説明

岩盤破砕装置及び岩盤破砕方法

【課題】破砕作業の効率を向上させることが可能な岩盤破砕装置を提供する。
【解決手段】岩盤Rに形成された削孔の内壁Haを押圧することで岩盤Rを破砕する岩盤破砕装置において、削孔の内部に周方向に複数配置された状態で拡径させられることにより、内壁Haを押圧する複数の押圧片2と、複数の押圧片2の間に挿入された状態で押圧片2の先端側に移動することにより、複数の押圧片2を拡径させる楔部材3と、を備え、複数の押圧片2の基端部において内壁Haを押圧する基端側押圧面2aの周方向における総数が、基端部よりも先端側に位置する先端部において内壁Haを押圧する先端側押圧面2bの周方向における総数よりも少なくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤(コンクリート構造物を含む)に形成された削孔の内壁を押圧することで岩盤を破砕する岩盤破砕装置及び岩盤破砕方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の岩盤破砕装置として、4つの押圧片を拡径させることにより、4方向に亀裂を発生させて岩盤の破砕を行う装置が知られている(例えば、特許文献1の図6及び図8参照)。この装置によれば、岩盤の4方向に亀裂を発生させることができるので、細かく岩盤を破砕することが可能であり、破砕作業を効率的に遂行することができる。また、岩盤はその強度や剛性において異方性を有することがあり、所定の方向には亀裂を発生させやすいが、他の方向に亀裂を発生させるのは困難となる場合がある。このような場合においても、4方向に力を作用させることにより、岩盤の異方性の影響を軽減することが可能であり、一定の効率で破砕作業を遂行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3381163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押圧片を拡径させることにより岩盤を破砕する際には、通常、表面から深部に向かって破砕が進行するので、まず、岩盤の表面近傍に大きな押圧力を作用させることが必要となる。しかしながら、特許文献1に記載の岩盤破砕装置によれば、岩盤の表面から深部に至るまで4方向に同等に押圧力が作用し、岩盤の表面近傍に対して特に大きな押圧力を作用させる構成となっていない。このため、岩盤の表面近傍を破砕するのに時間を要し、破砕作業の効率が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、破砕作業の効率を向上させることが可能な岩盤破砕装置及び岩盤破砕方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る岩盤破砕装置は、岩盤に形成された削孔の内壁を押圧することで岩盤を破砕する岩盤破砕装置において、削孔の内部に周方向に複数配置された状態で拡径させられることにより、内壁を押圧する複数の押圧片と、複数の押圧片の間に挿入された状態で押圧片の先端側に移動することにより、複数の押圧片を拡径させる楔部材と、を備え、複数の押圧片の基端部において内壁を押圧する基端側押圧面の周方向における総数が、基端部よりも先端側に位置する先端部において内壁を押圧する先端側押圧面の周方向における総数よりも少ないことを特徴とする。
【0007】
また、上記目的を達成するため、本発明に係る岩盤破砕方法は、岩盤に削孔を形成する削孔形成工程と、削孔の内部に複数の押圧片を周方向に配置する準備工程と、複数の押圧片を拡径させて内壁を押圧する破砕工程と、を備え、複数の押圧片の基端部において内壁を押圧する基端側押圧面の周方向における総数が、基端部よりも先端側に位置する先端部において内壁を押圧する先端側押圧面の周方向における総数よりも少ないことを特徴とする。
【0008】
これらの本発明によれば、基端側押圧面の総数を先端側押圧面の総数よりも少なくすることにより、岩盤の表面近傍において削孔の内壁を押圧する力が分散することを抑制することができ、岩盤の表面近傍に作用する押圧力を強化することができる。したがって、岩盤の表面近傍をより速やかに破砕することが可能となり、続いて、深部の破砕も速やかに行われることになるので、破砕作業の効率を向上させることができる。
【0009】
また、岩盤の異方性については、特に岩盤の深部において予め知ることが難しいので、深部においては多方向に力が作用することが望ましい。この点、本発明によれば、先端側押圧面の総数は基端側押圧面の総数よりも多いので、岩盤の深部においては多方向に押圧力を作用させることができ、岩盤の異方性の影響を軽減することができる。さらに、多方向に亀裂が生じることにより、一度に岩盤を細かく破砕することが可能となる。一方、岩盤の深部においては、表面近傍からの破砕の進行に乗じて比較的少ない負荷で破砕することが可能であるので、押圧力が分散されることは問題となり難い。
【0010】
以上のごとく、本発明によれば、岩盤の表面近傍においては押圧力の強化を優先するとともに、岩盤の深部においては異方性の影響の軽減及び岩盤を細かく破砕することを優先することにより、破砕作業の効率を向上させることができる。
【0011】
ここで、先端側への楔部材の移動にしたがって、基端側押圧面が内壁を押圧した後に、先端側押圧面が内壁を押圧すると好適である。
【0012】
このように構成すると、楔部材の移動初期段階で基端側押圧面のみが削孔の内壁を集中的に押圧するため、岩盤の表面近傍がまず破砕され、それから先端側押圧面が内壁を押圧して岩盤の深部が破砕されることになる。すなわち、岩盤の破砕を表面近傍から深部に向かってある程度進行させてから、深部の破砕を行うことになるので、より小さな押圧力でも深部の破砕が可能となる。したがって、破砕作業の効率を一層向上させることができる。
【0013】
また、先端側への楔部材の移動前において、複数の先端側押圧面を内部に含む最小の仮想円の直径が、複数の基端側押圧面を内部に含む最小の仮想円の直径よりも小さいと好適である。
【0014】
この構成によれば、楔部材が押圧片の先端側に移動するにしたがって押圧片が拡径させられる際に、まず基端側押圧面が削孔の内壁に当接し押圧力を作用させ、次に先端側押圧面が削孔の内壁に当接して押圧力を作用させることになる。すなわち、本構成によると、基端側押圧面が内壁を押圧した後に先端側押圧面が内壁を押圧するための構造を簡潔に実現することができる。
【0015】
また、複数の押圧片の少なくとも1つにおいて、基端側押圧面は、楔部材の挿入方向に沿って延びる基端側円弧面であり、先端側押圧面は、基端側円弧面から挿入方向に沿って先端側に延びる先端側円弧面に少なくとも1つの切欠部を設けることにより、先端側円弧面を周方向に分断して形成される部分円弧面であると好適である。
【0016】
この構成によれば、押圧片の先端部において、円弧面に切欠部を形成するだけの簡単な加工で、先端側押圧面の周方向における総数が基端側押圧面の周方向における総数よりも多い構成、換言すると基端側押圧面の周方向における総数が先端側押圧面の周方向における総数よりも少ない構成を実現することができる。
【0017】
さらに、複数の押圧片の全てに少なくとも1つの切欠部が形成されており、当該切欠部は全ての押圧片において同一の形態で形成されていると好適である。
【0018】
この構成のごとく、複数の押圧片の全てに同一の形態、すなわち同一の位置に同一の形状及び同一寸法で切欠部が形成されていると、先端側押圧面も全ての押圧片に同一の形態で形成されることになる。したがって、楔部材を先端側に移動させて先端側押圧面が削孔の内壁を押圧する状態となった場合に、各押圧片における負荷状態は同様となるので、特定の押圧片に負荷が集中するのを回避し、押圧片の寿命を延ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る岩盤破砕装置の使用状態を示す図である。
【図2】押圧片の一部を示す斜視図である。
【図3】破砕作業の進行を示す断面図である。
【図4】別の実施形態に係る押圧片の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る岩盤破砕装置の実施形態について図面に基づいて説明する。岩盤破砕装置1は、図1に示すように、岩盤Rに形成した削孔Hの内部に周方向に配置される2つの押圧片2を有している。これらの押圧片2は同形状及び同寸法であり、押圧片2を形成する面の1つであるテーパ面2dが向かい合うように配設されている。押圧片2がこのように配置されることにより、テーパ面2dによって挟まれる空間は押圧片2の先端側ほど細くなる先細り形状となる。この先細り形状の空間に、この空間と同様に先細り形状に構成された楔部材3が挿入される。
【0021】
楔部材3は、油圧シリンダ4に油を給排することにより図1の上下方向に移動するピストンロッド5に連結されている。油圧シリンダ4に油を供給すると、図1において破線で示したように、ピストンロッド5とともに楔部材3は押圧片2の先端側に移動し、押圧片2が拡径されて削孔Hの内壁Haに押圧力を作用させる。以上のように構成された岩盤破砕装置1は、通常、図示しない作業車両のアームの先端部に取り付けられ、岩盤Rの破砕作業に用いられる。
【0022】
図2は、押圧片2のうち、図1において削孔Hの内部に収容されている部位のみを斜視図で示したものである。押圧片2は、楔部材3を挿入する方向と直交する面における断面形状が基本的に略半円状である棒状部材から作製される。押圧片2のうち削孔Hの内壁Haと対向する面は、楔部材3の挿入方向に沿って延びる円弧面を基本形状として構成されている。なお、ここでの円弧面とはその断面が厳密に円の一部である必要はなく、断面が楕円の一部であるような場合も含むものとする。
【0023】
本実施形態においては、図2に示すように、押圧片2の上部約1/3の部分を基端部2A、残りの下部約2/3の部分を先端部2Bとするが、基端部2A及び先端部2Bの範囲はこれに限定されるものではない。そして、上記円弧面のうち、基端部2Aの領域に含まれる基端側円弧面がそのまま基端側押圧面2aとして構成されるとともに、先端部2Bの領域に含まれる先端側円弧面に楔部材3の挿入方向に沿って延びる切欠部2cを形成し、切欠部2cによって周方向に分断された部分円弧面が先端側押圧面2bとして構成されている。すなわち、基端側押圧面2aは1つの押圧片2に対し1つだけ存在するが、先端側押圧面2bは切欠部2cによって円弧面が分断されたことによって1つの押圧片2に対し2つ存在する。なお、ここでは基端部2Aと先端部2Bとの境界線の中点から、押圧片2の先端側かつ径方向内側に向かって切削加工することにより、切削面の形状が三角形状となる切欠部2cを、両方の切欠部2に同一の形態で形成した。
【0024】
上記のように構成された岩盤破砕装置1の動作について、図3に基づいて説明する。図3は、図1におけるA−A断面及びB−B断面における断面図を時系列で示したものである。ここで、A−A断面は押圧片2の基端部2Aの代表断面、B−B断面は押圧片2の先端部2Bの代表断面として位置づけられるものである。また、t=tは岩盤破砕装置1を削孔Hにセッティングした時点、t=tは押圧片2が拡径され基端側押圧面2aが削孔Hの内壁Haに当接した時点、t=tはさらに押圧片2が拡径され先端側押圧面2bが削孔Hの内壁Haに当接した時点を示している。
【0025】
岩盤破砕装置1を削孔Hにセッティングしたt=tにおいては、押圧片2の基端部2Aにおいても先端部2Bにおいても、押圧片2と削孔Hの内壁Haとの間にはわずかながら間隙が存在する。ただし、全ての先端側押圧面2bを内部に含む最小の仮想円の直径Φbは、全ての基端側押圧面2aを内部に含む最小の仮想円の直径Φaよりも小さいので、先端側押圧面2bと内壁Haとの間隙が基端側押圧面2aと内壁Haとの間隙よりも大きくなっている。したがって、後述するように、楔部材3が押圧片2の先端側に移動することにより押圧片2が拡径された場合、まず基端側押圧面2aが内壁Haに当接して押圧力を作用させ(t=tの図参照)、さらに押圧片2が拡径されることにより先端側押圧面2bも内壁Haに当接して押圧力を作用させることになる(t=tの図参照)。
【0026】
t=tにおいては、先端側押圧面2bは削孔Hの内壁Haを押圧せず、基端側押圧面2aのみが内壁Haを押圧している。このとき、基端側押圧面2aは各押圧片2に1つずつの計2つあるのみなので、押圧力が多方向に分散されることなく、内壁Haに作用させる押圧力を図3の左右方向に集中させることができる。その結果、岩盤Rは強い力で左右方向に引っ張られ、より確実にこの左右方向と直交する上下方向に亀裂を生じさせることができる。また、この時点においては、先端側押圧面2bはまだ内壁Haを押圧していないので、押圧片2による押圧力は基端側押圧面2aにより集中することになる。よって、岩盤Rの表面近傍を速やかに破砕することが可能となる。
【0027】
t=tにおいては、基端側押圧面2aだけでなく、先端側押圧面2bも削孔Hの内壁Haを押圧するようになる。先端側押圧面2bは各押圧片2に2つずつ計4つ存在するので、押圧力を4方向に作用させることができる。この場合、押圧力が4方向に分散されることにより、先端側押圧面2bが内壁Haに作用させる押圧力が小さくなるが、通常、岩盤Rの表面近傍が破砕されていれば、それに乗じて岩盤Rの深部の破砕は比較的少ない負荷で行うことができるので問題とはなり難い。それよりも、押圧力が4方向に作用することにより、岩盤Rに異方性がある場合でもその影響を軽減することができるし、一度に細かく破砕することができるという点において、破砕作業の効率を向上させることができる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能であり、以下のように構成してもよい。
【0029】
(1)上記実施形態においては、押圧片2の数を2つ、基端側押圧面2aの周方向における総数を2つ、先端側押圧面2bの周方向における総数を4つとしたが、これに限定されることはない。例えば、破砕対象となる岩盤Rがそれほど固くない場合には、押圧力を多少低下させても問題とはならないので、押圧片2の数を増やすことも可能であるし、押圧片の数を減らさずに基端側押圧面2aの周方向における総数及び先端側押圧面2bの周方向における総数を増やすことも可能である。
【0030】
(2)上記実施形態においては、2つの押圧片2の両方に切欠部2cを同一の形態で形成したが、これに限定されることはない。例えば、切欠部2cを形成しない押圧片2を設けることも可能であるし、各押圧片2に形成する切欠部2cの数、位置、形状、または寸法が異なるように構成することも可能である。
【0031】
(3)上記実施形態においては、切削面の形状が三角形状となるような切欠部2cを各押圧片2の周方向に1つ形成したが、これに限定されることはない。例えば、図4に示すように切削面の形状が矩形状となるような切欠部2cでもよいし、楔部材3の挿入方向に沿って延びる溝状の切欠部2cを形成することも可能である。また、各押圧片2の周方向に切欠部2cを複数設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、削孔が形成された岩盤に対して、削孔の内壁を押圧することで岩盤を破砕する岩盤破砕装置及び岩盤破砕方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 岩盤破砕装置
2 押圧片
2A 基端部
2B 先端部
2a 基端側押圧面
2b 先端側押圧面
2c 切欠部
3 楔部材
R 岩盤
H 削孔
Ha 削孔の内壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
岩盤に形成された削孔の内壁を押圧することで前記岩盤を破砕する岩盤破砕装置において、
前記削孔の内部に周方向に複数配置された状態で拡径させられることにより、前記内壁を押圧する複数の押圧片と、
前記複数の押圧片の間に挿入された状態で前記押圧片の先端側に移動することにより、前記複数の押圧片を拡径させる楔部材と、を備え、
前記複数の押圧片の基端部において前記内壁を押圧する基端側押圧面の周方向における総数が、前記基端部よりも前記先端側に位置する先端部において前記内壁を押圧する先端側押圧面の周方向における総数よりも少ないことを特徴とする岩盤破砕装置。
【請求項2】
前記先端側への前記楔部材の移動にしたがって、前記基端側押圧面が前記内壁を押圧した後に、前記先端側押圧面が前記内壁を押圧する請求項1に記載の岩盤破砕装置。
【請求項3】
前記先端側への前記楔部材の移動前において、前記複数の先端側押圧面を内部に含む最小の仮想円の直径が、前記複数の基端側押圧面を内部に含む最小の仮想円の直径よりも小さい請求項2に記載の岩盤破砕装置。
【請求項4】
前記複数の押圧片の少なくとも1つにおいて、
前記基端側押圧面は、前記楔部材の挿入方向に沿って延びる基端側円弧面であり、
前記先端側押圧面は、前記基端側円弧面から前記挿入方向に沿って前記先端側に延びる先端側円弧面に少なくとも1つの切欠部を設けることにより、前記先端側円弧面を周方向に分断して形成される部分円弧面である請求項1〜3のいずれか1項に記載の岩盤破砕装置。
【請求項5】
前記複数の押圧片の全てに前記少なくとも1つの切欠部が形成されており、当該切欠部は前記全ての押圧片において同一の形態で形成されている請求項4に記載の岩盤破砕装置。
【請求項6】
岩盤に削孔を形成する削孔形成工程と、
前記削孔の内部に複数の押圧片を周方向に配置する準備工程と、
前記複数の押圧片を拡径させて前記内壁を押圧する破砕工程と、を備え、
前記複数の押圧片の基端部において前記内壁を押圧する基端側押圧面の周方向における総数が、前記基端部よりも前記先端側に位置する先端部において前記内壁を押圧する先端側押圧面の周方向における総数よりも少ないことを特徴とする岩盤破砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79521(P2013−79521A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219948(P2011−219948)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【特許番号】特許第4961574号(P4961574)
【特許公報発行日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【出願人】(399048869)株式会社神島組 (10)
【Fターム(参考)】