説明

局部洗浄装置付便器

【課題】便器と局部洗浄装置の下面との間に形成された隙間に小便等の汚水が侵入することを防止する。
【解決手段】ボウル5を備えた便器1の後端部上に局部洗浄装置2を配設する。便器1の上面におけるボウル5の上開口5aの後縁に隣接する部分に局部洗浄装置2の少なくとも前面側を覆う覆い部14を一体に立ち上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器の後端部上に局部洗浄装置を配設した局部洗浄装置付便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から知られている局部洗浄装置付便器は、例えば特許文献1に示すように、局部洗浄装置を便器のボウルよりも後方の後端部上に載設している。そして局部洗浄装置の前端部はボウルの上開口の後縁よりも前方に突出してあり、この突出部分に設けたボウル内に臨むノズルから水を吐出して局部を洗浄する。
【0003】
しかし上記特許文献1に示される従来例にあっては、便器の上面と局部洗浄装置の下面の間から小便や飛散したボウル内の溜水等が侵入し汚れるという問題があった。またこの便器と局部洗浄装置との間を掃除するには便器から局部洗浄装置を取外さなければならず、掃除が非常に面倒であった。
【特許文献1】特開2005−307472号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の問題点に鑑みて発明したものであって、便器と局部洗浄装置の下面との間に形成された隙間に小便等の汚水が侵入することを防止できる局部洗浄装置付便器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明に係る局部洗浄装置付便器は、ボウル5を備えた便器1の後端部上に局部洗浄装置2を配設し、便器1の上面におけるボウル5の上開口5aの後縁に隣接する部分に局部洗浄装置2の少なくとも前面側を覆う覆い部14を一体に立ち上げて成ることを特徴とする。覆い部14により後方の局部洗浄装置2側に小便等の汚水が流れることを防止でき、便器1の後端部上に配設した局部洗浄装置2並びに該局部洗浄装置2と便器1の後端部との間に汚水が侵入することを防止できる。しかもこの場合、ボウル5の上開口5aの後縁部と覆い部14との間には隙間が形成されないので、覆い部14とボウル5の上開口5aの後縁部との接続部分を容易に拭き取ることができる。
【0006】
また請求項2は請求項1において、覆い部14が局部洗浄装置2の内装部品を覆う装置カバー15を兼用していることを特徴とする。これにより局部洗浄装置2の装置カバー15の製造コストを削減できる。
【0007】
また請求項3は請求項2において、局部洗浄装置2の内装部品を覆う装置カバー15を、局部洗浄装置2の一部を覆う覆い部14と、他部を覆う着脱自在の着脱カバー25bで構成することを特徴とする。着脱カバー25bを取外すだけで局部洗浄装置2の保守点検を行える。
【0008】
また請求項4は請求項1〜3のいずれかにおいて、便器1の上面におけるボウル5の上開口5aの後縁と覆い部14との間の部分を前側程下方に位置するように傾斜した傾斜面16とすることを特徴とする。傾斜面16により覆い部14の前面から流れ落ちた汚水をスムーズにボウル5内に導ける。
【0009】
また請求項5は、請求項1〜4のいずれかにおいて、局部洗浄装置2の装置カバー15の両側端部の前端を便器1の上面におけるボウル5の上開口5aの後縁に隣接する部分に接合し、該接合部分Aを起立状態における便座3の裏面において接合部分Aに対応する部分の下端よりも後方に位置させて成ることを特徴とする。これにより便座3の裏面にかかった小便等の汚水が起立状態にある便座3の裏面を伝って落下したとしても、これを便器1の上面で受けることができ、当接部分Aに便座3より落下した汚水が侵入することを防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明では便器の後端部上に配設した局部洗浄装置並びに局部洗浄装置と便器との間に汚水が侵入することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。図1に示す局部洗浄装置付便器は、トイレの床面上に設置される便器1と、便器1の後端部上に配設した局部洗浄装置2と、局部洗浄装置2に起倒自在に取付けた便座3及び便蓋4を備えている。
【0012】
便器1は、上方に開口するボウル5を備えた合成樹脂製の便器本体6と、便器本体6の後方部の両側を覆う合成樹脂製の便器後カバー7とで構成されている。
【0013】
図2に示すように便器本体6は、ボウル部8と、ボウル部8の上端部に設けたリム部9と、ボウル部8及びリム部9で構成されるボウル5の外周を覆うスカート部10とで構成され、これらボウル部8、リム部9、スカート部10は別体の成形品であり溶着等で接続される。
【0014】
リム部9は便器本体6の上面部を構成する。リム部9の前部は平面視環状の嵌込部11で構成され、嵌込部11はボウル部8の上開口部内に嵌め込まれる。このリム部9とボウル部8とで用を足すためのボウル5を形成してあり、ボウル5の上開口5aは嵌込部11の中央開口により構成されている。嵌込部11は断面で外側方に開口する略コ字状に形成され、環状の嵌込部11の開口よりも後方の部分を除く平面視U字状の部分とボウル部8の周壁上端部とで空間13を形成している。
【0015】
なお図中33は洗浄水の吐水孔、34はボウル部の内面全体に洗浄水を供給する洗浄水流路である。なおこの吐水孔33及び洗浄水流路34に替えて、空間13の下面部(即ち断面コ字状の嵌込部11の下横片部)に水流出口を形成し、空間13の断面略コ字状の嵌込部11とボウル部8の周壁とで囲まれた空間に局部洗浄装置2から供給された水を流し、この水を水流出口から下方のボウル部8の内面に流出して洗浄できるようにしても良い。
【0016】
上記便器本体6の上面部における上開口5aよりも後方に位置する部分は、嵌込部11の上面部を後方に延出して形成される。そしてこのように形成された便器本体6の上面におけるボウル5の上開口5aの後縁に隣接する部分(即ちボウル5の上面において上開口5aよりも後方に位置する部分である)から局部洗浄装置2の前面側を覆う覆い部14を一体に立ち上げている。覆い部14はリム部9の後端部中央から上方に向けて一体に突設してあり、その前面部14aはボウル5の上開口5aよりも後方で且つリム部9の後縁よりも前方に位置し、両側面部14bはリム部9の外側縁よりもやや内側に控えた位置にあり、また上面部14cは前面部14aと両側面部14bで囲まれた空所の上方を覆っている。
【0017】
またリム部9の嵌込部11の上面は略水平な面となっているが、便器本体6の上面においてボウル5の上開口5aの後縁と覆い部14との間の部分は前側程下方に位置するように傾斜した傾斜面16となっている。傾斜面16を形成するにあたって、リム部9の上面部の後部を左右方向の全長に亘って前側程下方に位置するように傾斜した傾斜面部17としてあり、同時にこの傾斜面部17と、傾斜面部17の両側端から垂下する垂下片部18とで後方に開口する収納部19を形成している。なお覆い部14の後端面はリム部9の傾斜面部17の後端面及び垂下片部18の後端面と面一となっている。
【0018】
スカート部10は後方に開口する平面視U字状に形成され、スカート部10の後端面及び便器後カバー7の前端面は共に上側程後方に位置するように傾斜しており、スカート部10の後端面に便器後カバー7の前端面は当接している。スカート部10の後部と便器後カバー7の内側に形成された空間には図4に示す床面に設置したフレーム20及びフレーム20に固定したターントラップ装置21を配置している。また図2のようにボウル部8の下端部からは後方に向けて排水管部22を突設してあって、ボウル5内の溜水を排水管部22からターントラップ装置21を介して排水可能となっている。また図中23は便器1の後端部両側に設けたアームレストであり、各アームレスト23の一端部は便器後カバー7の内側においてフレーム20に連結されている。
【0019】
図3に示す局部洗浄装置2はフレーム20上に取付けられ、上部が覆い部14の後方に位置し、下部が傾斜面部17の後方に位置する。局部洗浄装置2は、底部25aと、底部25aに設けた内装部品の上側を覆う着脱カバー25bを備え、着脱カバー25bは底部25aに対して着脱自在に取付けてある。従って着脱カバー25bを便器1から取外して内装部品の保守点検を行えるようになっている。またこの場合、着脱カバー25bは便器本体6や便器後カバー7と別体であるので便器1と局部洗浄装置2を個々に組み立てて形成できる。また着脱カバー25bは便器後カバー7の内側の空間の上方を覆い、便器本体7の後方部に配設されたフレーム20及びターントラップ装置21の上方を覆っている。即ち着脱カバー25bは便器1の後端部上を覆う便器カバーを兼用している。
【0020】
また着脱カバー25bは局部洗浄装置2の底部25aの後部上側のみを覆い、底部25aの前部上側は着脱カバー25bによって覆われていない。この局部洗浄装置2の底部25aの前部は便器後カバー7の前端面上端よりも前方に突出して位置すると共に、リム部9の収納部19に収納され、これにより局部洗浄装置2の底部25aの前部はその前方、両側方、上方が収納部19と覆い部14によって覆われる。即ち局部洗浄装置2の内装部品を覆う装置カバー15は、装置の前面側を覆う覆い部14と他部を覆う着脱カバー25bとで構成され、覆い部14は局部洗浄装置2の装置カバー15の一部を兼用している。
【0021】
局部洗浄装置2の着脱カバー25bの前端は便器1の上面におけるボウル5の上開口5aの後縁に隣接する部分に接合している。詳しくは着脱カバー25bの段部28の底面部の前端面はリム部9の傾斜面部17の後端面に突き当たっている。また着脱カバー25bのその他の前端面は覆い部14の上面部14c及び側面部14bの夫々の後端面に突き当たっている。
【0022】
また局部洗浄装置2の底部25aの前端部には内装部品の一つである局部洗浄用のノズル26を設けてあり、ノズル26は図5のようにリム部9の嵌込部11の後端部に形成したノズル孔27を介してボウル5の内側に臨んでおり、ノズル26から吐出した水により使用者の局部を洗浄できるようになっている。なおノズル26はノズル孔27を通してボウル5の内側に突出してあっても良いし、図5の破線で示すように使用時のみボウル5の内側に突出するものであっても良い。さらに図5のようにシャッター部材24でノズル孔27を開閉するようにしても良い。
【0023】
また局部洗浄装置2の着脱カバー25bの上面前端部の両側端には便座3のヒンジ部3a及び便蓋4のヒンジ部4aを収納する段部28を形成している。各段部28の底面はリム部9の傾斜面部17の上面と面一に連続するような後方程上側に位置する緩やかな曲面となっている。また各段部28の側面の中央及び前端部の夫々からは外側方に向けて軸部31、32を突出している。軸部32は前半部が着脱カバー25bの前端面よりも前方に突出し、この前半部は覆い部14の両側面部14bの後縁に形成した半円状の切欠12に収まっている。軸部31、32は便蓋4及び便座3の夫々が取付けられる取付部となるもので、軸部31には便座3の一端部(即ち便座3を倒した時の後端部)の両側端部に形成したヒンジ部3aを回動自在に取付けてあり、また軸部32には便蓋4の一端部の両側端部に形成したヒンジ部4aを回動自在に取付けてある。
【0024】
ここで前述の着脱カバー25bの前端と便器1の上面におけるボウル5の上開口5aの後縁部に隣接する部分との接合部分Aは、起立状態における便座3の裏面(換言すると便座3を倒した時には下面となる面)において左右方向で接合部分Aに対応する部分の下端(即ちヒンジ部3aの裏面の下端)よりも後方に位置するように設定してある。従ってもし便座3の裏面にかかった小便等の汚水が起立状態にある便座3の裏面を伝ってヒンジ部3aから落下したとしても、これを下方の便器本体6のボウル5の上面後端部で受けることができ、接合部分Aに便座3より落下した汚水が侵入することを防止できる。また本実施形態では、着脱カバー25bのその他の前端面と、覆い部14の上面部14c、側面部14b、の夫々の後端面との接合部分Bも、起立状態における便座3の裏面において接合部分Aに対応する部分の下端よりも後方に位置するように設定してある。従って便座3の裏面を伝って両ヒンジ部3a間の後縁から落下した汚水を覆い部14の上面部14cでも受けられるようになっている。
【0025】
そして本発明では、既述のように便器1の上面におけるボウル5の上開口5aの後縁部に隣接する部分に局部洗浄装置2の前面側を覆う覆い部14を一体に立ち上げたので、覆い部14により後方の局部洗浄装置2側に小便等の汚水が流れることを防止できる。従って便器1の後端部上に配設した局部洗浄装置2並びに該局部洗浄装置2と便器1の後端部上面との間に汚水が侵入することを防止できる。しかもこの場合、便器1の上面と覆い部14とは一体に連続しているので、便器1の上面と覆い部14との境界部分を容易に拭き取れる。
【0026】
さらに本実施形態では便器本体6の上面においてボウル5の上開口5aの後縁と覆い部14との間の部分は前側程下方に位置するように傾斜した傾斜面16となっているので、覆い部14の前面部14aで受けた汚水を傾斜面16により前方に流してボウル5内に導くことができ、汚水が溜まり難い。なお傾斜面部17は正面視で両端部よりも中央に行く程下方に位置するように傾斜させることも好ましく、この場合は傾斜面部17上の汚水を一層スムーズにボウル5内に導ける。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示す局部洗浄装置付便器の全体斜視図である。
【図2】同上の便器本体の斜視図である。
【図3】同上の局部洗浄装置の斜視図である。
【図4】同上の局部洗浄装置付便器の便器後カバー及び局部洗浄装置を取外した全体斜視図である。
【図5】局部洗浄装置のノズル近傍の断面図である。
【図6】同上の便器及び便蓋を取外した状態を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 便器
2 局部洗浄装置
5 ボウル
5a 上開口
14 覆い部
16 傾斜面
25b 着脱カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウルを備えた便器の後端部上に局部洗浄装置を配設し、便器の上面におけるボウルの上開口の後縁に隣接する部分に局部洗浄装置の少なくとも前面側を覆う覆い部を一体に立ち上げて成ることを特徴とする局部洗浄装置付便器。
【請求項2】
覆い部が局部洗浄装置の内装部品を覆う装置カバーを兼用していることを特徴とする請求項1に記載の局部洗浄装置付便器。
【請求項3】
局部洗浄装置の内装部品を覆う装置カバーを、局部洗浄装置の一部を覆う覆い部と、他部を覆う着脱自在の着脱カバーで構成することを特徴とする請求項2に記載の局部洗浄装置付便器。
【請求項4】
便器の上面におけるボウルの上開口の後縁と覆い部との間の部分を前側程下方に位置するように傾斜した傾斜面とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の局部洗浄装置付便器。
【請求項5】
局部洗浄装置の装置カバーの両側端部の前端を便器の上面におけるボウルの上開口の後縁に隣接する部分に接合し、該接合部分を起立状態における便座の裏面において接合部分に対応する部分の下端よりも後方に位置させて成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の局部洗浄装置付き便器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate