説明

展示用不織布

【課題】本発明の課題は、印刷適性が良好で、且つ、柔らかい風合いを持ち、他の不織布や織布へ貼り付けて使用可能な展示用不織布を提供することである。
【解決手段】木材パルプと捲縮型ポリエステル繊維等の木材パルプ以外の有機繊維とからなる原布シートに、水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物を付与してなる展示用不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展示用不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
文字や絵を描いた不織布または印刷した不織布を、毛羽立ちの多い織布や不織布を貼ったパネルに貼り付け、展示や教育現場での教材などに使われることがある。糊や粘着テープを用いないで貼り付けが可能なため、文字や絵、絵を切り取った絵人形を容易に貼ったり外したりすることでき、人の目を引くことができる。また、不織布独特の柔らかな風合いは、特に、子供向けの劇、歌あそび、ゲーム等に適しており、教育現場で人気を得ている。
【0003】
このように、展示や教育現場で使用される不織布(以下、「展示用不織布」という)には、文字や絵を印刷する印刷適性と、パネルへの貼り付き性が求められる。不織布をパネルに貼り付けるためには、不織布の表面にある程度の毛羽を持った状態が必要である。乾式法で製造された乾式不織布は、長い繊維を使えるため、毛羽が立ちやすいが、一般に低密度で、空隙率が高いために、紙と比較した場合、オフセット印刷におけるインキ着肉性が悪く、印刷仕上がりが良くないという問題がある。また、裏移りの問題から両面印刷適性を持たせることが難しく、さらに、裏抜けもあり、視覚的な品質に問題を残すものであった。
【0004】
インキ着肉性を良くする方法として、ポリオレフィン系スパンボンデッド不織布に無機顔料とバインダーを塗工した印刷用不織布が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、ポリオレフィン系スパンボンデッド不織布は、耐溶剤性が低いために、インキの溶剤によってカールや凸凹が発生する。また、低密度であるために、裏移りが起こるといった問題がある。これらの問題を改善するには、顔料塗工に先立ってバリア層を設けなければならず、工程数が多くなるという製造上の問題、また、布風の柔らかな風合いが損なわれる可能性があった。
【0005】
インキ着肉を改善する別の方法として、湿式抄紙法にて抄紙した原布シートに、撥水剤と水分散重合物を含浸する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかし、この方法においても、裏移りや裏抜けといった問題は解決せず、印刷の仕上がりとしては満足できるものではなかった。
【0006】
また、湿式抄紙法にて抄紙した原布シートに、水分散重合物と顔料とを付与する方法が開示されている(例えば、特許文献3参照)。しかし、この方法では、表面が平滑になり、展示用としてパネルに貼り付けるのが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−132897号公報
【特許文献2】特開2001−159090号公報
【特許文献3】特開2006−219781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、印刷適性が良好で、且つ、柔らかい風合いを持ち、他の不織布や織布へ貼り付けて使用可能な展示用不織布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために鋭意研究を行った結果、以下の本発明を見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、木材パルプと木材パルプ以外の有機繊維とを少なくとも含有してなる湿式抄紙法にて抄紙した原布シートに、水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物の付与加工を施した不織布であり、且つ、該不織布を折った背に沿って5cmの区間における毛羽本数が表裏ともに5〜65本であることを特徴とする展示用不織布に関するものである。
【0011】
本発明において、木材パルプ/有機繊維の質量比が10/90〜80/20である展示用不織布であることが好ましい。
【0012】
本発明において、有機繊維の一部または全量が捲縮型ポリエステル繊維であり、原布シート中に該捲縮型ポリエステル繊維を10〜80質量%含有する展示用不織布であることが好ましい。
【0013】
水分散重合物または水分散重合物と顔料の混合物の付与加工において、非接触型の乾燥機を用いて乾燥させてなる展示用不織布であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の展示用不織布は、木材パルプ及び木材パルプ以外の有機繊維を含有してなる湿式抄紙法にて抄紙した原布シートに、水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物を付与加工することで、布風の柔らかな風合いを失わず、インキ着肉性、両面印刷適性に優れた展示用不織布を得ることができる。また、不織布を折った背に沿って5cmの区間の毛羽本数が表裏ともに5〜65本とすることで、他の不織布や織布へ貼り付けて使用することができる。
【0015】
また、木材パルプ/有機繊維の質量比が10/90〜80/20であることで、布風の風合いを有し、且つ、印刷適性にも優れた展示用不織布を得ることができる。
【0016】
そして、捲縮型ポリエステル繊維を含有させることにより、さらに柔らかな風合いとなり、他の織布や不織布への貼り付き性に必要な毛羽立ちを表面に生じさせることができる。さらに、水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物を付与加工する際の乾燥工程において、非接触型の乾燥機を用いることで、この毛羽立ちは維持され易く、他の織布や不織布への貼り付き性をより優れたものにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の展示用不織布を詳細に説明する。本発明の展示用不織布は、文字や絵を描くまたは印刷したものを、切り取る等して、フランネル等の織布やフェルト、不織布を貼ったパネルに貼り付け、プレゼンテーションや子供向けのおはなし、歌あそび、ゲーム、劇等に使用するものである。
【0018】
本発明の展示用不織布において、原布シートは木材パルプと木材パルプ以外の有機繊維とを含有してなり、湿式抄紙法により製造される。本発明で用いられる木材パルプは、NBKP、LBKP、NBSP、LBSPその他いずれの種類のパルプでも限定はされないが、目詰め・強度の点からNBKPが好ましい。また、濾水度は、特に限定しないが100mlCSF以上が好ましい。濾水度が100mlCSF未満であると、湿式抄紙法による原布シート形成の段階で均一な地合いが得られ難い場合がある。
【0019】
本発明で用いられる木材パルプ以外の有機繊維は、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート及びこれらのコポリマー等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル、モダクリル等のアクリル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12等のポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ウレタン繊維等の合成繊維、トリアセテート繊維、ジアセテート繊維等の半合成繊維、ビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジックレーヨン、リヨセル等の再生セルロース系繊維、コラーゲン、アルギン酸、キチン質などを溶液にしたものを紡糸した再生繊維を用いることができる。これらの繊維を構成するポリマーは、ホモポリマー、変性ポリマー、ブレンド、共重合体などの形でも利用でき、また、複数の成分からなる複合繊維を用いてもよい。
【0020】
本発明において、木材パルプ以外の有機繊維として捲縮型のポリエステル繊維を一部または全量用いることが好ましい。捲縮型ポリエステル繊維としては、顕在捲縮、潜在捲縮のどちらでも用いることができる。さらに、T型、Y型、三角等の異形断面繊維を用いることもできる。該捲縮繊維の配合比率は、原布シート中の10〜80質量%が好ましく、20〜70質量%がより好ましく、30〜60質量%がさらに好ましい。配合比率が10質量%より小さいと、貼り付き性が悪くなる場合や、柔らかい風合いが得られ難くなる場合がある。一方、配合比率が80質量%より大きいと、表面強度が弱くなって印刷時に繊維がブランケットに脱落する場合や、シート内の空隙が大きくなって、裏移りや裏抜けが起こる場合がある。
【0021】
本発明には、さらに、木材パルプ以外の有機繊維として熱融着性バインダー繊維を用いることができる。熱融着性バインダー繊維を含有させて、熱融着性バインダー繊維の溶融温度以上に不織布の温度を上げる工程を製造工程に組み入れることで、熱寸法安定性や機械的強度が向上する。ただし、熱融着性バインダー繊維の配合量が多過ぎると、乾燥工程で面が平滑になりやすく、毛羽立ちが抑えられて、貼り付き性が悪くなることがある。熱融着性バインダー繊維の配合比率は、原布シート中の5〜50質量%が好ましく、10〜45質量%がより好ましく、15〜40質量%がさらに好ましい。
【0022】
熱融着性バインダー繊維としては、単繊維の他、芯鞘繊維(コアシェルタイプ)、並列繊維(サイドバイサイドタイプ)などの複合繊維が挙げられる。単繊維としては、ポリエチレン、未延伸ポリエステル等の繊維を挙げることができる。複合繊維は、不織布表面に皮膜を形成しにくいので、機械的強度を向上させることができる。熱融着性バインダー繊維としては、例えばポリプロピレン(芯)と、ポリエチレン(鞘)の組み合わせ、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせが挙げられる。また、ポリエチレン等の低融点樹脂のみで構成される単繊維(全融タイプ)やポリビニルアルコール系のような熱水可溶性バインダーは、乾燥工程で皮膜を形成しやすく、貼り付き性が悪くなることがあるが、特性を阻害しない範囲であれば使用することができる。
【0023】
これらの有機繊維は、木材パルプと混合して使用する。有機繊維は繊度が0.1〜6.0デシテックスが好ましく、より好ましくは0.6〜3.3デシテックスである。繊度が0.1デシテックスより細いと、抄紙性が悪くなって地合いが悪くなる傾向がある。一方、6.0デシテックスより太いと、平滑性が悪くなり、インキ着肉性が悪くなる傾向がある。繊維長は2〜20mmが好ましく、より好ましくは3〜10mmである。繊維長が2mm未満となると湿式抄紙法でワイヤーから繊維が抜けやすく、歩留りが低下する場合がある。一方、20mmを超えると、スクリーンでの詰まり等が発生することがある。
【0024】
また、本発明に用いられる木材パルプ以外の有機繊維としては、木綿パルプ、ワラパルプ、竹パルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、麻パルプなども挙げられる。
【0025】
原布シートを形成する繊維として、木材パルプ/有機繊維が質量比で10/90〜80/20の割合であることが好ましく、20/80〜70/30であることがより好ましく、30/70〜60/40であることがさらに好ましい。木材パルプは、主に目詰め効果によるインキ着肉性の向上、水素結合を利用した原布シートの強度向上といった効果を発現する。また、木材パルプ以外の有機繊維は、布風の風合いを発現させる。上記質量比において、木材パルプと有機繊維を混合することで、布風の風合いを持ったまま印刷適性の優れた展示用不織布を得ることができる。
【0026】
本発明における原布シートの製造方法としては、均一な地合いが得られる湿式抄紙法を使用する。湿式抄紙法は、まず、木材パルプ以外の有機繊維を単独または組み合わせて木材パルプと混合して水に分散させてスラリーを調製する。スラリーは長網、円網または傾斜ワイヤー式抄紙機を用いて抄紙される。湿紙の乾燥方式は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されず、ヤンキードライヤー、シリンダードライヤー、エアドライヤー、赤外線ドライヤー、サクションドライヤー等の乾燥装置を用いることができる。
【0027】
抄紙の際に配合する薬品としては、湿紙状態での断紙対策として湿潤強度剤やヤンキードライヤーからの剥離を安定させるため、内添サイズ剤を使用してもよい。
【0028】
本発明の展示用不織布は、オフセット印刷を行う場合、印刷機械上においてインキ中の繊維の混入、ゴムブランケットへの繊維の付着等、不織布表面繊維の離脱による作業性の低下及び印刷仕上がり等品質に与える損害を防止する必要がある。また、印刷方式上から特にオフセット印刷は湿し水を使うこと、インキタックが大きいことから、印刷媒体に対する品質特性として面強度が必要である。そのため、本発明の原布シートには、水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物を塗布加工することにより、シート表面の繊維接着を強固にするとともにインキ着肉性を向上することができる。また、この水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物の塗布加工によって、インクジェットプリンターを用いた印刷、アクリル絵の具、ポスターカラー等による手描き着色等においても、鮮明、且つ裏移り・裏抜けの少ない状態で本発明の展示用不織布に絵や文字を入れることができる。
【0029】
本発明で用いられる水分散重合物は、アクリル酸エステル共重合体、エチレン酢ビポリマー、メチルメタアクリレートラテックス、スチレンブタジエンラテックス、アクリルニトリルブタジエンラテックス等が挙げられる。特に限定されないが、インキ着肉性や風合い等を考慮し、アクリル酸エステル共重合体等を使用することが好ましい。
【0030】
本発明において、水分散重合物を不織布に付与する場合、その付着量は、不織布全質量の10〜70質量%が好ましく、15〜65質量%がより好ましく、20〜60質量%がさらに好ましい。付着量が10質量%よりも低いと、シート表面の繊維接着性が低下して繊維の離脱の原因となることがあり、また、十分な不透明度改良効果が得られず、裏移り・裏抜けの原因となることがある。一方、70質量%を超えると、不織布独特の柔らかな風合いが損なわれることがある。
【0031】
また、インキ着肉性や不透明度、白色度を上げるために、顔料を水分散重合物と共に原布に付与してもよい。具体的には、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、サチンホワイト等が挙げられる。これら顔料の粒子径は、インキ着肉性や不透明度、白色度向上のためには平均粒径が50μm以下のものが好ましく、より好ましくは20μm以下である、顔料の平均粒径が50μmを超えると、水分散重合物と顔料の混合液中で顔料が沈降して塗布性が悪化し、均一な表面性が保たれないことがある。また、ここで言う「平均粒径」とは、レーザー回折/散乱式粒度分布測定器によって測定した値のことである。
【0032】
水分散重合物/顔料の質量比率は20/80〜100/0が好ましく、より好ましくは30/70〜95/5であり、さらに好ましくは40/60〜90/10である。水分散重合物の質量比率が20/80より低くなると、シート表面の繊維接着性や顔料の接着性が低下し、オフセット印刷時に繊維や顔料の離脱の原因となることがある。
【0033】
本発明において、水分散重合物と顔料の混合物の付着量は、不織布全質量の20〜60質量%が好ましく、より好ましくは25〜55質量%であり、さらに好ましくは30〜50質量%である。付着量が20質量%よりも低いと、インキ着肉性においても十分な濃度が得られないことがある。一方、60質量%を超えると、水分散重合物の付与により、不織布独特の柔らかな風合いが損なわれることがある。
【0034】
水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物の付与方法は、含浸塗工、グラビア塗工、メイヤーバー塗工、スプレー塗工などを用いることができる。シートに付与する量や、塗工液の液性等を考慮して適宜選択することが好ましい。
【0035】
水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物付与加工時の乾燥方式は、エアドライヤー、赤外線ドライヤーなどの非接触型の乾燥機を用いるのが好ましい。シリンダードライヤー等の接触型の乾燥機を用いた場合よりも、ドライヤー接着面が平滑な仕上がりになるのが避けられるため、表面に毛羽が生じやすく、貼り付き性が向上する。
【0036】
本発明の展示用不織布は、該不織布を抄紙の流れ方向に直角に折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が、表裏ともに5〜65本であり、より好ましくは10〜60本であり、さらに好ましくは15〜55本である。毛羽本数が5本よりも少ないと、パネルへの貼り付き性が悪くなる。一方、65本を超えると、表面の平滑性が失われ、十分な印字濃度が得られず、印刷抜けなどが起こる。なお、毛羽本数の測定は表裏で区別し、サンプル毎に表裏それぞれ5個以上データをとり、最大と最小を除いて平均した本数を、ここで言う「毛羽本数」とする。また、ここで言う「表」とは、抄紙の際の湿紙乾燥時に接触型ドライヤーに接していた面、もしくは、非接触型の乾燥機を用いた場合は熱量が多くかかった側の面を言う。
【0037】
本発明の展示用不織布は、坪量が30〜250g/mの範囲であることが好ましい。坪量が30g/mより小さくなると、コシや強度が低下するため印刷には適さず、また、250g/mを超えると、その重さのためパネルに貼り付けた時に剥がれ落ちやすくなることがある。
本発明の展示用不織布は、密度が0.20〜0.55g/cmの範囲であることが好ましい。密度が0.20g/cmよりも小さくなると、インキが展示用不織布表面に留まらず内部に浸透してしまうため、十分な印刷濃度が得られないことがあり、また、画面印刷ができなくなるといった問題が発生することがある。密度が0.55g/cmを超えると風合いが紙風の硬い仕上がりとなり、柔らかな風合いが損なわれることがある。
【実施例】
【0038】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は質量基準である。
【0039】
実施例1
木材パルプとして、未叩解のNBKPカムループス(濾水度600mlCSF)、木材パルプ以外の有機繊維として、顕在捲縮型ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維(繊度2.2デシテックス、繊維長5mm)及びPET−低融点PET芯鞘繊維(繊度2.2デシテックス、繊維長5mm)を用いた。木材パルプ/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=30/35/35となるように、パルパーで分散し、円網抄紙機で抄紙後、シリンダードライヤーにて乾燥し、120g/mの原布シートを得た。この原布シートに水分散重合物(アクリル酸エステル共重合体等)60質量%、顔料として炭酸カルシウム(商品名:エスカロン1500、三共製粉株式会社製)を40質量%含有した混合液を、固形分で30g/mとなるようにサイズプレスにて含浸させ、エアースルードライヤーで乾燥を行い、展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:30本、裏:33本であった。
【0040】
実施例2
原布シートの組成を、木材パルプ/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=5/35/60とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:27本、裏:40本であった。
【0041】
実施例3
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=10/35/55とした以外は、実施例1と同様にして実施例3の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:31本、裏:37本であった。
【0042】
実施例4
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=80/15/5とした以外は、実施例1と同様にして実施例4の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:12本、裏:11本であった。
【0043】
実施例5
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=85/15/0とした以外は、実施例1と同様にして実施例5の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:10本、裏:14本であった。
【0044】
実施例6
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=10/5/85とした以外は、実施例1と同様にして実施例6の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:12本、裏:16本であった。
【0045】
実施例7
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=10/10/80とした以外は、実施例1と同様にして実施例7の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:18本、裏:25本であった。
【0046】
実施例8
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=10/80/10とした以外は、実施例1と同様にして実施例8の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:49本、裏:55本であった。
【0047】
実施例9
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=10/85/5とした以外は、実施例1と同様にして実施例9の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:53本、裏:60本であった。
【0048】
実施例10
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=30/25/45とした以外は、実施例1と同様にして実施例10の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:5本、裏:9本であった。
【0049】
実施例11
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=10/90/0とした以外は、実施例1と同様にして実施例11の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:49本、裏:65本であった。
【0050】
実施例12
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=95/2/3とした以外は、実施例1と同様にして実施例12の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:7本、裏:7本であった。
【0051】
実施例13
水分散重合物と顔料の含浸加工の際、乾燥にエアースルードライヤーではなく、シリンダードライヤーを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例13の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:8本、裏:10本であった。
【0052】
実施例14
原布シートに含浸する液を、水分散重合物のみで顔料を加えないものにした以外は、実施例1と同様にして実施例14の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:28本、裏:30本であった。
【0053】
比較例1
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=100/0/0とした以外は、実施例1と同様にして比較例1の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:30本、裏:48本であった。
【0054】
比較例2
原布シートの組成を、パルプ繊維/捲縮型PET繊維/PET−低融点PET芯鞘繊維=0/50/50とした以外は、実施例1と同様にして比較例2の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:30本、裏:48本であった。
【0055】
比較例3
水分散重合物及び顔料の含浸加工を省略した以外は、実施例1と同様にして比較例3の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:8本、裏:10本であった。
【0056】
比較例4
水分散重合物と顔料の含浸加工及び乾燥後、ロール温度50℃、線圧4MPaの条件にてスーパーカレンダーに通した以外は、実施例1と同様にして比較例4の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:2本、裏:3本であった。
【0057】
比較例5
水分散重合物と顔料の含浸加工及び乾燥後、メンディングテープ(住友3M社製)を全面に貼った後、剥がして全体を毛羽立たせた以外は実施例1と同様にして比較例5の展示用不織布を得た。得られたシートを折り、折った背の5cmの区間を10倍のルーペで観察した際に観察できる立ち上がった毛羽本数が表:69本、裏:83本であった
【0058】
上記の実施例及び比較例で作製した展示用不織布について、下記の評価方法により評価し、その結果を表1に示した。
【0059】
(1)貼り付き性評価
50cm×30cmの段ボールに、不織布(商品名:SP20145A、前田工繊株式会社製)を張ってパネルを作製する。10cm角に切った展示用不織布のサンプルを、平らな台の上で垂直に立てたパネルに貼り、パネルを1cm持ち上げ、台の上に落とす。これを、サンプルがパネルから剥がれ落ちる、または、サンプルの一部がずり落ちて台に触れるまで繰り返し、繰り返しの回数を点数として記録する。1種の展示用不織布につき3枚以上のサンプルで、表裏別で測定を行い、点数の平均値を算出し、以下に示す5段階で評価した。なお、ここで言う「表」とは、抄紙時にシリンダードライヤーに接していた面を言う。
A:30点以上
B:20点以上30点未満
C:10点以上20点未満
D:5点以上10点未満
E:5点未満
【0060】
(2)Dryインキ着肉性評価
RI印刷機(株式会社明製作所製)の印刷用ロールに藍色インキ(商品名:TRANS−G、DIC株式会社製)を0.6cc付着させてよく練りこんだ後、印刷を行い、一昼夜乾燥させた後、印刷部のインキ濃度を以下の4段階で評価した。評価はモニター6名によって行われ、各人がそれぞれ評価した等級の最多数をその等級とした。
◎:非常に鮮明で良好。
○:鮮明で良好。
△:僅かに鮮明性に劣るが、効果は認められる。
×:くすんでおり、不鮮明。実用上問題がある。
【0061】
(3)Wetインキ着肉性評価
RI印刷機(株式会社明製作所製)の印刷用ロールに藍色インキ(商品名:TRANS−G、DIC株式会社製)を0.6cc付着させてよく練りこんだ後、Wet着肉用ロールを印刷する上流側に取り付ける。ロール両端部を目止めして水をため、印刷部分の半分については水を含ませた後、藍色インキが付着するように印刷を行い、一昼夜乾燥させた後、印刷部のインキ濃度を以下に示す4段階で評価した。評価はモニター6名によって行われ、各人がそれぞれ評価した等級の最多数をその等級とした。
◎:非常に鮮明で良好。
○:鮮明で良好。
△:僅かに鮮明性に劣るが、効果は認められる。
×:くすんでおり、不鮮明。実用上問題がある。
【0062】
(4)両面印刷適性評価
展示用不織布の表裏面にオフセット印刷を行い、裏移り、裏抜けの度合いについて、以下に示す4段階で評価した。評価はモニター6名によって行われ、各人がそれぞれ評価した等級の最多数をその等級とした。
◎:裏移りや裏抜けが無く、印刷したどちらの面も非常に鮮明で良好。
○:裏移りや裏抜けが少なく、印刷したどちらの面も鮮明で良好。
△:裏移りや裏抜けが多少あるが、効果は認められる。
×:裏移りや裏抜けが多く、印刷が不鮮明。実用上問題がある。
【0063】
(5)風合い評価
展示用不織布を手で握り、その時の触感を以下に示す4段階で評価した。評価はモニター6名によって行われ、各人がそれぞれ評価した等級の最多数をその等級とした。
◎:非常にしなやかで良好。
○:しなやかで良好。
△:僅かにしなやかさに劣るが、効果は認められる。
×:張り感があり、ペーパーライク。実用上問題がある。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、木材パルプと木材パルプ以外の有機繊維とを混抄した原布シートに、水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物の付与加工を施し、さらに表面に一定の本数の毛羽を持つ実施例1〜14の展示用不織布は、貼り付き性、印刷適性、風合いに優れている。
【0066】
木材パルプ以外の有機繊維を用いなかった比較例1は、印刷適性は良好であったが、毛羽が少なく、貼り付き性が悪かった。一方、木材パルプを用いなかった比較例2は、毛羽も多く、貼り付き性は良好であったが、印刷適性が劣り、実用上問題があるレベルであった。また、水分散重合物及び水分散重合物と顔料の混合物の付与加工を施していない比較例3も、同様に印刷適性が劣った。カレンダー処理を行った比較例4は、毛羽本数が少なく、パネル貼り付き性が悪かった。また、テープによって表面を毛羽立たせた比較例5は、印刷適性が劣った。
【0067】
木材パルプ/有機繊維のうち、木材パルプの割合が10質量%未満の実施例2は、パネル貼り付き性や風合いは良好だが、木材パルプ繊維の含有量が少ないために、印刷適性が若干低下したが、実用上問題無いレベルであった。一方、木材パルプ/有機繊維のうち、有機繊維の割合が10質量%未満の実施例10は、印刷適性は良好であったが、ペーパーライクな仕上がりとなり、風合い及び貼り付き性が若干劣ったが、いずれも実用上問題無いレベルであった。
【0068】
原布シート中の捲縮型ポリエステル繊維が10質量%未満の実施例6は、風合い及び貼り付き性が劣ったが、実用上問題無いレベルであった。また、原布シート中の捲縮型ポリエステル繊維の含有量が80質量%を超えている実施例9は、貼り付き性は良好であったが、印刷適性が劣った。しかし、実用上問題無いレベルであった。
【0069】
水分散重合物及び顔料の付与加工時に接触型のシリンダードライヤーを用いた実施例13は、表面が平らに均され、毛羽本数が少なかったため、貼り付きが悪くなったが、実用上問題無いレベルであった。
【0070】
水分散重合物のみをシートに付与した実施例14は、顔料が含まれていないためインキ着肉や両面印刷適性が実施例1よりも劣ったが、実用上問題無いレベルであった。
【0071】
本発明の展示用不織布は、木材パルプと捲縮型ポリエステル繊維等の木材パルプ以外の有機繊維からなる原布シートに、水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物を付与することによって、両面印刷適性、風合いが優れたシートが得られるとともに、表裏面に適度な毛羽立ちがあることから、織布や不織布などを貼ったパネルに容易に貼り付けることができる。本発明の展示用不織布は、貼ったり外したりが容易で、さらに不織布独特の柔らかい風合いがあることから、プレゼンテーションをはじめ、特に子供向けの劇、歌あそび、ゲーム等への応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の展示用不織布は、文字や絵を描く、印刷するなどして、パネルに貼り付けることができ、看板、プレゼンテーション、子供向けのおはなし、歌あそび、ゲーム、劇等に使用可能な展示用不織布として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材パルプと木材パルプ以外の有機繊維とを少なくとも含有してなる湿式抄紙法にて抄紙した原布シートに、水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物の付与加工を施した不織布であり、且つ、該不織布を折った背に沿って5cmの区間における毛羽本数が表裏ともに5〜65本であることを特徴とする展示用不織布。
【請求項2】
木材パルプ/有機繊維の質量比が10/90〜80/20である請求項1記載の展示用不織布。
【請求項3】
有機繊維の一部または全量が捲縮型ポリエステル繊維であり、原布シート中に該捲縮型ポリエステル繊維を10〜80質量%含有する請求項1または2に記載の展示用不織布。
【請求項4】
水分散重合物と顔料の混合物または水分散重合物の付与加工において、非接触型の乾燥機を用いて乾燥させてなる請求項1〜3のいずれかに記載の展示用不織布。

【公開番号】特開2011−180441(P2011−180441A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45574(P2010−45574)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】