説明

履物装置

【課題】 サイズが自動的に調節される履物装置を提供する。
【解決手段】 使用者の足が挿入される本体部110と、本体部110に設けられた複数のセンサ101と、本体部110の少なくとも一部を構成し伸縮可能な合成繊維104と、を備える。センサ101の少なくとも一つは本体部110内に足が挿入されたことを検出する挿入検出センサとしての機能を備える。センサの少なくとも一つは本体部110が足にフィットするサイズとなったことを検出するフィット状態検出センサとしての機能を備える。合成繊維104は、挿入検出センサにより本体部110内への足の挿入が検出されると収縮が開始される。フィット状態検出センサにより使用者の足にフィットするサイズまで本体部110が小さくなったことが検出されると合成繊維104の収縮が終了される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、履物装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴などの履物を購入するには、使用者自身が小売店舗へ赴き自分の足のサイズに合う靴を試着して選ぶのが一般的である。
【0003】
また、従来の靴などの履物は、例えば、靴ひもを緩めた状態で靴を履き、履いた状態で靴ひもを締めたり、或いは、例えばマジックテープ(登録商標)付きの面ファスナーを靴の本体部から剥がした状態で靴を履き、履いた状態で面ファスナーを適度な緊迫度を以て本体部に貼り付けることにより、履物を足にフィットさせた状態で装着することができる。
【0004】
なお、本発明に関連する先行技術文献としては、例えば、特許文献1がある。
【0005】
特許文献1には、足を挿入する本体部と、本体部に設けられ足首又は甲を緊迫状態で保持する保持部と、電気信号を発信する電気信号発信手段と、電気信号発信手段からの信号を受けて保持部を本体部から開閉する形状記憶合金と、本体部のつま先部に配置された検出手段と、を備え、検出手段が靴が履かれたことを検出すると、電気信号発信手段が電気信号を発信し、形状記憶合金が保持部を閉じる靴が開示されている。
【0006】
特許文献1によれば、使用者が靴を履くと形状記憶合金が予め記憶した形状に変形し、自動的に靴が足に装着状態となる。すなわち、特許文献1の技術は、一般的な面ファスナー式の靴の面ファスナーに代えて、自動で開閉動作する保持部を備えているものである。
【特許文献1】特開2000−014402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
靴などの履物を購入する従来の方法にはいくつかの問題点があった。
【0008】
第一の問題点は、使用者の足のサイズに完全にフィットする靴を見つけるのが困難であること。足の形状、サイズには個人差があり、使用者は自分の足の形状に近い靴を見つけて妥協するか、高価なオーダーメイドの靴を購入するしかなかった。
【0009】
第二の問題点は、靴メーカーが同一デザインの靴について複数のサイズを製作する必要があること。メーカーが多くの使用者に対応した靴を製造するためには靴のサイズの範囲を広げる必要があり、その分のコストを負担する必要があった。使用者にとっては、メーカーの設定するサイズ範囲が選択肢を狭める要因となっていた。
【0010】
なお、特許文献1の技術では、使用者が靴を履くと形状記憶合金が予め記憶した形状に変形するのに伴い保持部が閉じて、自動的に靴が足に装着状態となるに過ぎず、上記の第一及び第二の問題点は解決できない。
【0011】
また、靴などの履物は、歩行時には足からの力の加わり方が変化するため、フィット状態でなくなったり、或いは、足に加える負荷が局所的に増大することがある。
【0012】
また、靴などの履物は、長時間履いていると、内部の温度や湿度が上昇して使用者に不快感を与えることがある。
【0013】
本発明は、上記のような問題点を解決する履物装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の履物装置は、使用者の足が挿入される本体部と、前記本体部に設けられた複数のセンサと、前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、を備え、前記センサのうちの少なくとも一つは、前記本体部内に使用者の足が挿入されたことを検出する挿入検出センサとしての機能を備え、前記センサのうちの少なくとも一つは、前記本体部が使用者の足にフィットするサイズとなったことを検出するフィット状態検出センサとしての機能を備え、前記伸縮体は、前記挿入検出センサにより前記本体部内に使用者の足が挿入されたことが検出されると収縮が開始され、前記フィット状態検出センサにより使用者の足にフィットするサイズまで前記本体部が小さくなったことが検出されると収縮が終了されることを特徴としている。
【0015】
本発明の履物装置においては、前記伸縮体は、電気信号の入力により収縮する合成繊維からなり、当該履物装置は、前記伸縮体に対して電気信号を出力し該伸縮体を収縮させる電気信号出力手段を更に備えることが好ましい。
【0016】
本発明の履物装置においては、前記合成繊維は導線性高分子ポリマからなることが好ましい。
【0017】
本発明の履物装置においては、前記合成繊維は、前記複数のセンサを互いに連結するとともに、前記センサ間の電気信号伝達経路として機能することが好ましい。
【0018】
本発明の履物装置においては、前記センサは、前記電気信号出力手段としての機能を兼ね備えていることが好ましい。
【0019】
本発明の履物装置においては、当該履物装置を履いた使用者の歩行中に、前記伸縮体が伸びた場合にも、前記フィット状態検出センサにより前記本体部が使用者の足にフィットしていると検出されるまで前記伸縮体が収縮されることが好ましい。
【0020】
本発明の履物装置においては、前記挿入検出センサは、接触センサ又は圧力センサであることが好ましい。
【0021】
本発明の履物装置においては、前記フィット状態検出センサは、接触センサ又は圧力センサであることが好ましい。
【0022】
本発明の履物装置においては、前記センサのうちの少なくとも一つは、前記本体部に対する足の接触圧が所定値を超えることを検出する負荷監視センサとしての機能を備え、前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値を超えたことが検出されると、前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値以下となったと検出されるまで、前記伸縮体が弛緩されることが好ましい。
【0023】
本発明の履物装置においては、前記センサのうちの少なくとも一つは、温度を検出する温度センサとしての機能を備え、前記温度センサにより所定値を超える温度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されることが好ましい。
【0024】
本発明の履物装置においては、前記センサのうちの少なくとも一つは、湿度を検出する湿度センサとしての機能を備え、前記湿度センサにより所定値を超える湿度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されることが好ましい。
【0025】
本発明の履物装置においては、前記挿入検出センサは、使用者の踵が前記本体部の踵部分に収まったことを検出することが好ましい。
【0026】
本発明の履物装置においては、前記センサに電源供給する電源装置と、前記電源装置から前記センサに対して電源供給する状態又はしない状態に切り替える操作を行うための操作部と、を備えることが好ましい。
【0027】
また、本発明の履物装置は、使用者の足が挿入される本体部と、前記本体部に対する足の接触圧が所定値を超えることを検出する負荷監視センサと、前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、を備え、前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値を超えたことが検出されると、前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値以下となったと検出されるまで、前記伸縮体が弛緩されることを特徴としている。
【0028】
また、本発明の履物装置は、使用者の足が挿入される本体部と、温度センサと、前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、を備え、前記伸縮体は、前記温度センサにより所定値を超える温度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されることを特徴としている。
【0029】
また、本発明の履物装置は、使用者の足が挿入される本体部と、湿度センサと、前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、を備え、前記伸縮体は、前記湿度センサにより所定値を超える湿度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、使用者の足が挿入される本体部と、前記本体部に設けられた複数のセンサと、前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、を備え、前記センサのうちの少なくとも一つは、前記本体部内に使用者の足が挿入されたことを検出する挿入検出センサとしての機能を備え、前記センサのうちの少なくとも一つは、前記本体部が使用者の足にフィットするサイズとなったことを検出するフィット状態検出センサとしての機能を備え、前記伸縮体は、前記挿入検出センサにより前記本体部内に使用者の足が挿入されたことが検出されると収縮が開始され、前記フィット状態検出センサにより使用者の足にフィットするサイズまで前記本体部が小さくなったことが検出されると収縮が終了されるので、使用者が本体部に足を挿入すると自動的に本体部が足にフィット状態となる。よって、使用者は、自分の足にフィットする靴を探すという手間を省ける(或いは軽減できる)し、靴メーカーは同一デザインの靴に対して複数のサイズを製作する必要がなくなる(或いは、製作する必要のあるサイズの数を低減することができる)。
【0031】
また、本発明によれば、使用者の足が挿入される本体部と、前記本体部に対する足の接触圧が所定値を超えることを検出する負荷監視センサと、前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、を備え、前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値を超えたことが検出されると、前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値以下となったと検出されるまで、前記伸縮体が弛緩されるので、足に加わる負荷を所定値以下に制限することができる。
【0032】
また、本発明によれば、使用者の足が挿入される本体部と、温度センサと、前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、を備え、前記伸縮体は、前記温度センサにより所定値を超える温度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されるので、本体部内の温度を所定値以下に制限することができる。
【0033】
また、本発明によれば、使用者の足が挿入される本体部と、湿度センサと、前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、を備え、前記伸縮体は、前記湿度センサにより所定値を超える湿度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されるので、本体部内の湿度を所定値以下に制限することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施形態について説明する。
【0035】
〔第1の実施形態〕
図1は実施形態に係る履物装置100を示す側面図、図2は履物100の底部を示す底面図、図3は履物100を右斜め前方より見た斜視図である。
【0036】
本実施形態に係る履物装置100は、例えば、図1乃至図3に示すように、一般的な運動靴の形状に形成され、使用者の足が挿入される本体部110を備えている。
【0037】
この本体部110には、複数のセンサ101と、センサ101の動作のオン/オフを切り替える操作を行うための操作部103(図1、図2)と、伸縮可能で本体部110の一部を構成する複数条の合成繊維(伸縮体)104と、センサ101に対して電源供給し、センサ101及び合成繊維104の相互間の信号送受信を制御する電源装置105(図1、図2)と、を備えて構成されている。
【0038】
複数のセンサ101のうち、例えば、図1及び図2においてセンサ101aと示されるセンサは、本体部110内に使用者の足が挿入されたことを検出する機能を備える(挿入検出センサとしての機能を備える)。
【0039】
図1及び図2に示すように、センサ101aは、例えば、本体部110において、足の踵が位置する部分に配置されている。
【0040】
また、各センサ101(例えば、センサ101aも含む)は、本体部110が使用者の足にフィットするサイズとなったことを検出する機能を備える(フィット状態検出センサとしての機能を備える)。
【0041】
本実施形態の場合、各センサ101は、例えば、接触センサ或いは圧力センサからなる。
【0042】
センサ101は、例えば、本体部110の底部110A、甲部(甲の部分)110B及び後部(踵から足首にかけての部分)110Cに、それぞれ複数個ずつ配置されている。
【0043】
より具体的には、底部110Aにおいては、例えば、複数のセンサ101が、該底部110Aの外周に沿う縁部に所定間隔で周状に配置されている。また、甲部110Bにおいては、例えば、該甲部110Bのほぼ中心線に沿って、つま先側から足首側に向けて、複数のセンサ101が所定間隔で直線状に配置されている。また、後部110Cにおいては、例えば、該後部110Cのほぼ中心線に沿って、踵側から足首側に向けて、複数のセンサ101が所定間隔で直線状に配置されている。
【0044】
なお、センサ101は、本体部110の形状、容量、用途などに応じて、適切な数量が適切な位置に配置されるものであり、図1乃至図3に示される数や配置に限定されるものではない。
【0045】
なお、センサ101は、足に直接接触する位置に配置しても良いが、本体部110に内蔵し、足に直接は接触しないようにすることがより好ましい。本実施形態においては、例えば、センサ101は本体部110に内蔵されているものとする。
【0046】
操作部103は、電源装置105からセンサ101に対する電源供給のオン/オフを切り替えるためのものである。操作部103は、例えば、押下式、スライド式或いは回転式であることが挙げられるが、その他の動作形式であっても良い。
【0047】
合成繊維104は、センサ101を相互に連結している。
【0048】
更に、合成繊維104は、これらセンサ101を相互に電気的に接続するとともに、これらセンサ101を電源装置105に対して電気的に接続する。
【0049】
合成繊維104は、センサ101aにより本体部110内に使用者の足が挿入されたことが検出されると収縮を開始し、各センサ101により使用者の足にフィットするサイズまで本体部110が小さくなったことが検出されると収縮を終了する。
【0050】
このような合成繊維104は、例えば、信号(主に電気信号)によって伸縮が可能な導電性高分子ポリマにより構成されている。乾燥環境下で動作する高分子ポリマは、圧電ポリマや電歪ポリマが該当する。
【0051】
ただし、履物装置100に備えることができ、信号による伸縮を実現する特性を有するものであれば、合成繊維104は導電性高分子ポリマに限定されない。例えば、静電力によって反応する静電アクチュエータなど、信号による伸縮を実現する特性を持つ材料であれば、同様に合成繊維104を構成する材料とすることができる。
【0052】
また、履物装置100が備える各合成繊維104の導電性の程度は一律である必要はなく、その材質、形状、位置などによってそれぞれに適切な導電性を備えるものとする。
【0053】
合成繊維104は、例えば、図2に示すように、底部110Aにおいては、該底部110Aの外周に沿って配置されたセンサ101を周状に順次に連結している。
【0054】
また、合成繊維104は、図3及び図1に示すように、底部110Aの一方の側部に配置されたセンサ101、甲部110Bに配置されたセンサ101及び底部110Aの他方の側部に配置されたセンサ101を、順次に弧状に連結している。
【0055】
また、合成繊維104は、図3及び図1に示すように、甲部110Bに配置されたセンサ101を順次に直線状に連結している。
【0056】
更に、合成繊維104は、図1に示すように、後部110Cに配置されたセンサ101を順次に直線状に連結している。
【0057】
なお、合成繊維104は、履物装置100の形状、容量、用途などに応じて、適切な数が適切な位置に配置されるものであり、図1乃至図3に示される数や配置に限定されるものではない。
【0058】
合成繊維104は、例えば、本体部110に内蔵されている。
【0059】
すなわち、本体部110は、少なくとも外周側及び内周側の2層構造を有する被覆部111を備え、該被覆部111の外周側部分と内周側部分との間に合成繊維104、センサ101及び電源装置105が配置されている。
【0060】
なお、図1乃至図3では、センサ101、合成繊維104及び電源装置105といった被覆部111に内蔵された構成要素を示すため、被覆部111を透視させているが、実際にはセンサ101、合成繊維104及び電源装置105は、例えば、履物装置100の外部からは視認できないようになっている。
【0061】
この被覆部111は、本体部110の甲部110B、側部及び後部110Cを含む部分においては、例えば、布地或いはその他の繊維などのように、一般的な履物のそれらの部分を構成する材料からなる。また、被覆部111の底部(靴底部)は、例えば、ゴム、合成ゴム、ソール材などのように、一般的な履物の底部を構成する材料からなる。
【0062】
次に、動作を説明する。
【0063】
先ず、履物装置100を履く動作を説明する。
【0064】
先ず、使用者は操作部103を操作し、電源装置102をオン状態とさせる。これにより、電源装置102は、センサ101や合成繊維104と相互に電気信号を送受信する準備が整った状態となる。なお、この状態では合成繊維104は弛緩している。
【0065】
続いて、使用者が本体部110内に足を挿入する。すると、センサ101aが使用者の足が本体部110内に挿入されたことを検出する。すなわち、センサ101aが接触センサの場合、該センサ101aに踵が接触したことを該センサ101aが検出する。或いは、センサ101aが圧力センサの場合、該センサ101aに加わる圧力が第1の所定値A以上となることをセンサ101aが検出する。
【0066】
使用者の足が本体部110内に挿入されたことを検出すると、センサ101aは、該センサ101aに連結された合成繊維104に対し、該合成繊維104を収縮させる電気信号の出力を開始する。また、この電気信号は、合成繊維104を介して、当該合成繊維104が連結されたセンサ101にも伝達され、この電気信号を受けたセンサ101も、同様に、該センサ101が連結された合成繊維104に対し、該合成繊維104を収縮させる電気信号の出力を開始する。このように、各センサ101は、合成繊維104に対して電気信号を出力し該合成繊維104を収縮させる電気信号出力手段としての機能を兼ね備えている。また、合成繊維104は、複数のセンサ101を互いに連結するとともに、センサ101間の電気信号伝達経路として機能する。
【0067】
こうして、各センサ101は、連鎖的に、合成繊維104を収縮させる電気信号の出力状態に移行する。
【0068】
各合成繊維104は、センサ101から電気信号を受けると、収縮を開始する。この収縮に伴い、本体部110の寸法が小さくなる。すなわち、本体部110の全体が足を圧迫する方向に動く。
【0069】
やがて、各センサ101より使用者の足にフィットするサイズまで本体部110が小さくなったことが検出されると、各センサ101は、該センサ101に連結された合成繊維104に対する電気信号の出力を終了する。
【0070】
ここで、各センサ101が接触センサの場合、足への接触を検出したセンサ101から順に、該センサ101と連結された合成繊維104に対する電気信号の出力を終了する。
【0071】
また、各センサ101が圧力センサの場合、検出する圧力が所定値B以上となったセンサ101から順に、該センサ101と連結された合成繊維104に対する電気信号の出力を終了する。
【0072】
なお、第2の所定値Bとしては、各センサ101の数や位置に応じて、それぞれ適切な値を設定することができる。
【0073】
これにより、本体部110の全体が足にフィットした時点で合成繊維104の収縮が終了する。
【0074】
以上の動作によって、使用者が足を本体部110内に履き入れることにより、本体部110のサイズを自動的に足に合わせることが可能となる。
【0075】
次に、使用者が歩行するときの動作について説明する。
【0076】
歩行時には、立ち止まっているときとは異なる態様で、足から本体部110に力が加わるため、合成繊維104が伸びることが想定される。
【0077】
合成繊維104の伸びにより、使用者の足に対する本体部110の密着度が低下する。つまり、部分的に本体部110が足に対してフィット状態でなくなる。
【0078】
そこで、各センサ101は、接触センサの場合に使用者の足に対して非接触状態となるか、或いは、圧力センサの場合に使用者の足に対する接触圧が第2の所定値B未満となると、該センサ101と連結された合成繊維104を収縮させる電気信号を出力する。
【0079】
これにより、歩行時においても、履物装置100を継続的に足に安定装着させることが可能となる。
【0080】
すなわち、履物装置100を履いた使用者の歩行中に、合成繊維104が伸びた場合にも、センサ101により本体部110が使用者の足にフィットしていると検出されるまで合成繊維104が収縮される。
【0081】
更に、履物装置100は、安定装着を目的とした機能の他に、足への負荷軽減の機能を有する。
【0082】
例えば、図2に示すように、底部110Aに配置されたセンサ101が足の裏から受ける圧力が第3の所定値を超えると、これらセンサ101は、周囲の合成繊維104を弛緩させる電気信号を出力する。
【0083】
これにより、足の特定の部分に負荷が集中することなく、歩行時における足全体の負荷を軽減することが可能となる。
【0084】
このように、例えば、底部110Aに配置された各センサ101は、本体部110に対する足の接触圧が所定値(第3の所定値)を超えることを検出する負荷監視センサとしての機能を備え、これらセンサ101により本体部110に対する足の接触圧が第3の所定値を超えたことが検出されると、これらセンサ101により本体部110に対する足の接触圧が第3の所定値以下となったと検出されるまで、合成繊維104が弛緩される。
【0085】
次に、履物装置100を脱ぐ動作について説明する。
【0086】
使用者は、操作部103を操作し、電源装置105からセンサ101への電源の入力状態を解除し、センサ101による電気信号の送受信を遮断する。これにより、センサ101の作動を止める。
【0087】
この動作によって、センサ101が合成繊維104を収縮させる電気信号を出力することがなくなるので、合成繊維104を弛緩させることが可能となる。したがって、合成繊維104を十分に弛緩させた上で、使用者は履物装置100を脱ぐことができる。
【0088】
以上のような第1の実施形態によれば、使用者が、履物装置100に足を履き入れることによって、接触或いは圧力を感知したセンサ101が、電気信号により合成繊維104を収縮させ、本体部110を使用者の足の形状にして自律的に安定装着させることができる。
【0089】
また、歩行時においては、センサ101が足の接触或いは圧力を感知し、合成繊維104の収縮度および剛性を一定の範囲に維持し、履物装置100を継続的に安定装着させることができる。
【0090】
使用者は、操作部103を操作し、電源装置105の入力状態を解除し、センサ101の作動を止めることで、合成繊維104を弛緩させ、履物装置100を脱ぐことができる。
【0091】
履物装置100を使用することにより、靴メーカーは同一デザインの靴に対して複数のサイズを製作する必要がなくなり(或いは、製作する必要のあるサイズの数を低減することができ)、デザイン設計などに対してより効率化な投資が可能となる。また、使用者は、自分の足にフィットする靴を探すという手間を省ける(或いは軽減できる)。
【0092】
〔第2の実施形態〕
第2の実施形態では、各センサ101は、温度及び湿度をも検出可能に構成されている。すなわち、センサ101は、温度センサ及び湿度センサとしての機能を兼ね備えている。
【0093】
センサ101は、第4の所定値を超えた温度を検出するか、或いは、第5の所定値を超えた湿度を検出すると、該センサ101と連結された合成繊維104に対し該合成繊維104を弛緩させる電気信号を出力し、該合成繊維104の圧縮密度を低減させる。この動作により、歩行時における履物装置100の通気性を一定の範囲内に維持することが可能となる。
【0094】
以上のような第2の実施形態によれば、センサ101が温度及び湿度を感知し、合成繊維104の収縮度および密度を一定の範囲に維持し、履物装置100の通気性を最適な状態に保つことができる。
【0095】
なお、上記の各実施形態では、履物装置100が運動靴の形状・材質・用途である例を説明したが、本発明はこの例に限らず、カジュアル靴、ビジネス靴、デザイン靴などといった形状・材質・用途を有する履物にも同様に適用可能である。
【0096】
また、上記の実施形態では、合成繊維104が本体部110の一部のみを構成する例を説明したが、本体部110を構成する繊維の全てが合成繊維104となることも想定される。この場合においても、合成繊維104の材質、形状、位置などによってそれぞれに適切な導電性を備えるものとする。
【0097】
また、上記の実施形態では、センサ101が接触センサ、圧力センサ、温度センサ或いは湿度センサとしての機能を備える例を説明したが、この例に限らない。例えば、センサ101は、距離センサ、光位置センサ、磁力センサ、位置情報測位センサ、無線周波数発信および受信センサとしての機能を持たせることによって、使用者の位置測定を行うことができる。
【0098】
更に、センサ101に、圧力センサ、湿度センサ、速度センサ、加速度センサの機能を持たせることによって、筋肉の動き、圧力のかかり方、発汗、体温などといった使用者の歩行時の状態を測定することができる。すなわち、健康医学およびスポーツ医学へ応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】履物装置の側面図である。
【図2】履物装置の底面図である。
【図3】履物装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0100】
110 本体部
101 センサ(フィット状態検出センサ、電気信号出力手段、負荷監視センサ、温度センサ、湿度センサ)
101a センサ(挿入検出センサ、フィット状態検出センサ、電気信号出力手段、温度センサ、湿度センサ)
103 操作部
104 合成繊維(伸縮体)
105 電源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の足が挿入される本体部と、
前記本体部に設けられた複数のセンサと、
前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、
を備え、
前記センサのうちの少なくとも一つは、前記本体部内に使用者の足が挿入されたことを検出する挿入検出センサとしての機能を備え、
前記センサのうちの少なくとも一つは、前記本体部が使用者の足にフィットするサイズとなったことを検出するフィット状態検出センサとしての機能を備え、
前記伸縮体は、前記挿入検出センサにより前記本体部内に使用者の足が挿入されたことが検出されると収縮が開始され、前記フィット状態検出センサにより使用者の足にフィットするサイズまで前記本体部が小さくなったことが検出されると収縮が終了されることを特徴とする履物装置。
【請求項2】
前記伸縮体は、電気信号の入力により収縮する合成繊維からなり、
当該履物装置は、前記伸縮体に対して電気信号を出力し該伸縮体を収縮させる電気信号出力手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の履物装置。
【請求項3】
前記合成繊維は導線性高分子ポリマからなることを特徴とする請求項2に記載の履物装置。
【請求項4】
前記合成繊維は、前記複数のセンサを互いに連結するとともに、前記センサ間の電気信号伝達経路として機能することを特徴とする請求項2又は3に記載の履物装置。
【請求項5】
前記センサは、前記電気信号出力手段としての機能を兼ね備えていることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一項に記載の履物装置。
【請求項6】
当該履物装置を履いた使用者の歩行中に、前記伸縮体が伸びた場合にも、前記フィット状態検出センサにより前記本体部が使用者の足にフィットしていると検出されるまで前記伸縮体が収縮されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の履物装置。
【請求項7】
前記挿入検出センサは、接触センサ又は圧力センサであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の履物装置。
【請求項8】
前記フィット状態検出センサは、接触センサ又は圧力センサであることを特徴とする請求項1乃至7の何れか一項に記載の履物装置。
【請求項9】
前記センサのうちの少なくとも一つは、前記本体部に対する足の接触圧が所定値を超えることを検出する負荷監視センサとしての機能を備え、
前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値を超えたことが検出されると、前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値以下となったと検出されるまで、前記伸縮体が弛緩されることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の履物装置。
【請求項10】
前記センサのうちの少なくとも一つは、温度を検出する温度センサとしての機能を備え、
前記温度センサにより所定値を超える温度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の履物装置。
【請求項11】
前記センサのうちの少なくとも一つは、湿度を検出する湿度センサとしての機能を備え、
前記湿度センサにより所定値を超える湿度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の履物装置。
【請求項12】
前記挿入検出センサは、使用者の踵が前記本体部の踵部分に収まったことを検出することを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の履物装置。
【請求項13】
前記センサに電源供給する電源装置と、
前記電源装置から前記センサに対して電源供給する状態又はしない状態に切り替える操作を行うための操作部と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の履物装置。
【請求項14】
使用者の足が挿入される本体部と、
前記本体部に対する足の接触圧が所定値を超えることを検出する負荷監視センサと、
前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、
を備え、
前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値を超えたことが検出されると、前記負荷監視センサにより前記本体部に対する足の接触圧が前記所定値以下となったと検出されるまで、前記伸縮体が弛緩されることを特徴とする履物装置。
【請求項15】
使用者の足が挿入される本体部と、
温度センサと、
前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、
を備え、
前記伸縮体は、前記温度センサにより所定値を超える温度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されることを特徴とする履物装置。
【請求項16】
使用者の足が挿入される本体部と、
湿度センサと、
前記本体部の少なくとも一部を構成し、伸縮可能な伸縮体と、
を備え、
前記伸縮体は、前記湿度センサにより所定値を超える湿度が検出されると、前記伸縮体が弛緩されることを特徴とする履物装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−260091(P2007−260091A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−88113(P2006−88113)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】