屈曲検出装置
【課題】屈曲方向が互いに異なる、複数態様の基材の屈曲変形をそれぞれ検出することが可能な、屈曲検出装置を提供すること。
【解決手段】入力装置14は、可撓性を有するシート状の基材20と、基材20の表面の異なる領域にそれぞれ配置され、基材20の屈曲変形を検出する2つの屈曲検出部21,22とを備えている。各々の屈曲検出部21,22は、基材20の表面に設けられた圧電層23と、圧電層23の一方の面においてそれぞれ一方向に沿って延在するとともに、互いに導通した複数の第1電極24と、同じく圧電層23の一方の面において、それぞれ複数の第1電極24と平行に延在するとともに互いに導通し、複数の第1電極24と互い違いに配置された複数の第2電極25とを有する。さらに、2つの屈曲検出部21,22の間で、電極の延在方向が互いに異なっている。
【解決手段】入力装置14は、可撓性を有するシート状の基材20と、基材20の表面の異なる領域にそれぞれ配置され、基材20の屈曲変形を検出する2つの屈曲検出部21,22とを備えている。各々の屈曲検出部21,22は、基材20の表面に設けられた圧電層23と、圧電層23の一方の面においてそれぞれ一方向に沿って延在するとともに、互いに導通した複数の第1電極24と、同じく圧電層23の一方の面において、それぞれ複数の第1電極24と平行に延在するとともに互いに導通し、複数の第1電極24と互い違いに配置された複数の第2電極25とを有する。さらに、2つの屈曲検出部21,22の間で、電極の延在方向が互いに異なっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の基材が屈曲したときの、その屈曲変形を検出する屈曲検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外力が作用したときに生じる基材の屈曲変形を、機械(歪み)−電気変換素子の1種である圧電振動子により検出する、屈曲検出装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された検出装置(外力検出センサ)は、圧電基板に片持ち状に設けられるとともに、その表面に互いに平行な複数本の溝が形成された圧電支持梁(基材)と、圧電支持梁の複数本の溝にそれぞれ形成された複数の電極とを有する。複数の電極は、1つ置きに引き出し方向が逆方向となっており、引き出し方向が等しい電極同士は導通している。つまり、圧電支持梁の表面に、互いに導通した電極部分からなる櫛歯状の電極が2種類存在し、これら2種類の櫛歯状電極が互い違いに配置された構造を有する。
【0003】
この特許文献1の検出装置において、外力によって圧電支持梁に屈曲変形が生じたときに、圧電支持梁の表面部の、2種類の電極の間に挟まれた部分に、電極の延在方向と直交する方向に伸張又は圧縮が生じたとする。ここで、電極の延在方向と直交する方向に圧電支持梁が分極されているとすると、圧電支持梁の変形の方向(伸縮方向)と分極方向とが平行になることによって、2種類の電極間にそれら電極の延在方向と直交する方向の電界が生じ、電極間に電圧(電位差)が発生する。これにより、圧電支持梁に発生した屈曲変形を検出することが可能になる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−54842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、互い違いに配置された2種類の櫛歯状電極だけでは、それら2種類の電極の延在方向と直交する方向に伸張又は圧縮する場合の、圧電支持梁の屈曲変形しか検出できない。即ち、電極の延在方向と平行な方向に圧電支持梁が伸張又は圧縮する場合には、2種類の電極間に電界が生じず、そのために両電極間に電圧が発生しないことから、このような圧電支持梁の変形を検出することはできない。
【0006】
本発明の目的は、屈曲方向が互いに異なる、複数種類の基材の屈曲変形をそれぞれ検出することが可能な、屈曲検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の屈曲検出装置は、可撓性を有するシート状の基材と、前記基材表面の複数の領域にそれぞれ配置され、前記基材の屈曲変形を検出する複数の検出手段とを備え、
前記複数の検出手段の各々は、前記基材表面に設けられた圧電層と、前記圧電層の一方の面においてそれぞれ一方向に沿って延在するとともに、互いに導通した複数の第1電極と、同じく前記圧電層の一方の面において、それぞれ前記複数の第1電極と平行に延在するとともに互いに導通し、さらに、前記複数の第1電極と互い違いに配置された複数の第2電極とを有し、
複数の前記検出手段の間で、電極の延在方向が互いに異なっていることを特徴とするものである。
【0008】
検出手段は、圧電層の一方の面において互い違いに配置された複数の第1電極と複数の第2電極を有する。そのため、外力によって基材が曲げられて、圧電層の一方の面に、電極の延在方向と直交する方向に関する圧縮又は伸張の歪みが生じると、その歪みに応じて、第1電極と第2電極との間に電位差が発生する。これにより、基材の屈曲変形が検出される。さらに、基材には複数の検出手段が設けられており、これら複数の検出手段の間で電極(第1電極及び第2電極)の延在方向が異なる。そのため、基材に生じる、屈曲方向の互いに異なる複数種類の屈曲変形を、複数の検出手段によりそれぞれ検出することができる。
【0009】
第2の発明の屈曲検出装置は、前記第1の発明において、前記検出手段が配置されている領域において、前記基材の厚みが局所的に薄くなっていることを特徴とするものである。
【0010】
このように、検出手段が配置されている領域において基材が局所的に薄くなっていると、基材が変形しやすくなり、基材が変形したときの第1電極と第2電極との間に生じる電位差が大きくなるため、検出手段により基材の屈曲変形を検出しやすくなる。
【0011】
第3の発明の屈曲検出装置は、前記第1又は第2の発明において、前記第1電極及び前記第2電極は、前記圧電層の前記基材と反対側の面に配置され、さらに、この前記圧電層の前記基材と反対側の面には、前記第1電極及び前記第2電極を覆う絶縁層が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、電極が圧電層の基材と反対側の面に配置されている場合に、圧電層に、電極を覆うように絶縁層が設けられることにより、電極が圧電層の表面に露出することによって生じる短絡や電極の破損等が防止される。
【0013】
第4の発明の屈曲検出装置は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記基材と同じく可撓性を有するとともに前記基材と一体的に設けられた、画像を表示する表示部と、前記検出手段により検出された前記基材の屈曲変形に基づいて、前記表示部に表示させる画像を変更する表示制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
紙を曲げるようにして、可撓性を有するシート状の基材に屈曲変形を生じさせると、この基材の屈曲変形は屈曲検出手段により検出され、さらに、検出された屈曲変形に基づいて、表示制御手段により、表示部に表示される画像が変更される。従って、表示部に表示されている画像を見ながら、基材を屈曲させることにより、表示部に表示される画像を簡単に変更することができる。
【0015】
第5の発明の屈曲検出装置は、前記第4の発明において、前記圧電層は、前記基材の前記表示部と反対側の面に配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
このように、基材を挟んで、圧電層と表示部とが反対側に配置されている場合には、基材、圧電層、表示部の順に3つの層が積層される場合(即ち、基材と表示部との間に圧電層が存在する場合)と比べると、3層構造の積層体の曲げの中立線から、圧電層までの距離が大きくなる。そのため、基材が屈曲したときに圧電層に生じる歪みが大きくなるため、検出手段により基材の屈曲変形を検出しやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基材には複数の検出手段が設けられており、これら複数の検出手段の間で電極(互い違いに配置された第1電極及び第2電極)の延在方向が異なる。そのため、基材に生じる、屈曲方向の互いに異なる複数種類の屈曲変形を、複数の検出手段によりそれぞれ検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態のプリンタの斜視図、図2は、プリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0019】
図1、図2に示すように、本実施形態のプリンタ1は、印刷用紙Pに画像を記録する記録ヘッド2と、印刷用紙Pを所定方向(図1の前方)へ搬送する搬送機構3と、記録ヘッド2及び搬送機構3を含む、プリンタ1の各種機構をそれぞれ制御する制御装置4を備えている。
【0020】
図1に示すように、プリンタ1は、略直方体状のプリンタ本体6を有し、このプリンタ本体6内に、記録ヘッド2、搬送機構3、及び、制御装置4等が収容されている。記録ヘッド2としては、インクジェット方式や、レーザー方式、あるいは、熱転写方式等、公知の方式で印刷用紙Pに印刷を行うものが用いられる。この記録ヘッド2は、画像データが記録されたデータ記録媒体7(図2参照)がプリンタ1に接続された状態で、制御装置4からの指令に基づいて、データ記録媒体7から入力された、画像データ(画像ファイル)の画像を印刷用紙Pに記録する。尚、以下の説明において、1つの画像データ(画像ファイル)とは、1枚の画像を構成するひとまとまりのデータの集合体を意味するものとする。
【0021】
プリンタ本体6の下半部はその一部が前方に開放されており、この開放部分には、印刷用紙Pが収容される給紙トレイ9と、画像が記録された印刷用紙Pが排出される排紙トレイ8が設けられている。そして、搬送機構3は、モータで回転駆動される搬送ローラによって、給紙トレイ9内の印刷用紙Pを、プリンタ本体6内の記録ヘッド2へ搬送するとともに、記録ヘッド2により画像が記録された印刷用紙Pを前方の排紙トレイ8へ排出する。
【0022】
プリンタ本体6の下半部前面の、給紙トレイ9及び排紙トレイ8の側方位置には、カートリッジ装着部10が設けられており、このカートリッジ装着部10には、4色のインク(イエロー、マゼンタ、シアン、及び、ブラック)をそれぞれ収容した4つのインクカートリッジ11が着脱自在に装着される。
【0023】
プリンタ本体6の上部は、図1の紙面手前側に位置するユーザーに向けて、前方に傾斜しており、この傾斜面6aには、ユーザーにより操作される複数の操作ボタン12が設けられている。
【0024】
さらに、プリンタ1は、可撓性を有するシート状の基材20、及び、この基材20の表面に配置されて基材20の屈曲変形を検出する2つの屈曲検出部21,22(検出手段)とを有する入力装置14(屈曲検出装置)を備えている。図3(a)は、入力装置14の平面図、図3(b)は図3(a)のB−B線断面図である。図3(a),(b)に示すように、この入力装置14の基材20の表面には、それ全体として可撓性を有するディスプレイ13(表示部)が設けられており、このディスプレイ13は、基材20と一体的に屈曲変形可能となっている。このようなディスプレイ13としては、厚みが10分の数ミリ程度と、紙と同等の厚みであって、電圧印加等によってデータ表示及び消去が可能な、いわゆる、電子ペーパーを挙げることができる。尚、図1に示すように、入力装置14とディスプレイ13は、ケーブル15を介して、プリンタ本体6内に格納された制御装置4(図2参照)に接続されている。
【0025】
そして、ユーザーがディスプレイ13に表示させる画像を変更したい場合には、入力装置14の基材20は、ユーザーによって紙を曲げるように操作される。このとき、基材20に生じた屈曲変形は、基材20に設けられた2つの屈曲検出部21,22により検出される。そして、屈曲検出部21,22により検出された基材20の屈曲変形の態様に基づいて、制御装置4がディスプレイ13に表示させる画像を変更するように構成されている。
【0026】
以下、入力装置14について具体的に説明する。
図3(a)に示すように、基材20は、平面視で矩形状に形成されている。また、この可撓性の基材20としては、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる樹脂シート材、あるいは、アルミニウム合金やステンレスなどの金属材料からなる薄板等を用いることができる。
【0027】
この基材20の裏面(ディスプレイ13と反対側の面、図3の紙面向こう側の面)には、2つの屈曲検出部(第1屈曲検出部21、第2屈曲検出部22)が設けられている。2つの屈曲検出部21,22は、基材20の長手方向(図3(a)の左右方向)に関する中央部において、短手方向(図3(a)の上下方向)に並べて配置されている。また、屈曲検出部21,22として、本実施形態では、圧電素子の機械(歪み)−電気変換作用を利用したものが採用されている。即ち、各々の屈曲検出部21,22は、基材20の裏面に形成された圧電層23と、この圧電層23の基材20と反対側の面(裏面)に形成され、間隔を空けて互いに平行に延びる2種類の電極(第1電極24及び第2電極25)とを有する。
【0028】
圧電層23は、例えば、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料からなり、基材20の裏面全体を覆うように形成されている。即ち、2つの屈曲検出部21,22の間で、圧電層23は共通となっている。この圧電層23は、例えばエアロゾルデポジション法や、スパッタ法、ゾルゲル法等によって基材20に形成される。
【0029】
各々の屈曲検出部21,22において、圧電層23の裏面(ディスプレイ13と反対側の面)には、一方向に沿って平行に延在するとともに互いに導通した、櫛歯状の複数の第1電極24と、これら複数の第1電極24と平行に延在するとともに互いに導通した、同じく櫛歯状の複数の第2電極25とが設けられている。さらに、複数の第1電極24と複数の第2電極25は互い違いに配置されている。これら第1電極24及び第2電極25は、金、銅、銀、パラジウム、白金、あるいは、チタンなどの導電性材料により、スクリーン印刷法や蒸着法等を用いて形成される。
【0030】
図3(a)に示すように、2つの屈曲検出部21,22の間で、電極(第1電極24及び第2電極25)の延在方向は互いに異なっている。より具体的には、基材20の中央よりもやや上寄りの位置に配置された、第1屈曲検出部21の電極延在方向は、矩形状の基材20の長手方向と平行である。一方、基材20の中央よりもやや下寄りの位置に配置された、第2屈曲検出部22の電極延在方向は、基材20の短手方向と平行である。つまり、2つの屈曲検出部21,22の電極延在方向は互いに直交している。
【0031】
尚、製造段階において、各々の屈曲検出部21,22において、第1電極24に低電位(例えば、0V(グランド電位))、第2電極25に低電位(例えば、50V)がそれぞれ印加されることにより、圧電層23の第1電極24と第2電極25との間に挟まれた部分は、第2電極25から第1電極24に向かう方向に分極されている。
【0032】
図3(a)に示すように、2つの屈曲検出部21,22の、互いに導通した複数の第1電極24からは、それぞれ1本ずつ配線27,28が引き出されており、これら2本の第1電極24用の配線27,28は、制御装置4(図2参照)と接続されている。また、第1屈曲検出部21の複数の第2電極25と、第2屈曲検出部22の複数の第2電極25は、共通の配線29に接続されている。この共通配線29は、制御装置4側に設けられたグランド配線に接続されており、共通配線29を介して、すべての第2電極25が常にグランド電位に保持されている。
【0033】
図3(b)に示すように、圧電層23の裏面には、2つの屈曲検出部21,22の第1電極24と第2電極25を全て覆うように、絶縁層26が形成されている。この絶縁層26は、ポリイミド等の絶縁性を有する合成樹脂材料で形成することができる。このように、第1電極24と第2電極25とが絶縁層26で覆われることにより、電極の剥離や破損、あるいは、第1電極24と第2電極25の間の短絡といった問題が生じるのを防止できる。
【0034】
次に、2つの屈曲検出部21,22が基材20の屈曲変形を検出する際の作用について、図4〜図7を参照して説明する。尚、図4〜図7中の“+”は第1電極24の電位が正の電位である状態、“−”は第1電極24の電位が負の電位である状態、“GND”は電極(第1電極24又は第2電極25)の電位がグランド電位である状態をそれぞれ示している。また、図4〜図7のそれぞれにおいて、(a)は入力装置14の平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【0035】
基材20の屈曲検出部21,22が設けられている領域において屈曲変形が生じて、圧電層23の、第1電極24及び第2電極25の間の部分に歪み(変形)が生じると、この歪みに応じて第1電極24と第2電極25との間に電界(即ち、電位差)が発生する。この作用について、基材20の屈曲変形の態様毎に分けて、さらに具体的に説明する。
【0036】
(1)図4、図5に示すように、基材20にその短手方向に平行な軸C1周りの屈曲変形が生じた場合には、基材20とともに、圧電層23が手前側(上方)又は向こう側(下方)に凸となるように変形する。このとき、第2屈曲検出部22において、圧電層23の下面の、第1電極24と第2電極25との間の部分が、電極延在方向と直交する方向(基材20の長手方向)に沿って伸張又は圧縮される。
【0037】
即ち、図4(b)に二点鎖線で示すように、基材20及び圧電層23が軸C1周りに下方に凸となるように曲げられたときには、基材20の裏面に設けられた第2屈曲検出部22において、圧電層23の下面部分が、その分極方向と平行な方向に伸張される。このとき、圧電層23の内部に、分極方向と逆方向の電界(即ち、第1電極24から第2電極25に向かう方向の電界)が生じ、その結果、第1電極24に第2電極25の電位(グランド電位)よりも高い、正の電位(+)が発生する。
【0038】
また、図5(b)に二点鎖線で示すように、基材20及び圧電層23が軸C1周りに上方に凸となるように曲げられたときには、基材20の裏面に設けられた第2屈曲検出部22において、圧電層23の下面部分が、その分極方向と平行な方向に圧縮される。このとき、圧電層23の内部に分極方向と同方向の電界(即ち、第2電極25から第1電極24に向かう方向の電界)が生じ、その結果、第1電極24に第2電極25の電位(グランド電位)よりも低い、負の電位(−)が発生する。
【0039】
尚、このとき、もう一方の第1屈曲検出部21においても、第1電極24と第2電極25に挟まれた圧電層23の部分には変形(伸張又は圧縮)が生じるものの、その変形方向は電極延在方向(基材20の長手方向)と平行であり、第1屈曲検出部21における圧電層23の分極方向とは異なる(直交する)方向である。そのため、第1屈曲検出部21においては、第1電極24と第2電極25との間にはほとんど電位差が生じない。
【0040】
(2)図6、図7に示すように、基材20にその長手方向に平行な軸C2周りの屈曲変形が生じた場合には、先の(1)で説明した第2屈曲検出部22の作用が、今度は第1屈曲検出部21に生じる。即ち、第1屈曲検出部21において、圧電層23の下面の、第1電極24と第2電極25との間の部分が、電極延在方向と直交する方向(基材20の短手方向)に沿って伸張又は圧縮される。
【0041】
即ち、図6(c)に二点鎖線で示すように、基材20及び圧電層23が軸C2周りに下方に凸となるように曲げられたときには、基材20の裏面に設けられた第1屈曲検出部21において、圧電層23の下面部分が、その分極方向と平行な方向に伸張される。このとき、圧電層23の内部に、分極方向と逆方向の電界(即ち、第1電極24から第2電極25に向かう方向の電界)が生じ、その結果、第1電極24に第2電極25の電位(グランド電位)よりも高い、正の電位(+)が発生する。
【0042】
また、図7(c)に二点鎖線で示すように、基材20及び圧電層23が軸C2周りに上方に凸となるように曲げられたときには、基材20の裏面に設けられた第1屈曲検出部22において、圧電層23の下面部分が、その分極方向と平行な方向に圧縮される。このとき、圧電層23の内部に分極方向と同方向の電界(即ち、第2電極25から第1電極24に向かう方向の電界)が生じ、その結果、第1電極24に第2電極25の電位(グランド電位)よりも低い、負の電位(−)が発生する。
【0043】
このとき、第2屈曲検出部22においても、第1電極24と第2電極25の間の圧電層23には変形(伸張又は圧縮)が生じるものの、その変形方向は電極延在方向(基材20の短手方向)と平行であり、圧電層23の分極方向とは異なる(直交する)方向である。そのため、第2屈曲検出部22においては、第1電極24と第2電極25との間にはほとんど電位差が生じない。
【0044】
このように、基材20に設けられた2つの屈曲検出部21,22の間で、電極(第1電極24及び第2電極25)の延在方向が互いに異なっている(直交している)ため、2つの屈曲検出部21,22により、互いに直交する2つの軸C1,C2周りの基材20の屈曲変形を、それぞれ区別して検出することができる。
【0045】
尚、各々の屈曲検出部21,22が、互い違いに配置された複数の第1電極24と複数の第2電極25を有するものでなく、互いに平行な第1電極24と第2電極25を1本ずつ有するものであったとしても、この1組の第1電極24と第2電極25の間における圧電層23が変形したときの第1電極24の電位変化を、制御装置4側で正確に検知できれば、基材20の屈曲変形を検出することは可能である。しかし、第1電極24の電位変化が小さいと、その電位変化を正しく検知することは困難であり、誤検出が生じる虞がある。誤検出を防止するためには、第1電極24と第2電極25の間の間隔を小さくして、圧電層23に屈曲が生じたときの第1電極24の電位変化をできるだけ大きくして、検出感度を高めることが必要であるが、そうすると、1つの屈曲検出部で基材20の屈曲変形を検出できる範囲は非常に小さいものとなってしまう。
【0046】
しかし、本実施形態においては、各々の屈曲検出部21,22において、圧電層23の同じ面上に、同一方向に延在する複数の第1電極24と複数の第2電極25とが互い違いに配置されることによって、第1電極24と第2電極25とからなる電極の組が複数存在している。そのため、第1電極24と第2電極25間の距離を短くして検出感度を上げつつ、ある程度の広さを有する領域内に生じる基材20の屈曲変形を1つの屈曲検出部で検出することができる。
【0047】
また、本実施形態においては、図3(b)に示すように、圧電層23は、基材20のディスプレイ13と反対側の面に配置されている。つまり、基材20を挟んで、圧電層23とディスプレイ13とが反対側に配置されている。この場合には、基材20、圧電層23、ディスプレイ13の順に3つの層が積層される場合(基材20とディスプレイ13との間に圧電層23が存在する場合)と比べると、3層構造の曲げの中立線から、圧電層23の下面までの距離が大きくなる。そのため、基材20が屈曲したときに圧電層23の下面に生じる歪みが大きくなり、第1電極24に生じる電位も大きくなるため、基材20の屈曲変形を検出しやすくなる。
【0048】
(3)上述した(1),(2)の屈曲変形において、基材20の屈曲速度(曲げ速度)が大きいほど、圧電層23に生じる電界の大きさが大きくなる。即ち、第2電極25が常に一定電位(グランド電位)に保持されていれば、基材20の曲げ速度が大きいほど、第1電極24の電位(の絶対値)が大きくなる。従って、第1電極24の電位(の絶対値)の大きさから、基材20に生じた屈曲変形の曲げ速度の違いをも区別して検出することも可能である。
【0049】
以上から、第1屈曲検出部21と第2屈曲検出部22からそれぞれ出力された電圧信号(第1電極24の電位)に基づいて、制御装置4は、基材20に生じる複数の屈曲変形の態様を区別して認識することができるようになる。
【0050】
本実施形態のプリンタ1においては、ユーザーにより、入力装置14の基材20が、紙を折り曲げるように、予め定められた所定の態様で曲げられたときには、そのときに基材20に生じる屈曲変形が2つの屈曲検出部21,22により検出され、検出された屈曲変形に応じて、ディスプレイ13に表示される画像が変更される(画像変更処理)。この画像変更処理の具体的内容については、次の制御装置4の説明において詳細に述べることにする。
【0051】
次に、制御装置4を中心とするプリンタ1の電気的な構成について、図2のブロック図を参照して詳細に説明する。制御装置4は、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、プリンタ1の各種機構を制御するためのプログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)、CPUで処理されるデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、外部装置との間の信号の入出力を行う入出力インターフェース等で構成されている。
【0052】
図2に示すように、制御装置4は、記録制御部30と、データ記録媒体7から入力された画像データが記憶される画像データ記憶部31と、ディスプレイ13を制御する表示制御部32(表示制御手段)とを有する。データ記録媒体7には、データファイルの名前(例えば、アルファベット順)や画像データの作成日時といった、ある所定の条件に基づいて予め順序付けされた複数の画像データが、画像フォルダで区分けされて記録されている。そして、データ記録媒体7がプリンタ1に接続された状態で、データ記録媒体7から読み出された複数の画像データが画像データ記憶部31に記憶される。
【0053】
尚、画像データが記録されたデータ記録媒体7としては、USBメモリーやメモリカード等、プリンタのスロット等に差し込まれることにより接続されるストレージデバイス、あるいは、ケーブル等の有線、あるいは、無線で制御装置4と接続される外部記憶装置等が該当する。また、データ記録媒体7に記録されているデータは、デジタルカメラで撮影された静止画像データだけでなく、デジタルビデオカメラで撮影された動画データであってもよい。ここで、動画データとは、時間的に連なった複数の静止画像データの集合体である。この動画データがデータ記録媒体7から入力された場合には、制御装置4において、入力された動画データから複数の静止画像データが抽出され、これらの複数の静止画像データの一部がディスプレイ13に表示されたり、あるいは、印刷用紙Pにその静止画像が記録されたりすることになる。
【0054】
記録制御部30は、画像データ記憶部31に記憶されたデータを参照して、記録ヘッド2と搬送機構3をそれぞれ制御することにより、ユーザーによって選択された画像データの画像を、印刷用紙Pに印刷するように構成されている。また、表示制御部32は、プリンタ1の状態(画像記録中の状態、あるいは、待機状態など)やエラーメッセージ等をディスプレイ13に表示させて、これらの情報をユーザーに通知する。
【0055】
さらに、表示制御部32は、ユーザーによって入力装置14の基材20が曲げられたときに、2つの屈曲検出部21,22により検出された基材20の屈曲変形の態様に応じて、ディスプレイ13に表示させる画像を変更する機能を備えている。尚、「ディスプレイ13に表示させる画像を変更」とは、ディスプレイ13の画面全体に表示される画像の一部又は全体を変更することを指す。従って、現在表示されている、ある画像データの画像を別の画像データの画像に切り替えることはもちろんのこと、現在表示されている画像に対して拡大又は縮小といった画像処理を施すことも含まれる。
【0056】
尚、記録制御部30、画像データ記憶部31、及び、表示制御部32は、制御装置4を構成しているCPU,ROM,RAM等により実現されている。言い換えれば、制御装置4のROMに、記録ヘッド2や搬送機構3の制御プログラムや、ディスプレイ13に表示させる画像を変更するプログラムなどの、各種プログラムが格納されており、このROMに格納されたプログラムが、制御装置4のCPUで実行されることで、記録制御部30、画像データ記憶部31、及び、表示制御部32の、それぞれの機能が実現される。
【0057】
(画像変更処理)
ユーザーによって入力装置14の基材20が曲げられたときに、表示制御部32により実行される画像変更処理について説明する。
【0058】
前述したように、本実施形態のプリンタ1は、基材20に設けられた2つの屈曲検出部21,22により、ユーザーにより基材20が屈曲操作されたときに基材20に生じる複数の屈曲変形の態様を、区別して検出可能である。そこで、図8に示すように、2つの屈曲検出部21,22により区別して検出される6種類の屈曲変形(項目A〜F)に対して、画像の拡大縮小や画像の切り替えに関する6種類の画像変更処理の内容が予め割り付けられている。
【0059】
1)画像の拡大縮小
図4に示すように、ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その短手方向に平行な軸C1周りに、下方(ユーザーから見て向こう側)に凸となるように曲げられた場合(図8の項目A)には、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に伸びる。すると、第2屈曲検出部22の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と逆方向(第1電極24から第2電極25に向かう方向)の電界が生じ、第2屈曲検出部22の第1電極24に正の電位が発生する。この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20が下方へ凸となるように曲げられたと判断し、表示制御部32は、現在表示されている画像をさらに小さく縮小した縮小画像を、ディスプレイ13に表示させる。
【0060】
また、図5に示すように、基材20が、その短手方向に平行な軸C1周りに、上方(ユーザーから見て手前側)に凸となるように曲げられた場合(図8の項目B)には、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に縮む。すると、第2屈曲検出部22の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と同方向(第2電極25から第1電極24に向かう方向)の電界が生じ、第1電極24に負の電位が発生する。この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20が上方へ凸となるように曲げられたと判断し、表示制御部32は、現在表示されている画像の中央部を拡大した拡大画像を、ディスプレイ13に表示させる。
【0061】
つまり、ユーザーによって、基材20がユーザーから遠ざかるように、ユーザーから見て向こう側(下方)に凸となるように基材20が曲げられたときには、表示制御部32はディスプレイ13に表示されている画像を縮小させる。一方、基材20がユーザーに近づくように、ユーザーから見て手前側(上方)に凸となるように基材20が曲げられたときには、表示制御部32はディスプレイ13に表示されている画像を拡大させる。このように、基材20を近づける操作と画像の拡大が対応し、また、基材20を遠ざける動作と画像の縮小とが対応しているため、画像を拡大縮小させる際の基材20の屈曲操作をユーザーが感覚的に覚えやすいという利点がある。
【0062】
2)画像切り替え(画像の送り/戻し)
図6に示すように、ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その長手方向に平行な軸C2周りに、下方(ユーザーから見て向こう側)に凸となるように曲げられた場合には、圧電層23の下面部分が基材20の短手方向に伸びる。ここで、比較的ゆっくりした速度で基材20が下方に凸となるように曲げられた場合(図8の項目C)には、第1屈曲検出部21の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と逆方向(第1電極24から第2電極25に向かう方向)の弱めの電界が生じ、第1屈曲検出部21の第1電極24に、電位の絶対値が所定値以下となる、比較的小さな正の電位が発生する。
【0063】
この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20がゆっくりした速度で下方へ凸となるように曲げられたと判断する。そして、画像データ記憶部31に順序づけされた状態で記憶されている複数の画像データの中から、現在ディスプレイ13に表示されている画像データよりも1つ後の画像データを選択し、ディスプレイ13に表示させる画像を、この選択した画像データの画像に切り替える。
【0064】
また、図7に示すように、ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その長手方向に平行な軸C2周りに、上方(ユーザーから見て手前側)に凸となるように曲げられた場合には、圧電層23の下面部分が基材20の短手方向に縮む。ここで、比較的ゆっくりした速度で基材20が上方に凸となるように曲げられた場合(図8の項目D)には、第1屈曲検出部21の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と同方向(第2電極25から第1電極24に向かう方向)の弱めの電界が生じ、第1屈曲検出部21の第1電極24に、電位の絶対値が所定値以下となる、比較的小さな負の電位が発生する。
【0065】
この信号を受けて、表示制御部32は、軸C2周りに、基材20がゆっくりした速度で上方へ凸となるように曲げられたと判断する。このとき、表示制御部32は、画像データ記憶部31に順序づけされた状態で記憶されている複数の画像データの中から、現在ディスプレイ13に表示されている画像データよりも1つ前の画像データを選択し、ディスプレイ13に表示させる画像を、この選択した画像データの画像に切り替える。
【0066】
さらに、図6、図7において、基材20が下方又は上方へ凸となるように曲げられるときの屈曲速度が大きいほど、第1屈曲検出部21の第1電極24と第2電極25との間の圧電層23に生じる電界は大きくなり、第1電極24の電位の絶対値は大きくなる。そこで、第1電極24の電位の絶対値が所定値よりも大きいときには、表示制御部32は、基材20がかなり速い速度で曲げられたと判断する(図8の項目E,F)。このとき、表示制御部32は、ディスプレイ13に、先ほどの処理(図8の項目C,D)よりもさらに粗い間隔(大きな間隔)で表示画像の送り/戻しを行わせる。
【0067】
即ち、表示制御部32は、基材20がかなり速い速度で下方へ凸となるように曲げられたと判断したときには、ディスプレイ13に表示させる画像を、現在表示されている画像よりも5つ後の画像に切り替える。逆に、基材20がかなり速い速度で上方へ凸となるように曲げられたと判断したときには、表示制御部32は、ディスプレイ13に表示させる画像を、現在表示されている画像よりも5つ前の画像に切り替える。
【0068】
つまり、ユーザーは、現在表示されている画像が、表示させたい所望の画像から、順序的にかなりかけ離れた画像であることが分かっている場合には、基材20を速い速度で屈曲させて、ディスプレイ13に表示される画像が短い時間で所望の画像に近づくように、5つずつ画像を送り/戻しさせることができる。その後、表示画像が所望の画像に近づいていくと、今度は、基材20をゆっくりした速度で屈曲させて、表示された画像が所望の画像かどうかを確認しながら、1つずつ画像を送り/戻しさせるということが可能になる。
【0069】
以上のようにして、ディスプレイ13に所望の画像が表示された後に、ユーザーにより操作ボタン12(図1参照)等が操作されることによって、画像を記録する指令が入力されると、記録制御部30は、記録ヘッド2及び搬送機構3を制御して、現在ディスプレイ13に表示されている画像を印刷用紙Pに記録する。
【0070】
以上説明した本実施形態のプリンタ1によれば、次のような効果が得られる。
ユーザーが、紙を曲げるようにして、可撓性を有するシート状の基材20に屈曲変形を生じさせると、この基材20の屈曲変形は2つの屈曲検出部21,22により検出され、さらに、検出された屈曲変形に基づいて、表示制御部32により、ディスプレイ13に表示される画像が変更される。この構成によれば、基材20を屈曲させるという簡単な操作だけで、画像の拡大縮小や画像の切り替え(送り/戻し)を行うことができる。従って、ディスプレイ13に表示される画像を変更するために、複数の操作ボタン12等を複雑に操作する必要がなく、機器の操作が苦手なユーザーであっても、ディスプレイ13に表示される画像を簡単に変更することができる。
【0071】
また、屈曲検出部21,22は、圧電層23の一方の面(下面)において互い違いに配置された複数の第1電極24と複数の第2電極25を有する。そのため、ユーザーによって基材20が曲げられて、圧電層23の一方の面に、電極の延在方向と直交する方向に関する圧縮又は伸張の歪みが生じると、その歪みに応じて、第1電極24と第2電極25との間に電位差が発生する。これにより、基材20の屈曲変形が検出される。さらに、基材20には2つの屈曲検出部21,22が設けられており、これら2つの屈曲検出部21,22の間で電極(第1電極24及び第2電極25)の延在方向が異なる。そのため、基材20に生じる、屈曲方向の互いに異なる2種類の屈曲変形を、2つの屈曲検出部21,22によりそれぞれ検出することができる。
【0072】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0073】
1]基材の屈曲変形を検出する屈曲検出部の構成、数、及び、基材表面における位置等は、前記実施形態のものに限られず、以下のような変更が可能である。
【0074】
(1)基材20の全体的な屈曲変形を確実に検出するためには、電極延在方向が互いに異なる第1屈曲検出部21と第2屈曲検出部22がそれぞれ基材20に複数設けられ、さらに、図9に示すように、複数(図9では2つ)の第1屈曲検出部21(電極延在方向:基材20の長手方向)と、複数(図9では2つ)の第2屈曲検出部22(電極延在方向:基材20の短手方向)が、基材20の中央部側に配置されていることが好ましい(変更形態1)。
【0075】
尚、この変更形態1において、2つの第1屈曲検出部21a,21bは、共に、基材20の長手方向に平行な軸C2周りに関する基材20の全体的な屈曲変形を検出するために設けられ、2つの第2屈曲検出部22a,22bは、共に、基材20の短手方向に平行な軸C1周りに関する基材20の全体的な屈曲変形を検出するために設けられている。そのため、2つの第1屈曲検出部21a,21bの間、あるいは、2つの第2屈曲検出部22a,22aの間で、第1電極24の電位を検出するための配線を独立させる必要は特にない。従って、図9に示すように、2つの第1屈曲検出部21a,21bの第1電極24同士が互いに導通して共通の配線27に接続されるとともに、2つの第2屈曲検出部22a,22bの第1電極24同士も互いに導通して共通の配線28に接続されてもよい。
【0076】
(2)図10に示すように、基材20の中央部、及び、その周囲四方の、計5カ所に、5つの屈曲検出部41,42,43,44,45がそれぞれ設けられていてもよい(変更形態2)。尚、この変更形態2においては、基材に設けられた5つの屈曲検出部41〜45のうち、図中上下方向中央部において左右に並ぶ3つの屈曲検出部41,42,43においては、第1電極24及び第2電極25の延在方向は、基材20の短手方向に平行である。一方、図中、上下両側にそれぞれ設けられた2つの屈曲検出部44,45においては、第1電極24及び第2電極25の延在方向は、基材20の長手方向に平行である。また、5つの屈曲検出部41〜45の第1電極24からは独立した配線が引き出される一方で、5つの屈曲検出部41〜45の第2電極25は、共通の配線29に接続されている。
【0077】
従って、基材20の上下方向中央部に配置された3つの屈曲検出部41,42,43により、基材20の、その短手方向に平行な軸周りの屈曲変形が検出され、上下2つの屈曲検出部44,45により、基材20の、その長手方向に平行な軸回りの屈曲変形が検出される。
【0078】
さらに、5つの屈曲検出部41〜45は、基材20の表面の異なる領域にそれぞれ配置されていることから、ユーザーによって基材20の一部のみが曲げられたときに、その一部において局所的に生じる屈曲変形を検出することが可能である。例えば、基材20の右端部分が、基材20の短手方向に平行な軸周りに折り曲げられたときに、この右端部分に局所的に生じる屈曲変形は、右側の屈曲検出部42によって検出される。このように、屈曲方向だけでなく、局所的に屈曲したときのその屈曲位置も検出することが可能である。つまり、前述した実施形態と比べて、基材20の屈曲変形の態様をさらに細かく区別して検出することができることから、区別して検出された屈曲変形の態様に対して、多くの処理を割り付けることも可能となる。
【0079】
その処理の割り付けの一例について、図11を参照して説明する。尚、図11において、「屈曲位置」とは、ユーザーによって基材20が曲げられた位置を示している。この図11においては、基材20の一部が局所的に曲げられたときに、表示制御部32は、ディスプレイ13に表示されている画像を、基材20の屈曲変形を検出した屈曲検出部41〜45の配置領域に対応する部分を中心に、拡大又は縮小させる。
【0080】
例えば、図11の項目Cに表されているように、ディスプレイ13にある画像が表示されている状態で、ユーザーによって基材20の右端部が下方(向こう側)へ凸となるように曲げられると、基材20の右端部に設けられた屈曲検出部42の第1電極24のみが正の電位となり、他の屈曲検出部41,43,44,45の第1電極24の電位はグランド電位のままとなる。従って、これら屈曲検出部41〜45から出力された信号を受けて、表示制御部32は、基材20の右端部が局所的に下方に凸となるように曲げられたと判断する。このとき、ディスプレイ13に表示されている画像が標準状態の画像(拡大されていない状態の画像)である場合には、表示制御部32は、屈曲検出部42の配置領域に対応した、画像の右端部を中心に拡大した画像をディスプレイ13に表示させる。また、現在ディスプレイ13に表示されている画像が、既にその一部が拡大されている画像である場合には、表示制御部32は、拡大位置を右端部に変更する(即ち、ディスプレイ13の表示画像を、その右端部が拡大された画像に切り替える)。
【0081】
逆に、図11の項目Dに示されているように、ユーザーによって基材20の右端部が上方(手前側)へ凸となるように曲げられると、基材20の右端部に設けられた屈曲検出部42の第1電極24のみが負の電位となり、他の屈曲検出部41,43,44,45の第1電極24の電位はグランド電位のままとなる。従って、これら屈曲検出部41〜45から出力された信号を受けて、表示制御部32は、基材20の右端部が局所的に上方に凸となるように曲げられたと判断する。このとき、表示制御部32は、屈曲検出部42の配置領域に対応した、画像の右端部を中心に縮小した画像をディスプレイ13に表示させる。
【0082】
基材20の中央部、左端部、上端部、及び、下端部がそれぞれ下方又は上方に凸となるように折り曲げられた場合も、上述した、基材20の右端部が曲げられた場合と同様に、基材20の屈曲位置に対応した部分を中心に、画像の拡大又は縮小が行われる。
【0083】
このように、図11に示す割り付けにおいては、5つの屈曲検出部41〜45のうちの1つが設けられている領域において基材20を局所的に屈曲させることにより、ディスプレイ13に表示されている画像のどの部分を中心に、画像を拡大又は縮小させるのかをユーザーが指定することができる。
【0084】
(3)図12に示すように、矩形状の基材20の右上角部の領域にも屈曲検出部(第3屈曲検出部46)が設けられ、この第3屈曲検出部46により、基材20の右上角部の屈曲変形が検出されるようになっていてもよい(変更形態3)。第3屈曲検出部46の第1電極24及び第2電極25の延在方向は、基材20の長手方向(第1屈曲検出部21の電極延在方向)に対して右回り方向(時計回り方向)に45°、基材20の短手方向(第2屈曲検出部22の電極延在方向)に対して左回り方向(反時計回り方向)に45°傾いた方向となっている。また、第3屈曲検出部46の第1電極24からは、第1屈曲検出部21及び第2屈曲検出部22とは独立した配線が引き出される一方で、第3屈曲検出部46の第2電極25は、第1屈曲検出部21及び第2屈曲検出部22の第2電極25と共通の配線29に接続されている。
【0085】
この第3屈曲検出部46が基材20の右上角部に設けられていると、紙の端を折るように、電極延在方向に平行な軸C3を中心に、基材20の右上角部が下方(向こう側)又は上方(手前側)に折り曲げられたときに、第3屈曲検出部46の第1電極24の電位が正の電位又は負の電位になることから、表示制御部32は、基材20の右上角部が曲げられたことを認識することができる。
【0086】
さらに、この変更形態3においては、図13に示すように、第3屈曲検出部46により検出される、基材20の右上角部の屈曲変形を、ディスプレイ13に表示させる画像を変更するための屈曲変形とは異なる態様の変形であるとし、この右上角部の屈曲変形に対して、前述したような画像変更処理とは別の処理が割り付けられている。
【0087】
図13において、項目A〜Fの画像変更処理は前述した実施形態の図8と同様であるので、その説明は省略する。一方、図13の項目Gに示すように、ユーザーによって、基材20の右上角部が、軸C3周りに下方(向こう側)に凸となるように曲げられて、第3屈曲検出部46の第1電極24が正の電位となったときには、記録制御部30は、基材20に生じた屈曲変形が、ディスプレイ13に表示させる画像を変更するための屈曲変形ではなく、画像記録のための屈曲変形であると判断し、記録ヘッド2に、現在ディスプレイ13に表示されている画像を印刷用紙Pに記録させる。また、上述したようにして、一旦、画像の記録指示がなされた後で、図13の項目Hに示すように、基材20の右上角部が上方(手前側)に凸となるように曲げられて、第3屈曲検出部46の第1電極24が負の電位となったときには、記録制御部30は、記録ヘッド2に画像の記録を中止させる。
【0088】
この変更形態3においては、ディスプレイ13に表示させる画像を変更する場合とは異なる屈曲変形を基材20に生じさせることにより、記録ヘッド2により、ディスプレイ13に表示されている画像を印刷用紙Pに記録させることができる。従って、画像の記録を指示するために、ユーザーが、入力装置14とは別の操作部(図1に示す操作ボタン12等)を操作する必要がない。また、本や冊子の所定のページを選択するために紙の端を折り曲げるような感覚で、基材20の右上角部を折り曲げることにより、現在ディスプレイ13に表示されている画像を選択してその画像を記録し、あるいは、一旦行った記録指令をキャンセルすることができるため、画像を記録する際の基材20の屈曲操作を感覚的に覚えやすい。
【0089】
(4)屈曲検出部が配置されている領域において、基材の厚みが局所的に薄くなっていてもよい(変更形態4)。例えば、図14に示すように、前述した変更形態2における第3屈曲検出部46の第1電極24及び第2電極25が設けられている領域において、基材20の上面部に、第3屈曲検出部46の電極延在方向に平行な溝20aが形成されることにより、この領域における基材20の厚みが局所的に薄くなっていてもよい。この場合には、第3屈曲検出部46の配置領域(右上角部)において基材20が変形しやすくなり、この基材20が変形したときに生じる第1電極24の電位が大きくなるため、基材20の屈曲変形を検出しやすくなる。また、第1屈曲検出部21や第2屈曲検出部22の配置領域において、基材20の厚みが局所的に薄くなっていてもよい。
【0090】
(5)前記実施形態においては、屈曲検出部21,22の第1電極24及び第2電極25は、圧電層23の基材と反対側の面に配置されていたが、図15に示すように、屈曲検出部21,22の第1電極24及び第2電極25が、圧電層23の基材20側の面に形成されてもよい(変更形態5)。但し、この場合、第1電極24と第2電極25が互いに導通しないように、基材20が絶縁性材料で形成されるなど、少なくとも基材20の下面は絶縁性を有する必要がある。また、この形態では、先の形態においては第1電極24及び第2電極25を覆うために必要であった、圧電層23の裏面の絶縁層26(図3(b)参照)は不要である。
【0091】
2]前記実施形態及びその変更形態においては、屈曲検出部により検出された基材20の様々な屈曲変形の態様に対して、表示制御部32により実行される画像変更処理として、画像の拡大/縮小処理と、画像の切り替え処理とが割り付けられているが、これら以外の処理を、検出された基材20の屈曲変形に対して割り付けることも可能である。
【0092】
例えば、一般的に、ディスプレイ13を制御する表示制御部32は、図15(a)のように、ディスプレイ13に1枚の画像を表示させることが可能であるが、図15(b)のように、ディスプレイ13に複数枚(例えば、4枚)の縮小画像(サムネイル画像)を一覧表示(サムネイル表示)させることも可能である。そこで、屈曲検出部により基材20の屈曲変形が検出されたときに、表示制御部32が、ディスプレイ13に一覧表示させる画像の数を変更するようになっていてもよい(変更形態6)。
【0093】
この変更形態6における画像変更処理の割り付けについて、基材20に5つの屈曲検出部41〜45が設けられた、前述した変更形態2の入力装置(図10参照)を採用した場合を例に挙げて説明する。変更形態1の説明において述べたように、図10の入力装置においては、基材20の中央部、右端部、左端部、上端部、及び、下端部の計5カ所における屈曲変形が、5つの屈曲検出部41〜45により独立して検出可能となっている。そして、これら5つの屈曲検出部41〜45により検出された基材20の屈曲変形に対して割り付けられた、表示制御部32がディスプレイ13に実行させる画像変更処理の処理内容を、図17に示す。
【0094】
ユーザーによって、基材20の中央部が下方(向こう側)に凸となるように曲げられたときには(図17の項目A)、表示制御部32は、ディスプレイ13の一覧表示画像数を増加させる。また、ユーザーによって、基材20の中央部が上方(手前側)に凸となるように曲げられたときには(図17の項目B)、表示制御部32は、ディスプレイ13の一覧表示画像数を減少させる。例えば、基材20が下方に凸に曲げられたときには、図16(a)のように、1枚の画像が全体表示されている標準表示状態から、図16(b)のように、4枚の縮小画像(サムネイル画像)が表示された状態へ、ディスプレイ13の状態を切り替える。また、逆に、基材20が上方に凸に曲げられたときには、図16(b)のサムネイル画像表示状態から、図16(a)の標準表示状態に切り替える。また、4枚のサムネイル画像が表示されている状態で、さらに、画像数を増やすように基材20が下方へ凸に曲げられたときには、一覧表示するサムネイル画像数を4枚からさらに増やす(例えば、8枚)ようにしてもよい。
【0095】
また、ディスプレイ13に複数枚の画像(サムネイル画像)が一覧表示されている状態で、ユーザーによって、基材20の右端部が下方に凸となるように曲げられた場合には(図17の項目C)、表示制御部32は、ディスプレイ13に一覧表示されている複数の画像のうち、現在選択されている画像の右に位置する画像を新たに選択する。即ち、選択画像を右の画像に変更する。尚、「画像が選択されている」とは、画像を記録したり、画像処理を施したりする対象となる画像を決定するために、ディスプレイ13に一覧表示されている画像のうちの1つが、太枠で囲まれたり、明度が高められたり、あるいは、点滅するなどして、一覧表示されている他の画像から差別化されている状態を指す。
【0096】
また、基材20の左端部、上端部、及び、下端部がそれぞれ曲げられた場合には、ディスプレイ13に一覧表示されている複数の画像のうち、現在選択されている画像に対して、左、上、及び、下に位置する画像にそれぞれ選択する(図17の項目D,E,F)。
【0097】
その後、ユーザーによって操作ボタン12(図1参照)等が操作されるなどして、現在選択されている画像の記録が指示されると、記録制御部30は、記録ヘッド2に、その選択されている画像を印刷用紙Pに記録させる。
【0098】
このような一覧表示画像数の変更といった処理以外にも、現在表示されている画像の回転や、画像の濃淡、色合い、あるいは、コントラスト等の変更といった、様々な処理を、基材20の屈曲変形に対して割り付けることも可能である。
【0099】
3]基材に、画像を表示するディスプレイが一体的に設けられている必要は必ずしもない。例えば、ディスプレイが、プリンタ本体6の傾斜面6a(図1参照)に操作ボタン12と並べて配置され、ユーザーが、このプリンタ本体6に設けられたディスプレイを見ながら入力装置の基材を屈曲操作するように構成されてもよい。また、基材と複数の屈曲検出部を備えた入力装置が、ディスプレイの画像を変更するためのものではなく、プリンタの動作時の音量や効果音、メロディに関する設定等、プリンタに関する種々の項目を設定入力するための使用されるものであってもよい。
【0100】
以上、本発明の実施形態として、プリンタに接続されてユーザーにより屈曲操作される入力装置に適用した例を挙げて説明したが、本発明の屈曲検出装置を適用可能な対象は、これに限られるものではない。即ち、外力等が作用することによって生じる、シート状の基材の屈曲変形を検出することが必要なものであれば、屈曲検出の目的に関係なく、本発明の屈曲検出装置を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略斜視図である。
【図2】本実施形態のプリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】入力装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図4】基材が軸C1周りに紙面向こう側へ凸となるように屈曲したときの入力装置の状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図5】基材が軸C1周りに紙面手前側へ凸となるように屈曲したときの入力装置の状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図6】基材が軸C2周りに紙面向こう側へ凸となるように屈曲したときの入力装置の状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図7】基材が軸C2周りに紙面手前側へ凸となるように屈曲したときの入力装置の状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図8】基材の屈曲変形の態様に対して割り付けられた画像変更処理の内容を示す図である。
【図9】変更形態1の入力装置の平面図である。
【図10】変更形態2の入力装置の平面図である。
【図11】変更形態2の、基材の屈曲変形の態様に対して割り付けられた、画像変更処理の内容を示す図である。
【図12】変更形態3の入力装置の平面図である。
【図13】変更形態3の、基材の屈曲変形の態様に対して割り付けられた処理内容を示す図である。
【図14】変更形態4の入力装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図15】変更形態5の入力装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図16】ディスプレイの画像表示枚数変更に関する説明図である。
【図17】変更形態6の、基材の屈曲変形の態様に対して割り付けられた、画像変更処理の内容を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
1 プリンタ
2 記録ヘッド
13 ディスプレイ
14 入力装置
20 基材
21,22 屈曲検出部
23 圧電層
24 第1電極
25 第2電極
32 表示制御部
41,42,43,44,45 屈曲検出部
46 屈曲検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の基材が屈曲したときの、その屈曲変形を検出する屈曲検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、外力が作用したときに生じる基材の屈曲変形を、機械(歪み)−電気変換素子の1種である圧電振動子により検出する、屈曲検出装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された検出装置(外力検出センサ)は、圧電基板に片持ち状に設けられるとともに、その表面に互いに平行な複数本の溝が形成された圧電支持梁(基材)と、圧電支持梁の複数本の溝にそれぞれ形成された複数の電極とを有する。複数の電極は、1つ置きに引き出し方向が逆方向となっており、引き出し方向が等しい電極同士は導通している。つまり、圧電支持梁の表面に、互いに導通した電極部分からなる櫛歯状の電極が2種類存在し、これら2種類の櫛歯状電極が互い違いに配置された構造を有する。
【0003】
この特許文献1の検出装置において、外力によって圧電支持梁に屈曲変形が生じたときに、圧電支持梁の表面部の、2種類の電極の間に挟まれた部分に、電極の延在方向と直交する方向に伸張又は圧縮が生じたとする。ここで、電極の延在方向と直交する方向に圧電支持梁が分極されているとすると、圧電支持梁の変形の方向(伸縮方向)と分極方向とが平行になることによって、2種類の電極間にそれら電極の延在方向と直交する方向の電界が生じ、電極間に電圧(電位差)が発生する。これにより、圧電支持梁に発生した屈曲変形を検出することが可能になる。
【0004】
【特許文献1】特開平10−54842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、互い違いに配置された2種類の櫛歯状電極だけでは、それら2種類の電極の延在方向と直交する方向に伸張又は圧縮する場合の、圧電支持梁の屈曲変形しか検出できない。即ち、電極の延在方向と平行な方向に圧電支持梁が伸張又は圧縮する場合には、2種類の電極間に電界が生じず、そのために両電極間に電圧が発生しないことから、このような圧電支持梁の変形を検出することはできない。
【0006】
本発明の目的は、屈曲方向が互いに異なる、複数種類の基材の屈曲変形をそれぞれ検出することが可能な、屈曲検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の屈曲検出装置は、可撓性を有するシート状の基材と、前記基材表面の複数の領域にそれぞれ配置され、前記基材の屈曲変形を検出する複数の検出手段とを備え、
前記複数の検出手段の各々は、前記基材表面に設けられた圧電層と、前記圧電層の一方の面においてそれぞれ一方向に沿って延在するとともに、互いに導通した複数の第1電極と、同じく前記圧電層の一方の面において、それぞれ前記複数の第1電極と平行に延在するとともに互いに導通し、さらに、前記複数の第1電極と互い違いに配置された複数の第2電極とを有し、
複数の前記検出手段の間で、電極の延在方向が互いに異なっていることを特徴とするものである。
【0008】
検出手段は、圧電層の一方の面において互い違いに配置された複数の第1電極と複数の第2電極を有する。そのため、外力によって基材が曲げられて、圧電層の一方の面に、電極の延在方向と直交する方向に関する圧縮又は伸張の歪みが生じると、その歪みに応じて、第1電極と第2電極との間に電位差が発生する。これにより、基材の屈曲変形が検出される。さらに、基材には複数の検出手段が設けられており、これら複数の検出手段の間で電極(第1電極及び第2電極)の延在方向が異なる。そのため、基材に生じる、屈曲方向の互いに異なる複数種類の屈曲変形を、複数の検出手段によりそれぞれ検出することができる。
【0009】
第2の発明の屈曲検出装置は、前記第1の発明において、前記検出手段が配置されている領域において、前記基材の厚みが局所的に薄くなっていることを特徴とするものである。
【0010】
このように、検出手段が配置されている領域において基材が局所的に薄くなっていると、基材が変形しやすくなり、基材が変形したときの第1電極と第2電極との間に生じる電位差が大きくなるため、検出手段により基材の屈曲変形を検出しやすくなる。
【0011】
第3の発明の屈曲検出装置は、前記第1又は第2の発明において、前記第1電極及び前記第2電極は、前記圧電層の前記基材と反対側の面に配置され、さらに、この前記圧電層の前記基材と反対側の面には、前記第1電極及び前記第2電極を覆う絶縁層が設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、電極が圧電層の基材と反対側の面に配置されている場合に、圧電層に、電極を覆うように絶縁層が設けられることにより、電極が圧電層の表面に露出することによって生じる短絡や電極の破損等が防止される。
【0013】
第4の発明の屈曲検出装置は、前記第1〜第3の何れかの発明において、前記基材と同じく可撓性を有するとともに前記基材と一体的に設けられた、画像を表示する表示部と、前記検出手段により検出された前記基材の屈曲変形に基づいて、前記表示部に表示させる画像を変更する表示制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0014】
紙を曲げるようにして、可撓性を有するシート状の基材に屈曲変形を生じさせると、この基材の屈曲変形は屈曲検出手段により検出され、さらに、検出された屈曲変形に基づいて、表示制御手段により、表示部に表示される画像が変更される。従って、表示部に表示されている画像を見ながら、基材を屈曲させることにより、表示部に表示される画像を簡単に変更することができる。
【0015】
第5の発明の屈曲検出装置は、前記第4の発明において、前記圧電層は、前記基材の前記表示部と反対側の面に配置されていることを特徴とするものである。
【0016】
このように、基材を挟んで、圧電層と表示部とが反対側に配置されている場合には、基材、圧電層、表示部の順に3つの層が積層される場合(即ち、基材と表示部との間に圧電層が存在する場合)と比べると、3層構造の積層体の曲げの中立線から、圧電層までの距離が大きくなる。そのため、基材が屈曲したときに圧電層に生じる歪みが大きくなるため、検出手段により基材の屈曲変形を検出しやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基材には複数の検出手段が設けられており、これら複数の検出手段の間で電極(互い違いに配置された第1電極及び第2電極)の延在方向が異なる。そのため、基材に生じる、屈曲方向の互いに異なる複数種類の屈曲変形を、複数の検出手段によりそれぞれ検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態のプリンタの斜視図、図2は、プリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【0019】
図1、図2に示すように、本実施形態のプリンタ1は、印刷用紙Pに画像を記録する記録ヘッド2と、印刷用紙Pを所定方向(図1の前方)へ搬送する搬送機構3と、記録ヘッド2及び搬送機構3を含む、プリンタ1の各種機構をそれぞれ制御する制御装置4を備えている。
【0020】
図1に示すように、プリンタ1は、略直方体状のプリンタ本体6を有し、このプリンタ本体6内に、記録ヘッド2、搬送機構3、及び、制御装置4等が収容されている。記録ヘッド2としては、インクジェット方式や、レーザー方式、あるいは、熱転写方式等、公知の方式で印刷用紙Pに印刷を行うものが用いられる。この記録ヘッド2は、画像データが記録されたデータ記録媒体7(図2参照)がプリンタ1に接続された状態で、制御装置4からの指令に基づいて、データ記録媒体7から入力された、画像データ(画像ファイル)の画像を印刷用紙Pに記録する。尚、以下の説明において、1つの画像データ(画像ファイル)とは、1枚の画像を構成するひとまとまりのデータの集合体を意味するものとする。
【0021】
プリンタ本体6の下半部はその一部が前方に開放されており、この開放部分には、印刷用紙Pが収容される給紙トレイ9と、画像が記録された印刷用紙Pが排出される排紙トレイ8が設けられている。そして、搬送機構3は、モータで回転駆動される搬送ローラによって、給紙トレイ9内の印刷用紙Pを、プリンタ本体6内の記録ヘッド2へ搬送するとともに、記録ヘッド2により画像が記録された印刷用紙Pを前方の排紙トレイ8へ排出する。
【0022】
プリンタ本体6の下半部前面の、給紙トレイ9及び排紙トレイ8の側方位置には、カートリッジ装着部10が設けられており、このカートリッジ装着部10には、4色のインク(イエロー、マゼンタ、シアン、及び、ブラック)をそれぞれ収容した4つのインクカートリッジ11が着脱自在に装着される。
【0023】
プリンタ本体6の上部は、図1の紙面手前側に位置するユーザーに向けて、前方に傾斜しており、この傾斜面6aには、ユーザーにより操作される複数の操作ボタン12が設けられている。
【0024】
さらに、プリンタ1は、可撓性を有するシート状の基材20、及び、この基材20の表面に配置されて基材20の屈曲変形を検出する2つの屈曲検出部21,22(検出手段)とを有する入力装置14(屈曲検出装置)を備えている。図3(a)は、入力装置14の平面図、図3(b)は図3(a)のB−B線断面図である。図3(a),(b)に示すように、この入力装置14の基材20の表面には、それ全体として可撓性を有するディスプレイ13(表示部)が設けられており、このディスプレイ13は、基材20と一体的に屈曲変形可能となっている。このようなディスプレイ13としては、厚みが10分の数ミリ程度と、紙と同等の厚みであって、電圧印加等によってデータ表示及び消去が可能な、いわゆる、電子ペーパーを挙げることができる。尚、図1に示すように、入力装置14とディスプレイ13は、ケーブル15を介して、プリンタ本体6内に格納された制御装置4(図2参照)に接続されている。
【0025】
そして、ユーザーがディスプレイ13に表示させる画像を変更したい場合には、入力装置14の基材20は、ユーザーによって紙を曲げるように操作される。このとき、基材20に生じた屈曲変形は、基材20に設けられた2つの屈曲検出部21,22により検出される。そして、屈曲検出部21,22により検出された基材20の屈曲変形の態様に基づいて、制御装置4がディスプレイ13に表示させる画像を変更するように構成されている。
【0026】
以下、入力装置14について具体的に説明する。
図3(a)に示すように、基材20は、平面視で矩形状に形成されている。また、この可撓性の基材20としては、ポリイミドなどの合成樹脂材料からなる樹脂シート材、あるいは、アルミニウム合金やステンレスなどの金属材料からなる薄板等を用いることができる。
【0027】
この基材20の裏面(ディスプレイ13と反対側の面、図3の紙面向こう側の面)には、2つの屈曲検出部(第1屈曲検出部21、第2屈曲検出部22)が設けられている。2つの屈曲検出部21,22は、基材20の長手方向(図3(a)の左右方向)に関する中央部において、短手方向(図3(a)の上下方向)に並べて配置されている。また、屈曲検出部21,22として、本実施形態では、圧電素子の機械(歪み)−電気変換作用を利用したものが採用されている。即ち、各々の屈曲検出部21,22は、基材20の裏面に形成された圧電層23と、この圧電層23の基材20と反対側の面(裏面)に形成され、間隔を空けて互いに平行に延びる2種類の電極(第1電極24及び第2電極25)とを有する。
【0028】
圧電層23は、例えば、チタン酸鉛とジルコン酸鉛との固溶体であり強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とする圧電材料からなり、基材20の裏面全体を覆うように形成されている。即ち、2つの屈曲検出部21,22の間で、圧電層23は共通となっている。この圧電層23は、例えばエアロゾルデポジション法や、スパッタ法、ゾルゲル法等によって基材20に形成される。
【0029】
各々の屈曲検出部21,22において、圧電層23の裏面(ディスプレイ13と反対側の面)には、一方向に沿って平行に延在するとともに互いに導通した、櫛歯状の複数の第1電極24と、これら複数の第1電極24と平行に延在するとともに互いに導通した、同じく櫛歯状の複数の第2電極25とが設けられている。さらに、複数の第1電極24と複数の第2電極25は互い違いに配置されている。これら第1電極24及び第2電極25は、金、銅、銀、パラジウム、白金、あるいは、チタンなどの導電性材料により、スクリーン印刷法や蒸着法等を用いて形成される。
【0030】
図3(a)に示すように、2つの屈曲検出部21,22の間で、電極(第1電極24及び第2電極25)の延在方向は互いに異なっている。より具体的には、基材20の中央よりもやや上寄りの位置に配置された、第1屈曲検出部21の電極延在方向は、矩形状の基材20の長手方向と平行である。一方、基材20の中央よりもやや下寄りの位置に配置された、第2屈曲検出部22の電極延在方向は、基材20の短手方向と平行である。つまり、2つの屈曲検出部21,22の電極延在方向は互いに直交している。
【0031】
尚、製造段階において、各々の屈曲検出部21,22において、第1電極24に低電位(例えば、0V(グランド電位))、第2電極25に低電位(例えば、50V)がそれぞれ印加されることにより、圧電層23の第1電極24と第2電極25との間に挟まれた部分は、第2電極25から第1電極24に向かう方向に分極されている。
【0032】
図3(a)に示すように、2つの屈曲検出部21,22の、互いに導通した複数の第1電極24からは、それぞれ1本ずつ配線27,28が引き出されており、これら2本の第1電極24用の配線27,28は、制御装置4(図2参照)と接続されている。また、第1屈曲検出部21の複数の第2電極25と、第2屈曲検出部22の複数の第2電極25は、共通の配線29に接続されている。この共通配線29は、制御装置4側に設けられたグランド配線に接続されており、共通配線29を介して、すべての第2電極25が常にグランド電位に保持されている。
【0033】
図3(b)に示すように、圧電層23の裏面には、2つの屈曲検出部21,22の第1電極24と第2電極25を全て覆うように、絶縁層26が形成されている。この絶縁層26は、ポリイミド等の絶縁性を有する合成樹脂材料で形成することができる。このように、第1電極24と第2電極25とが絶縁層26で覆われることにより、電極の剥離や破損、あるいは、第1電極24と第2電極25の間の短絡といった問題が生じるのを防止できる。
【0034】
次に、2つの屈曲検出部21,22が基材20の屈曲変形を検出する際の作用について、図4〜図7を参照して説明する。尚、図4〜図7中の“+”は第1電極24の電位が正の電位である状態、“−”は第1電極24の電位が負の電位である状態、“GND”は電極(第1電極24又は第2電極25)の電位がグランド電位である状態をそれぞれ示している。また、図4〜図7のそれぞれにおいて、(a)は入力装置14の平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【0035】
基材20の屈曲検出部21,22が設けられている領域において屈曲変形が生じて、圧電層23の、第1電極24及び第2電極25の間の部分に歪み(変形)が生じると、この歪みに応じて第1電極24と第2電極25との間に電界(即ち、電位差)が発生する。この作用について、基材20の屈曲変形の態様毎に分けて、さらに具体的に説明する。
【0036】
(1)図4、図5に示すように、基材20にその短手方向に平行な軸C1周りの屈曲変形が生じた場合には、基材20とともに、圧電層23が手前側(上方)又は向こう側(下方)に凸となるように変形する。このとき、第2屈曲検出部22において、圧電層23の下面の、第1電極24と第2電極25との間の部分が、電極延在方向と直交する方向(基材20の長手方向)に沿って伸張又は圧縮される。
【0037】
即ち、図4(b)に二点鎖線で示すように、基材20及び圧電層23が軸C1周りに下方に凸となるように曲げられたときには、基材20の裏面に設けられた第2屈曲検出部22において、圧電層23の下面部分が、その分極方向と平行な方向に伸張される。このとき、圧電層23の内部に、分極方向と逆方向の電界(即ち、第1電極24から第2電極25に向かう方向の電界)が生じ、その結果、第1電極24に第2電極25の電位(グランド電位)よりも高い、正の電位(+)が発生する。
【0038】
また、図5(b)に二点鎖線で示すように、基材20及び圧電層23が軸C1周りに上方に凸となるように曲げられたときには、基材20の裏面に設けられた第2屈曲検出部22において、圧電層23の下面部分が、その分極方向と平行な方向に圧縮される。このとき、圧電層23の内部に分極方向と同方向の電界(即ち、第2電極25から第1電極24に向かう方向の電界)が生じ、その結果、第1電極24に第2電極25の電位(グランド電位)よりも低い、負の電位(−)が発生する。
【0039】
尚、このとき、もう一方の第1屈曲検出部21においても、第1電極24と第2電極25に挟まれた圧電層23の部分には変形(伸張又は圧縮)が生じるものの、その変形方向は電極延在方向(基材20の長手方向)と平行であり、第1屈曲検出部21における圧電層23の分極方向とは異なる(直交する)方向である。そのため、第1屈曲検出部21においては、第1電極24と第2電極25との間にはほとんど電位差が生じない。
【0040】
(2)図6、図7に示すように、基材20にその長手方向に平行な軸C2周りの屈曲変形が生じた場合には、先の(1)で説明した第2屈曲検出部22の作用が、今度は第1屈曲検出部21に生じる。即ち、第1屈曲検出部21において、圧電層23の下面の、第1電極24と第2電極25との間の部分が、電極延在方向と直交する方向(基材20の短手方向)に沿って伸張又は圧縮される。
【0041】
即ち、図6(c)に二点鎖線で示すように、基材20及び圧電層23が軸C2周りに下方に凸となるように曲げられたときには、基材20の裏面に設けられた第1屈曲検出部21において、圧電層23の下面部分が、その分極方向と平行な方向に伸張される。このとき、圧電層23の内部に、分極方向と逆方向の電界(即ち、第1電極24から第2電極25に向かう方向の電界)が生じ、その結果、第1電極24に第2電極25の電位(グランド電位)よりも高い、正の電位(+)が発生する。
【0042】
また、図7(c)に二点鎖線で示すように、基材20及び圧電層23が軸C2周りに上方に凸となるように曲げられたときには、基材20の裏面に設けられた第1屈曲検出部22において、圧電層23の下面部分が、その分極方向と平行な方向に圧縮される。このとき、圧電層23の内部に分極方向と同方向の電界(即ち、第2電極25から第1電極24に向かう方向の電界)が生じ、その結果、第1電極24に第2電極25の電位(グランド電位)よりも低い、負の電位(−)が発生する。
【0043】
このとき、第2屈曲検出部22においても、第1電極24と第2電極25の間の圧電層23には変形(伸張又は圧縮)が生じるものの、その変形方向は電極延在方向(基材20の短手方向)と平行であり、圧電層23の分極方向とは異なる(直交する)方向である。そのため、第2屈曲検出部22においては、第1電極24と第2電極25との間にはほとんど電位差が生じない。
【0044】
このように、基材20に設けられた2つの屈曲検出部21,22の間で、電極(第1電極24及び第2電極25)の延在方向が互いに異なっている(直交している)ため、2つの屈曲検出部21,22により、互いに直交する2つの軸C1,C2周りの基材20の屈曲変形を、それぞれ区別して検出することができる。
【0045】
尚、各々の屈曲検出部21,22が、互い違いに配置された複数の第1電極24と複数の第2電極25を有するものでなく、互いに平行な第1電極24と第2電極25を1本ずつ有するものであったとしても、この1組の第1電極24と第2電極25の間における圧電層23が変形したときの第1電極24の電位変化を、制御装置4側で正確に検知できれば、基材20の屈曲変形を検出することは可能である。しかし、第1電極24の電位変化が小さいと、その電位変化を正しく検知することは困難であり、誤検出が生じる虞がある。誤検出を防止するためには、第1電極24と第2電極25の間の間隔を小さくして、圧電層23に屈曲が生じたときの第1電極24の電位変化をできるだけ大きくして、検出感度を高めることが必要であるが、そうすると、1つの屈曲検出部で基材20の屈曲変形を検出できる範囲は非常に小さいものとなってしまう。
【0046】
しかし、本実施形態においては、各々の屈曲検出部21,22において、圧電層23の同じ面上に、同一方向に延在する複数の第1電極24と複数の第2電極25とが互い違いに配置されることによって、第1電極24と第2電極25とからなる電極の組が複数存在している。そのため、第1電極24と第2電極25間の距離を短くして検出感度を上げつつ、ある程度の広さを有する領域内に生じる基材20の屈曲変形を1つの屈曲検出部で検出することができる。
【0047】
また、本実施形態においては、図3(b)に示すように、圧電層23は、基材20のディスプレイ13と反対側の面に配置されている。つまり、基材20を挟んで、圧電層23とディスプレイ13とが反対側に配置されている。この場合には、基材20、圧電層23、ディスプレイ13の順に3つの層が積層される場合(基材20とディスプレイ13との間に圧電層23が存在する場合)と比べると、3層構造の曲げの中立線から、圧電層23の下面までの距離が大きくなる。そのため、基材20が屈曲したときに圧電層23の下面に生じる歪みが大きくなり、第1電極24に生じる電位も大きくなるため、基材20の屈曲変形を検出しやすくなる。
【0048】
(3)上述した(1),(2)の屈曲変形において、基材20の屈曲速度(曲げ速度)が大きいほど、圧電層23に生じる電界の大きさが大きくなる。即ち、第2電極25が常に一定電位(グランド電位)に保持されていれば、基材20の曲げ速度が大きいほど、第1電極24の電位(の絶対値)が大きくなる。従って、第1電極24の電位(の絶対値)の大きさから、基材20に生じた屈曲変形の曲げ速度の違いをも区別して検出することも可能である。
【0049】
以上から、第1屈曲検出部21と第2屈曲検出部22からそれぞれ出力された電圧信号(第1電極24の電位)に基づいて、制御装置4は、基材20に生じる複数の屈曲変形の態様を区別して認識することができるようになる。
【0050】
本実施形態のプリンタ1においては、ユーザーにより、入力装置14の基材20が、紙を折り曲げるように、予め定められた所定の態様で曲げられたときには、そのときに基材20に生じる屈曲変形が2つの屈曲検出部21,22により検出され、検出された屈曲変形に応じて、ディスプレイ13に表示される画像が変更される(画像変更処理)。この画像変更処理の具体的内容については、次の制御装置4の説明において詳細に述べることにする。
【0051】
次に、制御装置4を中心とするプリンタ1の電気的な構成について、図2のブロック図を参照して詳細に説明する。制御装置4は、中央演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)と、プリンタ1の各種機構を制御するためのプログラムやデータ等が格納されたROM(Read Only Memory)、CPUで処理されるデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、外部装置との間の信号の入出力を行う入出力インターフェース等で構成されている。
【0052】
図2に示すように、制御装置4は、記録制御部30と、データ記録媒体7から入力された画像データが記憶される画像データ記憶部31と、ディスプレイ13を制御する表示制御部32(表示制御手段)とを有する。データ記録媒体7には、データファイルの名前(例えば、アルファベット順)や画像データの作成日時といった、ある所定の条件に基づいて予め順序付けされた複数の画像データが、画像フォルダで区分けされて記録されている。そして、データ記録媒体7がプリンタ1に接続された状態で、データ記録媒体7から読み出された複数の画像データが画像データ記憶部31に記憶される。
【0053】
尚、画像データが記録されたデータ記録媒体7としては、USBメモリーやメモリカード等、プリンタのスロット等に差し込まれることにより接続されるストレージデバイス、あるいは、ケーブル等の有線、あるいは、無線で制御装置4と接続される外部記憶装置等が該当する。また、データ記録媒体7に記録されているデータは、デジタルカメラで撮影された静止画像データだけでなく、デジタルビデオカメラで撮影された動画データであってもよい。ここで、動画データとは、時間的に連なった複数の静止画像データの集合体である。この動画データがデータ記録媒体7から入力された場合には、制御装置4において、入力された動画データから複数の静止画像データが抽出され、これらの複数の静止画像データの一部がディスプレイ13に表示されたり、あるいは、印刷用紙Pにその静止画像が記録されたりすることになる。
【0054】
記録制御部30は、画像データ記憶部31に記憶されたデータを参照して、記録ヘッド2と搬送機構3をそれぞれ制御することにより、ユーザーによって選択された画像データの画像を、印刷用紙Pに印刷するように構成されている。また、表示制御部32は、プリンタ1の状態(画像記録中の状態、あるいは、待機状態など)やエラーメッセージ等をディスプレイ13に表示させて、これらの情報をユーザーに通知する。
【0055】
さらに、表示制御部32は、ユーザーによって入力装置14の基材20が曲げられたときに、2つの屈曲検出部21,22により検出された基材20の屈曲変形の態様に応じて、ディスプレイ13に表示させる画像を変更する機能を備えている。尚、「ディスプレイ13に表示させる画像を変更」とは、ディスプレイ13の画面全体に表示される画像の一部又は全体を変更することを指す。従って、現在表示されている、ある画像データの画像を別の画像データの画像に切り替えることはもちろんのこと、現在表示されている画像に対して拡大又は縮小といった画像処理を施すことも含まれる。
【0056】
尚、記録制御部30、画像データ記憶部31、及び、表示制御部32は、制御装置4を構成しているCPU,ROM,RAM等により実現されている。言い換えれば、制御装置4のROMに、記録ヘッド2や搬送機構3の制御プログラムや、ディスプレイ13に表示させる画像を変更するプログラムなどの、各種プログラムが格納されており、このROMに格納されたプログラムが、制御装置4のCPUで実行されることで、記録制御部30、画像データ記憶部31、及び、表示制御部32の、それぞれの機能が実現される。
【0057】
(画像変更処理)
ユーザーによって入力装置14の基材20が曲げられたときに、表示制御部32により実行される画像変更処理について説明する。
【0058】
前述したように、本実施形態のプリンタ1は、基材20に設けられた2つの屈曲検出部21,22により、ユーザーにより基材20が屈曲操作されたときに基材20に生じる複数の屈曲変形の態様を、区別して検出可能である。そこで、図8に示すように、2つの屈曲検出部21,22により区別して検出される6種類の屈曲変形(項目A〜F)に対して、画像の拡大縮小や画像の切り替えに関する6種類の画像変更処理の内容が予め割り付けられている。
【0059】
1)画像の拡大縮小
図4に示すように、ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その短手方向に平行な軸C1周りに、下方(ユーザーから見て向こう側)に凸となるように曲げられた場合(図8の項目A)には、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に伸びる。すると、第2屈曲検出部22の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と逆方向(第1電極24から第2電極25に向かう方向)の電界が生じ、第2屈曲検出部22の第1電極24に正の電位が発生する。この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20が下方へ凸となるように曲げられたと判断し、表示制御部32は、現在表示されている画像をさらに小さく縮小した縮小画像を、ディスプレイ13に表示させる。
【0060】
また、図5に示すように、基材20が、その短手方向に平行な軸C1周りに、上方(ユーザーから見て手前側)に凸となるように曲げられた場合(図8の項目B)には、圧電層23の下面部分が基材20の長手方向に縮む。すると、第2屈曲検出部22の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と同方向(第2電極25から第1電極24に向かう方向)の電界が生じ、第1電極24に負の電位が発生する。この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20が上方へ凸となるように曲げられたと判断し、表示制御部32は、現在表示されている画像の中央部を拡大した拡大画像を、ディスプレイ13に表示させる。
【0061】
つまり、ユーザーによって、基材20がユーザーから遠ざかるように、ユーザーから見て向こう側(下方)に凸となるように基材20が曲げられたときには、表示制御部32はディスプレイ13に表示されている画像を縮小させる。一方、基材20がユーザーに近づくように、ユーザーから見て手前側(上方)に凸となるように基材20が曲げられたときには、表示制御部32はディスプレイ13に表示されている画像を拡大させる。このように、基材20を近づける操作と画像の拡大が対応し、また、基材20を遠ざける動作と画像の縮小とが対応しているため、画像を拡大縮小させる際の基材20の屈曲操作をユーザーが感覚的に覚えやすいという利点がある。
【0062】
2)画像切り替え(画像の送り/戻し)
図6に示すように、ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その長手方向に平行な軸C2周りに、下方(ユーザーから見て向こう側)に凸となるように曲げられた場合には、圧電層23の下面部分が基材20の短手方向に伸びる。ここで、比較的ゆっくりした速度で基材20が下方に凸となるように曲げられた場合(図8の項目C)には、第1屈曲検出部21の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と逆方向(第1電極24から第2電極25に向かう方向)の弱めの電界が生じ、第1屈曲検出部21の第1電極24に、電位の絶対値が所定値以下となる、比較的小さな正の電位が発生する。
【0063】
この信号を受けて、表示制御部32は、軸C1周りに、基材20がゆっくりした速度で下方へ凸となるように曲げられたと判断する。そして、画像データ記憶部31に順序づけされた状態で記憶されている複数の画像データの中から、現在ディスプレイ13に表示されている画像データよりも1つ後の画像データを選択し、ディスプレイ13に表示させる画像を、この選択した画像データの画像に切り替える。
【0064】
また、図7に示すように、ユーザーによって、矩形シート状の基材20が、その長手方向に平行な軸C2周りに、上方(ユーザーから見て手前側)に凸となるように曲げられた場合には、圧電層23の下面部分が基材20の短手方向に縮む。ここで、比較的ゆっくりした速度で基材20が上方に凸となるように曲げられた場合(図8の項目D)には、第1屈曲検出部21の第1電極24と第2電極25の間の領域において、圧電層23に分極方向と同方向(第2電極25から第1電極24に向かう方向)の弱めの電界が生じ、第1屈曲検出部21の第1電極24に、電位の絶対値が所定値以下となる、比較的小さな負の電位が発生する。
【0065】
この信号を受けて、表示制御部32は、軸C2周りに、基材20がゆっくりした速度で上方へ凸となるように曲げられたと判断する。このとき、表示制御部32は、画像データ記憶部31に順序づけされた状態で記憶されている複数の画像データの中から、現在ディスプレイ13に表示されている画像データよりも1つ前の画像データを選択し、ディスプレイ13に表示させる画像を、この選択した画像データの画像に切り替える。
【0066】
さらに、図6、図7において、基材20が下方又は上方へ凸となるように曲げられるときの屈曲速度が大きいほど、第1屈曲検出部21の第1電極24と第2電極25との間の圧電層23に生じる電界は大きくなり、第1電極24の電位の絶対値は大きくなる。そこで、第1電極24の電位の絶対値が所定値よりも大きいときには、表示制御部32は、基材20がかなり速い速度で曲げられたと判断する(図8の項目E,F)。このとき、表示制御部32は、ディスプレイ13に、先ほどの処理(図8の項目C,D)よりもさらに粗い間隔(大きな間隔)で表示画像の送り/戻しを行わせる。
【0067】
即ち、表示制御部32は、基材20がかなり速い速度で下方へ凸となるように曲げられたと判断したときには、ディスプレイ13に表示させる画像を、現在表示されている画像よりも5つ後の画像に切り替える。逆に、基材20がかなり速い速度で上方へ凸となるように曲げられたと判断したときには、表示制御部32は、ディスプレイ13に表示させる画像を、現在表示されている画像よりも5つ前の画像に切り替える。
【0068】
つまり、ユーザーは、現在表示されている画像が、表示させたい所望の画像から、順序的にかなりかけ離れた画像であることが分かっている場合には、基材20を速い速度で屈曲させて、ディスプレイ13に表示される画像が短い時間で所望の画像に近づくように、5つずつ画像を送り/戻しさせることができる。その後、表示画像が所望の画像に近づいていくと、今度は、基材20をゆっくりした速度で屈曲させて、表示された画像が所望の画像かどうかを確認しながら、1つずつ画像を送り/戻しさせるということが可能になる。
【0069】
以上のようにして、ディスプレイ13に所望の画像が表示された後に、ユーザーにより操作ボタン12(図1参照)等が操作されることによって、画像を記録する指令が入力されると、記録制御部30は、記録ヘッド2及び搬送機構3を制御して、現在ディスプレイ13に表示されている画像を印刷用紙Pに記録する。
【0070】
以上説明した本実施形態のプリンタ1によれば、次のような効果が得られる。
ユーザーが、紙を曲げるようにして、可撓性を有するシート状の基材20に屈曲変形を生じさせると、この基材20の屈曲変形は2つの屈曲検出部21,22により検出され、さらに、検出された屈曲変形に基づいて、表示制御部32により、ディスプレイ13に表示される画像が変更される。この構成によれば、基材20を屈曲させるという簡単な操作だけで、画像の拡大縮小や画像の切り替え(送り/戻し)を行うことができる。従って、ディスプレイ13に表示される画像を変更するために、複数の操作ボタン12等を複雑に操作する必要がなく、機器の操作が苦手なユーザーであっても、ディスプレイ13に表示される画像を簡単に変更することができる。
【0071】
また、屈曲検出部21,22は、圧電層23の一方の面(下面)において互い違いに配置された複数の第1電極24と複数の第2電極25を有する。そのため、ユーザーによって基材20が曲げられて、圧電層23の一方の面に、電極の延在方向と直交する方向に関する圧縮又は伸張の歪みが生じると、その歪みに応じて、第1電極24と第2電極25との間に電位差が発生する。これにより、基材20の屈曲変形が検出される。さらに、基材20には2つの屈曲検出部21,22が設けられており、これら2つの屈曲検出部21,22の間で電極(第1電極24及び第2電極25)の延在方向が異なる。そのため、基材20に生じる、屈曲方向の互いに異なる2種類の屈曲変形を、2つの屈曲検出部21,22によりそれぞれ検出することができる。
【0072】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0073】
1]基材の屈曲変形を検出する屈曲検出部の構成、数、及び、基材表面における位置等は、前記実施形態のものに限られず、以下のような変更が可能である。
【0074】
(1)基材20の全体的な屈曲変形を確実に検出するためには、電極延在方向が互いに異なる第1屈曲検出部21と第2屈曲検出部22がそれぞれ基材20に複数設けられ、さらに、図9に示すように、複数(図9では2つ)の第1屈曲検出部21(電極延在方向:基材20の長手方向)と、複数(図9では2つ)の第2屈曲検出部22(電極延在方向:基材20の短手方向)が、基材20の中央部側に配置されていることが好ましい(変更形態1)。
【0075】
尚、この変更形態1において、2つの第1屈曲検出部21a,21bは、共に、基材20の長手方向に平行な軸C2周りに関する基材20の全体的な屈曲変形を検出するために設けられ、2つの第2屈曲検出部22a,22bは、共に、基材20の短手方向に平行な軸C1周りに関する基材20の全体的な屈曲変形を検出するために設けられている。そのため、2つの第1屈曲検出部21a,21bの間、あるいは、2つの第2屈曲検出部22a,22aの間で、第1電極24の電位を検出するための配線を独立させる必要は特にない。従って、図9に示すように、2つの第1屈曲検出部21a,21bの第1電極24同士が互いに導通して共通の配線27に接続されるとともに、2つの第2屈曲検出部22a,22bの第1電極24同士も互いに導通して共通の配線28に接続されてもよい。
【0076】
(2)図10に示すように、基材20の中央部、及び、その周囲四方の、計5カ所に、5つの屈曲検出部41,42,43,44,45がそれぞれ設けられていてもよい(変更形態2)。尚、この変更形態2においては、基材に設けられた5つの屈曲検出部41〜45のうち、図中上下方向中央部において左右に並ぶ3つの屈曲検出部41,42,43においては、第1電極24及び第2電極25の延在方向は、基材20の短手方向に平行である。一方、図中、上下両側にそれぞれ設けられた2つの屈曲検出部44,45においては、第1電極24及び第2電極25の延在方向は、基材20の長手方向に平行である。また、5つの屈曲検出部41〜45の第1電極24からは独立した配線が引き出される一方で、5つの屈曲検出部41〜45の第2電極25は、共通の配線29に接続されている。
【0077】
従って、基材20の上下方向中央部に配置された3つの屈曲検出部41,42,43により、基材20の、その短手方向に平行な軸周りの屈曲変形が検出され、上下2つの屈曲検出部44,45により、基材20の、その長手方向に平行な軸回りの屈曲変形が検出される。
【0078】
さらに、5つの屈曲検出部41〜45は、基材20の表面の異なる領域にそれぞれ配置されていることから、ユーザーによって基材20の一部のみが曲げられたときに、その一部において局所的に生じる屈曲変形を検出することが可能である。例えば、基材20の右端部分が、基材20の短手方向に平行な軸周りに折り曲げられたときに、この右端部分に局所的に生じる屈曲変形は、右側の屈曲検出部42によって検出される。このように、屈曲方向だけでなく、局所的に屈曲したときのその屈曲位置も検出することが可能である。つまり、前述した実施形態と比べて、基材20の屈曲変形の態様をさらに細かく区別して検出することができることから、区別して検出された屈曲変形の態様に対して、多くの処理を割り付けることも可能となる。
【0079】
その処理の割り付けの一例について、図11を参照して説明する。尚、図11において、「屈曲位置」とは、ユーザーによって基材20が曲げられた位置を示している。この図11においては、基材20の一部が局所的に曲げられたときに、表示制御部32は、ディスプレイ13に表示されている画像を、基材20の屈曲変形を検出した屈曲検出部41〜45の配置領域に対応する部分を中心に、拡大又は縮小させる。
【0080】
例えば、図11の項目Cに表されているように、ディスプレイ13にある画像が表示されている状態で、ユーザーによって基材20の右端部が下方(向こう側)へ凸となるように曲げられると、基材20の右端部に設けられた屈曲検出部42の第1電極24のみが正の電位となり、他の屈曲検出部41,43,44,45の第1電極24の電位はグランド電位のままとなる。従って、これら屈曲検出部41〜45から出力された信号を受けて、表示制御部32は、基材20の右端部が局所的に下方に凸となるように曲げられたと判断する。このとき、ディスプレイ13に表示されている画像が標準状態の画像(拡大されていない状態の画像)である場合には、表示制御部32は、屈曲検出部42の配置領域に対応した、画像の右端部を中心に拡大した画像をディスプレイ13に表示させる。また、現在ディスプレイ13に表示されている画像が、既にその一部が拡大されている画像である場合には、表示制御部32は、拡大位置を右端部に変更する(即ち、ディスプレイ13の表示画像を、その右端部が拡大された画像に切り替える)。
【0081】
逆に、図11の項目Dに示されているように、ユーザーによって基材20の右端部が上方(手前側)へ凸となるように曲げられると、基材20の右端部に設けられた屈曲検出部42の第1電極24のみが負の電位となり、他の屈曲検出部41,43,44,45の第1電極24の電位はグランド電位のままとなる。従って、これら屈曲検出部41〜45から出力された信号を受けて、表示制御部32は、基材20の右端部が局所的に上方に凸となるように曲げられたと判断する。このとき、表示制御部32は、屈曲検出部42の配置領域に対応した、画像の右端部を中心に縮小した画像をディスプレイ13に表示させる。
【0082】
基材20の中央部、左端部、上端部、及び、下端部がそれぞれ下方又は上方に凸となるように折り曲げられた場合も、上述した、基材20の右端部が曲げられた場合と同様に、基材20の屈曲位置に対応した部分を中心に、画像の拡大又は縮小が行われる。
【0083】
このように、図11に示す割り付けにおいては、5つの屈曲検出部41〜45のうちの1つが設けられている領域において基材20を局所的に屈曲させることにより、ディスプレイ13に表示されている画像のどの部分を中心に、画像を拡大又は縮小させるのかをユーザーが指定することができる。
【0084】
(3)図12に示すように、矩形状の基材20の右上角部の領域にも屈曲検出部(第3屈曲検出部46)が設けられ、この第3屈曲検出部46により、基材20の右上角部の屈曲変形が検出されるようになっていてもよい(変更形態3)。第3屈曲検出部46の第1電極24及び第2電極25の延在方向は、基材20の長手方向(第1屈曲検出部21の電極延在方向)に対して右回り方向(時計回り方向)に45°、基材20の短手方向(第2屈曲検出部22の電極延在方向)に対して左回り方向(反時計回り方向)に45°傾いた方向となっている。また、第3屈曲検出部46の第1電極24からは、第1屈曲検出部21及び第2屈曲検出部22とは独立した配線が引き出される一方で、第3屈曲検出部46の第2電極25は、第1屈曲検出部21及び第2屈曲検出部22の第2電極25と共通の配線29に接続されている。
【0085】
この第3屈曲検出部46が基材20の右上角部に設けられていると、紙の端を折るように、電極延在方向に平行な軸C3を中心に、基材20の右上角部が下方(向こう側)又は上方(手前側)に折り曲げられたときに、第3屈曲検出部46の第1電極24の電位が正の電位又は負の電位になることから、表示制御部32は、基材20の右上角部が曲げられたことを認識することができる。
【0086】
さらに、この変更形態3においては、図13に示すように、第3屈曲検出部46により検出される、基材20の右上角部の屈曲変形を、ディスプレイ13に表示させる画像を変更するための屈曲変形とは異なる態様の変形であるとし、この右上角部の屈曲変形に対して、前述したような画像変更処理とは別の処理が割り付けられている。
【0087】
図13において、項目A〜Fの画像変更処理は前述した実施形態の図8と同様であるので、その説明は省略する。一方、図13の項目Gに示すように、ユーザーによって、基材20の右上角部が、軸C3周りに下方(向こう側)に凸となるように曲げられて、第3屈曲検出部46の第1電極24が正の電位となったときには、記録制御部30は、基材20に生じた屈曲変形が、ディスプレイ13に表示させる画像を変更するための屈曲変形ではなく、画像記録のための屈曲変形であると判断し、記録ヘッド2に、現在ディスプレイ13に表示されている画像を印刷用紙Pに記録させる。また、上述したようにして、一旦、画像の記録指示がなされた後で、図13の項目Hに示すように、基材20の右上角部が上方(手前側)に凸となるように曲げられて、第3屈曲検出部46の第1電極24が負の電位となったときには、記録制御部30は、記録ヘッド2に画像の記録を中止させる。
【0088】
この変更形態3においては、ディスプレイ13に表示させる画像を変更する場合とは異なる屈曲変形を基材20に生じさせることにより、記録ヘッド2により、ディスプレイ13に表示されている画像を印刷用紙Pに記録させることができる。従って、画像の記録を指示するために、ユーザーが、入力装置14とは別の操作部(図1に示す操作ボタン12等)を操作する必要がない。また、本や冊子の所定のページを選択するために紙の端を折り曲げるような感覚で、基材20の右上角部を折り曲げることにより、現在ディスプレイ13に表示されている画像を選択してその画像を記録し、あるいは、一旦行った記録指令をキャンセルすることができるため、画像を記録する際の基材20の屈曲操作を感覚的に覚えやすい。
【0089】
(4)屈曲検出部が配置されている領域において、基材の厚みが局所的に薄くなっていてもよい(変更形態4)。例えば、図14に示すように、前述した変更形態2における第3屈曲検出部46の第1電極24及び第2電極25が設けられている領域において、基材20の上面部に、第3屈曲検出部46の電極延在方向に平行な溝20aが形成されることにより、この領域における基材20の厚みが局所的に薄くなっていてもよい。この場合には、第3屈曲検出部46の配置領域(右上角部)において基材20が変形しやすくなり、この基材20が変形したときに生じる第1電極24の電位が大きくなるため、基材20の屈曲変形を検出しやすくなる。また、第1屈曲検出部21や第2屈曲検出部22の配置領域において、基材20の厚みが局所的に薄くなっていてもよい。
【0090】
(5)前記実施形態においては、屈曲検出部21,22の第1電極24及び第2電極25は、圧電層23の基材と反対側の面に配置されていたが、図15に示すように、屈曲検出部21,22の第1電極24及び第2電極25が、圧電層23の基材20側の面に形成されてもよい(変更形態5)。但し、この場合、第1電極24と第2電極25が互いに導通しないように、基材20が絶縁性材料で形成されるなど、少なくとも基材20の下面は絶縁性を有する必要がある。また、この形態では、先の形態においては第1電極24及び第2電極25を覆うために必要であった、圧電層23の裏面の絶縁層26(図3(b)参照)は不要である。
【0091】
2]前記実施形態及びその変更形態においては、屈曲検出部により検出された基材20の様々な屈曲変形の態様に対して、表示制御部32により実行される画像変更処理として、画像の拡大/縮小処理と、画像の切り替え処理とが割り付けられているが、これら以外の処理を、検出された基材20の屈曲変形に対して割り付けることも可能である。
【0092】
例えば、一般的に、ディスプレイ13を制御する表示制御部32は、図15(a)のように、ディスプレイ13に1枚の画像を表示させることが可能であるが、図15(b)のように、ディスプレイ13に複数枚(例えば、4枚)の縮小画像(サムネイル画像)を一覧表示(サムネイル表示)させることも可能である。そこで、屈曲検出部により基材20の屈曲変形が検出されたときに、表示制御部32が、ディスプレイ13に一覧表示させる画像の数を変更するようになっていてもよい(変更形態6)。
【0093】
この変更形態6における画像変更処理の割り付けについて、基材20に5つの屈曲検出部41〜45が設けられた、前述した変更形態2の入力装置(図10参照)を採用した場合を例に挙げて説明する。変更形態1の説明において述べたように、図10の入力装置においては、基材20の中央部、右端部、左端部、上端部、及び、下端部の計5カ所における屈曲変形が、5つの屈曲検出部41〜45により独立して検出可能となっている。そして、これら5つの屈曲検出部41〜45により検出された基材20の屈曲変形に対して割り付けられた、表示制御部32がディスプレイ13に実行させる画像変更処理の処理内容を、図17に示す。
【0094】
ユーザーによって、基材20の中央部が下方(向こう側)に凸となるように曲げられたときには(図17の項目A)、表示制御部32は、ディスプレイ13の一覧表示画像数を増加させる。また、ユーザーによって、基材20の中央部が上方(手前側)に凸となるように曲げられたときには(図17の項目B)、表示制御部32は、ディスプレイ13の一覧表示画像数を減少させる。例えば、基材20が下方に凸に曲げられたときには、図16(a)のように、1枚の画像が全体表示されている標準表示状態から、図16(b)のように、4枚の縮小画像(サムネイル画像)が表示された状態へ、ディスプレイ13の状態を切り替える。また、逆に、基材20が上方に凸に曲げられたときには、図16(b)のサムネイル画像表示状態から、図16(a)の標準表示状態に切り替える。また、4枚のサムネイル画像が表示されている状態で、さらに、画像数を増やすように基材20が下方へ凸に曲げられたときには、一覧表示するサムネイル画像数を4枚からさらに増やす(例えば、8枚)ようにしてもよい。
【0095】
また、ディスプレイ13に複数枚の画像(サムネイル画像)が一覧表示されている状態で、ユーザーによって、基材20の右端部が下方に凸となるように曲げられた場合には(図17の項目C)、表示制御部32は、ディスプレイ13に一覧表示されている複数の画像のうち、現在選択されている画像の右に位置する画像を新たに選択する。即ち、選択画像を右の画像に変更する。尚、「画像が選択されている」とは、画像を記録したり、画像処理を施したりする対象となる画像を決定するために、ディスプレイ13に一覧表示されている画像のうちの1つが、太枠で囲まれたり、明度が高められたり、あるいは、点滅するなどして、一覧表示されている他の画像から差別化されている状態を指す。
【0096】
また、基材20の左端部、上端部、及び、下端部がそれぞれ曲げられた場合には、ディスプレイ13に一覧表示されている複数の画像のうち、現在選択されている画像に対して、左、上、及び、下に位置する画像にそれぞれ選択する(図17の項目D,E,F)。
【0097】
その後、ユーザーによって操作ボタン12(図1参照)等が操作されるなどして、現在選択されている画像の記録が指示されると、記録制御部30は、記録ヘッド2に、その選択されている画像を印刷用紙Pに記録させる。
【0098】
このような一覧表示画像数の変更といった処理以外にも、現在表示されている画像の回転や、画像の濃淡、色合い、あるいは、コントラスト等の変更といった、様々な処理を、基材20の屈曲変形に対して割り付けることも可能である。
【0099】
3]基材に、画像を表示するディスプレイが一体的に設けられている必要は必ずしもない。例えば、ディスプレイが、プリンタ本体6の傾斜面6a(図1参照)に操作ボタン12と並べて配置され、ユーザーが、このプリンタ本体6に設けられたディスプレイを見ながら入力装置の基材を屈曲操作するように構成されてもよい。また、基材と複数の屈曲検出部を備えた入力装置が、ディスプレイの画像を変更するためのものではなく、プリンタの動作時の音量や効果音、メロディに関する設定等、プリンタに関する種々の項目を設定入力するための使用されるものであってもよい。
【0100】
以上、本発明の実施形態として、プリンタに接続されてユーザーにより屈曲操作される入力装置に適用した例を挙げて説明したが、本発明の屈曲検出装置を適用可能な対象は、これに限られるものではない。即ち、外力等が作用することによって生じる、シート状の基材の屈曲変形を検出することが必要なものであれば、屈曲検出の目的に関係なく、本発明の屈曲検出装置を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタの概略斜視図である。
【図2】本実施形態のプリンタの電気的構成を概略的に示すブロック図である。
【図3】入力装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図4】基材が軸C1周りに紙面向こう側へ凸となるように屈曲したときの入力装置の状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図5】基材が軸C1周りに紙面手前側へ凸となるように屈曲したときの入力装置の状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図6】基材が軸C2周りに紙面向こう側へ凸となるように屈曲したときの入力装置の状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図7】基材が軸C2周りに紙面手前側へ凸となるように屈曲したときの入力装置の状態を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図、(c)は(a)のC−C線断面図である。
【図8】基材の屈曲変形の態様に対して割り付けられた画像変更処理の内容を示す図である。
【図9】変更形態1の入力装置の平面図である。
【図10】変更形態2の入力装置の平面図である。
【図11】変更形態2の、基材の屈曲変形の態様に対して割り付けられた、画像変更処理の内容を示す図である。
【図12】変更形態3の入力装置の平面図である。
【図13】変更形態3の、基材の屈曲変形の態様に対して割り付けられた処理内容を示す図である。
【図14】変更形態4の入力装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図15】変更形態5の入力装置を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
【図16】ディスプレイの画像表示枚数変更に関する説明図である。
【図17】変更形態6の、基材の屈曲変形の態様に対して割り付けられた、画像変更処理の内容を示す図である。
【符号の説明】
【0102】
1 プリンタ
2 記録ヘッド
13 ディスプレイ
14 入力装置
20 基材
21,22 屈曲検出部
23 圧電層
24 第1電極
25 第2電極
32 表示制御部
41,42,43,44,45 屈曲検出部
46 屈曲検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシート状の基材と、
前記基材表面の複数の領域にそれぞれ配置され、前記基材の屈曲変形を検出する複数の検出手段とを備え、
前記複数の検出手段の各々は、
前記基材表面に設けられた圧電層と、
前記圧電層の一方の面においてそれぞれ一方向に沿って延在するとともに、互いに導通した複数の第1電極と、
同じく前記圧電層の一方の面において、それぞれ前記複数の第1電極と平行に延在するとともに互いに導通し、さらに、前記複数の第1電極と互い違いに配置された複数の第2電極と、を有し、
複数の前記検出手段の間で、電極の延在方向が互いに異なっていることを特徴とする屈曲検出装置。
【請求項2】
前記検出手段が配置されている領域において、前記基材の厚みが局所的に薄くなっていることを特徴とする請求項1に記載の屈曲検出装置。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極は、前記圧電層の前記基材と反対側の面に配置され、
さらに、この前記圧電層の前記基材と反対側の面には、前記第1電極及び前記第2電極を覆う絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の屈曲検出装置。
【請求項4】
前記基材と同じく可撓性を有するとともに前記基材と一体的に設けられた、画像を表示する表示部と、
前記検出手段により検出された前記基材の屈曲変形に基づいて、前記表示部に表示させる画像を変更する表示制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の屈曲検出装置。
【請求項5】
前記圧電層は、前記基材の前記表示部と反対側の面に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の屈曲検出装置。
【請求項1】
可撓性を有するシート状の基材と、
前記基材表面の複数の領域にそれぞれ配置され、前記基材の屈曲変形を検出する複数の検出手段とを備え、
前記複数の検出手段の各々は、
前記基材表面に設けられた圧電層と、
前記圧電層の一方の面においてそれぞれ一方向に沿って延在するとともに、互いに導通した複数の第1電極と、
同じく前記圧電層の一方の面において、それぞれ前記複数の第1電極と平行に延在するとともに互いに導通し、さらに、前記複数の第1電極と互い違いに配置された複数の第2電極と、を有し、
複数の前記検出手段の間で、電極の延在方向が互いに異なっていることを特徴とする屈曲検出装置。
【請求項2】
前記検出手段が配置されている領域において、前記基材の厚みが局所的に薄くなっていることを特徴とする請求項1に記載の屈曲検出装置。
【請求項3】
前記第1電極及び前記第2電極は、前記圧電層の前記基材と反対側の面に配置され、
さらに、この前記圧電層の前記基材と反対側の面には、前記第1電極及び前記第2電極を覆う絶縁層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の屈曲検出装置。
【請求項4】
前記基材と同じく可撓性を有するとともに前記基材と一体的に設けられた、画像を表示する表示部と、
前記検出手段により検出された前記基材の屈曲変形に基づいて、前記表示部に表示させる画像を変更する表示制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の屈曲検出装置。
【請求項5】
前記圧電層は、前記基材の前記表示部と反対側の面に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の屈曲検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−85812(P2009−85812A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257249(P2007−257249)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]