説明

工事用開閉器

【課題】製品コストを極力抑えると共に検電作業効率を向上させることができる工事用開閉器を提供する。
【解決手段】工事用開閉器11を装柱したとき、検電部60が電柱P側、即ち工事用開閉器11の操作ハンドル22と反対側の側面を向くように、当該検電部60を電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の外周面に設けるようにした。工事用開閉器11の装柱状態において検電部60が電柱P側を向くことにより、当該検電部60に検電器の検知部を接触させる等の検電作業を行いやすくなる。また、検電部60が電柱P側にあることにより、作業者が電柱Pに足場を別途設けて工事用開閉器11の操作ハンドル22側に回り込んで、のけぞるような形で作業する必要がない。さらに、工事用開閉器11に検電器を搭載するようにした場合に比べて、製品コストも極力抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電工事等の際に電柱に仮設置して使用する工事用開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高圧配電線路において電線の張り替え、支持碍子の取り替え、柱上用電気機器等の取り替え等の工事を行う場合、電力会社では需要家に対して安定して電力の供給を行うため、前記工事区間の線路と並列にバイパス線路を付設するようにしている。このバイパス線路を構成するために、電柱の中間には工事用開閉器が仮設置される。この工事用開閉器の投入閉路操作に先立って、当該工事用開閉器に接続された絶縁ケーブルの相順及び充電状況等の点検、即ち検電を行う必要がある。
【0003】
そのため、従来、絶縁ケーブルに検電端子を設けるようにしたもの(例えば、特許文献1参照。)が提案されている。特許文献1に記載の工事用開閉器によれば、検電端子が設けられた絶縁ケーブルを選定して当該工事用開閉器のブッシングに接続すれば、検電作業を行うことが可能となる。しかし、特許文献1に記載の工事用開閉器においては、一般的に使用する検電端子が設けられていない絶縁ケーブルを使用することができなかった。このため、特許文献1に記載の検電端子が設けられた絶縁ケーブルを選定しなければならなかった。
【0004】
一方、工事用開閉器のブッシング部に検電端子を設けるようにしたもの(例えば、特許文献2参照。)も、従来、提案されている。作業者はこの検電端子に検電器の検知部を接触させることにより点検作業を行う。また、工事用開閉器のケースの適宜箇所に検電器を設け、この検電器とブッシングとを引出電線により接続するようにした工事用開閉器も知られている(例えば、特許文献3,4参照。)。
【0005】
この特許文献2〜4に記載の工事用開閉器によれば、検電端子が当該工事用開閉器側のブッシングに設けられているので、当該ブッシングに接続される絶縁ケーブルに検電端子が設けられているか否かにかかわらず、検電作業を行うことが可能となる。即ち、特許文献1に記載の検電端子が設けられた絶縁ケーブルを選定する手間が省ける。
【特許文献1】特開平9−26441号公報
【特許文献2】実開昭59−186919号公報
【特許文献3】実公平6−9386号公報
【特許文献4】実公平6−9387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2に記載の工事用開閉器においては、工事用開閉器を装柱した状態において、検電端子が下方、即ち地面側を向くようにされていた。このため、作業者は上を向きながら、あるいは検電端子をのぞき込むようにして検電作業を行う必要があった。足場の悪い高所でこうした姿勢をとることは困難である。従って、検電作業が行いにくく、検電作業の効率低下の一因となっていた。また、特許文献3,4に記載の工事用開閉器においては、工事用開閉器毎に検電器を搭載して、当該検電器と各検電端子とをそれぞれリード線で接続する構成が採用されている。このため、工事用開閉器の製品コストが増大するという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、製品コストを極力抑えると共に検電作業効率を向上させることができる工事用開閉器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、開閉器ケースの互いに対向する両側壁に貫通支持された各相ブッシングに対してバイパスケーブルをワンタッチで接続可能とした工事用開閉器であって、前記各相ブッシングには、操作ハンドルが設けられた正面壁側又は当該正面壁の反対側に位置する背面壁側のいずれかを向くように検電端子を設けたことを要旨とする。
【0009】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、ブッシングには、操作ハンドルが設けられた正面壁側又は当該正面壁の反対側に位置する背面壁側のいずれかを向くように検電端子が設けられる。一般に、工事用開閉器は、操作ハンドルの操作性を確保するために当該操作ハンドルが正面側を向くように、即ち電柱と反対側を向くように設置される。このため、工事用開閉器を電柱に設置した状態において、検電端子が例えば下方、即ち地面側を向くことはない。従って、作業者は上を向きながら、あるいは検電端子をのぞき込むようにして検電作業を行う必要はない。従って、検電作業効率が向上する。また、例えば工事用開閉器に検電器を搭載して、当該検電器と各検電端子とをそれぞれリード線で接続するようにした場合と異なり、工事用開閉器の製品コストも極力抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製品コストを極力抑えると共に検電作業効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を、工事区間の線路と並列にバイパス線路を付設する際に使用される工事用開閉器に具体化した一実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、工事用開閉器11は装柱装置12を介して電柱Pの中間部に固定される。装柱装置12は、工事用開閉器11を囲うように設けられた四角枠状の開閉器ガード13と、当該開閉器ガード13の電柱固定側に固定されると共に電柱Pの側面に当接する装柱用ブラケット14と、図示しないチェーン及び締付金具からなる締付装置15とを備えている。また、開閉器ガード13の上部中央には単一の吊り金具16(本実施形態では、アイボルト)が設けられている。この吊り金具16を介して工事用開閉器11は吊り上げられ、前記チェーンを電柱に巻回して締付金具を締付けることにより当該工事用開閉器11は電柱Pに固定される。
【0012】
図1及び図6に示すように、工事用開閉器11は直方体状の開閉器ケース21を備えている。この開閉器ケース21の互いに対向する両側壁のうち一方の側壁には、当該開閉器ケース21に収容された図示しない開閉部を開閉操作するための操作ハンドル22が設けられている。この操作ハンドル22が電柱Pと反対側に位置するように、工事用開閉器11は装柱される。以下、操作ハンドル22が設けられた側を正面側という。また、操作ハンドル22が設けられた側壁を正面壁といい、当該正面壁の反対側に位置する側壁を背面壁という。
【0013】
前記開閉器ケース21において、操作ハンドル22が設けられている正面壁に直交し且つ互いに対向する一対の側壁には、それぞれ電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24が3相各相毎に相対するように貫通支持されている。以下、正面壁に直交し且つ互いに対向する一対の側壁をそれぞれ側面壁という。3相各相の電源側ブッシング23及び同じく負荷側ブッシング24は、工事用開閉器11の装柱状態において、それぞれ垂直方向、即ち電柱Pの軸線方向において並ぶように設けられている。また、図6に示すように、工事用開閉器11を正面側から見たとき、各電源側ブッシング23及び各負荷側ブッシング24は、それぞれ開閉器ケース21の同相間方向における中心を通り且つ前記側面壁に平行をなす平面を基準とする面対称となるように設けられている。このため、単一の吊り金具16で工事用開閉器11をバランス良く安定して吊り上げることができる。電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24はそれぞれエポキシ樹脂により形成されている。
【0014】
図2及び図3に示すように、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の外周面にはそれぞれ鍔状のフランジ25が形成されている。このフランジ25の表面には亜鉛メタリコン処理(溶射めっき)が施されている。電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の外端部には金属製のブッシング取付け金具26がそれぞれ外方から挿通されている。そして、ブッシング取付け金具26の外方から当該ブッシング取付け金具26を貫通するようにボルトB(図1参照)を挿通し、当該ボルトBを開閉器ケース21に対して締付けることにより、フランジ25はブッシング取付け金具26により開閉器ケース21側へ押圧される。このようにして、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24はそれぞれ開閉器ケース21の側面壁に支持固定されている。
【0015】
また、電源側ブッシング23の外周面及び負荷側ブッシング24の外周面には、それぞれ検電時に使用される検電部60が設けられている。各検電部60は、開閉器ケース21の操作ハンドル22が設けられた正面壁と反対側の背面壁側を向くように設けられている。即ち、工事用開閉器11を装柱したとき、各検電部60は電柱Pを向く。この検電部60については、後に詳述する。
【0016】
<ワンタッチ接続のための構成>
図2及び図3に示すように、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24にはそれぞれ導電棒27が挿通固定されており、当該導電棒27の外端部にはチューリップ状のソケット28が固定されている。これら電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24にはそれぞれバイパスケーブル31をワンタッチで接続可能とされている。即ち、図2に示すように、電源側ブッシング23の外端部及び負荷側ブッシング24の外端部には、それぞれ当該電源側ブッシング23の外端部及び負荷側ブッシング24の外端部を覆うように開閉器側コネクタ41が設けられている。この各開閉器側コネクタ41には、それぞれバイパスケーブル31の先端部に取付けられたケーブル側コネクタ32が接続される。このケーブル側コネクタ32と開閉器側コネクタ41とは雄雌の関係にある。ケーブル側コネクタ32には電源側ブッシング23の外端部及び負荷側ブッシング24の外端部を内嵌可能とした凹部33が形成されている。凹部33の内底面には前記ソケット28に嵌入可能とされた棒状のケーブル側接続導体34が突出している。また、ケーブル側コネクタ32の先端側の外周面には環状のロック溝35が形成されている。
【0017】
図2及び図3に示すように、開閉器側コネクタ41は、ブッシング取付け金具26の外面に固定された筒状の雌ねじ部材42と、当該雌ねじ部材42に外方から螺合されると共に両端が開口した筒状の固定スリーブ43とを備えている。固定スリーブ43の中間部には、複数の球保持孔44が当該固定スリーブ43の周方向において所定間隔毎に形成されている。各球保持孔44内にはそれぞれ鋼球45が固定スリーブ43の半径方向に移動可能に装入されている。鋼球45の外径は固定スリーブ43の肉厚よりも大きく設定されている。固定スリーブ43の内周面において、各球保持孔44よりも基端側には環状の段部46が形成されている。また、固定スリーブ43の先端外周面には環状のばね受け突部47が形成されている。
【0018】
固定スリーブ43の基端側における内部には環状のばね受け部材48が固定されている。また、固定スリーブ43内におけるばね受け部材48よりも先端側には、一端が開口した有底筒状のスライドカラー49が固定スリーブ43の軸線方向において摺動可能に配置されている。スライドカラー49は、固定スリーブ43の球保持孔44を内側から閉鎖する非ロック位置(図2参照)と、同じく球保持孔44を固定スリーブ43内に開放するロック位置(図3参照)との間を移動する。
【0019】
ばね受け部材48とスライドカラー49の内底面との間には、圧縮コイルばね50が装着されている。スライドカラー49は圧縮コイルばね50の弾性力により固定スリーブ43の先端側(図2及び図3における右側)へ常時付勢されている。スライドカラー49の開口端縁には固定スリーブ43内周面の段部46に係合可能とした環状の係止フランジ51が形成されており、この係止フランジ51が固定スリーブ43内周面の段部46に内方から係合することにより、スライドカラー49の固定スリーブ43の先端側への移動が規制される。
【0020】
図2及び図3に示すように、固定スリーブ43には、円筒状のロックスリーブ52が当該固定スリーブ43の軸線方向に摺動可能に挿通されている。ロックスリーブ52の内周面には、ばね受け段部53が形成されている。このばね受け段部53と前記固定スリーブ43のばね受け突部47との間には圧縮コイルばね54が装着されている。ロックスリーブ52は圧縮コイルばね54の弾性力により固定スリーブ43の基端側(図2及び図3における左側)へ常時付勢されている。ロックスリーブ52の固定スリーブ43基端側への移動は、当該ロックスリーブ52が雌ねじ部材42の先端に当接することにより規制される。また、ロックスリーブ52の内周面において、ばね受け段部53よりも固定スリーブ43基端側には、鋼球45を受け入れる複数の玉受け凹部55が形成されている。各玉受け凹部55はそれぞれ固定スリーブ43の各球保持孔44に対応するように配置されている。
【0021】
さて、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24にバイパスケーブル31を接続する際には、まず固定スリーブ43内にケーブル側コネクタ32を挿入する。すると、このケーブル側コネクタ32によりスライドカラー49が圧縮コイルばね50の弾性力に抗して内方へ押される。そして、ケーブル側コネクタ32のロック溝35と固定スリーブ43の球保持孔44とが対応する位置までケーブル側コネクタ32が挿入されると、鋼球45はロック溝35に落ち込んで係合する。同時に、鋼球45とロックスリーブ52の玉受け凹部55との係合が解除され、ロックスリーブ52は圧縮コイルばね54の弾性力により固定スリーブ43の基端側へ移動する。これにより、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24それぞれのソケット28とケーブル側接続導体34との電気的な接続関係が拘束される。このように、開閉器側コネクタ41にケーブル側コネクタ32を差し込むだけで、即ちワンタッチで電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24に対してバイパスケーブル31を接続可能となっている。一方、このロック状態からロックスリーブ52を圧縮コイルばね54の弾性力に抗して固定スリーブ43の先端側へスライドさせることにより、鋼球45が玉受け凹部55内に逃げてケーブル側コネクタ32の抜取りが可能となる。
【0022】
<検電部>
次に、検電部60の構成を詳細に説明する。図4に示すように、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24のフランジ25には両端が開口した筒状の中間電極61が導電棒27と同心状に埋設されている。また、フランジ25の外周面における操作ハンドル22と反対側には、検電作業時に使用される検電部60が設けられている。検電部60はフランジ25の外周面に突設された円柱状の支持部62を備えており、当該支持部62の中央には雌ネジ部材63が埋設されている。雌ネジ部材63は導電性を有する金属材料により形成されており、当該雌ネジ部材63の先端部は中間電極61の外周面にろう付けされている。雌ネジ部材63の先端部とは反対側の端部である雌ねじ開口端面は支持部62の先端面と面一になっている。
【0023】
雌ネジ部材63の先端面には絶縁部材64がブッシング取付け金具26の側部を貫通して固定されている。即ち、ブッシング取付け金具26の側部には貫通孔26aが形成されており、当該貫通孔26aに絶縁部材64が外方から挿通されている。絶縁部材64は絶縁性及び撥水性を有するシリコンゴムにより形成されており、当該絶縁部材64の外端部の外周面には、鍔状のフランジ部64aが一体形成されている。このフランジ部64aの外径は貫通孔26aの内径よりも大きく設定されている。また、絶縁部材64には黄銅製の規制管65が挿通固定されている。そして、この規制管65の外方から検電端子及び端子部材としての端子ボルト66を挿通して前記雌ネジ部材63に締付けることにより、絶縁部材64は支持部62に固定されている。端子ボルト66はステンレス鋼鋼材等の導電性を有する金属材料により形成されている。
【0024】
絶縁部材64の上面と端子ボルト66の頭部との間には、ばね座金67及び平座金68が介装されている。ばね座金67及び平座金68はそれぞれステンレス鋼鋼材等の導電性を有する金属材料により形成されており、当該平座金68の外径はフランジ部64aの外径とほぼ同様とされている。また、前記フランジ部64aと貫通孔26a周縁部との間にはリング部材70が介装されている。リング部材70はステンレス鋼鋼材等の導電性を有する金属材料により形成されており、ブッシング取付け金具26に密接している。端子ボルト66の雌ネジ部材63への締付けに伴う螺入方向への移動は、当該端子ボルト66の頭部がばね座金67及び平座金68を介して規制管65の上端に当接することにより規制される。絶縁部材64により端子ボルト66とブッシング取付け金具26との絶縁が確保される。
【0025】
<端子キャップ>
検電部60の非使用時において、当該検電部60には導電ゴム製の端子キャップ71が装着される。端子キャップ71には、検電部60におけるブッシング取付け金具26の外面からの突出部位の全体を外方から覆うことができるように、端子収容部71aが開口形成されている。検電部60に端子キャップ71を装着した状態において、端子収容部71aの内周面とリング部材70の外周面、端子ボルト66の頭部及び平座金68の外周面とが密接するように、当該端子収容部71aは形成されている。また、検電部60に端子キャップ71を装着した状態において、端子キャップ71の開口端面がブッシング取付け金具26の外面に密接するように、当該端子キャップ71は形成されている。従って、端子キャップ71を検電部60に装着した状態において、前記中間電極61は、雌ネジ部材63、端子ボルト66、ばね座金67、平座金68、端子キャップ71、リング部材70、ブッシング取付け金具26、ボルトB及び開閉器ケース21を介してアース接地される。図1に示すように、工事用開閉器11の電源側及び負荷側において、各相の端子キャップ71は互いに紐72により連結されている。これにより、検電時における端子キャップ71の落下防止が図られる。
【0026】
<実施形態の作用>
次に、前述のように構成した工事用開閉器における検電作業について説明する。
工事用開閉器11は無停電工法のバイパス線路のスイッチとして使用される。工事区間の線路に対して並列をなすバイパス線路への工事用開閉器11の接続は専用のバイパスケーブル31により行われる。電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24とバイパスケーブル31との接続は、開閉器側コネクタ41にケーブル側コネクタ32を挿入することにより行われる。このように、工事用開閉器11とバイパスケーブル31との接続はワンタッチで簡単に行われる。
【0027】
バイパス線路に通電する場合、工事用開閉器11の両端の電圧が規定値以上であることと、同じく両端の位相が同相であることとを確認した上で、即ち検電した上で工事用開閉器11の開閉部が投入される。この工事用開閉器11の投入は作業者が操作ハンドル22を操作することにより行われる。検電を行う際には、まず端子キャップ71を取り外す。この状態で、検電器の検知部を端子ボルト66の頭部に接触させることにより、工事用開閉器11の両端の電圧及び位相がそれぞれ検出される。これらの検出結果は、検電器の表示器に表示される。作業者はその表示を目視で確認し、すべて正常の場合に工事用開閉器11を投入操作する。
【0028】
検電電圧は、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の高圧充電部である導電棒27と中間電極61との間に発生する。この導電棒27と中間電極61との間に発生する電圧は、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24における導電棒27と中間電極61との間のエポキシ樹脂の静電容量C1(図5参照)と、同じく中間電極61とアースE(フランジ25表面の亜鉛メタリコン処理層)との間のエポキシ樹脂の静電容量C2(図5参照)との比により決定される。
【0029】
中間電極61を導電棒27に近づけるほど、導電棒27と中間電極61との間に発生する電圧は高くなり、同じく遠ざけるほど導電棒27と中間電極61との間に発生する電圧は低くなる。即ち、中間電極61を導電棒27に近づけるほど静電容量C1は増大する一方、静電容量C2は減少する。このため、静電容量C2と、中間電極61と検電器(検電回路)との間の静電容量C3(図5参照)との合成静電容量が減少する。合成インピーダンスが上昇することにより、検電電圧も上昇する。検電電圧が上昇すると検電の感度が向上する。
【0030】
本実施形態においては、中間電極61はフランジ25に埋設されている。このため、中間電極61を例えば電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の外周面に巻回するように設けた場合と異なり、当該中間電極61と導電棒27との距離が電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の外径により制限されることがない。従って、中間電極61と導電棒27との距離の短縮化が図られ、より高い検電電圧が得られる。また、中間電極61がフランジ25に埋設されていることにより、当該中間電極61のフランジ25に対する位置が変動することがない。このため、各静電容量C1,C2,C3の変動も抑えられ、安定して電圧及び位相の測定が可能となる。
【0031】
<実施形態の効果>
従って、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)工事用開閉器11を装柱したとき、検電部60(正確には、端子ボルト66の頭部)が電柱P側、即ち工事用開閉器11の操作ハンドル22と反対側である背面壁側を向くように、当該検電部60を電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の側面に設けるようにした。工事用開閉器11は、操作ハンドル22の操作性を確保するために当該操作ハンドル22が正面側を向くように、即ち電柱と反対側を向くように設置される。このため、工事用開閉器11の装柱状態において検電部60が電柱P側を向くことにより、当該検電部60の端子ボルト66頭部に検電器の検知部を接触させる等の検電作業を行いやすくなる。
【0032】
即ち、検電部60が電柱P側にあることにより、作業者が電柱Pに足場を別途設けて工事用開閉器11の正面側、即ち操作ハンドル22側に回り込んで、のけぞるような形で作業する必要がなく、電柱Pに登った状態で検電作業を行うことができる。また、工事用開閉器を装柱した状態において、検電部60が例えば下方、即ち地面側を向くような場合、作業者は上を向きながら又は検電部60をのぞき込むようにして検電作業を行う必要がある。足場の不安定な高所において、このような上向き姿勢をとることは困難であり、作業性も悪い。本実施形態によれば、こうした無理な姿勢をとる必要はなく、作業姿勢の点において改善される。従って、検電作業効率を向上させることができる。さらに、例えば工事用開閉器11に検電器を搭載して、当該検電器と各検電部60の端子ボルト66とをそれぞれリード線で接続するようにした場合と異なり、工事用開閉器11の製品コストも極力抑制される。
【0033】
(2)検電部60(正確には、端子ボルト66)は、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24のそれぞれの外周面に突出して設けるようにした。このため、検電器の検知部を接触させやすく、検電作業効率がいっそう向上する。また、ほこりも溜りにくい。
【0034】
(3)検電部60の非使用時には、当該検電部60(正確には、端子ボルト66の頭部)を覆うように端子キャップ71を装着するようにした。このため、検電部60の防塵が図られると共に汚損が抑制される。
【0035】
(4)工事用開閉器11側に検電部60を設けるようにしたので、バイパスケーブル31に検電端子がなくても検電を行うことができる。検電端子が設けられたバイパスケーブルを選定するといった手間が省ける。
【0036】
(5)端子ボルト66とブッシング取付け金具26(アース)との絶縁を確保するフランジ部64aを、絶縁性及び撥水性を有するシリコンゴムにより形成した。このため、少雨時においても検電の実施が可能となる。
【0037】
(6)端子キャップ71を導電ゴムにより形成し、当該端子キャップ71を検電部60に装着することにより端子ボルト66をリング部材70及びブッシング取付け金具26を介してアース接地するようにした。即ち、端子キャップ71は、検電部60の汚損を防止するための部材と、端子ボルト66のアースを確保する部材とを兼用する。このため、部品点数の低減に寄与する。
【0038】
(7)フランジ25の外周面には亜鉛メタリコン処理を施し、これにより静電容量C2を確保するようにした。このため、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の外側に金属製の接地部材等を設けるようにした場合に比べて、当該電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の外側に設ける金属部品点数を低減することができる。また、接地部材等を電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24にボルト等で組付けるようにした場合と異なり、製造が簡単である。
【0039】
(8)検電部60を電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24のフランジ25に設けるようにした。このため、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の外端部において、開閉器側コネクタ41の組付けの邪魔になることはない。また、電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24を開閉器ケース21に固定するブッシング取付け金具26を利用して端子ボルト66のアースをとることも容易である。
【0040】
(9)工事用開閉器11を装柱した状態において、3相各相の電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24がそれぞれ垂直方向において並ぶようにした。このため、各検電部60が他相の電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24の影になることがなく、全て同じ側、即ち電柱P側に露出する。このため、検電作業がいっそう簡単になる。
【0041】
(10)ブッシング取付け金具26の側部に絶縁部材64を挿通して、端子ボルト66、ばね座金67及び平座金68により検電部60を組立形成するようにした。このため、ブッシング(電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24)に新たに検電部を設ける必要がなく、工事用開閉器11を小型にできる。
【0042】
(11)ブッシング取付け金具26の外面に開閉器側コネクタ41を、組立形成するようにした。このため、工事用開閉器11にコネクタ接続用スリーブを設ける必要がなく、工事用開閉器11を小型にできる。
【0043】
(12)工事用開閉器11を正面側から見たとき、各電源側ブッシング23及び各負荷側ブッシング24は、それぞれ開閉器ケース21の同相間方向における中心を通り且つ前記側面壁に平行をなす平面を基準とする面対称となるように設けた。このため、開閉器ガード13の上部中央に単一の吊り金具16を設けるだけで工事用開閉器11をバランス良く安定して吊り上げることができる。
【0044】
<別の実施形態>
尚、前記各実施形態は、次のように変更して実施してもよい。
・本実施形態において、工事用開閉器11の操作ハンドル22が設けられた正面壁側を向くように、検電部60(正確には、端子ボルト66)を電源側ブッシング23及び負荷側ブッシング24にそれぞれ設けるようにしてもよい。このようにしても、例えば検電部60が下方を向くようにした場合に比べて、検電作業が実施しやすくなる。特に高所作業車等より検電作業を行う場合、操作ハンドル22が設けられた正面壁側を向くように、検電部60を設けるようにした方が作業は容易になる。なお、各電源側ブッシング23及び各負荷側ブッシング24において、検電部60は、操作ハンドル22が設けられた正面壁側又は反対側の背面壁側のいずれかを向くようにそれぞれ一つずつ設ければよい。正面壁及び背面壁側の両側を向くように検電部60を設けること、即ち各電源側ブッシング23及び各負荷側ブッシング24にそれぞれ一対の検電部60を設けることは可能であるが、製造コストが上がるため必要としない。
【0045】
・本実施形態においては、検電部60(正確には、端子ボルト66)の軸線が電柱Pの軸線に直交するように当該検電部60を設けるようにしたが、次のようにしてもよい。即ち、検電部60の軸線が電柱Pの軸線と直交しないような斜め上又は斜め下を向くように当該検電部60を設ける。このようにしても、検電部60が例えば下方を向いている場合に比べて、検電作業が行いやすくなる。
【0046】
<別の技術的思想>
次に、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
(イ)前記電源側ブッシング及び負荷側ブッシングにそれぞれ形成されたフランジを外側から開閉器ケースに固定するブッシング取付け金具を備え、前記検電端子は、前記各ブッシングの内部に設けられた中間電極に電気的に接続されると共に前記ブッシング取付け金具を貫通して外部に露出した端子部材と、前記端子部材とブッシング取付け金具との絶縁を確保する絶縁部材とを備えた請求項1に記載の工事用開閉器。
【0047】
(ロ)前記端子部材はブッシングに螺合された導電性を有する端子ボルトであり、当該端子ボルトによって前記電源側ブッシング及び負荷側ブッシングのそれぞれの表面に締付けられる絶縁部材と、当該絶縁部材により前記ブッシング取付け金具に圧接される導電性を有するリング部材とを備え、前記検電端子を覆うように装着される導電性を有する端子キャップを備え、当該端子キャップを検電端子に装着したとき、当該端子キャップが前記端子ボルト及びリング部材にそれぞれ接触することによりアースをとるようにした前記(イ)項に記載の工事用開閉器。
【0048】
(ハ)装柱状態において、3相のブッシングが垂直方向に並ぶようにした請求項1、前記(イ)項及び前記(ロ)項のうちいずれか一項に記載の工事用開閉器。
(二)前記検電端子は、ブッシング取付け金具の外周面に突出して設けるようにした前記(イ),(ロ),(ハ)項のうちいずれか一項に記載の工事用開閉器。この構成によれば、検電端子はブッシング取付け金具の外周面から突出するので、検電器の検知部を接触させやすい。このため、検電作業効率がいっそう向上する。
【0049】
(ホ)前記検電端子を覆うように装着される端子キャップを設けた請求項1に記載の工事用開閉器。この構成によれば、検電端子の非使用時には、当該検電端子を覆うように端子キャップが装着される。このため、検電端子の汚損が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態における装柱状態の工事用開閉器の正面図。
【図2】同じくバイパスケーブル未装着状態のブッシングの正断面図。
【図3】同じくバイパスケーブル装着状態のブッシングの正断面図。
【図4】図2における1−1線要部断面図。
【図5】本実施形態における電源側ブッシング及び負荷側ブッシングの静電容量等価回路図。
【図6】同じく操作ハンドル側から見た工事用開閉器の側面図。
【符号の説明】
【0051】
11…工事用開閉器、21…開閉器ケース、22…操作ハンドル、
23…電源側ブッシング、24…負荷側ブッシング、25…フランジ、
26…ブッシング取付け金具、31…バイパスケーブル、61…中間電極、
64…絶縁部材、66…端子ボルト(検電端子、端子部材)、70…リング部材、
71…端子キャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉器ケースの互いに対向する両側壁に貫通支持された各相ブッシングに対してバイパスケーブルをワンタッチで接続可能とした工事用開閉器であって、
前記各相ブッシングには、操作ハンドルが設けられた正面壁側又は当該正面壁の反対側に位置する背面壁側のいずれかを向くように検電端子を設けたことを特徴とする工事用開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−32212(P2006−32212A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−211723(P2004−211723)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000102636)エナジーサポート株式会社 (51)
【Fターム(参考)】