説明

就寝中の寝具内温湿度を用いた快眠数値化方法

【課題】快適な睡眠を計る普遍的な数値の尺度がない。そこで、人の体温や体脂肪率のように明快で、かつ物理的な数値の尺度を提供する。
【解決手段】就寝中の時系列の温湿度記録を温湿度ロガーにて採取し、そのデータをパソコンにて処理をすることにより、快眠温湿度域ヒット率という新しい数値を計算する。快適な睡眠を計れる初めての数値の尺度として、この快眠温湿度域ヒット率を導入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、就寝中の布団もしくはベッドの、寝具内温湿度から、快適な睡眠の判定や比較ができる普遍的な尺度としての数値を
算出する事に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、温度や湿度を計るセンサーおよびその記録具としてのロガーと呼ばれる機器は存在する。本発明は、それらを利用し、コンピュータプログラムを使う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
快適な睡眠を計る普遍的な数値の尺度がまだない。
人の体温や体脂肪率のように明快で、かつ物理的な数値の尺度がないため安眠の判定方法がなく不便である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
温湿度センサーとその記録ができる記憶装置を利用し、
就寝中の時系列の温湿度記録を採取し、
コンピュータプログラムを使って処理し、
快眠温湿度域ヒット率という新しい数値を算出する。
この快眠温湿度域ヒット率が、快適な睡眠を計る初めての普遍的で単純な数値の尺度となる。これが安眠の判定方法となる。
【0005】
快眠温湿度域ヒット率の考え方は、人間が就寝時に快適と感じる温湿度域に、睡眠中の寝具内環境がどのくらい当てはまったかの割合を基本とする。快適域内であった確率とでも呼んでよい数値である。最高は100%の値となる。
【発明の効果】
【0006】
前記の快眠温湿度域ヒット率が、睡眠の快適さを表わす初めての普遍的な尺度となり以下のような利益を生み出す。
季節ごとの寝具選択への判断や、睡眠時の空調機のレベル選択への判定、その日の体調の予測や早めの措置、健康のための目標値や、基準値の設定、他人との比較、がこの数値を使って可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】温湿度ロガーの使用の見取り図
【図2】温湿度の時間経過図
【図3】温湿度の快適域へのプロットの例
【図4】図2の一部を拡大
【実施例】
【0008】
まず以下の旧知の事柄を前提とし、実施例を記述する。
睡眠時の快適さは、睡眠時の寝具内の温湿度の影響が大きい。またその快適域は、おおよそ決まっている。睡眠時の着衣や室内の温湿度、および就寝開始時と終了時、などで多少の差はあるが、おおよそ成人であれば、温度は摂氏33℃±1℃の範囲で、その中心値の誤差も1℃未満。湿度については45%±5%である。特に温度に関しては、驚きであるが季節、性別、人種にはほとんど差が出ない。
ただ誤差が生じるのが、測定する寝具内の場所の問題である。通常は人体に直接接触しない寝着と布団との間の腰やお腹付近の空気を測定する。しかしそれが敷き布団側の場合、つまり就寝者から見て下側の場合、快適な温度は摂氏33℃±1℃と言われており、上布団側のそれは、約32℃±1℃と異なる。湿度も同じように若干だが異なる。
以上の事を前提とし、今回は敷き布団側、つまり寝着と敷き布団の間の、お腹の位置の空気の温湿度を計った。実際に快眠温湿度域ヒット率を計算し、その算出方法の説明とする。まず温湿度の快適域は図3の四角の枠の中となる。縦軸が温度、横軸が湿度で、温度32℃〜34℃、湿度は40%〜50%の枠である。
【0009】
就寝時の温湿度を記録する温湿度ロガーと呼ばれる機器のセンサー部分を寝具内に入れる。図1の見取り図を参照。センサーは、就寝者の寝着と敷き布団の間で、お腹のあたりに設置する。寝返りなどでセンサーの位置がズレないようにシーツと糸で敷き布団に固定する。今回のデータのサンプリング間隔は、1分間隔とした。手持ちのセンサーおよびロガーの機能は、その60倍の毎秒間隔の記録も可能であったが、図2のグラフの時刻の目盛が見えにくい事と、1分間隔でも十分精度の高い数値が得られるという確信を、繰り返しの計測の経験から得られたので、1分とした。
【0010】
ロガーで記録されたデータはパソコンに持ち込み処理した。図2のグラフにあるような、1分間隔の時系列の温度と湿度のデータが採取された。この図2のグラフは横向きなので、向かって右側に見える目盛は実際には水平軸で経過時間である。約6時間分の経過時間の表示となっている。下に見えるのが温度の摂氏の軸で、実際には垂直軸で左側に位置する。目盛は摂氏20℃〜35℃を表示している。上に見えるのが、湿度の割合の軸で実際には垂直軸で右側に位置する。目盛は30%〜65%を表示している、その図2の基データを、図3にある快適域が中心となって、温度と湿度がXY軸になっているグラフに1つ1つプロットしてゆく。図3自体は処理のイメージを表現したもので、実際にこのグラフをコンピュータに作図させる必要はない。枠内にプロットされる割合が得たい結果である。
【0011】
前記の図3の快適域の中にプロットされたデータ数の全体に対する割合が快眠温湿度域ヒット率となる。ただし睡眠開始後15分間は除外値として、対象から除いた。また寝返り具合によっては、センサーが寝具外にはみ出してしまう場合も考えられるので、採取温度と室温とが3℃まで接近したら異常値として予め除外するルールとした。が、今回該当はなかった。これら除外のルールにはまだ議論の余地がある。
【0012】
今回のデータの快眠温湿度域ヒット率は36%であった。対象睡眠時間6時間11分、分析対象データ数356個、その内、快適域の数が129個であった。129÷356≒0.36にて割り出された。
【0013】
本来の目的ではないが、今回の結果数値36%と基データの分析をしてみる。
図2の6の台形a、7の台形b、の部分をご覧いただきたい。この台形の形をしているのは、温度の数値である。その部分を拡大した図4の方も参照していただきたい。こちらは本来の時間軸を水平軸に戻してある。かつ34℃と32℃の快適域の境界線が水平に入っている。まず、そもそもこの台形の形状の理由は、36℃前後が最高温度である発熱体としての人体の熱と、熱が床、空気などに逃げてゆく冷却体としての寝具全体とが、この台形の頂上の部分で均衡している状態と考えられる。一定時間後に必ず急降下しているのは、寝具内を暑く感じた為の無意識の払いのけ動作か、それとも正常な定期的寝がえりか、どちらかの理由であろう。このデータの場合、台形aから急降下して、次の快適域に復帰するまで30分以上もかかっている事から、前者でなければ、よほど寝像の悪い就寝者だったのであろう。しかし、もし前者の場合、この就寝者の温度の快適上限値は24℃より少し下という事になる。なぜなら24℃以下で、この急降下が複数回起きている。よって24℃は快適域の外と見るのが普通である。
そこで、快適温度の中心値を最大誤差範囲の−1℃の範囲で33℃から32℃に変更して、温度の快適域が31℃〜33℃として再計算してみた。結果、快眠温湿度域ヒット率は36%を逆に大きく下回った。また中心値を32.5℃としてもやはり少し36%を下回る。つまり、温度の快適上限値が24℃より仮に下としても、今回の睡眠環境は、快眠には程遠いよくない環境と言える。
結果数値36%と基データの分析の結論としては、採取した睡眠環境は、温度の台形の形状と急降下の形が複数回、対になっている事から、時間が経つと寝具内が非常に暑くなる改善の余地がある環境と言えるだろう。また今回の計算では、中心値の誤差の移動を考慮に入れていない。考慮に入れれば36%よりもっと悪い数値になりますます改善すべき睡眠環境と判断される。
【0014】
データの採取日時は、2010年2月9日深夜から翌10日の早朝まで。睡眠時間6時間11分中、5時間56分がデータの対象範囲となった。完全な冬期であるが室温はエアコンで20℃に設定した状態で行った。温湿度ロガーは国内メーカーの製品を使った。
【0015】
尚、この快眠温湿度域ヒット率と睡眠の時間数とを組み合わす事で新たな睡眠の量的な尺度数値の可能性も考えられる。
【符号の説明】
【0016】
1 センサー
2 操作盤
3 温度目盛
4 湿度目盛
5 時刻目盛
6 台形a
7 台形b
8 快眠温湿度の枠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
就寝中に寝具内の温湿度をセンサーを使い採取するステップと、
該センサーで検知したデータを記録するステップと、
該記録データが所定の領域内におさまっているかの割合を判定するステップからなることを特徴とする、快適な睡眠を計る判定方法。
【請求項2】
温湿度をセンサーを使い、
該センサーで検知したデータを記憶し、
該記録データが所定の領域内におさまっているかの割合を判定するプログラムとで構成される、快適な睡眠を計る基準値を算出するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−167434(P2011−167434A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35625(P2010−35625)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(310006213)株式会社ハイパー・システムズ (2)
【Fターム(参考)】