説明

履帯監視装置

【課題】履帯の異常を検出し、履帯の異常を知らせることが可能な履帯監視装置を提供する。
【解決手段】ゴムクローラ20にて走行する車両10に搭載されたカメラセット44によってゴムクローラ20の外形を検出する。また、車両10に搭載された制御装置52によって、カメラセット44から入力された検出外形から得られる検出外形データD2と、ゴムクローラ20に設けられたICタグ40から車両10に設けた信号受信機38で読み取った基準外形データD1とに基づき、ゴムクローラ20が異常か否かを判定する。そして、ゴムクローラ20が異常と判定された場合には、車両10に搭載されたディスプレイ54Aやスピーカ54Bによって、警告が発せられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履帯を使用した車両に適用される履帯監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、無端状のゴム弾性体中に一定ピッチをもって芯金が埋設され、芯金の外囲に周方向の引っ張り補強のためのスチールコードが埋設された履帯、又は前記芯金を持たない履帯、所謂「ゴムクローラ」を走行部に利用した建設機械や土木作業機械等の車両が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トランスポンダをゴムクローラに埋め込むと共に、車両側に前記トランスポンダを識別するシステムを搭載し、ゴムクローラの走行距離、速度等のデータを得ることで、ゴムクローラの使用状態を知るようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−119845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のシステムにおいて得られる情報はあくまでも走行距離等の数値データである。このため、実際にゴムクローラに異常が発生していているか否かについては全く把握できない。例えば、走行中の突発的な状況により突起部(ゴムラグ)の一部が欠けたり、スチールコードが飛び出した場合等にも、走行距離が少なければ、前記異常は見過ごされる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、履帯の異常を検出し、履帯の異常を知らせることが可能な履帯監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の履帯監視装置は、履帯にて走行する車両に搭載され、前記履帯の外形を検出する履帯外形検出手段と、前記車両に搭載され、正常時における前記履帯の基準外形データを記憶する記憶部を有し、前記履帯外形検出手段から入力された検出外形から得られる検出外形データと前記基準外形データとに基づき、前記履帯が異常か否かを判定する異常判定手段と、前記車両に搭載され、前記異常判定手段によって前記履帯が異常と判定された場合に警告する警告手段と、を有する。
【0008】
請求項1に記載の履帯監視装置では、履帯にて走行する車両に搭載された履帯外形検出手段によって履帯の外形を検出すると共に、車両に搭載された異常判定手段によって履帯外形検出手段から入力された検出外形から得られる検出外形データと、異常判定手段の記憶部に記憶した正常時における履帯の基準外形データとに基づき、履帯が異常か否かを判定する。この判定の結果、異常判定手段によって履帯が異常と判定された場合には、車両に搭載された警告手段によって、警告が発せられる。この結果、履帯に磨耗や亀裂等の異常が発生した場合には、その異常を警告することが可能となる。この結果、履帯の異常に起因する車両の異常振動を未然に防ぐと共に、車両の異常振動による車両自体の異常発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の履帯監視装置において、前記異常判定手段は、前記履帯外形検出手段で検出した正常時における前記履帯の検出外形から前記基準外形データを得て前記記憶部に記憶する。
【0010】
請求項2に記載の履帯監視装置では、異常判定手段が履帯外形検出手段で検出した正常時における履帯の検出外形から基準外形データを得て記憶部に記憶するので、履帯外形検出手段を用いて基準外形データを簡単に取得可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の履帯監視装置において、前記異常判定手段は、前記履帯に設けられ前記履帯の前記基準外形データが記憶されたデータ記憶部材から前記基準外形データを読み込んで前記記憶部に記憶する。
【0012】
請求項3に記載の履帯監視装置では、異常判定手段が履帯に設けられ履帯の基準外形データが記憶されたデータ記憶部材から基準外形データを読み込んで記憶部に記憶する。この結果、基準外形データを迅速且つ正確に記憶することが可能になる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の履帯監視装置において、前記車両に設けられ、前記履帯を清掃する履帯清掃手段を有する。
【0014】
請求項4に記載の履帯監視装置では、車両に設けられた履帯清掃手段によって、履帯が清掃され、履帯に付着した泥等が落とされる。この結果、履帯外形検出手段によって履帯の外形を検出する際に、履帯に付着した泥等による検知精度の精度低下を防止でき、履帯外形の検出精度が向上する。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の履帯監視装置において、前記履帯外形検出手段はカメラを含んで構成される。
【0016】
請求項5に記載の履帯監視装置では、履帯外形検出手段がカメラを含んで構成されるため、ディスプレイを設けておけば、履帯の外形を画像(映像)として映し出すことが可能になる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の履帯監視装置において、前記履帯外形測定手段は超音波を使用した検知装置を含んで構成される。
【0018】
請求項6に記載の履帯監視装置では、履帯外形測定手段が超音波を使用した検知装置を含んで構成されるため、履帯に泥が付着している場合にも、履帯と泥との超音波の反射率の違いから正確な履帯の外形を検知でき、履帯外形の検出精度が向上する。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載の履帯監視装置において、前記履帯外形測定手段はレーザー光を使用した検知装置を含んで構成される。
【0020】
請求項7に記載の履帯監視装置では、履帯外形測定手段はレーザー光を使用した検知装置を含んで構成されるため、レーザ光の反射により履帯との距離を測定することで履帯外形を容易に検知可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、請求項1に記載の履帯監視装置は上記の構成としたので、履帯の異常を検出し、履帯の異常を知らせることが可能になる、という優れた効果を有する。
【0022】
また、請求項2に記載の履帯監視装置は上記の構成としたので、基準外形データを簡単な構成で記憶することが可能になる。
【0023】
また、請求項3に記載の履帯監視装置は上記の構成としたので、基準外形データを迅速且つ正確に記憶することが可能になる。
【0024】
また、請求項4に記載の履帯監視装置は上記の構成としたので、履帯外形の検出精度が向上する。
【0025】
また、請求項5に記載の履帯監視装置は上記の構成としたので、履帯外形を画像として映し出すことが可能になる。
【0026】
また、請求項6に記載の履帯監視装置は上記の構成としたので、履帯外形の検出精度が向上する。
【0027】
また、請求項7に記載の履帯監視装置は上記の構成としたので、履帯外形を容易に検知可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係る履帯監視装置の構成を示す概略側面図である。
【図2】図1の2−2断面線に沿った拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るカメラセットの構成を示す車両幅方向外側から見た概略側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るカメラセットの構成を示す車両後方から見た概略正面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る図2に対応する断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る履帯監視装置の制御を示したフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る履帯監視装置のゴムクローラの基準外形データD1と検知外形データD2との関係を示す説明図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る履帯監視装置のゴムクローラの基準外形データD1と検知外形データD2との関係を示す説明図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る履帯監視装置のゴムクローラの基準外形データD1と検知外形データD2との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る履帯監視装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0030】
図1には本発明の一実施形態に係る履帯監視装置が適用された、例えば、建設機械や土木作業機械等の車両10が概略側面図によって示されている。なお、図中の符号FRは車両の前方を示し、符号UPは車両の上方を示している。
【0031】
<車両の構成>
【0032】
図1に示すように、車両10における架台12の前部12Aには左右一対のアイドラー14が設けられており、架台12の後部12Bには左右一対のスプロケット16が設けられている。また、左右のアイドラー14とスプロケット16には、それぞれ履帯としてのゴムクローラ20が巻き掛けられている。
【0033】
なお、ゴムクローラとは無端状のゴム弾性体中に一定ピッチをもって芯金が埋設され、芯金の外囲に周方向の引っ張り補強のためのスチールコードが埋設された履帯、又は前記芯金を持たない履帯である。
【0034】
また、芯金とは、ゴムクローラの幅方向に強度を持たせると共に、スプロケット16の回転力を受け止め、該回転力によって車両10を推進させるための部材である。
【0035】
また、埋設とは、その方法の如何を問わず、結果的にゴムクローラの中に組み込まれることをいう。
【0036】
左右のゴムクローラ20は、車両10における架台12の接地面側に回転可能に軸支された複数のトラックローラー24によって走行面Sに押圧されている。
【0037】
なお、本実施形態では、車両10における架台12の接地面と反対側に、前後一対のアーム30が設けられており、これらのアーム30の上端には、ゴムクローラ20の内周面を上向きに押し上げるためのローラ33が設けられている。
【0038】
図2には、図1の2−2断面線に沿った拡大断面図が示されている。なお、図中の符号INは車両の車幅内側方向を示している。
【0039】
図2に示すように、車両10の架台12は、断面が車両下方側に開口したコ字状となっており、下端に複数のトラックローラー24が車両前後方向に間隔を開けて回転可能に軸支されている。また、車両10の受台32の車幅方向両端部32Aは、架台12に結合されており、基体28は受台32の中央上部32Bに取付けられている。
【0040】
図1に示すように、車両10の基体28の前方下部28Cには、左右一対の履帯外形検出手段としてのカメラセット44が設けられている。これらのカメラセット44は、ゴムクローラ20における外周側の外形を検出するための3台のカメラ44A、44B、44Cを備えている。
【0041】
具体的に説明すると、図3及び図4に示すように、カメラセット44のカメラ44Aは、ゴムクローラ20の外周面におけるゴムクローラ20の移動方向に沿った所定の範囲(ゴムラグ20Bの1ピッチP2以上の範囲)を車両側方(ゴムクローラ20の幅方向)から撮影可能となっている。
【0042】
また、カメラセット44のカメラ44Bは、ゴムクローラ20の外周面におけるゴムクローラ20の幅方向に沿った全範囲を車両正面側(ゴムクローラ20の長手方向)から撮影可能となっている。
【0043】
さらに、カメラセット44のカメラ44Cは、ゴムクローラ20の外周面におけるゴムクローラ20の移動方向に沿った所定の範囲(ゴムラグ20Bの1ピッチP2以上の範囲)を車両上方(ゴムクローラ20の接地面側)から撮影可能となっている。
【0044】
図1に示すように、車両10の基体28の後方下部28Aには、左右一対の履帯清掃手段としての清掃装置34が設けられている。これらの清掃装置34は、タンク34Aに水を蓄えており、制御信号によって作動することで、タンク34A内の水をノズル34Bからゴムクローラ20の外周面に向かって噴射し、ゴムクローラ20の外周面に付着した泥等を水圧によって洗い落とす構成となっている。
【0045】
なお、清掃装置34は、タンク34A内の圧縮空気をノズル34Bからゴムクローラ20の外周面に向かって噴射し、ゴムクローラ20の外周面に付着した泥等を風圧によって洗い落とす等の他の構成としてもよい。
【0046】
さらには、車両10をゴムクローラ20の外周面に泥等が付着しない環境において使用する場合には、清掃装置34は車両10から取り外してもよい。
【0047】
車両10の基体28には異常判定手段としての制御装置52が搭載されている。また、車両10の基体28には操作装置54が搭載されており、操作装置54は警告手段としてのディスプレイ54A、スピーカ54Bの少なくとも一方を備えている。なお、操作装置54にキーボード、USB端子等のデータ入力部54Cを設けてもよい。
【0048】
車両10の基体28の前後方向中間部下部28Bには、制御装置52の一部を構成する信号受信機38が左右一対設けられている。これらの信号受信機38は、ゴムクローラ20の移動軌跡に近接配置されており、ゴムクローラ20に設けられたデータ記憶部材としてのICタグ40に記憶されたデータを読み込み可能となっている。
【0049】
また、ICタグ40にはゴムクローラ20に対応した基準外形データに加えて、例えば、ゴムクローラ20の製造工場、製造年月日、製造ナンバー、型式、サイズ等が予め記憶されている。なお、ICタグ40及び信号受信機38の構成については周知であるため説明を省略する。
【0050】
制御装置52は周知のマイクロプロセッサ等からなるCPU(中央演算処理装置)52A及びメモリ52B、52C、52Dで構成されており、制御装置52は、操作装置54、カメラセット44及び清掃装置34と電気的に接続されている。
【0051】
制御装置52のメモリ52Bは正常時におけるゴムクローラ20の基準外形データD1を記憶する記憶部となっている。また、メモリ52Cはゴムクローラ20の製造工場等のデータを記憶する記憶部となっており、メモリ52Dはゴムクローラ20の検出外形データD2を記憶する記憶部となっている。
【0052】
なお、正常時におけるゴムクローラ(履帯)とは、摩耗や傷等の損傷が発生していない状態のゴムクローラ(履帯)である。
【0053】
制御装置52のCPU52Aはカメラセット44から入力されたゴムクローラ20の画像データ(検出外形)から検出外形データD2を演算し、メモリ52Dに記憶すると共に、メモリ52Bに記憶した基準外形データD1と、メモリ52Dに記憶した検出外形データD2とに基づきゴムクローラ20が異常か否かを判定するようになっている。
【0054】
また、制御装置52はゴムクローラ20が異常と判定された場合に、操作装置54のディスプレイ54Aを作動させ、警告文を表示すると共に、スピーカ54Bから警告をアナウンスするようになっている。
【0055】
<ゴムクローラの構成>
【0056】
図1に示すように、ゴムクローラ20は無端状のゴム弾性体で構成されている。また、図3に示すように、ゴムクローラ20の内周面上には、ゴムクローラ20の長手方向(回転方向)に沿って所定ピッチP1でガイドゴム(ゴム突起)20Aが形成されている。また、ゴムクローラ20の外周面には、ゴムラグ20Bがゴムクローラ20の長手方向(回転方向)に所定のピッチP2で突出形成されている。
【0057】
図2に示すように、ゴムクローラ20にはその長手方向に沿って抗張体(スチールコード)50が埋設されている。
【0058】
なお、トラックローラー24及びローラ33は、ゴムクローラ20の内周面上でガイドゴム20Aを幅方向両側から挟んで配置されている。
【0059】
図1に示すように、ゴムクローラ20のガイドゴム20Aはスプロケット16と係合して、スプロケット16から駆動力が伝達されるようになっている。
【0060】
なお、ゴムクローラ20としては、図5に示すように、無端状のゴム弾性体中に一定ピッチをもって芯金51が埋設され、これらの芯金51の外周側に周方向の引っ張り補強のためのスチールコード50が埋設された構成とすることも可能である。
【0061】
<ICタグの構成>
【0062】
ゴムクローラ20に設けられるICタグ40としては、例えば、高圧耐久性(耐圧2MPa以上)及び高温耐久性(耐熱200度以上)のセラミックICタグを使用する。なお、ICタグ40の形状は矩形板状としても他の形状としてもよい。
【0063】
また、ICタグ40のゴムクローラ20への埋め込み位置は、周辺をゴムで覆われ、加硫時に熱の影響を受け難い部分に埋め込む。
【0064】
即ち、図2に示すように、芯金が無いゴムクローラ20の場合には、ICタグ40をスチールコード50とガイドゴム20Aとの間に埋め込む。また、図5に示すように、芯金51が有るゴムクローラ20の場合には、隣接するスチールコード50の間でかつスチールコード50よりゴムクローラ20の内周側に埋め込む。
【0065】
(本実施形態の作用・効果)
【0066】
以下に本実施形態の履帯監視装置の作用を図6のフローチャートに従って説明する。
【0067】
本実施形態の履帯監視装置では、制御装置52が所定のタイミングでステップ(以下Sと記載する)102〜S114の異常検知処理を行う。
【0068】
なお、所定のタイミングとは、車両10が走行を開始した際、乗員が操作装置54から異常検知処理開始の信号を入力した際等である。
【0069】
先ず、S102では、ゴムクローラ20に付着した泥等を清掃する必要が有るか否かを判定し、清掃する必要が有ると判定した場合にはS104へ移行すると共に清掃する必要がないと判定した場合にはS106へ移行する。
【0070】
なお、一例として、清掃する必要が有るか否かの判定は、車両の使用環境やディスプレイ54Aに映し出されたゴムクローラ20の画像に基づいて、作業者が必要ないと判断した場合には、操作装置54から必要なしの信号を入力し、この信号が入力された場合には、清掃する必要がないと判定する。一方、この必要なしの信号が入力されない場合には、清掃する必要が有ると判定する。このため、通常、必要なしの信号が入力されない場合には、清掃する必要が有ると判定する。
【0071】
次に、S104では、制御信号によって清掃装置34を作動させる。これにより、タンク34Aの水がノズル34Bからゴムクローラ20の外周面に向かって噴射され、ゴムクローラ20の外周面に付着した泥等が水圧によって洗い落とされる。
【0072】
S106では、信号受信機38により、ゴムクローラ20に設けられたICタグ40に記憶されたゴムクローラ20の基準外形データD1を読み込み、メモリ52Bに記憶し、S108へ移行する。なお、ゴムクローラ20の製造工場等のデータはメモリ52Cに記憶する。また、ICタグ40を埋め込んだゴムクローラ20の位置を、ゴムクローラ20の周方向に沿った一回り(1サイクル)の起点として認識する。
【0073】
なお、一例として、ゴムクローラ20の基準外形データD1は、図7(側面データ)、図8(正面データ)、図9(上面データ)に実線で示すようになっている。
【0074】
S108では、カメラセット44で撮影したゴムクローラ20の外形画像を読み込み、S110へ移行する。
【0075】
S110では、S108で読み込んだ外形画像(検出外形)に画像処理(エッジ検出処理等を利用した周知の演算処理)を行い検出外形データD2を取得し、この検出外形データD2をメモリ52Dに記憶してS112へ移行する。
【0076】
なお、S110で得られたゴムクローラ20の検知外形データD2は、一例として、図7、8、9に一点鎖線で示すようになる。
【0077】
S112では、メモリ52Bに記憶した基準外形データD1と、メモリ52Dに記憶した検出外形データD2とを比較し、その比較結果から、ゴムクローラ20が異常か否かを判定する。
【0078】
例えば、ゴムクローラ20のゴムラグ20Bに磨耗が発生した場合には、図7、8に実線で示す基準外形データD1に対して、図7、8に一点鎖線で示すように、検知外形データD2のラグ高さが変化(変化量H1)する。このため、この変化量H1が許容範囲を超えた場合に、ゴムクローラ20が異常と判定する。
【0079】
また、ゴムクローラ20にカット傷が発生した場合には、図7、8、9に実線で示す基準外形データD1に対して、図7にハッチングT1、図8、9にハッチングT2で示すように、検知外形データD2のコントラストが変化する。このため、このコントラストが変化した領域が許容範囲を超えた場合に、ゴムクローラ20が異常と判定する。
【0080】
また、ゴムクローラ20のゴムラグ20Bのスチールコード50の露出した場合にも、図7、9に実線で示す基準外形データD1に対して、図7、図9にハッチングK1で示すように、検知外形データD2のコントラストが変化する。このため、このコントラストが変化した領域が許容範囲を超えた場合に、ゴムクローラ20が異常と判定する。
【0081】
なお、これらの判定結果を総合的に判断しゴムクローラ20が異常と判定する。例えば、これらの判定結果の少なくとも1つにおいて異常と判断された場合に、ゴムクローラ20が異常と判定するとしてもよい。
【0082】
次に、S112において、ゴムクローラ20が異常と判定した場合には、S114において、操作装置54のディスプレイ54Aを作動させ、警告文を表示すると共に、スピーカ54Bから警告をアナウンスする。また、S112において、ゴムクローラ20が異常でないと判定した場合には、S102に戻る。
【0083】
以上の判定は、車両10に設けた左右のゴムクローラ20について、それぞれ行われる。
【0084】
なお、S114においては、制御装置52から車両10の電源供給を断つ信号を車両10の駆動装置に出力し、車両10を強制的に停止状態としてもよい。また、制御装置52から車両10に搭載された送信器60に信号を送り、送信器60から、車両と異なる場所にあるサービスステーション等の受信器に、ゴムクローラ20の検知外形データD2や型式等を、例えば、UHF帯、2.45GHz帯の周波数信号によって送信するようにしてもよい。
【0085】
従って、本実施形態では、ゴムクローラ20の異常を検出し、ゴムクローラ20の異常を知らせることが可能になる。この結果、走行距離が少なくても、走行中の突発的な状況によりゴムクローラ20が著しく磨耗したり、亀裂が発生したり、スチールコード50が飛び出しりした場合等に、これらの異常を見過ごすことがない。この結果、ゴムクローラ20の異常に起因する車両10の異常振動を未然に防ぐと共に、車両10の異常振動による車両自体の異常を未然に防ぐことが可能となる。
【0086】
また、本実施形態では、車両10に搭載された信号受信機38によって、ゴムクローラ20に設けられたICタグ40に記憶された基準外形データを読み込むため、基準外形データを迅速且つ正確に記憶することが可能になる。
【0087】
また、本実施形態では、車両10に設けられた清掃装置34によって、ゴムクローラ20が清掃され、ゴムクローラ20に付着した泥等が落とされる。この結果、カメラセット44によってゴムクローラ20の外形を検出する際に、ゴムクローラ20に付着した泥等による検知精度の精度低下を防止でき、検知外形データD2の検出精度が向上する。
【0088】
また、本実施形態では、車両10に搭載されたカメラセット44によってゴムクローラ20の外形を検出するため、ゴムクローラ20の外形を画像(映像)として操作装置54のディスプレイ54Aに映し出すことが可能になる。
【0089】
また、本実施形態では、図2に示すように、芯金が無いゴムクローラ20において、ICタグ40をスチールコード50とガイドゴム20Aとの間に埋め込む。このため、ゴムクローラ20におけるICタグ40を埋め込み部位のゴム層が厚いので、ゴムクローラ20を加硫する際にICタグ40が熱の影響を受け難い。
【0090】
また、本実施形態では、図5に示すように、芯金51が有るゴムクローラ20の場合には、ICタグ40を隣接するスチールコード50の間でかつスチールコード50よりゴムクローラ20の内周側に埋め込む。このため、ICタグ40から信号受信機38への信号が芯金51に遮断させることがない。また、ゴムクローラ20におけるICタグ40を埋め込み部位のゴム層が厚いので、ゴムクローラ20を加硫する際にICタグ40が熱の影響を受け難い。
【0091】
〔上記実施形態の補足説明〕
【0092】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、上記実施形態では、履帯外形検出手段としての3個のカメラを備えたカメラセット44を使用したが、カメラの数は3個に限定されない。
【0093】
また、カメラに超音波測定器やレーザ距離測定器を使用した検知装置を併用した構成としてもよく、超音波測定器を使用した検知装置を含んだ構成では、履帯に泥が付着している場合にも、履帯と泥との超音波の反射率の違いから正確な履帯の外形を検知でき、履帯外形の検出精度が向上する。また、レーザー光を使用した検知装置を含んだ構成では、レーザ光の反射により履帯との距離を測定することで履帯外形を容易に検知可能となる。
【0094】
また、図示を省略したが、請求項1に記載の発明には、ゴムクローラ20に設けられたデータ記憶部材としてのICタグ40に記憶された基準外形データD1を信号受信機38を介して制御装置52に読み込む構成に代えて、請求項2に記載の発明のように、車両10に正常時のゴムクローラ20を装着した際に、カメラセット44で撮影した外形画像(検出外形)から正常時のゴムクローラ20の基準外形データD1を演算し、制御装置52のメモリ52Bに記憶する構成も含まれる。なお、この構成の場合には、信号受信機38とICタグ40を必要としないため、信号受信機38とICタグ40を使用する構成に比べて基準外形データを簡単な構成で記憶することが可能になる。
【0095】
また、図示を省略したが、請求項1に記載の発明には、基準外形データD1を操作装置54に設けたUSB端子等のデータ入力部54Cから制御装置52に読み込ませる構成も含まれる。なお、この構成の場合には、信号受信機38とICタグ40を使用する構成に比べて基準外形データを簡単な構成で正確に記憶することが可能になる。
【符号の説明】
【0096】
10 車両
20 ゴムクローラ(履帯)
20A ガイドゴム
20B ゴムラグ
34 清掃装置(履帯清掃手段)
38 信号受信機
40 ICタグ(データ記憶部材)
44 カメラセット(履帯外形検出手段)
52 制御装置(異常判定手段)
52A CPU
52B メモリ(記憶部)
54 操作装置
54A ディスプレイ(警告手段)
54B スピーカ(警告手段)
54C データ入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履帯にて走行する車両に搭載され、前記履帯の外形を検出する履帯外形検出手段と、
前記車両に搭載され、正常時における前記履帯の基準外形データを記憶する記憶部を有し、前記履帯外形検出手段から入力された検出外形から得られる検出外形データと前記基準外形データとに基づき、前記履帯が異常か否かを判定する異常判定手段と、
前記車両に搭載され、前記異常判定手段によって前記履帯が異常と判定された場合に警告する警告手段と、
を有する履帯監視装置。
【請求項2】
前記異常判定手段は、前記履帯外形検出手段で検出した正常時における前記履帯の検出外形から前記基準外形データを得て前記記憶部に記憶する請求項1に記載の履帯監視装置。
【請求項3】
前記異常判定手段は、前記履帯に設けられ前記履帯の前記基準外形データが記憶されたデータ記憶部材から前記基準外形データを読み込んで前記記憶部に記憶する請求項1に記載の履帯監視装置。
【請求項4】
前記車両に設けられ、前記履帯を清掃する履帯清掃手段を有する請求項1〜3の何れか1項に記載の履帯監視装置。
【請求項5】
前記履帯外形検出手段はカメラを含んで構成される請求項1〜4の何れか1項に記載の履帯監視装置。
【請求項6】
前記履帯外形測定手段は超音波を使用した検知装置を含んで構成される請求項1〜4の何れか1項に記載の履帯監視装置。
【請求項7】
前記履帯外形測定手段はレーザー光を使用した検知装置を含んで構成される請求項1〜4の何れか1項に記載の履帯監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−11623(P2011−11623A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157098(P2009−157098)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)