説明

局部洗浄装置

【課題】温水タンク装置から漏れた洗浄水を適切に処理することができる局部洗浄装置を提供する。
【解決手段】局部洗浄装置は、便鉢2を有する洋風便器本体1の後部上面に載置されるベースプレート10を有している。ベースプレート10上には、局部洗浄ノズルが固定されている。また、ベースプレート10上には、局部洗浄ノズルに供給される洗浄水を貯留し、加熱する温水タンク装置が固定されている。さらに、ベースプレート10には、温水タンク装置20のみの周囲を囲む防水壁15が立設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は局部洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の局部洗浄装置が開示されている。この局部洗浄装置は、便鉢を有する洋風便器本体の後部上面に載置されるベースプレートを備えている。このベースプレート上には、局部洗浄ノズルに供給される洗浄水を貯留し、加熱する温水タンク装置と、便鉢に洗浄水を供給する便器洗浄装置とが隣接して固定されている。また、このベースプレートには、温水タンク装置と便器洗浄装置とを囲む防水壁が立設されている。このため、尿等が外部から防水壁の内部に侵入せず、温水タンク装置や便器洗浄装置の電装部品に尿等がかからず、電装部品のショート等を防止することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2001−342669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の局部洗浄装置では、温水タンク装置から漏水が発生した際には、便器洗浄装置の下方にまで温水タンク装置から漏れた洗浄水が広がってしまう。この場合、便器洗浄装置に接続された流入用及び流出用の各洗浄水供給管がベースプレート又は防水壁を貫通していると、その部分から温水タンク装置から漏れた洗浄水が漏水してしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、温水タンク装置から漏れた洗浄水を適切に処理することができる局部洗浄装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の局部洗浄装置は、便鉢を有する洋風便器本体の後部上面に載置されるベースプレートと、該ベースプレート上に固定された局部洗浄ノズルと、該ベースプレート上に固定され、該局部洗浄ノズルに供給される洗浄水を貯留し、加熱する温水タンク装置とを備えた局部洗浄装置において、
前記ベースプレートには、前記温水タンク装置のみの周囲を囲む防水壁が立設されていることを特徴とする。
【0007】
温水タンク装置から洗浄水が漏れた場合、その洗浄水は、温水タンク装置のみの周囲を囲む防水壁内に溜まり、ベースプレート上に広がることが防止される。このため、温水タンク装置から洗浄水が漏れた場合、その洗浄水が局部洗浄装置の任意の箇所から外部に漏水してしまうことを防止することができる。
【0008】
したがって、本発明の局部洗浄装置は、温水タンク装置から漏れた洗浄水を適切に処理することができる。
【0009】
防水壁には、上端から防水壁の中間高さまで下方に延びる切欠き部が設けられ得る。この場合、温水タンク装置から漏れた洗浄水が一定量以上になると切欠き部から洗浄水が溢れ出る。切欠き部を防水壁の所望の箇所に設けることにより、温水タンク装置から漏れた洗浄水を所望の個所へ溢れ出させることができる。このため、切欠き部から溢れ出た洗浄水を適切に処理することができる。
【0010】
切欠き部は、洋風便器本体の後部上面に載置された際に温水タンク装置よりも便鉢側に位置する防水壁に設けられ、ベースプレートには、洋風便器本体の後部上面に載置された際に切欠き部から溢れ出た洗浄水が便鉢方向に流れるように規制する一対の凸条部が設けられ得る。この場合、切欠き部から溢れ出た洗浄水を便鉢内に排水することができる。
【0011】
ベースプレートは、温水タンク装置が固定された後ベースプレートと、後ベースプレートに組み付けられ、局部洗浄ノズルが固定された前ベースプレートとに分割され、凸条部は、後ベースプレートの上面に設けられた一対の後凸条部と、各後凸条部の前端から前方へ延ばした延長線を挟むように前ベースプレートの下面に設けられた弾性を有する一対の前凸条部とからなり得る。この場合、切欠き部から溢れ出た洗浄水は、後ベースプレートの上面に設けられた一対の後凸条部の間を流れて後ベースプレートの前端から前ベースプレートの下面に流れ落ちる。その後、洗浄水は、一対の前凸条部と、洋風便器本体の上面と、前ベースプレートの下面とにより形成された隙間を流れ、便鉢の後縁から便鉢内に流入する。このため、温水タンク装置から漏れた洗浄水を便鉢内に良好に排水することができる。
【0012】
局部洗浄装置は、防水壁の内壁面に設けられた水位検知センサーと、水位検知センサーの出力に基づいて、防水壁内の水位が所定以上になったことを報知する報知手段とを有し得る。この場合、局部洗浄装置の使用者等が温水タンク装置からの漏水を確実に知得することができる。これにより、使用者等は、メンテナンス業者等に修理の依頼をし、温水タンク装置の漏水対策を早期に行うことができる。
【0013】
温水タンク装置は、温水タンク本体と温水タンクの洗浄水の流入部に設けられた開閉弁とを有し、防水壁内の水位が所定以上になると、水位検知センサーの出力に基づいて、開閉弁を閉弁し得る。これにより、温水タンク本体への洗浄水の供給を停止し、温水タンク本体からの漏水を確実に止めることができる。また、局部洗浄ノズルへの洗浄水の供給が停止されるため、使用者等は、局部洗浄装置を使用するためには、メンテナンス業者等に修理の依頼をしなければならない。このため、温水タンク装置の漏水対策を確実に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の局部洗浄装置を洋風水洗式便器に具体化した実施例1を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0015】
図1〜図3に示すように、実施例1の洋風水洗式便器は、便鉢2を有する洋風便器本体1の後部上面に載置されたベースプレート10と、ベースプレート10上に固定された局部洗浄ノズル30と、ベースプレート10上に固定され、局部洗浄ノズル30に供給される洗浄水を貯留し、加熱する温水タンク装置20とを備えた局部洗浄装置を具備している。この局部洗浄装置は、下方に開口する収納ケース60内に収納される。収納ケース60は、上面の後部に着脱自在に取り付けられたカバー61と、上面の前部に回動可能に軸支された便蓋62及び図示しない便座とを有している。
【0016】
ベースプレート10は、後ベースプレート11と前ベースプレート12とに分割されている。後ベースプレート11には、温水タンク装置20が固定されている。温水タンク装置20は、温水タンク本体21と、温水タンク本体21の洗浄水の流入部に設けられた開閉弁22とを有している。開閉弁22には、上流端に接続具23Aが設けられた給水ホース23が接続されている。温水タンク本体21の上面には、温水タンク本体21内に貯留され、加熱された洗浄水が流出する流出パイプ24と、大気開放弁の捨て水が流出する排水パイプ25とが設けられている。
【0017】
前ベースプレート12には、おしり洗浄用ノズルとビデ洗浄用ノズルとを有する局部洗浄ノズル30が固定されている。局部洗浄ノズル30は、図示しない可撓性を有するチューブを介して、温水タンク装置20の流出パイプ24に接続されている。前ベースプレート12は、図3に示すように、図示しない昇降装置を介して後ベースプレート11の前部上方に重なるように組み付けられている。収納ケース60は、前ベースプレート12に取り付けられる。このため、前ベースプレート12及び収納ケース60は、後ベースプレート11に対して昇降可能とされている。
【0018】
後ベースプレート11及び前ベースプレート12からなるベースプレート10には、温水タンク装置20及び局部洗浄ノズル30の他に、図示しない温風乾燥装置、空気清浄装置、音楽再生装置、部屋暖房装置及び照明装置が固定される。
【0019】
図1に示すように、洋風便器本体1の後部上面より上方には、便鉢2へ洗浄水を供給する便器洗浄装置のバルブ本体50がフレーム52を介して取り付けられている。フレーム52は、洋風便器本体1の後部上面に固定されている。バルブ本体50には、ストレーナ機構、定流量弁機構、開閉弁機構及びバキュームブレーカ機構が内蔵されている。バルブ本体50は、ストレーナ機構の下流側、かつ定流量弁機構の上流側に温水タンク装置20に洗浄水を供給する分岐管51が分岐されている。分岐管51には、接続具23Aにより、温水タンク装置20の給水ホース23が接続される。バルブ本体50の上流側の流入口にはフレキシブルホース53が接続されている。フレキシブルホース53の上流端は、図示しない水道管に接続された止水栓に接続されている。また、バルブ本体50の下流側の流出口は、図示しないフレキシブルホースを介して便鉢2に連通している。
【0020】
後ベースプレート11には、後端の一部分から切欠かれた開口部13が設けられている。この開口部13は、図2に示すように、後ベースプレート11が洋風便器本体1に固定された際、バルブ本体50等を下方から挿通する。図1及び図2に示すように、後ベースプレート11には、開口部13に隣接して温水タンク装置20の載置部14が設けられている。この載置部14の周縁には、載置部14に固定された温水タンク装置20のみの周囲を囲む防水壁15が全周囲に亘って立設されている。このため、温水タンク装置20から洗浄水が漏れた場合、一定量の洗浄水は、防水壁15内に溜まり、ベースプレート上に広がることが防止される。よって、温水タンク装置20から洗浄水が漏れた場合、その洗浄水が局部洗浄装置の任意の箇所から外部に漏水してしまうことを防止することができる。
【0021】
したがって、実施例1の洋風水洗式便器に具体化された局部洗浄装置は、温水タンク装置20から漏れた洗浄水を適切に処理することができる。
【0022】
温水タンク装置20より便鉢2側に位置する防水壁15には、上端から防水壁15の中間高さまで下方に延びる切欠き部16が設けられている。後ベースプレート11の上面には、防水壁15の下端及び防水壁15に連続して設けられた立壁15Aの下端から前方に延びる一対の後凸条部17Aが設けられている。後凸条部17Aは、切欠き部16から溢れ出た洗浄水を便鉢2方向に流れるように規制する。
【0023】
図4に示すように、前ベースプレート12の下面には、各後凸条部17Aの前端から前方へ延ばした延長線を挟むように弾性を有する一対の前凸条部17Bが設けられている。各前凸条部17Bには、中間部から左右の一方側に延びる左右凸条部17Cが形成されている。後ベースプレート11の前部下面には、左右方向にわたって延びる平板状のパッキン11Aが貼付されている。
【0024】
図5に示すように、後ベースプレート11及び前ベースプレート12からなるベースプレート10を洋風便器本体1の後部上面に載置すると、前ベースプレート12の下面に設けられた一対の前凸条部17Bは、弾性圧縮され、洋風便器本体1の上面と、前ベースプレート12の下面とにより、洗浄水が流れ得る隙間Sが形成される。
【0025】
温水タンク装置20から漏れた洗浄水は、防水壁15内に一定量溜まるが、それ以上の洗浄水が温水タンク装置20から漏れると、切欠き部16から洗浄水が後ベースプレート11上に溢れ出る。切欠き部16から溢れ出た洗浄水は、後ベースプレート11上を後凸条部17Aに規制されて流れ、後ベースプレート11の前端から前ベースプレート12の下面に流れ落ちる。前ベースプレート12の下面に流れ落ちた洗浄水は、隙間Sを通って、便鉢2の後縁から便鉢2内に確実に排水される。この際、後ベースプレート11の前部下面にパッキン11Aが貼付されているため、洗浄水が後ベースプレート11の下面後方に流れ込んでしまうことを防止している。このように、洗浄水が局部洗浄装置の任意の箇所から外部に漏水してしまうことを防止することができる。
【0026】
前ベースプレート12の上面には、温水タンク装置20の大気開放弁から排出された捨て水が、排水パイプ25に接続された図示しない可撓性を有するチューブを介して流れる。この捨て水は、便鉢2を臨むように前ベースプレート12に形成された排水口12Aから便鉢2内に排水される。
【0027】
図1及び図2に示すように、防水壁15の内壁面に水位検知センサー18が設けられている。水位検知センサー18は、制御装置40に接続され、防水壁15内の水位が所定以上になると制御装置40に信号を出力する。図2及び図3に示すように、後ベースプレート11に固定され、温水タンク装置20の上方に位置し、後ベースプレート11を補強する補強部材19の上面に、制御装置40は取り付けられている。制御装置40は、温水タンク装置20の開閉弁22及び便器洗浄装置の開閉弁機構に接続され、開閉弁22及び開閉弁機構の開閉信号を出力する。また、制御装置40は、局部洗浄装置及び便器洗浄装置を遠隔操作するリモコン41に接続されている。リモコン41は、制御装置40から出力される信号に基づいて、リモコン41に設けられた表示部41Aの表示を変更させたり、リモコン41に設けられた報知ランプ41Bを点滅させたりする報知手段としての機能も有している。
【0028】
このため、温水タンク装置20から漏水が生じ、防水壁15内の水が所定以上になると、水位検知センサー18から制御装置40へ信号が出力される。すると、制御装置40は、リモコン41に信号を出力し、リモコン41の表示部41Aに漏水が生じていることを表示するとともに、報知ランプ41Bを点滅させる。さらに、制御装置40は、閉弁信号を温水タンク装置20の開閉弁22に出力する。このように、洋風水洗式便器の使用者等は温水タンク装置20からの漏水を確実に知得することができる。また、温水タンク本体21への洗浄水の供給が停止されるため、温水タンク本体21からの漏水を確実に止めることができる。さらに、使用者等は、局部洗浄ノズル30への洗浄水の供給が停止されるため、局部洗浄装置を使用するためにはメンテナンス業者等に修理を依頼しなければならず、温水タンク装置の漏水対策を早期、かつ確実に行うことができる。
【0029】
以上において、本発明を実施例1に即して説明したが、本発明は上記実施例1に制限されるものではなく、その趣旨に逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0030】
例えば、後ベースプレート11と前ベースプレート12とが一体に形成されていてもよい。この場合、便鉢2の上方まで延びる一対の凸条部をベースプレートの上面に設けることにより、温水タンク本体20から漏水した洗浄水を良好に便鉢2内に排水することができる。
【0031】
防水壁15の内壁面に水位検知センサー18を設けなくてもよい。この場合でも、温水タンク本体20から漏水した洗浄水は、便鉢2内に排水されるため、使用者等は、その変化に気づくことができる。このため、洗浄水が局部洗浄装置の任意の箇所から外部に漏水してしまうことを防止するばかりでなく、早期に温水タンク本体20の漏水を気付くことができ、早期に対策を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は洋風水洗式便器、便座装置に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施例1の洋風水洗式便器の分解斜視図である。
【図2】実施例1の洋風水洗式便器の一部組み付け状態を示す分解斜視図である。
【図3】実施例1の局部洗浄装置の組み付け状態を示す斜視図である。
【図4】実施例1のベースプレートの底面図である。
【図5】実施例1の洋風水洗式便器の一部断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1…洋風便器本体
2…便鉢
10…ベースプレート
11…後ベースプレート
12…前ベースプレート
15…防水壁
16…切欠き部
17A、17B…凸条部(17A…後凸条部、17B…前凸条部)
18…水検知センサー
20…温水タンク装置
21…温水タンク本体
22…開閉弁
30…局部洗浄ノズル
41…リモコン(報知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢を有する洋風便器本体の後部上面に載置されるベースプレートと、該ベースプレート上に固定された局部洗浄ノズルと、該ベースプレート上に固定され、該局部洗浄ノズルに供給される洗浄水を貯留し、加熱する温水タンク装置とを備えた局部洗浄装置において、
前記ベースプレートには、前記温水タンク装置のみの周囲を囲む防水壁が立設されていることを特徴とする局部洗浄装置。
【請求項2】
前記防水壁には、上端から該防水壁の中間高さまで下方に延びる切欠き部が設けられている請求項1記載の局部洗浄装置。
【請求項3】
前記切欠き部は、前記洋風便器本体の後部上面に載置された際に前記温水タンク装置よりも前記便鉢側に位置する前記防水壁に設けられ、
前記ベースプレートには、前記洋風便器本体の後部上面に載置された際に前記切欠き部から溢れ出た洗浄水が該便鉢方向に流れるように規制する一対の凸条部が設けられている請求項2記載の局部洗浄装置。
【請求項4】
前記ベースプレートは、前記温水タンク装置が固定された後ベースプレートと、該後ベースプレートに組み付けられ、前記局部洗浄ノズルが固定された前ベースプレートとに分割され、
前記凸条部は、該後ベースプレートの上面に設けられた一対の後凸条部と、該各後凸条部の前端から前方へ延ばした延長線を挟むように該前ベースプレートの下面に設けられた弾性を有する一対の前凸条部とからなる請求項3記載の局部洗浄装置。
【請求項5】
前記防水壁の内壁面に設けられた水位検知センサーと、該水位検知センサーの出力に基づいて、該防水壁内の水位が所定以上になったことを報知する報知手段とを有する請求項1乃至4のいずれか1項記載の局部洗浄装置。
【請求項6】
前記温水タンク装置は、温水タンク本体と該温水タンクの洗浄水の流入部に設けられた開閉弁とを有し、
前記防水壁内の水位が所定以上になると、前記水位検知センサーの出力に基づいて、該開閉弁を閉弁する請求項5記載の局部洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−228323(P2009−228323A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75671(P2008−75671)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】