説明

屋内無線配信方式

【課題】家庭内無線LANを用いて、デジタルTV放送番組を家庭内で配信する場合に、親機側に必要だったハードディスクなどの録画メディアを不要とし、さらに、親機の部品点数を減らし、親機のコストを低減する。
【解決手段】デジタルTV放送波を受信する親機と、親機と無線LANで接続される子機と、前記子機からTV信号が供給されるTV受像器とを備える屋内配信システムであって、前記親機は、前記子機から指定されたチャンネルのTSデータを、スクランブルを解除しないままLANパケットに組み立て、無線LANで前記子機に送信し、前記子機は、前記受信したLANパケットを前記子機から指定されたチャンネルのTSデータに変換し、当該変換した前記子機から指定されたチャンネルのTSデータのスクランブルを解除し、デジタルTV信号、あるいは、アナログTV信号に変換し、前記TV受像器に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋内無線配信方式に係わり、特に、一般家庭のTV受像機向けデジタル情報の屋内無線配信方式に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ケーブルの敷設が不要であるというメリットを活かし、家庭内無線LANが多用されている。
しかし、デジタルTV放送番組を、家庭内無線LANを用いて家庭内で配信する場合、家庭内に設けた親機が、受信したデジタルTV放送波を復調し、スクランブルを解除した上で、当該スクランブルを解除したTSデータを録画メディアにコンテンツとして蓄積し、録画したメニューから子機が希望するコンテンツを選択し、そのコンテンツを、親機がDLNA(Digital Living Network Alliance)ガイドラインに従って再度暗号化して、子機に無線LANで送信し、子機でDLNAガイドラインに従って復号化して、接続されたTV受像機に送ることが想定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前述したように、家庭内無線LANを用いて、デジタルTV放送番組を家庭内で配信する場合、親機は受信したTS信号を、B−CASカードを基に暗号を復号し、スクランブルを解除した上で、当該スクランブルを解除したTSデータを録画メディアにコンテンツとして蓄積し、子機が選択したコンテンツを再度DLNAガイドラインに従って再暗号化して子機に送信することが想定される。
このため、親機には、ハードディスクなどの録画メディアが必要不可欠であり、さらに、スクランブルを解除したものをさらに再度暗号化して子機に送信する必要があるので、親機の部品点数が増え、親機のコストが高くなるという欠点がある。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、家庭内無線LANを用いて、デジタルTV放送番組を家庭内で配信する場合に、親機側に必要だったハードディスクなどの録画メディアを不要とし、さらに、親機の部品点数を減らし、親機のコストを低減することが可能となる技術を提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)デジタルTV放送波を受信する親機と、前記親機と無線LANで接続される子機と、前記子機からTV信号が供給されるTV受像器とを備える屋内配信システムであって、前記親機は、前記子機から指定されたチャンネルのTSデータを、スクランブルを解除しないままLANパケットに組み立て、無線LANで前記子機に送信し、前記子機は、前記受信したLANパケットを前記子機から指定されたチャンネルのTSデータに変換し、当該変換した前記子機から指定されたチャンネルのTSデータのスクランブルを解除し、デジタルTV信号、あるいは、アナログTV信号に変換し、前記TV受像器に供給する。
【0005】
(2)(1)において、前記親機は、チューナと、変換器と、無線機と、それらを制御する制御器とを有し、前記チューナは、前記デジタルTV放送波から、前記子機から指定されたチャンネルのデジタルTV放送波を復調してTSデータに変換し、当該子機から指定されたチャンネルのTSデータを前記親機の変換器に送り、前記変換器は、受け取ったTSデータを、無線LANパケットのパケット長の長さのデータに変換して前記親機の無線機に送り、前記無線機は、受け取ったデータを無線LANパケットに組み立て、当該無線LANパケットを変調し、前記子機に割り当てられている無線チャネルを使用して前記子機に送り、前記子機は、無線機と、変換器と、デコーダとを有し、前記子機の無線機は、前記親機から受信した変調信号を復調して無線LANパケットに変換して、前記子機の変換器に送り、前記変換器は、受け取った無線LANパケットを、前記子機から指定されたチャンネルのTSデータに変換して、前記子機のデコーダに送り、前記デコーダは、受け取ったTSデータのスクランブルを解除し、デジタルTV信号、あるいは、アナログTV信号に変換して、前記TV受像器に供給する。
【0006】
(3)(2)において、前記TV受像器には、チャンネルを指定するリモコンが付属しており、前記子機は、リモコン受信部を有し、前記子機のリモコン受信部は、前記リモコンから受信したチャンネル指定信号を前記子機のデコーダに送り、前記デコーダは、受け取ったチャンネル指定信号に基づき、チャンネル切替信号を生成して、前記子機の変換器に送り、前記変換器は、受け取ったチャンネル切替信号を無線LANパケットに変換して、前記子機の無線機に送り、前記無線機は、受け取った無線LANパケットを変調し、前記子機に割り当てられている無線チャネルを使用して前記親機に送り、前記親機の無線機は、前記子機から受信した変調信号を復調して無線LANパケットに変換して、前記親機の変換器に送り、前記変換器は、受け取った無線LANパケットを、前記チャンネル切替信号に変換して、前記親機の制御器に送り、前記制御器は、受け取った前記チャンネル切替信号に基づき、前記チューナを制御し、前記チューナで復調するチャンネルを変更する。
【発明の効果】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、家庭内無線LANを用いて、デジタルTV放送番組を家庭内で配信する場合に、親機側に必要だったハードディスクなどの録画メディアを不要とし、さらに、親機の部品点数を減らし、親機のコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例の屋内配信システムの概略全体構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す親機の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す子機の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施例は、本発明の特許請求の範囲の解釈を限定するためのものではない。
図1は、本発明の実施例の屋内配信システムの概略全体構成を示すブロック図である。
図2は、図1に示す親機の概略構成を示すブロック図である。
図3は、図1に示す子機の概略構成を示すブロック図である。
図1ないし図3において、100は親機、200−1〜200−3は子機、300−1〜300−3はTV受像機、310−1〜310−3はリモコンである。
本実施例は、3台までのTV受像機(300−1〜300−3)に、親機100と3台の子機(200−1〜200−3)で構成される無線LANを使用して、TV受像機向けデジタル情報を送信する場合の実施例である。
【0010】
以下、図2を用いて、図1に示す親機100の構成と機能を説明する。
図2に示すように、親機100は、分配器110と、チューナ部120と、変換器部130と、無線機部140と、制御器150と、アンテナ(160−1〜160−3)とで構成されている。
チューナ部120は、チューナ1(120−1)、チューナ2(120−2)、チューナ3(120−3)の3台のチューナを有する。
変換器部130は、変換器1(130−1)、変換器2(130−2)、変換器3(130−3)の3台の変換器を有する。
無線機部140は、無線器1(140−1)、無線器2(140−2)、無線機3(140−3)の3台の無線器を有する。
このように、本実施例では、子機の最大数3に合わせて、チューナ部120のチューナ、変換器部130の変換器、無線機部140の無線機およびアンテナがそれぞれ3台ずつ設けてある。
分配器110には、アンテナからのTV受像機向けデジタルTV放送波、あるいは、ケーブルTV等からのTV受像機向けデジタルTV放送波が入力され、分配器110は、入力されたデジタルTV放送波を3分配し、チューナ部120の3個のチューナ1(120−1)〜チューナ3(120−3)に別々に送られる。
【0011】
チューナ1(120−1)、チューナ2(120−2)、チューナ3(120−3)のそれぞれのチューナでは、制御器150から各チューナに送られたチャンネル指定信号によって指定されたチャンネルのデジタルTV放送波を復調してMPEG2−TS(Transport Stream)データを得て、変換器1(130−1)、変換器2(130−2)、変換器3(130−3)のそれぞれの変換器に送る。
チャンネル指定信号は、各TV受像機(300−1,300−2,300−3)に付属する各リモコン(310−1,310−2,310−3)から送信され、各子機(200−1,200−2,200−3)を介して送信された信号である。
すなわち、親機100のアンテナで受信されたチャンネル指定信号波は、無線機部140の各無線機(140−1,140−2,140−3)により復調されてベースバンドのMAC(Media Access Control Frame)フレームに戻され、変換器部130の各変換器(130−1,130−2,130−3)により、チャンネル指定信号に復調され、レジスタ情報として制御器150に送られる。
MPEG2−TSデータを受け取った各変換器(130−1,130−2,130−3)では、受け取ったTSデータをメモリに一時蓄積して、無線LANパケットのパケット長のデータに変換して各無線機(140−1,140−2,140−3)に送る。
各無線機(140−1,140−2,140−3)は、受け取ったデータに送信先の各子機(200−1,200−2,200−3)に割り当てられているMACアドレス等を付加してMACフレームに変換し、さらに、無線LANで規定されている変調方式の信号に変調し、アンテナ(160−1,160−2,160−3)へ送り、各子機(200−1,200−2,200−3)毎に割り当てた無線チャンネルを使用して、アンテナ(160−1,160−2,160−3)から各子機(200−1,200−2,200−3)に向けて送信する。
【0012】
図3を用いて、子機の構成と機能を説明する。
各子機(200−1,200−2,200−3)は、アンテナ240と、無線機210と、変換器220と、デコーダ230と、リモコン受信部250とで構成されている。
アンテナ240で受信された変調波は、無線機210で復調され、MACフレームとして変換器220に送られる。
変換器220は、受け取ったMACフレームを、MPEG2−TSデータに復元し、デコーダ230に送る。
デコーダ230は、B−CASカードに基づき、MPEG2−TSデータの暗号を復号し、スクランブルを解除した上で、元のデジタルデータに変換して映像と音声に分離し、さらに非圧縮のデジタルデータに変換し、その信号をTV受像機のHDMI端子に入力し、TV受像機において映像及び音声を再現する。あるいは、前記非圧縮のデジタルデータをアナログデータに変換後、RGB端子に入力し、TV受像機において映像及び音声を再現する。もしくは、前記非圧縮のデジタルデータをアナログデータに変換後、映像データはD端子に、音声データはRCA端子等に入力し、TV受像機において映像及び音声を再現する。
また、リモコン310から子機200のリモコン受信部250に送られたチャンネル指定データは、リモコン受信部250で電気的なデジタル信号に復調され、デコーダ230に送られる。
デコーダ230は、受取った電気的なデジタル信号(情報)に基づき、チャンネル切替信号(子機識別情報を含む)を生成し、変換器220へ送る。
変換器220は、受け取ったチャンネル切替信号(子機識別情報を含む)に、送信先の親機100に割り当てられているMACアドレス等を付加してMACフレームに変換し無線機210に送る。
無線機210では、それを変調して、子機200毎に割り当てた無線チャンネルの信号に変調して、アンテナ240へ送り、アンテナ240から親機100に向けて送信する。
【0013】
なお、本実施例では、TV受像機の数を最大3台としたが、TV受像機の数は自由であり、1でも2でも4以上でもよい。
TV受像機の最大設置台数がNの場合には、親機に、N個の分配端子を有する分配器と、分配器のN個の端子に接続される、チューナ、変換器、無線機およびアンテナから成る回路をN組設け、子機とリモコンを各N個用意すれば、本発明を実施することが可能である。
分配器の分配端子の数はNより多少大きくても可能である。Nが1の場合、分配器は不要であるがあってもよい。Nが大きくなると信号レベルが不足することもあるが、その場合は分配器の入力端等に増幅器を追加すればよい。
なお、親機から子機までの距離に応じてサービスセット識別子(SSID;Service Set Identifier)のACK到達時間を計測して、内部バッファに蓄積し、距離に応じて時間遅延を調整することにより、画像の遅延を改善することができる。
【0014】
このように、本実施例では、デジタルTV放送波を親機100で受信し、受信した放送波のMPEG2−TS(Transport Stream)データを暗号化されたまま、親機100で無線LANパケットとして、無線LANにて子機(200−1,200−2,200−3)に伝送する。
各子機(200−1,200−2,200−3)は、受信した無線LANパケットをMPEG2−TSデータに戻し、さらにB−CASカードを基に暗号を復号し、元のデジタルデータに変換し、その信号をTV受像機のHDMI端子に入力し、TV受像機により映像及び音声を再現する。あるいは前記のデジタル信号をアナログ信号に変換後、各種アナログ端子に入力し、TV受像機により映像及び音声を再現する。すなわち、本実施例では、親機側ではB−CASカードを基にした、MPEG2−TSデータのスクランブル解除は行わず、子機側でB−CASカードを基にスクランブル解除を行う。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0015】
100 親機
110 分配器
120 チューナ部
120−1,120−2,120−3 チューナ
130 変換器部
130−1,130−2,130−3,220 変換器
140 無線機部
140−1,140−2,140−3,210 無線機
150 制御部
160−1,160−2,160−3,240 アンテナ
200,200−1,200−2,200−3 子機
230 デコーダ
250 リモコン受信部
300,300−1,300−2,300−3 TV受像機
310,310−1,310−2,310−3 リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルTV放送波を受信する親機と、
前記親機と無線LANで接続される子機と、
前記子機からTV信号が供給されるTV受像器とを備える屋内配信システムであって、
前記親機は、前記子機から指定されたチャンネルのTSデータを、スクランブルを解除しないままLANパケットに組み立て、無線LANで前記子機に送信し、
前記子機は、前記受信したLANパケットを前記子機から指定されたチャンネルのTSデータに変換し、当該変換した前記子機から指定されたチャンネルのTSデータのスクランブルを解除し、デジタルTV信号、あるいは、アナログTV信号に変換し、前記TV受像器に供給することを特徴とする屋内配信システム。
【請求項2】
前記親機は、チューナと、変換器と、無線機と、それらを制御する制御器とを有し、
前記チューナは、前記デジタルTV放送波から、前記子機から指定されたチャンネルのデジタルTV放送波を復調してTSデータに変換し、当該子機から指定されたチャンネルのTSデータを前記親機の変換器に送り、
前記変換器は、受け取ったTSデータを、無線LANパケットのパケット長の長さのデータに変換して前記親機の無線機に送り、
前記無線機は、受け取ったデータを無線LANパケットに組み立て、当該無線LANパケットを変調し、前記子機に割り当てられている無線チャネルを使用して前記子機に送り、
前記子機は、無線機と、変換器と、デコーダとを有し、
前記子機の無線機は、前記親機から受信した変調信号を復調して無線LANパケットに変換して、前記子機の変換器に送り、
前記変換器は、受け取った無線LANパケットを、前記子機から指定されたチャンネルのTSデータに変換して、前記子機のデコーダに送り、
前記デコーダは、受け取ったTSデータのスクランブルを解除し、デジタルTV信号、あるいは、アナログTV信号に変換して、前記TV受像器に供給することを特徴とする請求項1に記載の屋内配信システム。
【請求項3】
前記TV受像器には、チャンネルを指定するリモコンが付属しており、
前記子機は、リモコン受信部を有し、
前記子機のリモコン受信部は、前記リモコンから受信したチャンネル指定信号を前記子機のデコーダに送り、
前記デコーダは、受け取ったチャンネル指定信号に基づき、チャンネル切替信号を生成して、前記子機の変換器に送り、
前記変換器は、受け取ったチャンネル切替信号を無線LANパケットに変換して、前記子機の無線機に送り、
前記無線機は、受け取った無線LANパケットを変調し、前記子機に割り当てられている無線チャネルを使用して前記親機に送り、
前記親機の無線機は、前記子機から受信した変調信号を復調して無線LANパケットに変換して、前記親機の変換器に送り、
前記変換器は、受け取った無線LANパケットを、前記チャンネル切替信号に変換して、前記親機の制御器に送り、
前記制御器は、受け取った前記チャンネル切替信号に基づき、前記チューナを制御し、前記チューナで復調するチャンネルを変更することを特徴とする請求項2に記載の屋内配信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−9168(P2013−9168A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140654(P2011−140654)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000232287)日本電業工作株式会社 (71)
【Fターム(参考)】