説明

山留擁壁及び山留擁壁形成方法

【課題】 本発明は、骨材のまわり込みを確実なものとし、且つ、厚さを低減することが可能な山留擁壁及び山留擁壁形成方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 地盤に埋め込まれる杭部2Aと、当該杭部2Aに連接されて地盤より立ち上がる柱部2Bとを有して柱状に形成され、前面の低地盤Bよりも高位に地盤面を有する高地盤Aの側面に沿って所定間隔で建てこまれる複数の親杭鋼材2と、該複数の親杭鋼材2の柱部2Bと、これら柱部2Bの一部又は全部の周囲に設けられる複数本の鉄筋6とを覆って形成されるコンクリート壁体4とを備え、該コンクリート壁体4は、高地盤Aの側面に沿いつつ、該複数の親杭鋼材2の柱部2Bを横切って配設される複数本の横筋6aと、各横筋6aを親杭鋼材2に当接させた状態で支持する鉄筋支持手段7とを備えて構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の地盤形成に供する山留擁壁及び山留擁壁形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高さ2m程度の切土、或いは、高さ1mを超える盛土等によって生じる崖や、急傾斜地又は水路等の如く高低差が生じる地盤においては、地盤の崩壊を防止する擁壁を設置することが知られている。かかる擁壁は、通常、断面視L字状又はT字状に設計され、比較的大型の基礎底盤が、背土(以下、「高地盤」ともいう。)の奥方に向けて延設される。該基礎底盤は、擁壁に作用する荷重(土圧)及び擁壁の自重を支持地盤に伝達させ、且つ、背土圧等に起因する擁壁自体の転倒を防止すべく広範な接地面積を有するのが一般的である。
【0003】
この様に従来の擁壁においては、基礎底盤が高地盤となる背土側に比較的大きく延設されるため、擁壁施工時に背土側の地盤を広範囲に掘削し、擁壁施工後に掘削部分を埋戻す必要が生じる。殊に、軟弱地盤に擁壁を構築する場合、非現実的に大きな基礎底盤を設計・施工しなければならない状況が生じる。しかし、大型の基礎底盤の施工は、基礎底盤自体のコンクリート工事に過大な工事費を要するばかりでなく、広範な高地盤の掘削及び埋戻しの必要を生じさせ、これは、多大な掘削工事の労力、移動土量の増加、埋戻し土の非安定性等の問題につながる。
【0004】
また、施工現場の環境、地層、地形、地盤性状又は施工条件等によっては、大型の基礎底盤を施工し難い状態が生じる。
【0005】
かかる問題を解決すべく、特許文献1には、上記背土を側方より支持する山留擁壁であって、「前記山留擁壁を施工する位置の下部の地盤に所定の間隔を介して施工する改良杭と、前記各々の改良杭に基部を埋没させて固定する補強鋼材と、前記補強鋼材を芯にした鉄筋コンクリートによる支持柱と、前記支持柱に配置する鉄筋と一体に組み合わせた鉄筋を用いて、前記支持柱の谷側に構築するコンクリート擁壁」を備えた構成が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2000−257088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に開示の構成においては、支持柱がコンクリート擁壁から突出した状態で擁壁が形成されるため、擁壁全体としての厚さが増大することとなり、高地盤上に建設される建物や当該建物を支持する杭等の設計自由度を狭めるという問題があった。また、支持柱廻りに間隔を有してあばら筋を設けると共に、当該あばら筋を通過させた状態で長尺状に横筋を設けた構成にコンクリートを打設する構成であるため、支持柱とあばら筋や横筋との間隔を適度に保たなければこれらの間にコンクリート中の骨材等を充分に充填することができず、これによって、施工不良を招来してしまう虞がある。かかる問題を解決すべく、支持柱と鉄筋との間隔を適正に保つと、やはり擁壁全体の厚さが増大してしまうという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、骨材のまわり込みを確実なものとし、且つ、厚さを低減することが可能な山留擁壁及び山留擁壁形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明に係る山留擁壁の第1の構成は、地盤に埋め込まれる杭部と、当該杭部に連接されて地盤より立ち上がる柱部とを有して柱状に形成され、前面の低地盤よりも高位に地盤面を有する高地盤の側面に沿って所定間隔で建てこまれる複数の親杭鋼材と、前記複数の親杭鋼材の柱部をコンクリートにより覆って形成されるコンクリート壁体とを備え、該コンクリート壁体は、前記高地盤の側面に沿いつつ、前記複数の親杭鋼材の柱部を横切って配設される複数本の鉄筋と、各鉄筋を親杭鋼材に当接させた状態で支持する鉄筋支持手段とを備えていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る山留擁壁の第2の構成は、前記第1の構成において、前記鉄筋支持手段は、前記親杭鋼材の柱部に留め付けられる留付け部と、前記鉄筋に締結される又は前記鉄筋を載置する座部とを備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る山留擁壁の第3の構成は、前記第2の構成において、前記親杭鋼材の柱部は、前記コンクリート壁体の壁芯に平行又は略平行な法線を有する小口面を備え、該小口面に前記鉄筋支持手段の留付け部が溶接固定されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る山留擁壁の第4の構成は、前記第1〜3の構成において、前記鉄筋は、前記親杭鋼材の柱部の低地盤面側にのみ設けられていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る山留擁壁の第5の構成は、前記第4の構成において、前記コンクリート壁体は、前記親杭鋼材の高地盤側の側面と当該高地盤の側面との間に堰板を備え、該堰板の裏面までコンクリートが充填されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る山留擁壁の第6の構成は、地盤に埋め込まれる杭部と、当該杭部に連接されて地盤より立ち上がる柱部とを有して柱状に形成され、前面の低地盤よりも高位に地盤面を有する高地盤の側面に沿って所定間隔で建てこまれる複数の親杭鋼材と、前記複数の親杭鋼材をコンクリートにより覆って形成されるコンクリート壁体とを備え、該コンクリート壁体は、前記複数の親杭鋼材の柱部に当接した状態で設けられる自立可能な金網鉄筋を備えていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る山留擁壁形成方法の第1の構成は、地盤に埋め込まれる杭部と、当該杭部に連接されて地盤より立ち上がる柱部とを有して柱状に形成される親杭鋼材を、低地盤よりも高位に地盤面を有する高地盤の側面に沿って前記杭部を低地盤に埋設した状態で所定間隔で建てこみ、前記親杭鋼材の柱部に鉄筋を当接させた状態で当該鉄筋を支持する鉄筋支持手段を各親杭鋼材の柱部に取り付けた後、当該鉄筋支持手段に支持させた状態で複数本の鉄筋を前記高地盤の側面に沿わせつつ、且つ、複数の親杭鋼材の柱部を横切って配設し、その後、前記親杭鋼材の柱部と前記複数本の鉄筋とを覆うコンクリートを打設してコンクリート壁体を形成することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る山留擁壁形成方法の第2の構成は、地盤に埋め込まれる杭部と、当該杭部に連接されて地盤より立ち上がる柱部とを有して柱状に形成される親杭鋼材を、低地盤よりも高位に地盤面を有する高地盤の側面に沿って前記杭部を低地盤に埋設した状態で所定間隔で建てこみ、前記親杭鋼材の柱部に鉄筋を当接させた状態で当該鉄筋を支持する鉄筋支持手段を各親杭鋼材の柱部に取り付けた後、当該鉄筋支持手段に支持させた状態で複数本の鉄筋を前記高地盤の側面に沿わせつつ、且つ、複数の親杭鋼材の低地盤側を横切って配設し、前記親杭鋼材と高地盤との間に堰板を立設し、その後、前記親杭鋼材と鉄筋とを覆うと共に前記堰板の背面までコンクリートを打設してコンクリート壁体を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の山留擁壁及び山留擁壁形成方法によれば、骨材のまわり込みを確実なものとし、且つ、厚さを低減することができる。
【0018】
即ち、本発明に係る山留擁壁の第1の構成によれば、親杭鋼材の柱部と鉄筋とが互いに当接しあった状態で設けられるので、そもそもこれらの間に骨材を回り込ませることなくコンクリートを打設することができ、コンクリートの打設不良に起因する施工不良を確実に抑制することができる。また、鉄筋を親杭鋼材の柱部に当接させた状態で設けるので、当該鉄筋からのかぶり厚を確保した状態で型枠を形成してコンクリートを打設することで擁壁が形成されることとなり、これによって、擁壁全体の厚さを低減させることができる。即ち、{かぶり厚+鉄筋径+親杭鋼材の厚さ+鉄筋径+かぶり厚}で擁壁の厚さを規定することができ、厚さを抑えた擁壁の設計が可能となる。
【0019】
また、本発明に係る山留擁壁の第2の構成によれば、親杭鋼材の柱部に鉄筋支持手段の留め付け部を予め留めつけておき、当該鉄筋支持手段の座部に鉄筋を載置することで配筋を完了させることができ、きわめて簡便且つ高効率な作業で施工を行うことができる。
【0020】
ところで、擁壁は、背土からの土圧に充分に対抗すべく、擁壁の厚さ方向に対する曲げ強度を可及的に向上させることを要するが、本発明に係る山留擁壁の第3の構成によれば、鉄筋支持手段は親杭鋼材の小口面に溶接されるため、当該親杭鋼材の低地盤側の側面又は高地盤側の側面を溶接により損傷又は靭性を低下させる虞はなく、これによって、当該親杭鋼材の柱部の擁壁の厚さ方向に対する曲げ強度を低下させることなく、鉄筋支持手段を親杭鋼材に溶接により固着させことができるのである。
【0021】
尚、ここで、親杭鋼材の小口面とは、親杭鋼材がH型鋼であれば、フランジの端面を小口面とし、親杭鋼材が角型鋼管であれば両側の面を小口面とする。
【0022】
また、本発明に係る山留擁壁の第4の構成によれば、擁壁全体の厚さをさらに小さくすることができる。
【0023】
また、本発明に係る山留擁壁の第5の構成によれば、堰板をコンクリート打設後も残置させる所謂捨て型枠として用いることができ、施工性の更なる向上が図られることとなる。
【0024】
また、本発明に係る山留擁壁の第6の構成によれば、親杭鋼材と金網鉄筋とが互いに当接しあった状態で設けられるので、そもそもこれらの間に骨材を回り込ませることなくコンクリートを打設することができ、コンクリートの打設不良に起因する施工不良を確実に抑制することができる。また、金網鉄筋を親杭鋼材に当接させた状態で設けるので、当該金網鉄筋からのかぶり厚を確保した状態で型枠を形成してコンクリートを打設することで擁壁が形成されることとなり、これによって、擁壁全体の厚さを低減させることができる。即ち、{かぶり厚+金網鉄筋の厚さ+親杭鋼材の厚さ+金網鉄筋の厚さ+かぶり厚}で擁壁の厚さを規定することができ、著しく厚さの小さい擁壁の設計が可能となる。
【0025】
また、本発明に係る山留擁壁形成方法の第1の構成によれば、親杭鋼材と鉄筋とが互いに当接しあった状態で設けられるので、そもそもこれらの間に骨材を回り込ませることなくコンクリートを打設することができ、コンクリートの打設不良に起因する施工不良を確実に抑制することができる。また、鉄筋を親杭鋼材に当接させた状態で設けるので、当該鉄筋からのかぶり厚を確保した状態で型枠を形成してコンクリートを打設することで擁壁が形成されることとなり、これによって、擁壁全体の厚さを低減させることができる。
【0026】
また、本発明に係る山留擁壁形成方法の第2の構成によれば、堰板をコンクリート打設後も残置させる所謂捨て型枠として用いることができ、施工性の更なる向上が図られることとなるばかりでなく、高地盤の掘削量の低減化、埋戻し量の低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図により本発明に係る山留擁壁及び山留擁壁形成方法の一実施形態を具体的に説明する。図1は本発明に係る山留擁壁の構成を示す断面説明図、図2は本発明に係る山留擁壁の構成を示す正面説明図、図3は本発明に係る山留擁壁の構成を示す断面説明図、図4は本発明に係る山留擁壁の構成を示す平面図、図5はH型鋼からなる親杭鋼材の小口面に取り付けた鉄筋支持手段に鉄筋を載置した様子を示す斜視図、図6は鉄筋支持手段の他の構成を示す平明説明図、図7は親杭鋼材の柱部の高地盤側のフランジに亘って柵板を堰板として張架した様子を示す断面説明図、図8は親杭鋼材の柱部の高地盤側のフランジに亘って柵板を堰板として張架した様子を示す平面図、図9は親杭鋼材の柱部に金網鉄筋を自立して当接させ、鉄筋金網同士を鉄線等により締結した様子を示す断面説明図、図10は親杭鋼材の柱部に金網鉄筋を自立して当接させ、親杭鋼材の小口面に取り付けた鉄筋支持手段に鉄筋金網を引っ掛けて支持した様子を示す断面説明図である。
【0028】
以下、図1〜図10に基づき、本発明を住宅の擁壁に実施した形態につき、詳細に説明する。
【0029】
<第1実施形態>
本発明に係る山留擁壁1は、宅地造成により形成される高地盤Aの建物建設予定地と、当該建物建設予定地の前面の道路面を形成する低地盤Bとの間に設けられるものであって、低地盤Bよりも高位に地盤面を有する当該高地盤Aと低地盤Bとを区画すると共に当該高地盤Aからの土圧(背土圧)を受け止め、当該高地盤Aの低地盤Bに向けての崩れを防止するものである。
【0030】
該擁壁1は、該擁壁1の壁芯に沿って所定間隔を隔てて形成される地中杭部5と、当該地中杭部5に立設される親杭鋼材2と、当該親杭鋼材2を包囲する鉄筋コンクリート構造のコンクリート壁体4とを備えている。
【0031】
地中杭部5は、アースオーガー等の掘削機を用いて低地盤Bを円筒状に掘削するプレボーリング施工により、所定の径Dで深さLにまで掘進して杭孔3を形成し、各杭孔3にモルタルやその他の凝固材を混合し、凝固材を固化させることにより柱状の地中杭部5を構築する。また、当該モルタルが硬化する前に親杭鋼材2を各杭孔3に挿入して埋設する。そして、地中杭部5の凝固材が固化することにより、地中杭部5と親杭鋼材2とが一体化された山留擁壁1の基礎部が構築される。
【0032】
図4及び図5に示す如く、親杭鋼材2は、一対のフランジ2aの中央部をウェブ2bで連結して形成されるH型鋼(或いはI型鋼)により形成されている。また、図3に示す如く、親杭鋼材2は、地中杭部5内に埋設される杭部2Aと、該杭部2Aに連接されると共に、当該地中杭部5から立設されてコンクリート壁体4に埋設される柱部2Bとを備えている。杭部2Aと柱部2Bとをあわせた親杭鋼材2の全長は、擁壁1の高さと地中杭部5の長さとをあわせた長さに相当する長さに形成されており、該親杭鋼材2は、地中杭部5内に埋設した状態で杭部2Aの下端縁部が地中杭部5の底部に達すると共に、柱部2Bの上端縁部は擁壁1の高さよりも僅かに低い位置に達している。
【0033】
また、親杭鋼材2は、図4に示すように、一対のフランジ2aを壁芯に沿って平行とした状態で設置されており、これによって、一方のフランジ2aは高地盤Aの側面に対向するとともに、他方のフランジ2aは低地盤B側となる路面側の空間に対向することとなる。
【0034】
なお、本実施形態においては、親杭鋼材2の一例として、[H-125×125×6×9]のH型鋼が採用されており、その全長は5950mmのものが採用されている。
【0035】
コンクリート壁体4は、縦横の壁筋を配筋した鉄筋コンクリート構造によって構築されている。該鉄筋6は、親杭鋼材2の柱部2B間に所定間隔で設けられる複数本の縦筋6bと、擁壁1の壁芯に沿って伸びて該複数本の縦筋6b及び親杭鋼材2と交叉する複数本の横筋6aとを備えている。鉄筋6は親杭鋼材2の柱部2Bと該柱部2Bの一部又は全部の周囲に設けられる。
【0036】
縦筋6bは、隣接する親杭鋼材2の柱部2Bの間に複数本(本実施形態においては3本〜5本)所定間隔を空けて配置されている。また、これら各縦筋6bのうち、低地盤B側となる路面側の空間側に配置される縦筋6bは、親杭鋼材2の柱部2Bの低地盤B側となる路面側の空間に対向する他方のフランジ2aの表面よりも高地盤A側となる位置に配置されており、これによって、これら親杭鋼材2の柱部2Bの低地盤B側となる路面側の空間に対向する他方のフランジ2a、縦筋6bの低地盤B側端縁は同一平面上、若しくは略同一平面上に位置している。なお、縦筋6bは、D10〜D13の異形鉄筋を採用することが好ましく、本実施形態の縦筋6bは、D10の異形鉄筋を採用している。
【0037】
横筋6aは、親杭鋼材2の柱部2Bのフランジ2aの外方側にて上下方向に所定間隔を空けて複数本(本実施形態においては6本〜7本)水平状に配置されており、鉄筋支持手段7を介して親杭鋼材2に支持され、複数の親杭鋼材2の柱部2Bを横切って配設される。
【0038】
鉄筋支持手段7は、横筋6aを親杭鋼材2の柱部2Bに当接させた状態で位置付けるものであって、図5に示す如く、親杭鋼材2の一方のフランジ2a表面から他方のフランジ2a表面までの長さに夫々のフランジ2aに沿って当接配置される横筋6aの鉄筋径を加えた長さを有する棒状に形成されており、該鉄筋支持手段7の各端部を親杭鋼材2の柱部2Bのフランジ2aの表面よりも外側に突出させた状態で当該柱部2Bの一対のフランジ2a間に架設されている。
【0039】
また、該鉄筋支持手段7は、その留付け部が親杭鋼材2の柱部2Bの各フランジ2aの小口面(フランジ2aの端面)に溶接により結合されて親杭鋼材2の柱部2Bに留め付けられており、これによって、鉄筋支持手段7は親杭鋼材2の柱部2Bに強固に固着される一方、溶接時に発生する熱等により該親杭鋼材2の柱部2Bの各フランジ2aの表面に対し部分的な靭性の低下(脆性の向上)や強度変化が可及的に抑制されることとなる。また、両端部がそれぞれ親杭鋼材2の柱部2Bのフランジ2a表面よりも外方に突出することとなり、これによって両端部が横筋6aを支持する座部を形成する。
【0040】
即ち、親杭鋼材2の柱部2Bは、該親杭鋼材2の設置方向と交叉する方向に延設されて低地盤B側の側面と高地盤A側の側面とを連結する小口面を備え、該小口面に鉄筋支持手段7の留付け部が溶接固定されている。また、当該小口面は、親杭鋼材2の柱部2Bの側面のうち、コンクリート壁体4の壁芯(擁壁1の厚み方向の中央となる面)に平行又は略平行な法線を有する面であれば、いずれの面でも構わない。
【0041】
尚、本実施形態では、H型鋼からなる親杭鋼材2の小口面は、フランジ2aの端面を小口面としたが、親杭鋼材2を角型鋼管で構成することも出来、この場合の小口面は角型鋼管の両側の面とすることが出来る。
【0042】
横筋6aは、上述の如く親杭鋼材2の柱部2Bに架設された鉄筋支持手段7の端部に載置された状態で配置されており、該鉄筋支持手段7に溶接又は鉄線による締結により固定されている。これによって、横筋6aは、親杭鋼材2の柱部2Bのフランジ2aの表面に当接した状態で配置されることとなり、横筋6aと親杭鋼材2の柱部2Bのフランジ2aの間にコンクリート8の骨材等が侵入可能な隙間が生じることはない。
【0043】
なお、横筋6aは、D10〜D13の異形鉄筋を採用することが好ましく、本実施形態の横筋6aは、D13の異形鉄筋を採用している。
【0044】
また、これら鉄筋6及び親杭鋼材2の柱部2Bを覆うコンクリート8は、セメント成分、水、粗骨材、細骨材、混和材を適当な割合で調合して構成されるものであって、上記親杭鋼材2の柱部2B及び鉄筋6を包囲した状態で型枠を配し、当該型枠内に流し込んだ後、所定期間を設けることで壁形状に形成されて硬化する。
【0045】
また、親杭鋼材2の柱部2Bの間となる複数の位置には、比較的下部となる位置に水抜き管9が設けられている。該水抜き管9は、高地盤Aからのコンクリート壁体4に作用する水圧を減少させるべく、当該高地盤A内の水分を低地盤Bに向けて排水するためのものであって、少なくともコンクリート壁体4の壁厚以上の長さを有してコンクリート壁体4の表裏を貫通して設けられている。また、高地盤Aの側部に接することとなるコンクリート壁体4の背部には、透水マット10が張設されている。
【0046】
また、図2に示す如く、本実施形態の擁壁1は、中央部で左側擁壁1aと右側擁壁1bとに分割され、これら左側擁壁1aと、右側擁壁1bとは、擁壁1の上下を貫く伸縮目地11を介して連結されている。該伸縮目地11は、左右擁壁1a,1bと同様の幅を有するゴム板により形成されている。
【0047】
本実施形態は以上の構成からなるものであって、次に、本実施形態の山留擁壁1の形成方法について説明する。図1に示す如く、高地盤Aは、地中杭部5、親杭鋼材2の設置及び型枠の配置等の施工のために掘削される。
【0048】
なお、山留擁壁1の施工において、高地盤Aの掘削範囲は、上記施工を作業可能な最小限の範囲に限定される。即ち、山留擁壁1の施工においては、従来の擁壁施工方法と異なり、フーチング(底盤)を敷設するための施工のために高地盤Aを大きく掘削することを要しない。
【0049】
次に、オーガ併用の杭打ち機等によって、杭孔3を掘削した後、当該杭孔3にモルタルを投入して地中杭部5を形成する。この際、モルタル投入と前後して各杭孔3に親杭鋼材2を挿入し、当該親杭鋼材2の下端部を杭孔3の底部に到達させる。また、地中杭部5の深さや親杭鋼材2の高さは、擁壁1の設計によって隣接する親杭鋼材2間でも適宜異なる場合があるので、親杭鋼材2は、地中杭部5の杭長と設計予定の擁壁1の高さとをあわせた長さ以上のものを予め搬入しておき、親杭鋼材2の杭部2Aを杭孔3内に挿入し、モルタルを硬化させた後に上部を切断することで所望の高さを確保することとしている。
【0050】
また、親杭鋼材2を杭孔3に挿入するにつき、各親杭鋼材2は、フランジ2aの表面を山留擁壁1の壁芯(擁壁1の厚み方向の中央となる面)に平行な状態として(或いはウェブ2bの向きを壁芯に垂直として)各杭孔3に挿入する。そして、全杭孔3に対して親杭鋼材2を挿入した後、地中杭部5のモルタルが硬化する前に、各親杭鋼材2を地盤に対し鉛直に立設させるべく位置調整を行う。その後、モルタルが硬化することにより、各親杭鋼材2は地盤に対し鉛直を維持した状態で固定され、一方の親杭鋼材2の柱部2Bの一方のフランジ2aは高地盤Aの側面と対向し、他方のフランジ2aは低地盤B側の空間と対向する。
【0051】
次に、配筋施工に移行することとなるが、当該配筋施工においては、先ず、鉄筋支持手段7を各親杭鋼材2の柱部2Bに取り付ける。ここで、鉄筋支持手段7は、その軸心を山留擁壁1の壁芯(擁壁1の厚み方向の中央となる面)に対し垂直となる姿勢で各親杭鋼材2の一方の側方にて一対のフランジ2a間に架け渡された状態で設けられ、各フランジ2aの小口面に溶接により固定されている。また、鉄筋支持手段7は、この様に各親杭鋼材2の側部に取り付けられた状態で、各端部がフランジ2aの表面よりも外方に突出している。これにより、当該鉄筋支持手段7は、小口面との溶接箇所が留付け部となり、フランジ2aの表面より突出する端部が座部となる。
【0052】
この様に各親杭鋼材2の柱部2Bの上下に亘って複数個の鉄筋支持手段7を取り付けた後、横筋6aを配筋していく。具体的には、各親杭鋼材2のフランジ2aを横切らせた状態で山留擁壁1の壁芯(擁壁1の厚み方向の中央となる面)方向に平行な姿勢で、或いは高地盤Aの側面に沿う姿勢で横筋6aを配置すると共に、かかる姿勢で各鉄筋支持手段7の端部上に横筋6aを載置し、当該横筋6aと鉄筋支持手段7とを溶接により接合又は鉄線により締結する。これによって、各親杭鋼材2のフランジ2aの表面に横筋6aが当接することとなり、これらの間にコンクリート8の骨材が通過可能な隙間が形成されることはない。
【0053】
その後、横筋6aよりも山留擁壁1の内側となる位置に縦筋6bを配筋し、横筋6aと縦筋6bとを適宜締結する。そして、この様に鉄筋6を組み上げた後に水抜き管9を設置し、その後、これら親杭鋼材2、鉄筋6を包囲して型枠を組み上げ、当該型枠内にコンクリート8を打設する。なお、本実施形態においては、山留擁壁1の壁芯(擁壁1の厚み方向の中央となる面)方向に垂直となる方向で対向する型枠の対向面間の間隔は240mm〜280mm程度に設定されている。上述の如く横筋6aを親杭鋼材2に当接させた状態で配筋すると共に縦筋6bを横筋6aよりも山留擁壁1の内側となる位置で配筋しているため、配筋上最外となる横筋6aからのかぶり厚を適正に設けたとしても、この様に壁厚の小さい構成を採用可能となっているのである。
【0054】
その後、コンクリート8の硬化後に型枠を解体し、高地盤A側に掘削土を埋め戻すと共に低地盤B側も掘削土を埋め戻してコンクリート壁体4の下端部を埋設することにより、図2に示す山留擁壁1(右側擁壁1b及び左側擁壁1a)を形成する。
【0055】
これら右側擁壁1bと左側擁壁1aとを別々に形成した後、これらの間にゴム板を挟み込んで伸縮目地11を形成することで、山留擁壁1が完成する。
【0056】
本実施形態の山留擁壁1によれば、骨材のまわり込みを確実なものとし、且つ、厚さを低減することができる。
【0057】
即ち、親杭鋼材2と鉄筋6の横筋6aとが互いに当接しあった状態で設けられるので、そもそもこれらの間に骨材を回り込ませることなくコンクリート8を打設することができ、コンクリート8の打設不良に起因する施工不良を確実に抑制することができる。また、鉄筋6の横筋6aを親杭鋼材2に当接させた状態で設けるので、当該鉄筋6の横筋6aからのかぶり厚を確保した状態で型枠を形成してコンクリート8を打設することで擁壁1が形成されることとなり、これによって、擁壁1全体の厚さを低減させることができる。即ち、{かぶり厚+横筋6aの鉄筋径+親杭鋼材2の厚さ+横筋6aの鉄筋径+かぶり厚}で擁壁1の厚さを規定することができ、著しく厚さを抑えた擁壁1が形成されることとなる。
【0058】
また、親杭鋼材2の柱部2Bに鉄筋支持手段7の留め付け部を予め留めつけておき、当該鉄筋支持手段7の座部に横筋6aを配備することで配筋を完了させることができ、きわめて簡便な作業での施工が行われることとなる。
【0059】
また、擁壁1は、高地盤Aを形成する背土からの土圧に対向すべく、擁壁1の厚さ方向となる面外方向に対する曲げ強度を可及的に向上させることを要するが、上記構成によれば、鉄筋支持手段7は親杭鋼材2の小口面に溶接されるため、当該親杭鋼材2の低地盤B側の側面又は高地盤A側の側面を溶接により損傷又は靭性を低下させる虞はなく、これによって、当該親杭鋼材2の柱部2Bの擁壁1の厚さ方向に対する曲げ強度を低下を防ぎつつ鉄筋支持手段7を親杭鋼材2に溶接により固着させことができるのである。
【0060】
また、親杭鋼材2と横筋6aとが互いに当接しあった状態で設けられるので、そもそもこれらの間に骨材を回り込ませることなくコンクリート8を打設することができ、コンクリート8の打設不良に起因する施工不良を確実に抑制することができる。また、横筋6aを親杭鋼材2に当接させた状態で設けるので、当該横筋6aからのかぶり厚を確保した状態で型枠を形成してコンクリート8を打設することで擁壁1が形成されることとなり、これによって、擁壁1全体の厚さを低減させることができる。
【0061】
また、親杭鋼材2のフランジ2aの面が溶接等による強度上の損傷から免れることとなるので、親杭鋼材2の柱部2Bは、高地盤A側からの土圧による曲げモーメント等の加重にも耐えることができ、これによって、親杭鋼材2を土圧に対する支持部材として有効に機能させることができる。
【0062】
<第2実施形態>
図6は、本発明の第2実施形態を示している。当該実施形態においては、鉄筋支持手段7の構成が上記第1実施形態と異なるものの、他の構成は同一であるので、鉄筋支持手段7の構成についてのみ詳述し、他の構成については上記第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図6に示す如く、本実施形態の鉄筋支持手段7は、鉄筋6の横筋6aを支持する鉄筋支持部材7aと、当該鉄筋支持部材7aを親杭鋼材2の柱部2Bに留め付けるための留め付け部材(留め付け部)7bとを備えている。
【0064】
鉄筋支持部材7aは、親杭鋼材2の一対のフランジ2a間を伸びる架け渡し部7a1と、当該架け渡し部7a1の先端から突設されてフランジ2aの裏面に当接する平板状の当接部7a2と、当該当接部7a2の先端からフランジ2aの表面側に向けて延設されて鉄筋6の横筋6aを載置して支持する座部となる鉄筋支持台部7a3とを備えている。
【0065】
また、留め付け部材7bは、前記鉄筋支持部材7aの当接部7a2を押圧する脚部7b1を有する一対の棒状の押圧部材7b2と、これら一対の押圧部材7b2に螺合するターンバックル7b3とを備えている。
【0066】
当該鉄筋支持手段7においては、鉄筋支持部材7aの各当接部7a2をそれぞれ親杭鋼材2の柱部2Bのフランジ2aの裏面に当接させた状態でこれら一対のフランジ2a間に鉄筋支持部材7aを収容し、その後、これら一対の当接部7a2間に留め付け部材7bを配備し、当該留め付け部材7bのターンバックル7b3を捻ることによって押圧部材7b2を当接部7a2にそれぞれ当接させ、当該当接部7a2をフランジ2aに押圧させることによってこれら一対のフランジ2a間に鉄筋支持手段7を固定させるのである。
【0067】
上記鉄筋支持手段7によれば、溶接等を要することなく親杭鋼材2に取り付けることが可能となり、取付が著しく容易となるばかりでなく、取付に伴って親杭鋼材2のフランジ2aに損傷を与える虞はなく、これによって、上記第1実施形態よりもさらに親杭鋼材2の強度維持が図られることとなるのである。
【0068】
<第3実施形態>
図7、図8は、本発明の第3実施形態を示している。当該実施形態においては、高地盤A側のコンクリート壁体4の構成が上記第1実施形態と異なるものの、他の構成は同一であるので、高地盤A側のコンクリート壁体4の構成についてのみ詳述し、他の構成については上記第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0069】
本実施形態においては、図7に示す如く、親杭鋼材2の柱部2Bの低地盤B側のフランジ2aには鉄筋支持手段7により横筋6aが配筋されている。また、親杭鋼材2の高地盤A側は、上端部が低地盤B側と同様に鉄筋支持手段7により横筋6aが配筋されているものの、当該上端部よりも下方の部位においては、隣り合う親杭鋼材2の柱部2Bの高地盤A側のフランジ2aに亘って堰板となる柵板12が上下方向に渡って複数枚(本実施形態においては6枚)架設されている。
【0070】
当該柵板12は、プレキャストコンクリート等により形成されており、コンクリート8打設の際にも型枠として機能する。型枠として機能した後、そのまま残置されることでコンクリート壁体4の一部を形成することとなるのである。
【0071】
また、本実施形態においては、上述の如く上記柵板12を設ける構成においては、親杭鋼材2の高地盤A側のフランジ2aが柵板12を支持する構成であるため、当該柵板12を設ける高さと同程度の高さ位置まで配備される各鉄筋支持手段7は、一方の端部が柵板12の裏面に当接すると共に、他方の端部が低地盤Bのフランジ2aよりも突出した状態で各親杭鋼材2に取り付けられるものとなる。
【0072】
これにより、堰板となる柵板12をコンクリート8打設後も残置させる所謂捨て型枠として用いることができ、施工性の更なる向上が図られることとなり、施工が簡略化され、高地盤A側の掘削がさらに寡少なものとなる。また、高地盤Aの掘削量の低減化、埋戻し量の低減化が図られる。
【0073】
尚、鉄筋6は、親杭鋼材2の柱部2Bの低地盤B面側にのみ設けることも出来る。
【0074】
<第4実施形態>
図9は、本発明の第4実施形態を示している。当該実施形態においては、鉄筋6の構成が上記第1実施形態と異なるものの、他の構成は同一であるので、高地盤A側のコンクリート壁体4の構成についてのみ詳述し、他の構成については上記第1実施形態と同じ符号を付してその説明を省略する。
【0075】
本実施形態においては、鉄筋6の代わりに自立可能な鉄筋金網(溶接金網)13を採用している。当該鉄筋金網13は、縦筋13bと横筋13aとを予め溶接等により所定間隔で接合したものであって、親杭鋼材2の柱部2Bに立掛けることで起立状態を維持することが可能である。
【0076】
一対の鉄筋金網13を親杭鋼材2の柱部2Bのフランジ2aに沿ってそれぞれ起立させて互いに対向させ、これら互いに対向している鉄筋金網13どうしを鉄線14等により締結することにより、鉄筋金網13を親杭鋼材2の柱部2Bのフランジ2aに当接させた状態で起立させる。この後、コンクリート8を打設することによってコンクリート壁体4を形成し、山留擁壁1が完成する。
【0077】
本実施形態においては、一対の鉄筋金網13どうしを締結することで当該鉄筋金網13を親杭鋼材2の柱部2Bのフランジ2aに当接させた状態で起立させることができ、上記第1実施形態よりもさらに容易に山留擁壁1の施工を行うことが可能となっている。
【0078】
また、本実施形態においては、図10に示す如く、親杭鋼材2の適当な高さ位置に鉄筋支持手段7を取り付け、当該鉄筋支持手段7に鉄筋金網13の横筋13a部を引っ掛ける(載置する)ことで、当該鉄筋金網13を親杭鋼材2の柱部2Bに当接させた状態で支持する構成を採用することも可能である。
【0079】
以上、本発明の山留擁壁1の実施形態について詳述したが、本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではない。例えば、2m程度の高さを越えない範囲であれば、宅地造成の建物建設予定地の山留擁壁1のみでなく、地下階に設けられる明かり取り用のテラスから立ち上がる擁壁等にも採用することができる。また、道路面に対して平行な横擁壁と当該横擁壁に対して垂直な縦擁壁とを連続させて形成される山留擁壁に対しても、本実施形態を採用することが可能である。
【0080】
また、鉄筋支持手段の座部は、横筋を載置する構成となっているが、当該横筋を懸下する構成を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の活用例として、住宅等の地盤形成に供する山留擁壁及び山留擁壁形成方法に適用出来、更には地下階の灯り取り用のテラスから立ち上がる擁壁等にも採用することが出来、また、道路面に対して平行な横擁壁と当該横擁壁に対して垂直な縦擁壁とを連続させて形成される山留擁壁に対しても採用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明に係る山留擁壁の構成を示す断面説明図である。
【図2】本発明に係る山留擁壁の構成を示す正面説明図である。
【図3】本発明に係る山留擁壁の構成を示す断面説明図である。
【図4】本発明に係る山留擁壁の構成を示す平面図である。
【図5】H型鋼からなる親杭鋼材の小口面に取り付けた鉄筋支持手段に鉄筋を載置した様子を示す斜視図である。
【図6】鉄筋支持手段の他の構成を示す平明説明図である。
【図7】親杭鋼材の柱部の高地盤側のフランジに亘って柵板を堰板として張架した様子を示す断面説明図である。
【図8】親杭鋼材の柱部の高地盤側のフランジに亘って柵板を堰板として張架した様子を示す平面図である。
【図9】親杭鋼材の柱部に金網鉄筋を自立して当接させ、鉄筋金網同士を鉄線等により締結した様子を示す断面説明図である。
【図10】親杭鋼材の柱部に金網鉄筋を自立して当接させ、親杭鋼材の小口面に取り付けた鉄筋支持手段に鉄筋金網を引っ掛けて支持した様子を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0083】
A…高地盤
B…低地盤
1…山留擁壁
1a…左側擁壁
1b…右側擁壁
2…親杭鋼材
2A…杭部
2B…柱部
2a…フランジ
2b…ウェブ
3…杭孔
4…コンクリート壁体
5…地中杭部
6…鉄筋
6a…横筋
6b…縦筋
7…鉄筋支持手段
7a…鉄筋支持部材
7a1…架け渡し部
7a2…当接部
7a3…鉄筋支持台部
7b…留め付け部材
7b1…脚部
7b2…押圧部材
7b3…ターンバックル
8…コンクリート
9…水抜き管
10…透水マット
11…伸縮目地
12…柵板
13…鉄筋金網
13a…横筋
13b…縦筋
14…鉄線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋め込まれる杭部と、当該杭部に連接されて地盤より立ち上がる柱部とを有して柱状に形成され、前面の低地盤よりも高位に地盤面を有する高地盤の側面に沿って所定間隔で建てこまれる複数の親杭鋼材と、前記複数の親杭鋼材の柱部をコンクリートにより覆って形成されるコンクリート壁体とを備え、
該コンクリート壁体は、前記高地盤の側面に沿いつつ、前記複数の親杭鋼材の柱部を横切って配設される複数本の鉄筋と、各鉄筋を親杭鋼材に当接させた状態で支持する鉄筋支持手段とを備えていることを特徴とする山留擁壁。
【請求項2】
前記鉄筋支持手段は、前記親杭鋼材の柱部に留め付けられる留付け部と、前記鉄筋に締結される又は前記鉄筋を載置する座部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の山留擁壁。
【請求項3】
前記親杭鋼材の柱部は、前記コンクリート壁体の壁芯に平行又は略平行な法線を有する小口面を備え、該小口面に前記鉄筋支持手段の留付け部が溶接固定されていることを特徴とする請求項2に記載の山留擁壁。
【請求項4】
前記鉄筋は、前記親杭鋼材の柱部の低地盤面側にのみ設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の山留擁壁。
【請求項5】
前記コンクリート壁体は、前記親杭鋼材の高地盤側の側面と当該高地盤の側面との間に堰板を備え、該堰板の裏面までコンクリートが充填されていることを特徴とする請求項4に記載の山留擁壁。
【請求項6】
地盤に埋め込まれる杭部と、当該杭部に連接されて地盤より立ち上がる柱部とを有して柱状に形成され、前面の低地盤よりも高位に地盤面を有する高地盤の側面に沿って所定間隔で建てこまれる複数の親杭鋼材と、前記複数の親杭鋼材をコンクリートにより覆って形成されるコンクリート壁体とを備え、
該コンクリート壁体は、前記複数の親杭鋼材の柱部に当接した状態で設けられる自立可能な金網鉄筋を備えていることを特徴とする山留擁壁。
【請求項7】
地盤に埋め込まれる杭部と、当該杭部に連接されて地盤より立ち上がる柱部とを有して柱状に形成される親杭鋼材を、低地盤よりも高位に地盤面を有する高地盤の側面に沿って前記杭部を低地盤に埋設した状態で所定間隔で建てこみ、
前記親杭鋼材の柱部に鉄筋を当接させた状態で当該鉄筋を支持する鉄筋支持手段を各親杭鋼材の柱部に取り付けた後、当該鉄筋支持手段に支持させた状態で複数本の鉄筋を前記高地盤の側面に沿わせつつ、且つ、複数の親杭鋼材の柱部を横切って配設し、その後、
前記親杭鋼材の柱部と前記複数本の鉄筋とを覆うコンクリートを打設してコンクリート壁体を形成する、
ことを特徴とする山留擁壁形成方法。
【請求項8】
地盤に埋め込まれる杭部と、当該杭部に連接されて地盤より立ち上がる柱部とを有して柱状に形成される親杭鋼材を、低地盤よりも高位に地盤面を有する高地盤の側面に沿って前記杭部を低地盤に埋設した状態で所定間隔で建てこみ、
前記親杭鋼材の柱部に鉄筋を当接させた状態で当該鉄筋を支持する鉄筋支持手段を各親杭鋼材の柱部に取り付けた後、当該鉄筋支持手段に支持させた状態で複数本の鉄筋を前記高地盤の側面に沿わせつつ、且つ、複数の親杭鋼材の低地盤側を横切って配設し、
前記親杭鋼材と高地盤との間に堰板を立設し、その後、
前記親杭鋼材と鉄筋とを覆うと共に前記堰板の背面までコンクリートを打設してコンクリート壁体を形成する、ことを特徴とする山留擁壁形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−106482(P2010−106482A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277679(P2008−277679)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(303046244)旭化成ホームズ株式会社 (703)
【Fターム(参考)】