んでいるシステムの概略図である。
【図2A】図1の制御装置に記憶される記録表を示す図である。
【図2B】図1の制御装置に記憶される別の記録表を示す図である。
【図2C】図1の制御装置に記憶されるまた別の記録表を示す図である。
【図3A】図1のアクセスステーションがそのデータ送信を受信することができる体温計のブロック図を示す概略図である。
【図3B】図3Aの体温計用筐体の平面図を示す図である。
【図3C】図3Aの筐体の側面図を示す図である。
【図3D】図3Aの筐体の別の側面図を示す図である。
【図3E】図3B、3C及び3Dに示される体温計用ホルダーの等角投影図である。
【図4】図1のシステムを作動するステップの主手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の制御装置において実施する接触探知手順を示すフローチャートである。
【図6A】体温計のデータ送信を減らすために制御装置において実施される手順示すフローチャートである。
【図6B】体温計のデータ送信を減らすために体温計において実行される手順を示すフローチャートである。
【図7】体恩修正要因を判定する手順を示すフローチャートである。
【図8】ある人についての個々の閾値を判定する手順を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1人の人の少なくとも1つの生理的パラメータ及びある領域内での動きを捕捉して観察する方法であって、
前記領域をそれぞれ場所識別子を有するセルに分割するステップと、
各人に各人の少なくとも1つの生理的パラメータを測定する各自の器具を提供し、前記生理的パラメータが前記人がある健康状態にあるかどうかを示し、各々の器具が器具識別子を有するステップと、
各自の器具を用いて各人の生理的パラメータを少なくとも間欠的に測定して各測定に対する生理的パラメータ測定値を得るステップと、
前記生理的パラメータが得られるセルのそれぞれの場所識別子及び時間によって、前記生理的パラメータ測定値の選択された数の各々を少なくとも選択された数の前記器具のそれぞれの器具識別子と関連させるステップと、
前記関連する生理的パラメータ測定値、器具識別子、場所識別子及び時間を記憶するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記観察が遠隔場所から実施されることを特徴とし、
前記方法が、
前記関連する生理的パラメータ測定値、器具識別子、場所識別子及び時間を前記遠隔場所に送信してそこで記憶させるステップを更に含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記生理的パラメータ測定値を第1の予め定められた生理的パラメータ閾値と比較して前記人が適切に前記装置を装着しているかどうか判定するステップをさらに含む請求項1及び2記載の方法。
【請求項4】
前記人が適切に器具を装着していないと判定される場合に、生理的パラメータ測定値と関連する前記器具識別子及び前記場所識別子を用いている人を識別して位置を示すステップを更に含む請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記生理的パラメータ測定値を第2の予め定められた生理的パラメータ閾値と比較して、前記人がある健康状態にあるかどうかを判定するステップをさらに含む請求項1乃至4記載の方法。
【請求項6】
前記人が前記健康状態にあると判定される場合に、前記生理的パラメータ測定値に関連する前記器具識別子及び前記場所識別子を用いている前記人を識別して位置を示すステップを更に含む請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記第2の予め定められた生理的パラメータ閾値が個々に予め決められることを特徴とする請求項5及び6に記載の方法。
【請求項8】
前記人に対して個々に判定される生理的パラメータ修正要因によって前記生理的パラメータ測定値を調整してから前記調整された生理的パラメータ測定値を前期第1または前記第2の予め定められた生理的パラメータ閾値と比較するステップをさらに含む請求項3乃至7記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1人の他の人のそれぞれの器具から測られる少なくとも1つの生理的パラメータ測定値に関連する時間及び場所識別子を前記識別されて位置を示された人の前記時間及び場所識別子と一致させるステップと、
一致する場合に前記他の人が前期識別されて位置を示された人の物理的近傍にいたと識別するステップと、
を含む請求項6乃至8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1人の人の少なくとも1つの生理的パラメータ及びある領域内での動きを捕捉して観察するシステムであって、
遠隔制御装置と、
前記領域内で空間的配置において設けられて前記領域をそれぞれのセルに分割し、さらに、各々がそれぞれステーション識別子を有し、前記制御装置に接続されて、第1の人に取付けられた少なくとも1つの生理的パラメータ測定器具から生理的パラメータ測定値及びそれぞれの器具識別子を受信し、前記受信した生理的パラメータ測定値及び前記器具識別子をそのステーション識別子とともに前記制御装置に送信するように用いられることを特徴とする複数のアクセスステーションと、
前記生理的パラメータ測定値、前記器具識別子、前記ステーション識別子及び前記生理的パラメータ測定値が前記器具によって取得された時間が、前記制御装置において第1の記録に記憶されることを特徴とするシステム。
【請求項11】
前記制御装置が用いられて、前記生理的パラメータ測定値を第1の予め定められた生理的パラメータ閾値と比較して前記第1の人が適切に前記装置を装着しているかどうか判定することを特徴とする請求項10記載のシステム。
【請求項12】
前記制御装置がさらに用いられて、前記生理的パラメータ測定値に関連する前記器具識別子及び前記場所識別子に対応する情報を提供し、前記第1の人が前記器具を適切に装着していないと判定される場合に前記第1の人を識別して位置を示すことを特徴とする請求項11記載のシステム。
【請求項13】
前記制御装置が用いられて、前記生理的パラメータ測定値を第2の予め定められた閾値と比較して、前記第1の人がある健康状態にあるかどうか判定することを特徴とする請求項10乃至12記載のシステム。
【請求項14】
前記制御装置がさらに用いられて、前記生理的パラメータと関連する前記器具識別子及び前記場所識別子に対応する情報を提供し、前記第1の人が前記健康状態にあると判定される場合に前記第1の人を識別して位置を示すことを特徴とする請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記第2の予め定められた生理的パラメータ閾値が、前記第1の人に対して個々に予め定められていることを特徴とする請求の範囲13及び14記載のシステム。
【請求項16】
前記生理的パラメータ測定値が調整されて、前記調整された生理的パラメータ測定値を前記第1または第2の生理的パラメータ閾値のいずれかと比較する前に、前記第1の人に対して個々に判定される生理的パラメータ修正要因を含むことを特徴とする請求項11乃至15記載のシステム。
【請求項17】
前記制御装置が用いられて、少なくとも1人のその他の人の別の各自の器具から得られる少なくとも別の記録の日付、時間及び場所識別子を前記第1の記録の日付、時間及び場所識別子と一致させて、一致があれば少なくとも1人のその他の人が前記第1の人の物理的近傍にいるということを識別することを特徴とする請求項14乃至16記載のシステム。
【請求項18】
前記制御装置が用いられて、前記第1の人が前記器具を適切に装着していないかまたは前記健康状態にあるかのいずれかと判定される場合に、警告メッセージを生成し、前記警告メッセージが前記ステーション識別子及び前記器具識別子に対応する情報を含むことを特徴とする請求項11乃至17記載のシステム。
【請求項19】
前記警告メッセージが、前記制御装置が接続可能である通信ネットワークを介して予め定められた受取人に送出されることを特徴とする請求項18記載のシステム。
【請求項20】
前記通信ネットワークが、公衆通信ネットワークであることを特徴とする請求項19記載のシステム。
【請求項21】
前記制御装置が用いられて、前記器具にその器具識別子及び前記器具で測定された生理的パラメータ測定値を送信するように指示することを特徴とする請求項10乃至20記載のシステム。
【請求項22】
前記制御装置が用いられて、少なくとも1つの選択されたアクセスステーションを介して対応する指示を放送することによって前記器具に指示し、前記指示が前記少なくとも1つの選択されたアクセスステーションのサービスエリア内の全ての器具で受信可能であることを特徴とする請求項21記載のシステム。
【請求項23】
前記第1の人に取付けられて前記第1の人の少なくとも1つの生理的パラメータを観察する少なくとも1つの生理的パラメータ測定器具を含み、各々の器具が器具識別子を有していて前記セル内にあるときに前記セルの前記各アクセスステーションに接続されていることをさらに含む請求項10乃至22記載のシステム。
【請求項24】
生理的パラメータ測定器具であって、
変換器と、
送信器と、
前記変換器及び前記送信器に接続されていて、前記変換器を制御して人の生理的パラメータを少なくとも間欠的に測定しかつ、前記測定値が少なくとも予め定められた閾値からはずれていると判断される場合に前記送信器を制御して前記測定された生理的パラメータに対応する測定値を送信するようになすプロセッサと、
を含む測定器具。
【請求項25】
前記プロセッサに接続された受信器を更に含み、前記測定値が、前記プロセッサが前記レシーバを介してそうするようにという指示を受信する場合にだけ、前記測定値が送信されることを特徴とする請求項24記載の器具。
【請求項26】
第1の部分と、
第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間で接続している可撓性中間部分と、
を有する筐体をさらに含み、筐体をさらに含む請求項24及び25記載の器具。
【請求項27】
前記器具が体温計であることを特徴とする請求項24乃至26記載の器具。
【請求項28】
前記プロセッサ、前記送信器及び前記受信器が前記第1の筐体部分に収容され、前記変換器が前記第2の筐体部分で支持されることを特徴とする請求項27記載の器具。
【請求項29】
前記第1及び第2の部分が互いの方へ屈曲可能であって、衣類の1部に引っかかるU字形の器具を画定し、前記変換器が人の腹部と接触してそこで体温を測定することを特徴とする請求項28記載の器具。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−521030(P2007−521030A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504433(P2005−504433)
【出願日】平成15年7月17日(2003.7.17)
【国際出願番号】PCT/SG2003/000171
【国際公開番号】WO2005/006970
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【出願人】(506014033)カディ サイエンティフィック プライベート リミテッド (1)
【Fターム(参考)】