説明

履物用底部材

【課題】 人によって湧泉の位置がずれていても、同じように刺激することができ、誰にも同様の効果が得られるようにする履物用底部材を提供することである。
【解決手段】 履物の輪郭に対応する形状の平板状の本体1表面に、複数の隆起部2a〜2eを備えた履物用底部材であって、少なくとも、人の足裏の湧泉近傍に対応する箇所に、所定の間隔を保って形成した一対の隆起部2b,2cを備え、これら一対の隆起部のそれぞれに、一方の磁極を隆起部表面に向けた永久磁石M1,M2を埋設し、これら永久磁石M1,M2における隆起部表面側の磁極の極性を反対にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、履物の中敷や底など、履物をはいたユーザーの足裏に直接または間接的に接触する履物用底部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、表面に隆起部を形成し、その隆起部で足裏のツボや反射ゾーンを刺激することによって、つぼに対応した器官の血行や代謝を促進するための履物用中敷やサンダルなどが知られていた(特許文献1参照)。
一方、磁力によっても、血行が促進されることが知られている。
そこで、更なる健康増進効果を期待して、上記隆起部による刺激と、磁力の刺激との両者によってツボや反射ゾーンを刺激するため、隆起部を設けた中敷やサンダルの底面に、永久磁石を取り付けたものも製造されている。
【特許文献1】実用新案登録公報第2515112号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のように、足裏のツボや反射ゾーンを刺激する中敷などでは、特に足裏の湧泉を刺激することが重要であり、そのために、湧泉に対応する位置に隆起部や永久磁石を設けるようにしていた。なお、湧泉とは、左右の足裏にあるツボで、そこを刺激することによって、血行や、代謝を良くして、筋肉疲労の回復や、冷えや痛みを改善したりすることができるツボである。
そして、この湧泉は、図6に星印「★」で示すように、足裏の中心よりやや指先側へ寄った位置であって、第5指の付け根と、脚の内側に沿った土踏まずの中心とを結んだ線上の少しくぼんだところに位置している。
【0004】
しかし、上記湧泉の位置は、足裏の相対位置として、おおよその位置は決まっているが、厳密には人ごとに異なり、例えば、同じ大きさの靴を履く人であっても、足裏の形状も異なるし、足裏における湧泉の相対位置も異なる。そのため、人によっては、中敷に設けた上記隆起部や永久磁石の位置が湧泉の位置から外れてしまって、隆起部による刺激が弱まるだけでなく、湧泉を横切る磁束密度も小さくなり、湧泉への刺激が不十分で、結果として効果が出ないことがあった。
【0005】
この発明の目的は、人によって湧泉の位置がずれていても、同じように湧泉に対して刺激を与え、誰にも同様の効果が得られるようにする履物用底部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、履物の輪郭に対応する形状の平板状の本体表面に、複数の隆起部を備えた履物用底部材であって、少なくとも、人の足裏の湧泉近傍に対応する箇所に、所定の間隔を保って形成した一対の隆起部を備え、これら一対の隆起部のそれぞれに、一方の磁極を隆起部表面に向けた永久磁石を埋設し、これら永久磁石における隆起部表面側の磁極の極性を反対にした点に特徴を有する。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明を前提とし、上記永久磁石は、その表面に、銅または銅合金を備えた点に特徴を有する。
第3の発明は、第1または第2の発明を前提とし、踵に対応する位置に設けた第1の隆起部と、土踏まずに対応する位置に設けた第2、第3の隆起部と、足の親指または親指の付け根に対応する位置に設けた第4の隆起部と、上記土踏まずと第1の隆起部との間であって脚の内側寄りに設けた第5の隆起部とを備えた点に特徴を有する。
【0008】
なお、この発明の履物用底部材とは、履物をはいた人の足裏に直接または間接的に接触する部材であって、履物に挿入して履物の底の上に敷いて用いる中敷のほか、履物の内側面を構成する底部材などである。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明によれば、湧泉に対応する位置に設けた一対の永久磁石によって、磁束密度が一定以上の範囲を広く作ることができる。言い換えれば、磁力による一定以上の刺激を作用させることができる範囲を広くできる。そのため、人によって湧泉の位置が多少ずれていても、どの人の湧泉に対しても、同じように磁力による刺激を与えることができる。
このような履物用底部材によれば、一対の隆起部と、磁力との両方で、湧泉を確実に刺激して、血行や代謝を高めることができる。
【0010】
第2の発明では、永久磁石表面に、銅による殺菌効果をもたせたので、隆起部や磁力による刺激によって血行が良くなり、足裏に汗をかくようなことがあっても、雑菌の増殖を抑えることができる。従って、皮膚病や悪臭の発生を抑制することができる。
【0011】
第3の発明によれば、湧泉以外の足つぼにも、隆起部による刺激を与えて、更に、血行や代謝を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1〜図5を用いてこの発明の一実施形態を説明する。
図1は、右足用の中敷を構成する本体1の平面図である。この中敷は、靴の輪郭に合わせた形状をしているが、本体1の表面と裏面をカバー部材4,5で挟んで形成している。ただし、図1では、上記カバー部材4,5を除いた本体1のみを示している。この本体1の表面には、複数の隆起部2a〜2eを設けている。そして、上記本体1を図中点線で示す踵反射ゾーンA、土踏まず反射ゾーンB、および親指反射ゾーンCに区画すると、第1の隆起部2aは、踵反射ゾーンAの範囲内に位置するとともに、土踏まず反射ゾーンB内には、第2の隆起部2bと第3の隆起部2cとが位置している。そして、第4の隆起部2dは、親指反射ゾーンCの範囲内に位置し、上記親指反射ゾーンCと土踏まず反射ゾーンBとの間であって、上記隆起部2cと隆起部2aとの間で、図1の左寄りである脚の内側寄りに、第5の隆起部2eを設けている。
【0013】
なお、ここでいう踵反射ゾーンAとは、本体1を靴の中に敷いて足を入れたとき、足の踵が接触する範囲のことであり、小腸、大腸、骨盤など、下腹部に関連するツボが含まれている。
同様に土踏まず反射ゾーンBは足の土踏まずが位置し、親指反射ゾーンCは足の親指あるいはその付け根が位置するゾーンのことである。そして、土踏まず反射ゾーンBは、肺、心臓、胃、腎臓などの器官に関連するツボが含まれ、親指反射ゾーンCは、頭部に関連するゾーンである。
従って、上記各隆起部2a〜2eによって足裏を刺激すると、対応する器官の血行や代謝を高めることができる。
【0014】
そして、上記土踏まず反射ゾーンBに設けた隆起部2bと、隆起部2cとの間には、人の湧泉が位置するようにし、これら隆起部2bと2cが、湧泉近傍に対応する箇所に設けた一対の隆起部である。
なお、図1、図6においては、上記湧泉のおおよその位置を、星印「★」で示している。
上記湧泉は、図1、図6に示すように、大体の位置は決まっているが、個人差があるので、上記隆起部2bと2cとは、個人差のある湧泉を両隆起部間に位置させることができるように、所定の間隔を保って設けられている。
【0015】
また、上記各隆起部2a〜2eは、本体1の上面が隆起した部位であり、この実施形態においては各隆起部2a〜2eに弾性をもたせるため、本体1を発泡ゴムで形成している。これら各隆起部2a〜2eは、本体1表面から約4mm隆起しており、直径は約25mm〜45mm程度であるが、その高さおよび直径は特に限定されるものではなく、任意に決めることができる。さらに、上記隆起部2a,2c,2d,2eは、底面が円形の形状であり、隆起部2bのみ長円形状であるが、この各隆起部2a〜2eの形状も特に限定されるものではない。
【0016】
さらに、図2に示すように、第2の隆起部2b、第3の隆起部2c、及び、第4の隆起部2dには、円筒状の凹部3を形成し、各凹部3には、それぞれ、永久磁石M1,M2,M3を埋設している。上記永久磁石M1〜M3は、いずれも、図3に示す円柱状で、両底面側に磁極を備えた永久磁石である。この永久磁石の一方の磁極を隆起部の表面側に向けて上記凹部3に埋め込み、接着材で本体1に固定している。
【0017】
なお、上記第2の隆起部2bに埋設した永久磁石M1と、第3の隆起部2cに埋設した永久磁石M2とは、後で説明する理由によって、その磁極を反対にしている。例えば、図4に示すように、第2の隆起部2bに設ける永久磁石M1は表面側をN極とし、第3の隆起部2cに設ける永久磁石M2は表面側をS極としている。そして、第4の隆起部2dに設ける永久磁石M3は、他の永久磁石M1,M2からの距離が大きいため、それらの影響をほとんど受けないので、S極、N極のいずれを表面側に配置してもかまわない。
また、上記各永久磁石M1〜M3は、直径15mm、高さ1mmの円柱状であるが、その形状や寸法はこれに限らない。ただし、足裏で踏んだときに、余り違和感が大きくない表面形状や大きさが好ましい。また、この実施形態では、上記永久磁石M1〜M3の表面を銅合金で被覆している。
【0018】
このように上記凹部3に永久磁石M1〜M3を埋設した本体1の表面と裏面に、一対のカバー部材4,5を固定している。この一対のカバー部材4,5は、収汗性あるいは収湿性を有する人工皮革、合成皮革、皮あるいは合成繊維等を素材にしている。これらのカバー部材4,5で、本体1を挟み込むようにして覆ったとき、本体1表面に、隆起部2a〜2eが隆起しているため、本体1表面を覆うカバー部材4も、これら隆起部2a〜2eと同様に隆起している。そして、カバー部材4であって、上記永久磁石を埋設した第2〜第4の隆起部2b〜2dに対応する部分には、円形の穴6を形成して上記永久磁石M1〜M3の表面を露出させている。ただし、穴6の直径を、上記永久磁石M1〜M3の直径よりも小さくし、カバー部材4によって永久磁石M1〜M3を押さえ、本体1から永久磁石M1〜M3が離脱しないようにしている。
さらにまた、本体1の隆起部2a〜2e以外のほぼ全面に、多数の通気孔7を貫通させている。なお、この通気孔7は直径1mm〜3mmで形成している。
【0019】
上記のようにした中敷において、第2の隆起部2bに埋設した永久磁石M1と、第3の隆起部2cに埋設した永久磁石M2によって磁場が作られるが、極性を反対にして配置された一対の永久磁石M1,M2による磁場では、両永久磁石間に、一定値以上の高い磁束密度を有する広いエリアが形成される。
このことを、図4、図5を用いて説明する。
図4は、この実施形態の中敷の永久磁石M1、M2の配置を示した図であり、図5は、上記実施形態とは違って、永久磁石M1とM2の磁極を同じ向きにした場合の図である。そして、それぞれの場合について磁束密度を測定した結果を図示している。
なお、各永久磁石M1,M2は全て、同一性能のものであり、一対の永久磁石の磁極配置を反対にした場合と、同じにした場合のいずれも、永久磁石間距離(永久磁石M1とM2の外周間の最も近い距離)を20mmにしている。また、図4,5には、永久磁石表面から15mmの高さ位置における磁束密度を図示している。
【0020】
その結果、図4,5に示すように、永久磁石の中央付近ではどららの場合も、磁束密度は60Gであった。しかし、永久磁石M1とM2との中間では、上記実施形態のように2つの永久磁石における磁極の向きを反対にした場合(図4参照)に40Gであるのに対し、同極の組み合わせでは20G(図5参照)であった。
このように、湧泉近傍に対応する位置に設けた一対の永久磁石M1、M2の永久磁石間において、磁束密度の高いエリアをより広くするために、この実施形態の中敷では、一対の永久磁石の、磁極の向きを反対にしているのである。
【0021】
すなわち、図4のように、磁極の向きを反対にして永久磁石を設けた場合には、この中敷を用いた人の湧泉が、永久磁石M1またはM2の真上に位置しているときは、同極の場合と同様に大きな磁気刺激を受けるし、湧泉が永久磁石の真上から多少ずれたとしても、2つの永久磁石M1,M2の間にあれば、図5の場合に比べて2倍の磁力による磁気刺激を受けることになる。これに対し、図5に示すように、磁極の向きを同じにした2つの永久磁石M1,M2を用いた場合には、湧泉が、永久磁石の真上に位置しているときには大きな磁気刺激を受けるが、永久磁石からずれると急激に刺激が小さくなってしまい、効果が薄れてしまうことが予測できる。
従って、図4に示すような配置にしたこの実施形態の中敷では、湧泉の位置が多少ずれていても、どの人の湧泉に対しても、同じように磁力による刺激を作用させることができる。
【0022】
このような中敷を靴の中に敷いて歩行すると、隆起部2a〜2eが身体の各器官や脳に連係した反射ゾーンを押圧するとともに、磁気によって湧泉を確実に刺激することができる。このように、湧泉や、その他のツボを含む反射ゾーンを刺激した状態でしばらく歩行を続けると、血行や代謝が良くなり、健康増進につながる。
血行が良くなれば、足裏が発汗することもあるが、この中敷によれば、通気孔7によって、中敷に通気性があるので、足が蒸れたり、中敷が痛んだりし難い。特に、この実施形態のように、本体1を弾力性のある材質で形成した場合には、歩行中に本体1が変形して、通気孔7が伸縮することにより、靴内の通気をよりよくすることができるが、本体1の素材は、この実施形態に限定されない。通常の中敷や、履物の中底に利用されるものなら、どのようなものでもよい。
【0023】
また、上記実施形態では、永久磁石M1〜M3の表面を銅合金で形成しているが、このように、永久磁石M1〜M3の表面を銅合金で形成したり、銅製にしたりすることで、銅による殺菌効果が得られる。その結果、足裏や、履物内の雑菌の繁殖を押さえ、皮膚病や悪臭の発生を防ぐことができる。
なお、上記実施形態においてはカバー部材4,5を本体1の表面および裏面に設けているが、必ずしもカバー部材4,5を設けなくてもよいし、いずれか一方のみを設けてもよい。
さらに、上記実施形態では、靴に挿入して用いる中敷の例を説明したが、上記中敷の構成をそのまま、スリッパや、サンダル、靴などの底部材としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】発明の実施形態における中敷の平面図である。
【図2】図1のII-II線断面図である。
【図3】実施形態で用いる永久磁石の斜視図である。
【図4】実施形態における永久磁石の磁束密度の測定結果を示した図である。
【図5】磁極の向きを同一にした永久磁石を配置した場合の磁束密度の測定結果を示した図である。
【図6】湧泉の位置を示した足裏の図である。
【符号の説明】
【0025】
1 本体
2a〜2e 隆起部
M1〜M3 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履物の輪郭に対応する形状の平板状の本体表面に、複数の隆起部を備えた履物用底部材であって、少なくとも、人の足裏の湧泉近傍に対応する箇所に、所定の間隔を保って形成した一対の隆起部を備え、これら一対の隆起部のそれぞれに、一方の磁極を隆起部表面に向けた永久磁石を埋設し、これら永久磁石における隆起部表面側の磁極の極性を反対にした履物用底部材。
【請求項2】
上記永久磁石は、その表面に、銅または銅合金を備えたことを特徴とする請求項1に記載の履物用底部材。
【請求項3】
踵に対応する位置に設けた第1の隆起部と、土踏まずに対応する位置に設けた第2、第3の隆起部と、足の親指または親指の付け根に対応する位置に設けた第4の隆起部と、上記土踏まずと第1の隆起部との間であって脚の内側寄りに第5の隆起部を備えた請求項1または2に記載の履物用底部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−173309(P2008−173309A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9776(P2007−9776)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(592057721)東邦レマック株式会社 (3)
【Fターム(参考)】