説明

屋根葺き替え用金具

【課題】 屋根葺き替え(既存屋根をそのままにして、既存屋根上に二重で更に新規屋根の葺き替えを行う)に際して、スレート屋根のような塵芥が問題となる場合に、無塵で作業を実施することができる金具を提供する。
【解決手段】下方開口コの字状にして対向面部11間を貫通する挟圧ボルト12及び挟圧ナット13を装着した挟圧本体1の下方に、挟圧本体を装着対象の屋根板A上に載置して安定させる足板部2と、前記足板部2と対応する位置で、先端部分を対向させた爪板部3とを設けると共に、挟圧本体に屋根葺き用装着部4を付設してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として波型スレート屋根上に新たな屋根を構築する葺き替え工事に使用する金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般の屋根の葺き替えは、従前の屋根部分を除去し、除去した後に、新規な屋根板を葺き替えるが、従前の屋根板の除去作業が煩雑であることや、除去した屋根板部材の廃棄も必要となり面倒であるので、従前の屋根をそのままとし、従前の屋根上に更に新規な屋根葺きが為されている。
【0003】
波型スレート屋根においては、従前の屋根板上に貫通孔を開け、従前屋根の梁に連結したボルトで新規な屋根板を止着して屋根葺きを行っている。
【0004】
また屋根上に構築物を形成する場合には、特許文献1(登録実用新案第3097360号公報)に示されるように、波型スレート屋根板を母屋(梁材)に止着するための屋根板固定ボルトにおける屋根突出部分を利用する手段が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3097360号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スレート屋根(主として波型屋根)の経年変化によって、屋根の葺き替えを、既存スレート屋根上に新たな屋根板を葺く場合に、既存スレート屋根板を穿孔して、前記開孔を通して母屋(梁)に連結する止着ボルトを用いる場合には、前記の既存スレート屋根の穿孔に際しては、屋根材が粉塵となって室内に落下してしまう。而も従前のスレート屋根板は、アスベストを含んで製造されているため、前記の粉塵にアスベスト繊維が含まれる結果となり、室内環境を考慮すると、厳重な粉塵対策が必要となり非常に煩雑な工事となってしまう。
【0007】
また前記の特許文献1に開示されているように、スレート屋根上に突出した既存の屋根止着ボルトを使用する場合でも、屋根の補修が必要なほど既存屋根は年月を経ているので、止着ボルトのナットより露出した部分は錆びてしまっており、そのネジ山を利用することが困難である。
【0008】
そこで本発明は、既存のスレート屋根において、屋根板に新たな穿孔を施すことなく、無塵で新規な屋根葺きを可能とするスレート屋根葺き替え用金具を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る屋根葺き替え用金具は、下方開口コの字状にして対向面部間を貫通する挟圧ボルト及び挟圧ナットを装着した挟圧本体の下方に、挟圧本体を装着対象の屋根面上に載置して安定させる足板部と、前記足板部と対応する位置で、先端部分を対向させた爪板部とを設けると共に、挟圧本体に屋根葺き替え用装着部を付設してなることを特徴とするものである。
【0010】
而して爪板部の先端を、既存の波型スレート屋根やその他の既存屋根における屋根板止着ボルトを挟むように位置させて、挟圧ボルト・ナットの挟圧で対向面部を接近させると、それに伴って爪板部の先端が、既存の屋根板止着ボルトの座金クッション部(特にスレート屋根はナットや座金等の金属部分で直接押圧すると傷が付き亀裂等を生じさせる原因となるので、金属座金の下方にフェルト材などで形成されたクッション部を介在させている)に食い込み、金属座金・止着ナットの下方に突出し、足板部が既存屋根板上に載置されることで、本願金具が既存屋根上に固着されることになる。そこで本願金具における屋根葺き替え用装着部を使用して新規な屋根板を葺くことができる。
【0011】
また本発明(請求項2,3)に係る屋根葺き替え用金具は、特に前記の金具において、挟圧本体の対向面部の下方を両側外方に折曲して足板部を形成し、或いは又挟圧本体の対向面部の下方を両側外方に一旦折曲し、更に折り返して爪板部を形成してなるものである。
【0012】
従って挟圧本体と、足板部及び爪板部は一枚の金属板からのプレス加工で製出できるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成は上記のとおりで、主として既存の波型スレート屋根において、既存屋根に何らの加工を施すことなく、塵芥を発生することなく、そのままの状態で新規な屋根葺きを実現することができたものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態の全体斜視図(金具装着前)。
【図2】同使用状態の説明図(装着前の正面図)。
【図3】同図(装着後の正面図)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に本発明の実施形態について説明する。実施形態に示した屋根葺き替え用金具は、金属板1枚のプレス加工で製出した挟圧本体1と、足板部2と、爪板部3に、更に前記挟圧本体1に付設した屋根葺き用装着部4で構成されるものである。
【0016】
挟圧本体1は、下方開口コの字状にして対向面部11間を貫通する挟圧ボルト12及び挟圧ナット13を装着したもので、対向面部11間を貫通した挟圧ボルト12に螺合した挟圧ナット13を緊締することで対向面部11の下方開口部分を閉口方向に動作させるものである。
【0017】
足板部2は、挟圧本体1の前後下方両側方を、装着対象の波型スレート屋根板Aの形状に対応して斜め下方に突出して設けたものである。
【0018】
爪板部3は、前記足板部2の前後中間に、挟圧本体1の対向面部11の下方を両側外方に一旦折曲し、更に折り返して足板部2の機能を備えさせて形成してなるものである。
【0019】
屋根葺き用装着部4は、挟圧本体1の頂板部14に直立ボルト棒を突設して形成したものである。
【0020】
而して前記金具を、既存の波型スレート屋根板Aにおける屋根板止着ボルトBを挟むように位置させて、挟圧ボルト・ナット12,13の挟圧で対向面部11を接近させると、爪板部3の先端が、既存の屋根板止着ボルトBの座金クッション部Cに食い込み、金属座金D及び止着ナットEの下方に突入すると共に、既存波型スレート屋根板A上に載置している足板部2が、屋根板Aを下圧することで金具全体が固定されることになる。
【0021】
そこで既存スレート屋根板A上に断熱材Fを敷設し、折版屋根Gを、屋根葺き用装着部(直立ボルト棒)4を用いて止着することで、新規の折版屋根Gの屋根葺きを行うものである。
【0022】
尚本発明は、前記の実施形態に限定されるものでなく、足板部2と爪板部3は前記の挟圧本体1と一体にプレス加工で形成するほか、挟圧本体に溶接で形成しても良いし、また爪板部3は、単に対向面部11の下端縁を内方に折曲して形成するようにしても良い。更には前記爪板部3のように足板部2の機能を兼ねる場合には、足板部2を爪板部3と別々に形成しなくとも良い。
【0023】
また屋根葺き用装着部4は、新規葺き替え屋根板形状に対応して適宜定められるもので、直立ボルト棒に替えて、例えば折版屋根の頂板部の内側に添う支持板で形成しても良いし、単に前記挟圧本体1の頂板部14にリベット連結するための装着用透孔のみを穿設するようにしても良い。
【0024】
更に本金具は、波型スレート屋根の葺き替えに限定されるものではなく、既存屋根において、屋根面上に装着ボルト・ナット等が露出しているもので、座金等の下方に爪板部先端が挿入可能であれば適用できるものである。
【符号の説明】
【0025】
1 挟圧本体
11 対向面部
12 挟圧ボルト
13 挟圧ナット
14 頂板部
2 足板部
3 爪板部
4 屋根葺き用装着部(直立ボルト棒)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方開口コの字状にして対向面部間を貫通する挟圧ボルト及び挟圧ナットを装着した挟圧本体の下方に、挟圧本体を装着対象の屋根面上に載置して安定させる足板部と、前記足板部と対応する位置で、先端部分を対向させた爪板部とを設けると共に、挟圧本体に屋根葺き用装着部を付設してなることを特徴とする屋根葺き替え用金具。
【請求項2】
挟圧本体の対向面部の下方を両側外方に折曲して足板部を形成してなる請求項1記載の屋根葺き替え用金具。
【請求項3】
挟圧本体の対向面部の下方を両側外方に一旦折曲し、更に折り返して爪板部を形成してなる請求項1又は2記載の屋根葺き替え用金具。
【請求項4】
挟圧本体の頂面部にボルト棒を突設して屋根葺き用装着部としてなる請求項1乃至3記載の何れかの屋根葺き替え用金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−87537(P2012−87537A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235466(P2010−235466)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(591056824)株式会社ノミズヤ産業 (9)
【Fターム(参考)】