説明

履物

【課題】ワンタッチで着脱可能であり、防風及び防水の機能を向上することができ、外観品質が低下することがないカバー部材を備えた履物を提供する。
【解決手段】足へ固定するためのストラップ14を有する履物本体11と、上記履物本体に着脱可能であると共に、装着した際に履物本体の上方を被覆しうるカバー部材12とを有する履物において、上記カバー部材は、磁力により吸着されて上記履物本体に装着しうることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は履物に係り、特に、足へ固定するためのストラップを有する履物本体と、履物本体の上方を被覆しうるカバー部材とを有する履物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、雨や雪の際に爪先の濡れや汚れ等を防ぐために、足へ固定するためのストラップを有する下駄や草履等の履物本体の爪先部分を覆うためのカバー部材が使用されており、スリッパの先のように履物本体と一体に固着されているカバー部材と、履物本体に対して着脱可能に設けられているカバー部材とが存在する。
上記2種類のカバー部材において、前者のカバー部材は、天候が良くなったときや屋内に入った時等の不要になった場合に外せないという問題を有している。
したがって、近年では、利便性を重視し、後者のカバー部材を使用している履物もある。
【0003】
着脱式のカバー部材の一例として、爪先部分を上から覆って履物の裏側へ回りこむ結び紐やゴム紐をつけ、その紐を下駄の後側の歯に掛け止めするようにしたカバー部材が存在する(例えば、特許文献1参照)。
また、オーバーシューズのように履物の裏側まで包み込むようにしたカバー部材が存在する(例えば、特許文献2参照)。
このようなカバー部材の場合、カバー部材自体が大きくなってしまうため、不使用時にカバーが嵩張り、携行に不便である。
さらに、特許文献1においては、履物の爪先部分を前方から嵌め込むような構成であるため、履物本体とカバー部材の密着性が低く、爪先の防風及び防水を完全に行うことができない。
【0004】
上記のような問題を解消した着脱式カバー部材の一例として、カバー部材を着脱できるように、履物本体の周側面に沿ってカバー部材着脱用の止め穴が周設され、その止め穴と嵌合・除去できる突起が設けられているカバー部材が存在する(例えば、特許文献3参照)。
また、その他の例として、履物本体の爪先部分の外側に沿って、凹条と凸条との嵌め合いからなるシール部材の一方を取り付け、カバー部材の下縁内周に沿って上記シール部材の他方を取り付けてなるカバー部材が存在する(例えば、特許文献4参照)。
さらに、その他の例として、カバー部材を面接着剤により係合することにより履物本体に着脱自在に取り付けることを可能とするカバー部材が存在する(例えば、特許文献5参照)。
【0005】
しかしながら、上記のような係合手段を用いたカバー部材の場合、カバー部材側の係合部と履物本体側の係合部を正確に合わせなければ装着することができないため、カバー部材の着脱作業の煩雑さは完全に解消されていない。
そのため、突然の雨等のような緊急時に、カバー部材の着脱作業を素早く簡単に行うことができないという事態が生じる。
また、上記各係合部が露出して設けられているため、カバー部材を装着した際に、履物本体とカバー部材の装着部位が完全に密着されず、空隙部分が形成され、その空隙部分から水や風が入り込むような事態が生じるため、結果的に爪先部分を完全に保護することができない。
さらに、カバー部材を取り外した際に、履物本体側の係合部が外方から視認されることから、通常の履物と比べて視覚的に違和感を覚えることとなる。
【0006】
【特許文献1】実公昭50−010916号公報
【特許文献2】実全昭59−021203号公報
【特許文献3】実全昭58−129801号公報
【特許文献4】実開平05−068303号公報
【特許文献5】特開2002−101902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の課題は、ワンタッチで着脱可能であり、防風及び防水の機能を向上することができ、外観品質が低下することがないカバー部材を備えた履物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、足へ固定するためのストラップを有する履物本体と、上記履物本体に着脱可能であると共に、装着した際に履物本体の上方を被覆しうるカバー部材とを有する履物において、上記カバー部材は、磁力により吸着されて上記履物本体に装着しうることを特徴とする。
【0009】
即ち、請求項1記載の本発明に係る履物にあっては、カバー部材を履物本体に近づけると、磁力の吸着により履物本体に装着されるように構成されている。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、上記履物本体の側面部に磁石が埋設されている。
【0011】
即ち、請求項2記載の本発明に係る履物にあっては、磁石が外方から視認されないように埋設されている。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、上記履物本体は、接地面側に配置されたアウトソールと、接足面側に配置され、クッション性を有した素材で形成されたインナーソールと、上記アウトソールと上記インナーソールに挟まれて配置されたミッドソールとを有し、上記ミッドソールに、磁石が埋設されている。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、上記カバー部材は、装着時に上記履物本体の前部上方を被覆しうるように形成され、上記カバー部材の下端部に磁石が埋設されている。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、上記カバー部材は、装着時に上記履物本体の前部上方及び前部側方を被覆しうるように形成された甲被覆部と、上記甲被覆部の内面下端部に沿って取り付けられた帯状の係止部とを有し、上記係止部に磁石が埋設されている。
【0015】
即ち、請求項4及び5記載の本発明に係る履物にあっては、カバー部材が爪先を保護しうる必要最小限の寸法となるように構成されている。
【0016】
また、請求項6記載の発明は、上記係止部は、弾性を有した素材で形成され、上記磁石の厚さ寸法と同一の厚さ寸法に形成されている。
【0017】
即ち、請求項6記載の本発明に係る履物にあっては、装着した際に、カバー部材と履物本体との当接部位が密着するように形成されている。
【0018】
また、請求項7記載の発明は、上記磁石は、上記履物本体に埋設された履物側磁石と、上記カバー部材に埋設されたカバー部材側磁石とを有し、上記履物本体には、複数の上記履物側磁石が埋設され、上記カバーには、複数の上記カバー側磁石が、上記複数の履物側磁石の各々に対応して吸着しうるように埋設されている。
【0019】
また、請求項8記載の発明は、上記履物側磁石は、上記履物本体の側面部における先端部及び前部両側部に埋設されていると共に、上記カバー部材側磁石は、上記カバー部材の内方先端部及び内方前部両端部に埋設されている。
【0020】
即ち、請求項7及び8記載の本発明に係る履物にあっては、履物本体とカバー部材の吸着の際に、磁石の吸着力を有効に利用することができるように形成されている。
【0021】
また、請求項9記載の発明は、上記磁石は、薄型の円盤形状に形成されている。
【0022】
また、請求項10記載の発明は、上記磁石は、厚さ寸法が3.0mmであり、吸着力が2.2kg以上である。
【0023】
即ち、請求項9及び10記載の本発明に係る履物にあっては、磁石が履物本体とカバー部材の装着に適した形状、寸法、吸着力となるように形成されている。
【0024】
また、請求項11記載の発明は、上記履物は草履であり、上記ストラップは鼻緒である。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の本発明に係る履物は、カバー部材を履物本体に近づけると、磁力の吸着により、ワンタッチで履物本体に装着されるため、煩雑な係合作業を要することなく、カバー部材の着脱作業を片手で容易に行うことができる。
したがって、突然の雨等の緊急時に、極めて容易に素早く装着することができる。
また、装着の際に、カバー部材と履物本体が、正確な装着位置からずれて当接した場合であっても、当接した状態でカバー部材をスライドさせることにより、正確な装着位置に合わせることができる。
したがって、装着位置を誤った場合であっても、カバー部材と履物本体を離間させることなく容易に微調整を行うことができる。
【0026】
また、請求項2記載の本発明に係る履物は、磁石を履物本体に埋没することにより、カバー部材を取り外し、履物本体を単体で使用した場合であっても、磁石が外方から視認されることがない。
したがって、通常の履物としての使用においても良好な外観品質を維持することができる。
【0027】
また、請求項3記載の本発明に係る履物は、ミッドソールに磁石が埋設され、インナーソールにクッション性を有した素材が適用されることにより、磁石の硬質感がインナーソールまで伝達されることがない。
したがって、カバー部材を有しない通常の履物と同様の履き心地を維持することができる。
【0028】
また、請求項4及び5記載の本発明に係る履物は、カバー部材が爪先を保護しうる必要最小限の寸法に形成されていることから、携行しても嵩張ることがなくなる。
また、カバー部材の内面下端部に、磁石を埋設するための係止部を設けることにより、甲被覆部を薄く形成することができるため、折り畳んでコンパクトに収納することができる。
【0029】
また、請求項6記載の本発明に係る履物は、係止部の厚さ寸法が、磁石の厚さ寸法と同一の厚さ寸法となるように形成されていることから、カバー部材側磁石を係止部に埋設することにより、係止部の厚さを面一にすることができる。
また、係止部が弾性を有した素材で形成されているため、装着した際に、係止部全域に履物本体側への弾性力が作用し、履物本体とカバー部材を完全に密着することができる。
したがって、履物本体とカバー部材との当接部位には、水や風が入り込むような空隙が形成されないため、装着時に爪先の防風及び防水の機能をさらに向上することができる。
【0030】
また、請求項7及び8記載の本発明に係る履物は、履物本体とカバー部材の両方に磁石を埋設して、双方の吸着力を利用することにより、カバー部材と履物本体を強固に装着することができる。
また、履物本体とカバー部材の複数箇所に磁石を埋設することにより、装着に必要な吸着力を分散して設けることができるため、各々の磁石を小さく形成することができる。
したがって、磁石の小型化に伴って、履物本体及びカバー部材をコンパクトに形成することができる。
さらに、装着した際に、カバー部材側磁石と履物本体側磁石の装着位置を合わせることにより、磁石の吸着力を有効に利用して、履物本体とカバー部材との密着性を向上することができる。
【0031】
また、請求項9及び10記載の本発明に係る履物は、磁石が履物本体とカバー部材の装着に適した形状、寸法、吸着力となるように形成されているため、装着した際の吸着力を有効に維持することができる。
【0032】
また、請求項11記載の本発明に係る履物は、ワンタッチで着脱可能であり、防水性を向上することができ、外観品質が低下することがない草履を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。
本発明の履物10は、図1及び図2に示すように、足へ固定するためのストラップ14を有する履物本体11と、上記履物本体11に着脱可能であると共に、装着した際に履物本体11の上方を被覆しうるカバー部材12とを有する履物10において、上記カバー部材12は、磁力により吸着されて上記履物本体11に装着しうることを特徴とする。
【0034】
また、図2に示すように、上記履物本体11の側面部13に磁石51,52,53が埋設されている。
【0035】
また、上記履物本体11は、図2に示すように、接地面側に配置されたアウトソール15と、接足面側に配置され、クッション性を有した素材で形成されたインナーソール16と、上記アウトソール15と上記インナーソール16に挟まれて配置されたミッドソール17とを有し、上記ミッドソール17に、磁石51,52,53が埋設されている。
【0036】
また、上記カバー部材12は、図1及び図3に示すように、装着時に上記履物本体11の前部上方を被覆しうるように形成され、上記カバー部材12の下端部18に磁石54,55,56が埋設されている。
【0037】
また、上記カバー部材12は、図1及び図3に示すように、装着時に上記履物本体11の前部上方及び前部側方を被覆しうるように形成された甲被覆部19と、上記甲被覆部19の内面下端部18に沿って取り付けられた帯状の係止部20とを有し、上記係止部20に磁石54,55,56が埋設されている。
【0038】
また、上記係止部20は、図1及び図3に示すように、弾性を有した素材で形成され、厚さ寸法L2は、図4に示すように、上記磁石56の厚さ寸法L1と同一の寸法により形成されている。
【0039】
また、上記磁石51,52,53,54,55,56は、図2及び図3に示すように、上記履物本体11に埋設された履物側磁石51,52,53と、上記カバー部材12に埋設されたカバー部材側磁石54,55,56とを有し、上記履物本体11には、複数の上記履物側磁石51,52,53が埋設され、上記カバー12には、複数の上記カバー側磁石54,55,56が、上記複数の履物側磁石51,52,53の各々に対応して吸着しうるように埋設されている。
【0040】
また、上記履物側磁石51,52,53は、図2に示すように、上記履物本体11の側面部13における先端部23及び前部両側部24,24に埋設されていると共に、上記カバー部材側磁石54,55,56は、図3に示すように、上記カバー部材12の内方先端部25及び内方前部両端部26,26に埋設されている。
【0041】
また、上記磁石53,56は、図4及び図5に示すように、薄型の円盤形状に形成されている。
【0042】
また、上記磁石53,56は、図4及び図5に示すように、厚さ寸法L1が3.0mmであり、吸着力が2.2kg以上である。
【0043】
また、図1に示すように、上記履物10は草履であり、上記ストラップ14は鼻緒である。
【実施例1】
【0044】
以下、図面を用いて本発明の実施例1に係る履物10について説明する。
本発明に係る履物10は、図1に示すように、鼻緒14を有した履物本体11と、その履物本体11に着脱可能に取り付けられ、取り付けた際に履物本体11の前部上方を被覆しうるカバー部材12とを有している。
また、上記カバー部材12は、磁力により吸着されて上記履物本体11に装着しうるように構成されている。
上記履物本体11の上面に取り付けられた上記鼻緒14は、図2に示すように、上記履物本体11の上面前部27に固定され、その上面前部27から二方向に分岐して、履物本体11の上方を亘り、上記履物本体11の上面後部両側部28,28に取り付けられている。
【0045】
上記履物本体11は、図2に示すように、接地面側に配置されたアウトソール15と、接足面側に配置されたインナーソール16と、上記アウトソール15と上記インナーソール16に挟まれて配置されたミッドソール17とを有している。
上記アウトソール15は、図2に示すように、接地面側が平坦面となるように形成され、後部接地面側には滑り止め部材が取り付けられている(滑り止め部材は図示を省略する)。
上記インナーソール16は、図2に示すように、クッション性を有した素材で形成され、合皮製の被覆材45により被覆されている。
なお、本実施例においては、合皮を被覆材45に適用した場合を例に説明したが、本実施例に限定されず、革、合成繊維、和紙を被覆材45に適用することも可能である。
上記ミッドソール17は、コルクで形成され(コルクは図示を省略する)、被覆材46により被覆されている。
上記被覆材46は、上記インナーソール16の被覆材45と同一の素材で形成されている。
なお、本実施例においては、コルクをミッドソール17に適用した場合を例に説明したが、本実施例に限定されず、樹脂製等の素材をミッドソール17に適用することも可能である。
【0046】
上記ミッドソール17の側面部13における先端部23及び前部両側部24,24には、図2に示すように、履物側磁石51,52,53が埋設されている。
また、上記履物側磁石51,52,53は、図2に示すように、上記コルクへ埋設した後に、上記被覆材46により被覆されているため、外方から視認されないように構成されている。
上記ミッドソール17の厚さ寸法L3は、図2に示すように、上記履物側磁石51,52,53を埋設した場合であっても、強度を保つことができる程度の寸法に形成されている。
【0047】
上記カバー部材12は、図3に示すように、装着した際に履物本体11の前部上方を被覆しうる甲被覆部19と、上記甲被覆部19の内面下端部18の周面全域に取り付けられた係止部20とを有している。
上記甲被覆部19は、図3に示すように、先端部48に設けられた先端側方被覆部31と、上記先端側方被覆部31の上縁部32及び両側縁部33,33と接合され、その接合部位32,33,33から後端部49側に向かって形成された周面被覆部34とを有している。
上記先端被覆部31は、図1及び図3に示すように、側面略長方形状に形成され、履物本体11に装着された場合には、内部に足のつま先及び足の甲の前端部を収納しうる所定の高さ寸法を以って形成されている。
上記周面被覆部34は、図3に示すように、上記先端側方被覆部31の側端部及び上端部に接合され、後端部49に至るに従って拡開するような平面及び側面台形状であって、かつ、横断面は略U字形状に折曲形成されている。
したがって、上記甲被覆部19は、図3に示すように、後部及び下部が開口した状態で形成されている。
また、上記先端被覆部31及び上記周面被覆部34は、上記被覆材45,46と同一の素材で形成されている。
【0048】
上記係止部20は、図3に示すように、スポンジにより帯状に形成され、そのスポンジが薄布29により被覆されている(スポンジは図示を省略する)。
上記薄布29は、床革を圧縮した素材により形成されている。
また、図6に示すように、上記履物本体11の側面部13の先端側と係止部20の曲率がほぼ同一となるように形成されているため、装着時には、上記係止部20が、上記履物本体11の側面部13の先端側周面全域と密着することとなる。
なお、本実施例においては、圧縮した床革を薄布29に使用した場合を例に説明したが、本実施例に限定されず、布や合成繊維を薄布29として使用することも可能である。
また、本実施例においては、スポンジを係止部20として使用した場合を例に説明したが、本実施例に限定されず、その他の弾性を有した素材を係止部20として使用することも可能である。
上記スポンジの厚さ寸法L2は、図4に示すように、下記にて述べる、カバー部材側磁石56の厚さ寸法L1よりも小さい寸法に形成されている。
【0049】
上記係止部20の先端部25及び内方後部両端部26,26には、図3に示すように、上記履物側磁石51,52,53と対応して吸着しうる状態でカバー部材側磁石54,55,56が埋設されている。
上記カバー部材側磁石54,55,56は、図3に示すように、上記スポンジへ埋設した後に、上記薄布29により被覆されている。
また、図2及び図3に示すように、上記係止部20の先端部25から内方後部両端部26,26に埋設された上記カバー部材側磁石55,56までの長さL5は、上記履物本体11の先端部23から前部両側部24,24に埋設された上記履物側磁石52,53までの長さL6とほぼ同一である。
【0050】
以下、上記履物側磁石51,52,53及び上記カバー部材側磁石54,55,56について、上記履物側磁石53及び上記カバー部材側磁石56を例に、図4及び図5を用いて説明する。
上記履物側磁石53は、図5に示すように、上記ミッドソール17の側面部13に形成された空隙部36に嵌め込まれるように埋設されている。
上記カバー部材側磁石56は、図4に示すように、上記スポンジに形成された貫通孔35に嵌め込まれるように埋設されている。
また、上記履物側磁石53及び上記カバー部材側磁石56は、図4及び図5に示すように、薄型の円盤形状に形成されている。
また、上記履物側磁石53及び上記カバー部材側磁石56の厚さ寸法L4,L1は、3.0mmであり、吸着力は、2.2kg以上に形成されている。
なお、上記吸着力は、何kgの鉄塊を垂直に持ち上げられるかを実測した値である。
また、上記吸着力が大きすぎた場合、歩行時に地面に落ちている釘や砂鉄等を吸着してしまう恐れがあるため、吸着力の上限の設定を留意した結果の数値である。
【0051】
なお、本実施例においては、履物本体11とカバー部材12の両方に磁石51,52,53,54,55,56を埋設した場合を例に説明したが、本実施例に限定されず、履物本体11及びカバー部材12のいずれか一方に磁石を埋設し、他方に鉄等の金属材料を埋設することも可能である。
この場合、一方の磁石で吸着力を確保する必要があるため、吸着力を4.4kg以上に形成するか、磁石を大きくする等して、使用条件を満たす必要がある。
【0052】
以下、上記実施例の作用について説明する。
上記実施例に係る履物10は、図2及び図3に示すように、上記係止部20の先端部25から内方後部両端部26,26に埋設された上記カバー部材側磁石55,56までの長さL5と上記履物本体11の先端部23から前部両側部24,24に埋設された上記履物側磁石52,53までの長さL6が、ほぼ同一の寸法で形成されているため、カバー部材12を履物本体11に近づけた場合に、上記履物側磁石51,52,53に対して上記カバー部材側磁石54,55,56が、近接して位置することとなり、その結果、磁力の吸着によりワンタッチで履物本体11に装着される。
したがって、煩雑な係合作業を要することなく、カバー部材12の着脱作業を片手で容易に行うことができることとなり、突然の雨等の緊急時に、極めて容易に素早くカバー部材12を装着することができる。
【0053】
また、図2に示すように、磁石51,52,53を履物本体11に埋没し、被覆材46により被覆することにより、カバー部材12を取り外し、履物本体11を単体で使用した場合であっても、磁石51,52,53が外方から視認されることがない。
したがって、通常の履物としての使用においても良好な外観品質を維持することができる。
【0054】
また、図2に示すように、ミッドソール17に磁石51,52,53が埋設され、インナーソール16にクッション性を有した素材が適用されることにより、磁石51,52,53の硬質感がインナーソール16まで伝達されることがない。
したがって、カバー部材12を有しない通常の履物と同様の履き心地を維持することができる。
【0055】
また、係止部20の厚さ寸法L2が、図4に示すように、磁石56の厚さ寸法L1と同一となるように形成されていることから、カバー部材側磁石56を係止部20に埋設することにより、係止部20の厚さL2を面一にすることができる。
また、係止部20が弾性を有した素材で形成されているため、装着した際に、係止部20全域に履物本体11側への弾性力が作用し、履物本体11とカバー部材12を完全に密着することができる。
したがって、図6に示すように、履物本体11とカバー部材12との当接部位13には、水や風が入り込むような空隙が形成されないため、装着時に爪先の防風及び防水の機能をさらに向上することができる。
【0056】
さらに、装着した際に、上記係止部20の先端部25から内方後部両端部26,26に埋設された上記カバー部材側磁石55,56までの長さL5と、上記履物本体11の先端部23から前部両側部24,24に埋設された上記履物側磁石52,53までの長さL6の寸法をほぼ同一にし、上記履物側磁石52,53と上記カバー部材側磁石55,56との装着位置を合わせることにより、磁石の吸着力を有効に利用して、履物本体11とカバー部材12との密着性を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、足へ固定するためのストラップを有する履物本体と、履物本体の上方を被覆しうるカバー部材とを有する履物に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る履物の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る履物の一実施の形態を示し、履物本体を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る履物の一実施の形態を示し、カバー部材の裏側を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る履物の一実施の形態を示し、係止部とカバー側磁石の関係を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る履物の一実施の形態を示し、履物本体と履物側磁石の関係を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る履物の一実施の形態を示し、履物の先端を示す裏面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 履物
11 履物本体
12 カバー部材
13 履物本体側面部
14 鼻緒(ストラップ)
15 アウトソール
16 インナーソール
17 ミッドソール
18 カバー部材の内面下端部
19 甲被覆部
20 係止部
23 履物本体の先端部
24 履物本体の前部両側部
25 カバー部材の内方先端部
26 カバー部材の内方前部両端部
27 履物本体の上面前部
28 履物本体の上面後部両側部
29 薄布
31 先端側方被覆部
32 先端側方被覆部の上縁部
33 先端側方被覆部の側縁部
34 先端側方被覆部の周面被覆部
35 貫通孔
36 空隙部
41 一方の側面下端部
42 一方の側面上端部
43 他方の側面上端部
44 他方の側面下端部
45、46 被覆材
48 カバー部材の先端部
49 カバー部材の後端部
51、52、53 履物側磁石
54、55、56 カバー部材側磁石

L1 カバー部材側磁石の厚さ寸法
L2 係止部の厚さ寸法
L3 ミッドソールの厚さ寸法
L4 履物側磁石の厚さ寸法
L5 係止部の先端部から磁石までの長さ
L6 履物本体の先端部から磁石までの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足へ固定するためのストラップを有する履物本体と、上記履物本体に着脱可能であると共に、装着した際に履物本体の上方を被覆しうるカバー部材とを有する履物において、上記カバー部材は、磁力により吸着されて上記履物本体に装着しうることを特徴とする履物。
【請求項2】
上記履物本体の側面部に磁石が埋設されていることを特徴とする請求項1記載の履物。
【請求項3】
上記履物本体は、接地面側に配置されたアウトソールと、接足面側に配置され、クッション性を有した素材で形成されたインナーソールと、上記アウトソールと上記インナーソールに挟まれて配置されたミッドソールとを有し、上記ミッドソールに、磁石が埋設されていることを特徴とする請求項1及び2記載の履物。
【請求項4】
上記カバー部材は、装着時に上記履物本体の前部上方を被覆しうるように形成され、上記カバー部材の下端部に磁石が埋設されていることを特徴とする請求項1〜3記載の履物。
【請求項5】
上記カバー部材は、装着時に上記履物本体の前部上方及び前部側方を被覆しうるように形成された甲被覆部と、上記甲被覆部の内面下端部に沿って取り付けられた帯状の係止部とを有し、上記係止部に磁石が埋設されていることを特徴とする請求項1〜4記載の履物。
【請求項6】
上記係止部は、弾性を有した素材で形成され、上記磁石の厚さ寸法と同一の厚さ寸法に形成されていることを特徴とする請求項5記載の履物。
【請求項7】
上記磁石は、上記履物本体に埋設された履物側磁石と、上記カバー部材に埋設されたカバー部材側磁石とを有し、上記履物本体には、複数の上記履物側磁石が埋設され、上記カバーには、複数の上記カバー側磁石が、上記複数の履物側磁石の各々に対応して吸着しうるように埋設されていることを特徴とする請求項1〜6記載の履物。
【請求項8】
上記履物側磁石は、上記履物本体の側面部における先端部及び前部両側部に埋設されていると共に、上記カバー部材側磁石は、上記カバー部材の内方先端部及び内方前部両端部に埋設されていることを特徴とする請求項1〜7記載の履物。
【請求項9】
上記磁石は、薄型の円盤形状に形成されていることを特徴とする請求項1〜8記載の履物。
【請求項10】
上記磁石は、厚さ寸法が3.0mmであり、吸着力が2.2kg以上であることを特徴とする請求項1〜9記載の履物。
【請求項11】
上記履物は草履であり、上記ストラップは鼻緒であることを特徴とする請求項1記載の履物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−61328(P2007−61328A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−250760(P2005−250760)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(505328616)
【Fターム(参考)】