説明

屈曲型温度センサの製造方法

【課題】屈曲した保護管内にセパレータと共に所定の位置に複数の温度センサを異なる位置に配置して成る屈曲型温度センサを製造する方法を提供。
【解決手段】屈曲部の両側に、直線状に延在し、又は一定の曲率で湾曲する前方セパレータ部分1Aと直線状に延在する後方セパレータ部分1Bとを有するセパレータ1に熱電対3の素線を沿わせて熱電対3を配置した後に、前記前方セパレータ部分1Aを、直線状に延在する前部保護管用素管2A内に配置し、又は前記前方セパレータ部分1Aと同じ曲率を有する湾曲した前部保護管用素管2A内に配置すると共に、前記後方セパレータ部分1Bを直線状に延在する後部保護管用素管内2Bに配置し、次いで前部保護管用素管2Aと後部保護管用素管2Bとの突合せ部を一体化することを特徴とする屈曲型温度センサ6の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屈曲型温度センサの製造方法に関し、特に例えばL字型のように屈曲した形状を有する屈曲型温度センサを容易に製造することのできる屈曲型温度センサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電対等を有する温度センサは、例えば半導体製造装置の拡散炉の温度制御等に用いられる。拡散炉では複数のウェーハに同時に熱処理を施す装置であり、再現性よく、かつ精度よく熱処理を施すためには装置内の温度を高精度に制御することが必須となる。熱電対を半導体製造装置に用いるとき、反応管内の熱電対の感応部を周囲の雰囲気から守るために保護管等の保護部材を熱電対に装着することが重要である。
【0003】
前記温度センサは温度検出器と称されることもある。全体形状がL字状をなす温度検出器の製造方法が特許文献1で提案されている。この特許文献1によると、その温度検出器の製造方法は、「保護管の内部に熱電対を挿入する工程と、この工程後に前記保護管の所定箇所を曲げる工程とを備えたことを特徴とする」。この温度検出器の製造方法においては、この保護管21の内部にある任意の位置に熱電対22を配置するために、絶縁管23に熱電対22を装着することもあった。しかし、例えば半導体製造装置の反応管の形状等により屈曲型の温度検出器が必要となったときは、熱電対22を装備した絶縁管23を保護管21の内部に挿通した状態で、保護管21の外側から加熱する等により所定部位まとめて曲げる方法(特許文献1の段落番号0029〜0031参照)があったが、曲げる部分の多少のずれにより温度センサが曲がる位置もずれてしまう等の不都合な点が考えられる。高精度の温度制御を必要とする場合は、配置した温度センサの位置がずれる可能性があるような「温度検出器の製造方法」は、温度センサの位置が不確定であり、同じ製品間で温度特性に個体差が生じるので、このような製造方法を採用するには躊躇があった。また、特許文献1に示した温度検出器の製造方法では、「保護管21内の熱電対22の素線22a,22bにおける絶縁管23の未装着部分には、基端側の屈曲部21Aに位置する部分に複数のコーナ用の絶縁管23Bを、基端部21cに位置する部分にストレート用の絶縁管23Aを保護管21の基端側から装着する」(特許文献1の段落番号0032参照。)ような熱電対の素線に絶縁管を後から装着していく方法を採用しているが、絶縁管が保護管内で熱電対の素線に隙間なく装着されているか確認するのが困難と考えられる。絶縁管に隙間が生じた状態で放置すると、例えば、熱電対の素線同士が熱電対の先端以外で接触してしまう状況、又は、熱電対の素線の劣化及び/又は酸化等を促進させてしまう状況等が生じると考えられる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−357483
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、屈曲した保護管内にセパレータと共に所定の位置に複数の温度センサを異なる位置に配置して成る屈曲型温度センサを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、屈曲部の両側に、直線状に延在し、又は一定の曲率で湾曲する前方セパレータ部分と直線状に延在する後方セパレータ部分とを有するセパレータに熱電対の素線を沿わせて熱電対を配置した後に、前記前方セパレータ部分を、直線状に延在する前部保護管用素管内に配置し、又は前記前方セパレータ部分と同じ曲率を有する湾曲した前部保護管用素管内に配置すると共に、前記後方セパレータ部分を後部保護管用素管内に配置し、次いで前部保護管用素管と後部保護管用素管との突合せ部を一体化することを特徴とする屈曲型温度センサの製造方法であり、
請求項2は、前記セパレータが、前方セパレータ部分と後方セパレータ部分とが屈曲部で直角となるように形成されて成る前記請求項1に記載の屈曲型温度センサの製造方法であり、
請求項3は、熱電対を配置したセパレータを内装するのに使用される前部保護管用素管が両端に開口部を備える場合には、前記突合せ部を一体化した後に、その前部保護管用素管の先端開口部を封止する前記請求項1又は2に記載の屈曲型温度センサの製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
この発明の温度センサの製造法においては、屈曲したセパレータの所定位置に熱電対を配置すると共にその熱電対が有する素線を前記セパレータに沿わせる。次いで、前方セパレータ部分の先端部を前部保護管用素管の内部に挿入する。前記セパレータの屈曲部付近に位置していた前部保護管用素管の後端部と後部保護管用素管の先端部とを突き合わせ、前部保護管用素管と後部保護管用素管とを一体化する。その結果、所定の位置に熱電対を配置してなり、かつそれらの熱電対の素線を沿わせたセパレータを、両端部以外の部分で屈曲した保護管に、内蔵してなる屈曲型温度センサが、得られる。したがって、この発明によると、セパレータの複数の所定位置に熱電対を正確に配置してなる屈曲型温度センサを製造することのできる方法が、提供される。この発明の方法により製造された屈曲型温度センサは、この屈曲型温度センサを配置することにより所定位置における温度を正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の屈曲型温度センサの製造方法(以下において単に「この発明の方法」と略称することがある。)について図面を参照しながら説明する。
【0009】
この発明の方法を実施するには、図1に示されるように、セパレータ1、保護管用素管2である前部保護用素管2Aと後部保護用素管2Bと熱電対3及びその素線(図示せず。)とが必要である。
【0010】
図1に示されるセパレータはこの発明の方法に使用される一例である。セパレータ1は、前記熱電対3の取り付け位置を決定するとともに熱電対3から延在する素線を装着する際のガイドになる等の機能を有する。図1に示されるセパレータ1はその中央部で90°の屈曲角をもって屈曲していて前方セパレータ部分1Aと後方セパレータ部分1Bとを有し、前記前方セパレータ部分1Aの先端にセパレータヘッド4を有して成る。前記セパレータヘッド4は、前記前方セパレータ部分1Aを前部保護管用素管2Aに挿入した場合に、前方セパレータ部分1Aが前部保護管用素管2A内でがたついて配設位置が不安定になるのを防止し、前方セパレータ部分1Aの軸線と前部保護管用素管2Aの軸線とを一致させる。前記セパレータ1の屈曲角、前方セパレータ部分1Aの先端部から屈曲部までの長さ等は、この発明の方法により製造される屈曲型温度センサを配置する装置例えば半導体製造装置の拡散炉等に応じて決定される。前記セパレータ1の材質は、この発明の目的を達成可能で、かつ測定温度及び後述するように前部保護管用素管2Aと後部保護管用素管2Bとを一体化するときの熔融温度によりこのセパレータ1が変形しないようにすることができる限り適宜の部材を用いることができ、例えば石英等を採用することができる。前記セパレータ1のその軸線に直交する断面形状は、複数の熱電対3を、前記軸線に直交する断面における所定の位置に配設することができる形状であればよく、例えば円形、多角形、前記軸線の中心部から放射状に突出する複数の凸部を有して成る形状等を挙げることができ、いずれかの断面形状を適宜に選定可能である。
【0011】
この発明の方法により製造される屈曲型温度センサに配備される熱電対3の数及び形状は、この発明の目的を達成でき、かつ測定温度、セパレータの形状、及び屈曲型温度センサを設置する装置の形状及び構造等に応じて、適宜に決定乃至変更することができる。
【0012】
この発明の屈曲型温度センサの製造方法に用いる熱電対3としては、例えばサーミスタ等の適宜の部材を用いることができ、白金ロジウム合金−白金ロジウム合金(B)、白金ロジウム合金−白金(ロジウム含有率に応じてR又はS)、クロメル−コンスタンタン(E)、クロメル−アルメル(K)、鉄−コンスタンタン(J)、銅−コンスタンタン(T)、ナイクロシル−ナイシル(N)等を挙げることができる(カッコ内の英文字記号はJIS記号である。)。
【0013】
この発明の方法では、前記前方セパレータ部分1Aに、複数の、例えば4個の熱電対3(3A、3B、3C、3D)が、前方セパレータ部分1Aの先端部近傍から所定の間隔をもって順次に装着される。これら4個の熱電対3A〜3Dに結合され、これらから延在する素線(図示せず。)は、前方セパレータ部分1A及び後方セパレータ部分1Bに配設される。素線は、前記前方セパレータ部分1A及び後方セパレータ部分1Bの外周に沿って配設されるときには適宜の固定手段(図示せず。)により固定しておくのが、好ましい。前記固定手段は、この発明の目的を達成できる限り特に限定されず、屈曲型温度センサの使用温度を考慮して、例えば耐熱性の白金線等の金属線で素線を結束、又は耐熱性の無機系接着剤等で素線とセパレータ1の表面とを接着する接着剤等を採用することができる。また、前記素線は、セパレータ1内にその軸線方向に沿って開設された貫通孔内に、挿通させることにより、セパレータ1に沿って配設する状態を実現することもできる。
【0014】
前記前部保護管用素管2Aは、図1に示す例では、一端面がこの前部保護管用素管2Aの中心軸線方向に直交する平面内に位置するように、一端開口部を備え、また、他端面がこの前部保護管用素管2Aの中心軸線に対して45度の傾斜角で傾斜する傾斜端面を有して成る直管に、形成されて成る。この前部保護管用素管2Aの中心軸線に直交する平面に形成される前部保護環用素管2Aの外周端面の形状は、図1では円形であるが、その外に三角形、四角形及び五角形等の多角形、並びに楕円形等の適宜の形状に形成可能である。
【0015】
前記後部保護管用素管2Bは、前記前部保護管用素管2Aと同じ外径及び肉厚を有するとともにその中心軸線に対して45度の傾斜角で傾斜する傾斜端面を有してなる直管部2B1とこの直管2B1の後部に形成されるとともに前記直管部2B1の外径よりも大きな外径を有するように形成されて成る膨満部2B2とを有して成る。この後部保護管用素管2Bは前部保護管用素管2Aと同じ材料で形成されて成る。この後部保護管用素管2B2の先端から後端までの長さは、前記後方セパレータ部分1Bを挿通し、かつ内蔵することができるように、適宜に決定される。
【0016】
この発明の方法では、前記熱電対3を装着した前方セパレータ部分1Aを前部保護管用素管2Aの傾斜端面側からその内部に挿入する。次いで、熱電対3の素線が配設されている後方セパレータ部分1Bを後部保護管用素管2Bの直管部2B1の傾斜端面側から挿入する。セパレータ1を内蔵した状態のまま、前方セパレータ部分1Aの傾斜端面と後方セパレータ部分1Bの傾斜端面とをつき合わせ、次いで両突合せ面同士を熔融により一体的に結合する。
【0017】
最後に、前記前部保護管用素管2Aの先端開口部を熔融により封止する。これによってセパレータ1に複数の熱電対3(3A〜3D)を配設したセパレータ1を保護管5に内蔵してなる屈曲型温度センサ6が完成する。
【0018】
以上、この発明の一実施例について説明したが、この発明におけるセパレータは、図1及び図2に示されるようなL字型に限定されず、一定の曲率で湾曲した前方セパレータ部分と直線状の後方セパレータ部分とから形成された形状を有していても良い。前記湾曲した前方セパレータ部分を有するセパレータが採用される場合、前部保護管用素管は、湾曲した前記前方セパレータ部分が有する曲率と同じ曲率をもって湾曲する形状に、設計される。湾曲した前方セパレータ部分の一端部から他端部までの長さは、前部保護管用素管の一端から前方セパレータ部分を円滑に挿入することができる寸法に設定される。
【0019】
この発明の方法に使用されるセパレータとして図3に示されるセパレータ1を一例とする面接触一体型セパレータを採用すると、複数の熱電対3を所定の位置に正確に配置してなり、熱電対に結合された素線の断線、短絡等のない屈曲型温度センサ6を製造する目的を達成することができる。
【0020】
この面接触一体型セパレータは、耐熱性及び絶縁性を有する複数の絶縁管からなり、各絶縁管は相互に面接触することによりそれらの位置が不変となるように形成される。図3には面接触一体型セパレータ6の前方セパレータ部分を示す。この図3に示される面接触一体型セパレータ6は、中心軸線に直交する断面がいずれも円形を4等分してなる断面形状を有する4個の絶縁素管7A、7B、7C、7Dを有する。各絶縁素管7A、7B、7C、7Dの先端面には熱電対3が配置され、その熱電対3の素線8が前記先端面に形成された挿通孔内に挿通される。4個の絶縁素管7A、7B、7C、7Dはそれぞれその先端面の位置が異なっており、その先端面の位置は、屈曲型温度センサ6を配置する装置内の温度を測定しようとする所要の位置に熱電対が位置するように決定される。このような構造を有する面接触一体方セパレータ6は4個の絶縁素管7A、7B、7C、7Dが面接触しているので、屈曲型温度センサ6を組み立てる工程において絶縁素管同士がその位置を入れ替えることがない。したがって、この屈曲型温度センサを装備する装置内の温度測定をするべき所要の位置及びこの屈曲型温度センサを取り付ける位置に応じて、前部保護管素管、後部保護管素管、面接触一体型セパレータにおける熱電対の設置位置等を正確に設計しておけば、これらを用いてこの発明の方法により製造された屈曲型温度センサは、前記装置に取り付けると正確な測定位置に熱電対を位置させることができる。
【0021】
前部保護管用素管の端部とこの端部と付き合わされる後部保護管用素管の端部とは、互いに接触する端面を形成している限りそれぞれの端面の傾斜角、及び端面形状については制限がない。例えば前部保護管用素管の端部と後部保護管用素管の端部とが噛みあうように、前部保護管用素管の端部と後部保護管用素管の端部とが凹凸の端面形状を有しても良い。
【0022】
セパレータにおける屈曲部の傾斜角度は図1に示されるような90度に限られず、この屈曲型温度センサを装備する装置の仕様に応じて適宜に決定され、例えば鈍角であっても鋭角であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、この発明の屈曲型温度センサの製造方法の一実施例示す説明図である。
【図2】図2は、この発明の方法により製造される屈曲型温度センサの一例を示す説明図である。
【図3】図3は、この発明の方法において使用される面接触一体型セパレータを示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 セパレータ
1A 前方セパレータ部分
1B 後方セパレータ部分
2A 前部保護管用素管
2B 後部保護管用素管
3(3A、3B、3C、3D) 熱電対
4 セパレータヘッド
5 保護管
6 屈曲型温度センサ
7A、7B、7C、7D 絶縁素管
8 素線



【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲部の両側に、直線状に延在し、又は一定の曲率で湾曲する前方セパレータ部分と直線状に延在する後方セパレータ部分とを有するセパレータに熱電対の素線を沿わせて熱電対を配置した後に、前記前方セパレータ部分を、直線状に延在する前部保護管用素管内に配置し、又は前記前方セパレータ部分と同じ曲率を有する湾曲した前部保護管用素管内に配置すると共に、前記後方セパレータ部分を後部保護管用素管内に配置し、次いで前部保護管用素管と後部保護管用素管との突合せ部を一体化することを特徴とする屈曲型温度センサの製造方法。
【請求項2】
前記セパレータが、前方セパレータ部分と後方セパレータ部分とが屈曲部で直角となるように形成されて成る前記請求項1に記載の屈曲型温度センサの製造方法。
【請求項3】
熱電対を配置したセパレータを内装するのに使用される前部保護管用素管が両端に開口部を備える場合には、前記突合せ部を一体化した後に、その前部保護管用素管の先端開口部を封止する前記請求項1又は2に記載の屈曲型温度センサの製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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