説明

局所滞留性徐放性マイクロ粒子

【課題】本発明の目的は、粘膜への付着性に優れ、局所滞留性、徐放性に優れた付着性マイクロ粒子およびその製剤を提供することにある。
【解決手段】本発明は、薬物を含有する平均粒子径5〜50μmのマイクロ粒子の表面に付着性微粒子が乾式被覆された、粘膜付着率が30〜100%の付着性マイクロ粒子、その製造方法、並びに該マイクロ粒子を含有する投与剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘膜への付着性に優れた局所滞留性徐放性のマイクロ粒子、その製造方法および該マイクロ粒子の投与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物を生体に作用させる場合、その疾患部位に直接投与できれば経口投与あるいは注射投与などで全身に投与して血液を介して疾患部位に到達させるよりも少量の薬物で済み好ましい。また、その部位に長期間にわたり滞留し、その間、薬物を徐々に放出すれば治療効果は大きく高まる。このときに投与される剤形は、微粒子であることが狭い局所にも投与できるので好ましい。また、その素材は、生体内消失性(生体内分解性も含む)であることが好ましい。口腔内などでは非消失性でも体外に排泄されるが、眼内、鼻腔内、耳腔内あるいは特定の外用部位などでは一度投与されるとその部位から排泄されず、薬物が消費された後に空の製剤を取り除かねばならない。しかし、取り除くことは容易でないので生体内消失性であることが好ましい。
【0003】
生体内消失性または分解性の物質としては、ポリ乳酸(PLA)およびポリ乳酸・グリコール酸(PLGA)が一般的によく用いられる。PLAおよびPLGAは、生体内で加水分解して徐々に消失する性質をもつ(例えば、非特許文献1,特許文献1)。生体内で消失する速度は、分子量および乳酸とグリコール酸の組成比率で異なり、目的によって的確な消失期間を設定することができる利点をもっている。
生体粘膜に付着する物質は、いくつかが明らかにされている(例えば、非特許文献2、3および特許文献2)。これらの物質の多くは、一度水分によって膨潤すると粘膜への付着力は消失する。
【0004】
従来、粘膜付着性物質を利用した局所滞留型のマイクロ粒子についての研究はいくつかあるが(例えば、非特許文献2、4、5)、いずれもマイクロ粒子(マイクロカプセル)の素材は、生体内非消失性である。
これまでに薬物含有PLGAマイクロ粒子に付着性物質を被覆した例は、未だみいだせないがナノスフェアに粘膜付着性物質としてキトサンを被覆した報告がある(非特許文献6、特許文献3)。ここでは、キトサン水溶液中にPLGAナノスフェアを分散し、これを凍結乾燥することで表面を改質した(被覆)ナノスフェアを得ている。しかし、この方法をマイクロ粒子に適用すると粒子同士が凝集して、塊となり、マイクロ粒子としての有効な利用ができない。この凝集を避けるためにこの特許文献3においてはポリビニルアルコール(PVA)を凍結乾燥前に配合することが記載されている。しかし、PVAを添加すると付着性が得られなくなる。
【非特許文献1】Y. Ogawa: Journal of Biomaterial Science Polymer Edition 8: 391-409 (1997)
【非特許文献2】Y. Akiyama et al: Pharmaceutical Research 12: 397-405 (1995)
【非特許文献3】R. Krishnamoorthy and A.K. Mitra: Drug and the Pharmaceutical Sciences Vol. 10: 199-221
【非特許文献4】Z. Liu et al: Journal of Controlled Release 20: 135-144 (2005)
【非特許文献5】Y. Miyazaki et al: International Journal of Pharmaceutics 258: 21-29 (2003)
【非特許文献6】H. Yamamoto et al: Journal of Controlled Release 102:373-381 (2005)
【特許文献1】特開昭61−111326号公報
【特許文献2】米国特許4226848号明細書
【特許文献3】特開平11−116499号公報
【特許文献4】国際公開公報WO2004/112827
【特許文献5】国際公開公報WO2005/082405
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、粘膜に長期間付着し、長期間にわたり薬物を徐放させることができる付着性マイクロ粒子を提供することにある。本発明の目的は、体内で分解する付着性マイクロ粒子を提供することにある。また本発明の目的は、該付着性マイクロ粒子の製造方法を提供することにある。また本発明の目的は、該マイクロ粒子を含有する投与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、マイクロ粒子の表面に付着性微粒子を被覆した付着性マイクロ粒子について、その粘膜への付着性を向上させる方法について鋭意検討した。その結果、マイクロ粒子に付着性微粒子を被覆する際に、溶媒などを用いず、乾式被覆するとマイクロ粒子の粘膜への付着性が向上することを見出し、本発明を完成した。
【0007】
即ち、本発明は、薬物を含有する平均粒子径5〜50μmのマイクロ粒子の表面に付着性微粒子が乾式被覆された、粘膜付着率が30〜100%の付着性マイクロ粒子である。
【0008】
また本発明は、薬物を含有する平均粒子径5〜50μmのマイクロ粒子と付着性微粒子とを乾式混合することを含む付着性マイクロ粒子の製造方法である。
【0009】
また本発明は、該付着性マイクロ粒子および酸性水を含有し、付着性微粒子が架橋ポリアクリル酸である投与剤を包含する。また本発明は、該付着性マイクロ粒子および水を含有し、付着性微粒子がキトサンである投与剤を包含する。さらに本発明は、該付着性マイクロ粒子およびグリセリンを含有するペースト状投与剤を包含する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の付着性マイクロ粒子は、優れた粘膜への付着性を有する。従って、粘膜に付着して薬物を徐放することができる。本発明の付着性マイクロ粒子は、生分解性の材料から構成されているので付着部位で消失する。本発明の製造方法によれは、粘膜への付着性に優れた付着性マイクロ粒子を製造することができる。本発明の投与剤は、粘膜への付着性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(マイクロ粒子)
マイクロ粒子は、ポリマー、多孔性ヒドロキシアパタイト、多孔性ヒドロキシアパタイト誘導体等で形成されていることが好ましい。薬物自身の溶出が遅い場合には、薬物単剤をマイクロ粒子としてもよい。マイクロ粒子はマイクロカプセルと呼ぶこともある。
マイクロ粒子を構成するポリマーは、100〜50モル%の乳酸由来の繰り返し単位(乳酸単位)および0〜50モル%のグリコール酸由来の繰り返し単位(グリコール酸単位)を含有するポリマーである。ポリマーは、ポリ乳酸のホモポリマー(PLA)でも、乳酸とグリコール酸との共重合体(PLGA)であってもよい。該ポリマー(PLGA)は、90〜50モル%の乳酸単位、10〜50モル%のグリコール酸単位を含有するポリマーであることが好ましい。
該ポリマーのカルボキシル末端またはヒドロキシ末端をエステル化したポリマーでもよい。エステル残基としてはメチル、エチル、アセチルなどが好ましい。
該ポリマーの重量平均分子量は、好ましくは3,000〜50,000、より好ましくは3,000〜30,000である。本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定した値である(例えばY. Ogawa et al: Chemical and Pharmaceutical Bulletin 36: 1095-1103 (1988))。
【0012】
また、マイクロ粒子素材として生分解性であればPLGAに限定することはない。マイクロ粒子素材として例えば、多孔性ヒドロキシアパタイトまたはヒドロキシアパタイトのカルシウム原子の一部を亜鉛原子に置換した多孔性ヒドロキシアパタイト誘導体などが挙げられる(特許文献4、5)。マイクロ粒子を構成する多孔性ヒドロキシアパタイトまたはその誘導体マイクロ粒子は、ナノ粒子が集合した多孔性のマイクロ粒子であって、無機反応によってナノ粒子の水酸化リン酸カルシウムを合成し、この水懸濁液をスプレードライなどの方法によって製造することができる。
その誘導体とは、ヒドロキシアパタイトの構成カルシウム原子を亜鉛原子に置換したものを意味する。カルシウム原子の亜鉛原子への置換率は、モル比で1/100〜1/10が好ましい。多孔性構造は、ヒドロキシアパタイトの場合と同様にして作製することができる。このような多孔性ヒドロキシアパタイト類は、タンパクを吸着する性質があり、タンパクを安定に封入したマイクロ粒子を調製することができる(特許文献4および5参照)。
【0013】
また生体内消失性の素材に薬物を封入せずに、薬物自身の溶出が遅い場合には、薬物単剤を微粒子化し、これに付着性の物質を被覆してもちいてもよい。
従って、マイクロ粒子は、薬物および多孔性ヒドロキシアパタイトまたは多孔性ヒドロキシアパタイト誘導体を含有することが好ましい。またマイクロ粒子は、薬物および100〜50モル%の乳酸由来の繰り返し単位と0〜50モル%のグリコール酸由来の繰り返し単位とからなるポリマーを含有することが好ましい。またマイクロ粒子は、薬物単独であることが好ましい。
【0014】
(薬物)
マイクロ粒子に内包する薬物としては、眼科用剤、耳鼻咽喉科用剤、皮膚科用剤、歯科・口腔用剤、婦人科用剤等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
眼科用剤の例としては、抗菌薬としてオフロキサシン、レボフロキサシン、抗ウイルス薬としてアシクロビル、緑内障治療薬としてチモロール、ニプラジロール、ブナゾシン、ウノプレストン、アセタゾラミド、抗アレルギー薬としてデキサメタゾン、ベタメタゾン、フルチカゾンなどが挙げられる。耳鼻咽喉科用剤の例としては、副鼻腔炎治療薬としてクラリスロマイシン、オフロキサシン、抗アレルギー薬としてベポスタチン、ラマトロバン、プランルカスト、ロラタジンなどが挙げられる。皮膚科用剤の例としては、褥瘡および皮膚潰瘍治療薬としてブクラデシン、プロスタグランジンE1などが挙げられる。歯科・口腔用剤の例としては、歯周病治療薬としてミノサイクリンなどが挙げられる。婦人科用剤の例としては、真菌症治療薬としてアムホテリシンB、フルコナゾールなど、カンジダ症治療薬としてミコナゾール、ナイスタチン、エコナゾールなど、子宮頚管炎治療薬としてジスロマックなどが挙げられる。
【0015】
マイクロ粒子が多孔性ヒドロキシアパタイトの場合、薬物としてタンパク性薬物が好ましい。具体例としては、ヒト成長ホルモン、インターフェロン類、EPO,G−CSF,ミッドカイン、HGF、NK4などがある。
薬物の含有量は、薬物の活性の強さあるいは徐放期間などによって異なるが、ポリマーまたはヒドロキシアパタイト類に対して、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは2〜10重量%である。薬物含有率は、高い方が徐放システム全体の投与量は小さくなるので投与部位によっては好ましい。
【0016】
(粒子径)
マイクロ粒子の平均粒子径は、好ましくは0.5〜200μm、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは10μm〜50μmである。多孔性ヒドロキシアパタイト類は、若干小さく5〜50μmが好ましく用いられる。その平均粒子径は、後述のように付着性微粒子を被覆するためにある程度の大きさが必要である。本明細書における平均粒子径は、顕微鏡観察写真における任意の50個の粒子の直径の算術平均値である。
薬物単剤または薬物を主成分とする混合物の場合、平均粒子径は、好ましくは0.5〜200μm、より好ましくは0.5〜100μm、さらに好ましくは10μm〜50μmである。粒子の形態は、変形していてもよいが、球に近い方がより好ましい。
【0017】
(製造方法)
PLGAマイクロ粒子は、公知の溶媒除去法、相分離法などにより製造することができる(例えば、非特許文献1に記載)。マイクロ粒子は、例えば、
(i)ポリマーおよび薬物を溶剤に添加しO相を調製する工程、
(ii)分散剤を水に添加しW相を調製する工程、
(iii)W相にO相を混合してO/Wエマルションを調製する工程、
(iv)エマルションから溶剤を揮発させた後、凍結乾燥する工程、
により製造することができる。
【0018】
O相は、ポリマーおよび薬物を溶剤に添加し、溶解または分散させて調製する。溶剤として、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられる。溶剤の量は、ポリマー100重量部に対し、好ましくは100〜1,000重量部、より好ましくは100〜500重量部である。また、O相中に、さらに2価の金属化合物を添加してもよい。O相中に2価の金属化合物を添加すると、薬物によってはより高い封入率でマイクロ粒子内に封入することができる。
W相は、分散剤を水に添加し、溶解させ調製する。分散剤として、ポリビニルアルコール、ポリソルベート80などが挙げられる。分散剤の量は、水100重量部に対し、好ましくは0.05〜2重量部、より好ましくは0.05〜1重量部である。さらに、安定化剤、糖などを添加してもよい。
O/Wエマルションは、W相にO相を混合して調製する。O相とW相との重量比(O/W)は、好ましくは1/1〜1/100、より好ましくは1/1〜1/50である。
溶剤の揮発は、O/Wエマルションを10〜100倍量のW相中に投入し、ゆっくり攪拌しながらO相中の溶媒を揮散し、乾燥する(水中乾燥)ことにより行う。遠心分離によりマイクロ粒子を集め水に再分散したのち、これを凍結乾燥し粒子が得られる。再分散する水には必要に応じて糖等を添加する。
【0019】
マイクロ粒子の製造時には、薬物封入率を高めるため、あるいは、放出性を制御するために適当な添加物を加えてもよい。添加物としては、金属酸化物などが挙げられる。さらにPLGAの誘導体でもよい。たとえばカルボキシル基末端を脂肪族アルコールでエステル化したもの、親水性基のポリエチレングリコールなどとのブロック共重合体などが挙げられる。
多孔性ヒドロキシアパタイト類のマイクロ粒子の製造方法は、多孔性ヒドロキシアパタイトまたはその誘導体の粒子をタンパク性薬物水溶液中に懸濁させ、攪拌することでタンパクはヒドロキシアパタイト類中に吸着する。さらに、溶出抑制効果のある物質などを添加してもよい(例えば特許文献4に記載)。
【0020】
(付着性微粒子)
付着性微粒子は、マイクロ粒子よりも小さい粒子径である方が好ましい。すなわち、付着性微粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.1〜10μm、さらに好ましくは0.1〜5μmである。しかし、付着性微粒子がマイクロ粒子よりも大きい場合でも後述の攪拌などによって付着性微粒子が変形し、マイクロ粒子表面を被覆する場合もある。このような軟質の付着性微粒子を用いる場合は、その粒子径は限定されない。
付着性微粒子として、架橋ポリアクリル酸、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ヒドロキシプロピルセルロース、これらの混合物などの粒子が挙げられる。架橋ポリアクリル酸として、カルボキシビニルポリマー(ハイビスワコー104)などが挙げられる。就中、架橋ポリアクリル酸の粒子、キトサンの粒子が好ましい。
付着性微粒子の割合は、付着性微粒子とマイクロ粒子との合計重量に対して、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0021】
(粘膜付着率)
本発明の付着性マイクロ粒子の粘膜付着率は、ラットの消化管粘膜で評価することができる。具体的には、ラット小腸(空腸)を通常の方法で反転させ、約8cmに切断する。秤量皿に付着性マイクロ粒子10mgを秤り採り、これに反転空腸を載せて付着性マイクロ粒子を塗す。これを37℃のインキュベーションチャンバー中で数分間保持し、これに1mLのPBSを加える。これを37℃で1時間放置する。その後、空腸を取り出し、PBSで空腸表面を洗浄後、反転空腸に残存している薬物を定量する。付着率は、はじめに秤り採った薬物重量に対する付着した薬物重量の百分率で表す。本発明の付着性マイクロ粒子の粘膜付着率は、30〜100%、好ましくは40〜100%、より好ましくは50〜98%である。
【0022】
(付着性マイクロ粒子の製造方法)
本発明の付着性マイクロ粒子は、薬物を含有する平均粒子径5〜50μmのマイクロ粒子と付着性微粒子とを乾式混合することにより製造することができる。マイクロ粒子は、前述の方法で製造することができる。
付着性微粒子の水溶液にマイクロ粒子を分散し、これを凍結乾燥するとマイクロ粒子同士が凝集して塊となる。本発明者らは、マイクロ粒子と付着性微粒子とを、水などの溶媒を用いず乾式で混合すると、意外にも付着性微粒子がマイクロ粒子の表面に均一に被覆されることを見出した。得られた粒子は、分散性もよく、粉末同士の凝集は、ほとんどみられなく、仮に凝集しても再分散は容易である。また、分散剤を含有した水溶液中にもよく分散した。
【0023】
PLAまたはPLGAマイクロ粒子の強度は、それほど強くないのでマイクロ粒子と付着性微粒子とを混合する際には、剪断力を強くかけない方が好ましい。たとえば剪断力の強いタービン型ミキサー、攪拌羽をすり合わせるような攪拌機を用いるとマイクロ粒子が破壊され、徐放性の保障が困難となる。また、混合時に強く発熱する方法も好ましくない。発熱により40℃以上になると該マイクロ粒子のガラス転移点に近づくまたは超えるのでマイクロ粒子が軟化し、凝集する懸念がある。
多孔性ヒドロキシアパタイトまたはその誘導体を用いたマイクロ粒子では薬物としてタンパクを用いるのでマイクロ粒子と付着性微粒子とを混合する際には、剪断力を強くかけない方が好ましい。
【0024】
いずれのマイクロ粒子の場合でも、薬物単独または薬物を主成分とする混合物の場合でも、混合機としては、V型混合機、ボールミル、フローミキサー、自転公転遠心型攪拌機などを用いて混合することが好ましい。なかでも自転公転遠心型攪拌機(脱泡攪拌機)が好ましい。自転公転遠心型攪拌機とは、撹拌翼にて撹拌するものではなく、攪拌の対象となる材料を収納した容器自体を自転させながら公転させることにより、材料の攪拌を行う攪拌脱泡装置である。この場合でも、長時間連続攪拌すると内容物の温度が上昇するので好ましくない。内容物(マイクロ粒子と付着性微粒子)の温度を適宜測定し、35℃以上にならない範囲で間欠的に攪拌する方法が好ましい。このようにして薬物含有マイクロ粒子を核とした付着性マイクロ粒子を得ることができる。脱泡攪拌機では自転速度が800rpmで公転速度が1,000rpm〜2,000rpmで攪拌することが好ましい。
【0025】
(投与製剤)
本発明の付着性マイクロ粒子は、その含有する薬物を薬効成分とした局所粘膜付着性の医薬品として利用できる。その際、本発明の付着性マイクロ粒子のみで散剤として用いることもできるが、一般的に医薬品の製造に用いられている各種の添加剤を加えて、懸濁剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、吸入剤などに製剤化して用いてもよい。添加剤としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤、pH調整剤などを必要に応じて用いることができる。
また、付着性微粒子として架橋ポリアクリル酸を用いる場合は中性付近の水溶液中で膨潤し、粘膜に対する付着性が極端に低下するため、懸濁剤として用いる場合はpH4.0以下の酸性溶液に懸濁させて、投与するのが好ましい。従って、本発明によれば、本発明の付着性マイクロ粒子および酸性水を含有し、付着性微粒子が架橋ポリアクリル酸である投与剤が提供される。また、本発明の付着性マイクロ粒子および水を含有し、付着性微粒子がキトサンである投与剤が提供される。
【0026】
軟膏剤として投与するには、グリセロール軟膏やマグロゴール軟膏が好ましい。例えば、グリセロール軟膏の場合、付着性マイクロ粒子:グリセリン=1:0.5〜1:5(重量比)で練合し、場合によっては、酸化亜鉛等の添加剤を加えることができる。即ち本発明は、本発明の付着性マイクロ粒子およびグリセリンを含有するペースト状投与剤を包含する。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0028】
(粘膜付着率)
以下の例において、粘膜付着率の評価は以下の方法で行なった。即ち、4枚の秤量皿にマイクロ粒子10mgを秤り取り(n=4)、それらに約8cmの反転したラット小腸(空腸部)を置き、小腸表面にマイクロ粒子(マイクロカプセル)を塗した。続いて、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)1mLを添加し、この状態で37℃に60分放置した。その後、小腸を取り出し、20mLのPBSで十分に洗浄した。小腸に付着したマイクロ粒子中の薬物をアセトンで溶解抽出し、薬物量をHPLC法にて定量して付着量を求めた。はじめに秤り取った薬物量に対する、付着した薬物量の百分率を付着率として表1に示す。付着性の評価は、それぞれのマイクロ粒子について4点の試料を作製し4点の付着率の測定結果の平均値で評価した。
【0029】
(平均粒子径)
粒子の顕微鏡写真を撮影し、写真中の任意の50個の粒子の直径の算術平均値を求めた。
【0030】
(重量平均分子量)
以下の機器を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィ法で求めた。
TOSOH HLC−8020
カラム:TSKgel
溶離液および流量:THF 1.0mL/min
検知器:RI
【0031】
(マイクロ粒子Aの調製)
乳酸とグリコール酸の比率が50モル/50モルで重量平均分子量約8,000のPLGA1500mgを秤量し、これをジクロロメタン3mLに溶解した。この溶液に酸化マグネシウム14mgを添加し、数時間放置すると均一溶液となった。この溶液にミノサイクリン200mgを溶解した(油相)。
一方、ポリビニルアルコール(PVA)0.1重量%を精製水に溶解し水相とした。
水相に油相を激しく攪拌下で添加し、O/Wエマルションを調製し、その後、油相中のジクロロメタンを揮散させて(水中乾燥)さらに遠沈して、ミノサイクリンを含有するマイクロ粒子を調製した。さらに得られたマイクロ粒子を精製水で3回洗浄し、凍結乾燥して粉末状の約700mgのマイクロ粒子Aを得た。マイクロ粒子Aの平均粒子径は約30μmで、ミノサイクリンの含有率は、11.9重量%であった。
【0032】
(実施例1)
196mgのマイクロ粒子Aと、CVP(ハイビスワコー104)4mgを秤量し、ボルテックスミキサーで3分攪拌し、CVPを付着させマイクロ粒子Cを得た。マイクロ粒子Cの付着率を測定した。その結果を表1に示す。
【0033】
(実施例2)
196mgのマイクロ粒子Aと、CVP(ハイビスワコー104)4mgを秤量し、自転公転遠心型攪拌機(AR−250、シンキー株式会社製、日本)で5分間攪拌し、CVPを被覆しマイクロ粒子D(付着性マイクロ粒子)を得た。マイクロ粒子Dの付着率を測定した。その結果を表1に示す。
【0034】
(比較例1)
CVPを被覆しないマイクロ粒子Aの付着率を測定し、その結果を表1に示す。
【0035】
(比較例2)
マイクロ粒子AをCVP(ハイビスワコー104)1%を含有する水溶液20mL中に分散した。この分散液を5分間放置した。その後、遠沈して、マイクロ粒子ペレットとし、これを精製水で洗浄し、凍結乾燥してCVP含有マイクロ粒子Bを得た。この方法は、非特許文献6記載の方法に対応する。マイクロ粒子Bの付着率を測定した。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から明らかなようにAR−250で攪拌した場合(マイクロ粒子D)がもっとも強く付着した。マイクロ粒子ペレットをCVP水溶液中に分散して吸着させた比較例2による陽性対照の効果は、CVPなしの陰性対照と変わらなかった。おそらく、凍結乾燥前の洗浄操作によってPVAとともにCVPが除去されてしまったものと考えられる。
【0038】
(実施例3)
マイクロ粒子Dを10mg秤り取り、1/30Mリン酸緩衝液(pH7.0)中、37℃にて振盪しながら保持し、経時的に該マイクロ粒子中に残存しているミノサイクリン量をHPLC法にて求め、試験開始時のミノサイクリン量に対する残存率(%)を算出した。その結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表2から明らかなように、マイクロ粒子Dは、in vitroの系でミノサイクリンを徐放した。
【0041】
(実施例4)
マイクロ粒子Dをラット皮下に投与し、その投与部位に残存している製剤中のミノサイクリンを経時的にHPLC法にて定量し、ミノサイクリン残存率(%)を算出した。その結果を表3に示す。
【0042】
【表3】

【0043】
表3から明らかなように、マイクロ粒子Dは、生体内の系においてもミノサイクリンを徐放した。
【0044】
(実施例5〜8)
マイクロ粒子Aに、実施例2と同じ方法でAR−250を用いてCVPを被覆させた。このときCVPの量を0.5重量%、1重量%、2重量%、4重量%と変化させた。それぞれをマイクロ粒子E、F、D、Gとした。それぞれの付着率を評価した。結果を表4に示す。
【0045】
【表4】

【0046】
表4から明らかなようにCVPをマイクロ粒子粉末と粉末同士でAR−250を用いて被覆させると有意に粘膜への付着率は増大した。
【0047】
(比較例3)
マイクロ粒子Aを0.1重量%PVAの水溶液20mLと1重量%キトサン(平均分子量50,000、片倉チッカリン社製)溶液(溶媒:1重量%酢酸溶液、pH3.8)1mLを混合した溶液中に分散させた。この分散液を5分間放置した。その後、遠沈して、マイクロ粒子とし、これを精製水で洗浄し、凍結乾燥してキトサン含有マイクロ粒子Hを得た。マイクロ粒子Hの付着率を測定した。その結果を表5に示す。
【0048】
(実施例9)
196mgのマイクロ粒子Aと、噴霧乾燥法により平均粒子径約5μmに微粒子化したキトサン4mgとを秤量し、ボルテックスミキサーで3分攪拌し、微粒子化キトサンを付着させた付着性マイクロ粒子Iを得た。付着性マイクロ粒子Iの付着率を測定した。その結果を表5に示す。
【0049】
(実施例10)
196mgのマイクロ粒子Aと、噴霧乾燥法により平均粒子径約5μmに微粒子化したキトサン4mgとを秤量し、AR−250で5分間攪拌し、微粒子化キトサンを被覆し付着性マイクロ粒子Jを得た。付着性マイクロ粒子Jの付着率を測定した。その結果を表5に示す。
【0050】
【表5】

【0051】
表5から明らかなように微粒子化キトサンをマイクロ粒子粉末と粉末同士でAR−250を用いて被覆させる(付着性マイクロ粒子J)と有意に粘膜への付着性は増大した。
【0052】
(実施例11〜14)
実施例7のマイクロ粒子Dと同様の方法でAR−250を用いて微粒子化キトサンをマイクロ粒子Aに被覆させた。このときキトサンの量を0.5重量%、1重量%、2重量%、4重量%と変化させ、マイクロ粒子L、M、J、Nを得た。マイクロ粒子L、M、J、Nの付着性を評価した。結果を表6に示す。
【0053】
【表6】

【0054】
表6から明らかのようにキトサンをマイクロ粒子粉末と粉末同士でAR−250を用いて被覆させると有意に粘膜への付着性は増大した。また、キトサンの添加量の増大とともに付着性は増大した。
【0055】
(実施例15)
ガラスバイアルにPLGA(乳酸/グリコール酸=75モル/25モル、重量平均分子量=12,000)500mgを秤量し、ジクロロメタンを1mL加えて溶解した。別のガラスバイアルにプロスタグランジンE1(PGE1)3.5mgを秤量し、アセトンを1mL加えて溶解した。後者を前者に加えてボルテックス攪拌し、さらに、5分間、超音波処理(Yamato,2510 BRASON)し、PLGA−PGE1溶液を調製した。容量50mLのファルコンチューブに0.1%PVA水溶液6mLを入れ、そこへ上記PLGA−PGE1溶液を加え、ボルテックスミキサーにて乳化を行ない、O/Wエマルジョンを調製した。このエマルジョンを0.1%PVA水溶液150mL中に、プロペラ型攪拌機(AS ONE, TORNADO SM-101)にて攪拌しながら添加し、氷冷下、空気を噴きつけながら2時間攪拌し、有機溶媒を蒸発除去した。出来たPGE1封入PLGA粒子を蒸留水で3回洗浄し、2日間凍結乾燥することで平均粒子径約40μmのマイクロ粒子191mg(PGE1含量0.28%)を得た。
得られたマイクロ粒子と平均粒子径約1μmのCVP粉末とを重量比98:2の割合で混合し、AR−250を用いて約5分間混合して、CVP被覆の付着性マイクロ粒子を得た。
【0056】
(実施例16)
ガラスバイアルにPLGA(乳酸/グリコール酸)=75モル/25モル、重量平均分子量=12,000)1,500mgを秤量し、ジクロロメタンを2mL加えて溶解した。別のガラスバイアルにPGE1 4.0mgを秤量し、アルギニン水溶液(24mg/mL)を1mL加えて溶解した。後者を前者に加えてポリトロン(KINEMATICA AG, PT 2100)にて、11,000rpmで2分間乳化を行ないW/Oエマルジョンを得た。このエマルジョンを0.1%PVA水溶液300mL中に上記ポリトロンにて攪拌しながら添加し、W/O/Wエマルションを得た。その後、プロペラ型攪拌機(AS ONE, TORNADO SM-101)に移して、攪拌しながら氷冷下、空気を噴きつけながらさらに2時間攪拌し、有機溶媒を蒸発除去した。出来たPLGA粒子を蒸留水で3回洗浄し、目開き125μmの篩を通し、2日間凍結乾燥することで478mgの平均粒子径約40μmのマイクロ粒子(PGE1含量0.14%)を得た。得られたマイクロ粒子と平均粒子径約1μmのCVP粉末とを重量比98:2の割合で混合し、AR−250を用いて約5分間混合して、CVP被覆の付着性マイクロ粒子を得た。
【0057】
(実施例17)
ガラスバイアルにPLGA(乳酸/グリコール酸=75モル/25モル、重量平均分子量=12,000)1,500mgを秤量し、ジクロロメタンを2mL加えて溶解した。さらにクラリスロマイシン(CMと略)を添加溶解しPLGA−CM溶液を得た。容量50mLのファルコンチューブに0.1%PVA水溶液6mLを入れ、そこへ上記PLGA−CM溶液を加え、ボルテックスミキサーにて乳化を行ない、O/Wエマルジョンを調製した。このエマルジョンを0.1%PVA水溶液300mL中に、プロペラ型攪拌機(AS ONE, TORNADO SM-101)にて攪拌しながら添加し、氷冷下、空気を噴きつけながら2時間攪拌し、有機溶媒を蒸発除去した。出来たマイクロ粒子を蒸留水で3回洗浄し、2日間凍結乾燥することで平均粒子径約30μmのマイクロ粒子(CM封入率85%)を得た。得られたマイクロ粒子と平均粒子径約1μmのCVP粉末とを重量比98:2の割合で混合し、AR−250を用いて約5分間混合して、CVP被覆の付着性マイクロ粒子を得た。
【0058】
(実施例18)
ガラスバイアルにPLGA(乳酸/グリコール酸=75モル/25モル、重量平均分子量=12,000)1,500mgを秤量し、ジクロロメタンを2mL加えて溶解した。さらに、酸化亜鉛(ZnO)10mgを添加し溶解した。これにCM200mgを添加し溶解しPLGA−CM溶液(ZnO添加)を得た。容量50mLのファルコンチューブに0.1%PVA水溶液6mLを入れ、そこへ上記PLGA−CM溶液(ZnO添加)を加え、ボルテックスミキサーにて乳化を行ない、O/Wエマルジョンを調製した。このエマルジョンを0.1%PVA水溶液300mL中に、プロペラ型攪拌機(AS ONE, TORNADO SM-101)にて攪拌しながら添加し、氷冷下、空気を噴きつけながら2時間攪拌し、有機溶媒を蒸発除去した。出来たCM封入PLGA−ZnO粒子を蒸留水で3回洗浄し、2日間凍結乾燥することで平均粒子径約50μmのマイクロ粒子(CM封入率99%)を得た。得られたマイクロ粒子と平均粒子径約1μmのCVP粉末とを重量比98:2の割合で混合し、AR−250を用いて約5分間混合して、CVP被覆の付着性マイクロ粒子を得た。
【0059】
(実施例19)
ガラスバイアルにPLGA(乳酸(モル)/グリコール酸(モル)=75/25、重量平均分子量=12,000)1,500mgを秤量し、ジクロロメタンを2mL加えて溶解した。別のガラスバイアルにチモロール(TMと略)70mgを秤量し、精製水1mLを加えて溶解した。後者を前者に加えてポリトロン(KINEMATICA AG, PT 2100)にて、11,000rpmで2分間乳化を行ないW/Oエマルジョンを得た。このエマルジョンを0.1%PVA水溶液300mL中に上記ポリトロンにて攪拌しながら添加し、W/O/Wエマルションを得た。その後、プロペラ型攪拌機(AS ONE, TORNADO SM−101)に移して、攪拌しながら氷冷下、空気を噴きつけながらさらに2時間攪拌し、有機溶媒を蒸発除去した。出来たPLGA粒子を蒸留水で3回洗浄し、目開き125μmの篩を通し、2日間凍結乾燥することで平均粒子径約30μmのマイクロ粒子(TM含量3.4%)を得た。得られたマイクロ粒子と平均粒子径約1μmのCVP粉末とを重量比98:2の割合で混合し、AR−250を用いて約5分間混合して、CVP被覆の付着性マイクロ粒子を得た。
【0060】
(実施例20)
ガラスバイアルにPLGA(乳酸/グリコール酸=75モル/25モル、重量平均分子量=12,000)1,500mgを秤量し、ジクロロメタンを2mL加えて溶解した。この液にチモロール(TMと略)100mgを添加分散した。一方、PVA0.1%の水溶液を作製し、この6mL中にTM分散ジクロロメタン溶液を加えてポリトロン(KINEMATICA AG, PT 2100)にて、11,000rpmで2分間乳化を行ないS/O/Wエマルションを作製した。これを0.1%PVA水溶液300mL中に添加し、プロペラ型攪拌機(AS ONE, TORNADO SM-101)に移して、攪拌しながら氷冷下、空気を噴きつけながらさらに2時間攪拌し、有機溶媒を蒸発除去した。出来たPLGA粒子を蒸留水で3回洗浄し、目開き125μmの篩を通し、2日間凍結乾燥することで平均粒子径約40μmのマイクロ粒子(TM含量1.2%)を得た。得られたマイクロ粒子と平均粒子径約1μmのCVP粉末とを重量比98:2の割合で混合し、AR−250を用いて約5分間混合して、CVP被覆の付着性マイクロ粒子を得た。
【0061】
(実施例21)
付着性マイクロ粒子D 10mgを10mM酢酸生理食塩水200μLに分散させた組成物X1を得た。組成物X1について、前述の方法で付着性を評価した。その結果を表5に示す。
【0062】
(比較例4)
マイクロ粒子A10mgを10mM酢酸生理食塩水200μLに分散させた組成物X2を得た。付着率を測定した結果を表5に示す。
【0063】
(比較例5)
付着性マイクロ粒子D 10mgをリン酸緩衝生理食塩水200μLに分散させた組成物X3を得た。付着率を測定した結果を表7に示す。
【0064】
【表7】

【0065】
表7から明らかなようにAR−250でコーティングした製剤を酸性溶媒で懸濁した組成物X1がもっとも強く付着した。
【0066】
(実施例22)
実施例2で得られた付着性マイクロ粒子Dに、1.5重量のグリセリンを加え、スパーテルで混練してペースト状の組成物を得た。この組成物について前述の方法にて粘膜付着率を測定したところ、付着率は98%であった。
【0067】
(実施例23)付着性フルチカゾン微粒子の製造および粘膜付着率
粒子径が20〜30μmのプロピオン酸フルチカゾン微粒子(マイクロ微粒子)95mgとCVP(ハイビスワコー104)5mgを秤量し、自転公転遠心型攪拌機(AR−250、シンキー株式会社製、日本)で5分間攪拌し、CVPを被覆したマイクロ微粒子を得た。
粘膜付着率の評価は以下の方法で行なった。4枚の秤量皿に上記マイクロ微粒子4mgを秤量し(n=4)、それらに50mMリン酸緩衝液(pH3)200μLを添加して、マイクロ微粒子を分散させた。そこへ約8cmの反転したラット小腸(空腸部)を置き、小腸表面にマイクロ微粒子を塗した。続いて、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)1mLを添加し、この状態で37℃に90分放置した。その後、小腸を取り出し、20mLのPBS(牛血清アルブミン)で十分に洗浄した。小腸に付着したマイクロ微粒子をアセトニトリルで溶解抽出し、薬物量を分光光度計にて定量して付着量を求めた。はじめに秤量した薬物量に対する、付着した薬物量の百分率を付着率として下表に示す。
【0068】
【表8】

【0069】
(実施例24)
平均粒子径約10μmの多孔性ヒドロキシアパタイトの5%(モル)亜鉛置換体(HAp−Zn)にBSAを5%(W/W)吸着させ、これにCVPの2%(W/W)相当を自転公転遠心型攪拌機(AR−250、シンキー株式会社製、日本)で5分間攪拌し、被覆した。その粒子の付着性についてラット反転腸管を用いて実施例22と同様の方法で評価した。付着量は、腸管の粘膜層をかきとり、そこに含まれる亜鉛をZnテストワコー(和光純薬、日本)を用いて定量した。その結果、CVP被覆粒子は、90%が残存した。
【0070】
(実施例25)
平均粒子径約10μmの多孔性ヒドロキシアパタイトの5%(モル)亜鉛置換体(HAp−Zn)にキモトリプシノーゲンを10%(W/W)吸着させ、これにCVPの2%(W/W)相当を自転公転遠心型攪拌機(AR−250、シンキー株式会社製、日本)で5分間攪拌し、被覆した。その粒子の付着性についてラット反転腸管を用いて実施例22と同様の方法で評価した。付着量は、腸管の粘膜層をかきとり、そこに含まれる亜鉛をZnテストワコー(和光純薬、日本)を用いて定量した。その結果、CVP被覆粒子は、100%が残存した。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の付着性マイクロ粒子は、粘膜への付着性に優れ、局所滞留型の徐放性製剤としての応用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物を含有する平均粒子径5〜50μmのマイクロ粒子の表面に付着性微粒子が乾式被覆された、粘膜付着率が30〜100%の付着性マイクロ粒子。
【請求項2】
マイクロ粒子が、薬物および多孔性ヒドロキシアパタイトまたは多孔性ヒドロキシアパタイト誘導体を含有する請求項1記載の付着性マイクロ粒子。
【請求項3】
マイクロ粒子が、薬物および100〜50モル%の乳酸由来の繰り返し単位と0〜50モル%のグリコール酸由来の繰り返し単位とからなるポリマーを含有する請求項1記載の付着性マイクロ粒子。
【請求項4】
マイクロ粒子が、薬物単独である請求項1記載の付着性マイクロ粒子。
【請求項5】
薬物が、タンパクである請求項2の付着性マイクロ粒子。
【請求項6】
付着性微粒子は、架橋ポリアクリル酸またはキトサンの粒子である請求項1記載の付着性マイクロ粒子。
【請求項7】
付着性微粒子の割合が、0.1〜10重量%である請求項1記載の付着性マイクロ粒子。
【請求項8】
付着性微粒子の平均粒子径が、0.1〜20μmである請求項1記載の付着性マイクロ粒子。
【請求項9】
薬物を含有する平均粒子径5〜50μmのマイクロ粒子と付着性微粒子とを乾式混合することを含む付着性マイクロ粒子の製造方法。
【請求項10】
乾式混合を自転公転遠心型攪拌機で行なう請求項9記載の方法。
【請求項11】
請求項1記載の付着性マイクロ粒子および酸性水を含有し、付着性微粒子が架橋ポリアクリル酸である投与剤。
【請求項12】
請求項1記載の付着性マイクロ粒子および水を含有し、付着性微粒子がキトサンである投与剤。
【請求項13】
請求項1記載の付着性マイクロ粒子およびグリセリンを含有するペースト状投与剤。

【公開番号】特開2008−291010(P2008−291010A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106674(P2008−106674)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(304062317)ガレニサーチ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】