説明

崩壊型粒状リン酸培地

【課題】肥料として多量のリン酸肥料を含有し、かつ植物性繊維材料を使用した培地であって、粒状化によって取り扱いやすさを確保しつつ、使用後は速やかに崩壊することで、生育不良や不揃いを起こさずに施肥の省力化を達成できる崩壊性粒状リン酸培地を提供する。
【解決手段】(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、及び(C)含水ケイ酸アルミニウムを含有させた崩壊型粒状リン酸培地、そして更には、それらに(D)硫酸第一鉄を含有させた崩壊型粒状リン酸培地である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は崩壊型粒状リン酸培地に関する。
【背景技術】
【0002】
植物性繊維材料を用いた植物育成用の培地としては、植物性繊維材料を粒度調整してそのまま用いるほか、培地の物理性や化学性を調整したもの等が挙げられる。植物性繊維材料は素材のままでは取り扱いにくいため、様々な改良方法が検討されており、例えば、ピートモスに関しては、本来の長所を保ちながら、崩壊しにくい粒状ピートモスを効率的に製造する方法(例えば、特許文献1参照)等が試みられている。
【0003】
また、これら培地に肥料を添加することによって育苗時の養分を確保するほか、多量の緩効性肥料を含有させることにより従来移植後に施用していた肥料の使用量を減らす、もしくは不要にするような技術開発が行われている。例えば、緩効性肥料と保水材を粒状化した培地(例えば、特許文献2、3参照)等が開示されている。
【0004】
しかしながら、ピートモスのような植物性繊維材料を圧縮等により加工成形したいわゆる成形培地は、吸水後膨潤して形状が変化することが一般的に知られている。この成形培地は、輸送上は好ましいが、使用時の寸法安定性がないため、使い難いことが指摘されている。 ベントナイト等の無機物を添加して植物性繊維材料の膨潤を抑えた粒状培地(例えば、特許文献1参照)は寸法安定性が良く取り扱い面で利点が多いが、粒子が崩壊しにくいため使用場面で形状を保持し続け、表面が凹凸のまま推移してしまい、粒径の大きさによっては植物の生育不良や不揃いを生じるため問題視されている。
また、近年、肥料として多量のリン酸肥料を含有し、植物性繊維材料を用いた粒状培地の技術開発が行われ実用化されているが、該粒状培地も使用場面によっては使用時の粒子崩壊性が不十分であり、より崩壊しやすい粒状培地が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−241139号公報
【特許文献2】特開平11−123024号公報
【特許文献3】特開2000−4670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、肥料として多量のリン酸肥料を含有し、かつ植物性繊維材料を使用した培地であって、粒状化によって取り扱い易くすると共に、使用後は速やかに崩壊することで、植物の生育不良や不揃いを起こさずに施肥の省力化を達成できる崩壊型粒状リン酸培地を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前述の課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、及び(C)含水ケイ酸アルミニウムを含有させた崩壊型粒状リン酸培地、そして更には、それらに(D)硫酸第一鉄を含有させた崩壊型粒状リン酸培地によって、前述の課題が解決されることを知り、その知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下によって構成される。
(1)(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、及び(C)含水ケイ酸アルミニウムを含有するリン酸培地であり、その含有重量比が(A):(B):(C)=30〜75:5〜25:5〜15である崩壊型粒状リン酸培地。
(2)更に、(D)硫酸第一鉄を含有するリン酸培地であり、その含有重量比が(A):(B):(C):(D)中のFe=30〜75:5〜25:5〜15:0.5〜3である前記第(1)項記載の崩壊型粒状リン酸培地。
(3)(A)熔成リン肥及び(B)植物性繊維材料の含有重量比(A)/(B)が、1.5〜9である前記第(1)または(2)項記載の崩壊型粒状リン酸培地。
(4)崩壊型粒状リン酸培地に対する(D)硫酸第一鉄の含有率が、Fe含量として0.5〜3.0重量%であり、かつ崩壊型粒状リン酸培地に含有される(D)硫酸第一鉄由来のFe、及び(A)熔成リン肥由来のP25の含有重量比が、Fe/P25=0.10〜0.20である前記第(2)または(3)項記載の崩壊型粒状リン酸培地。
(5)(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、及び(C)含水ケイ酸アルミニウムを含有する混合物、または(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、(C)含水ケイ酸アルミニウム、及び(D)硫酸第一鉄を含有する混合物に、せん断力及び/または圧縮力を加えて得られる造粒物である前記第(1)〜(4)項のいずれか1項記載の崩壊型粒状リン酸培地。
(6)(B)植物性繊維材料がコイアダストである前記第(1)〜(5)項のいずれか1項記載の崩壊型粒状リン酸培地。
(7)使用前の粒径が、1〜10mmである前記第(1)〜(6)項のいずれか1項記載の崩壊型粒状リン酸培地。
【発明の効果】
【0009】
本発明の崩壊型粒状リン酸培地は、使用時の寸法安定性がよく、使用前は粒状物でありながら、使用後は速やかに吸水膨潤して自己崩壊する。該崩壊型粒状リン酸培地はそのような特性を有するため、その使用場面において、培地表面の凹凸が少なくなり、培地表面が平坦化する。そのため、該崩壊型粒状リン酸培地を用いて作物を育苗栽培すれば、生育不良や不揃いを起こさず、熔成リン肥によって施肥の省力化が達成されるため、農作物等の安全安定生産が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の崩壊型粒状リン酸培地(以下、「崩壊型粒状リン酸培地」を「粒状リン酸培地」という)について詳細に説明する。
本発明の粒状リン酸培地には、(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、及び(C)含水ケイ酸アルミニウムが用いられ、更に(D)硫酸第一鉄を用いることが好ましい。
【0011】
(A)熔成リン肥
本発明の粒状リン酸培地においては、施肥の省力化が可能で生育障害を起こし難いリン酸質肥料として熔成リン肥が必須成分として用いられる。
本発明で用いられる熔成リン肥は、リン鉱石に蛇紋岩等の塩基性苦土含有物を混合して1350〜1500℃で熔融し、これに高圧の冷水を接触させて急冷して細かく砕き、乾燥したものである。また、この原料の一部にマンガン鉱石やホウ酸塩を加えて製造されるBM熔リンも本発明で用いられる熔成リン肥に含まれる。
【0012】
熔成リン肥の標準的な市販製品の保証成分例は、ク溶性リン酸成分濃度が20重量%、ク溶性苦土成分濃度が15重量%、可溶性ケイ酸成分濃度が20重量%、アルカリ成分濃度が50重量%であり、このような成分割合の熔成リン肥は本発明の粒状培地に好適に用いることができる。
【0013】
一般に、リン酸成分は、その溶解性により、水溶性リン酸、可溶性リン酸及びク溶性リン酸に分類され、水溶性リン酸は速効性であるのに対して、可溶性リン酸およびク溶性リン酸は緩効性である。
【0014】
本発明の粒状リン酸培地中に含まれるク溶性リン酸成分濃度は、粒状リン酸培地に対して5重量%以上が好ましく、5〜18重量%の範囲がより好ましく、かつ、粒状リン酸培地中に含まれる水溶性リン酸成分濃度は、粒状リン酸培地に対して0.01重量%以下であることが好ましい。
【0015】
粒状リン酸培地中に含有されるク溶性リン酸成分濃度が、上記の範囲であれば、本圃(本田)移植後にも必要な量のリン酸肥料成分を、育苗容器に入れる場合に、大量の粒状リン酸培地を必要としないため、十分に育苗容器に充填可能であり、粒状リン酸培地の製造も容易である。
【0016】
更に、粒状リン酸培地中に含まれる水溶性リン酸成分濃度が0.01重量%以下であれば、作物の種子が発芽生育障害を起こす危険性がないため、粒状リン酸培地の育苗容器への多量充填が可能となる。
【0017】
本発明の粒状リン酸培地に用いられる熔成リン肥の形態は、粉状でも粒状でもいずれであってもよいが、植物性繊維材料との混合時の均一分散性の点から、粉状の方が好ましい。粒径は0.05〜1.0mmの範囲が好ましく、0.1〜0.5mmの範囲がより好ましい。粒径が上記の範囲であれば、粒状リン酸培地の造粒時に造粒機のダイスの摩耗が少なく、作物の根域施用時にリン酸成分の過剰吸収による濃度障害も起きにくい。
【0018】
本発明の粒状リン酸培地は、熔成リン肥を用いるため、育苗中におけるリン酸成分の溶出が僅かに抑えられることから、該粒状リン酸培地を用いて苗を育苗すれば、本圃で必要なリン酸肥料(ク溶性リン酸成分)を、育苗した苗と共に移植時に本圃へ持ち込むことが可能となる。その後、該ク溶性リン酸は、作物(苗)の根酸により徐々に分解され、苗に吸収される。従って、ク溶性リン酸の量を増減することにより、対象作物のリン酸肥料成分を簡単に全量施肥することが可能となる。
【0019】
尚、本発明の効果を妨げない範囲であれば、熔成リン肥以外のク溶性リン酸を主成分とするリン酸質肥料を添加しても良い。該リン酸質肥料としては、焼成リン肥、沈澱リン酸石灰、苦土過石(蛇紋過石)、フッ素アパタイト、ヒドロキシアパタイト等が挙げられる。
【0020】
(B)植物性繊維材料
本発明の粒状リン酸培地においては、粒状リン酸培地に保水性を付与するため植物性繊維材料が必須成分として用いられる。植物性繊維材料は、軽量かつ保水性に優れるため、本発明の粒状リン酸培地に好適である。
【0021】
植物性繊維材料としては、例えば、ピートモスやヤシガラ等の天然素材が挙げられる。
尚、ピートモスとは、寒冷地の湖沼に生育したヨシ、スゲ及びミズゴケ等の植物遺体が、嫌気性条件下で堆積・分解したものを意味する。
また、ヤシガラとは、ヤシの実の果皮から外果皮及び内果皮を除去し、取り出された中果皮に由来する繊維状物及び木質部分から得られ、中果皮全体に裁断粉砕等の処理を施して繊維状物と木質部分との混合物としたものや、中果皮から更に有用部分(剛長繊維及び中短繊維)を除いた残りの細短繊維と木質部分(中果皮の繊維間を埋めるように構成している木質のような残滓物)との混合物(コイアダスト)を意味する。
コイアダスト類似品(パームヤシの実の枝状心材粉砕品等)も、ヤシガラに含まれる場合があるが、植物性繊維材料としてはコイアダストが好適である。
【0022】
コイアダストは、有用成分である繊維の採取工程で大量(中果皮全体の約60重量%)に発生するものであり、従来は廃棄されていたものである。
尚、コイアダストは、上述のように繊維採取工程の不要成分として発生するため、これを構成する細短繊維及び木質部分の中には若干の長中繊維が混在していることがある。
【0023】
以下、コイアダストの製法を示す。
a)ヤシの実から、果汁、胚乳、内果皮部分を除いた外・中果皮を乾燥する。
b)乾燥した外・中果皮を4〜6週間淡水に浸し、余分なタンニン、塩化物を除去する(アク 抜き)とともにふやけさせる。
c)柔らかくなった外・中果皮から、ロープ、マット及びマットレスに使用される剛長繊維・ 中繊維を分離し、残滓として副生する細短繊維と木質部分を採取する。
d)採取した細短繊維と木質部分を熱風乾燥により、殺菌と水分調整を行い、水分率25重量 %程度とする。
e)更に、コンタミ(不純物)除去・粒度調整(粒度分布の9割が粒径;3mm以下)を行い 、嵩密度;0.10〜0.15g/ml、pH;5〜7、電気伝導度(EC);1.0m S/cm以下のコイアダストを得る。
【0024】
上述のように、ヤシの実の外・中果皮からロープ、マット及びマットレスに使用される剛長繊維・中繊維を除いた残滓がコイアダストであり、別名コイア、ピス等とも呼ばれ、従来は廃棄されていたものである。
本発明の粒状リン酸培地は、かかるコイアダストを積極的に使用することにより、廃棄物の有効利用に貢献することが可能である。
【0025】
尚、コイアダストを採取するヤシの種類は、特に限定されるものではないが、スリランカ産のココヤシから良質の剛い繊維が採取され、このココヤシがロープ、マット及びマットレス等の繊維製品に好適に使用されるので、コイアダストの排出量も多い。このため、スリランカ産のココヤシのコイアダストは、品質及び安定供給の点で優れており、本発明において好適に用いられる。
【0026】
(C)含水ケイ酸アルミニウム
本発明の粒状リン酸培地においては、粒状リン酸培地に崩壊性を付与するために含水ケイ酸アルミニウムが必須成分として用いられる。
本発明で用いられる含水ケイ酸アルミニウムとしては、カオリン鉱物のカオリナイト、ディッカイト、ナクライト(以上、構造式Al2Si25(OH)4)、及びハロイサイト(Al2Si25(OH)4・2H2O)や、パイロフィライト(Al2Si410(OH)2)等が挙げられる。本発明においては、これらを主成分(最も多い成分)とする鉱物も用いることができる。例えば、カオリナイトやハロイサイト等のカオリン鉱物を主成分とするカオリンクレー、パイロフィライトを主成分とするろう石クレー等が挙げられる。製造方法は乾式法、湿式法及び焼成法があり、特に限定されない。これら含水ケイ酸アルミニウムの中でも、カオリナイト、パイロフィライトが好ましく、特にpH4〜7のものが弱酸性であり水稲栽培に適しているため好ましい。
本発明で用いられる含水ケイ酸アルミニウムの粒径は、0.001〜0.05mmが好ましい。
【0027】
(D)硫酸第一鉄
本発明の粒状リン酸培地においては、粒状リン酸培地に崩壊性を付与し、培地を弱酸性に調整するため、硫酸第一鉄を用いることが好ましい。
本発明の粒状リン酸培地に用いる硫酸第一鉄としては、硫酸第一鉄(FeSO4)の七水和物(FeSO4・7H2O)、四水和物(FeSO4・4H2O)、一水和物(FeSO4・H2O)が挙げられ、これらは好適に用いられる。また、これらの硫酸第一鉄は酸性であり、酸性側へのpH調整剤としての機能も有する。
【0028】
本発明の粒状リン酸培地において、(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、及び(C)含水ケイ酸アルミニウムの含有重量比は(A):(B):(C)=30〜75:5〜25:5〜15の範囲である。
また、(D)硫酸第一鉄を併用する場合の含有重量比は(A):(B):(C):(D)中のFe=30〜75:5〜25:5〜15:0.5〜3の範囲であることが好ましい。
各成分の含有重量比が上記の範囲であれば、得られる粒状リン酸培地は、使用時の寸法安定性がよく、使用前は粒状物の形態を保持するが、使用後は速やかに吸水膨潤して自己崩壊するため、使用場面において、培地表面の凹凸が少なくなり、培地表面が平坦化する。そのため、該崩壊型粒状リン酸培地を用いて作物を育苗栽培すれば、生育不良や不揃いを起こさず、熔成リン肥によって施肥の省力化が達成されるため、農作物等の安全安定生産が期待できる。
【0029】
本発明の粒状リン酸培地は、保水性を有しつつ培地の寸法安定性を確保するため、植物性繊維材料を粒状リン酸培地に対して5〜20重量%の範囲、好ましくは5〜15重量%の範囲で含有することが好ましい。
【0030】
更に、本発明の粒状リン酸培地における(A)熔成リン肥と(B)植物性繊維材料の合計含有率は、肥料としてのリン酸と植物性繊維材料由来の培地特性双方の性能バランスを考慮すると、粒状リン酸培地に対して、好ましくは50〜70重量%であり、かつ(A)熔成リン肥及び(B)植物性繊維材料の含有重量比(A)/(B)は1.5〜9の範囲が好ましく、1.5〜5.0の範囲がより好ましい。
【0031】
本発明の粒状リン酸培地における含水ケイ酸アルミニウムの含有率は、粒状リン酸培地に対して5〜15重量%の範囲、好ましくは5〜10重量%の範囲で含有することが好ましい。含水ケイ酸アルミニウムの含有率が上記の範囲であれば、使用後の崩壊性が得られ、使用前は粒状の形態を保持する。
【0032】
本発明の粒状リン酸培地に対する硫酸第一鉄の含有率は、Fe含量として0.5〜3.0重量%の範囲が好ましく、1.0〜2.0重量%の範囲がより好ましい。
また、硫酸第一鉄由来のFe及び熔成リン肥由来のP25の含有重量比が、Fe/P25=0.10〜0.20の範囲であると、培地として良好な化学的特性を示すため好ましい。
Fe含量が0.5〜3.0重量%である具体的範囲は、硫酸第一鉄の七水和物(FeSO4・7H2O)であれば、2.5〜15.0重量%の範囲、硫酸第一鉄の四水和物(FeSO4・4H2O)であれば、2.0〜12.0重量%の範囲、硫酸第一鉄の一水和物(FeSO4・H2O)であれば、1.5〜9.0重量%の範囲である。
【0033】
本発明の粒状リン酸培地は、熔成リン肥、植物性繊維材料、及び含水ケイ酸アルミニウムを含有し、更に、好ましくは硫酸第一鉄を含有するが、本発明の効果を妨げない範囲で、それら以外の成分を添加することが可能である。
【0034】
それら以外の成分として、例えば、土壌、バーミキュライト(焼成バーミキュライト)、パーライト、ゼオライト、ロックウール等の鉱物、製紙工場のソーダパルプ製造の廃棄物から造られる黒灰、籾殻、ヤシガラの内果皮(内殻)から造られる活性炭、木材屑から造られた活性炭等の炭化物、水等を挙げることができる。
【0035】
かかる土壌としては、沖積土、洪積土、火山性土、及び腐植土等の天然の土壌を挙げることができる。本発明においては、これらを熱等により殺菌した乾燥殺菌土が好ましい。このような殺菌土としては、赤玉土((株)ソイール製、赤土系殺菌土)や黒玉土((株)ソイール製、黒土系殺菌土)を挙げることができる。
【0036】
また、農薬活性成分を添加してもよく、農薬成分としては、殺虫剤、殺菌剤、除草剤、抗ウィルス剤、及び作物生長調整剤のほか、殺ダニ剤、殺線虫剤等が挙げられ、その性状は、固体または液体のいずれであっても本発明に使用可能である。
【0037】
熔成リン肥、植物性繊維材料、含水ケイ酸アルミニウム、及び硫酸第一鉄以外の成分の添加量は、本発明の粒状リン酸培地を水に浸漬した場合のpH及び電気伝導度(EC)に注意しながら決定する必要がある。場合によっては、酸性資材やアルカリ性資材から成るpH調整剤を添加してもよい。
【0038】
本発明の粒状リン酸培地のpH及び電気伝導度(EC)は、栽培する対象作物によって異なるが、一般的にpHは4〜7、ECは0.1〜3.0mS/cmの範囲であることが好ましい。
但し、土壌改良材的に希釈して使用することを前提として、高濃度の肥料成分を添加して造粒する場合には、この範囲を大きく外れても差し支えない。
【0039】
本発明の粒状リン酸培地は、育苗に必要なリン酸成分以外の肥料成分を含有しても良い。例えば、窒素質肥料、加里質肥料のほか、植物必須要素のカルシウム、マグネシウム、硫黄、鉄、微量要素やケイ素等を含有する肥料を挙げることができ、具体的には、窒素質肥料として、硫酸アンモニア、尿素、硝酸アンモニア等が挙げられ、加里質肥料としては、硫酸加里、塩化加里、腐植酸加里等が挙げられる。その形態は育苗期間中に速やかに肥効が発現するものであれば、特に限定されない。
【0040】
本発明の粒状リン酸培地は、熔成リン肥、植物性繊維材料、及び含水ケイ酸アルミニウム、更に硫酸第一鉄、加えて必要に応じその他の成分を混合、造粒することによって得られる。本発明においては、結合材を使用しなくても十分に造粒することが可能であるが、本発明の効果を妨げない範囲であれば、結合材を使用してもよい。例えば、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、甘薯澱粉、馬鈴薯澱粉、及びタピオカ澱粉等の澱粉類、ベントナイト等のモンモリロナイト群の粘土系鉱物、二水石膏や半水石膏(焼石膏)、アルギン酸ナトリウムや寒天等の海藻抽出物、アラビアガムやトラガントガム等の作物性樹脂状粘着物、カルボキシメチルスターチやカルボキシメチルセルロ−ス等の天然高分子の誘導体、ポリビニルアルコールやポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子等、また、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂等の熱硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0041】
本発明の粒状リン酸培地は、如何なる方法で造粒されたものであっても良いが、せん断力及び/または圧縮力を加えることが可能な方法により造粒することが好ましい。せん断力及び/または圧縮力を加えることが可能な方法で造粒すれば、結合材を用いなくても、熔成リン肥、植物性繊維材料、及び含水ケイ酸アルミニウム、更に硫酸第一鉄、加えて必要により上記成分以外の成分とを含有する培地を粒状化することが可能となるからである。
【0042】
造粒方法としては、押出造粒法、圧縮造粒法、転動造粒法、噴霧乾燥造粒法、流動層造粒法、破砕造粒法、攪拌造粒法、およびコーティング造粒法等を挙げることができる。また、前述の、せん断力及び/または圧縮力を加えることが可能な方法としては、押出造粒法と圧縮・粉砕造粒法を挙げることができる。
【0043】
押出造粒法の具体例としては、スクリュー型である前押出式、横押出式、真空押出式及び前処理兼用式、ロール型であるディスクダイ式やリングダイ式、ブレード型であるバスケット式やオシレーティング式、自己成形型であるツインダイス式やギヤー式やシリンダー式、ラム型である連続式や断続式等が挙げられる。
【0044】
圧縮・粉砕造粒方式として具体的には、タブレッティング法とロールプレス法等が挙げられ、双方とも本発明に好ましく用いられるが、本発明においては、特に、せん断力と圧縮力の両方を同時に加えることが可能なロール型であるディスクダイ式やリングダイ式が好ましい。
【0045】
本発明の粒状培地の形状は特に限定されるものではなく、球状、楕円球状、ペレット状、多面体状等のいずれであっても使用することができる。
【0046】
尚、本発明の粒状リン酸培地は、培地(培土)及び種子等を連続的に育苗容器に充填していく自動播種施肥装置に好適な資材であり、自動播種施肥装置のホッパーでの残存率(所謂ブリッジによる詰まり)が、粉状の培地(培土)に比し著しく低いので、かかる自動播種施肥装置における培地(培土)の充填効率を向上することができる。
【0047】
本発明の粒状リン酸培地の粒径は、1〜10mmの範囲が好ましく、2〜6mmの範囲がより好ましい。上記の粒状リン酸培地は、前述の方法による造粒物を篩い分けることによって得ることができる。また、該粒状リン酸培地の粒子の最長径は、3〜15mmが好ましく、3〜6mmがより好ましい。上記範囲内であれば、粒状リン酸培地と後述する他の資材とを併用する際に分級が生じ難い。
【0048】
本発明の粒状リン酸培地の含有水分率は、特に限定されるものではないが、長期保管時の経時変化をなくすためには20重量%以下であることが好ましい。
【0049】
本発明の粒状リン酸培地の使用方法は特に限定されるものではないが、育苗容器に充填して使用することが好ましい。育苗に使用する育苗容器としては、対象作物の苗を育苗できる容器であれば良い。具体的に水稲育苗においては、いわゆる苗箱(内寸法;58cm×28cm×3cm)を例示することができる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
尚、肥料成分等の分析は、農林水産省農業環境技術研究所「肥料分析法(一九九二年版)」((財)日本肥糧検定協会、1992年12月発行)に従い実施した。
また、実施例及び比較例で粒状リン酸培地の製造に用いられた原料の内容は以下の通りである。
1)熔成リン肥:粒径;0.01〜0.5mm、ク溶性リン酸濃度;20.38重量%(内 、水溶性リン酸濃度0.028重量%)、南九州化学工業(株)製
2)コイアダスト:含有水分率;25重量%、粒径;3mm以下、嵩密度;0.13g/m l、pH;6.1、EC;0.5mS/cm、スリランカ産
3)ピートモス:含有水分率;50重量%、粒径;3mm以下、嵩密度;0.12g/ml 、pH;3.6、EC;0.1mS/cm、ラメキュー社製
4)含水ケイ酸アルミニウム:商品名「5号クレー」、目開き0.037mm篩いパス率;
99.99%、竹原化学(株)製
5)黒玉土:含有水分率;32重量%、粒径;2〜4mm、嵩密度;0.85g/ml、 (株)ソイール製
6)硫酸アンモニア:窒素;21.3重量%、新日鐵化学(株)製
7)硫酸第一鉄:硫酸第一鉄・七水和物、Fe含量;18.5重量%、(株)テツゲン製
8)焼成リン肥:粒径;0.01〜0.5mm、ク溶性リン酸濃度;34.0重量%(内、 水溶性リン酸濃度;0.05重量%)、小野田化学工業(株)製
【0051】
実施例1
熔成リン肥を50.0重量%(有姿で87.33kg)、植物性繊維材料としてコイアダストを固形分換算で15.0重量%(有姿で34.93kg)、含水ケイ酸アルミニウムを固形分換算で8.0重量%(有姿で13.97kg)、黒玉土を固形分換算で20.2重量%(有姿で51.89kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.53kg、Fe/P25=0.12)、及び硫酸第一鉄6.5重量%(有姿で11.35kg)の割合で(有姿で合計200kg)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。更に、原料のトータル含有水分率が約28重量%になるように37L加水して、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Aを130kg得た。
【0052】
実施例2
熔成リン肥を35.0重量%(有姿で58.48kg)、植物性繊維材料としてコイアダストを固形分換算で20.0重量%(有姿で44.56kg)、含水ケイ酸アルミニウムを固形分換算で13.0重量%(有姿で21.72kg)、黒玉土を固形分換算で27.7重量%(有姿で68.06kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.5kg)、及び硫酸第一鉄4.0重量%(有姿で6.68kg)の割合で(有姿で合計200kg、Fe/P25=0.10)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。更に、原料のトータル含有水分率が約30重量%になるように37L加水して、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Bを130kg得た。
【0053】
実施例3
熔成リン肥を70.0重量%(有姿で131.71kg)、植物性繊維材料としてコイアダストを固形分換算で8.0重量%(有姿で20.07kg)、含水ケイ酸アルミニウムを固形分換算で5.0重量%(有姿で9.41kg)、黒玉土を固形分換算で7.7重量%(有姿で21.31kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.56kg)、及び硫酸第一鉄9.0重量%(有姿で16.94kg)の割合で(有姿で合計200kg、Fe/P25=0.12)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。更に、原料のトータル含有水分率が約25重量%になるように42L加水して、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Cを130kg得た。
【0054】
比較例1
熔成リン肥を50.0重量%(有姿で80.85kg)、植物性繊維材料としてピートモスを固形分換算で5.0重量%(有姿で16.17kg)、黒玉土を固形分換算で39.7重量%(有姿で94.41kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.49kg)、及び硫酸第一鉄5.0重量%(有姿で8.08kg)の割合で(有姿で合計200kg、Fe/P25=0.09)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。更に、原料のトータル含有水分率が約27重量%になるように17L加水して、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Dを130kg得た。
【0055】
比較例2
熔成リン肥を50.0重量%(有姿で79.16kg)、植物性繊維材料としてピートモスを固形分換算で10.0重量%(有姿で31.66kg)、黒玉土を固形分換算で34.7重量%(有姿で80.79kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.47kg)、及び硫酸第一鉄5.0重量%(有姿で7.92kg)の割合で(有姿で合計200kg、Fe/P25=0.09)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。更に、原料のトータル含有水分率が約28重量%になるように15L加水して、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Eを130kg得た。
【0056】
比較例3
熔成リン肥を20.0重量%(有姿で26.48kg)、植物性繊維材料としてピートモスを固形分換算で30.0重量%(有姿で79.45kg)、黒玉土を固形分換算で44.7重量%(有姿で87.05kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.40kg)、及び硫酸第一鉄5.0重量%(有姿で6.62kg)の割合で(有姿で合計200kg、Fe/P25=0.23)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。そして、原料のトータル含有水分率が最適水分の約34重量%と予測されたため加水せずに、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Fを130kg得た。
【0057】
比較例4
熔成リン肥を50.0重量%(有姿で78.39kg)、植物性繊維材料としてピートモスを固形分換算で15.0重量%(有姿で47.04kg)、含水ケイ酸アルミニウムを固形分換算で3.0重量%(有姿で4.70kg)、黒玉土を固形分換算で26.7重量%(有姿で61.56kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.47kg)、及び硫酸第一鉄5.0重量%(有姿で7.84kg)の割合で(有姿で合計200kg、Fe/P25=0.09)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。更に、原料のトータル含有水分率が約27重量%になるように10L加水して、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Gを130kg得た。
【0058】
比較例5
熔成リン肥を50.0重量%(有姿で83.64kg)、植物性繊維材料としてピートモスを固形分換算で15.0重量%(有姿で50.18kg)、含水ケイ酸アルミニウムを固形分換算で20.0重量%(有姿で33.46kg)、黒玉土を固形分換算で9.7重量%(有姿で23.86kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.50kg)、及び硫酸第一鉄5.0重量%(有姿で8.36kg)の割合で(有姿で合計200kg、Fe/P25=0.09)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。更に、原料のトータル含有水分率が約27重量%になるように24L加水して、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Hを130kg得た。
【0059】
比較例6
焼成リン肥を50.0重量%(有姿で87.15kg)、植物性繊維材料としてコイアダストを固形分換算で15.0重量%(有姿で34.86kg)、黒玉土を固形分換算で28.7重量%(有姿で67.01kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.52kg)、及び硫酸第一鉄6.0重量%(有姿で10.46kg)の割合で(有姿で合計200kg)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。更に、原料のトータル含有水分率が約28重量%になるように37L加水して、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Iを130kg得た。
【0060】
比較例7
焼成リン肥を50.0重量%(有姿で87.15kg)、植物性繊維材料としてコイアダストを固形分換算で15.0重量%(有姿で34.86kg)、含水ケイ酸アルミニウムを固形分換算で8.0重量%(有姿で13.95kg)、黒玉土を固形分換算で20.7重量%(有姿で53.06kg)、硫酸アンモニア0.3重量%(有姿で0.52kg)、及び硫酸第一鉄6.0重量%(有姿で10.46kg)の割合で(有姿で合計200kg)、内部容量が1000Lの羽付きコンクリートミキサーに投入した。更に、原料のトータル含有水分率が約28重量%になるように37L加水して、10rpmの回転速度で20分間混合した。この混合物をディスクダイ式ロール型押出造粒機(型式;F40/33−390、不二パウダル(株)製、ダイス・ノズル径;φ3mm)にて造粒し、熱風温度140℃の流動振動乾燥機(型式;VDF−6000、不二パウダル(株)製)にて粒状リン酸培地の含有水分率が約10重量%になるように乾燥した。乾燥した粒状物を篩い分けし、粒径2〜6mmの粒状リン酸培地Jを130kg得た。
【0061】
(粒子崩壊性試験)
実施例1〜3、比較例1〜7の粒状リン酸培地をそれぞれ2kg、水稲育苗箱(縦28cm×横58cm×深さ3cm)に充填し、全体が飽和状態になるまで十分に潅水した。30分経過後に、潅水時に苗箱内で吸水膨張による凸凹発生の有無を観察した。更に、培地表面を人指し指と中指の2本の指で軽く押し付けるようにしてなぞり、培地粒子の崩壊性を3段階(○;粒子形状が残らず崩壊している △;粒子形状が半分程度残っている ×;粒子形状が崩壊せずにほとんど残っている、図1(写真)参照)に評価した。得られた結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
(水稲育苗試験)
また、実施例1〜3、比較例1〜7の粒状リン酸培地をそれぞれ2kg、水稲育苗箱(縦28cm×横58cm×深さ3cm)に充填し、慣行の土壌消毒液を均一に散布した。被覆窒素・加里肥料 「苗箱まかせ」(商品名、くみあい水稲育苗箱全量施肥専用LPコートNKロング301−100、窒素濃度;30重量%、加里濃度;10重量%、保証成分);650gを均一かつ層状に充填し、全体が飽和状態になるまで十分に潅水した。その上に、水温20℃の水で積算水温120℃(20℃×6日間)として芽出し処理を施した種籾(催芽籾)160gを均一かつ層状に播種した。更にその上に無肥料の粒状培土(いなほ培土、いなほ化工(株)製)1kgを覆土して均一にならし、苗床を作成した。以降の育苗は慣行法に準じて行い、播種後3日目の出芽状況(出芽ムラの有無)を観察し、30日間育苗した後の苗の生育状態(乾物重、草丈、根長、葉色)を観察・測定した。得られた結果を表2に示す。
尚、葉色のSPAD値はミノルタ製葉緑素計SPAD−502の指示値とし、試料中の葉緑素の濃度との相関があり、値が大きいほど濃い葉色を示す。
【0064】
【表2】

【0065】
表1及び写真1から、植物性繊維材料を5〜20重量%含み、熔成リン肥及び植物性繊維材料を50重量%以上含有し、更に硫酸第一鉄を含有する粒状リン酸培地において、該培地中に含水ケイ酸アルミニウムが5〜15重量%含有する粒状リン酸培地を用いた場合(実施例1〜3)、潅水時の苗箱内での吸水膨張による凸凹発生が抑えられ、かつ粒子崩壊性が良好であった。更には表2に示されたように、育苗初期(播種後3日目)の出芽ムラがなく、その後も安定した生育で良好な苗の仕上がりであった。
【0066】
それに対し、植物性繊維材料を30重量%含む比較例3の粒状培地と、含水ケイ酸アルミニウムを20重量%含有する比較例5の粒状リン酸培地を除く粒状リン酸培地(比較例1、2、4)を用いた場合は、潅水時の苗箱内での吸水膨張による凸凹発生が抑えられてはいたものの、粒子崩壊性が悪く、粒子形状を保ったままであった。更には表2からも明らかなように、育苗初期(播種後3日目)の出芽ムラが発生し、35日目の苗の仕上がりにも影響していた。
【0067】
また、植物性繊維材料を30重量%含む比較例3の粒状リン酸培地を用いた場合は、粒子崩壊性は良好であったが、潅水時の苗箱内での吸水膨張による凸凹が発生した。更に、そのことにより苗の根上がりの発生が多く、苗の仕上がりとしては芳しくなかった。
【0068】
また、含水ケイ酸アルミニウムを20重量%含有する比較例5の粒状リン酸培地を用いた場合は、潅水時の苗箱内での吸水膨張による凸凹発生が抑えられ、かつ粒子崩壊性が良好であったが、表2からも明らかなように発芽不良が発生し、育苗時の生育が芳しくなかった(根張りが悪く、葉色が薄い)。
【0069】
更に、熔成リン肥の代わりに焼成リン肥を用いた粒状リン酸培地(比較例6、7)において、含水ケイ酸アルミニウムを添加していない比較例6の粒状リン酸培地を用いた場合、潅水時の苗箱内での吸水膨張による凸凹発生が抑えられてはいたものの、粒子崩壊性が悪く、粒子形状を保ったままであった。更には表2からも明らかなように、育苗初期(播種後3日目)の出芽ムラが発生し、35日目の苗の仕上がりにも影響していた(根張りが悪く、葉色が薄い)。また、含水ケイ酸アルミニウムを8重量%含有する粒状リン酸培地(比較例7)を用いた場合、潅水時の苗箱内での吸水膨張による凸凹発生が抑えられ、かつ粒子崩壊性が良好であったが、表2からも明らかなように、育苗初期(播種後3日目)の出芽ムラが発生し、35日目の苗の仕上がりにも影響していた(根張りが悪く、葉色が薄い)。
【0070】
(育苗された苗の本田での生育確認)
35日間育苗した実施例の苗の中で、熔成リン肥の含量が適量である実施例1の苗を、本田に10アール(a)当り25箱の条件で移植し、栽培を行った。
尚、通常行われている移植前の本田への窒素、リン酸及び加里肥料の施肥、及び移植後のこれら肥料の追肥は一切行わなかった。
その後、順調な生育を示し、収穫時の玄米収量においても例年の慣行栽培並の収穫を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の崩壊型粒状リン酸培地を育苗培土として用いて育苗した場合には、潅水時の苗箱内での吸水膨張による凸凹発生が抑えられ、かつ粒子崩壊性が良好であるため、育苗初期の出芽ムラがなく、良好な苗を栽培することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】粒子崩壊性試験の3段階評価を示す図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、及び(C)含水ケイ酸アルミニウムを含有するリン酸培地であり、その含有重量比が(A):(B):(C)=30〜75:5〜25:5〜15である崩壊型粒状リン酸培地。
【請求項2】
更に、(D)硫酸第一鉄を含有するリン酸培地であり、その含有重量比が(A):(B):(C):(D)中のFe=30〜75:5〜25:5〜15:0.5〜3である請求項1記載の崩壊型粒状リン酸培地。
【請求項3】
(A)熔成リン肥及び(B)植物性繊維材料の含有重量比(A)/(B)が、1.5〜9である請求項1または2記載の崩壊型粒状リン酸培地。
【請求項4】
崩壊型粒状リン酸培地に対する(D)硫酸第一鉄の含有率が、Fe含量として0.5〜3.0重量%であり、かつ崩壊型粒状リン酸培地に含有される(D)硫酸第一鉄由来のFe、及び(A)熔成リン肥由来のP25の含有重量比が、Fe/P25=0.10〜0.20である請求項2または3記載の崩壊型粒状リン酸培地。
【請求項5】
(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、及び(C)含水ケイ酸アルミニウムを含有する混合物、または(A)熔成リン肥、(B)植物性繊維材料、(C)含水ケイ酸アルミニウム、及び(D)硫酸第一鉄、を含有する混合物に、せん断力及び/または圧縮力を加えて得られる造粒物である請求項1〜4のいずれか1項記載の崩壊型粒状リン酸培地。
【請求項6】
(B)植物性繊維材料がコイアダストである請求項1〜5のいずれか1項記載の崩壊型粒状リン酸培地。
【請求項7】
使用前の粒径が、1〜10mmである請求項1〜6のいずれか1項記載の崩壊型粒状リン酸培地。

【図1】
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【公開番号】特開2007−236385(P2007−236385A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8782(P2007−8782)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】