説明

展示キャビネット内のエアの処理方法、および、この方法を実施するための装置

壁、床および天井構造によっていくらか内部空間が取り囲まれ物体の保管および/または展示に用いられる展示キャビネット内のエアの処理方法であって、キャビネットの内部空間(1)に接続されたエア送出システムからの強制的な流入により外部のエアに比べわずかに高い圧力に維持されるキャビネット内のエアの処理方法において、気流は、キャビネット内に入る前に適当な粉塵またはガス分離手段を通過し、また、調節および/または制御された湿度を有する。分離手段の通過後、気流は、適切な手段により除菌された液体(7)を収容しているコンテナ(2)内を通過する。この手段および方法において、完全に除菌された雰囲気が展示キャビネットの内部空間に生成される。この方法を実施するための展示キャビネットは対応する構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、壁、床および天井構造によっていくらか内部空間が取り囲まれ物体の保管および/または展示に用いられるキャビネット内のエアの処理方法であって、キャビネットの内部空間に接続されたエア送出システムからのエアの強制的な流入により外部のエアに比べわずかに高い圧力に維持されるキャビネット内のエアの処理方法において、気流は、キャビネット内に入る前に適当な粉塵またはガス分離(濾過、filtration)手段を通過し、また、調節および/または制御された湿度を有する、ようにしたエアの処理方法、並びに、この方法を実施するための対応する展示用キャビネットに関する。
【0002】
このような方法および対応する展示用キャビネットは、既に知られている。DE−PS3805212C2は、物体の保管および/または展示に用いられるキャビネットを開示しており、このキャビネットにおいて、展示される物体を保護するため、キャビネット内で物体を取り囲むエアは、粉塵を除去されるだけではなく、所望の湿度範囲内に保たれるようになっている。同様に、展示される物体を保護するために必要とされるのであれば、中性ガス(a neutral gas)によって内部空間を埋めることも可能である。
【0003】
粉塵を除去されていること、湿度が制御されていること等に加え、展示用キャビネット内の所定の物体が菌(germs(微生物を含む))を除去された雰囲気を必要とする場合もあり得る。
【0004】
したがって、本発明の目的は、上述のタイプの方法であって、展示用キャビネット内を通過する気流が除菌されている方法を示すこと、並びに、除菌された雰囲気がキャビネット内部に生成されるよう、冒頭で述べたタイプの展示用キャビネットの装備を補足することである。
【0005】
より先に述べたタイプの方法および装置において、フィルトレーション後(濾過後、分離後)、液体(7)を収容しているコンテナ(2)内に気流を通すとともに、当該コンテナ内(2)に、エアを完全に除菌し得る触媒(8)を設けておくことにより、これらの目的は達成される。
【0006】
気密なキャビネットでさえもガス等を完全には遮断することはできないので、キャビネットが開放されている場合には、外部からのエアが内部空間に入り込み得る。周囲のエアに比較してわずかに高い圧力に維持することによって、内部から外部に向けたエアの流れを生成することができる。この結果、清浄で、冷却され、かつ除菌されたエアが内部空間に連続的に供給されるようになる。これにより、展示用キャビネットの内部空間全体のエアが、その大きさにもよるが、数日間の期間に渡って完全に更新される。この方法によれば、完全に除菌された雰囲気が所定時間後に得られる。
【0007】
DE−PS19826930C2は、室温調節された展示用キャビネットを開示している。このキャビネットにおいては、冷却設備に接続された平らな熱交換器がキャビネットの内部空間に配置されており、収集および加湿トレイが熱交換器の下方に配置されている。記載からすれば、ファンを用いて、エアの制御された流れが、直列に連結された多数のキャビネット内を通過させられるようになっている、ともとれる。対照的に、本発明において、制御された気流は、液体を収容したコンテナ内をまず通過し、次に、冷却器へ進む。
【0008】
展示用キャビネットの室温調節は、同様に、WO01/84986A1の目的でもある。WO01/84986A1においては、展示用キャビネット内部のエアは、除湿および加熱/冷却装置を通過して前進させられる。前記装置は吸湿性の媒体、例えばシリカゲルを含んでいる。吸湿性の媒体は、水分を過剰に吸収した場合に、直ちに取り替えられなければならない。
【0009】
DE−OS19903022A1には、エアから菌を取り除くエア浄化システムが記載されている。このエア浄化システムにおいて、エアは静電気学上の装置により処理される。このような装置は、除菌のため加熱または冷却されたエアに曝される室温調節ユニットのエアダクト内部で用いられる等、多様な方法で用いられることを意図されている。この展示用キャビネットの場合において、どのように除菌が行われるかについての記載はない。対照的に、本発明おいて、除菌済みエアの湿度は、冷却装置との組み合わせにより調節および/または制御される。
【0010】
物質の性質を改良するための添加物(不可物、混和剤、additive)を含んだ液体との協同により、本発明による触媒(catalyser)は、液体に接触するようにしてもたらされるエアから菌を分離する。
【0011】
本発明による方法および装置に関する他の利点は、特許請求の範囲の従属項から明らかになる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、図示された2つの例としての実施の形態に言及して、より詳細に説明される。
【0013】
図1に示すコンテナ2は、カバー10によって塞がれており、液体7、例えば蒸留された水を含んでいる(貯留している)。例えば適切なフィルタを通過させ、周囲のエアから粉塵(dust)を除去された気流5は、液体7上方の上部空間内を通過させられる(進ませられる)。液体7上にてエアは湿気を取り込み、このような処理をなされたエアは冷却装置4を通過させられる。冷却装置4内において、このエアの湿度は調節され、所定の値をとるようになされる。この方法で処理されたエア6は、次に、ポンプ(図示せず)により展示用キャビネットの内部空間に送り込まれる。ポンプはキャビネットの内部空間1の圧力をわずかな過圧(a slight excess pressure)に保つよう機能する。ポンプは、キャビネット外に漏れ出すことにより外部に流出するエアを十分に補う量を送り込むようになっている。冷却装置4およびポンプ(図示せず)は制御ユニット3によって制御される。制御ユニット3は、展示用キャビネットの内部空間1に配置されたエア湿度およびエア圧力用のセンサ(図示せず)に接続されている。これにより、ポンプは特定のエア圧力に応じて、冷却装置4は特定のエア湿度に応じて対応して制御される。コンテナ2内における液体7の充填レベル(the filling level)を監視する監視装置(図示せず)が、同様に制御ユニット3に接続されていてもよい。監視装置は、聴覚および/または視覚によって感知できる信号によって、コンテナ2内に蓄えられている液体が補充されるべき場合を、示すようにしてもよい。
【0014】
液体7内であるコンテナ2の底部に、平らな網(格子状部材を含む、a flat grid)の形式をとった、触媒8が配置されている。触媒8は、2つの保護用格子状部材9の各々の表面間に保持されている。触媒は、常時液体7に浸されているようになされている。
【0015】
図2は、粉塵を取り除かれた気流5がスポンジ11内を通過させられるようになっている第2の実施の形態を示している。スポンジ11は、触媒8である網によって囲まれている。加湿されたエアがスポンジ11から流出し、液体7の表面へと上昇する(浮かび上がる)。その後、清浄化され加湿されたエア6に対するさらなる処理は、既述の方法で行われる。触媒8が少なくとも十分に液体7の表面下に位置するよう、スポンジは液体7に浸されていなければならない。
【0016】
触媒は、ワイヤ状、シート状、小片(chips)または粉末状等、十分に大きな作用表面領域を確保することができるいずれの形態をも取り得る。触媒として用いられる合金は、10から80重量%のコバルト、5から50重量%のニッケル、5から20重量%のタングステンおよび5から25重量%のクロムからなっており、酸素を含む雰囲気中において250から1250℃の範囲の温度で0.05から3時間ほど熱処理を施されている。このような触媒は長期の期間に渡って活性のままとなる。
【0017】
触媒8と液体7としての水との協同により、展示用キャビネットの内部空間1のエアは既に菌を除去されている。特別の場合において、キャビネット内に展示される物体が許容するまたは必要とするならば、例えば、液体7は同様に所定量の過酸化水素を含むようにしてもよい。
【0018】
加湿され除菌されたエアは展示用キャビネットの内部空間内に送り込まれる。これにより、いくらかの時間の経過後、内部空間1内のエアは漏れ出しによって完全に入れ替えられていくので、展示される物体をキャビネット内で取り囲むエアは、同様に、菌が除かれたものとなる。その後、エアは連続的に除菌された状態に維持され得る。
【0019】
図1および図2に示された2つの実施の形態についての記載においては、除菌済みのエアが冷却装置4に送り込まれ、その後、展示用キャビネットの内部空間1に送り込まれる、ということをこれまで想定してきた。しかしながら、まずエアを冷却装置4に送り込み、その後に除菌処理を施すだけとしてもよい。展示用キャビネットの周囲の温度によっては、冷却装置4は、エアを加熱または冷却することにより、キャビネットの内部空間内エアの湿度および/または温度を調節することに機能し得る。この点において、冷却装置が適切に設計されているならば、すなわち、技術水準にしたがい水との組み合わせにおいて特定の温度および/または特定の湿度が得られ得るならば、冷却装置4と、エアを殺菌するための(エアから菌を取り除くための)本発明による装置と、を組み合わせることも可能である。なぜなら、水は、エア湿度およびエア温度を調節することと、触媒との組み合わせにおける添加物によってエアを殺菌することと、の両方に役立つことができるからである。
【0020】
粉塵を除去されるよう処理されたエア5は、すべて展示用キャビネットの外部から送り込まれてくるようにしてもよい。しかしながら、このエアのいくらかが、キャビネットの内部空間1から送りこまれてくるようにしてもよい。これにより、内部空間1のエアの入れ替えは短時間で行われる。
【0021】
展示用キャビネットの内部空間1内の加湿並びにエア殺菌のための既述の装置は、キャビネット内に閉ざされたユニットとして別個に配置されるようにしてもよい。また一方、いくつかの展示用キャビネットがある場合には、内部空間1がエアダクトおよびセンサによって接続された共通の装置を設けるようにしてもよい。
【0022】
本発明は、内部に物体が展示のために並べられる展示用キャビネットと、物体を保存(保管)するためにのみ用いられるキャビネットと、の両方に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、平らな触媒を含む液体用のコンテナを通過する断面図である。
【図2】図2は、触媒に取り囲まれたスポンジを含む液体用のコンテナを通過する断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁、床および天井構造によっていくらか内部空間が取り囲まれ物体の保管および/または展示に用いられるキャビネット内のエアの処理方法であって、キャビネットの内部空間に接続されたエア送出システムからの強制的な流入により外部のエアに比べわずかに高い圧力に維持されるキャビネット内のエアの処理方法において、
気流は、キャビネット内に入る前に適当な粉塵またはガス分離手段を通過し、また、調節および/または制御された湿度を有し、
分離手段の通過後、流入エア(5)は、触媒(8)が設けられた液体(7)を収容しているコンテナ(2)内を通過し、触媒(8)によってエアは完全に除菌される
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
液体(7)は水からなる
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
液体(7)は添加物を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
触媒(8)は特定に合金のよって形成された金網からなる
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
金網は、マット状に形成され、少なくとも同じ大きさからなる2つの保護用格子状部材(9)間に保持されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
気流(5)は、コンテナ(2)内の液体(7)の表面上を通過させられる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
気流(5)は、液体(7)で湿らされ金網によって包まれたスポンジ(11)内を通過させられる
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
コンテナ(2)内を通過する気流(5)は二つの要素からなり、一つの要素は外部エアからなり、一つの要素は展示キャビネットの内部のエアからなる
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
除菌された気流(5)は、所定の温度および/または湿度を保つことに役立つ冷却/加熱装置(4)内を通過する
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
気流(5)は、所定の温度および/または湿度を保つことに役立つ冷却/加熱装置(4)内をまず通過し、次に、除菌される
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
冷却/加熱装置(4)は所定の温度および/または湿度に液体を用いて調節し、当該液体は触媒(8)の液体(7)と同一である
ことを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれか一項に記載の方法を実施するための展示キャビネットであって、
壁、床および天井構造によっていくらか展示キャビネットの内部空間が取り囲まれ、
キャビネットの内部空間に接続されたエア送出システムからのエアの強制的な流入により、外部のエアに比べキャビネット内はわずかに高い圧力に維持され、
エアは、キャビネット内に入る前に適当な粉塵またはガス分離手段を通過し、また、調節および/または制御された湿度を有するようになされ、
分離手段の通過後、気流(5)は触媒(8)が設けられた液体(7)を収容しているコンテナ(2)内を通過し、その後冷却装置を通過させられるエアは、この触媒(8)によって、完全に除菌されるようになっている
ことを特徴とする展示キャビネット。
【請求項13】
液体(7)は水からなり添加物を含んでいる
ことを特徴とする請求項1に記載の展示キャビネット。
【請求項14】
液体(7)は所定量の過酸化水素を含んでいる
ことを特徴とする請求項12または13に記載の展示キャビネット。
【請求項15】
触媒(8)は特定の合金によって形成された金網からなる
ことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか一項に記載の展示キャビネット。
【請求項16】
金網は、マット状に形成され、少なくとも同じ大きさからなる2つの保護用格子状部材(9)間に保持されている
ことを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載の展示キャビネット。
【請求項17】
気流(5)は、金網によって包まれたスポンジ(11)内を通過させられるようになっている
ことを特徴とする請求項12乃至15のいずれか一項に記載の展示キャビネット。
【請求項18】
コンテナ(2)内を通過する気流(5)は二つの要素からなり、一つの要素は外部エアからなり、一つの要素は展示キャビネットの内部のエアからなる
ことを特徴とする請求項12乃至17のいずれか一項に記載の展示キャビネット。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524058(P2007−524058A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508220(P2006−508220)
【出願日】平成16年5月28日(2004.5.28)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005778
【国際公開番号】WO2004/106816
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(502210404)グラスバウ、ハーン、ゲゼルシャフト、ミット、ベシュレンクテル、ハフツング、ウント、コンパニー、コマンディトゲゼルシャフト (5)
【氏名又は名称原語表記】GLASBAU HAHN GMBH+CO.KG
【Fターム(参考)】