屋根面のフラット化構造とそれを利用した屋根緑化構造
【課題】屋根面のフラット化構造において、平板材20を支持するための断面C型支持材10の屋根面への取り付けを容易化できる屋根面のフラット化構造を提供する。また、フラット化した屋根面上に緑化基盤材40のような他の部品を配置するときに用いる固定用冶具35の取り付けを容易化できかつ取り付け後に取り付け位置の調整も可能とした屋根面のフラット化構造を提供する。
【解決手段】平行な多数の凸条2を有する屋根板1を備えた屋根4における屋根面をフラット化するに際し、比較的に長さの短い複数個の断面C型支持材10を、その背の部分11を屋根板2側として、長手方向を前記凸条2に直交する姿勢として、かつ屋根勾配方向Xに多段に固定する。そして、屋根勾配方向に隣接して位置する断面C型支持材10と断面C型支持材10の間に、断面C型支持材10の高さとほぼ同じ厚さの平板材20を配置する。断面C型支持材10の解放した上面側には、固定用冶具35を着脱自在に取り付ける。
【解決手段】平行な多数の凸条2を有する屋根板1を備えた屋根4における屋根面をフラット化するに際し、比較的に長さの短い複数個の断面C型支持材10を、その背の部分11を屋根板2側として、長手方向を前記凸条2に直交する姿勢として、かつ屋根勾配方向Xに多段に固定する。そして、屋根勾配方向に隣接して位置する断面C型支持材10と断面C型支持材10の間に、断面C型支持材10の高さとほぼ同じ厚さの平板材20を配置する。断面C型支持材10の解放した上面側には、固定用冶具35を着脱自在に取り付ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行な多数の凸条を有する屋根板をその凸条が屋根勾配方向となるようにして配置してなる屋根における屋根面のフラット化構造と、フラット化した屋根面を利用した屋根緑化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内の温度上昇を抑制するため、あるいは大気環境を改善するため等の目的で、屋根面を緑化することが推奨されている。当初からフラットな屋根面の場合には、比較的容易に緑化に必要な資材を屋根面に固定することができる。しかし、例えば折板屋根のように、互いに平行な多数の凸条を有する屋根板をその凸条が屋根勾配方向となるようにして配置してなる屋根の場合には、屋根面がフラットでなく凹凸面をなしていることから、直接その上に緑化に必要な資材等を固定することは容易でない。
【0003】
それを解決するための手段として、特許文献1には、折板屋根の凸条の上に、断面C型支持材を、その開口側を屋根板側として、かつ開口部内に、凸条の平坦面から突出している屋根板を固定するのに用いられているボルトやナット等の固定具を入り込むようにして配置し、該断面C型支持材の複数本を、ボルトやナット等の固定用冶具によって軒先に平行に固定するとともに、隣接する断面C型支持材の間に、該断面C型支持材の高さとほぼ同じ厚さの平板材(例えば発泡樹脂板)を折板屋根の上に配置し、その上から、長尺状の押さえ板で平板材を押さえ付けるようにした、屋根面のフラット化構造が記載されている。そして、特許文献1の段落0011には、フラット化した屋根面の上に固定する物品として、屋上緑化用の緑化基盤材、太陽電池パネル、などが例として記載されている。
【0004】
また、特許文献2あるいは特許文献3などには、適宜の手段によってフラット化した折板屋根の上に、発泡樹脂成形品である緑化基盤材を設置し、その上に緑化資材を配置して、屋根面の緑化を図るようにした折板屋根緑化構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−144388号公報
【特許文献2】特開2006−274759号公報
【特許文献3】特開2008−045324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される屋根面のフラット化構造は、屋根板の凸条の上面から突出している屋根板を固定するための固定具に邪魔されることなく、断面C型支持材や平板材を屋根面上に配置できる利点がある。しかし、フラット化された屋根面の上に、屋上緑化用の緑化基盤材や太陽電池パネルなどを設置しようとする場合、それを固定するための冶具(例えば、長ボルトや高ナット等)を屋根面に取り付けることが必要となるが、フラット化された屋根面上で、そのような固定用冶具の取り付けに利用できる部分は、断面C型支持材の平坦面となった背の部分のみであり、その部分に固定用冶具を安定した状態で取り付けるのは困難であった。また、一度取り付けた固定用冶具を、配置する物品の大きさに合わせて軒先方向で位置調節することも困難であり、固定用冶具の取り付けに慎重な作業が求められていた。
【0007】
さらに、屋根板の凸条の上面に屋根板を固定するための固定具が突出していない構造の場合には、断面C型支持材をその開口側を屋根板側として屋根面上に固定する作業も容易ではなかった。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、屋根面のフラット化構造において、平板材を支持するための断面C型支持材の屋根面への取り付けを容易化できる屋根面のフラット化構造を提供すること、また、フラット化した屋根面上に緑化基盤材のような他の部品を配置するときに用いる固定用冶具の取り付けを容易化できかつ取り付け後に取り付け位置の調整も可能とした屋根面のフラット化構造を提供すること、を課題とする。さらに、そのような屋根面のフラット化構造を用いて施工した屋根緑化構造を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による屋根面のフラット化構造は、互いに平行な多数の凸条を有する屋根板を前記凸条が屋根勾配方向となるようにして配置してなる屋根における屋根面のフラット化構造であって、前記屋根面には、断面C型支持材が、その背の部分を屋根板側として、長手方向を前記凸条に直交する姿勢として、かつ屋根勾配方向に多段に固定されており、屋根勾配方向に隣接して位置する前記断面C型支持材と断面C型支持材の間には該断面C型支持材の高さとほぼ同じ厚さの平板材が屋根板の上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記の屋根面のフラット化構造では、屋根面に固定しようとする断面C型支持材は、その平坦面である背の部分が屋根板の凸条に接するようにして位置しており、屋根板に対して断面C型支持材を固定する作業はきわめて容易となる。また、そのようにして屋根面上に固定した屋根勾配方向に位置する上下の断面C型支持材の間に、安定した状態で平板材を位置決めしかつ配置することができる。なお、断面C型支持材には、例えば断面C型鋼あるいは断面C型の樹脂押出成形品のような既存の材料をそのまま用いることができるが、強度や作業性の点から、断面C型鋼は好ましい。
【0011】
本発明による屋根面のフラット化構造の一態様において、前記断面C型支持材として長さの長いものを用い、それがフラット化しようとする屋根面の軒先方向全長にわたって固定されていてもよい。また、他の態様として、断面C型支持材として比較して長さの短いものを用い、その複数個を屋根の軒先方向に間隔を置いて屋根面に固定するようにしてもよい。この態様では、断面C型支持材を固定する作業が容易となると同時に、材料費の節減を図ることもできる。
【0012】
本発明による屋根面のフラット化構造において、前記断面C型支持材は任意の方法で屋根板の凸条の上に固定することができる。屋根板の凸条部分に屋根板固定用ボルト等が飛び出ている場合には、それを利用してもよい。しかし、本発明による屋根面のフラット化構造の好ましい態様では、前記屋根面の凸条と前記断面C型支持材の背の部分との間にはパッキンを備えた押さえ金具が配置され、前記断面C型支持材と前記押さえ金具と前記凸条とが屋根の構造材に対して一体にビス止めされる。
【0013】
この態様では、押さえ金具を用い、かつ全体を一体にビス止めすることにより、屋根面に対する断面C型支持材の固定状態は、一層安定かつ確実なものとなることに加え、押さえ金具としてパッキンを備えた押さえ金具を用いることにより、ビス止めした部分から屋根板の裏面側に雨水が入り込むのを確実に阻止することができる。
【0014】
本発明による屋根面のフラット化構造の一態様では、前記断面C型支持材として、その背の部分に長穴が形成されているものを用いる。この態様では、断面C型支持材の固定作業時に、断面C型支持材を、その背の部分に形成した長穴に沿って移動させることで、固定位置の微調整を行うことができる。また、前記したように、屋根板の凸条部に飛び出ている屋根板固定用ボルト等を断面C型支持材の固定に利用する場合には、前記長穴内に屋根板固定用ボルト等を収容することができる。そのために、背の部分に長穴が形成されている断面C型支持材を用いることは、本発明において、特に好適となる。
【0015】
本発明による屋根面のフラット化構造において、平板材に使用する材料は任意であり特に制限はない。屋根面からの輻射熱を防止すること等を目的とする場合には、平板材として、好ましくは発泡樹脂板が用いられる。この態様は、屋上緑化を行うときの態様としても好適である。他に、非発泡樹脂製、発泡モルタル製や木材製のような材料を用いることもできる。フラット化した屋根面の上に何らかの物品を固定する場合には、平板材は、当該物品からの上載荷重に耐えるだけの強度を備える必要がある。固定する物品としては、屋上緑化用の緑化基盤材、太陽電池パネル、などが例として挙げられる。
【0016】
本発明による屋根面のフラット化構造の一態様において、屋根面に固定された前記断面C型支持材の上面側である開口部には、一例としてボルトとナット等を備える固定用冶具が着脱自在に備えられる。この態様では、前記固定用冶具を利用して、適宜の部材あるいは物品をフラット化した屋根面上に、容易かつ安定的に固定することができる。固定用冶具の取り付けは、断面C型支持材の上面側である開口部を利用して行っており、着脱作業が容易であるとともに、取り付け状態もきわめて安定したものとなる。
【0017】
前記固定用冶具を備えた態様の屋根面のフラット化構造の一例では、前記断面C型支持材と断面C型支持材の間に配置した前記平板材を押さえるための押さえ板が、前記固定用冶具を利用して固定される。この態様では、前記押さえ板でもって平板材を屋根板に押さえ付けることができるので、フラット化した屋根面に緑化基盤材や太陽電池パネルのような大型の部品を平板材の上に配置しない場合の態様として、特に好適となる。もちろん、押さえ板を取り付け、さらにその上に、緑化基盤材や太陽電池パネルのような大型の部品を配置してもよい。
【0018】
本発明による屋根面のフラット化構造において、配置された平板材の上に、平板材を保護するための適宜の保護層を形成してもよい。保護層には、亜鉛メッキ鋼板のような耐食性・耐候性に優れた金属板、塩化ビニル系樹脂シートやアスファルト系シートのような防水性シート、ポリウレタン系樹脂やアクリル系樹脂からなる被覆材、あるいはそれらを積層したものが挙げられる。屋根面のフラット化構造の使用目的や配置する平板材の材料等を考慮して適宜選択すればよい。また、保護層は、平板材を屋根板に取り付けた後に、平板材の上に積層固定するようにしてもよく、予め保護層を一体に積層した平板材を用い、平板材の留め付けと保護層の積層とが同時に行われるようにしてもよい。
【0019】
本出願は、さらに、上記した屋根面のフラット化構造、特に前記固定用冶具を備えた屋根面のフラット化構造を利用した屋根緑化構造であって、フラット化した屋根面の上に、前記固定用冶具を利用して屋根面緑化のための植裁基盤材が固定されていることを特徴とする屋根緑化構造をも開示する。なお、ここで用いる植裁基盤材は、前記した特開2006−274759号公報、特開2008−045324号公報などに記載される従来知られた植裁基盤材をそのまま用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、屋根面のフラット化構造において、フラット化のために屋根面上に配置する平板材を支持するための断面C型支持材を、屋根面へ容易に取り付けることができる。また、フラット化した屋根面上に緑化基盤材のような他の部品を配置するときに用いる固定用冶具の取り付けも容易化することができ、かつ取り付け後に、その取り付け位置も容易に調整することができる。そのことから、施工が容易でかつ構造的にも高い安定性を持つ屋根面のフラット化構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】多数の凸条を有する屋根面に複数個の断面C型支持材を取り付けた状態を示す斜視図。
【図2】屋根面へ取り付けた断面C型支持材とそこに取り付けた固定用冶具を拡大して示す斜視図。
【図3】図3(a)は屋根面へ取り付けた断面C型支持材の軒先方向での断面図であり、図3(b)はその側面図。
【図4】本発明による屋根面のフラット化構造の一例を示す平面図。
【図5】図4に示す屋根面のフラット化構造を軒先側から見た図。
【図6】図4に示す屋根面のフラット化構造を側方から見た図。
【図7】緑化基盤材の一例を説明する図。
【図8】図4に示す屋根面のフラット化構造の上に緑化基盤材を配置した状態を示す平面図。
【図9】軒先方向で用いる端部固定金具とその固定状態を説明する図であり、図9(a)は軒先方向から見て示す図、図9(b)は側方から見て示す図。
【図10】軒先に直交する方向で用いる端部固定金具とその固定状態を説明する図であり、図10(a)は側方から見て示す図、図10(b)は軒先方向から見て示す図。
【図11】本発明による屋根緑化構造の一例を説明する図であって、それを軒先方向から見て示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態をその施工手順とともに説明する。
最初に、屋根板上に断面C型支持材を取り付ける。図1に示すように、本発明において、屋根板1は互いに平行な多数の凸条2を有する屋根板であり、所要枚数の前記屋根板1が、前記凸条2を屋根勾配方向Xとなるようにして、適宜の構造材3に対して固定されることで屋根4を構築している。そして、前記凸条2の上に、断面C型支持材10が、その長手方向を屋根4の軒先方向Yと平行にして、すなわち、長手方向を前記凸条2に直交する姿勢として、かつ屋根勾配方向Xに所定の間隔(後記する平板材20の短手方向の幅)を置いて多段に固定されている。なお、構造材3には図示しない適宜の支柱が立て込まれる。この例で構造材3は木材であり、図2に示すように、腐食防止ために金属材3aで三方が覆われている。
【0023】
図2に、1つの断面C型支持材10の固定状態を示す。この例で、断面C型支持材10は、平行する2本の前記凸条2,2間を跨ぐことができる程度の長さであり、背板11と、背板11の両側から垂直に立ち上がる左右の側板12,12と、左右の側板12,12の上端から内側斜め下方に向けて延びる止め板13,13とからなる。背板11には、長手方向に延びる適数(図示のものでは2つ)の長穴14が形成されている。図1に示したように、断面C型支持材10の複数個が、軒先方向Yに一定の間隔を置いて、かつその背の部分、すなわち背板11を屋根板1側として、屋根板1に固定される。断面C型支持材10の長手方向の長さは特に制限はなく、平板材20を安定した状態で支持できることを条件に任意である。図示しないが、より長さの長いものを軒先方向Yに間隔のない状態で固定するようにしてもよい。
【0024】
図3を参照して、屋根4に対する断面C型支持材10を固定する一方法を説明する。最初に、押え金具31を止水パッキン32を間に挟んで、隣接する2つの凸条2、2の上に被せる。その上に、前記した断面C型支持材10を背板11が凸条2側となるようにして置く。その状態で、固定用ビス30を、前記長穴14、押え金具31、止水パッキン32、屋根板1の凸条2を通過するようにして、構造材3にまでねじ込み、全体を一体に固定する。その際に、断面C型支持材10を長穴14に沿って軒先方向Yに移動させることで、取り付け位置の微調整を行うことができる。図示しないが、折板屋根のように、屋根板を固定するときのボルト等が凸条から突出している形態の屋根の場合には、その突出しているボルト等を長穴14内に通過させて、ナットで締め付けることにより、断面C型支持材10を屋根板に固定することもできる。
【0025】
次に、必要とされる断面C型支持材10に対して、固定用冶具35を取り付ける。この例で、固定用冶具35は、基本的に、ボルト36とナット37とからなり、ボルト36が垂直姿勢に固定される。ボルト36の固定態様は任意であるが、この例では、断面C型支持材10内に入り込む大きさの下押え板38と、断面C型支持材10の左右の側板12,12を跨ぐことのできる大きさおよび形状の上押え板39とを用いている。
【0026】
前記ボルト36に適宜のワッシャと下押え板38を取り付け、下押え板38を断面C型支持材10内に入り込ませた状態で、ボルト36を立てた姿勢で位置させる。その状態で、上押え板39とワッシャとをボルト36に取り付け、ナット37をボルト36にねじ込み、締め付ける。それにより、固定用冶具35は断面C型支持材10に対して垂直姿勢で固定される。
【0027】
本発明による屋根面のフラット化構造では、断面C型支持材10をその解放した側を上面として屋根板1に固定しているために、上記の固定態様を採用することが可能となり、容易にかつしっかりとした状態で固定用冶具35を屋根面に固定することができる。ナット37を緩めて固定用冶具35の長手方向に移動させ、再度締め付けることで、固定用冶具35の断面C型支持材10の長手方向での固定位置を適宜調節することもできる。なお、前記ボルト36の長さは、その使用目的に応じで、適宜の長さのものが選択して用いられる。
【0028】
上記のようにして、図1に示すように、屋根板1の所定位置に適数の断面C型支持材10を固定した後に、所要枚数の平板材20を屋根面に配置する。この例において、平板材20は、長方形をなす発泡樹脂板であり、その厚さは断面C型支持材10の高さにほぼ等しく、その短手方向の幅は、前記したように、屋根勾配方向Xに間隔を置いて固定されている2つの断面C型支持材10、10間の距離にほぼ等しい。なお、発泡樹脂板の材料としては、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリ塩化ビニル、等が例として挙げられる。
【0029】
図4は、屋根勾配方向Xに間隔を置いて固定されている断面C型支持材10・・の間に、平板材20を配置した状態を示す平面図、すなわち、本発明による屋根面のフラット化構造の一例を示す平面図であり、図5はそれを軒先側から見て示す図であり、図6は側方からみて示す図である。なお、これらの図では、図1〜図3において説明した部材については、同じ符号を付し、説明は省略する。
【0030】
図示されるように、上記のようにして、適数の平板材20を、凸条2を多数備えた屋根板1の上に配置することにより、屋根面は全体としてフラット化される。なお、図4において、15は、配置した平板材20の姿勢を安定化させるために必要に応じて取り付けられる平板状の押さえ板であり、該押さえ板15は、前記した固定用冶具35を利用して、断面C型支持材10側に固定されている。このようにしてフラット化された屋根面には、任意の部品を容易に載置することができ、載置した各部品は、断面C型支持材10に固定した固定用冶具35を用いて、安定した姿勢で屋根4上に確実に固定することができる。図示の例では、平板材20を配置した状態で、軒先方向Yに取り付けられている断面C型支持材10、10間には、平板材20のない空間領域S(図4参照)が形成される。必要な場合には、この空間領域を同種の平板材によって埋め込むようにしてもよい。また、断面C型支持材10に対応する部分を切り欠いた平板材を用いることによって、このような空間領域Sが形成されるのを回避することもできる。
【0031】
なお、平板材20の前記押さえ板15による屋根面への固定は、必要な安定性が確保される場合には、特に行わなくてもよい。他の固定手段として、接着剤による固定や、平板材20と断面C型支持材10の間の摩擦力による固定も採用することができる。
【0032】
次に、載置する部品が植裁基盤材である場合を例として、本発明による屋根緑化構造の一例を説明する。図7は、植裁基盤材40の一例を示す。この植裁基盤材40は、発泡性樹脂粒子を型内発泡成形して得られた一体成形品であり、全体として平面視で正方形をなしている。植裁基盤材40は保水用空間41とそこから立ち上がる側壁42を有し、4隅部には前記固定用冶具35のボルト36が通過できる切り欠き43が形成されている。また、側壁42には隣接する植裁基盤材40をクリップ等で止めるためのクリップ挿入口44が形成されている。
【0033】
図8は、平面材20を配置することによってフラット化された屋根面に、植栽基盤材40を取り付けた状態を平面視で示している。互いに隣接する植栽基盤材40・・は、前記した固定用冶具35を利用してその角部が一体となるようにして固定される。また、図9および図10に示し、また後に説明するように、植栽基盤材40群の軒先方向の端部と軒先に直交する方向の端部は、それぞれ端部固定用金具50、60により固定されている。
【0034】
なお、本発明において、フラット化された屋根4の上に配置する物品の寸法があらかじめ決まっている場合には、それに応じて、前記断面C型支持材10の屋根板1に対する固定位置を設定する。例えば、物品が植栽基盤材40の場合、その屋根勾配方向Xの長さaを1ピッチとして、断面C型支持材10を凸条2の屋根勾配方向Xに必要数だけ固定する。また、軒先方向Yには、当該植栽基盤材40の軒先方向Yの長さbを1ピッチとして、必要個数の断面C型支持材10を固定する。凸条2は屋根勾配方向Xに伸びているので、屋根勾配方向Xでは任意の位置に断面C型支持材10を固定することができる。ただし、断面C型支持材10の固定には、図2に示した構造材3を利用することが望ましいので、屋根4を施工するときに、断面C型支持材10の前記屋根勾配方向Xの固定位置に対応するようにして、構造材3を配置することが推奨される。軒先方向Yでは所定の間隔をおいて凸条2が位置しており、凸条2のピッチの大小によって、断面C型支持材10の固定位置がある程度の制約を受ける。しかし、断面C型支持材10は背板11に取り付け時に軒先方向Yとなる長穴14を有しており、その固定位置を植栽基盤材40の軒先方向Yの長さbに合わせて微調整することができるので、植栽基盤材40の固定に支障が生じることはない。
【0035】
図9は、軒先方向で用いる第1の端部固定金具50とその固定状態を示している。第1の端部固定金具50は、小幅なL型止め金具51と、フラット化された屋根4の軒先方向のほぼ全長にわたる長さのL型見切り金具52とで構成される(図6も参照)。施工に当たって、前記L型見切り金具52を、軒先の先端部またはその近傍に、軒先方向Yと平行な姿勢で凸条2の上に載せ、凸条2に対してボルトナット53により固定する。次に、L型見切り金具52の取り付け姿勢を安定させるために、所定の間隔をおいて、前記小幅なL型止め金具51をL型見切り金具52の内側に、前記ボルトナット53およびビス54を用いて固定する。なお、L型見切り金具52の側壁高さは、前記のようにして固定した植栽基盤材40の上縁よりもわずかに突出するだけの高さとされる。
【0036】
図10は、軒先に直交する方向で用いる第2の端部固定金具60とその固定状態を示している。第2の端部固定金具60も、小幅なL型止め金具61と、フラット化された屋根4の屋根勾配方向Xのほぼ全長にわたる長さのL型見切り金具62とで構成される(図5も参照)。施工に当たっては、屋根板2の軒先側から見てもっとも外側に位置する凸条2に沿うようにして、前記L型見切り金具62を配置する。そのようにして配置したL型見切り金具62を、前記凸条2における前記した断面C型支持材10を固定することを予定しない領域において、止水パッキンや止めビスを利用して、固定する。次に、図2に基づき説明したようにして、屋根勾配方向Xに所定数の断面C型支持材10を固定する。次に、L型見切り金具62の取り付け姿勢を安定させるために、L型見切り金具62の内側に、所要数の前記小幅なL型止め金具61を、固定用冶具35およびビス64を用いて固定する。なお、L型見切り金具62の側壁高さは、取り付けた状態で、前記したL型見切り金具52の側壁上縁と同じ高さとなるようにされる。
【0037】
このようにして第1の端部固定金具50と第2の端部固定金具60とを周囲に取り付けることにより、平板材20およびその上に載置された物品、例えば植栽基盤材40の屋根4上での取り付け状態を安定させることができる。
【0038】
図11は、平面材20を配置することによってフラット化された屋根面に取り付けた植栽基盤材40の上に、植栽マット70等を取り付けて、屋根面緑化構造とした状態を軒先方向から見て示している。このようにして構築した屋根面緑化構造の上から散水すると、水は植裁マット70等を透過して緑化基盤材40の保水用空間41に溜まり、その水は植裁マット70等に植生した植物Pの生育に利用される。また、雨水を含む余分な水は、緑化基盤材40をオーバーフローして流下する。
【0039】
図示しないが、発泡樹脂製板である平板材20と緑化基盤材40との間に根止めシートを敷設して、植物の根により発泡樹脂製板や屋根板1が損傷するのを防止するようにしてもよい。また、固定された緑化基盤材40の上に土壌流出防止用の好ましくは根止め機能を備えた不織布を敷き、その上に従来知られた適宜の植裁マット70等を配置してもよい。さらに、各単位緑化基盤材40の中に植裁マット70等の下面に接する形のスポンジのように水分吸い上げ材を置くようにしてもよく、この場合、保水用空間41の底部に滞留する水を植裁マット70等に向けて吸い上げることができる利点がある。
【符号の説明】
【0040】
1…屋根板、
2…屋根板の凸条、
3…構造材、
4…屋根、
10…断面C型支持材、
11…背板、
12…側板
13…止め板、
14…長穴、
15…平板状の押さえ板、
20…平板材(長方形をなす発泡樹脂板)、
30…固定用ビス、
31…押え金具、
32…止水パッキン、
35…固定用冶具、
36…ボルト、
37…ナット、
38…下押え板、
39…上押え板、
40…植裁基盤材、
41…保水用空間、
42…側壁、
43…4隅部の切り欠き、
50…第1の端部固定金具、
51…L型止め金具、
52…L型見切り金具、
60…第2の端部固定金具、
61…L型止め金具、
62…L型見切り金具、
70…植栽マット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに平行な多数の凸条を有する屋根板をその凸条が屋根勾配方向となるようにして配置してなる屋根における屋根面のフラット化構造と、フラット化した屋根面を利用した屋根緑化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋内の温度上昇を抑制するため、あるいは大気環境を改善するため等の目的で、屋根面を緑化することが推奨されている。当初からフラットな屋根面の場合には、比較的容易に緑化に必要な資材を屋根面に固定することができる。しかし、例えば折板屋根のように、互いに平行な多数の凸条を有する屋根板をその凸条が屋根勾配方向となるようにして配置してなる屋根の場合には、屋根面がフラットでなく凹凸面をなしていることから、直接その上に緑化に必要な資材等を固定することは容易でない。
【0003】
それを解決するための手段として、特許文献1には、折板屋根の凸条の上に、断面C型支持材を、その開口側を屋根板側として、かつ開口部内に、凸条の平坦面から突出している屋根板を固定するのに用いられているボルトやナット等の固定具を入り込むようにして配置し、該断面C型支持材の複数本を、ボルトやナット等の固定用冶具によって軒先に平行に固定するとともに、隣接する断面C型支持材の間に、該断面C型支持材の高さとほぼ同じ厚さの平板材(例えば発泡樹脂板)を折板屋根の上に配置し、その上から、長尺状の押さえ板で平板材を押さえ付けるようにした、屋根面のフラット化構造が記載されている。そして、特許文献1の段落0011には、フラット化した屋根面の上に固定する物品として、屋上緑化用の緑化基盤材、太陽電池パネル、などが例として記載されている。
【0004】
また、特許文献2あるいは特許文献3などには、適宜の手段によってフラット化した折板屋根の上に、発泡樹脂成形品である緑化基盤材を設置し、その上に緑化資材を配置して、屋根面の緑化を図るようにした折板屋根緑化構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−144388号公報
【特許文献2】特開2006−274759号公報
【特許文献3】特開2008−045324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載される屋根面のフラット化構造は、屋根板の凸条の上面から突出している屋根板を固定するための固定具に邪魔されることなく、断面C型支持材や平板材を屋根面上に配置できる利点がある。しかし、フラット化された屋根面の上に、屋上緑化用の緑化基盤材や太陽電池パネルなどを設置しようとする場合、それを固定するための冶具(例えば、長ボルトや高ナット等)を屋根面に取り付けることが必要となるが、フラット化された屋根面上で、そのような固定用冶具の取り付けに利用できる部分は、断面C型支持材の平坦面となった背の部分のみであり、その部分に固定用冶具を安定した状態で取り付けるのは困難であった。また、一度取り付けた固定用冶具を、配置する物品の大きさに合わせて軒先方向で位置調節することも困難であり、固定用冶具の取り付けに慎重な作業が求められていた。
【0007】
さらに、屋根板の凸条の上面に屋根板を固定するための固定具が突出していない構造の場合には、断面C型支持材をその開口側を屋根板側として屋根面上に固定する作業も容易ではなかった。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、屋根面のフラット化構造において、平板材を支持するための断面C型支持材の屋根面への取り付けを容易化できる屋根面のフラット化構造を提供すること、また、フラット化した屋根面上に緑化基盤材のような他の部品を配置するときに用いる固定用冶具の取り付けを容易化できかつ取り付け後に取り付け位置の調整も可能とした屋根面のフラット化構造を提供すること、を課題とする。さらに、そのような屋根面のフラット化構造を用いて施工した屋根緑化構造を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による屋根面のフラット化構造は、互いに平行な多数の凸条を有する屋根板を前記凸条が屋根勾配方向となるようにして配置してなる屋根における屋根面のフラット化構造であって、前記屋根面には、断面C型支持材が、その背の部分を屋根板側として、長手方向を前記凸条に直交する姿勢として、かつ屋根勾配方向に多段に固定されており、屋根勾配方向に隣接して位置する前記断面C型支持材と断面C型支持材の間には該断面C型支持材の高さとほぼ同じ厚さの平板材が屋根板の上に配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記の屋根面のフラット化構造では、屋根面に固定しようとする断面C型支持材は、その平坦面である背の部分が屋根板の凸条に接するようにして位置しており、屋根板に対して断面C型支持材を固定する作業はきわめて容易となる。また、そのようにして屋根面上に固定した屋根勾配方向に位置する上下の断面C型支持材の間に、安定した状態で平板材を位置決めしかつ配置することができる。なお、断面C型支持材には、例えば断面C型鋼あるいは断面C型の樹脂押出成形品のような既存の材料をそのまま用いることができるが、強度や作業性の点から、断面C型鋼は好ましい。
【0011】
本発明による屋根面のフラット化構造の一態様において、前記断面C型支持材として長さの長いものを用い、それがフラット化しようとする屋根面の軒先方向全長にわたって固定されていてもよい。また、他の態様として、断面C型支持材として比較して長さの短いものを用い、その複数個を屋根の軒先方向に間隔を置いて屋根面に固定するようにしてもよい。この態様では、断面C型支持材を固定する作業が容易となると同時に、材料費の節減を図ることもできる。
【0012】
本発明による屋根面のフラット化構造において、前記断面C型支持材は任意の方法で屋根板の凸条の上に固定することができる。屋根板の凸条部分に屋根板固定用ボルト等が飛び出ている場合には、それを利用してもよい。しかし、本発明による屋根面のフラット化構造の好ましい態様では、前記屋根面の凸条と前記断面C型支持材の背の部分との間にはパッキンを備えた押さえ金具が配置され、前記断面C型支持材と前記押さえ金具と前記凸条とが屋根の構造材に対して一体にビス止めされる。
【0013】
この態様では、押さえ金具を用い、かつ全体を一体にビス止めすることにより、屋根面に対する断面C型支持材の固定状態は、一層安定かつ確実なものとなることに加え、押さえ金具としてパッキンを備えた押さえ金具を用いることにより、ビス止めした部分から屋根板の裏面側に雨水が入り込むのを確実に阻止することができる。
【0014】
本発明による屋根面のフラット化構造の一態様では、前記断面C型支持材として、その背の部分に長穴が形成されているものを用いる。この態様では、断面C型支持材の固定作業時に、断面C型支持材を、その背の部分に形成した長穴に沿って移動させることで、固定位置の微調整を行うことができる。また、前記したように、屋根板の凸条部に飛び出ている屋根板固定用ボルト等を断面C型支持材の固定に利用する場合には、前記長穴内に屋根板固定用ボルト等を収容することができる。そのために、背の部分に長穴が形成されている断面C型支持材を用いることは、本発明において、特に好適となる。
【0015】
本発明による屋根面のフラット化構造において、平板材に使用する材料は任意であり特に制限はない。屋根面からの輻射熱を防止すること等を目的とする場合には、平板材として、好ましくは発泡樹脂板が用いられる。この態様は、屋上緑化を行うときの態様としても好適である。他に、非発泡樹脂製、発泡モルタル製や木材製のような材料を用いることもできる。フラット化した屋根面の上に何らかの物品を固定する場合には、平板材は、当該物品からの上載荷重に耐えるだけの強度を備える必要がある。固定する物品としては、屋上緑化用の緑化基盤材、太陽電池パネル、などが例として挙げられる。
【0016】
本発明による屋根面のフラット化構造の一態様において、屋根面に固定された前記断面C型支持材の上面側である開口部には、一例としてボルトとナット等を備える固定用冶具が着脱自在に備えられる。この態様では、前記固定用冶具を利用して、適宜の部材あるいは物品をフラット化した屋根面上に、容易かつ安定的に固定することができる。固定用冶具の取り付けは、断面C型支持材の上面側である開口部を利用して行っており、着脱作業が容易であるとともに、取り付け状態もきわめて安定したものとなる。
【0017】
前記固定用冶具を備えた態様の屋根面のフラット化構造の一例では、前記断面C型支持材と断面C型支持材の間に配置した前記平板材を押さえるための押さえ板が、前記固定用冶具を利用して固定される。この態様では、前記押さえ板でもって平板材を屋根板に押さえ付けることができるので、フラット化した屋根面に緑化基盤材や太陽電池パネルのような大型の部品を平板材の上に配置しない場合の態様として、特に好適となる。もちろん、押さえ板を取り付け、さらにその上に、緑化基盤材や太陽電池パネルのような大型の部品を配置してもよい。
【0018】
本発明による屋根面のフラット化構造において、配置された平板材の上に、平板材を保護するための適宜の保護層を形成してもよい。保護層には、亜鉛メッキ鋼板のような耐食性・耐候性に優れた金属板、塩化ビニル系樹脂シートやアスファルト系シートのような防水性シート、ポリウレタン系樹脂やアクリル系樹脂からなる被覆材、あるいはそれらを積層したものが挙げられる。屋根面のフラット化構造の使用目的や配置する平板材の材料等を考慮して適宜選択すればよい。また、保護層は、平板材を屋根板に取り付けた後に、平板材の上に積層固定するようにしてもよく、予め保護層を一体に積層した平板材を用い、平板材の留め付けと保護層の積層とが同時に行われるようにしてもよい。
【0019】
本出願は、さらに、上記した屋根面のフラット化構造、特に前記固定用冶具を備えた屋根面のフラット化構造を利用した屋根緑化構造であって、フラット化した屋根面の上に、前記固定用冶具を利用して屋根面緑化のための植裁基盤材が固定されていることを特徴とする屋根緑化構造をも開示する。なお、ここで用いる植裁基盤材は、前記した特開2006−274759号公報、特開2008−045324号公報などに記載される従来知られた植裁基盤材をそのまま用いることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、屋根面のフラット化構造において、フラット化のために屋根面上に配置する平板材を支持するための断面C型支持材を、屋根面へ容易に取り付けることができる。また、フラット化した屋根面上に緑化基盤材のような他の部品を配置するときに用いる固定用冶具の取り付けも容易化することができ、かつ取り付け後に、その取り付け位置も容易に調整することができる。そのことから、施工が容易でかつ構造的にも高い安定性を持つ屋根面のフラット化構造が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】多数の凸条を有する屋根面に複数個の断面C型支持材を取り付けた状態を示す斜視図。
【図2】屋根面へ取り付けた断面C型支持材とそこに取り付けた固定用冶具を拡大して示す斜視図。
【図3】図3(a)は屋根面へ取り付けた断面C型支持材の軒先方向での断面図であり、図3(b)はその側面図。
【図4】本発明による屋根面のフラット化構造の一例を示す平面図。
【図5】図4に示す屋根面のフラット化構造を軒先側から見た図。
【図6】図4に示す屋根面のフラット化構造を側方から見た図。
【図7】緑化基盤材の一例を説明する図。
【図8】図4に示す屋根面のフラット化構造の上に緑化基盤材を配置した状態を示す平面図。
【図9】軒先方向で用いる端部固定金具とその固定状態を説明する図であり、図9(a)は軒先方向から見て示す図、図9(b)は側方から見て示す図。
【図10】軒先に直交する方向で用いる端部固定金具とその固定状態を説明する図であり、図10(a)は側方から見て示す図、図10(b)は軒先方向から見て示す図。
【図11】本発明による屋根緑化構造の一例を説明する図であって、それを軒先方向から見て示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態をその施工手順とともに説明する。
最初に、屋根板上に断面C型支持材を取り付ける。図1に示すように、本発明において、屋根板1は互いに平行な多数の凸条2を有する屋根板であり、所要枚数の前記屋根板1が、前記凸条2を屋根勾配方向Xとなるようにして、適宜の構造材3に対して固定されることで屋根4を構築している。そして、前記凸条2の上に、断面C型支持材10が、その長手方向を屋根4の軒先方向Yと平行にして、すなわち、長手方向を前記凸条2に直交する姿勢として、かつ屋根勾配方向Xに所定の間隔(後記する平板材20の短手方向の幅)を置いて多段に固定されている。なお、構造材3には図示しない適宜の支柱が立て込まれる。この例で構造材3は木材であり、図2に示すように、腐食防止ために金属材3aで三方が覆われている。
【0023】
図2に、1つの断面C型支持材10の固定状態を示す。この例で、断面C型支持材10は、平行する2本の前記凸条2,2間を跨ぐことができる程度の長さであり、背板11と、背板11の両側から垂直に立ち上がる左右の側板12,12と、左右の側板12,12の上端から内側斜め下方に向けて延びる止め板13,13とからなる。背板11には、長手方向に延びる適数(図示のものでは2つ)の長穴14が形成されている。図1に示したように、断面C型支持材10の複数個が、軒先方向Yに一定の間隔を置いて、かつその背の部分、すなわち背板11を屋根板1側として、屋根板1に固定される。断面C型支持材10の長手方向の長さは特に制限はなく、平板材20を安定した状態で支持できることを条件に任意である。図示しないが、より長さの長いものを軒先方向Yに間隔のない状態で固定するようにしてもよい。
【0024】
図3を参照して、屋根4に対する断面C型支持材10を固定する一方法を説明する。最初に、押え金具31を止水パッキン32を間に挟んで、隣接する2つの凸条2、2の上に被せる。その上に、前記した断面C型支持材10を背板11が凸条2側となるようにして置く。その状態で、固定用ビス30を、前記長穴14、押え金具31、止水パッキン32、屋根板1の凸条2を通過するようにして、構造材3にまでねじ込み、全体を一体に固定する。その際に、断面C型支持材10を長穴14に沿って軒先方向Yに移動させることで、取り付け位置の微調整を行うことができる。図示しないが、折板屋根のように、屋根板を固定するときのボルト等が凸条から突出している形態の屋根の場合には、その突出しているボルト等を長穴14内に通過させて、ナットで締め付けることにより、断面C型支持材10を屋根板に固定することもできる。
【0025】
次に、必要とされる断面C型支持材10に対して、固定用冶具35を取り付ける。この例で、固定用冶具35は、基本的に、ボルト36とナット37とからなり、ボルト36が垂直姿勢に固定される。ボルト36の固定態様は任意であるが、この例では、断面C型支持材10内に入り込む大きさの下押え板38と、断面C型支持材10の左右の側板12,12を跨ぐことのできる大きさおよび形状の上押え板39とを用いている。
【0026】
前記ボルト36に適宜のワッシャと下押え板38を取り付け、下押え板38を断面C型支持材10内に入り込ませた状態で、ボルト36を立てた姿勢で位置させる。その状態で、上押え板39とワッシャとをボルト36に取り付け、ナット37をボルト36にねじ込み、締め付ける。それにより、固定用冶具35は断面C型支持材10に対して垂直姿勢で固定される。
【0027】
本発明による屋根面のフラット化構造では、断面C型支持材10をその解放した側を上面として屋根板1に固定しているために、上記の固定態様を採用することが可能となり、容易にかつしっかりとした状態で固定用冶具35を屋根面に固定することができる。ナット37を緩めて固定用冶具35の長手方向に移動させ、再度締め付けることで、固定用冶具35の断面C型支持材10の長手方向での固定位置を適宜調節することもできる。なお、前記ボルト36の長さは、その使用目的に応じで、適宜の長さのものが選択して用いられる。
【0028】
上記のようにして、図1に示すように、屋根板1の所定位置に適数の断面C型支持材10を固定した後に、所要枚数の平板材20を屋根面に配置する。この例において、平板材20は、長方形をなす発泡樹脂板であり、その厚さは断面C型支持材10の高さにほぼ等しく、その短手方向の幅は、前記したように、屋根勾配方向Xに間隔を置いて固定されている2つの断面C型支持材10、10間の距離にほぼ等しい。なお、発泡樹脂板の材料としては、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリ塩化ビニル、等が例として挙げられる。
【0029】
図4は、屋根勾配方向Xに間隔を置いて固定されている断面C型支持材10・・の間に、平板材20を配置した状態を示す平面図、すなわち、本発明による屋根面のフラット化構造の一例を示す平面図であり、図5はそれを軒先側から見て示す図であり、図6は側方からみて示す図である。なお、これらの図では、図1〜図3において説明した部材については、同じ符号を付し、説明は省略する。
【0030】
図示されるように、上記のようにして、適数の平板材20を、凸条2を多数備えた屋根板1の上に配置することにより、屋根面は全体としてフラット化される。なお、図4において、15は、配置した平板材20の姿勢を安定化させるために必要に応じて取り付けられる平板状の押さえ板であり、該押さえ板15は、前記した固定用冶具35を利用して、断面C型支持材10側に固定されている。このようにしてフラット化された屋根面には、任意の部品を容易に載置することができ、載置した各部品は、断面C型支持材10に固定した固定用冶具35を用いて、安定した姿勢で屋根4上に確実に固定することができる。図示の例では、平板材20を配置した状態で、軒先方向Yに取り付けられている断面C型支持材10、10間には、平板材20のない空間領域S(図4参照)が形成される。必要な場合には、この空間領域を同種の平板材によって埋め込むようにしてもよい。また、断面C型支持材10に対応する部分を切り欠いた平板材を用いることによって、このような空間領域Sが形成されるのを回避することもできる。
【0031】
なお、平板材20の前記押さえ板15による屋根面への固定は、必要な安定性が確保される場合には、特に行わなくてもよい。他の固定手段として、接着剤による固定や、平板材20と断面C型支持材10の間の摩擦力による固定も採用することができる。
【0032】
次に、載置する部品が植裁基盤材である場合を例として、本発明による屋根緑化構造の一例を説明する。図7は、植裁基盤材40の一例を示す。この植裁基盤材40は、発泡性樹脂粒子を型内発泡成形して得られた一体成形品であり、全体として平面視で正方形をなしている。植裁基盤材40は保水用空間41とそこから立ち上がる側壁42を有し、4隅部には前記固定用冶具35のボルト36が通過できる切り欠き43が形成されている。また、側壁42には隣接する植裁基盤材40をクリップ等で止めるためのクリップ挿入口44が形成されている。
【0033】
図8は、平面材20を配置することによってフラット化された屋根面に、植栽基盤材40を取り付けた状態を平面視で示している。互いに隣接する植栽基盤材40・・は、前記した固定用冶具35を利用してその角部が一体となるようにして固定される。また、図9および図10に示し、また後に説明するように、植栽基盤材40群の軒先方向の端部と軒先に直交する方向の端部は、それぞれ端部固定用金具50、60により固定されている。
【0034】
なお、本発明において、フラット化された屋根4の上に配置する物品の寸法があらかじめ決まっている場合には、それに応じて、前記断面C型支持材10の屋根板1に対する固定位置を設定する。例えば、物品が植栽基盤材40の場合、その屋根勾配方向Xの長さaを1ピッチとして、断面C型支持材10を凸条2の屋根勾配方向Xに必要数だけ固定する。また、軒先方向Yには、当該植栽基盤材40の軒先方向Yの長さbを1ピッチとして、必要個数の断面C型支持材10を固定する。凸条2は屋根勾配方向Xに伸びているので、屋根勾配方向Xでは任意の位置に断面C型支持材10を固定することができる。ただし、断面C型支持材10の固定には、図2に示した構造材3を利用することが望ましいので、屋根4を施工するときに、断面C型支持材10の前記屋根勾配方向Xの固定位置に対応するようにして、構造材3を配置することが推奨される。軒先方向Yでは所定の間隔をおいて凸条2が位置しており、凸条2のピッチの大小によって、断面C型支持材10の固定位置がある程度の制約を受ける。しかし、断面C型支持材10は背板11に取り付け時に軒先方向Yとなる長穴14を有しており、その固定位置を植栽基盤材40の軒先方向Yの長さbに合わせて微調整することができるので、植栽基盤材40の固定に支障が生じることはない。
【0035】
図9は、軒先方向で用いる第1の端部固定金具50とその固定状態を示している。第1の端部固定金具50は、小幅なL型止め金具51と、フラット化された屋根4の軒先方向のほぼ全長にわたる長さのL型見切り金具52とで構成される(図6も参照)。施工に当たって、前記L型見切り金具52を、軒先の先端部またはその近傍に、軒先方向Yと平行な姿勢で凸条2の上に載せ、凸条2に対してボルトナット53により固定する。次に、L型見切り金具52の取り付け姿勢を安定させるために、所定の間隔をおいて、前記小幅なL型止め金具51をL型見切り金具52の内側に、前記ボルトナット53およびビス54を用いて固定する。なお、L型見切り金具52の側壁高さは、前記のようにして固定した植栽基盤材40の上縁よりもわずかに突出するだけの高さとされる。
【0036】
図10は、軒先に直交する方向で用いる第2の端部固定金具60とその固定状態を示している。第2の端部固定金具60も、小幅なL型止め金具61と、フラット化された屋根4の屋根勾配方向Xのほぼ全長にわたる長さのL型見切り金具62とで構成される(図5も参照)。施工に当たっては、屋根板2の軒先側から見てもっとも外側に位置する凸条2に沿うようにして、前記L型見切り金具62を配置する。そのようにして配置したL型見切り金具62を、前記凸条2における前記した断面C型支持材10を固定することを予定しない領域において、止水パッキンや止めビスを利用して、固定する。次に、図2に基づき説明したようにして、屋根勾配方向Xに所定数の断面C型支持材10を固定する。次に、L型見切り金具62の取り付け姿勢を安定させるために、L型見切り金具62の内側に、所要数の前記小幅なL型止め金具61を、固定用冶具35およびビス64を用いて固定する。なお、L型見切り金具62の側壁高さは、取り付けた状態で、前記したL型見切り金具52の側壁上縁と同じ高さとなるようにされる。
【0037】
このようにして第1の端部固定金具50と第2の端部固定金具60とを周囲に取り付けることにより、平板材20およびその上に載置された物品、例えば植栽基盤材40の屋根4上での取り付け状態を安定させることができる。
【0038】
図11は、平面材20を配置することによってフラット化された屋根面に取り付けた植栽基盤材40の上に、植栽マット70等を取り付けて、屋根面緑化構造とした状態を軒先方向から見て示している。このようにして構築した屋根面緑化構造の上から散水すると、水は植裁マット70等を透過して緑化基盤材40の保水用空間41に溜まり、その水は植裁マット70等に植生した植物Pの生育に利用される。また、雨水を含む余分な水は、緑化基盤材40をオーバーフローして流下する。
【0039】
図示しないが、発泡樹脂製板である平板材20と緑化基盤材40との間に根止めシートを敷設して、植物の根により発泡樹脂製板や屋根板1が損傷するのを防止するようにしてもよい。また、固定された緑化基盤材40の上に土壌流出防止用の好ましくは根止め機能を備えた不織布を敷き、その上に従来知られた適宜の植裁マット70等を配置してもよい。さらに、各単位緑化基盤材40の中に植裁マット70等の下面に接する形のスポンジのように水分吸い上げ材を置くようにしてもよく、この場合、保水用空間41の底部に滞留する水を植裁マット70等に向けて吸い上げることができる利点がある。
【符号の説明】
【0040】
1…屋根板、
2…屋根板の凸条、
3…構造材、
4…屋根、
10…断面C型支持材、
11…背板、
12…側板
13…止め板、
14…長穴、
15…平板状の押さえ板、
20…平板材(長方形をなす発泡樹脂板)、
30…固定用ビス、
31…押え金具、
32…止水パッキン、
35…固定用冶具、
36…ボルト、
37…ナット、
38…下押え板、
39…上押え板、
40…植裁基盤材、
41…保水用空間、
42…側壁、
43…4隅部の切り欠き、
50…第1の端部固定金具、
51…L型止め金具、
52…L型見切り金具、
60…第2の端部固定金具、
61…L型止め金具、
62…L型見切り金具、
70…植栽マット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な多数の凸条を有する屋根板を前記凸条が屋根勾配方向となるようにして配置してなる屋根における屋根面のフラット化構造であって、
前記屋根面には、断面C型支持材が、その背の部分を屋根板側として、長手方向を前記凸条に直交する姿勢として、かつ屋根勾配方向に多段に固定されており、
屋根勾配方向に隣接して位置する前記断面C型支持材と断面C型支持材の間には該断面C型支持材の高さとほぼ同じ厚さの平板材が屋根板の上に配置されていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根面のフラット化構造であって、屋根の軒先方向には、前記断面C型支持材の複数個が間隔を置いて屋根面に固定されていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の屋根面のフラット化構造であって、前記凸条と前記断面C型支持材の背の部分との間にはパッキンを備えた押さえ金具が配置されおり、前記断面C型支持材と前記押さえ金具と前記凸条とが屋根の構造材に対して一体にビス止めされていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の屋根面のフラット化構造であって、前記断面C型支持材の背の部分には長穴が形成されていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の屋根面のフラット化構造であって、前記平板材が発泡樹脂板であることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の屋根面のフラット化構造であって、屋根面に固定された前記断面C型支持材の上面側である開口部には、固定用冶具が着脱自在に備えられていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項7】
請求項6に記載の屋根面のフラット化構造であって、屋根面に配置された前記平板材を押さえるための押さえ板が前記固定用冶具を利用して固定されていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項8】
請求項6または7に記載の屋根面のフラット化構造を利用した屋根緑化構造であって、フラット化した屋根面の上には、前記固定用冶具を利用して屋根面緑化のための植裁基盤材が固定されていることを特徴とする屋根緑化構造。
【請求項1】
互いに平行な多数の凸条を有する屋根板を前記凸条が屋根勾配方向となるようにして配置してなる屋根における屋根面のフラット化構造であって、
前記屋根面には、断面C型支持材が、その背の部分を屋根板側として、長手方向を前記凸条に直交する姿勢として、かつ屋根勾配方向に多段に固定されており、
屋根勾配方向に隣接して位置する前記断面C型支持材と断面C型支持材の間には該断面C型支持材の高さとほぼ同じ厚さの平板材が屋根板の上に配置されていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項2】
請求項1に記載の屋根面のフラット化構造であって、屋根の軒先方向には、前記断面C型支持材の複数個が間隔を置いて屋根面に固定されていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の屋根面のフラット化構造であって、前記凸条と前記断面C型支持材の背の部分との間にはパッキンを備えた押さえ金具が配置されおり、前記断面C型支持材と前記押さえ金具と前記凸条とが屋根の構造材に対して一体にビス止めされていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の屋根面のフラット化構造であって、前記断面C型支持材の背の部分には長穴が形成されていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の屋根面のフラット化構造であって、前記平板材が発泡樹脂板であることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の屋根面のフラット化構造であって、屋根面に固定された前記断面C型支持材の上面側である開口部には、固定用冶具が着脱自在に備えられていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項7】
請求項6に記載の屋根面のフラット化構造であって、屋根面に配置された前記平板材を押さえるための押さえ板が前記固定用冶具を利用して固定されていることを特徴とする屋根面のフラット化構造。
【請求項8】
請求項6または7に記載の屋根面のフラット化構造を利用した屋根緑化構造であって、フラット化した屋根面の上には、前記固定用冶具を利用して屋根面緑化のための植裁基盤材が固定されていることを特徴とする屋根緑化構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−38337(P2011−38337A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187321(P2009−187321)
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月12日(2009.8.12)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]