説明

屋根吊り具用補強具

【課題】施工が簡単で、吊りボルトを直接的にかつ強固に補強できる屋根吊り具用補強具を提供する。
【解決手段】吊りボルト21よりもやや短めの長さを有し、吊りボルト21の全長の大部分について外周面を覆うように、かつ外周面にほぼ密着するように吊りボルト21を抱持するようにした開閉自在な長尺抱持体を備え、長尺抱持体12は、それぞれに、吊りボルト21に対応した抱持部12aを中央に形成するとともに、その両側に固定部12bを形成した、2つの半割抱持体12Aで構成され、2つの半割抱持体12Aの抱持部12aに吊りボルト21を嵌め入れ、固定部12bを重合させて固着することで、吊りボルト21に固定されるとともに、吊りボルト21に螺合させたナット23と、長尺抱持体12の上端との間に屋根を挟み込み、長尺抱持体12の下端より吊りボルト21に螺合させた他のナット26を締め付けて、吊りボルト21を補強する構造にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上端が屋根に固定され、下端に軒樋を吊るすようにした吊りボルトを備えた屋根吊り具を補強するための屋根吊り具用補強具に関する。
【背景技術】
【0002】
折板屋根を施工した建物では、軒樋を取り付けるために、折板屋根に吊り下げ固定される吊りボルトと、その吊りボルトの下端に連結される、軒樋を吊るす構造とした軒樋吊り具とよりなる屋根吊り具を用いることが一般的である(特許文献1参照)。
【0003】
このような屋根吊り具は、軒樋の荷重が1本の吊りボルトにかかるため、軒樋が強風にあおられたときに吊りボルトが折れ曲がることがあったため、補強用の種々の補強構造が提案されていた。
【0004】
例えば特許文献1に記載されたものは、吊りボルトの上端と、軒樋吊り具の樋耳保持部とを、吊りボルトに略平行な帯状の折曲板体よりなる補強腕部(屋根吊り具用補強具)で連結して吊りボルトの補強を図っている。この屋根吊り具用補強具によれば、少ない材料で製されているため、低コストで吊りボルトの補強を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−63806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の屋根吊り具用補強具は構造が複雑であるため、取付作業に時間を要することが想定され、さらにまた、屋根吊り具用補強具の下端が軒樋吊り具に連結され、軒樋吊り具を介して吊りボルトを補強する構造となっているため、吊りボルト自体を直接的に補強する構造として十分であるとはいえない。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決すべく提案されたもので、その目的は、施工が簡単で、吊りボルトを直接的にかつ強固に補強できる屋根吊り具用補強具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の屋根吊り具用補強具は、上端が屋根に固定され、下端に軒樋を吊るすようにした吊りボルトを備えた屋根吊り具を補強するための屋根吊り具用補強具であって、上記吊りボルトよりもやや短めの長さを有し、上記吊りボルトの全長の大部分について外周面を覆うように、かつ外周面にほぼ密着するように上記吊りボルトを抱持するようにした開閉自在な長尺抱持体を備え、上記長尺抱持体は、それぞれに、上記吊りボルトに対応した抱持部を中央に形成するとともに、その両側に固定部を形成した、2つの半割抱持体で構成され、上記2つの半割抱持体の上記抱持部に上記吊りボルトを嵌め入れ、固定部を重合させて固着することで、上記吊りボルトに固定されるとともに、上記吊りボルトに螺合させたナットと、上記長尺抱持体の上端との間に上記屋根を挟み込み、上記長尺抱持体の下端より上記吊りボルトに螺合させた他のナットを締め付けて、上記吊りボルトを補強する構造にしていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の屋根吊り具用補強具は、上端が屋根に固定され、下端に軒樋を吊るすようにした吊りボルトを備えた屋根吊り具を補強するための屋根吊り具用補強具であって、
上記吊りボルトよりもやや短めの長さを有し、上記吊りボルトの全長の大部分について外周面を覆うように、かつ外周面にほぼ密着するように上記吊りボルトを抱持するようにした開閉自在な長尺抱持体を備え、上記長尺抱持体は、上記吊りボルトに対応した抱持部を形成するとともに、その一方側に固定部を形成した筒状体で構成され、上記筒状体の上記抱持部に上記吊りボルトを嵌め入れ、固定部を重合させて固着することで、上記吊りボルトに固定されるとともに、上記吊りボルトに螺合させたナットと、上記長尺抱持体の上端との間に上記屋根を挟み込み、上記長尺抱持体の下端より上記吊りボルトに螺合させた他のナットを締め付けて、上記吊りボルトを補強する構造にしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1または2に記載の屋根吊り具用補強具によれば、長尺抱持体が吊りボルトの全長の大部分を抱持する構成であるため、吊りボルトに対する直接的で強固な補強ができ、吊りボルトの変形等を防止できる。
【0011】
請求項1に記載の屋根吊り具用補強具によれば、長尺抱持体が2つの半割抱持体で構成されているので、吊りボルトに対して無理なく取り付けられる。また、2つの半割抱持体を同一形状の部材で構成した場合には、屋根吊り具用補強具を1種類の部材で構成できるから、在庫管理が簡便となる。
【0012】
請求項2に記載の屋根吊り具用補強具によれば、長尺抱持体が筒状体1部材で構成されているので、持ち運び、保管、在庫管理等において便利であるうえ、製造コストを抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の屋根吊り具用補強具の第1実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】同実施形態の屋根吊り具用補強具の使用状態を示す正面図である。
【図3】本発明の屋根吊り具用補強具の第2実施形態(参考例)を示す分解斜視図である。
【図4】本発明の屋根吊り具用補強具の第3実施形態を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【0015】
本発明の屋根吊り具用補強具は、折板屋根等の軒先部に取り付けて使用するもので、軒樋等を軒先に吊り下げ保持する屋根吊り具を補強する補強具である。なお、以下では屋根吊り具用補強具の取付対象として折板屋根を例示しているが、他の波形屋根や平板屋根にも取り付けることができる。
【0016】
図1は、本発明の屋根吊り具用補強具の第1実施形態を示す分解斜視図である。図2は、同実施形態の屋根吊り具用補強具の使用状態を示す正面図である。
【0017】
屋根吊り具用補強具10の取付対象である屋根吊り具20は、折板屋根30の軒先部30aに吊り下げ固定される吊りボルト21と、吊りボルト21の下部に連結した軒樋吊り具22とを備えており、防水パッキン25、山座24を介して上下のナット23、26で固定される構造となっている(図2参照)。なお、軒樋吊り具22は、金属等の板片で製され、その略中央部で吊りボルト21と連結されており、その前後(図中、左右に対応)に、軒樋(不図示)の前耳、後耳を保持する樋耳保持部22a、22aを備えている。
【0018】
一方、屋根吊り具用補強具10は、屋根吊り具20を補強するもので、特に、吊りボルト21のほぼ全長あるいは上部のやや短めの長さ部分に対して、周囲を取り囲むようにして取り付けられる。
【0019】
すなわち、屋根吊り具用補強具10は、図1に示すように、吊りボルト21を抱持して固定できる長尺抱持体12を備えている。
【0020】
長尺抱持体12は、金属材、硬質樹脂材等の硬質な材料よりなる同一形状の2つの半割抱持体12A、12Aで構成されている。半割抱持体12Aの中央に位置する湾曲凹部(外面が凸部)に形成された抱持部12aの両側には、上下においてボルトB、ナットNで固定するためのボルト挿通孔12baを有した固定部12bが形成されている。これらの半割抱持体12A、12Aで吊りボルト21を挟み込んでボルトB、ナットNで固定すれば、抱持された部分は外観露出されず保護される。
【0021】
この屋根吊り具用補強具10は、図1、図2に示すように、一方の半割抱持体12Aの抱持部12aを吊りボルト21にあてがって、さらに、他の半割抱持体12Aで挟み込み、上下に移動しないように固定することで、吊りボルト21にはカバーが被せられた状態となるように固定される。
【0022】
具体的には、屋根吊り具用補強具10は、長尺抱持体12の上端が折板屋根30の裏面に接触し、その長尺抱持体12と、折板屋根30の上面側に配され、吊りボルト21に螺合したナット23、山座24、防水パッキン25との間に折板屋根30を挟み込み、該ナット23と、長尺抱持体12の下側に配したナット26とで締め付けて、長尺抱持体12が吊りボルト21の上部に固定される取付構造となっている。なお、図2中、31は吊りボルト挿通孔である。
【0023】
このように、屋根吊り具用補強具10は吊りボルト21に対して、長尺抱持体12が吊りボルト21の全長の大部分について外周面を覆うように、かつ外周面にほぼ密着するようにカバー部材のごとく取り付けられるので、吊りボルト21に対する直接的で強固な補強ができ、吊りボルト21の変形等を防止できる。
【0024】
また、本実施形態の屋根吊り具用補強具10は、長尺抱持体12が2つの半割抱持体12A、12Aで構成されているので、吊りボルト21に対して無理なく取り付けられる。また、2つの半割抱持体12A、12Aを同一形状の部材で構成しているので、屋根吊り具用補強具10を1種類の部材で構成できる。よって、在庫管理が簡便となる。
【0025】
ついで、本発明の第2実施形態(参考例)および第3実施形態(本発明の実施例)について、図3、図4に示した分解斜視図を参照しながら説明する。なお、これらの実施形態についての使用状態については、第1実施形態とほぼ同様であるため、図示を省略する。また、これらの実施形態では、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を各図に付して、その説明を省略する。
【0026】
これらの屋根吊り具用補強具10も、吊りボルト21と略同等またはやや短めの長さを有する長尺抱持体12を備えている。したがって、第1実施形態と同様に、長尺抱持体12は吊りボルト21の全長の大部分について周囲を取り囲むカバー部材のごとく取り付けられるので、吊りボルト21に対する直接的で強固な補強ができ、吊りボルト21の変形等を防止できる。
【0027】
第2実施形態の屋根吊り具用補強具10は、長尺抱持体12が2つの半割抱持体12A、12Aで構成され、それら2つの半割抱持体12A、12Aがヒンジ構造12cにより開閉自在に連結されている(図3参照)。
【0028】
2つの半割抱持体12A、12Aがヒンジ構造12cで開閉自在となっているので、図3に示すように、吊りボルト21を容易に抱持することができ、現場での作業が簡易に行える。また、屋根吊り具用補強具10を長尺抱持体12のみの1部材で構成できるため、持ち運び、保管、在庫管理等のあらゆる面において利便性が高い。また、半割抱持体12A、12A同士がヒンジ結合されているので、ボルト止めは一方のみでよく、固定の手間が省け、短時間で施工できる。
【0029】
また、第3実施形態の屋根吊り具用補強具10は、長尺抱持体12が筒状体で構成されている(図4参照)。
【0030】
すなわち、この長尺抱持体12は、長手方向の全長にわたってスリットが形成された筒状の抱持部12aと、そのスリットを挟んだ両端から外方に板状に重合するように延びた固定部12bとを備えている。
【0031】
この屋根吊り具用補強具10は、固定部12bを構成する2片を弾性力に抗して矢印Xの方向に開いて吊りボルト21を嵌め入れることで、吊りボルト21を抱持、固定することができる。本例では、吊りボルト21を嵌め入れしやすくするために、固定部12bには、2片が両側に開いたガイド部12dが形成されている。もちろん、屋根吊り具用補強具10を、吊りボルト21を矢印Yの方向に挿通させるように取り付けてもよい。
【0032】
第3実施形態の屋根吊り具用補強具10によれば、長尺抱持体12が筒状体のみの1部材で構成されているので、持ち運び、保管、在庫管理等において便利であるうえ、製造コストを抑えることもできる。また、この実施形態では屋根吊り具用補強具10が常時閉まった状態にあるのでボルトB止めをしなくてもよく、屋根吊り具用補強具10が上下方向にずれないように両ナット23、26で固定するだけの構造であってもよい。
【0033】
以上に説明した3実施形態では、屋根吊り具用補強具10の屋根吊り具20への取り付けをボルトB、ナットNにより固定するようにしているが、リベットをかしめて固定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 屋根吊り具用補強具
12 長尺抱持体
12A 半割抱持体
12a 抱持部
12b 固定部
12ba ボルト挿通孔
12c ガイド部
12d ヒンジ構造
B ボルト
N ナット
20 屋根吊り具
21 吊りボルト
22 軒樋吊り具
22a 樋耳保持部
23 ナット
24 山座
25 防水パッキン
26 ナット
30 折板屋根
30a 軒先部
31 吊りボルト挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端が屋根に固定され、下端に軒樋を吊るすようにした吊りボルトを備えた屋根吊り具を補強するための屋根吊り具用補強具であって、
上記吊りボルトよりもやや短めの長さを有し、上記吊りボルトの全長の大部分について外周面を覆うように、かつ外周面にほぼ密着するように上記吊りボルトを抱持するようにした開閉自在な長尺抱持体を備え、
上記長尺抱持体は、それぞれに、上記吊りボルトに対応した抱持部を中央に形成するとともに、その両側に固定部を形成した、2つの半割抱持体で構成され、
上記2つの半割抱持体の上記抱持部に上記吊りボルトを嵌め入れ、固定部を重合させて固着することで、上記吊りボルトに固定されるとともに、
上記吊りボルトに螺合させたナットと、上記長尺抱持体の上端との間に上記屋根を挟み込み、上記長尺抱持体の下端より上記吊りボルトに螺合させた他のナットを締め付けて、上記吊りボルトを補強する構造にしていることを特徴とする屋根吊り具用補強具。

【請求項2】
上端が屋根に固定され、下端に軒樋を吊るすようにした吊りボルトを備えた屋根吊り具を補強するための屋根吊り具用補強具であって、
上記吊りボルトよりもやや短めの長さを有し、上記吊りボルトの全長の大部分について外周面を覆うように、かつ外周面にほぼ密着するように上記吊りボルトを抱持するようにした開閉自在な長尺抱持体を備え、
上記長尺抱持体は、上記吊りボルトに対応した抱持部を形成するとともに、その一方側に固定部を形成した筒状体で構成され、
上記筒状体の上記抱持部に上記吊りボルトを嵌め入れ、固定部を重合させて固着することで、上記吊りボルトに固定されるとともに、
上記吊りボルトに螺合させたナットと、上記長尺抱持体の上端との間に上記屋根を挟み込み、上記長尺抱持体の下端より上記吊りボルトに螺合させた他のナットを締め付けて、上記吊りボルトを補強する構造にしていることを特徴とする屋根吊り具用補強具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−50025(P2013−50025A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−269464(P2012−269464)
【出願日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【分割の表示】特願2010−166856(P2010−166856)の分割
【原出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【出願人】(593178409)株式会社オーティス (224)