説明

工事用エレベータの乗降用ステージ

【課題】地上階でケージに人員が乗降するのに使用し、また資材を揚げ降ろしする際にはケージの正面に位置する乗降用ステージの一部が側方に動いて、フォークリストがケージに接近して直接に乗せられる工事用エレベータの乗降用ステージを提供すること。
【解決手段】可動デッキ14が、に工事用エレベータ30のケージ32乗降部32aに対峙する正面位置11とこれに隣接する横方向Xの第1の側方位置12aとの間を往復動可能に架台13に支持されている。この可動デッキ14は駆動機構部18により往復移動される。ケージ32に人が乗降する際、可動デッキ14が正面位置方向に動いてその前半分が正面位置を塞いで利用され、資材を積み卸しする際、可動デッキが第1の側方位置方向へ移動してその前半分が正面位置から退去し、正面位置に資材運搬車両が入り込めるスペースをあける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事用エレベータの乗降用ステージに関し、更に詳細には、高さのある建造物を建設する際に上方階に人員および資材などを揚げる工事用エレベータのために地上階に設置される乗降用ステージに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高層の建設物を建築する際などには、上方階に作業者などの人員や資材を運び揚げる工事用のエレベータが仮設されることはよく知られている。一般的な工事用エレベータは、建設物の外壁に支持をとりながら立設されたエレベータポストにガイドされて昇降するケージを備え、このケージに人員を乗せ、或いは資材を積み込んで揚げ降ろしをする。さらに、このような工事用エレベータにおけるケージの昇降機構は、一般的に、ケージの床下面に設置された電動モータと、この電動モータの回転軸に取り付けられた歯車をエレベータポストに取り付けたラックとから構成され、ラックに噛み合わされた歯車を電動モータにより回転することによりケージを昇降させるようにされている。
【0003】
そのため、工事用エレベータのケージ床下面には、電動モータやその回転軸により回転される歯車や、また電動モータの回転を減速させて歯車に伝達する減速ギヤボックスなどの駆動機構が設置されているので、地上階でのケージの停止位置は、ケージの床面が地面から約1000〜1500mmの高さに位置するように設定されていることが多い。従って、このような工事用エレベータでは、地上階で人員がケージに乗降できるように乗降用ステージ、即ちプラットホーム状のデッキが、ケージの地上階停止位置におけるケージ乗降部の正面に仮設されている。
【0004】
地上階で工事用エレベータのケージに乗り込む作業員は、乗降用のステージに設置された4〜7段の階段を使って乗降用ステージ上に昇り、この乗降用ステージからケージに乗り込み、或いは上方階からケージに乗って地上階に降りてくる人員は、ケージが地上階で停止したときその乗降部から乗降用ステージに降りてそこから地面にさらに降りることになる。
【0005】
かかる工事用エレベータでは、人員がケージに乗降する場合には何の問題もないが、ケージに資材を載せて上方階へ運ぶ場合には、乗降用ステージの近傍に資材搬送車両を止め、その荷台から作業者が乗降用ステージに手作業で運び上げ、さらにそれらをケージに載せ替える作業が必要であった。また、上方階から資材などを降ろす場合も手順が逆になるだけでケージから乗降用ステージへの荷下ろしやさらにそこから車両への積み込みなどに人的作業を必要とした。そこで、このような資材のケージへの積み込みや積み卸し作業を容易にするため特許文献1に開示されているような建設工事用エレベータも開発された。特許文献1に開示された建設工事用エレベータは、ケージに小型のクレーンを設置して、ケージと共にクレーンが揚がり下がりするようにしたものである。この建設工事用エレベータによれば、地上階で停止しているケージに、該ケージに設置されているクレーンで資材搬送車両の荷台から資材を吊り上げてケージに載せ替えたり、逆にケージから資材搬送車両の荷台に資材を載せ替えることが容易にできる。
【特許文献1】特開平08−208155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された建設工事用エレベータでは、クレーンがケージに一体的に設置されているためケージ自体の重量が重くなり、そのため駆動トルクの大きな電動モータや、耐久性の大きな歯車およびラックなどが必要となるばかりではなく、ケージの構造も複雑となる。そのため、建設工事用エレベータの仮設に多大な費用が掛かり、また仮設後の維持費用、即ち電力使用量が大きく、これらの費用などが建造物の建築コストを高めると、いう経済的な問題があった。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたもので、地上階でケージに人員が乗降する際には従来通りに乗降用ステージを使用し、ケージに資材を載せて揚げ降ろしする際にはケージの乗降部正面に位置している乗降用ステージの一部が側方に動いて、例えばフォークリストなど資材運搬車両が直接にケージに接近して乗せることが出来るようにした工事用エレベータの乗降用ステージを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、昇降可能なケージの地上階停止位置が地上面より所定高さに設定されている工事用エレベータの前記ケージの乗降部に対峙する正面位置と該正面位置から前記ケージへ乗り込む方向にほぼ直交する横方向で、かつ前記正面位置に隣接する第1の側方位置との間に設置された乗降用ステージであって、その特徴とするところは、該乗降用ステージが、前記正面位置と前記第1の側方位置との間を往復動可能な可動デッキを備え、前記工事用エレベータの前記ケージに前記地上階で人員が乗降する際には、前記可動デッキが、前記第1の側方位置から前記正面位置に移動して前記人員の前記ケージへの乗降に利用され、前記ケージに前記地上階で資材を積み卸しする際には、前記可動デッキが前記第1の側方位置に移動して資材運搬車両が前記ケージの前記乗降部に接近可能としたことにある。
【0009】
本発明の工事用エレベータの乗降用ステージにおける実施形態の一例では、前記可動デッキを前記正面位置と前記第1の側方位置との間を往復動可能に支持するガイド部材が、前記地上階の停止位置ある前記ケージに近接して前記正面位置と前記第1の側方位置との間に延びている。
【0010】
本発明の工事用エレベータの乗降用ステージにおける実施形態の他の例では、前記乗降用ステージが、前記可動デッキを前記ケージの床とほぼ同じ平面内で、かつ前記正面位置と前記第1の側方位置との間を往復移動可能に支持する架台と、該架台に可動に支持された前記可動デッキを前記正面位置と前記第1の側方位置との間で往復移動させる駆動機構部とを含み、前記ガイド部材が、前記架台の構成要素の一部であるガイドレールとされている。
【0011】
本発明の工事用エレベータの乗降用ステージにおける実施形態の他の例では、前記乗降用ステージが、前記正面位置を挟んで前記第1の側方位置とは反対側の第2の側方位置に設置された人員乗降待機用デッキを備え、前記架台に支持された前記可動デッキが、前記第1の側方位置から前記正面位置に移動したとき、前記可動デッキの端部が前記人員乗降待機用デッキの端部により支持されている。
【0012】
本発明の工事用エレベータの乗降用ステージにおける実施形態の他の例では、前記第2の側方位置に設置された前記人員乗降待機デッキには、前記正面位置に対峙する前記横方向を横断する保護柵が設置され、該保護柵は、前記人員乗降待機デッキに形成されたスリットを介して、前記人員乗降待機デッキの内側の格納位置と前記人員乗降待機デッキの表面から立ち上がる立設位置との間で昇降する。
【0013】
本発明の工事用エレベータの乗降用ステージにおける実施形態の他の例では、前記駆動機構部が、前記可動デッキに取り付けられたラックと、前記架台に設置されたモータと、該モータの出力軸により回転力を受けると共に前記ラックに噛み合う歯車とを備えている。
【発明の効果】
【0014】
本発明の工事用エレベータの乗降用ステージによると、人員がケージに乗り降りするときには可動デッキをケージの乗降部に対峙する正面位置に移動し、また、資材をケージに載せたり降ろしたりするときには可動デッキを第1の側方位置に移動してケージの正面位置にフォークリフトを進入させることのできるスペースを作ることができる。そのため、資材をフォークリフトで直接ケージに載せたり降ろしたりすることができ、資材などの荷物をケージに乗せたり降ろしたりする作業時間の短縮やその作業労力の軽減を図ることができる。しかも、このような効果を得るために、ケージには何等かの装置(例えば、クレーン等)を追加設置したりする必要がないので、工事用エレベータは従来のものを使用することができる。その結果、工事用エレベータ仮設費用及び仮設後の維持費用などの抑制を図ることができる。
【0015】
また、本発明の工事用エレベータの乗降用ステージによると、地上階の停止位置あるケージに近接して正面位置と第1の側方位置との間にガイド部材、例えばガイドレールを設置し、このガイド部材により可動デッキを正面位置と第1の側方位置との間を往復動可能に支持するようにしているので、このガイド部材が停止バーとなってフォークリフトなどの資材運搬車両が空間状態となった正面位置に入り込んでケージに接近するとき、誤ってケージに衝突するのを防止することができる。
【0016】
さらに、本発明の工事用エレベータの乗降用ステージによると、ケージの乗降部に対峙する正面位置に隣接する横方向の第1の側方位置に可動デッキを支持する架台を設置し、前記正面位置を挟んで第1の側方位置とは反対側の第2の側方位置に人員乗降待機用デッキを設置し、可動デッキが正面位置に移動してきたときにその先端部が人員乗降待機用デッキの端部により支持されるようにしたので、可動デッキを正面位置で安全に支えることができる。
【0017】
さらにまた、本発明の工事用エレベータの乗降用ステージによると、人員乗降待機用デッキには、該人員乗降用待機デッキの上面から立ち上がった立設位置と人員乗降用待機デッキの下側における格納位置との間を昇降する保護柵が第2の側方位置から正面位置に対峙する横方向を横断して設置されていることから、可動デッキが第1の側方位置に移動しているときやケージが地上階から離れているときの人員の正面位置への進入を防止し、人員への安全を図ることができる。また、本発明の工事用エレベータへの乗降用ステージによると、可動デッキを移動させる駆動機構部が、ラックとモータとから構成されているので、構造が簡単であることから乗降用ステージを容易に仮設又は解体することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の工事用エレベータの乗降用ステージを図に示される好適な実施の形態について更に詳細に説明する。図1ないし図3には、本発明の一実施形態に係る工事用エレベータの乗降用ステージ(以下、乗降用ステージという)10が示されている。図1〜3は、それぞれ同じ実施形態に係る乗降用ステージ10の平面図、正面図、及び側面図である。図1〜3に示される工事用エレベータ30は、周知のものであるので詳細な構造を省略しているが、基本的に、エレベータポスト31が間隔をあけて立設され、それらの間にケージ32が昇降可能に支持されている。また、通常、両エレベータポスト31には、その高さ方向に延びるラック(図示せず)が取り付けられ、ケージ32の床下面に設置した歯車(図示せず)をラックに噛み合わせ、この歯車を電動モータの回転軸で直接回転させるか、減速装置を介して回転することによりケージ32をエレベータポスト31に沿って昇降させるように構成されている。
【0019】
このような工事用エレベータ30では、前述したように、ケージ32の床下面に昇降用の電動モータや減速機構などが取り付けられているため、地上階でのケージ32の停止位置では、ケージ32の床面が地上面G.L.から所定の高さとなる。従って、このような工事用エレベータ30では、地上階で人員がケージ32に乗降できるように乗降用ステージ10が、ケージ32の乗降部32aに対峙する正面位置11と、この正面位置11を挟んで2つのエレベータポスト31の並び方向両側方位置とに渡って仮設されている。便宜的に、2つのエレベータポスト31の並び方向を「横方向」として図1及び図2に矢印Xで示し、正面位置11を挟んで横方向Xにおける両側方位置をそれぞれ第1の側方位置12a及び第2の側方位置12bとする。図1及び図2で見て正面位置11の右側に位置する第1の側方位置12aには、鋼材で組み立てられた架台13が設置されている。
【0020】
架台13は、ケージ32への進入方向に間隔をあけて配置された2本のガイドレール13a,13bと、これらのガイドレール13a,13bを支える複数の支柱13cとから構成されている。ここで、「ケージ32への進入方向」とは、図1及び図3で見て横方向Xにほぼ直交しかつ正面位置11からケージ32に向かって乗降する方向であり、図1、図3及び図4において矢印Yで示されている。各ガイドレール13a,13bは、端面がコ字形をした溝型鋼材で構成され、これら鋼材の溝側を対向させると共に、各鋼材の上面をケージ32の床面とほぼ同じ平面内に位置させるように設置されている。この実施形態では、各ガイドレール13a,13bが端面コ字形の溝型鋼材で構成されているが、この発明ではこの形の鋼材に限定されるものではなく、例えば端面がH型をしたH鋼を用いることもできる。2本のガイドレール13a,13bのうち、ケージ32に近接して配置されたガイドレール13aは、正面位置11と第1の側方位置12aとの間を延び、他のガイドレール13bは、第1の側方位置12aにのみ配置されている。図1に示されるように、第1の側方位置12aにおける横方向Xの幅寸法は、正面位置11における横方向Xの幅寸法Lのほぼ2倍である。
【0021】
架台13を構成する2つのガイドレール13a,13b間には、可動デッキ14が配置されている。可動デッキ14は、図4に示されるようにデッキ部15aと、該デッキ部15aにおけるY方向側の両側縁から垂れ下がるように設けられた側壁部15bとから構成されたデッキ本体15を備え、デッキ本体15の各側壁部15bには、その外方に突出するように3つの支持軸16が横方向Xに所定の間隔をあけて取り付けられ、これら各支持軸16にはそれぞれローラ17が回転可能に支持されている。各側壁部15bに支持されたローラ17は、ガイドレール13a,13bを構成している溝型鋼材の溝内に配置され、これにより可動デッキ14は、ガイドレール13a,13bに沿った横方向Xへ移動することができる。この可動デッキ14では、側壁部15bに対する支持軸16の取付け位置を調整することで、デッキ部15aの表面がガイドレール13a,13bの上面と同一平面に位置決めされているので、デッキ部15aの表面は、地上階所定位置に停止している工事用エレベータ30のケージ32における床面とも同じ平面に位置する。デッキ本体15の横方向Xの寸法は、第1の側方位置12aの横方向寸法と同じ2Lである。従って、可動デッキ14が、第1の側方位置12aに移動しているときには、その第1の側方位置12aに完全に納まることになる。
【0022】
ここで、デッキ本体15の各側壁部15bにそれぞれ3つ支持されている合計6つのローラ17の取付け位置について説明する。デッキ本体15の幅寸法は、正面位置11の幅寸法Lの2倍あるので、可動デッキ14が正面位置11に移動されたとき、デッキ本体15は幅方向Xの前半分(正面位置側の前端部から幅寸法L)だけが第1の側方位置12aから張り出して正面位置11にあり、デッキ本体15の後半分(幅寸法は同様にL)は第1の側方位置12aに残っている。このデッキ本体15の前半分における前端側の各側壁部15bにはそれぞれ1つのローラ17が取り付けられ、後半分の各側壁部15bには横方向Xに間隔をあけて2つのローラ17が取り付けられている。従って、可動デッキ14が動いて、デッキ本体15の前半分が正面位置11に移動したとき、デッキ本体15の前半分の前端部に取り付けられている片側の1つのローラ17のみが1つのガイドレール13bから外れるだけで、他のローラ17は、ガイドレール13a,13bの走行溝内にあってデッキ本体15を支持している。その結果、正面位置11では、1つのガイドレール13aのみでもデッキ本体15の前半分を支持することができる。しかし、このデッキ本体15の前半分に人員が乗るなどしてさらに大きな荷重が掛かった場合のために、デッキ本体15の前半分が正面位置11に移動しているときその前端部が後述する人員乗降待機デッキに連結して支えられる。この支持構造については後述する。
【0023】
このデッキ本体15では、デッキ部15aの裏面に補強リブ15cが横方向Xに所定の間隔をあけて設けられており、各補強リブ15cの端部は各側壁部15bに結合されている。可動デッキ14には、駆動機構部18により正面位置11と第1の側方位置12aとの間を往復移動する駆動力が付与される。駆動機構部18は、可動デッキ14のデッキ本体15に取り付けられたラック18aと、このラック18aに噛み合う歯車18bと、該歯車18bを回転させる電動モータ18cとから構成されている。ラック18aは、デッキ本体15の補強リブ15cに取り付けられ、かつ横方向Xに延びる帯状を呈している。電動モータ18cは、架台13を構成する支柱13aに支持された横梁13dに載置され、その出力軸に歯車18bがラック18aに噛み合うように取り付けられている。これにより電動モータ18cが駆動されると、回転する歯車18bが、噛み合っているラック18aに移動力を付与するので可動デッキ14が横方向Xに動く。
【0024】
前述したように可動デッキ14が第1の側方位置12aから動いてその前半分が正面位置11に移動されると、デッキ本体15の前端側に取り付けられ、かつガイドレール13bの溝内を動く1つのローラ17は、ガイドレール13bから外れることになる。その際、デッキ本体15の前端部を人員乗降待機デッキと共同して支える構造について説明する。人員乗降待機デッキ19は、正面位置11を挟んで第1の側方位置12aとは反対側の第2の側方位置12bに設置されている。この人員乗降待機デッキ19は、正面位置11に移動してきた可動デッキ15に人員を乗り移らせて工事用エレベータ30のケージ32に乗り込ませるためのもので、該人員乗降待機デッキ19は、図1,図2及び図5に示されるように横方向Xに延びる2つの溝型鋼材19aをY方向に並べて配置し、これらの溝型鋼材19aを複数の支柱19bで支持し、鉄板19cを溝型鋼材19aに架け渡すように載せて構成されている。この人員乗降待機デッキ19の正面位置11に対向する端部には、図5に示されるように段部20が形成されている。すなわち、段部20は、各溝型鋼材19aの先端部における上部をL型に切り欠き、切り欠いた下側部分に荷重受け棒20aが溝型鋼材19a間に橋渡しされて構成されている。
【0025】
他方、デッキ本体15の正面位置11に向いた前端部にも段部21が形成されている。具体的には、図6にデッキ本体15の前端部が拡大して示されているようにその前端部下側が逆L字形に切り欠かれ、切り欠かれた上側部分における両側壁部15b間に荷重受け棒21aが固定されて段部21が構成されている。これら両デッキ14,19における各段部20,21の大きさと形状は、デッキ本体15の前端部が人員乗降待機デッキ19の端部に当接したとき、各段部20,21どうしがぴったり噛み合った状態で重なり合うように設計されている。したがって、この時にはデッキ本体15における前端部の段部21が人員乗降待機デッキ19における端部の段部20に乗った状態となるので、正面位置11に移動したデッキ本体15の前半分についてはその前端部とケージ32に沿う縁部がそれぞれ人員乗降待機デッキ19の端部とガイドレール13aとで支持されるので、正面位置11に移動した可動デッキ14の前半分に人員が乗っても強度的に問題を生じることがない。
【0026】
人員乗降待機デッキ19には、該デッキ19に地上から上がり降りするための階段22が正面位置11とは反対側の横方向端部に取り付けられている。また、人員乗降待機デッキ19の表面を形成している鉄板19cには、Y方向に延びるスリット23が形成されていて、このスリット23の直下の格納位置には昇降式の保護柵24が設置され、所定の操作によりこの保護柵24がスリット23から出たり入ったりして、階段22から人員乗降待機デッキ19に昇った人員に対して正面位置11への進入を可能としたり阻止したりして安全が図られている。なお、図1、図2及び図4において、参照符号25は、デッキ本体15の上面においてY方向の片側(工事用エレベータ30とは反対側)に設置された保護柵を示し、また参照符号26は、架台13において第1の側方位置12aに位置する一方のガイドレール13bの上面に設置された保護柵を示している。これらの保護柵25,26は、図1及び図2に示されるように可動デッキ14が正面位置11の方向へ移動したときに図2に示されるように正面側からみて横方向Xにほぼ一列に並ぶように設置されている。さらに、人員乗降待機デッキ19の鉄板19cにもその上面のY方向一側部(工事用エレベータ30とは反対側)に保護柵27が固定的に立てられている。
【0027】
さらにまた、図1〜図3において、参照符号28は、工事用エレベータ30のエレベータポスト31に固定された支え部28a,28bにより支持されたアコーデオン式のシャッター28cを備える開閉扉28を示している。この開閉扉28は、工事用エレベータ30のケージ32が地上階から離れているときに、シャッター28cを図1に仮想線で示されているように広げて工事用エレベータ30を覆い、乗降用ステージ10から人員が誤ってケージ昇降経路に入らないようにする。ケージ32が地上階まで降りてきて停止し、ケージ32から人員が乗降デッキ10に乗り降りする際には図1に実線で示すように一方側にシャッター28cを折り畳んでケージ32の乗降部32aを開放する。
【0028】
次に、この実施形態に係る乗降デッキ10の動作について説明する。図1〜図3は、工事用エレベータ30のケージ32が地上階から離れているときの乗降用ステージ10の状態を示している。通常は、工事用エレベータ30を人員の搬送に使用する場合が多いので、可動デッキ14は、正面位置11の方向に移動しており、従って、可動デッキ14におけるデッキ本体15の前半分は正面位置11にある。そして、工事用エレベータ30のケージ32は地上階から離れているので、開閉扉28のシャッター28cは閉まった状態にあり、また人員乗降待機デッキ19の昇降式保護柵24はスリット23から鉄板19cの上方に立ち上がっており、正面位置11に来ている可動デッキ14へ人員乗降待機デッキ19からの人員が進入するのを阻止している。工事用エレベータ30のケージ32が、上層階から降りてきて地上階の所定位置に停止すると、人員乗降待機デッキ19上に居る保安員が開閉扉28のシャッター28cをあけて、ケージ32の乗降部32aを開放する。シャッター28cが一方側に折り畳まれてケージ32の乗降部32aが開けられると、シャッター28cの折り畳みがセンサー(図示せず)で検知され、人員乗降待機デッキ19に設けられている昇降式保護柵24がその検知信号に基づいてスリット23を介してその下方の格納位置に下降する。これにより、ケージ32に乗っていた人員は、その乗降部32aから可動デッキ14に降り、さらに人員乗降愛機デッキ19を経由して階段22から地上に降りる。また、保護柵24の手前で待機していた乗降待ちの人員は、可動デッキ14へ進入してケージ32に乗り移る。人員を乗せた工事用エレベータ30のケージ32が上昇すると、保安員が開閉扉28のシャッター28cを閉める。シャッター28cが閉められると、これをセンサー(図示せず)が検知し、その検知信号に基づいて人員乗降待機デッキ19の昇降式保護柵24が上昇し、人員乗降待機デッキ19から可動デッキ14への人員の進入が阻止される。
【0029】
次に、工事用エレベータ30のケージ32に資材を載せて上層階へ揚げる場合について説明する。ケージ32が地上階の所定位置に停止すると、保安員は、開閉扉検知用のセンサーのスイッチを切ってからシャッター28cを開ける。そして、可動デッキ14の駆動機構部18を構成している電動モータ18cの駆動スイッチを押してこれを駆動し、可動デッキ14を横方向Xにおける第1の側方位置12aへ向かって移動させる。可動デッキ14は、その後端部が架台13の正面側とは反対側の端部に設置されているセンサー(図示せず)により検知されるか又はリミットスイッチ(図示せず)に当接すると、電動モータ18cの駆動が停止され、可動デッキ14の移動が停止する。これにより可動デッキ14の前半分が正面位置11から退去して第1の側方位置12aに移り、正面位置11にはフォークリフト35などが地上を走行してケージ32に接近することができるスペースができる。
【0030】
これにより、資材36をフォークに乗せたフォークリフト35が、空間状態となった正面位置11に入り込んでケージ32に接近し、そのフォークをケージ32内に直接差し入れて資材36をケージ32の床面に降ろす。なお、架台13を構成しているガイドレール13a,13bのうちの1つは、ケージ32側に位置しているが、フォークリフト35は、このガイドレール13aの手前で停止してフォークを上に上げることでケージ32への資材の積み卸しをすれば、このガイドレール13aが作業の邪魔になることはない。また、このガイドレール13aは、その上面がケージ32の床面とほぼ同じ高さにあるので、フォークリフト35のフォークをそれ以下に下げることはできないので、予めケージ32の床面には、資材36を受けるための適当な受け台(図示せず)が置かれており、フォークをガイドレール13aより下方に下げることなくケージ32に積載できるようにされている。なお、架台13のガイドレール13b上、可動デッキ14の上面、及び人員乗降待機デッキ19の上面に立設された保護保護柵26,25,27は、その位置にかならずなければならないものではなく、ケージ32に積み卸しする資材の大きさによっては、その数を減らし、或いは取り外し可能にできるようにしておくことも好ましい。
【0031】
さらに、1つのガイドレール13aを正面位置11のY方向におけるケージ32側に位置させた効果として、フォークリフト35が空間状態となった正面位置11に入り込んでケージ32に接近するとき、誤ってケージ32に衝突するのを防止する停止バーとして機能していることである。単に、正面位置11にある乗降用ステージ10全体を側方へ移動させて正面位置11を空間状態にした場合、フォークリフト35が工事用エレベータ30のケージ32に接近し過ぎてケージ32に衝突し、その昇降機能に支障を来すとその修復に多大な時間と費用が掛かり工事の遅れを招くことになる。しかし、可動デッキ14をガイドする2つのガイドレール13a,13bのうちのケージ32に近接する側の1つを第1の側方位置12aから正面位置11まで延ばすことより、このガイドレール13aは、可動デッキ14を支持するだけではなく、フォークリフト35が誤ってケージ32に衝突するのを防止する停止バーともなっている。この実施形態では、図3、図7及び図8に示されるように資材36のケージ32への載せ替えにフォークリフト35が使用されているが、この発明ではフォークリフトに限定されるものではなく、例えばトラックなどの貨物車両をバックさせてその荷台をケージ32に接近させ、その荷台からケージ32に荷物や資材を載せ替えることもできる。
【0032】
このようにして工事用エレベータ30のケージ32に資材などを載せた後、重量的に余裕があれば、保安員が可動デッキ14を正面位置11側へ移動させてその前半分で正面位置11を閉めきり、人員乗降待機デッキ19で待機している人員をそのケージ32に同乗させることもできる。
【0033】
上述した実施形態に係る工事用エレベータの乗降用ステージ10によれば、人員がケージ32に乗り降りするときには可動デッキ14をケージ32の乗降部32aに対峙した正面位置11に移動し、また、資材36をケージ32に載せたり降ろしたりするときには可動デッキ14を第1の側方位置12aに移動してケージ32の正面位置11にフォークリフトなどを進入させることのできるスペースを作ることができるので、資材36をフォークリフト35などで直接ケージ32に載せたり降ろしたりすることができる。その結果、資材などの荷物をケージ32に乗せたり降ろしたりする作業時間の短縮やその作業労力の軽減を図ることができる。しかも、このような効果を得るために、ケージ32には何等かの装置(例えば、クレーン等)を追加設置したりする必要がないので、工事用エレベータは従来のものを使用することができ、工事用エレベータ仮設費用及び仮設後の維持費用などの抑制を図ることができる。
【0034】
また、この工事用エレベータへの乗降用ステージ10によると、地上階の停止位置あるケージ32に近接して正面位置11と第1の側方位置12aとの間にガイド部材となるガイドレール13aを設置し、このガイドレール13aにより可動デッキ14を正面位置11と第1の側方位置12aとの間を往復動可能に支持するようにしているので、このガイドレール13aが停止バーとなってフォークリフト35が空間状態となった正面位置11に入り込んでケージ32に接近するとき、誤ってケージ32に衝突するのを防止することができる。
【0035】
さらに、この工事用エレベータへの乗降用ステージ10によると、ケージ32の乗降部32aに対峙する正面位置11に隣接する横方向Xの第1の側方位置12aに可動デッキ14を支持する架台13を設置し、正面位置12aを挟んで第1の側方位置12aとは反対側の第2の側方位置12bに人員乗降待機用デッキ19を設置し、可動デッキ14が正面位置11に移動してきたときにその先端部が人員乗降待機用デッキ19の端部により支持されるようにしたので、可動デッキ14を正面位置11で安全に支えることができる。なお、前述した実施形態では、可動デッキ14が正面位置11に移動してきたときにその先端部を人員乗降待機用デッキ19の端部により支持する構造として、可動デッキ14の先端部に形成した段部21が人員乗降待機用デッキ19の端部に形成した段部20に乗る係合構造としたが、この発明では、このような段部どうしの係合構造に限定されるものではなく、人員乗降待機用デッキ19の端面に凹部を形成しておき、可動デッキ14の先端部を人員乗降待機用デッキ19の端面凹部に嵌合するようにしてもよい。
【0036】
さらに、この工事用エレベータへの乗降用ステージ10によると、人員乗降待機用デッキ19には、該人員乗降用待機デッキ19の上面から立ち上がった立設位置と人員乗降用待機デッキ19の下側における格納位置との間を昇降する保護柵24が第2の側方位置12bから正面位置に向かう横方向Xを横断して設置されていることから、可動デッキ14が第1の側方位置12aに移動しているときの人員の正面位置11への進入を防止し、人員への安全を図ることができる。また、この工事用エレベータへの乗降用ステージ10によると、可動デッキ14を移動させる駆動機構部18が、ラック18aと電動モータ18cとから構成されているので、構造が簡単であることから乗降用ステージ10を容易に仮設しかつ解体することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る工事用エレベータの乗降用ステージを示す平面図である。
【図2】図1に示される乗降用ステージの正面図である。
【図3】図1に示される乗降用ステージの側面図である。
【図4】図1及び図2の4−4線で切断し、架台とこれに支持された可動デッキとを示す断面図である。
【図5】人員乗降待機デッキの正面位置側の一部を示す斜視図である。
【図6】可動デッキの正面位置側の先端部を拡大して示す部分的な斜視図である。
【図7】可動デッキが第1の側方位置に移動して、正面位置にフォークリフトが進入して資材を直接工事用エレベータのケージに積み込んでいる状態を示す図1と同様な平面図である。
【図8】図7に示される工事用エレベータの乗降用ステージの正面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 乗降用ステージ
11 正面位置
12a 第1の側方位置
12b 第2の側方位置
13 架台
13a,13b ガイドレール
14 可動デッキ
15 デッキ本体
15a デッキ部
15b 側壁部
17 ローラ
18 駆動機構部
18a ラック
18c 電動モータ
19 人員乗降待機デッキ
20 人員乗降待機デッキの先端段部
21 デッキ本体の先端段部
30 工事用エレベータ
31 エレベータポスト
32 ケージ
32a ケージの乗降部
35 フォークリフト
36 資材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能なケージの地上階停止位置が地上面より所定高さに設定されている工事用エレベータの前記ケージの乗降部に対峙する正面位置と該正面位置から前記ケージへ乗り込む方向にほぼ直交する横方向で、かつ前記正面位置に隣接する第1の側方位置との間に設置された乗降用ステージであって、
該乗降用ステージが、前記正面位置と前記第1の側方位置との間を往復動可能な可動デッキを備え、
前記工事用エレベータの前記ケージに前記地上階で人員が乗降する際には、前記可動デッキが、前記第1の側方位置から前記正面位置に移動して前記人員の前記ケージへの乗降に利用され、前記ケージに前記地上階で資材を積み卸しする際には、前記可動デッキが前記第1の側方位置に移動して資材運搬車両が前記ケージの前記乗降部に接近可能としたことを特徴とする工事用エレベータの乗降用ステージ。
【請求項2】
前記可動デッキを前記正面位置と前記第1の側方位置との間を往復動可能に支持するガイド部材が、前記地上階の停止位置ある前記ケージに近接して前記正面位置と前記第1の側方位置との間に延びている請求項1に記載の工事用エレベータの乗降用ステージ。
【請求項3】
前記乗降用ステージが、前記可動デッキを前記ケージの床とほぼ同じ平面内で、かつ前記正面位置と前記第1の側方位置との間を往復移動可能に支持する架台と、該架台に可動に支持された前記可動デッキを前記正面位置と前記第1の側方位置との間で往復移動させる駆動機構部とを含み、
前記ガイド部材が、前記架台の構成要素の一部であるガイドレールである請求項2に記載の工事用エレベータの乗降用ステージ。
【請求項4】
前記乗降用ステージが、前記正面位置を挟んで前記第1の側方位置とは反対側の第2の側方位置に設置された人員乗降待機用デッキを備え、前記架台に支持された前記可動デッキが、前記第1の側方位置から前記正面位置に移動したとき、前記可動デッキの端部が前記人員乗降待機用デッキの端部により支持される請求項1〜3のいずれかに記載の工事用エレベータの乗降用ステージ。
【請求項5】
前記第2の側方位置に設置された前記人員乗降待機デッキには、前記正面位置に向かう前記横方向を横断する保護柵が設置され、該保護柵は、前記人員乗降待機デッキに形成されたスリットを介して、前記人員乗降待機デッキの内側の格納位置と前記人員乗降待機デッキの表面から立ち上がる立設位置との間で昇降する請求項4に記載の工事用エレベータの乗降用ステージ。
【請求項6】
前記駆動機構部が、前記可動デッキに取り付けられたラックと、前記架台に設置されたモータと、該モータの出力軸により回転力を受けると共に前記ラックに噛み合う歯車とを備えている請求項3〜5のいずれかに記載の工事用エレベータの乗降用ステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−45322(P2008−45322A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220878(P2006−220878)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)