説明

岩盤などの破砕機

【課題】静圧による割岩力が一定値に達した場合に、衝撃を与えて岩盤などにさらなる亀裂を生じさせる破砕機1を提供する。
【解決手段】破砕機1の先端に、先端側の断面積が大きくなるライナー11と、先端側の断面積が小さくなるウエッジ12とを設けた破砕機1である。複数枚のライナー11の間にウエッジ12を圧入する圧入回路と、ウエッジ12に中心軸方向の振動を与える加振回路と、油圧の供給圧が一定値に達したときに加振回路への油圧の供給を始める加振開始弁とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤やコンクリート構造物を破砕する破砕機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
低振動、低騒音で硬岩、コンクリート構造物を割岩破砕する工法や装置が知られている。
この工法、装置は、油圧による静的圧力で内側の「ウエッジ」と称するクサビを、ウエッジの側面に配置した外側の「ライナー」の間に押し込み、この押し込み力で、ライナーを側面方向に押し出して岩盤などに破断面を形成する構成である。
静的圧力でウエッジを押し込みライナーを押し広げる構成であるから、低振動、低騒音で破砕が可能であるという特徴を備えている。
さらに飛石などの危険も少ないため、建築物の近傍での工事において特に有効である。
また、小型のパワーショベルで運用できるため、移動やセットが容易であり、狭い場所でも汎用性が高く、油圧供給源を別に設ければクレーンで吊って施工することも可能であるという特徴も備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−18753号公報
【0004】
【特許文献2】特公平5400053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したような従来の岩盤などの破砕機にあっては、次のような問題点がある。
<1> 大きい割岩力を得るためには、大きい押し込み力でウエッジをライナーの間に押し込む必要がある。そのために割岩力を大きくするには大型のジャッキと大口径削孔ドリルが必要となり、装置全体が大型化することになる。
<2> 大型化すると、その運搬、取扱いが不便になり、装置自体と削孔ビット類、ウエッジ、ライナーなどの消耗資材も高価なものとなりコスト高となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような課題を解決するために、本発明の岩盤などの破砕機は、先端側の断面積が大きくなるライナーと、先端側の断面積が小さくなるウエッジとよりなる破砕機において、複数枚のライナーの間に、ウエッジを圧入する圧入回路と、ウエッジに中心軸方向の振動を与える加振回路と、油圧の供給圧が一定値に達したときに加振回路への油圧の供給を始める加振開始弁とで構成したことを特徴としたものである。
上記の加振開始弁は、油圧回路の油圧が、最大油圧に対して一定値に達したときに開くリリーフバルブで構成したことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の岩盤などの破砕機は以上説明したようになるから次のような効果を得ることができる。
<1> 割岩力を、ジャッキによるウエッジの押し込み力だけでなく、バイブレータの振動も併用し、あるいは選択的に採用するように構成したので、岩盤などの性状に応じた最適な割岩力を得ることができる。
<2> 本発明の破砕機によれば、静圧による割岩力が不足した場合に、それを検知して自動的に静圧とは別の衝撃を与えて効率のよい亀裂破砕を行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の岩盤などの破砕機の実施例の説明図。
【図2】ウエッジとライナーの実施例の説明図。
【図3】岩盤などの破砕工程の説明図。
【図4】岩盤などの破砕状態の説明図。
【図5】ウエッジを圧入する状態の油圧回路の説明図。
【図6】ウエッジを後退させる状態の油圧回路の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0010】
<1>全体の構成
本発明の岩盤などの破砕機1は、先端側の断面積が大きくなるライナー11と、先端側の断面積が小さくなるウエッジ12とよりなる破砕機1である。
この破砕機1では、複数枚のライナー11の間に、ウエッジ12を圧入して割岩力を得るものである。
この破砕機1の油圧回路には圧入ユニット3と、振動ユニット4を設ける。
圧入ユニット3はウエッジ12に静圧を与え、振動ユニット4はウエッジ12に衝撃力を与える装置である。
【0011】
<2>圧入回路
複数枚のライナー11の間にウエッジ12を圧入するには、圧入ユニット3に圧力を供給する圧入回路を設ける。
この圧入回路は操作盤側の回路5と、破砕機側の回路6に分かれる。
操作盤側の回路5では、油圧ポンプ51からの油圧を切り替えバルブ52で切り替えて破砕機1に供給する。
破砕機1に設けた圧入ユニット3は、シリンダー内にピストンを収納したものである。
操作盤側の回路5での切り替えバルブ52の切り替えによって、圧入ユニット3のピストンロッド31を押し出し、あるいは引き戻す。
ピストンロッド31の押出しによって、ウエッジ12を複数のライナー11の間へ圧入する作動を得ることができる。(図5)
ピストンロッド31の引き戻しによって、ウエッジ12をライナー11の間から引き出す作動を得ることができる。(図6)
油圧ポンプ51は、バックホウやパワーショベルの油圧ユニットを使用することができる。
【0012】
<3>加振回路
ウエッジ12にその中心軸方向の振動を与えるには、振動ユニット4に圧力を供給する加振回路を設ける。
そのために圧入回路からの油圧を分流弁53で加振回路に取り入れ、振動ユニット4へ供給する。
振動ユニット4は、シリンダー内にピストン41を収納したものであり、ピストンロッド41から短い周期の往復動を得ることができる。
この往復動は、破砕機1の外筒、またはシリンダーロッドを介して先端のウエッジ12、ライナー11に伝達し、周囲の岩盤に静圧ではなく、衝撃による力を与えることができる。
そのために、静圧だけでの割岩力に比較して、大幅にその力を増大させることができる。
【0013】
<4>加振開始弁
圧入回路と加振回路との間に、加振開始弁54を設ける。
この加振開始弁54は例えば逆止弁54aとリリーフバルブ54bで構成する。
逆止弁54aでは、圧入回路側から加振回路側への油圧の供給だけを許容する。
リリーフバルブ54bは圧入回路の油圧が一定圧まで上昇すると開くことになるが、その開放すべき一定圧を例えばウエッジ12の最大圧入圧の80%に設定しておく。
このように構成すると、ウエッジ12のライナー11間への圧入がスムーズにゆかない場合、すなわちライナー11の外側の岩盤が硬く割岩力が不足している場合に加振開始弁54が機能し、振動ユニット4の振動が発生することになる。
【0014】
<5>使用方法
次に本発明の破砕機1の使用方法について説明する。
【0015】
<6>事前削孔
まず破砕の対象とする岩盤やコンクリート基礎などに、他の削孔装置によって削孔する。
この孔の内径は、ウエッジ12を引っ込めた場合の、ライナー11群の外径よりも大きく、ウエッジ12を圧入した場合の、ライナー11の外径よりも小さい寸法である。
【0016】
<7>破砕機の挿入
ウエッジ12を破砕機1本体側へ引っ込めてライナー11の外径を最小限の外径にしておき、その状態で孔内へ挿入する。
【0017】
<8>ウエッジの圧入
圧入回路を作動して圧入ユニット3のジャッキに油圧力を供給し、ロッド31をシリンダーから押し出す。
この押出し力でウエッジ12を複数のライナー11の間に押し込み、ライナー11には外側へ広がる割岩力が生じる。
この割岩力で孔の周囲の岩盤に亀裂を生じさせる。
【0018】
<9>加振
孔の周囲の岩盤が硬い場合には、ウエッジ12をライナー11の間に圧入することが困難となる。
すると油圧回路の油圧が上昇するから、その油圧が一定圧の超えると、加振開始弁54の圧力油が逆止弁54aを通ってリリーフバルブ54bを開く。
リリーフバルブ54bが開くと、振動ユニット4が作動を開始し、ウエッジ12にその中心軸方に向けた振動を与える。
この振動がライナー11の外周の岩盤に伝わり、静圧による割岩力とは別の、衝撃による力となって岩盤へ亀裂を生じさせる。
以上のように本発明の破砕機1によれば、静圧による割岩力が不足した場合に、それを検知して自動的に静圧とは別の衝撃を与えて効率のよい亀裂破砕を行うことができるものである。
その機能は、加振開始弁54が、例えば逆止弁54aリリーフバルブ54bで構成してあり、油圧回路の油圧が最大油圧に対して一定値に達したときに開くからである。
その場合の一定値は、現場の岩盤などの特性に合わせて任意に調整することができる。
【符号の説明】
【0019】
1:破砕機
11:ライナー
12:ウエッジ
3:圧入ユニット
4:振動ユニット
5:操作盤側回路
6:破砕機側回路
54:加振開始弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕機の先端に、先端側の断面積が大きくなるライナーと、先端側の断面積が小さくなるウエッジとを設けた破砕機において、
複数枚のライナーの間にウエッジを圧入する圧入回路と、
ウエッジに中心軸方向の振動を与える加振回路と、
油圧の供給圧が一定値に達したときに加振回路への油圧の供給を始める加振開始弁とで構成した、
岩盤などの破砕機。
【請求項2】
請求項1記載の加振開始弁は、
油圧回路の油圧が、最大油圧に対して一定値に達したときに開くリリーフバルブで構成した、
岩盤などの破砕機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96166(P2013−96166A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241061(P2011−241061)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(594071239)株式会社カコー (4)
【Fターム(参考)】