履物の殺菌脱臭装置および履物の殺菌脱臭方法
【課題】履物の直接的な紫外線照射によるダメージを抑えつつ、比較的に短時間で、優れた殺菌および脱臭効果が得られる、新規な構造の履物の殺菌脱臭装置を提供する。
【解決手段】上側および下側収容領域40,42の各奥壁部18には、それぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管44が配設されていると共に、天壁部20と奥壁部18に鏡面加工が施されており、一対の側壁部24a,24bと扉壁部30に光触媒層が形成されている一方、上側および下側収容領域40,42の各底部22,36において中央よりも奥壁部18側に各履物50,56の踵載置部52,58が設けられ、且つ中央よりも扉壁部30側に履物50,56の爪先載置部54,60が設けられている。
【解決手段】上側および下側収容領域40,42の各奥壁部18には、それぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管44が配設されていると共に、天壁部20と奥壁部18に鏡面加工が施されており、一対の側壁部24a,24bと扉壁部30に光触媒層が形成されている一方、上側および下側収容領域40,42の各底部22,36において中央よりも奥壁部18側に各履物50,56の踵載置部52,58が設けられ、且つ中央よりも扉壁部30側に履物50,56の爪先載置部54,60が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を利用して履物を殺菌および脱臭する履物の殺菌処理および脱臭処理に関連する技術に関するものであり、特に、例えばカプセルホテル等の個室毎に設置されて個人的使用向け等に好適に供され得る殺菌脱臭装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スリッパ等の履物を内部に収容配置して、履物に殺菌効果や脱臭効果を及ぼす装置が知られている。具体的には、例えば特許文献1(特開平07−255827号公報)には、装置内部に紫外線灯やオゾン発生器が設けられた構造が開示されている。かかる装置では、紫外線照射による殺菌効果に加え、オゾンによる臭気成分の酸化によって、紫外線照射だけでは不十分な脱臭効果の向上が図られている。
【0003】
しかしながら、オゾンは環境への悪影響等が懸念されることから、特許文献1に係る殺菌脱臭装置は、好ましいものではなかった。加えて、オゾンの外部への漏出を防ぐための構造が複雑になって、製造コストが嵩む等の問題もあった。
【0004】
このような問題に対処するため、例えば特許文献2(特開2000−254515号公報)や特許文献3(特開2001−120646号公報)には、装置内部に設けられた二酸化チタンに紫外線を照射して、酸化チタンによる光触媒反応により、臭気成分を化学分解し、脱臭効果を向上させる構造のクローゼットや下駄箱等の収納体が提案されている。
【0005】
ところが、これら特許文献2、特許文献3に示される従来構造の下駄箱等においては、未だ充分な殺菌脱臭効果を発揮し得るものではなかったのである。
【0006】
すなわち、特許文献2,3に記載のものは、何れも、玄関収納やクローゼット、多数の履物を収容する下駄箱や押し入れ、小屋などの大型の収納体に関するものであって、大型のボックス内に単に紫外線光源を設置すると共に、壁面等の一部に酸化チタン等の光触媒シートを収容しただけのものに過ぎない。なお、特許文献2には、このような単純な構造でも、自然対流による収納体内の循環によって充分な効果が発揮される旨の記載があるが、本願発明者が検討したところ、充分な殺菌脱臭効果を期待することが出来ない。
【0007】
ましてや、特に殺菌脱臭効果が要求される靴にあっては、つま先部分が完全に覆われて袋状とされていると共に、つま先部分から踵部分にまで延びるように周壁状に立ち上がっており、足を差し入れる口部が上方にだけ向かって開口しているに過ぎないことから、靴の内部奥方まで紫外線等による殺菌脱臭効果を至らせることが、極めて困難だったのである。
【0008】
特に、例えばカプセルホテルやビジネスホテル等では、宿泊するビジネスマン等が、一夜の寝ている時間だけで、外履きの靴と内履きのスリッパとを、略完全に殺菌脱臭することが要求されている実情があるが、それに応える程に大きな殺菌脱臭効果を発揮し得るだけの履物の殺菌脱臭装置は、未だ提供されていないのが実情であった。
【0009】
なお、大きな殺菌脱臭効果を得るためには、紫外線の強度を大きくすることも考えられるが、単に紫外線強度を大きくするだけでは、履物に対して紫外線が過度に強く照射される部分が発生することとなり、その結果、履物の特定部位において紫外線照射による変質等の不具合が発生するおそれがある。それ故、必ずしも有効な方策ではない。
【0010】
【特許文献1】特開平07−255827号公報
【特許文献2】特開2000−254515号公報
【特許文献3】特開2001−120646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、履物に対してダメージが及ぼされる程の過度の強度の紫外線照射を必要とすることなく、一夜等の比較的に短時間で優れた殺菌および脱臭効果を得ることが出来る、例えばカプセルホテルやビジネスホテル等の設置にて個人利用に供して好適で新規な構造の履物の殺菌脱臭装置および殺菌脱臭方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0013】
すなわち、履物の殺菌脱臭装置に関する本発明の特徴とするところは、開閉扉を備えた矩形箱状を有しており、内側で互いに離隔して対向位置せしめられた奥壁部と扉壁部、天壁部と底壁部および一対の側壁部によって画成された収容領域に履物を収容配置して、該履物を殺菌および脱臭せしめる履物の殺菌脱臭装置において、前記収容領域の高さ方向中間部分には複数の透孔を備えた仕切部材が配設されて、該仕切部材を挟んで前記天壁部側に上側収容領域が形成されていると共に前記底壁部側に下側収容領域が形成されており、該上側収容領域の該奥壁部と該下側収容領域の該奥壁部には、それぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管が配設されていると共に、該天壁部と前記奥壁部にはそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されており、前記一対の側壁部と前記扉壁部にはそれぞれ全表面に亘って光触媒層が形成されている一方、該上側収容領域の底部を構成する該仕切部材において中央よりも該奥壁部側に前記履物としての上履きの踵載置部が設けられ、且つ該中央よりも該扉壁部側に該上履きの爪先載置部が設けられていると共に、該下側収容領域の底部を構成する該底壁部において中央よりも該奥壁部側に該履物としての下履きの踵載置部が設けられ、且つ該中央よりも該扉壁部側に該下履きの爪先載置部が設けられている履物の殺菌脱臭装置にある。
【0014】
このような本発明に従う構造とされた履物の殺菌脱臭装置においては、履物が、爪先部を扉側に向け且つ踵部を奥壁部側の紫外線照射管に向けて収容配置されることによって、爪先部が踵部よりも紫外線照射管から離隔して載置されることとなり、爪先部の紫外線照射量が踵部の紫外線照射量に比して小さくなる。これにより、爪先部において紫外線照射量が過度に大きくなることが抑えられて、特に靴の目立つ箇所である爪先の紫外線による変色焼けのおそれが回避される。
【0015】
一方、紫外線照射管が奥壁部の上側部分に設置されて、履物の履き口の略上方に照射管が位置せしめられることによって、雑菌等のこもりやすい履物の内側部分に紫外線が効率良く照射されて、殺菌効果が有利に発揮され得る。即ち、好ましくは、紫外線照射官は、履物の踵の高さよりも上方に位置して水平方向に延びるように配設されることとなり、これにより、紫外線照射管と踵との離隔距離が大きくされると共に、紫外線照射管から照射される紫外線が靴の履き口から直接に靴内に差し込むようにされる。
【0016】
しかも、天壁部と奥壁部の各全表面に施された鏡面加工による反射や再反射等を利用して、紫外線が履物の広い範囲に照射される結果、靴の内部に対してより多様な入射角度で紫外線が照射されることとなり、爪先部における紫外線の直接的な照射を抑えつつ、履物全体とくに履物の内部の全体にまで紫外線がより均等に照射されることとなる。その結果、履物の内部や外部の広い範囲が略均等に効率良く殺菌脱臭されるのである。
【0017】
さらに、一対の側壁部と扉壁部に光触媒層が形成されていることによって、前述の天壁部および奥壁部の鏡面加工と相俟って、側壁部および扉壁部による光触媒反応を履物の略全体に亘って及ぼすことが可能となる。これにより、履物から放出される臭気成分を効率良く化学分解せしめ、履物の脱臭効果が有利に発揮される。
【0018】
特に本構造では、収容領域を上側収容領域と下側収容領域に分けて、上履きと下履きがそれぞれ独立して収容配置されるようにしたことから、上履きや下履きの形状や大きさに応じて、各収容領域における形状や大きさ、紫外線照射管の位置等を設定変更することが可能となり、各履物における殺菌および脱臭効果の更なる向上が図られ得る。
【0019】
また、上履きと下履きを同時に収容配置して殺菌および脱臭処理を施すことが可能であることから、例えば、上履きと下履きを何れも使用することのない使用者の就寝時に上履きと下履きを収容配置して、起床時に殺菌および脱臭処理を完了するようにしても良く、それによって、時間を有効利用した両履物の殺菌および脱臭効果が得られる。このような就寝している短時間での効果的な殺菌脱臭効果を得ることが出来るのも、優れた殺菌脱臭効果を有するが故である。
【0020】
また、上側収容領域と下側収容領域が仕切部材に設けられた通孔を通じて連通せしめられることで、両領域で紫外線の交換を可能としてより一層の照射光の均一化を図ることが出来ると共に、収容領域全体での空気の対流を効率良く生ぜしめることが可能となり、換気作用が有利に発揮されることに基づき殺菌および脱臭効果が有利に発揮され得る。特に、下側収容領域を下履きの収容領域としたことで、上方に開口する通孔を通じて、下履きの履き口に向けて紫外線を一層効率的に入射させることも可能となる。即ち、一般に、上履きはスリッパ構造とされて踵部分の立ち上がりがないことから、踵側から照射される紫外線がつま先奥方まで容易に到達し得るが、靴構造の下履きでは、履き口が上方に開口するだけであるから、つま先奥方まで紫外線が到達し難い傾向にあるが、本発明では、仕切部材の通孔を通じて上側収容領域に設置された紫外線照射管からの紫外線も、下側収容領域に収容された靴の内部にまで導かれて、靴に対して一層効果的な殺菌脱臭効果が発揮され得るのである。
【0021】
それ故、本構造に従えば、履物の過度の局所的な紫外線照射によるダメージを抑えつつ、比較的に短時間で、優れた殺菌および脱臭効果が得られるのである。
【0022】
また、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置においては、前記仕切部材の上下両面に鏡面加工が施されている構造が、好適に採用される。このような構造によれば、上側収容領域と下側収容領域における紫外線の反射作用が一層大きくなり、上履きと下履きをより広範囲に亘って殺菌および脱臭せしめることが出来る。
【0023】
また、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置においては、前記奥壁部、前記扉壁部、前記天壁部、前記底壁部および前記一対の側壁部がステンレス鋼板を用いて形成されていると共に、それら各壁部の接合構造が前記収容領域に露出しないように外部に設けられている構造が、好適に採用される。なお、各壁部の接合構造としては、溶接や接着、リベットやボルト等の各種の構造が採用され得る。そして、それら各壁部が互いに組み合わされて各壁部の外周部分がリベットを用いて固定され、リベットが収容領域に露出しないようにして収容領域が形成されていることにより、ステンレス鋼板による優れた耐蝕性や強度が得られることに加え、収容領域に露出しない接合構造を採用したことで、収容領域を一層有利に確保できて使用性も向上されると共に、壁部の溶接等による変色焼けやリベットが露出することによる鏡面加工の反射作用の低下が回避されることとなり、紫外線の反射に基づく殺菌および脱臭効果の更なる向上も図られ得る。
【0024】
また、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置においては、前記複数の通孔を備えた前記仕切部材が、矩形平板形状のステンレス鋼板に打抜き加工を施すことにより形成されている構造が、好適に採用される。このような構造によれば、仕切部材の強度や耐蝕性が有利に確保されつつ、比較的に簡単な構造で実現され得る。また、ステンレス鋼板を利用することにより、仕切部材の表面に対しても鏡面加工等を施すことが可能となり、紫外線をより多様に反射させて紫外線の照射領域を一層広範にわたり均一化すること等が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置においては、前記収容領域の内法寸法における高さと幅と奥行きの各寸法が何れも250〜500mmとされており、宿泊施設の個別部屋に設置されて個人用に供される構造が、採用されても良い。このような構造によれば、上履きと下履きを一足づつ収容せしめて、全体構造がコンパクトに実現されることを利用して、ホテルや旅館等の宿泊施設の個別部屋に有利に設置すること出来る。また、宿泊客が上履きと下履きの両方を装置に収容して就寝し、起床時に上履きおよび下履きの殺菌および脱臭処理を完了することも可能であり、それによって、宿泊施設の上履きの清潔性が高度に保たれると共に、チェックアウト後も宿泊客が下履きを快適に使用することが出来、優れたサービスが提供され得る。特に、かくの如き容積を設定することで、一人分の上下履物の収容領域を充分に確保しつつ、紫外線の照射量を全体に亘って略均一にすることが出来ると共に、収容される履物に対して特につま先等の全体に亘って紫外線や光触媒作用による殺菌脱臭効果を、まんべんなく発揮させることが可能となるのである。
【0026】
また、履物の殺菌脱臭方法に関する本発明の特徴とするところは、開閉扉を備えた矩形箱状体からなり、内側で互いに離隔して対向位置せしめられた奥壁部と扉壁部、天壁部と底壁部および一対の側壁部によって収容領域が画成されていると共に、該収容領域の高さ方向中間部分に複数の透孔を備えた仕切部材が配設されて、該仕切部材を挟んで前記天壁部側に上側収容領域が形成されていると共に前記底壁部側に下側収容領域が形成され、更に、該上側収容領域の前記奥壁部と該下側収容領域の該奥壁部にはそれぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管が配設されていると共に、該天壁部と該奥壁部にはそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されており、該一対の側壁部と前記扉壁部にはそれぞれ全表面に亘って光触媒層が形成されてなる履物の殺菌脱臭装置を用い、かかる履物の殺菌脱臭装置における前記仕切部材に前記履物としての上履きを載置して前記上側収容領域に収容し、該上履きの踵部分を前記奥壁部に向けると共に該上履きの爪先部分を前記扉壁部に向けると共に、該履物の殺菌脱臭装置における前記底壁部に前記履物としての下履きを載置して前記下側収容領域に収容し、該下履きの踵部分を前記奥壁部に向けると共に該下履きの爪先部分を前記扉壁部に向けることにより、それら上履きと下履きを前記収容域領域に収容した後、前記開閉扉を閉じて該収容領域を外部空間から遮断すると共に、該上側収容領域の前記紫外線照射管と該下側収容領域の前記該紫外線照射管を通電発光させて該上履きと該下履きを同時に殺菌処理および脱臭処理する履物の殺菌脱臭方法にある。
【0027】
このような本発明方法に従えば、前述の本発明に係る履物の殺菌脱臭装置の説明からも明らかなように、履物の直接的な紫外線照射によるダメージを抑えつつ、比較的に短時間で、優れた殺菌および脱臭効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1には、本発明の履物の殺菌脱臭装置に係る一実施形態としての履物収納ボックス10が示されている。この履物収容ボックス10は、ボックス本体12や開閉扉14を含んで構成されており、それらボックス本体12や開閉扉14が協働して略矩形箱状を呈している。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向や左右方向は、図1中の上下方向や左右方向をいう。
【0029】
詳細には、ボックス本体12は、正面に開口する略矩形器状のハウジング16の内側に奥壁部18や天壁部20、底壁部22、一対の側壁部としての右側壁部24aおよび左側壁部24bが所定距離を隔てて配設されることによって、二重壁構造を呈している。
【0030】
これら奥壁部18や天壁部20、底壁部22、一対の側壁部24a,24bは、図2等にも示されているように、略矩形平板形状を有するステンレス鋼板を用いて形成されており、天壁部20と底壁部22が互いに左右方向に延び且つ上下方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられていると共に、左側壁部24bと右側壁部24aが互いに上下方向に延び且つ左右方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
【0031】
また、天壁部20や底壁部22、一対の側壁部24a,24bの各奥行き方向の端部には、奥壁部18の外周部分が重ね合わせられている。各重ね合わせ部分の少なくとも一方には、各壁部18,20,22,24の外周側となるハウジング16側に広がる、図示しない鍔状部が形成されており、かかる鍔状部が他方に重ね合わせられて図示しないリベットを用いて固定されることにより、奥壁部18や天壁部20、底壁部22、一対の側壁部24a,24bが互いに固定されて、ハウジング16よりも一回り小さな大きさで奥行き方向手前に開口する矩形器状を呈している。これらの壁部18,20,22,24がハウジング16の内側に所定距離を隔てて嵌め込まれるような形態で、ハウジング16に図示しないリベットやボルト等で固定されている。
【0032】
なお、本実施形態では、天壁部20や底壁部22、一対の側壁部24a,24bが、それぞれ独立したステンレス鋼板を継ぎ合わせるようにして固定されているが、これに限定されるものでなく、例えば、それら複数の壁部18,20,22,24の一部乃至は全部が一枚のステンレス鋼板を用いて一体形成されて、プレス加工により前述の矩形器状が構成されるようにしても良い。
【0033】
また、ハウジング16の開口部には、略矩形平板形状を有する開閉扉14が、枢乃至は蝶番等を介して開閉可能に取り付けられており、開閉扉14の縁部における磁性材で形成された部位が、ハウジング16の開口縁部や側壁部24bの端部に固設されたマグネット26,26に重ね合わせられることによって、磁力に基づき、ハウジング16を備えたボックス本体12の開口部が、開閉扉14で流体密に閉じられるようになっている。開閉扉14に形成された取手部28をボックス本体12に対して引いたり押したりすることで、ボックス本体12の開口部の開け閉めが実現される。
【0034】
ボックス本体12の開口部が閉じた状態で、開閉扉14の内壁部が、ボックス本体12の奥壁部18と奥行き方向に側壁部24の略幅寸法に相当する所定距離を隔てて対向位置せしめられており、かかる内壁部によって本実施形態に係る扉壁部30が構成されている。扉壁部30は、ボックス本体12の各壁部18,20,22,24と同様に、略矩形平板形状を有するステンレス鋼板を用いて形成されている。
【0035】
このようにボックス本体12の閉状態下、ボックス本体12における奥壁部18や天壁部20、底壁部22、一対の側壁部24a,24bと開閉扉14の扉壁部30が協働して、履物収容ボックス10の内部に略矩形箱状の収容領域32が画成されている。また、扉壁部30には、ボックス本体12の開口部が閉じた状態で、収容領域32における紫外線漏れを防止しつつ、外部から収容領域32を視認することが可能な窓部34が形成されている。
【0036】
収容領域32の高さ方向(図1中、上下)の中間部分には、仕切部材としての仕切板部36が設けられている。仕切板部36は、図3にも示されているように、収容領域32を構成する各壁部18,20,22,24,30と同様な略矩形平板形状を有するステンレス鋼板を用いて、プレス加工により形成されている。仕切板部36の横幅方向(図3中、左右)の寸法が、収容領域32における一対の側壁部24a,24bの対向面間の距離よりも小さくされていると共に、仕切板部36の縦幅方向(図3中、上下)の寸法が、収容領域32における奥壁部18と扉壁部30の対向面間の距離、更には側壁部24の幅寸法よりも小さくされている。
【0037】
本実施形態では、プレス成形による打抜き加工に伴い、仕切板部36に複数の通孔38が貫設されている。通孔38は、仕切板部36の縦幅方向に長手状に延びていると共に、両端部分が半円形状を有している。通孔38は、仕切板部36の横幅方向に等間隔に6つ形成され、且つ縦幅方向に離隔して二列設けられていることで、仕切板部36に12個形成されている。
【0038】
また、収容領域32の右側壁部24aと左側壁部24bの高さ方向中間部分には、それぞれ幅方向に離隔して、図示しない複数の係止ピンが突設されており、仕切板部36の横幅方向の両端に形成された複数の溝部に係止ピンが挿入されて、仕切板部36が、天壁部20や底壁部22と平行に延びるようにして両側壁部24a,24bに支持されるようになっている。ここで、収容領域32の奥行き方向で、仕切板部36の扉壁部30に対向位置せしめられる縁部が、扉壁部30よりも奥方向に位置せしめられていて、扉壁部30と離隔せしめられている。また、仕切板部36の外周縁部が側壁部24や奥壁部18に当接するか否かは特に限定されるものでない。
【0039】
これにより、収容領域32が仕切板部36で高さ方向に二分されて、収容領域32の仕切板部36を挟んだ上方には、仕切板部36や天壁部20、奥壁部18、扉壁部30、一対の側壁部24a,24bで画成された矩形状の空間により、上側収容領域40が形成されていると共に、収容領域32の仕切板部36を挟んだ下方には、仕切板部36や底壁部22、奥壁部18、扉壁部30、一対の側壁部24a,24bで画成された矩形状の空間により、下側収容領域42が形成されている。これら上側収容領域40と下側収容領域42は、仕切板部36と扉壁部30の間の隙間や仕切板部36に形成された複数の通孔38を通じて相互に連通せしめられている。
【0040】
特に本実施形態では、仕切板部36が収容領域32の高さ方向中央部分よりも天壁部20側に偏倚して設けられていることで、下側収容領域42が、上側収容領域40よりも大きくされている。
【0041】
また、上側収容領域40と下側収容領域42の各奥壁部18には、紫外線照射管としての殺菌灯44が設けられている。殺菌灯44は、波長が254nmの紫外線または320〜400nmの近紫外線を照射する棒状の公知の紫外線照射装置とされ、ホルダを介して奥壁部18に設置されている。また、ボックス本体12における奥壁部18や側壁部24とハウジング16の間の隙間には、殺菌灯44の紫外線照射を制御する制御装置が内蔵されている。
【0042】
制御装置は、電源に接続されて殺菌灯44に電力を供給する供給回路や、リレーを介して開閉することにより電源からの電力を供給回路に遮断/供給するリレー接点、ハウジング16の外部に突設されて、ON/OFFすることによりリレーを介してリレー接点を閉じたり開いたりする操作スイッチ46やリレー接点の開閉に伴い消滅/点灯する表示ランプ48を含んで構成されている。これにより、操作スイッチ46をONして、殺菌灯44から紫外線を収容領域32内に照射すると共に、点灯する表示ランプ48を通じて、収容領域32に紫外線が照射されている状態を外部から把握することが出来る。また、操作スイッチ46をOFFして、殺菌灯44から紫外線を照射しないようにすると共に、表示ランプ48が点灯していないことで、収容領域32に紫外線が照射されていないことを外部から把握することが可能となる。なお、制御装置には、操作スイッチ46をONしてリレー接点が閉じた状態から所定時間が経過した後にリレー接点を開くようにリレーに信号を送る計時回路を特別に設けて、紫外線が所定の時間だけ収容領域32内に照射するようにしても良い。
【0043】
そこにおいて、ボックス本体12の天壁部20と奥壁部18に加え仕切板部36には、それぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されている。鏡面加工は、要求される製作性や紫外線の反射作用に応じて適宜に設定変更されるものであって、特に限定されるものでなく、例えば金属材からなる壁部18,20の表面を磨いたり、表面に錫メッキを施したり、紫外線を反射する金属層を表面に被着形成したりすることによって実現される。
【0044】
さらに、ボックス本体12における一対の側壁部24a,24bと開閉扉14の扉壁部30には、二酸化チタンからなる薄膜がそれぞれ全表面に亘って塗布等で付着されていることによって、光触媒層が形成されている。なお、光触媒層には、例示の如き二酸化チタンの他、酸化亜鉛や三酸化タングステン、酸化セリウム、過酸化チタン等の各種金属酸化物が採用されても良い。
【0045】
また、上側収容領域40に設けられる殺菌灯44aと下側収容領域42に設けられる殺菌灯44bは、それぞれ各奥壁部18,18の高さ方向(図1中、上下)の中央部分よりも上側部分を略水平方向(図1〜3中、左右)に延びるようにして配されている。
【0046】
ここで、本実施形態の履物収容ボックス10においては、下側収容領域42の底部を構成するボックス本体12の底壁部22に下履きが載置されるようになっており、図2には、下履きとしての革靴50が載置された具体例が示されている。
【0047】
より具体的には、底壁部22の中央部分を挟んで殺菌灯44bが設置される奥壁部18の側(図2中、上)に踵載置部52が設けられていると共に、中央部分を挟んで扉壁部30の側(図2中、下)に爪先載置部54が設けられている。また、踵載置部52は、底壁部22の中央部分を挟んで左右方向に分割されており、踵載置部52の中央を挟んでボックス本体18の左側壁部24bの側(図2中、左)が右足用踵載置部52aとされていると共に、踵載置部52の中央を挟んでボックス本体18の右側壁部24aの側(図2中、右)が、左足用踵載置部52bとされている。更に、爪先載置部54も、底壁部22の中央部分を挟んで左右方向に分割されており、爪先載置部54の中央を挟んでボックス本体18の左側壁部24bの側が右足用爪先載置部54aとされていると共に、爪先載置部54の中央を挟んでボックス本体18の右側壁部24aの側(図2中、右)が、左足用爪先載置部54bとされている。
【0048】
而して、革靴の右足用50aの踵部が底壁部22の右足用踵載置部52aに載置され、且つ右足用50aの爪先部が底壁部22の右足用爪先部54aに載置されるようになっていると共に、革靴の左足用50bの踵部が底壁部22の左足用踵載置部52bに載置され、且つ左足用50bの爪先部が底壁部22の左足用爪先部54bに載置されるようになっている。要するに、革靴50の踵部が殺菌灯44b側に向けて載置されると共に、革靴50の爪先部が扉壁部30側に向けて載置される。
【0049】
一方、上側収容領域40の底部を構成するボックス本体12の仕切板部36に上履きが載置されるようになっており、図3には、上履きとしてのスリッパ56が載置された具体例が示されている。
【0050】
より具体的には、前述の下側収容領域42の底壁部22と同様に、仕切板部36の中央部分を挟んで奥壁部18の側(図3中、上)の左側壁部24bの側(図3中、左)に右足用踵載置部58aが設けられていると共に、中央部分を挟んで扉壁部30の側(図3中、下)の左側壁部24bの側(図3中、左)に右足用爪先載置部60aが設けられている。また、仕切板部36の中央部分を挟んで奥壁部18の側(図3中、上)の右側壁部24aの側(図3中、右)に左足用踵載置部58bが設けられていると共に、中央部分を挟んで扉壁部30の側(図3中、下)の右側壁部24aの側(図3中、右)に左足用爪先載置部60bが設けられている。
【0051】
而して、スリッパの右足用56aの踵部が仕切板部36の右足用踵載置部58aに載置され、且つ右足用56aの爪先部が仕切板部36の右足用爪先部60aに載置されるようになっていると共に、スリッパの左足用56bの踵部が仕切板部36の左足用踵載置部58bに載置され、且つ左足用56bの爪先部が仕切板部36の左足用爪先部60bに載置されるようになっている。要するに、スリッパ56の踵部が殺菌灯44a側に向けて載置されると共に、スリッパ56の爪先部が扉壁部30側に向けて載置される。
【0052】
ここで、上側収容領域40や下側収容領域42は、一般的な大きさのスリッパ56や革靴50がある程度の隙間寸法をもって収容配置されて、各収容領域40,42に設けられた殺菌灯44a,44bから大きく離隔せず、且つ殺菌灯44a,44bに近づき過ぎないように設計されている。具体的に、例えば収容領域32の内法寸法で、上側収容領域40の高さ寸法が80〜200mmとされていると共に、下側収容領域42の高さ寸法が160〜400mmとされている。また、上側および下側収容領域40,42を含んでなる収容領域32の内法寸法(収容領域32の対向面間の差し渡し寸法)における高さ寸法が、より望ましくは250〜500mmとされている。更に、収容領域32の内法寸法における幅寸法と奥行き寸法が、それぞれ250〜500mmとされている。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る履物収容ボックス10は、内部の上側収容領域40と下側収容領域42にそれぞれ上履き(スリッパ56)と下履き(革靴50)を一足づつ収容配置せしめる専用品とされており、全体としてコンパクトに形成されている。これにより、かかる履物収容ボックス10が、例えばホテルや旅館等の宿泊施設の個別部屋や一人住まいの住宅等に設置されて個人用として好適に採用され得る。また、スリッパ56が宿泊施設が宿泊客に貸し与えたものとされる一方、革靴50が宿泊客のものとされても良く、本実施形態では、それらを同時にまたは片方づつ紫外線を照射して、殺菌脱臭処理を施すことも可能とされている。
【0054】
しかも、仕切板部36と底壁部22にそれぞれ載置されて、開閉扉14が閉じられることにより上側収容領域40と下側収容領域42に収容配置されるスリッパ56と革靴50においては、踵部が奥壁部18側を背にして殺菌灯44a,44bと高さ方向に所定距離(本実施形態では少なくとも各履物の高さ寸法の2倍)だけ離隔せしめられていると共に、殺菌灯44a,44bからの紫外線の照射範囲が、奥壁部18や天壁部20、仕切板部36の紫外線反射を利用して、履物の略全体に及ぼされるようになっている(図4,9参照。)。
【0055】
したがって、上述の如き構造とされた履物収容ボックス10においては、殺菌灯44からの離隔距離が踵部に比して大きな爪先部は勿論のこと、殺菌灯44の最も近くに位置せしめられる踵部においても所定距離だけ離隔されていることによって、履物の紫外線照射による変色焼け等の変質のおそれが有利に回避される。
【0056】
ここで、ボックス本体12の天壁部20や奥壁部18、仕切板部36のそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されていることから、紫外線の反射作用により、履物の踵部や側壁部、爪先部の広い範囲に照射せしめることが可能となる。
【0057】
さらに、ボックス本体12における一対の側壁部24a,24bと扉壁部30に光触媒層が形成されていることによって、前述の天壁部20や奥壁部18、仕切板部36の鏡面加工と相俟って、側壁部24および扉壁部30による光触媒反応を履物の略全体に亘って及ぼすことが可能となる。これにより、履物から放出される臭気成分を効率良く化学分解せしめ、履物の脱臭効果が有利に発揮される。
【0058】
また、本実施形態では、奥壁部18や扉壁部30、天壁部20、底壁部22、一対の側壁部24a,24bを固定するリベット等の接合構造が収容領域32に露出しないような構造とされていることから、接合構造の露出に起因する鏡面加工の反射作用の低下が回避されることとなり、所期の紫外線反射作用が安定して発揮され得る。
【0059】
それ故、本実施形態に係る履物収容ボックスによれば、履物の直接的な紫外線照射によるダメージを抑えつつ、比較的に短時間で、優れた殺菌および脱臭効果が得られるのである。
【0060】
また、本構造に係る履物収容ボックス10を用いれば、上側収容領域40の仕切板部36において中央よりも奥壁部18側に上履きの踵部を載置し、且つ中央よりも扉壁部30側に上履きの爪先部を載置すると共に、下側収容領域42の底壁部22において中央よりも奥壁部18側に下履きの踵部を載置し、且つ中央よりも扉壁部30側に下履きの爪先部を載置して、上履きおよび下履きを収容領域32に収容した後、開閉扉14を閉じて収容領域32を外部空間から遮断すると共に、上側および下側収容領域40,42の各殺菌灯44をONして通電発光させることにより、履物の直接的な紫外線照射によるダメージを抑えつつ、比較的に短時間で、優れた殺菌および脱臭効果を得る履物の殺菌脱臭方法が有利に実現され得るのである。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であり、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0062】
例えば、ボックス本体12や開閉扉14、収容領域32、仕切板部36、殺菌灯44等における形状や大きさ、構造、位置、数等の形態は、例示の如きものに限定されるものでない。
【0063】
具体的に、前記実施形態では、殺菌灯44が上側収容領域40と下側収容領域42において、それぞれ一本ずつ設けられていたが、二本以上採用して、それらを奥壁部の高さ方向や幅方向に並列的に設けることも可能である。
【0064】
また、前記実施形態では、矩形平板形状のステンレス鋼板に打抜き加工を施すことで複数の通孔38を備えた仕切板部36が形成されていたが、例えば仕切板部として、金網やメッシュ構造の板等を用いることも可能である。
【0065】
さらに、前記実施形態で示された革靴50やスリッパ56の他、ブーツや下駄、サンダル等の履物全般に関して適用可能であることは勿論であり、上側収容領域や下側収容領域、奥壁部や天壁部、底壁部、仕切板部を含むボックス本体、扉壁部を含む開閉扉、殺菌灯等が主として収容せしめられる履物の種類に応じて適宜に設計変更されることは言うまでもない。
【0066】
また、適当な時間が予め設定されたタイマや、任意の時間を設定できるタイマを設けて、スイッチをONしてからOFFになる迄の時間を設定することで、紫外線照射管の発光が自動的に切れるようにしても良い。その場合において、殺菌脱臭が困難な下側領域の下履きの方が、上側領域の上履きよりも長時間に亘って紫外線照射されるように、下側収容領域の紫外線照射管よりも上側収容領域の紫外線照射管よりも長時間継続して発光されるように設定しておくことも可能であり、それによって、上履きに対して不必要に紫外線照射されることに起因する変質等の不具合発生も回避され得る。
【0067】
また、本発明においては、上履きの収容領域と下履きの収容領域を特定して設定したことにより、上履きと下履きを効率的に殺菌脱臭することが可能であり、上側収容領域と下側収容領域において各別に異なる条件を設定することが出来るという特徴がある。具体的には、例えば、上側収容領域の紫外線照射管よりも下側収容領域の紫外線照射管の方が紫外線発光量を多くするように、例えば高照度の照射管を使用したり、上側より下側の収容領域の方が多数の照射管を設置したりすることも可能である。このような態様によれば、殺菌脱臭が容易な上履きと難しい下履きに対して、略同時間で何れも効果的に処理することが出来、不必要な照射に起因する時間,電力の無駄や材質の変質等の不具合も軽減乃至は回避することが可能となるのである。
【実施例】
【0068】
次に、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置の殺菌脱臭効果について確認するために行った試験を実施例として説明するが、本発明はかかる具体例に限定されるものでない。
【0069】
先ず、前記実施形態に係る履物収容ボックス10を準備する。ここで、図4にも示されているように、履物収容ボックス10の上側収容領域40において、殺菌灯44aの中心から仕切板部36までの高さ寸法を190mmに設定する。また、上履き62の爪先部を仕切板部36の爪先載置部に載置すると共に、上履き62の踵部を仕切板部36の踵載置部に載置する。また、上履き62の爪先部の内側底部をA部とし、上履き62の爪先部と踵部の間の内側底部をB部とし、上履き62の踵部の内側底部をC部とする。A部は殺菌灯44aの中心から直線距離で260mm離隔している。B部は殺菌灯44aの中心から直線距離で210mm離隔している。C部は殺菌灯44aの中心から直線距離で160mm離隔している。そして、図5に示されるように、10ppmのメチレンブルーを綿布に0.05cc付着させたものを、A部、B部、C部にそれぞれ設置して、殺菌灯44aから紫外線を2時間照射した後に綿布に染みたメチレンブルーの色の様子を観察した。その結果を、実施例として図6(a),図7(a),図8(a)に示す。また、更に図5に示されるような10ppmのメチレンブルーを綿布に0.05cc付着させたものを、A部、B部、C部にそれぞれ設置して、殺菌灯44aから紫外線を5時間照射した後に綿布に染みたメチレンブルーの色の様子を観察した。その結果を、実施例として図6(b),図7(b),図8(b)に示す。
【0070】
また、図9にも示されているように、前述の履物収容ボックス10の下側収容領域42において、殺菌灯44bの中心から底壁部22までの高さ寸法を295mmに設定する。また、下履き64の爪先部を底壁部22の爪先載置部に載置すると共に、下履き64の踵部を底壁部22の踵載置部に載置する。また、下履き64の爪先部の内側底部をA部とし、下履き64の爪先部と踵部の間の内側底部をB部とし、下履き64の踵部の内側底部をC部とする。A部は殺菌灯44bの中心から直線距離で330mm離隔している。B部は殺菌灯44bの中心から直線距離で295mm離隔している。C部は殺菌灯44bの中心から直線距離で260mm離隔している。そして、図10に示されるように、10ppmのメチレンブルーを綿布に0.05cc付着させたものを、A部、B部、C部にそれぞれ設置して、殺菌灯44bから紫外線を5時間照射した後に綿布に染みたメチレンブルーの色の様子を観察した。その結果を、実施例として図11,図12,図13に示す。
【0071】
これら図6〜8や図11〜13に示される結果からも、本実施例に係る綿布に染みたメチレンブルーの色の状態が、紫外線を照射する前の図5,10に示される如き比較例に係る綿布に染みたメチレンブルーの色の状態に比して薄くなっていることから、細菌の染色色素として把握される色が薄くなっていることに基づき、何れの実施例においても、殺菌脱臭効果が有利に得られることが認められる。
【0072】
また、図6〜8の結果から、2時間照射したものと5時間照射したものとを比較すると、5時間照射した方がより薄くなっていることが確認され、しかも5時間照射したもののA部、B部、C部の全てにおいてより顕著な色落ちが確認されることから、5時間照射すると目的とする殺菌、脱臭効果が十分に得られることが明らかである。また、この5時間という時間は、一般的な睡眠時間内に相当することから、就寝前に本発明に係る履物の殺菌脱臭装置に上履きと下履きを入れて、殺菌灯をONすることにより、起床時には履物に優れた殺菌脱臭処理が施されているものと考える。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態としての履物収容ボックスの開閉扉を開けた状態を示す斜視図。
【図2】同履物収容ボックスの一部を構成する底壁部に靴を載置した状態を示す平面説明図。
【図3】同履物収容ボックスの一部を構成する仕切板部にスリッパを載置した状態を示す平面説明図。
【図4】本発明に係る履物の殺菌脱臭装置の殺菌脱臭効果について確認するために行った実施例の条件設定を示す説明図。
【図5】同実施例に対する比較例としてメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図6】同実施例の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図7】同実施例の別の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図8】同実施例のまた別の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図9】本発明に係る履物の殺菌脱臭装置の殺菌脱臭効果について確認するために行った実施例において、図4の実施例と異なる条件設定を示す説明図。
【図10】図9に示される実施例に対する比較例としてメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図11】同実施例の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図12】同実施例の別の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図13】同実施例のまた別の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【符号の説明】
【0074】
10:履物収容ボックス、14:開閉扉、18:奥壁部、20:天壁部、22:底壁部、24:側壁部、30:扉壁部、32:収容領域、36:仕切板部、40:上側収容領域、42:下側収容領域、44:殺菌灯、50:革靴、52:踵載置部、54:爪先載置部、56:スリッパ、58:踵載置部、60:爪先載置部
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を利用して履物を殺菌および脱臭する履物の殺菌処理および脱臭処理に関連する技術に関するものであり、特に、例えばカプセルホテル等の個室毎に設置されて個人的使用向け等に好適に供され得る殺菌脱臭装置等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、スリッパ等の履物を内部に収容配置して、履物に殺菌効果や脱臭効果を及ぼす装置が知られている。具体的には、例えば特許文献1(特開平07−255827号公報)には、装置内部に紫外線灯やオゾン発生器が設けられた構造が開示されている。かかる装置では、紫外線照射による殺菌効果に加え、オゾンによる臭気成分の酸化によって、紫外線照射だけでは不十分な脱臭効果の向上が図られている。
【0003】
しかしながら、オゾンは環境への悪影響等が懸念されることから、特許文献1に係る殺菌脱臭装置は、好ましいものではなかった。加えて、オゾンの外部への漏出を防ぐための構造が複雑になって、製造コストが嵩む等の問題もあった。
【0004】
このような問題に対処するため、例えば特許文献2(特開2000−254515号公報)や特許文献3(特開2001−120646号公報)には、装置内部に設けられた二酸化チタンに紫外線を照射して、酸化チタンによる光触媒反応により、臭気成分を化学分解し、脱臭効果を向上させる構造のクローゼットや下駄箱等の収納体が提案されている。
【0005】
ところが、これら特許文献2、特許文献3に示される従来構造の下駄箱等においては、未だ充分な殺菌脱臭効果を発揮し得るものではなかったのである。
【0006】
すなわち、特許文献2,3に記載のものは、何れも、玄関収納やクローゼット、多数の履物を収容する下駄箱や押し入れ、小屋などの大型の収納体に関するものであって、大型のボックス内に単に紫外線光源を設置すると共に、壁面等の一部に酸化チタン等の光触媒シートを収容しただけのものに過ぎない。なお、特許文献2には、このような単純な構造でも、自然対流による収納体内の循環によって充分な効果が発揮される旨の記載があるが、本願発明者が検討したところ、充分な殺菌脱臭効果を期待することが出来ない。
【0007】
ましてや、特に殺菌脱臭効果が要求される靴にあっては、つま先部分が完全に覆われて袋状とされていると共に、つま先部分から踵部分にまで延びるように周壁状に立ち上がっており、足を差し入れる口部が上方にだけ向かって開口しているに過ぎないことから、靴の内部奥方まで紫外線等による殺菌脱臭効果を至らせることが、極めて困難だったのである。
【0008】
特に、例えばカプセルホテルやビジネスホテル等では、宿泊するビジネスマン等が、一夜の寝ている時間だけで、外履きの靴と内履きのスリッパとを、略完全に殺菌脱臭することが要求されている実情があるが、それに応える程に大きな殺菌脱臭効果を発揮し得るだけの履物の殺菌脱臭装置は、未だ提供されていないのが実情であった。
【0009】
なお、大きな殺菌脱臭効果を得るためには、紫外線の強度を大きくすることも考えられるが、単に紫外線強度を大きくするだけでは、履物に対して紫外線が過度に強く照射される部分が発生することとなり、その結果、履物の特定部位において紫外線照射による変質等の不具合が発生するおそれがある。それ故、必ずしも有効な方策ではない。
【0010】
【特許文献1】特開平07−255827号公報
【特許文献2】特開2000−254515号公報
【特許文献3】特開2001−120646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ここにおいて、本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、履物に対してダメージが及ぼされる程の過度の強度の紫外線照射を必要とすることなく、一夜等の比較的に短時間で優れた殺菌および脱臭効果を得ることが出来る、例えばカプセルホテルやビジネスホテル等の設置にて個人利用に供して好適で新規な構造の履物の殺菌脱臭装置および殺菌脱臭方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0013】
すなわち、履物の殺菌脱臭装置に関する本発明の特徴とするところは、開閉扉を備えた矩形箱状を有しており、内側で互いに離隔して対向位置せしめられた奥壁部と扉壁部、天壁部と底壁部および一対の側壁部によって画成された収容領域に履物を収容配置して、該履物を殺菌および脱臭せしめる履物の殺菌脱臭装置において、前記収容領域の高さ方向中間部分には複数の透孔を備えた仕切部材が配設されて、該仕切部材を挟んで前記天壁部側に上側収容領域が形成されていると共に前記底壁部側に下側収容領域が形成されており、該上側収容領域の該奥壁部と該下側収容領域の該奥壁部には、それぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管が配設されていると共に、該天壁部と前記奥壁部にはそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されており、前記一対の側壁部と前記扉壁部にはそれぞれ全表面に亘って光触媒層が形成されている一方、該上側収容領域の底部を構成する該仕切部材において中央よりも該奥壁部側に前記履物としての上履きの踵載置部が設けられ、且つ該中央よりも該扉壁部側に該上履きの爪先載置部が設けられていると共に、該下側収容領域の底部を構成する該底壁部において中央よりも該奥壁部側に該履物としての下履きの踵載置部が設けられ、且つ該中央よりも該扉壁部側に該下履きの爪先載置部が設けられている履物の殺菌脱臭装置にある。
【0014】
このような本発明に従う構造とされた履物の殺菌脱臭装置においては、履物が、爪先部を扉側に向け且つ踵部を奥壁部側の紫外線照射管に向けて収容配置されることによって、爪先部が踵部よりも紫外線照射管から離隔して載置されることとなり、爪先部の紫外線照射量が踵部の紫外線照射量に比して小さくなる。これにより、爪先部において紫外線照射量が過度に大きくなることが抑えられて、特に靴の目立つ箇所である爪先の紫外線による変色焼けのおそれが回避される。
【0015】
一方、紫外線照射管が奥壁部の上側部分に設置されて、履物の履き口の略上方に照射管が位置せしめられることによって、雑菌等のこもりやすい履物の内側部分に紫外線が効率良く照射されて、殺菌効果が有利に発揮され得る。即ち、好ましくは、紫外線照射官は、履物の踵の高さよりも上方に位置して水平方向に延びるように配設されることとなり、これにより、紫外線照射管と踵との離隔距離が大きくされると共に、紫外線照射管から照射される紫外線が靴の履き口から直接に靴内に差し込むようにされる。
【0016】
しかも、天壁部と奥壁部の各全表面に施された鏡面加工による反射や再反射等を利用して、紫外線が履物の広い範囲に照射される結果、靴の内部に対してより多様な入射角度で紫外線が照射されることとなり、爪先部における紫外線の直接的な照射を抑えつつ、履物全体とくに履物の内部の全体にまで紫外線がより均等に照射されることとなる。その結果、履物の内部や外部の広い範囲が略均等に効率良く殺菌脱臭されるのである。
【0017】
さらに、一対の側壁部と扉壁部に光触媒層が形成されていることによって、前述の天壁部および奥壁部の鏡面加工と相俟って、側壁部および扉壁部による光触媒反応を履物の略全体に亘って及ぼすことが可能となる。これにより、履物から放出される臭気成分を効率良く化学分解せしめ、履物の脱臭効果が有利に発揮される。
【0018】
特に本構造では、収容領域を上側収容領域と下側収容領域に分けて、上履きと下履きがそれぞれ独立して収容配置されるようにしたことから、上履きや下履きの形状や大きさに応じて、各収容領域における形状や大きさ、紫外線照射管の位置等を設定変更することが可能となり、各履物における殺菌および脱臭効果の更なる向上が図られ得る。
【0019】
また、上履きと下履きを同時に収容配置して殺菌および脱臭処理を施すことが可能であることから、例えば、上履きと下履きを何れも使用することのない使用者の就寝時に上履きと下履きを収容配置して、起床時に殺菌および脱臭処理を完了するようにしても良く、それによって、時間を有効利用した両履物の殺菌および脱臭効果が得られる。このような就寝している短時間での効果的な殺菌脱臭効果を得ることが出来るのも、優れた殺菌脱臭効果を有するが故である。
【0020】
また、上側収容領域と下側収容領域が仕切部材に設けられた通孔を通じて連通せしめられることで、両領域で紫外線の交換を可能としてより一層の照射光の均一化を図ることが出来ると共に、収容領域全体での空気の対流を効率良く生ぜしめることが可能となり、換気作用が有利に発揮されることに基づき殺菌および脱臭効果が有利に発揮され得る。特に、下側収容領域を下履きの収容領域としたことで、上方に開口する通孔を通じて、下履きの履き口に向けて紫外線を一層効率的に入射させることも可能となる。即ち、一般に、上履きはスリッパ構造とされて踵部分の立ち上がりがないことから、踵側から照射される紫外線がつま先奥方まで容易に到達し得るが、靴構造の下履きでは、履き口が上方に開口するだけであるから、つま先奥方まで紫外線が到達し難い傾向にあるが、本発明では、仕切部材の通孔を通じて上側収容領域に設置された紫外線照射管からの紫外線も、下側収容領域に収容された靴の内部にまで導かれて、靴に対して一層効果的な殺菌脱臭効果が発揮され得るのである。
【0021】
それ故、本構造に従えば、履物の過度の局所的な紫外線照射によるダメージを抑えつつ、比較的に短時間で、優れた殺菌および脱臭効果が得られるのである。
【0022】
また、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置においては、前記仕切部材の上下両面に鏡面加工が施されている構造が、好適に採用される。このような構造によれば、上側収容領域と下側収容領域における紫外線の反射作用が一層大きくなり、上履きと下履きをより広範囲に亘って殺菌および脱臭せしめることが出来る。
【0023】
また、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置においては、前記奥壁部、前記扉壁部、前記天壁部、前記底壁部および前記一対の側壁部がステンレス鋼板を用いて形成されていると共に、それら各壁部の接合構造が前記収容領域に露出しないように外部に設けられている構造が、好適に採用される。なお、各壁部の接合構造としては、溶接や接着、リベットやボルト等の各種の構造が採用され得る。そして、それら各壁部が互いに組み合わされて各壁部の外周部分がリベットを用いて固定され、リベットが収容領域に露出しないようにして収容領域が形成されていることにより、ステンレス鋼板による優れた耐蝕性や強度が得られることに加え、収容領域に露出しない接合構造を採用したことで、収容領域を一層有利に確保できて使用性も向上されると共に、壁部の溶接等による変色焼けやリベットが露出することによる鏡面加工の反射作用の低下が回避されることとなり、紫外線の反射に基づく殺菌および脱臭効果の更なる向上も図られ得る。
【0024】
また、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置においては、前記複数の通孔を備えた前記仕切部材が、矩形平板形状のステンレス鋼板に打抜き加工を施すことにより形成されている構造が、好適に採用される。このような構造によれば、仕切部材の強度や耐蝕性が有利に確保されつつ、比較的に簡単な構造で実現され得る。また、ステンレス鋼板を利用することにより、仕切部材の表面に対しても鏡面加工等を施すことが可能となり、紫外線をより多様に反射させて紫外線の照射領域を一層広範にわたり均一化すること等が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置においては、前記収容領域の内法寸法における高さと幅と奥行きの各寸法が何れも250〜500mmとされており、宿泊施設の個別部屋に設置されて個人用に供される構造が、採用されても良い。このような構造によれば、上履きと下履きを一足づつ収容せしめて、全体構造がコンパクトに実現されることを利用して、ホテルや旅館等の宿泊施設の個別部屋に有利に設置すること出来る。また、宿泊客が上履きと下履きの両方を装置に収容して就寝し、起床時に上履きおよび下履きの殺菌および脱臭処理を完了することも可能であり、それによって、宿泊施設の上履きの清潔性が高度に保たれると共に、チェックアウト後も宿泊客が下履きを快適に使用することが出来、優れたサービスが提供され得る。特に、かくの如き容積を設定することで、一人分の上下履物の収容領域を充分に確保しつつ、紫外線の照射量を全体に亘って略均一にすることが出来ると共に、収容される履物に対して特につま先等の全体に亘って紫外線や光触媒作用による殺菌脱臭効果を、まんべんなく発揮させることが可能となるのである。
【0026】
また、履物の殺菌脱臭方法に関する本発明の特徴とするところは、開閉扉を備えた矩形箱状体からなり、内側で互いに離隔して対向位置せしめられた奥壁部と扉壁部、天壁部と底壁部および一対の側壁部によって収容領域が画成されていると共に、該収容領域の高さ方向中間部分に複数の透孔を備えた仕切部材が配設されて、該仕切部材を挟んで前記天壁部側に上側収容領域が形成されていると共に前記底壁部側に下側収容領域が形成され、更に、該上側収容領域の前記奥壁部と該下側収容領域の該奥壁部にはそれぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管が配設されていると共に、該天壁部と該奥壁部にはそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されており、該一対の側壁部と前記扉壁部にはそれぞれ全表面に亘って光触媒層が形成されてなる履物の殺菌脱臭装置を用い、かかる履物の殺菌脱臭装置における前記仕切部材に前記履物としての上履きを載置して前記上側収容領域に収容し、該上履きの踵部分を前記奥壁部に向けると共に該上履きの爪先部分を前記扉壁部に向けると共に、該履物の殺菌脱臭装置における前記底壁部に前記履物としての下履きを載置して前記下側収容領域に収容し、該下履きの踵部分を前記奥壁部に向けると共に該下履きの爪先部分を前記扉壁部に向けることにより、それら上履きと下履きを前記収容域領域に収容した後、前記開閉扉を閉じて該収容領域を外部空間から遮断すると共に、該上側収容領域の前記紫外線照射管と該下側収容領域の前記該紫外線照射管を通電発光させて該上履きと該下履きを同時に殺菌処理および脱臭処理する履物の殺菌脱臭方法にある。
【0027】
このような本発明方法に従えば、前述の本発明に係る履物の殺菌脱臭装置の説明からも明らかなように、履物の直接的な紫外線照射によるダメージを抑えつつ、比較的に短時間で、優れた殺菌および脱臭効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について説明する。先ず、図1には、本発明の履物の殺菌脱臭装置に係る一実施形態としての履物収納ボックス10が示されている。この履物収容ボックス10は、ボックス本体12や開閉扉14を含んで構成されており、それらボックス本体12や開閉扉14が協働して略矩形箱状を呈している。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、上下方向や左右方向は、図1中の上下方向や左右方向をいう。
【0029】
詳細には、ボックス本体12は、正面に開口する略矩形器状のハウジング16の内側に奥壁部18や天壁部20、底壁部22、一対の側壁部としての右側壁部24aおよび左側壁部24bが所定距離を隔てて配設されることによって、二重壁構造を呈している。
【0030】
これら奥壁部18や天壁部20、底壁部22、一対の側壁部24a,24bは、図2等にも示されているように、略矩形平板形状を有するステンレス鋼板を用いて形成されており、天壁部20と底壁部22が互いに左右方向に延び且つ上下方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられていると共に、左側壁部24bと右側壁部24aが互いに上下方向に延び且つ左右方向に所定距離を隔てて対向位置せしめられている。
【0031】
また、天壁部20や底壁部22、一対の側壁部24a,24bの各奥行き方向の端部には、奥壁部18の外周部分が重ね合わせられている。各重ね合わせ部分の少なくとも一方には、各壁部18,20,22,24の外周側となるハウジング16側に広がる、図示しない鍔状部が形成されており、かかる鍔状部が他方に重ね合わせられて図示しないリベットを用いて固定されることにより、奥壁部18や天壁部20、底壁部22、一対の側壁部24a,24bが互いに固定されて、ハウジング16よりも一回り小さな大きさで奥行き方向手前に開口する矩形器状を呈している。これらの壁部18,20,22,24がハウジング16の内側に所定距離を隔てて嵌め込まれるような形態で、ハウジング16に図示しないリベットやボルト等で固定されている。
【0032】
なお、本実施形態では、天壁部20や底壁部22、一対の側壁部24a,24bが、それぞれ独立したステンレス鋼板を継ぎ合わせるようにして固定されているが、これに限定されるものでなく、例えば、それら複数の壁部18,20,22,24の一部乃至は全部が一枚のステンレス鋼板を用いて一体形成されて、プレス加工により前述の矩形器状が構成されるようにしても良い。
【0033】
また、ハウジング16の開口部には、略矩形平板形状を有する開閉扉14が、枢乃至は蝶番等を介して開閉可能に取り付けられており、開閉扉14の縁部における磁性材で形成された部位が、ハウジング16の開口縁部や側壁部24bの端部に固設されたマグネット26,26に重ね合わせられることによって、磁力に基づき、ハウジング16を備えたボックス本体12の開口部が、開閉扉14で流体密に閉じられるようになっている。開閉扉14に形成された取手部28をボックス本体12に対して引いたり押したりすることで、ボックス本体12の開口部の開け閉めが実現される。
【0034】
ボックス本体12の開口部が閉じた状態で、開閉扉14の内壁部が、ボックス本体12の奥壁部18と奥行き方向に側壁部24の略幅寸法に相当する所定距離を隔てて対向位置せしめられており、かかる内壁部によって本実施形態に係る扉壁部30が構成されている。扉壁部30は、ボックス本体12の各壁部18,20,22,24と同様に、略矩形平板形状を有するステンレス鋼板を用いて形成されている。
【0035】
このようにボックス本体12の閉状態下、ボックス本体12における奥壁部18や天壁部20、底壁部22、一対の側壁部24a,24bと開閉扉14の扉壁部30が協働して、履物収容ボックス10の内部に略矩形箱状の収容領域32が画成されている。また、扉壁部30には、ボックス本体12の開口部が閉じた状態で、収容領域32における紫外線漏れを防止しつつ、外部から収容領域32を視認することが可能な窓部34が形成されている。
【0036】
収容領域32の高さ方向(図1中、上下)の中間部分には、仕切部材としての仕切板部36が設けられている。仕切板部36は、図3にも示されているように、収容領域32を構成する各壁部18,20,22,24,30と同様な略矩形平板形状を有するステンレス鋼板を用いて、プレス加工により形成されている。仕切板部36の横幅方向(図3中、左右)の寸法が、収容領域32における一対の側壁部24a,24bの対向面間の距離よりも小さくされていると共に、仕切板部36の縦幅方向(図3中、上下)の寸法が、収容領域32における奥壁部18と扉壁部30の対向面間の距離、更には側壁部24の幅寸法よりも小さくされている。
【0037】
本実施形態では、プレス成形による打抜き加工に伴い、仕切板部36に複数の通孔38が貫設されている。通孔38は、仕切板部36の縦幅方向に長手状に延びていると共に、両端部分が半円形状を有している。通孔38は、仕切板部36の横幅方向に等間隔に6つ形成され、且つ縦幅方向に離隔して二列設けられていることで、仕切板部36に12個形成されている。
【0038】
また、収容領域32の右側壁部24aと左側壁部24bの高さ方向中間部分には、それぞれ幅方向に離隔して、図示しない複数の係止ピンが突設されており、仕切板部36の横幅方向の両端に形成された複数の溝部に係止ピンが挿入されて、仕切板部36が、天壁部20や底壁部22と平行に延びるようにして両側壁部24a,24bに支持されるようになっている。ここで、収容領域32の奥行き方向で、仕切板部36の扉壁部30に対向位置せしめられる縁部が、扉壁部30よりも奥方向に位置せしめられていて、扉壁部30と離隔せしめられている。また、仕切板部36の外周縁部が側壁部24や奥壁部18に当接するか否かは特に限定されるものでない。
【0039】
これにより、収容領域32が仕切板部36で高さ方向に二分されて、収容領域32の仕切板部36を挟んだ上方には、仕切板部36や天壁部20、奥壁部18、扉壁部30、一対の側壁部24a,24bで画成された矩形状の空間により、上側収容領域40が形成されていると共に、収容領域32の仕切板部36を挟んだ下方には、仕切板部36や底壁部22、奥壁部18、扉壁部30、一対の側壁部24a,24bで画成された矩形状の空間により、下側収容領域42が形成されている。これら上側収容領域40と下側収容領域42は、仕切板部36と扉壁部30の間の隙間や仕切板部36に形成された複数の通孔38を通じて相互に連通せしめられている。
【0040】
特に本実施形態では、仕切板部36が収容領域32の高さ方向中央部分よりも天壁部20側に偏倚して設けられていることで、下側収容領域42が、上側収容領域40よりも大きくされている。
【0041】
また、上側収容領域40と下側収容領域42の各奥壁部18には、紫外線照射管としての殺菌灯44が設けられている。殺菌灯44は、波長が254nmの紫外線または320〜400nmの近紫外線を照射する棒状の公知の紫外線照射装置とされ、ホルダを介して奥壁部18に設置されている。また、ボックス本体12における奥壁部18や側壁部24とハウジング16の間の隙間には、殺菌灯44の紫外線照射を制御する制御装置が内蔵されている。
【0042】
制御装置は、電源に接続されて殺菌灯44に電力を供給する供給回路や、リレーを介して開閉することにより電源からの電力を供給回路に遮断/供給するリレー接点、ハウジング16の外部に突設されて、ON/OFFすることによりリレーを介してリレー接点を閉じたり開いたりする操作スイッチ46やリレー接点の開閉に伴い消滅/点灯する表示ランプ48を含んで構成されている。これにより、操作スイッチ46をONして、殺菌灯44から紫外線を収容領域32内に照射すると共に、点灯する表示ランプ48を通じて、収容領域32に紫外線が照射されている状態を外部から把握することが出来る。また、操作スイッチ46をOFFして、殺菌灯44から紫外線を照射しないようにすると共に、表示ランプ48が点灯していないことで、収容領域32に紫外線が照射されていないことを外部から把握することが可能となる。なお、制御装置には、操作スイッチ46をONしてリレー接点が閉じた状態から所定時間が経過した後にリレー接点を開くようにリレーに信号を送る計時回路を特別に設けて、紫外線が所定の時間だけ収容領域32内に照射するようにしても良い。
【0043】
そこにおいて、ボックス本体12の天壁部20と奥壁部18に加え仕切板部36には、それぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されている。鏡面加工は、要求される製作性や紫外線の反射作用に応じて適宜に設定変更されるものであって、特に限定されるものでなく、例えば金属材からなる壁部18,20の表面を磨いたり、表面に錫メッキを施したり、紫外線を反射する金属層を表面に被着形成したりすることによって実現される。
【0044】
さらに、ボックス本体12における一対の側壁部24a,24bと開閉扉14の扉壁部30には、二酸化チタンからなる薄膜がそれぞれ全表面に亘って塗布等で付着されていることによって、光触媒層が形成されている。なお、光触媒層には、例示の如き二酸化チタンの他、酸化亜鉛や三酸化タングステン、酸化セリウム、過酸化チタン等の各種金属酸化物が採用されても良い。
【0045】
また、上側収容領域40に設けられる殺菌灯44aと下側収容領域42に設けられる殺菌灯44bは、それぞれ各奥壁部18,18の高さ方向(図1中、上下)の中央部分よりも上側部分を略水平方向(図1〜3中、左右)に延びるようにして配されている。
【0046】
ここで、本実施形態の履物収容ボックス10においては、下側収容領域42の底部を構成するボックス本体12の底壁部22に下履きが載置されるようになっており、図2には、下履きとしての革靴50が載置された具体例が示されている。
【0047】
より具体的には、底壁部22の中央部分を挟んで殺菌灯44bが設置される奥壁部18の側(図2中、上)に踵載置部52が設けられていると共に、中央部分を挟んで扉壁部30の側(図2中、下)に爪先載置部54が設けられている。また、踵載置部52は、底壁部22の中央部分を挟んで左右方向に分割されており、踵載置部52の中央を挟んでボックス本体18の左側壁部24bの側(図2中、左)が右足用踵載置部52aとされていると共に、踵載置部52の中央を挟んでボックス本体18の右側壁部24aの側(図2中、右)が、左足用踵載置部52bとされている。更に、爪先載置部54も、底壁部22の中央部分を挟んで左右方向に分割されており、爪先載置部54の中央を挟んでボックス本体18の左側壁部24bの側が右足用爪先載置部54aとされていると共に、爪先載置部54の中央を挟んでボックス本体18の右側壁部24aの側(図2中、右)が、左足用爪先載置部54bとされている。
【0048】
而して、革靴の右足用50aの踵部が底壁部22の右足用踵載置部52aに載置され、且つ右足用50aの爪先部が底壁部22の右足用爪先部54aに載置されるようになっていると共に、革靴の左足用50bの踵部が底壁部22の左足用踵載置部52bに載置され、且つ左足用50bの爪先部が底壁部22の左足用爪先部54bに載置されるようになっている。要するに、革靴50の踵部が殺菌灯44b側に向けて載置されると共に、革靴50の爪先部が扉壁部30側に向けて載置される。
【0049】
一方、上側収容領域40の底部を構成するボックス本体12の仕切板部36に上履きが載置されるようになっており、図3には、上履きとしてのスリッパ56が載置された具体例が示されている。
【0050】
より具体的には、前述の下側収容領域42の底壁部22と同様に、仕切板部36の中央部分を挟んで奥壁部18の側(図3中、上)の左側壁部24bの側(図3中、左)に右足用踵載置部58aが設けられていると共に、中央部分を挟んで扉壁部30の側(図3中、下)の左側壁部24bの側(図3中、左)に右足用爪先載置部60aが設けられている。また、仕切板部36の中央部分を挟んで奥壁部18の側(図3中、上)の右側壁部24aの側(図3中、右)に左足用踵載置部58bが設けられていると共に、中央部分を挟んで扉壁部30の側(図3中、下)の右側壁部24aの側(図3中、右)に左足用爪先載置部60bが設けられている。
【0051】
而して、スリッパの右足用56aの踵部が仕切板部36の右足用踵載置部58aに載置され、且つ右足用56aの爪先部が仕切板部36の右足用爪先部60aに載置されるようになっていると共に、スリッパの左足用56bの踵部が仕切板部36の左足用踵載置部58bに載置され、且つ左足用56bの爪先部が仕切板部36の左足用爪先部60bに載置されるようになっている。要するに、スリッパ56の踵部が殺菌灯44a側に向けて載置されると共に、スリッパ56の爪先部が扉壁部30側に向けて載置される。
【0052】
ここで、上側収容領域40や下側収容領域42は、一般的な大きさのスリッパ56や革靴50がある程度の隙間寸法をもって収容配置されて、各収容領域40,42に設けられた殺菌灯44a,44bから大きく離隔せず、且つ殺菌灯44a,44bに近づき過ぎないように設計されている。具体的に、例えば収容領域32の内法寸法で、上側収容領域40の高さ寸法が80〜200mmとされていると共に、下側収容領域42の高さ寸法が160〜400mmとされている。また、上側および下側収容領域40,42を含んでなる収容領域32の内法寸法(収容領域32の対向面間の差し渡し寸法)における高さ寸法が、より望ましくは250〜500mmとされている。更に、収容領域32の内法寸法における幅寸法と奥行き寸法が、それぞれ250〜500mmとされている。
【0053】
すなわち、本実施形態に係る履物収容ボックス10は、内部の上側収容領域40と下側収容領域42にそれぞれ上履き(スリッパ56)と下履き(革靴50)を一足づつ収容配置せしめる専用品とされており、全体としてコンパクトに形成されている。これにより、かかる履物収容ボックス10が、例えばホテルや旅館等の宿泊施設の個別部屋や一人住まいの住宅等に設置されて個人用として好適に採用され得る。また、スリッパ56が宿泊施設が宿泊客に貸し与えたものとされる一方、革靴50が宿泊客のものとされても良く、本実施形態では、それらを同時にまたは片方づつ紫外線を照射して、殺菌脱臭処理を施すことも可能とされている。
【0054】
しかも、仕切板部36と底壁部22にそれぞれ載置されて、開閉扉14が閉じられることにより上側収容領域40と下側収容領域42に収容配置されるスリッパ56と革靴50においては、踵部が奥壁部18側を背にして殺菌灯44a,44bと高さ方向に所定距離(本実施形態では少なくとも各履物の高さ寸法の2倍)だけ離隔せしめられていると共に、殺菌灯44a,44bからの紫外線の照射範囲が、奥壁部18や天壁部20、仕切板部36の紫外線反射を利用して、履物の略全体に及ぼされるようになっている(図4,9参照。)。
【0055】
したがって、上述の如き構造とされた履物収容ボックス10においては、殺菌灯44からの離隔距離が踵部に比して大きな爪先部は勿論のこと、殺菌灯44の最も近くに位置せしめられる踵部においても所定距離だけ離隔されていることによって、履物の紫外線照射による変色焼け等の変質のおそれが有利に回避される。
【0056】
ここで、ボックス本体12の天壁部20や奥壁部18、仕切板部36のそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されていることから、紫外線の反射作用により、履物の踵部や側壁部、爪先部の広い範囲に照射せしめることが可能となる。
【0057】
さらに、ボックス本体12における一対の側壁部24a,24bと扉壁部30に光触媒層が形成されていることによって、前述の天壁部20や奥壁部18、仕切板部36の鏡面加工と相俟って、側壁部24および扉壁部30による光触媒反応を履物の略全体に亘って及ぼすことが可能となる。これにより、履物から放出される臭気成分を効率良く化学分解せしめ、履物の脱臭効果が有利に発揮される。
【0058】
また、本実施形態では、奥壁部18や扉壁部30、天壁部20、底壁部22、一対の側壁部24a,24bを固定するリベット等の接合構造が収容領域32に露出しないような構造とされていることから、接合構造の露出に起因する鏡面加工の反射作用の低下が回避されることとなり、所期の紫外線反射作用が安定して発揮され得る。
【0059】
それ故、本実施形態に係る履物収容ボックスによれば、履物の直接的な紫外線照射によるダメージを抑えつつ、比較的に短時間で、優れた殺菌および脱臭効果が得られるのである。
【0060】
また、本構造に係る履物収容ボックス10を用いれば、上側収容領域40の仕切板部36において中央よりも奥壁部18側に上履きの踵部を載置し、且つ中央よりも扉壁部30側に上履きの爪先部を載置すると共に、下側収容領域42の底壁部22において中央よりも奥壁部18側に下履きの踵部を載置し、且つ中央よりも扉壁部30側に下履きの爪先部を載置して、上履きおよび下履きを収容領域32に収容した後、開閉扉14を閉じて収容領域32を外部空間から遮断すると共に、上側および下側収容領域40,42の各殺菌灯44をONして通電発光させることにより、履物の直接的な紫外線照射によるダメージを抑えつつ、比較的に短時間で、優れた殺菌および脱臭効果を得る履物の殺菌脱臭方法が有利に実現され得るのである。
【0061】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であり、かかる実施形態における具体的な記載によって、本発明は、何等限定されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様で実施可能であり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0062】
例えば、ボックス本体12や開閉扉14、収容領域32、仕切板部36、殺菌灯44等における形状や大きさ、構造、位置、数等の形態は、例示の如きものに限定されるものでない。
【0063】
具体的に、前記実施形態では、殺菌灯44が上側収容領域40と下側収容領域42において、それぞれ一本ずつ設けられていたが、二本以上採用して、それらを奥壁部の高さ方向や幅方向に並列的に設けることも可能である。
【0064】
また、前記実施形態では、矩形平板形状のステンレス鋼板に打抜き加工を施すことで複数の通孔38を備えた仕切板部36が形成されていたが、例えば仕切板部として、金網やメッシュ構造の板等を用いることも可能である。
【0065】
さらに、前記実施形態で示された革靴50やスリッパ56の他、ブーツや下駄、サンダル等の履物全般に関して適用可能であることは勿論であり、上側収容領域や下側収容領域、奥壁部や天壁部、底壁部、仕切板部を含むボックス本体、扉壁部を含む開閉扉、殺菌灯等が主として収容せしめられる履物の種類に応じて適宜に設計変更されることは言うまでもない。
【0066】
また、適当な時間が予め設定されたタイマや、任意の時間を設定できるタイマを設けて、スイッチをONしてからOFFになる迄の時間を設定することで、紫外線照射管の発光が自動的に切れるようにしても良い。その場合において、殺菌脱臭が困難な下側領域の下履きの方が、上側領域の上履きよりも長時間に亘って紫外線照射されるように、下側収容領域の紫外線照射管よりも上側収容領域の紫外線照射管よりも長時間継続して発光されるように設定しておくことも可能であり、それによって、上履きに対して不必要に紫外線照射されることに起因する変質等の不具合発生も回避され得る。
【0067】
また、本発明においては、上履きの収容領域と下履きの収容領域を特定して設定したことにより、上履きと下履きを効率的に殺菌脱臭することが可能であり、上側収容領域と下側収容領域において各別に異なる条件を設定することが出来るという特徴がある。具体的には、例えば、上側収容領域の紫外線照射管よりも下側収容領域の紫外線照射管の方が紫外線発光量を多くするように、例えば高照度の照射管を使用したり、上側より下側の収容領域の方が多数の照射管を設置したりすることも可能である。このような態様によれば、殺菌脱臭が容易な上履きと難しい下履きに対して、略同時間で何れも効果的に処理することが出来、不必要な照射に起因する時間,電力の無駄や材質の変質等の不具合も軽減乃至は回避することが可能となるのである。
【実施例】
【0068】
次に、本発明に係る履物の殺菌脱臭装置の殺菌脱臭効果について確認するために行った試験を実施例として説明するが、本発明はかかる具体例に限定されるものでない。
【0069】
先ず、前記実施形態に係る履物収容ボックス10を準備する。ここで、図4にも示されているように、履物収容ボックス10の上側収容領域40において、殺菌灯44aの中心から仕切板部36までの高さ寸法を190mmに設定する。また、上履き62の爪先部を仕切板部36の爪先載置部に載置すると共に、上履き62の踵部を仕切板部36の踵載置部に載置する。また、上履き62の爪先部の内側底部をA部とし、上履き62の爪先部と踵部の間の内側底部をB部とし、上履き62の踵部の内側底部をC部とする。A部は殺菌灯44aの中心から直線距離で260mm離隔している。B部は殺菌灯44aの中心から直線距離で210mm離隔している。C部は殺菌灯44aの中心から直線距離で160mm離隔している。そして、図5に示されるように、10ppmのメチレンブルーを綿布に0.05cc付着させたものを、A部、B部、C部にそれぞれ設置して、殺菌灯44aから紫外線を2時間照射した後に綿布に染みたメチレンブルーの色の様子を観察した。その結果を、実施例として図6(a),図7(a),図8(a)に示す。また、更に図5に示されるような10ppmのメチレンブルーを綿布に0.05cc付着させたものを、A部、B部、C部にそれぞれ設置して、殺菌灯44aから紫外線を5時間照射した後に綿布に染みたメチレンブルーの色の様子を観察した。その結果を、実施例として図6(b),図7(b),図8(b)に示す。
【0070】
また、図9にも示されているように、前述の履物収容ボックス10の下側収容領域42において、殺菌灯44bの中心から底壁部22までの高さ寸法を295mmに設定する。また、下履き64の爪先部を底壁部22の爪先載置部に載置すると共に、下履き64の踵部を底壁部22の踵載置部に載置する。また、下履き64の爪先部の内側底部をA部とし、下履き64の爪先部と踵部の間の内側底部をB部とし、下履き64の踵部の内側底部をC部とする。A部は殺菌灯44bの中心から直線距離で330mm離隔している。B部は殺菌灯44bの中心から直線距離で295mm離隔している。C部は殺菌灯44bの中心から直線距離で260mm離隔している。そして、図10に示されるように、10ppmのメチレンブルーを綿布に0.05cc付着させたものを、A部、B部、C部にそれぞれ設置して、殺菌灯44bから紫外線を5時間照射した後に綿布に染みたメチレンブルーの色の様子を観察した。その結果を、実施例として図11,図12,図13に示す。
【0071】
これら図6〜8や図11〜13に示される結果からも、本実施例に係る綿布に染みたメチレンブルーの色の状態が、紫外線を照射する前の図5,10に示される如き比較例に係る綿布に染みたメチレンブルーの色の状態に比して薄くなっていることから、細菌の染色色素として把握される色が薄くなっていることに基づき、何れの実施例においても、殺菌脱臭効果が有利に得られることが認められる。
【0072】
また、図6〜8の結果から、2時間照射したものと5時間照射したものとを比較すると、5時間照射した方がより薄くなっていることが確認され、しかも5時間照射したもののA部、B部、C部の全てにおいてより顕著な色落ちが確認されることから、5時間照射すると目的とする殺菌、脱臭効果が十分に得られることが明らかである。また、この5時間という時間は、一般的な睡眠時間内に相当することから、就寝前に本発明に係る履物の殺菌脱臭装置に上履きと下履きを入れて、殺菌灯をONすることにより、起床時には履物に優れた殺菌脱臭処理が施されているものと考える。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施形態としての履物収容ボックスの開閉扉を開けた状態を示す斜視図。
【図2】同履物収容ボックスの一部を構成する底壁部に靴を載置した状態を示す平面説明図。
【図3】同履物収容ボックスの一部を構成する仕切板部にスリッパを載置した状態を示す平面説明図。
【図4】本発明に係る履物の殺菌脱臭装置の殺菌脱臭効果について確認するために行った実施例の条件設定を示す説明図。
【図5】同実施例に対する比較例としてメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図6】同実施例の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図7】同実施例の別の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図8】同実施例のまた別の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図9】本発明に係る履物の殺菌脱臭装置の殺菌脱臭効果について確認するために行った実施例において、図4の実施例と異なる条件設定を示す説明図。
【図10】図9に示される実施例に対する比較例としてメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図11】同実施例の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図12】同実施例の別の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【図13】同実施例のまた別の一条件下におけるメチレンブルーを綿布に付着させた状態を示す図面代用写真。
【符号の説明】
【0074】
10:履物収容ボックス、14:開閉扉、18:奥壁部、20:天壁部、22:底壁部、24:側壁部、30:扉壁部、32:収容領域、36:仕切板部、40:上側収容領域、42:下側収容領域、44:殺菌灯、50:革靴、52:踵載置部、54:爪先載置部、56:スリッパ、58:踵載置部、60:爪先載置部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉を備えた矩形箱状を有しており、内側で互いに離隔して対向位置せしめられた奥壁部と扉壁部、天壁部と底壁部および一対の側壁部によって画成された収容領域に履物を収容配置して、該履物を殺菌および脱臭せしめる履物の殺菌脱臭装置において、
前記収容領域の高さ方向中間部分には複数の透孔を備えた仕切部材が配設されて、該仕切部材を挟んで前記天壁部側に上側収容領域が形成されていると共に前記底壁部側に下側収容領域が形成されており、
該上側収容領域の該奥壁部と該下側収容領域の該奥壁部には、それぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管が配設されていると共に、
該天壁部と前記奥壁部にはそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されており、
前記一対の側壁部と前記扉壁部にはそれぞれ全表面に亘って光触媒層が形成されている一方、
該上側収容領域の底部を構成する該仕切部材において中央よりも該奥壁部側に前記履物としての上履きの踵載置部が設けられ、且つ該中央よりも該扉壁部側に該上履きの爪先載置部が設けられていると共に、
該下側収容領域の底部を構成する該底壁部において中央よりも該奥壁部側に該履物としての下履きの踵載置部が設けられ、且つ該中央よりも該扉壁部側に該下履きの爪先載置部が設けられていることを特徴とする履物の殺菌脱臭装置。
【請求項2】
前記仕切部材の上下両面に鏡面加工が施されている請求項1に記載の履物の殺菌脱臭装置。
【請求項3】
前記奥壁部、前記扉壁部、前記天壁部、前記底壁部および前記一対の側壁部がステンレス鋼板を用いて形成されていると共に、それら各壁部の接合構造が前記収容領域に露出しないように外部に設けられている請求項1又は2に記載の履物の殺菌脱臭装置。
【請求項4】
前記複数の透孔を備えた前記仕切部材が、矩形平板形状のステンレス鋼板に打抜き加工を施すことにより形成されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の履物の殺菌脱臭装置。
【請求項5】
前記収容領域の内法寸法における高さと幅と奥行きの各寸法が何れも250〜500mmとされており、宿泊施設の個別部屋に設置されて個人用に供される請求項1乃至4の何れか一項に記載の履物の殺菌脱臭装置。
【請求項6】
開閉扉を備えた矩形箱状体からなり、内側で互いに離隔して対向位置せしめられた奥壁部と扉壁部、天壁部と底壁部および一対の側壁部によって収容領域が画成されていると共に、該収容領域の高さ方向中間部分に複数の透孔を備えた仕切部材が配設されて、該仕切部材を挟んで前記天壁部側に上側収容領域が形成されていると共に前記底壁部側に下側収容領域が形成され、更に、該上側収容領域の前記奥壁部と該下側収容領域の該奥壁部にはそれぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管が配設されていると共に、該天壁部と該奥壁部にはそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されており、該一対の側壁部と前記扉壁部にはそれぞれ全表面に亘って光触媒層が形成されてなる履物の殺菌脱臭装置を用い、
かかる履物の殺菌脱臭装置における前記仕切部材に前記履物としての上履きを載置して前記上側収容領域に収容し、該上履きの踵部分を前記奥壁部に向けると共に該上履きの爪先部分を前記扉壁部に向けると共に、該履物の殺菌脱臭装置における前記底壁部に前記履物としての下履きを載置して前記下側収容領域に収容し、該下履きの踵部分を前記奥壁部に向けると共に該下履きの爪先部分を前記扉壁部に向けることにより、それら上履きと下履きを前記収容域領域に収容した後、
前記開閉扉を閉じて該収容領域を外部空間から遮断すると共に、該上側収容領域の前記紫外線照射管と該下側収容領域の前記該紫外線照射管を通電発光させて該上履きと該下履きを同時に殺菌処理および脱臭処理することを特徴とする履物の殺菌脱臭方法。
【請求項1】
開閉扉を備えた矩形箱状を有しており、内側で互いに離隔して対向位置せしめられた奥壁部と扉壁部、天壁部と底壁部および一対の側壁部によって画成された収容領域に履物を収容配置して、該履物を殺菌および脱臭せしめる履物の殺菌脱臭装置において、
前記収容領域の高さ方向中間部分には複数の透孔を備えた仕切部材が配設されて、該仕切部材を挟んで前記天壁部側に上側収容領域が形成されていると共に前記底壁部側に下側収容領域が形成されており、
該上側収容領域の該奥壁部と該下側収容領域の該奥壁部には、それぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管が配設されていると共に、
該天壁部と前記奥壁部にはそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されており、
前記一対の側壁部と前記扉壁部にはそれぞれ全表面に亘って光触媒層が形成されている一方、
該上側収容領域の底部を構成する該仕切部材において中央よりも該奥壁部側に前記履物としての上履きの踵載置部が設けられ、且つ該中央よりも該扉壁部側に該上履きの爪先載置部が設けられていると共に、
該下側収容領域の底部を構成する該底壁部において中央よりも該奥壁部側に該履物としての下履きの踵載置部が設けられ、且つ該中央よりも該扉壁部側に該下履きの爪先載置部が設けられていることを特徴とする履物の殺菌脱臭装置。
【請求項2】
前記仕切部材の上下両面に鏡面加工が施されている請求項1に記載の履物の殺菌脱臭装置。
【請求項3】
前記奥壁部、前記扉壁部、前記天壁部、前記底壁部および前記一対の側壁部がステンレス鋼板を用いて形成されていると共に、それら各壁部の接合構造が前記収容領域に露出しないように外部に設けられている請求項1又は2に記載の履物の殺菌脱臭装置。
【請求項4】
前記複数の透孔を備えた前記仕切部材が、矩形平板形状のステンレス鋼板に打抜き加工を施すことにより形成されている請求項1乃至3の何れか一項に記載の履物の殺菌脱臭装置。
【請求項5】
前記収容領域の内法寸法における高さと幅と奥行きの各寸法が何れも250〜500mmとされており、宿泊施設の個別部屋に設置されて個人用に供される請求項1乃至4の何れか一項に記載の履物の殺菌脱臭装置。
【請求項6】
開閉扉を備えた矩形箱状体からなり、内側で互いに離隔して対向位置せしめられた奥壁部と扉壁部、天壁部と底壁部および一対の側壁部によって収容領域が画成されていると共に、該収容領域の高さ方向中間部分に複数の透孔を備えた仕切部材が配設されて、該仕切部材を挟んで前記天壁部側に上側収容領域が形成されていると共に前記底壁部側に下側収容領域が形成され、更に、該上側収容領域の前記奥壁部と該下側収容領域の該奥壁部にはそれぞれ中央より上側部分を水平方向に延びるようにして紫外線照射管が配設されていると共に、該天壁部と該奥壁部にはそれぞれ全表面に亘って鏡面加工が施されており、該一対の側壁部と前記扉壁部にはそれぞれ全表面に亘って光触媒層が形成されてなる履物の殺菌脱臭装置を用い、
かかる履物の殺菌脱臭装置における前記仕切部材に前記履物としての上履きを載置して前記上側収容領域に収容し、該上履きの踵部分を前記奥壁部に向けると共に該上履きの爪先部分を前記扉壁部に向けると共に、該履物の殺菌脱臭装置における前記底壁部に前記履物としての下履きを載置して前記下側収容領域に収容し、該下履きの踵部分を前記奥壁部に向けると共に該下履きの爪先部分を前記扉壁部に向けることにより、それら上履きと下履きを前記収容域領域に収容した後、
前記開閉扉を閉じて該収容領域を外部空間から遮断すると共に、該上側収容領域の前記紫外線照射管と該下側収容領域の前記該紫外線照射管を通電発光させて該上履きと該下履きを同時に殺菌処理および脱臭処理することを特徴とする履物の殺菌脱臭方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図9】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−279129(P2008−279129A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127112(P2007−127112)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(507084512)株式会社エイチ・アイ・エス ファクトリー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(507084512)株式会社エイチ・アイ・エス ファクトリー (1)
【Fターム(参考)】
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