説明

層間耐チッピング塗料

【課題】層間耐チッピング塗料において、水性中塗り塗料の下層に塗布した場合でも、その後の加熱によっても水性中塗り塗料が黄変せず美しい塗装外観を確保でき、しかも充分な耐チッピング性及び貯蔵安定性を得られること。
【解決手段】層間耐チッピング塗料は、ブロックイソシアネート化合物とアミン価が300〜1200の範囲内である粉体アミン化合物とを含有し、ブロックイソシアネート化合物と粉体アミン化合物との含有比率が、NCO/アミン比=1.0〜3.0の範囲内である。これらの条件を満たす実施例1乃至実施例4の配合の層間耐チッピング塗料は、耐チッピング性はナット落下重量4kg以上でもチッピングが生じず、耐熱黄変性は160℃で30分間保持を2回繰り返した後の水性中塗り塗料の塗膜のΔb値が1.0未満であり、貯蔵安定性は40℃で10日間保存した後の粘度変化率が30%未満であった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の下塗り(電着)層と中塗り層または上塗り層との層間に塗布されて高い耐チッピング性を確保し、しかも水性中塗り塗料及び水性上塗り塗料の耐熱黄変性を高めることができる層間耐チッピング塗料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の表面塗膜には、小石・砂粒等が衝突する機会が多いので、かかる衝撃に耐えて塗膜の剥離を起こさない耐チッピング性が要求される。従来、自動車の上塗焼付後に塗布されていた耐チッピング塗料は、溶剤型2液ウレタン塗料であり環境負荷物質を含むので好ましくなく、しかも黒色であるので意匠的に限定されてしまう。また、従来の層間タイプの耐チッピング塗料は、PVCゾル系であり環境に悪く、120℃以上の焼き付けが必要であった。最近は、こうした環境問題に対処するために、水性中塗り塗料の導入や、層間タイプの耐チッピング塗料と中塗り塗料とのウェット・オン・ウェットで塗装される工程が増えており、それに対応する層間タイプの耐チッピング塗料が開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1においては、MDIプレポリマーの末端イソシアネート基をオキシム系樹脂でブロックしたウレタン樹脂と、TDIプレポリマーの末端イソシアネート基をラクタム系樹脂でブロックしたウレタン樹脂と、ポリオール樹脂とを含有する自動車用層間耐チッピング塗料の発明について開示している。これによって、耐チッピング性及びスプレー作業性を何ら低下させることなく塗装量を低減することができるとしている。しかしながら、特許文献1に記載の自動車用層間耐チッピング塗料においては、ポリオール樹脂を含むため耐熱黄変性が悪く、耐チッピング塗料を塗布した上に塗布された中塗り塗料や上塗り塗料がその後の加熱によって黄変し、見栄えが損なわれるという問題があった。
【0004】
そこで、特許文献2においては、ブロック化ポリイソシアネート化合物及び分子中に2個以上の活性化水素を有する化合物と、特定の4級アンモニウム有機酸塩からなる触媒とからなるウレタン塗料用樹脂組成物の発明について開示している。これによって、塗料としたときの貯蔵安定性、耐熱黄変性等に優れ、環境汚染の心配のない、特に自動車耐チッピング塗料用に適したウレタン塗料用樹脂組成物となるとしている。
【特許文献1】特開平6−025597号公報
【特許文献2】特開平8−170048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献2に記載のウレタン塗料用樹脂組成物における耐熱黄変性は、ウレタン塗料用樹脂組成物それ自身の耐熱黄変性が確保されるに過ぎず、このウレタン塗料用樹脂組成物を層間耐チッピング塗料として用いた場合に、その上に水性中塗り塗料や水性上塗り塗料を塗布した場合には、やはりその後の加熱によって水性中塗り塗料や水性上塗り塗料が黄変してしまうという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、環境にやさしい水性中塗り塗料や水性上塗り塗料の下層に塗布した場合でも、その後の加熱によってもこれらの水性中塗り塗料や水性上塗り塗料が黄変することがなく、美しい塗装外観を確保することができ、しかも充分な耐チッピング性及び貯蔵安定性を得ることができる層間耐チッピング塗料を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明にかかる層間耐チッピング塗料は、自動車用の層間に塗布される層間耐チッピング塗料であって、ブロックイソシアネート化合物とアミン価が300〜1200の範囲内である粉体アミン化合物とを含有し、前記ブロックイソシアネート化合物と前記粉体アミン化合物との含有比率が、NCO/アミン比=1.0〜3.0の範囲内であるものである。
【0008】
ここで、「アミン価」とは、アミン化合物1gを中和するために必要な塩酸に当量の水酸化カリウム(KOH)の量をmgで表したものである。また、「NCO/アミン比」とは、ブロックイソシアネート化合物が有しているイソシアネート(−N=C=O)基の数と、アミン化合物が有しているアミノ(−NH2 )基の数との比を表したものである。
【0009】
請求項2の発明にかかる層間耐チッピング塗料は、請求項1の構成において、前記ブロックイソシアネート化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、「MDI」とも略する。)またはトリレンジイソシアネート(以下、「TDI」とも略する。)から誘導されたものである。
【0010】
請求項3の発明にかかる層間耐チッピング塗料は、請求項1または請求項2の構成において、前記粉体アミン化合物は、アミノ基を2個以上有する化合物であるものである。
【0011】
請求項4の発明にかかる層間耐チッピング塗料は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記粉体アミン化合物は、ジヒドラジド化合物であるものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明にかかる層間耐チッピング塗料は、自動車用の層間に塗布される層間耐チッピング塗料であって、ブロックイソシアネート化合物とアミン価が300〜1200の範囲内である粉体アミン化合物とを含有し、ブロックイソシアネート化合物と粉体アミン化合物との含有比率が、NCO/アミン比=1.0〜3.0の範囲内である。
【0013】
ここで、「アミン価」とは、アミン化合物1gを中和するために必要な塩酸に当量の水酸化カリウム(KOH)の量をmgで表したものである。また、「NCO/アミン比」とは、ブロックイソシアネート化合物が有しているイソシアネート(−N=C=O)基の数と、アミン化合物が有しているアミノ(−NH2 )基の数との比を表したものである。
【0014】
また、「ブロックイソシアネート化合物」としては、ジイソシアネート化合物を始めとするポリイソシアネート化合物(例えば、MDI、TDI、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロへキシルプロパンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリメチルペンタンジイソシアネート等)の一方のイソシアネート基に、水酸基を有するポリエステル、ポリエーテル、アクリル、エポキシ等を予め反応させて、残りのイソシアネート基を活性水素を有する化合物(例えばメタノール、エタノール等の脂肪族アルコール類、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、シクロヘキサノール等の環状アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の水酸基含有エーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アミル、乳酸ブチル等の水酸基含有エステル類、ダイアセトンアルコール等の水酸基含有ケトン類、アセトオキシム、ケトオキシム、メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム等のオキシム類、ε−カプロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム類、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル等の活性メチレン類、ブチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン等のメルカプタン類、アセトアニリド、アクリルアミド、酢酸アミド等の酸アミド類、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のイミド類、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン等のアミン類、イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール類、その他尿素類、イミン類、亜硫酸塩類等)でブロックし不活性化したものを用いることができる。
【0015】
また、「粉体アミン化合物」としては、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類、サリチル酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ2−ナフトエ酸ヒドラジド、カルボヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド類、アミノポリアクリルアミド等のアミン化合物を用いることができる。
【0016】
本発明者らは、鋭意実験研究の結果、ブロックイソシアネート化合物との組み合わせとしてポリオール化合物または液体アミン化合物を層間耐チッピング塗料に用いると、その後の加熱によって水性中塗り塗料や水性上塗り塗料が黄変するが、粉体アミン化合物を用いることによって、その後の加熱によっても水性中塗り塗料や水性上塗り塗料が黄変しないことを見出し、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
【0017】
そして、粉体アミン化合物のアミン価が300未満であると耐チッピング性が低下し、アミン価が1200を超えると塗料としての貯蔵安定性が悪くなるため、粉体アミン化合物のアミン価は300〜1200の範囲内であることが好ましい。また、ブロックイソシアネート化合物と粉体アミン化合物との含有比率が、NCO/アミン比で1.0未満であると耐チッピング性が低下し、NCO/アミン比で3.0を超えると塗料としての貯蔵安定性が悪くなるため、ブロックイソシアネート化合物と粉体アミン化合物との含有比率はNCO/アミン比で1.0〜3.0の範囲内であることが好ましい。
【0018】
このようにして、環境にやさしい水性中塗り塗料や水性上塗り塗料の下層に塗布した場合でも、その後の加熱によってもこれらの水性中塗り塗料や水性上塗り塗料が黄変することがなく、美しい塗装外観を確保することができ、しかも充分な耐チッピング性及び貯蔵安定性を得ることができる層間耐チッピング塗料となる。
【0019】
請求項2の発明にかかる層間耐チッピング塗料においては、ブロックイソシアネート化合物が、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはトリレンジイソシアネート(TDI)から誘導されたものである。
【0020】
MDI及びTDIは、ジイソシアネート化合物の中でも安定で、汎用品であるため入手が容易であり、また架橋反応性に優れているので耐チッピング性を有する強固な塗膜を形成することができる。したがって、MDIまたはTDIの一方のイソシアネート基に水酸基を有するポリエステル、ポリエーテル、アクリル、エポキシ等を予め反応させて、残りのイソシアネート基を活性水素を有する化合物でブロックすることによって、層間耐チッピング塗料に適したブロックイソシアネート化合物となり、これを粉体アミン化合物とNCO/アミン比=1.0〜3.0の範囲内で混合することによって、水性中塗り塗料の耐熱黄変性に優れた塗膜を形成できる層間耐チッピング塗料を得ることができる。
【0021】
このようにして、環境にやさしい水性中塗り塗料や水性上塗り塗料の下層に塗布した場合でも、その後の加熱によってもこれらの水性中塗り塗料や水性上塗り塗料が黄変することがなく、美しい塗装外観を確保することができ、しかも充分な耐チッピング性及び貯蔵安定性を得ることができる層間耐チッピング塗料となる。
【0022】
請求項3の発明にかかる層間耐チッピング塗料においては、粉体アミン化合物が、アミノ基を2個以上有する化合物である。したがって、ブロックイソシアネート化合物との架橋反応性に優れ、高い耐チッピング性を有する強固な塗膜を形成することができる。かかる粉体アミン化合物をブロックイソシアネート化合物とNCO/アミン比=1.0〜3.0の範囲内で混合することによって、水性中塗り塗料の耐熱黄変性に優れた塗膜を形成できる層間耐チッピング塗料を得ることができる。
【0023】
このようにして、環境にやさしい水性中塗り塗料や水性上塗り塗料の下層に塗布した場合でも、その後の加熱によってもこれらの水性中塗り塗料や水性上塗り塗料が黄変することがなく、美しい塗装外観を確保することができ、しかも充分な耐チッピング性及び貯蔵安定性を得ることができる層間耐チッピング塗料となる。
【0024】
請求項4の発明にかかる層間耐チッピング塗料においては、粉体アミン化合物が、ジヒドラジド化合物である。
【0025】
ジヒドラジド化合物は、アミノ基を2個以上有する化合物である。また、汎用品であるため、入手も容易である。したがって、ブロックイソシアネート化合物との架橋反応性に優れ、高い耐チッピング性を有する強固な塗膜を形成することができる。かかるジヒドラジド化合物をブロックイソシアネート化合物とNCO/アミン比=1.0〜3.0の範囲内で混合することによって、水性中塗り塗料の耐熱黄変性に優れた塗膜を形成できる層間耐チッピング塗料を得ることができる。
【0026】
このようにして、環境にやさしい水性中塗り塗料や水性上塗り塗料の下層に塗布した場合でも、その後の加熱によってもこれらの水性中塗り塗料や水性上塗り塗料が黄変することがなく、美しい塗装外観を確保することができ、しかも充分な耐チッピング性及び貯蔵安定性を得ることができる層間耐チッピング塗料となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本実施の形態の層間耐チッピング塗料は、ブロックイソシアネート化合物として、ジイソシアネート化合物としてのジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の一方のイソシアネート基にポリオール系ポリエステルを予め反応させて、残りのイソシアネート基を活性水素を有する化合物としてのメチルエチルケトンオキシムでブロックして不活性化したものを用いている。
【0028】
一方、粉体アミン化合物としては、ジヒドラジド類を用いている。ジヒドラジド類の具体例としては、以下の化学式で示される4種類の化合物がある。
【0029】
【化1】

【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

【0032】
【化4】

【0033】
化合物名は、順に、アジピン酸ジヒドラジド(化1)、セバシン酸ジヒドラジド(化2)、ドデカンジオヒドラジド(化3)、イソフタル酸ジヒドラジド(化4)である。また、ジヒドラジド類ではないが、以下の化学式(化5)で示されるアミノポリアクリルアミドも、本発明に係る層間耐チッピング塗料を構成する粉体アミン化合物として適している。
【0034】
【化5】

【0035】
本実施の形態においては、これらの化合物の中から(化1)の化学式で示されるアジピン酸ジヒドラジドを粉体アミン化合物として用いて、実施例1乃至実施例4の4種類の配合の層間耐チッピング塗料を作製した。また、比較のために比較例1乃至比較例6の6種類の配合の比較用層間耐チッピング塗料を作製した。実施例1乃至実施例4及び比較例1乃至比較例6の配合を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示されるように、実施例1はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、アミン価400の粉体アミン化合物10.0重量部を配合しており、NCO/アミン比が1.0であって、本発明の請求項1に係る要件を満たしている。また、実施例2はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、アミン価300の粉体アミン化合物13.0重量部を配合しており、NCO/アミン比が1.0であって、本発明の請求項1に係る要件を満たしている。
【0038】
更に、実施例3はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、アミン価1200の粉体アミン化合物1.1重量部を配合しており、NCO/アミン比が1.0であって、本発明の請求項1に係る要件を満たしている。また、実施例4はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、アミン価400の粉体アミン化合物3.3重量部を配合しており、NCO/アミン比が3.0であって、本発明の請求項1に係る要件を満たしている。
【0039】
なお、表1に示されるように、実施例1乃至実施例4のいずれにおいても、体質顔料としての炭酸カルシウムを150.0重量部、溶剤としてのエステル系溶剤である二塩基酸エステルを150.0重量部、そして添加剤として錫系触媒を5.0重量部配合して、本実施の形態に係る層間耐チッピング塗料を作製している。
【0040】
これに対して、表1に示されるように、比較例1はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、ポリオール化合物10.0重量部を配合しており、NCO/アミン比は1.0であるが、ポリオール化合物を配合している点において、本発明の請求項1に係る要件を満たしていない。また、比較例2はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、アミン価400の液状アミン化合物10.0重量部を配合しており、NCO/アミン比は1.0であるが、液状アミン化合物を配合している点において、本発明の請求項1に係る要件を満たしていない。
【0041】
また、比較例3はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、アミン価250の粉体アミン化合物16.0重量部を配合しており、NCO/アミン比は1.0であるが、粉体アミン化合物のアミン価が300〜1200の範囲内から外れている点において、本発明の請求項1に係る要件を満たしていない。同様に、比較例4はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、アミン価1300の粉体アミン化合物1.0重量部を配合しており、NCO/アミン比は1.0であるが、粉体アミン化合物のアミン価が300〜1200の範囲内から外れている点において、本発明の請求項1に係る要件を満たしていない。
【0042】
更に、比較例5はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、アミン価400の粉体アミン化合物12.5重量部を配合しており、NCO/アミン比が0.8であって、NCO/アミン比が1.0〜3.0の範囲内から外れている点において、本発明の請求項1に係る要件を満たしていない。同様に、比較例6はブロックイソシアネート化合物100.0重量部に対して、アミン価400の粉体アミン化合物2.5重量部を配合しており、NCO/アミン比が4.0であって、NCO/アミン比が1.0〜3.0の範囲内から外れている点において、本発明の請求項1に係る要件を満たしていない。
【0043】
なお、表1に示されるように、比較例1乃至比較例6のいずれにおいても、実施例1乃至実施例4と同様に、体質顔料としての炭酸カルシウムを150.0重量部、溶剤としてのエステル系溶剤である二塩基酸エステルを150.0重量部、そして添加剤として錫系触媒を5.0重量部配合して、比較例に係る層間耐チッピング塗料を作製している。
【0044】
これらの実施例1乃至実施例4及び比較例1乃至比較例6の配合の層間耐チッピング塗料の塗料性能を、試験によって判定した。具体的には、下塗り(電着)塗装した鋼板に、各層間耐チッピング塗料をスプレー塗布して、その上からウェット・オン・ウェットで水性中塗り塗料を塗布したものを試験片として、耐チッピング性試験及び耐熱黄変性試験を実施した。また、各層間耐チッピング塗料を容器に入れて、貯蔵安定性を試験した。
【0045】
耐チッピング性は、ナット落下重量4kg以上でもチッピングが生じない場合に○、ナット落下重量4kg未満でチッピングが生じた場合には×と判定した。また、耐熱黄変性は、160℃で30分間保持を2回繰り返した後の水性中塗り塗料の塗膜のΔb値(黄変度)が1.0未満の場合に○、1.0以上の場合には×と判定した。更に、貯蔵安定性については、40℃で10日間保存した後の粘度変化率が30%未満の場合に○、30%以上の場合には×と判定した。各性能試験の結果について、表1の下段に示す。
【0046】
表1に示されるように、実施例1乃至実施例4のいずれにおいても、耐チッピング性・耐熱黄変性・貯蔵安定性の全ての項目について○と評価されており、優れた層間耐チッピング塗料であることが実証された。これに対して、ポリオール化合物または液状アミン化合物を配合した比較例1及び比較例2においては、層間耐チッピング塗料を塗布した上からウェット・オン・ウェットで塗布した水性中塗り塗料の耐熱黄変性に劣ることが分かった。
【0047】
また、粉体アミン化合物のアミン価が300未満(250)である比較例3においては、耐チッピング性に劣り、粉体アミン化合物のアミン価が1200を超える1300である比較例4においては、貯蔵安定性に劣ることが分かった。更に、NCO/アミン比が1.0未満(0.8)である比較例5においては、耐チッピング性に劣り、NCO/アミン比が3.0を超える4.0である比較例6においては、貯蔵安定性に劣ることが分かった。
【0048】
このようにして、本実施の形態に係る実施例1乃至実施例4の層間耐チッピング塗料においては、環境にやさしい水性中塗り塗料や水性上塗り塗料の下層に塗布した場合でも、その後の加熱によってもこれらの水性中塗り塗料や水性上塗り塗料が黄変することがなく、美しい塗装外観を確保することができ、しかも充分な耐チッピング性及び貯蔵安定性を得ることができる。
が分かった。
【0049】
本実施の形態においては、ブロックイソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の一方のイソシアネート基にポリオール系ポリエステルを予め反応させて、残りのイソシアネート基をメチルエチルケトンオキシムでブロックして不活性化したものを用いているが、その他のブロックイソシアネート化合物を用いることもできる。
【0050】
即ち、MDI以外のTDI、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロへキシルプロパンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリメチルペンタンジイソシアネート等の一方のイソシアネート基にポリオール系ポリエステルを予め反応させて、残りのイソシアネート基をメチルエチルケトンオキシムでブロックして不活性化したものを用いても良い。
【0051】
また、ポリイソシアネート化合物の一方のイソシアネート基に、ポリエステル以外の水酸基を有するポリエーテル、アクリル、エポキシ等を予め反応させても良いし、残りのイソシアネート基をメチルエチルケトンオキシム以外の活性水素を有する化合物(例えばメタノール、エタノール等の脂肪族アルコール類、フェノール、ベンジルアルコール、クレゾール、シクロヘキサノール等の環状アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等の水酸基含有エーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸アミル、乳酸ブチル等の水酸基含有エステル類、ダイアセトンアルコール等の水酸基含有ケトン類、アセトオキシム、ケトオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム等のオキシム類、ε−カプロラクタム、β−プロピオラクタム等のラクタム類、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル等の活性メチレン類、ブチルメルカプタン、へキシルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン等のメルカプタン類、アセトアニリド、アクリルアミド、酢酸アミド等の酸アミド類、コハク酸イミド、フタル酸イミド等のイミド類、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン等のアミン類、イミダゾール、2−エチルイミダゾール等のイミダゾール類、その他尿素類、イミン類、亜硫酸塩類等)でブロックし不活性化したものを用いることができる。
【0052】
更に、本実施の形態においては、粉体アミン化合物としてアジピン酸ジヒドラジドを用いた場合について説明したが、アミン価が300〜1200の範囲内である粉体アミン化合物であれば、それ以外にも、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等のジヒドラジド類、サリチル酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ2−ナフトエ酸ヒドラジド、カルボヒドラジド、チオカルボヒドラジド、4,4‘−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド類、アミノポリアクリルアミド等のアミン化合物を用いることができる。
【0053】
本発明を実施するに際しては、耐チッピング塗料のその他の部分の構成、組成、配合、成分、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、本実施の形態及び各実施例に限定されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の層間に塗布される層間耐チッピング塗料であって、
ブロックイソシアネート化合物と、アミン価が300〜1200の範囲内である粉体アミン化合物とを含有し、
前記ブロックイソシアネート化合物と前記粉体アミン化合物との含有比率が、NCO/アミン比=1.0〜3.0の範囲内であることを特徴とする層間耐チッピング塗料。
【請求項2】
前記ブロックイソシアネート化合物は、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)またはトリレンジイソシアネート(TDI)から誘導されたものであることを特徴とする請求項1に記載の層間耐チッピング塗料。
【請求項3】
前記粉体アミン化合物は、アミノ基を2個以上有する化合物であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の層間耐チッピング塗料。
【請求項4】
前記粉体アミン化合物は、ジヒドラジド化合物であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載の層間耐チッピング塗料。