説明

工作機械で加工品をフライス加工することにより、歯のフランクを形成するための制御データを発生する方法および装置

【課題】歯切り後のフランク(歯面)の再加工を不要にすること
【解決手段】本発明は、発生された制御データに基づき、工作機械上でフライスカッターを連続的に通過させることにより、少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械上で、特に汎用工作機械上で、加工品をフライス加工することにより、歯のフランクを形成するための制御データを発生する方法および装置であって、歯のフランクの幾何学的形状を予め定めるステップと、前記予め定められた歯のフランク上の接触パターンを定めるステップと、記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状をを修正するためのパラメータを定めるステップと、前記特定された接触パターンエリアおよび前記定められたパラメータによって修正された歯のフランクの幾何学的形状が定められた接触パターンエリアに応じて制御データを発生するステップを備える方法および装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発生された制御データに基づき、工作機械でフライスカッターを連続的に通過させることにより、少なくとも5本の軸を有する数値制御工作機械、特に汎用工作機械で加工品をフライス加工することにより、歯のフライスを形成するための制御データを発生する方法および装置に関する。
【0002】
特に本発明は、少なくとも5本の軸を有する数値制御式汎用工作機械、例えばフライス盤、汎用フライス盤またはマシニングセンターにおいて、加工品をフライス加工することにより、歯のフランク(歯面)を形成するための制御データを発生する方法および装置に関し、ここで、特に加工品から材料を除去し、歯のフランクを製造するよう、制御データによって定められる機械加工経路に沿って工作機械のフライスカッターを連続的に通過させることにより、所定の歯のフランクの幾何学的形状に従い、歯のフランクを制御するようになっている。
【0003】
更に本発明は、歯集合体のデータを予め定めるステップと、所定の歯集合体のデータに基づいて定められた歯のフランクの幾何学的形状を計算するステップを含む、所定の歯集合体のデータに基づき加工品のモデルを計算するステップと、加工品上で歯集合体の歯のフランクを形成するための制御データを発生するステップを含む、加工品を製造するための制御データを発生するステップとを備える、歯集合体を有する加工品を製造するための制御データを発生する方法および装置にも関する。
【0004】
更に本発明は、工作機械が特に制御データを発生するための装置を含み、発生された制御データに基づき、工作機械でフライスカッターを連続的に通過させることにより、加工品をフライス切削するための少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械、特に汎用工作機械、例えばフライス盤、汎用フライス盤、またはマシニングセンターにも関する。
【0005】
最後に本発明は、制御データを発生するための装置が創出されるよう、データ処理デバイスのデータ処理手段によって処理されるようになっているコマンドに対応するあるステートのシーケンスとして、記憶メディア上にコンピュータプログラムをセーブするコンピュータプログラム製品にも関する。
【背景技術】
【0006】
特殊な歯切り盤にて、すなわち特殊な単一目的の機械にて、歯車または他の歯付き加工品をどのように製造するかについては、従来技術から一般に知られている。例えば加工品内で歯のフランク、すなわち歯を形成するようにプロフィルフライスカッターまたはプロフィル付き研削ホイールを制御するようになっている加工品上で歯のプロフィルを製造できる特殊なギアフライス盤が知られている。歯切り工具またはプロフィル付きディスクは、加工品上の仕上がった歯のフランクの所望するプロフィル形状に対応する横断面形状を予め有している。加工品を通過する経路に沿って歯切り工具またはプロフィル付きディスクを制御するので、1つまたは2つの対向する歯のフランクが製造され、このフランクのプロフィルは工具の形状に対応する。
【0007】
更に、同じように単一目的の機械としてみなされ、例えばクリンゲルンベルグ、グリーソンまたはエルリコン方法に従い、フライスカッター工具を使ってギア歯上に歯集合体を製造するようになっている従来の歯切り盤も知られている。この方法でも、フライス加工カッター工具のブレードエッジの形状により、歯のフランクの将来の形状を定めるようになっている。
【0008】
加工品上で歯集合体を製造するための上記の公知の方法には、加工品を処理した後に、更に加工品を後処理しなければならないという欠点がある。例えば特定の負荷のもとで歯が形成された加工品の作動挙動を最適にするのに必要な接触パターンのモデル化および/または最適化を行うには、所望する接触パターンに従い、加工品上の歯集合体のうちの歯のフランクを再加工しなければならないという別の作業ステップが更に必要となる。このような作業は、マニュアルまたは別の工作機械で行うことになる。
【0009】
例えば国際公開WO2008/045572A1は、歯のフランクの幾何学的形状を修正し、所望する接触パターンの挙動が得られるよう、歯のフランクのその後の再加工のために歯集合体を有する加工品をこのように再加工することについて述べている。この国際公開WO2008/045572A1の教示内容によれば、この再加工はラッピング加工を使って実行されるが、かかる再加工は、例えば研削または他の精密研削によって行うこともできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、この種の再加工は、極めて時間がかかり、更に負荷がかかった状態または無負荷状態で歯集合体の接触パターンを検査しなければならず、このパターンが所望する接触パターンにまだ対応しない場合、更に歯のフランクの再加工を実行しなければならない。
【0011】
しかしながら、本発明は、加工品上で歯のフランクを形成するよう、連続するフライス加工の経路を通して特定の処理ステップにおいてエンド半径を有するか、または有しないエンドフライスカッターのような標準的フライスカッターにより、歯集合体を加工品上に製造するようになっている少なくとも5本の軸を有する数値制御式汎用工作機械、例えばフライス盤、汎用工作機械またはマシニングセンターにて歯付き加工品を製造するための新規に開発された方法に関する。上記のような従来の単一目的の歯切り盤で、歯付き加工品を製造することと対照的に、本発明は汎用工作機械、例えばフライス盤、汎用フライス盤またはマシニングセンターにて、歯集合体を形成しようとするものである。
【0012】
例えばカールハンザ出版社によって出版された雑誌「ワークショップおよび記号」(ミュンヘン、2007年版、No.4/28、28〜32ページ、ISSN0043〜2792)で発表された、Hans−Peter Schossig氏による論文「標準的工作機械で高品位の歯/ギアホイールを研削するための簡単な手段」および国際公開WO2008/133517A1には、汎用工作機械で歯付き加工品を上記のように製造する方法が記載されている。本発明のスタートポイントは、このように新規に開発された方法およびその改良にあり、これら方法は本願出願人(例えばドイツ特許出願第DE10 2009 008 124号参照)によって開発されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来技術から公知の上記方法に対して、本発明の目的は、少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械上で、特に汎用工作機械、例えばフライス盤、汎用フライス盤またはマシニングセンター上で、歯付き加工品を処理し、および/または製造することを簡略化し、加工品をフライス加工するためのオプションを拡張し続けることにある。特に本発明の1つの目的は、発生される制御データに基づき、加工品上で歯のフランクを連続的な、および/または特定のフライス加工をすることにより、工作機械上、特に汎用工作機械上で歯付き加工品を製造するための新規に開発された方法の可能性を拡張する、制御データを発生するための方法およびデバイスを定めることにある。特に本発明の別の目的は、加工品の少なくとも1つの歯のフランクを所望する接触パターンで簡単かつ効率的に製造するような歯付き加工品の製造を可能にすることにある。
【0014】
本発明のためにこれまで説明した課題を解決するために、請求項1に記載の歯のフランクを形成するための制御データを発生する方法、請求項20に記載の歯付き加工品を製造するための制御データを発生する方法、請求項21に記載の歯のフランクを形成するための制御データを発生するための装置、請求項22記載の歯付き加工品を製造するための制御データを発生する装置、請求項23に記載の少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械、請求項24に記載のコンピュータプログラム製品が提案される。従属項には本発明の好ましい実施形態の特徴事項が記載されている。
【0015】
本発明の第1の様相によれば、本発明は、発生された制御データに基づき、工作機械上でフライスカッターを連続的に通過させることにより、少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械上で、特に汎用工作機械上で、加工品をフライス加工することにより、歯のフランクを形成するための制御データを発生する方法および装置であって、歯のフランクの幾何学的形状を予め定めるステップと、前記予め定められた歯のフランク上の接触パターンを定めるステップと、前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状をを修正するためのパラメータを定めるステップと、前記特定された接触パターンエリアおよび前記定められたパラメータによって修正された歯のフランクの幾何学的形状が定められた接触パターンエリアに応じて制御データを発生するステップを備える方法に関する。
【0016】
従って、本発明によれば、歯のフランクの幾何学的形状を決定する予め定められた情報および/またはデータ、例えばCADプログラムを使って数学的に正確な、および/または理論的な歯のフランクの幾何学的形状を数値計算するための根拠として使用できる、歯集合体のタイプ、加工品の形状、加工品の幾何学的形状、歯集合体の形状および/またはプロフィルの形状に関する情報および/またはデータのような情報および/またはデータに対応する数学的に正確な、および/または理論的な歯のフランクの幾何学的形状として、歯のフランクの幾何学的形状を定める。
【0017】
しかしながら、制御データは、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状および/または(例えばドイツ特許第DE10 2009 008 124号の場合のように)予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のモデルに基づき直接発生するのではなく、むしろ本発明によれば、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状上の接触パターンが決定され、更に予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を修正するためのパラメータが決定される。従って、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を修正するための定められたパラメータに基づき、また予め定められた歯のフランクの幾何学的形状上の定められた接触パターンエリアに基づき、修正され、および/または変更された歯のフランクの幾何学的形状を計算でき、ここで、本発明によれば、修正された歯のフランクの幾何学的形状に基づき、制御データを発生できる。
【0018】
これには、処理後、仕上がった加工品が修正された歯のフランクの幾何学的形状に対応する正確な歯のフランクの幾何学的形状を有するフランクを予め有するように、修正された歯のフランクの幾何学的形状に対応する制御データに基づき工作機械上での加工品の処理を行うことができるという利点がある。従って、例えば接触パターンを最適にし、および/またはモデル化するための歯のフランクの再処理が不要となる。むしろ、必要な再処理を行うことなく、所望する接触パターンの挙動が生じるように、制御データに基づき、歯のフランク(単数または複数)を直接製造できる。
【0019】
従って、本発明は、制御データを発生する前でも、例えば所望する接触パターンに応じ、数学的に正確な、および/または理論的に正確な歯のフランクの幾何学的形状に対応する歯のフランクの幾何学的形状を簡単かつ効率的に変更することを可能にする。従って、切削工具と共に、例えばエンドフライスカッターまたは同様な切削工具により歯のフランクを連続的にフライス加工しながら通過し、および/または特定の処理を行うことにより、少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械で歯付き加工品を製造するための新規に開発された方法の汎用性を大幅に拡張できる。
【0020】
特にギアフライス加工および/またはギア研削方法を使用するか、またはフライスカッター方法、例えばクリンゲルンベルク、グリーンソンまたはエルリコン方法を使用する方法と比較し、ギアホイールの製造を改善し、簡略化でき、その用途を拡張できる。その理由は、上記従来の方法では、基本的にはプロフィル形状を工具の形状によって定めるので、接触パターンをモデル化するためにその後の処理が必要となるのに対し、発生された制御データに基づき、修正された歯のフランクの幾何学的形状の製造を直接実行できるからである。
【0021】
制御データを発生するステップは、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状、定められた接触パターンエリア、および定められたパラメータに基づき、修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルを計算することを含むことが好ましい。
【0022】
これには、次のような利点がある。すなわち修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルが存在するという利点、および/または予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を修正するための定められた接触パターンおよび定められたパラメータに対応する数学的に正確なおよび/または理論的な歯のフランクの幾何学的形状のモデルから偏位した、変更された歯のフランクの幾何学的形状のモデルが計算されるという利点があり、ここで、修正された歯のフランクの幾何学的形状に基づきNCプログラムを簡単かつ潜在的に自動的に発生できる。
【0023】
修正された歯のフランクの幾何学的形状の場合に、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状と比較して定められた接触パターンエリアに対応する領域を変更せず、特に修正された歯のフランクの幾何学的形状が、定められた接触パターンエリアの外側のみにおいて、定められた歯のフランクの幾何学的形状と異なるよう歯のフランクの幾何学的形状の修正を実行することが好ましい。
【0024】
これには、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状上の接触パターンエリアを決定するステップにおいて、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状と比較し、例えば数学的に正確な、および/または理論的な歯のフランクの幾何学的形状と比較し、歯のフランクの幾何学的形状を修正せず、および/または変更しない領域を容易に定めることができるという利点がある。従って、修正された歯のフランクの幾何学的形状が予め定められた歯のフランクの幾何学的形状に対応する領域、すなわち歯のフランクの幾何学的形状の変更および/または修正にもかかわらず、歯のフランクがまだ予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を有するような領域を歯のフランク上で容易に定めることができる。定められた接触パターンエリアの外部では、歯のフランクの幾何学的形状は、定められたパラメータに応じ、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状と異なることがある。
【0025】
予め定められた歯のフランクの幾何学的形状は、歯のフランクが、かみ合いフランクと無負荷状態で転動する間、歯のフランクを接触パターンが最大の状態で歯のフランクの幾何学的形状に対応することが好ましい。
【0026】
従って、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状が数学的に正確な、および/または理論的な歯のフランクの幾何学的形状に対応し、ここで歯のフランクは、かみ合いフランクと共に無負荷状態で転動する間、特に同じような数学的に正確な、および/または理論的なかみ合いフランクと共に転動するときに、基本的には歯のフランク全体と接触し、基本的には歯のフランクにわたり、好ましくは歯のフランク全面にわたり、最大接触パターンを有する。
【0027】
特に、かみ合いフランクと無負荷状態で転動する間、定められた接触パターンエリアに対応する接触パターンを有する歯のフランクの幾何学的形状に、修正された歯のフランクの幾何学的形状が対応するように、歯のフランクの幾何学的形状を修正した後の、定められた接触パターンエリアが、歯のフランクがかみ合いフランクと共に無負荷状態で転動する間の接触パターンを描くことが好ましい。
【0028】
これには、接触パターンエリアを決定することにより、かみ合いフランクと共に無負荷状態で転動する間、対応する接触パターンを決定するか、または定めるような領域を決定できるという利点がある。このことは、定められた接触パターンエリアが歯のフランクのエリアに対応するように達成でき、このエリアでは、好ましくは数学的に正確な、および/または理論的な歯のフランクの幾何学的形状に対応する予め定められた歯のフランクの幾何学的形状と比較し、修正された歯のフランクの幾何学的形状が修正されず、従って、定められた接触パターンエリア内の修正された歯のフランクの幾何学的形状は、数学的に正確な、および/または理論的な歯のフランクの幾何学的形状に対応する幾何学的形状を有する。
【0029】
歯のフランクがかみ合いフランクと共に無負荷状態で転動する間、所望するサイズ、構造および位置を有する接触パターンが生じるように、接触パターンエリアを決定することが好ましい。
【0030】
これには、かみ合いフランクと共に無負荷状態で転動する間の歯のフランクの接触パターンを、予め定められた接触パターンエリアに従って決定または定めることができるという利点があり、この結果、実際の接触パターンは基本的には接触パターンの所望するサイズ、接触パターンの所望するコンフィギュレーション、および/または歯のフランク上の接触パターンの所望する位置に対応する。
【0031】
接触パターンエリアを決定するステップは、接触パターンエリアの形状を決定するステップ、歯のフランク上の接触パターンの位置を決定するステップ、接触パターンエリアのサイズを決定するステップ、および/または前記歯のフランク上の前記接触パターンエリアのアライメントを決定するステップを含むことが好ましい。
【0032】
このことには、かみ合いフランクと共に歯のフランクの負荷状態が転動する間に接触パターンエリアを決定するステップが、接触パターンの所望するサイズ、コンフィギュレーションおよび/または位置を決定し、および/または定めることを可能にするという利点がある。従って、例えば歯のフランク上の接触パターンエリアの位置を決定または定めるよう、複数の定められた基本的形状から接触パターンの1つの形状を選択することにより、例えば接触パターンエリアのサイズを決定し、および/または定めるよう、歯のフランク上の位置データおよび/または座標を定めることにより、例えば接触パターンエリアの決定された形状に応じて、および/または歯のフランク上の接触パターンエリアのアライメントを決定または定めるよう接触パターンエリアのサイズを決定するパラメータを定めることにより、例えば歯のフランク上の接触パターンエリアの決定された形状の回転角方向のアライメントを定めることにより、簡単に接触パターンの形状を決定または定めるだけでよい。
【0033】
接触パターンエリアの形状を、円形、楕円形、四角形、正方形または台形として決定することが好ましい。
【0034】
従って、基本的幾何学的形状に対応する接触パターン表面の形状を決定または定めることができ、簡単なパラメータにより歯のフランクに対する基本的幾何学的形状の位置、サイズおよび/またはアライメントを決定できる。接触パターンエリアの形状を決定するステップは、基本的幾何学的形状の群から接触パターン表面の形状を選択するステップ、例えば次の形状、すなわち円、楕円、長方形、正方形または台形のうちの1つから形状を選択するステップを含むことが好ましい。円の場合、例えば円の中心を指定することにより、歯のフランク上の接触パターンの位置を定めることができ、半径を決定することによりサイズを定めることができる。楕円の場合、楕円の2つの長軸または短軸により、接触パターンエリアのサイズを定めることが好ましく、接触パターンエリアの位置は楕円の2つの主軸および/または半軸の交点によって定める。楕円の場合、例えば楕円の主軸のうちの1つに対するアライメント角を定めることにより、歯のフランクに対する接触パターンエリアのアライメントを決定できる。
【0035】
正方形の場合には、例えば1つの辺の長さによって接触パターンエリアのサイズを決定でき、長方形の場合、2つの円の長さによって決定できる。接触パターン円の位置は、例えば中間点または1つもしくは数個のコーナーポイントによっても定めることができる。例えば台形コンフィギュレーションに対する接触パターンエリアのサイズを決定するには、例えば少なくとも3つのパラメータが必要であり、すなわち台形の対向する2つの辺とそれらの間の距離を決定することが必要である。長方形、正方形または台形の場合、接触パターンエリアの1つの辺の回転角方向のアライメントを決定することにより、接触パターンエリアのアライメントを決定できる。
【0036】
負荷を受けた状態でかみ合いフランクと共に前記歯のフランクが転動するときに、所望するサイズ、構造および位置を有する接触パターンが生じるように、前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を変更するためのパラメータを決定することが好ましい。
【0037】
これには、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を変更するための、定められたパラメータに応じて、歯のフランクの幾何学的形状の修正により、負荷を受けた状態、例えば特定の負荷の値のもとで、歯のフランクがかみ合いフランクと共に転動する際の所望するサイズ、構造および/または位置を有する接触パターンを決定または定めることが可能となる。従って、制御データを発生する前でも、例えば特定の負荷の値のもとで、製造された歯のフランクがかみ合いフランクと共に転動する際に、仕上げられた加工品上で生じる所望するサイズ、構造および/または位置を有する接触パターンを決定でき、この場合、負荷の値は前記加工品が意図するように作動する際に、歯付き加工品上の意図する負荷に対応する。
【0038】
予め決定された歯のフランクの幾何学的形状を修正するためのパラメータを決定するステップは、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状上の少なくとも1つの決定された削減位置上の特定の削減パラメータのうちの少なくとも1つを決定するステップを含むことが好ましい。
【0039】
これには、決定された削減位置において、特定の削減パラメータを決定することにより、定められた接触パターンの外側での歯のフランクの幾何学的形状の削減量を特に簡単に定めることができるという利点がある。
【0040】
所定の歯のフランクの幾何学的形状と比較した、決定された特定の削減パラメータに対応する少なくとも1つの決定された削減位置の各々において、修正された歯のフランクの幾何学的形状を削減することが好ましい。
【0041】
これには、制御データを発生する前でも、特定の削減位置における削減パラメータを決定できるという利点がある。すなわち特定削減位置における決定された削減パラメータに従い、加工品を処理する前でも、すなわち制御データを発生する前、または発生中に、歯のフランクの幾何学的形状を削減できる。従って、例えばギアホイールのモデル化のために歯のフランクを後処理することにこれまで精通していた歯切り機械加工作業者は、再処理中に歯のフランクの削減量を処理する際の自分の経験に対応する決定された削減位置における削減パラメータを定めることによって、自分の経験を生かすことができる。
【0042】
次に、決定された削減パラメータに従って、定められた特定の削減位置まで既に削減された修正された歯のフランクの幾何学的形状に基づいて修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルを、好ましく計算する。例えば接触パターンをモデル化するために、更なる再処理の後に従来の歯切り盤で正確な歯のフランクの幾何学的形状が製造された場合に得られるはずの歯のフランク形状に対応する修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルが計算される。
【0043】
本方法は、定められた歯のフランクの幾何学的形状上の1つまたは複数の削減位置を決定する追加ステップを含むことが好ましい。
【0044】
これには、例えば歯のフランクの幾何学的形状のモデルにおいて、制御データを発生する前、または発生中に、定められた削減パラメータに従って歯のフランクの幾何学的形状を削減する場合に、削減パラメータの他に削減位置を決定することもできるという利点がある。
【0045】
予め定められた歯のフランクの幾何学的形状の外側に少なくとも1つの削減位置が位置することが好ましい。予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のコーナーに少なくとも1つの削減位置が位置することが好ましい。予め定められた歯のフランクの幾何学的形状の2つの隣接するコーナーの間に少なくとも1つの削減位置が位置することが好ましい。予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のコーナーに4つの削減位置が位置し、および/または予め定められた歯のフランクの幾何学的形状の2つの隣接するコーナーの間に各1つの削減位置が位置するよう、削減位置、特に好ましくは少なくとも8つの削減位置を決定することが好ましい。
【0046】
これには、歯のフランクの特定位置において予め1つ以上の削減位置を定めることができるという利点がある。この場合、切り出すべき特定の加工品および/または特定の歯のフランクの各々に対し、予め定められた特定の削減位置および予め定められた歯のフランク上の最適な位置にある削減位置における削減パラメータだけを定めるだけでよい。
【0047】
定められた接触パターンエリア内の歯のフランクの幾何学的形状を定められた特定の削減パラメータに対応する定められた特定の削減位置まで修正し、削減するように、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状と比較して、歯のフランクを修正することが好ましく、好ましくは修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルを計算するステップ中に、削減位置と接触パターン表面との間の移行点を均一に計算することが好ましい。歯のフランクの幾何学的形状から定められた接触パターンエリアの外側までの移行点は一貫しており、および/または接線方向にあることが好ましい。このように、修正され、削減された歯のフランクの幾何学的形状の特に均一な幾何学的形状を得ることができる。
【0048】
この方法は、修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルを示す追加ステップを含むことが好ましい。
【0049】
計算されたモデルに基づき、制御データを発生する前でも、必要であれば追加ステップにおいて、補正された削減パラメータを定めるよう、または修正された所望する歯のフランクの幾何学的形状に基づき、制御データを発生する前に、修正された所望する歯のフランクの幾何学的形状に、修正された歯のフランクの幾何学的形状の表示されたモデルが対応するまで、再び接触パターンエリアを定めるよう、修正された歯のフランクの幾何学的形状を視覚的に証明できるという利点がある。
【0050】
この方法は、負荷の値を決定することも含むことが好ましい。修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデル上での、決定された負荷の値に対応する負荷で、歯のフランクがかみ合いフランクと共に転動するときの予想される接触パターンを表示することも含むことが好ましい。
【0051】
これには、特定の負荷の値、例えば加工品の意図する将来の作動に対応する負荷の値を歯のフランクがかみ合いフランクと共に転動する間に決定できるという利点がある。すなわち、この決定された負荷の値に対応する負荷で歯のフランクがかみ合いフランクと共に転動する際の予想される接触パターンが、修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルで表示されるので、決定された負荷の値における予想される接触パターンが、所望する接触パターンのサイズ、構造および/または位置に対応するかどうかをチェックすることが可能である。この予想される接触パターンは、例えば修正された歯の負荷の幾何学的形状を示すときの修正された歯のフランクの幾何学的形状での高さラインを表示することによって近似できる。この場合、これら高さラインは、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状と比較した変更量および/または修正量を示す。この種の高さラインは、負荷が増加するもとでの接触パターンの挙動を近似表示できる。
【0052】
歯のフランクの幾何学的形状を定めるステップは、歯集合体データを予め定めるステップを含むことが好ましく、この歯のフランクの幾何学的形状を予め定めるステップは、予め定められた歯集合体データに基づき、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を計算する追加ステップを含むことが好ましい。
【0053】
歯集合体のデータは、加工品のサイズおよび形状を示すデータ、歯集合体の設計のタイプ、特に平歯車、ベベルギア、クラウンホイール、円筒ギアおよび歯付きラックの設計から選択された設計を示すデータ、歯集合体のタイプ、特に平歯集合体、ヘリカル歯集合体、カーブした歯集合体、スパイラル歯集合体の歯集合体形状から選択された歯集合体の形状を示すデータ、歯のフランクのプロフィル形状、特にインボリュートプロフィル、サイクロイドプロフィルおよび円形プロフィルの歯のフランクのプロフィル形状から選択された歯のフランクのプロフィル形状を示すデータ、歯集合体の幾何学的形状のサイズおよび形状を示すデータ、および/または歯集合体の歯数を示すデータを含むことが好ましい。
【0054】
これには、歯集合体データを定めることにより、予め定める歯のフランクの幾何学的形状を容易に定めることができるという利点があり、この場合、歯のフランクの幾何学的形状を定めるのに、極めて少ない歯集合体データを定めるだけでよい。例えば歯集合体データは、加工品のサイズおよび形状を示すデータ、歯集合体データの設計のタイプ、従って例えば平歯車、ベベルギア、クラウンホイール、円筒ギアまたは歯付きラックを取り扱うかどうかを示すデータを含むことができる。更に、歯集合体の設計タイプ、例えば平歯集合体、ヘリカル歯集合体、カーブした歯集合体、スパイラル歯集合体を製造すべきかどうかを示すデータとして、歯集合体データを定めることができる。更に、歯集合体データは、所望する歯のフランクのプロフィル形状、恐らくは数学的な歯のフランクのプロフィル形状、例えばインボリュートプロフィル、サイクロイドプロフィルまたは円形プロフィルを示すデータを含むことができる。更に、歯集合体データは、歯集合体の幾何学的形状のサイズおよび形状を示すデータ、および/または歯集合体の歯数を示すデータも含むことができる。
【0055】
特に歯集合体データは、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のモデルを計算することにより、または予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を有する歯集合体を有する仕上がった加工品のモデルを計算することによっても、所望する数学的に正確な歯のフランクの幾何学的形状を計算することを可能にするデータを示すことが好ましい。
【0056】
本発明の第2の様相によれば、歯集合体のデータを定めるステップと、予め定められた歯集合体のデータに基づき、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を計算するステップを含む、予め定められた歯集合体のデータに基づき、前記加工品のモデルを計算するステップと、本発明の上記第1の様相に係わる方法の上記1つまたは複数の好ましい実施形態と組み合わせた上記本発明の第1の様相に係わる方法に従って加工品上で歯集合体のうちの歯のフランクを形成するための制御データを発生するステップを含む、加工品を製造するための制御データを発生するステップとを備える、歯付き加工品を製造するための制御データを発生する方法が提案される。
【0057】
本発明の第3の様相によれば、本発明の第1および第2の様相に係わる方法にしたがって、発生された制御データに基づき、工作機械上でフライスカッターを連続的に通過させることにより、少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械上で、特にフライス盤、汎用工作機械、またはマシニングセンター上で、加工品をフライス加工することにより、歯のフランクを形成するための制御データを発生する方法(装置)が提案される。この装置は、歯のフランクの幾何学的形状を定めるための第1入力手段と、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状の接触パターンエリアを決定するための第2入力手段と、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を変更するためのパラメータを決定するための第3入力手段と、定められた接触パターンエリアおよび定められたパラメータに応じて修正された歯のフランクの幾何学的形状に基づき制御データを発生するための制御データ発生手段とを備える。
【0058】
本発明の第4の様相によれば、歯集合体のデータを定めるための入力手段と、予め定められた歯集合体のデータに基づき、予め定められる歯のフランクの幾何学的形状を計算するステップを含む、予め定められた歯集合体のデータに基づき、加工品のモデルを計算するため手段と、本発明の上記第1の様相に係わる方法の上記1つまたは複数の好ましい実施形態と組み合わせた上記本発明の第1の様相に係わる方法に従って加工品上で歯集合体のうちの歯のフランクを形成するための制御データを発生するステップを含む、加工品を製造するための制御データを発生するための手段とを備える、上記第2の様相による歯付き加工品を製造するための制御データを発生する装置が提供される。
【0059】
以下説明する好ましい実施形態は、本発明の第3の様相または第4の様相にかかわる上記装置に関する。
【0060】
この装置は、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状、定められた接触パターン円形および定められたパラメータに基づき、修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルを計算するためのモデル計算手段を含むことが好ましい。このモデル計算手段は、制御データ発生手段内に含まれてもよいし、または別個の手段として設けてもよい。
【0061】
このデバイスおよび/または接触パターンエリアを決定するための第2入力手段は、接触パターンエリアの形状を決定するための入力手段、歯のフランク上の接触パターンエリアの位置を決定するための入力手段、接触パターンエリアのサイズを決定するための入力手段および/または歯のフランク上の接触パターンエリアのアライメントを決定するための入力手段とを含むことが好ましい。
【0062】
デバイスおよび/または予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を修正するためのパラメータを決定する第3入力手段は、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状上の決定された少なくとも1つの削減位置での特定の削減パラメータのうちの少なくとも1つを決定するための入力手段を含むことが好ましい。装置および/または予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を修正するためのパラメータを決定するための第3入力手段は、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)上の少なくとも1つまたは複数の削減位置(2a〜2h)を決定するための入力手段も含むことが好ましい。
【0063】
この装置は、修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルを表示し、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のモデルを表示し、歯集合体を製造するためのブランクの加工品の幾何学的形状を示す加工品のブランク部品の幾何学的形状を表示し、および/または歯集合体を製造した後の仕上げられた加工品の幾何学的形状を示す加工品の仕上げられた部品の幾何学的形状を表示するための表示手段を含むことが好ましい。
【0064】
本発明は、歯集合体のデータを定め、および/または決定するための入力手段を含むことが好ましい。すなわち第1手段は、加工品のサイズおよび形状および/または幾何学的形状を示すデータを定めるための入力手段と、歯集合体の設計のタイプ、特に平歯車、ベベルギア、クラウンホイール、円筒ギアおよび歯付きラックの設計から選択された設計を示すデータを定めるための入力手段と、歯集合体の形状、特に平歯車の歯集合体、ヘリカル歯集合体、カーブした歯集合体、スパイラル歯集合体の形状から選択された歯集合体の形状を示すデータを定めるための入力手段と、歯のフランクのプロフィル形状、特にインボリュートプロフィル、サイクロイドプロフィルおよび円形プロフィルの歯のフランクのプロフィル形状から選択された歯のフランクのプロフィル形状を示すデータを定めるための入力手段と、歯集合体の幾何学的形状のサイズおよび形状を示すデータを定めるための入力手段と、歯集合体の歯の値を示すデータを定めるための入力手段とを備えることが好ましい。
【0065】
本発明の第5の様相によれば、制御データを発生するための装置を含む、発生された制御データに基づき、工作機械上でフライスカッターを連続的に通過させることにより、加工品をフライス加工するための少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械、特にフライス盤、汎用フライス盤またはマシニングセンターが提案される。
【0066】
本発明の第6の様相によれば、第3または第4の様相に従い制御データを発生するための装置が形成されるよう、データ処理装置のデータ処理手段によって処理されるようになっているコマンドに対応する、ステートのシーケンスとしてコンピュータプログラムを制御する、コンピュータで読み取り可能なメディアおよびその上に記憶されたコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品が提案される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】加工品上のギア内の歯の略図を例示する。
【図2】歯のフランクの略図を例示する。
【図3】本発明の一実施形態に従って決定される接触パターンエリアおよび削減位置と共に歯のフランクの略図を例示する。
【図4】(A)予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のプロフィルの曲率を無視した削減位置2hおよび2dを通る横断面を略図で示す。 (B)予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のプロフィルの曲率を無視した削減位置2fおよび2bを通る横断面を略図で示す。 (C)予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のプロフィルの曲率を無視した削減位置2gおよび2cを通る横断面を略図で示す。
【図5】(A)予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のプロフィルの曲率を考慮した削減位置2hおよび2dを通る横断面を略図で示す。 (B)予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のプロフィルの曲率を考慮した削減位置2fおよび2bを通る横断面を略図で示す。
【図6A】本発明の一実施形態に係わる制御データを発生するための装置を略図で示す。
【図6B】図6Aの装置のうちの入力手段を略図で示す。
【図7】本発明の一実施形態にかかわる制御データを発生するための装置のうちの表示手段のグラフィック表面を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0068】
以下、添付図面を参照し、本発明の好ましい実施形態についてより詳細に説明する。しかしながら本発明は、以下説明する実施形態だけに限定されるものでなく、本発明は、特許請求の範囲によって定められる。実施形態の同一または同様な特徴部には同じ参照番号を付する。
【0069】
図1は、製造中の加工品の歯集合体、例えば平歯車の歯集合体のうちの1つの歯1のフランク1cの一例を略図で示す。図1内の歯1は、歯先1bと歯元1aとを有し、この歯先1bと歯元1aの間には、点線で示される歯のフランク1cが延びており、歯集合体を有する前記加工品の作動中にかみ合うフランクは、このフランク上で転動するようになっている。歯のフランク1cは、歯1の側面の歯集合体の能動領域としても示されることが多い。
【0070】
ここで、図1内の歯のフランク1cは、数学的に予め定められた歯のフランクの幾何学的形状に対応する正確な歯のフランクのプロフィルを有する歯1の領域に対応する。このことは、対応する数学的に正確な歯のフランクの幾何学的形状を有するかみ合いフランクは、負荷が加えられない状態で歯のフランク1cが転動する際に、(横断する方向に応じて歯元1aから歯先1bまで、または歯先1bから歯元1aまで横断する間、歯のフランク1cに沿って移動するラインおよび/またはカーブに対応して)基本的には歯のフランク1cの全領域と接触するか、および/またはこの領域に接触する状態となる。従って、(図1内の点線で示される)図1内の歯のフランク1cは、数学的に正確な歯のフランク1cが横断するときに、負荷がかかっていない状態、すなわち無負荷状態での横断をするよう、数学的に正確なかみ合いフランクとの接触パターンによって基本的に定められる。
【0071】
歯先1bおよび歯元1aの領域では、歯の形状は、所定の歯のフランクの幾何学的形状および/または定められた歯のフランクのプロフィルと異なることがあるので、以下述べるこの領域は、歯のフランク1cを含むと見なさない。その理由は、歯のフランク1cのプロフィルは、かみ合いがアクティブであると定義される歯のフランクのプロフィルを含むと、以下仮定するからである。
【0072】
必要な歯集合体のデータが定められ、および/または決定されることを条件に、CADシステムを使って歯のフランク1cの幾何学的形状のモデルを計算することが可能である。これに関し、特に歯のフランク1cの数学的モデルまたは数値モデルを計算できるようにするには、次のデータが必要となり得る。
・処理前および/または処理後の加工品全体のサイズおよび形状を示すデータ(例えばラフなブランクおよび/または仕上がった部品の幾何学的形状、および/またはラフなブランクおよび/または仕上がった部品の幾何学的形状のモデルを計算するためのデータ)、
・歯集合体の設計、特に平歯車、ベベルギア、クラウンホイール、円筒ギアおよび歯付きラックまたはその他の可能な設計のうちのある設計のタイプを示すデータ、
・歯集合体の種類、特に平歯車の歯集合体、ヘリカル歯集合体、カーブした歯集合体、スパイラル集合体またはその他の可能な歯集合体の形状のうちの歯集合体の形状を示すデータ、
・歯のフランクのプロフィル形状、特にインボリュートプロフィル、サイクロイドプロフィルおよび円形プロフィルまたはその他の歯のフランクのプロフィル形状のうちの1つの歯のフランクのプロフィル形状を示すデータ、
・歯集合体の歯の幾何学的形状のサイズおよび/または形状、特に例えば歯たけ、歯幅または同様なパラメータを示すデータ、および/または
・歯集合体の歯数を示すデータ。
【0073】
更に、ベベルギアおよび/または対応するピニオンの場合、製造するギアを左回転として設計するのか、右回転として設計するのか、ベベルギアおよびピニオンの軸は軸方向に変位するのかを指定または定め、また必要であれば反対側のギアの形状、サイズおよびその他の任意の表面特性を示すデータも指定または定めなければならない場合がある。
【0074】
上記のように指定されたデータに基づき、特に、定められた歯のフランクのプロフィルとして精密なプロフィル形状、例えばインボリュートプロフィル形状を有する正確な数学的な歯のフランクの幾何学的形状に対応した歯のフランク(単数または複数)1cを有する歯付き加工品の数学的に正確なモデルを容易に計算することが可能である。
【0075】
このように計算されるモデル、例えばCADシステムを使って計算されるモデルから進み、更にこのモデルに基づき、例えばCAMシステムまたはCAD/CAMシステムを使って例えばNCプログラムを発生するようにパスデータを計算することが更に可能である。このパスデータは、エンドフライスカッターまたは5本の軸を有するその他の数値制御式工作機械、例えばフライス盤、汎用フライス盤、または汎用マシニングセンターなどでの工具を制御し、機械加工経路に沿って連続的に、またはライン内でフライスカッターを連続的に通過させることにより、加工品上で歯のフランク1cを製造するために使用される制御データに含まれる。この点に関し、特にドイツ特許第10 2009 008 124号の教示内容を参照されたい。ここでは、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状により、どのようにこのような機械加工経路を好ましく形成するかが記載されている。
【0076】
従って、本発明は、歯のフランクのプロフィルまたは歯のフランクの幾何学的形状の数学的な正確な形状を有する予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のモデルに基づいて制御データを発生するのではなく、本発明では、制御データを発生する前、または制御データを発生する間に、加工品の初期の処理前でも、歯のフランク上で接触パターンを好ましくモデル化するようにモデルを変更および/または修正するものである。従って、工作機械で初期の処理をした後に、接触パターンをモデル化するのに加工品を再加工することなく、その後の歯付き加工品の作業中に所望する接触パターン挙動を得ることができる。
【0077】
次に、図2〜5Bを参照し、本発明の一実施形態に係わる接触パターンをのモデル化、および/または接触パターンをモデル化するための予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のバリエーションについて説明する。
【0078】
図2は、歯のフランク1cの抽象的な表示を簡単な四角形で示す。我々は、定められた歯のフランクのプロフィルに従う、および/または予め定められた歯のフランクの幾何学的形状に従う、歯のフランク1cの曲率を考慮しない簡単で簡略化された抽象的な表示および/または修正された表示で、歯のフランクを取り扱うものとする。このように、歯のフランクの幾何学的形状の本発明の修正および/または変更をより容易に示すことができる。従って、図2に示されるように、曲率のない四角形は歯のフランク1cの抽象表示を意味し、ここで、図4A〜4Cに示された歯のフランク1cの抽象表示の曲率は、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状の曲率以外の追加曲率も示す。
【0079】
図3は、図2からの歯のフランク1cの抽象表示の一例を示し、ここで、本発明の一実施形態によれば、歯のフランク1cの上で接触パターンエリア3および削減位置2a〜2hが決定される。
【0080】
例えば図3内の定められた接触パターンエリア3は、楕円または楕円面として決定されるか、または定められる。しかしながら本発明は、楕円の接触パターンエリアだけに限定されず、更に例えば接触パターンエリアを任意の形状、例えば特定の幾何学的形状を有する形状、または基本的な幾何学的形状、例えば四角形、円、楕円に対応する形状、またはその他の二次元的な幾何学的形状に対応する形状にも決定できる。
【0081】
例えば主軸3dおよび3cにより、接触パターンエリア3のサイズを決定または定め、この場合、主軸3dと主軸3cの交差ポイント3aにより、歯のフランク1c上の定められた接触パターンエリア3の位置を決定するか、または定める。
【0082】
このような実施形態にしたがった定められた接触パターンエリア3のアライメントは、楕円の定められた接触パターンエリア3の主軸3bのアライメントを示す角度αによって決定できる。
【0083】
削減位置2a〜2hは、歯のフランク1cの外側で決定する。ここで、削減位置2a、2c、2eおよび2gは、例えば歯のフランク1cのコーナーに位置し、削減位置2b、2d、2fおよび2hは、歯のフランク1cの隣接する2つのコーナーの間の中間に位置する。削減位置2a〜2hおよび/またはその値は、プログラム内で定めてもよいし、または本発明に係わる制御データを発生するための装置のユーザーによって決定してもよい。
【0084】
従って、本発明は特定の削減位置2a〜2hで削減パラメータを決定し、よって予め定められた歯のフランクの幾何学的形状と比較し、特定の削減位置において歯のフランクの幾何学的形状を削減しなければならない。
【0085】
更に本発明は、定められた接触パターンエリア3の領域内で歯のフランクの幾何学的形状を修正したり変更するものでもない。従って、本発明に従い、削減位置2a〜2hにおける削減パラメータの定義の結果、歯のフランク1c上で定められ、および/または決定される接触パターンエリア3の外側に位置する歯のフランク1cの領域内の歯のフランクの幾何学的形状が削減されるだけである。換言すれば、定められた接触パターンエリア3の内側において、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状に対応する数学的に正確な歯のフランクの幾何学的形状を保持できる。従って、定められた接触パターンエリア3の外側の歯のフランクの幾何学的形状の削減にも係わらず、歯のフランク1cは、かみ合いフランクと無負荷状態で転動する間、定められた接触パターンエリア3に対応するサイズ、位置および構造を有する少なくとも1つの接触パターンを製造する。
【0086】
歯のフランクの幾何学的形状を変更する前に、歯のフランク1cがかみ合いフランクと共に無負荷状態で転動する間、基本的には歯の負荷1cの全領域にわたって接触パターンを製造するが、本発明によれば、フランクの無負荷の転動中にあらかじめ接触パターンを決定または定めることができ、ここで、サイズ、形状および/または構造をランダムに選択または定めることができる。
【0087】
負荷を受けている接触パターンをモデル化するために、本発明は特定の削減位置2a〜2hにおける特定の削減パターンを決定することを講じており、従って、定められた接触パターンエリア3の外側で歯のフランクおよび/または歯のフランクの幾何学的形状が決定される。
【0088】
例えば、以下、図4A〜4Cを参照し、歯のフランクの幾何学的形状の削減を示す。例えば図4Aは、図3からの削減位置2hおよび2dを通過する横断面を示し、ここで、歯のフランクの幾何学的形状の削減量を定める特定の削減パターン4hおよび4dが決定される。更に、内側に、定められた接触パターンエリア3の領域が示されており、図4Aでは、定められた接触パターンエリア3の内側では、歯のフランクの幾何学的形状は修正されず、定められた削減パターン4hおよび4dに対応する歯のフランクの幾何学的形状の削減が得られるように、特定の削減位置2hまたは2bにおける外側に向かって、歯のフランクの幾何学的形状の連続的削減が行われる。
【0089】
同じように、図4Bおよび4Cは、削減位置2fおよび2b(図4B)と削減位置2gおよび2c(図4C)との間の横断面に沿った歯のフランクの幾何学的形状の削減を示し、ここで、対応する削減パラメータ4f、4d、4gおよび4cが決定される。
【0090】
図4A〜4Cから明らかなように、本発明のこの実施形態によれば、特に、定められた接触パターンエリア3への交差領域における移行が一貫し、および/または接線方向に実行され、特に均一な移行で実行されるように、歯のフランクの幾何学的形状の削減が行われる。内側の定められた接触パターンエリア3から、決定された削減位置までの削減も、同じように一貫し、特に一貫した曲率で行われる。
【0091】
既に述べたように、図3〜4Cでは、表示を簡略化するために、歯のフランク1cの既に定められた数学的に正確な歯のフランクの幾何学的形状の曲率は省略されており、図示されていない。次の図5Aおよび5Bは、プロフィル曲率を検討している実際の歯のフランクの幾何学的形状を参照し、本発明の一実施形態ごとに、制御データを発生する前に接触パターンのモデル化がどのように行われるかを示している。
【0092】
図5Aは、歯のフランク1C上の削減位置2hおよび2dを通過する横断面を示し、参照番号5は、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を示し、参照番号6は、接触パターンエリア3を決定し、決定された削減位置2hおよび2dにおける削減パラメータ4hおよび4dを決定した後の変更された歯のフランクの幾何学的形状を示す。本例では、平歯車の歯集合体を取り扱っており、歯の同じ高さ(基本的には半円の高さ)における削減位置2hおよび2dを決定しているので、図5Aでは、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状5を通過する交差ラインは直線となっている。
【0093】
しかしながら、修正された歯のフランクの幾何学的形状は、定められた削減パラメータ4hおよび4dに対応する削減位置2hおよび2dでの削減量を有する。好ましくは、曲率が一貫しているケースにおける削減量は、背部で決定された接触パターンエリア3に向かって減少し、同時に接触パターンエリア3内に、特に接線方向に同時に進む。本発明によれば、決定された接触パターン3の領域内の歯のフランクの幾何学的形状は、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状5の進行に対して修正されない。
【0094】
逆に図5Bは、削減位置2bと2fとの間の歯のプロフィルに沿った横断面を示し、このプロフィル形状は、本ケースではインボリュート形状に対応している。このことは、図5Bにおける予め定められた歯のフランクの幾何学的形状5の交差ラインは、本例ではインボリュートプロフィルに従うことを意味する。次に、定められた削減パラメータ4bおよび4fに従えば、修正された歯のフランクの幾何学的形状6が得られるように、削減位置2bおよび2fにて、歯のフランクの幾何学的形状の変更を実行する。次に定められた接触パターンエリア3の領域では、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状5と比較して、歯のフランクの幾何学的形状6は修正されず、この修正された歯のフランクの幾何学的形状5は定められた接触パターンエリア3の外側フランクにおいて一貫した、特に接線方向の移行部を有する。
【0095】
次に、修正された歯のフランクの幾何学的形状に基づき、修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルおよび/または修正された歯のフランクの幾何学的形状を有する歯付き加工品のモデル化を創出できる。次に、このモデル化に基づき、ドイツ特許第DE10 2009 008 124号から既に知られているように、フライスカッター、例えば工作機械のエンドフライスカッターが連続して通過することにより制御データに従い、加工品上に歯のフランク(単数または複数)をカットするように加工品または歯の複数1cを製造するのに使用される制御データを発生できる。
【0096】
このフライス切削から製造される加工品は、修正された歯のフライスの幾何学的形状に対応する歯のフランクを製造直後に有するので、制御データの発生直前であって処理前、または製造前に、接触パターンがモデル化され、例えばラッピングまたは研削によるその後の再処理は不要となる。
【0097】
特に接触パターンは、特に所望するサイズ、位置および形状を有するかみ合いフランクに特定の負荷がかかった状態で横断する間、所望する接触パターンを得るように削減パラメータおよび定められた接触パターンエリア3を決定できる。従って、本発明は、加工品を再処理しなくても制御データの発生前でも、歯のフランクの上の接触パターンを簡単かつ効率的にモデル化することができるので、かみ合いフランクと無負荷状態で転動する間、および/または例えば特定の負荷の値で負荷を受けながら、かみ合いフランクと共に歯のフランクが横断するときに、所望する接触パターンを得ることができる。
【0098】
図6Aは、本発明の実施例に従って歯付き加工品を製造するための制御データを発生するための、または制御データを形成するための装置200を略図で示す。この装置200は、発生された制御データに基づき、工作機械のフライスカッターの連続通過により、少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械、特にフライス盤、汎用フライス盤またはマシニングセンターで加工品をフライス加工することにより、歯のフランクを形成するための制御データを発生するようになっている。この装置は、例えば工作機械に含まれるように、工作機械の一部でもよいし、または少なくとも工作機械に固定していてもよいし、または工作機械とは別個に製造してもよい。この装置は、1つまたは複数のデータ処理により、例えば1台または数台のコンピュータ、またはコンピュータに類似するデータ処理手段によって形成できる。
【0099】
装置200は、歯集合体データを定めるためのデータ、パラメータ、情報を入力するための入力手段210と、定められた歯集合体データに基づき、加工品のモデルを計算するための、特に定められた歯集合体データに基づき、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のモデルを計算するためのモデル計算手段220とを備える。この装置200は、加工品を製造するための制御データを発生するための、特に制御データに基づいて数値制御される工作機械で加工品上に歯集合体のうちの歯のフランクを形成するための制御データを発生する制御データ発生手段230を更に含む。
【0100】
この実施形態に係わる装置200は、修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルを表示し、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状のモデルを表示し、歯集合体を製造する前にブランクの加工品の幾何学的形状を示す加工品のブランク部品の幾何学的形状を示し、歯集合体を製造した後の、仕上がった加工品の幾何学的形状を示す、加工品の仕上がった部品の幾何学的形状を示すための表示手段240を更に備える。
【0101】
装置200は、装置を接続させ、および/または接合するのに使用される、例えばケーブルリンク、WLANのような無線接続を通して、工作機械および/または工作機械の制御装置に制御データを伝送するためのインターフェース手段250も更に含む。このインターフェース手段は、装置200によって発生される制御データをメモリ媒体、例えばUSBメモリスティックまたはフラッシュカード、もしくはその他のメモリエリアにセーブするようにもでき、このメモリメディアはその後、工作機械に接続し、工作機械へ制御データを転送することもできる。
【0102】
図6Bは、図6Aに示された装置200の入力手段210の実施形態の例を略図で示す。この入力手段210は、歯のフランクの幾何学的形状を決定または定めるための第1入力手段211と、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状上の接触パターンエリアを決定し、または定めるための第2入力手段212と、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を変えるためのパラメータを定め、または決定するための第3入力手段とを備える。
【0103】
歯のフランクの幾何学的形状を定め、および/または決定するための、または加工品全体の幾何学的形状を決定するための第1入力手段211は、加工品のサイズおよび形状および/または幾何学的形状を示すデータを定めるための入力手段2111と、歯集合体の設計のタイプ、特に平歯車、ベベルギア、クラウンホイール、円筒ギアおよび歯付きラックの設計から選択された設計を示すデータを定めるための入力手段2112と、歯集合体の形状、特に平歯車の歯集合体、ヘリカル歯集合体、カーブした歯集合体、スパイラル歯集合体の形状から選択された歯集合体の形状を示すデータを定めるための入力手段2113と、歯のフランクのプロフィル形状、特にインボリュートプロフィル、サイクロイドプロフィルおよび円形プロフィルの歯のフランクのプロフィル形状から選択された歯のフランクのプロフィル形状を示すデータを定めるための入力手段214と、歯集合体の幾何学的形状のサイズおよび形状を示すデータを定めるための入力手段2115と、歯集合体の歯の数を示すデータを定めるための入力手段216とを備える。
【0104】
接触パターンエリアを決定するための第2入力手段212は、接触パターンエリアの形状を決定するための入力手段2121と、歯のフランク上の接触パターンエリアの位置を決定するための入力手段2122と、接触パターンエリアのサイズを決定するための入力手段2123と、歯のフランク上の接触パターンエリアのアライメントを決定するための入力手段2124とを備える。予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を変更するためのパラメータを定めるか、または決定するための第3入力手段213は、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状上の少なくとも1つの決定された削減位置における特定の削減パラメータのうちの少なくとも1つを決定するかまたは定めるための入力手段2131と、予め定められた歯のフランクの幾何学的形状上の1つまたは複数の削減位置を決定または定めるための入力手段2132とを備える。
【0105】
入力手段210に入力されるか、またはこの入力手段210に対して指定された歯集合体データに基づき、モデル計算手段220は、歯付き加工品のモデル、特に指定もしくは修正された歯のフランクの幾何学的形状(単数または複数)のモデルを計算できる。次に、計算されたモデルに基づき、制御データ発生手段230は、変更された歯のフランクの幾何学的形状に対応する歯のフランクを連続的または特定のフライス加工製造をするためのフライスカッターのためのパスデータを計算する。この計算されたパスデータに基づき、例えばNCプログラムの形態で、制御データを数値的または自動的に発生することが可能である。
【0106】
図7は、本発明の一実施例に従い、制御データを発生するためのデバイス200の表示手段210のグラフィックな、特にインタラクティブな表面の例を示す。例えば図7は、加工品が既にベベルギアとして特定されていることを示す。すなわち設計が予めベベルギアとして定められていることを示す。入力およびディスプレイ領域10において、ユーザーはベベルギアに対し、または前に決定もしくは定められたベベルギアに属すピニオンに対し、歯集合体データを定めるか、または決定するべきかを選択および/または指定できる。入力およびディスプレイ領域20において、ユーザーは製造するベベルギアが平歯集合体、スパイラル歯集合体またはヘリカル歯集合体を有するかどうかを選択および/または指定できる。すなわちベベルギアの歯集合体の形状を選択できる。入力およびディスプレイ領域30においてユーザーは、製造するベベルギアが左側の凹部または右側が凸部となった歯のギャップのフランクを有するピニオンに対して設計すべきであるかどうかを選択し、および/または指定できる。ディスプレイ領域40においてピニオンの硬度がディスプレイされる。ディスプレイ領域50には、ベベルギアの前に決定された歯数がディスプレイされる。入力およびディスプレイ領域60において、ユーザーは作動中、製造するベベルギアの軸をピニオンの軸に対してシフトすべきかどうかを選択または定めることができる。軸方向のシフトを使用すべきである場合、更に入力およびディスプレイ領域60にて(例えばmm単位の)軸方向のシフト量を定めることができる。入力およびディスプレイ領域70では、ユーザーはベベルギアおよびピニオンの2本の軸を直角に形成すべきであるかどうかを選択または定めることができ、90度と異なる角度を使用する場合、角度の大きさを入力および/または定めることができる。
【0107】
ユーザーは入力およびディスプレイ領域80において、(例えばmm単位で)削減パラメータ4a〜4hを定めるか、または決定できる。この実施形態に係わる削減位置2a〜2hは、図2に示された歯のフランク1c上の位置に従って既に特定されている。ディスプレイ領域90には斜視図にて、定められた接触パターンエリア3および定められた削減パラメータ4a〜4hに従って修正された歯のフランクの幾何学的形状6が(図4A〜4Cと同じように抽象的に、すなわち予め定められた歯のフランクの幾何学的形状の曲率を表示することなく)示されている。同じように、歯のフランク上で決定された接触パターンエリア3も示されている。異なるビュー方向から、修正された歯のフランクの幾何学的形状6を視覚的に確認するよう、修正された歯のフランクの幾何学的形状6の斜視的表示を回転することもできる。
【0108】
ユーザーは、歯のフランク上の接触パターンエリア3を決定および/または定めるために、接触パターンエリア3の形状を定めるよう、入力およびディスプレイ領域100において、種々の基本形状から選択することができる。例えばユーザーは、図7において、基本形状から楕円、四角形および台形を選択できる。ユーザーは入力およびディスプレイ領域110において、歯のフランク上の接触パターンエリア3の垂直および水平位置を定めるか、または決定できる。(例えば歯のフランクの水平中心線に対する回転角方向のアライメントとして)入力およびディスプレイ領域12において、定められた接触パターンエリア3のアライメントを定めることができる。最後にユーザーは、入力およびディスプレイ領域130において、接触パターンエリアのサイズを定めることができる。例えば図7において、接触パターンエリア3のために入力およびディスプレイ領域100では楕円形状が定められているので、ユーザー特に入力領域130aおよび130bにおいて、楕円の半軸aおよびbの長さを定めることにより、接触パターンエリア3のサイズを定めることができる。
【0109】
一旦、歯集合体のデータが決定または定められると、ユーザーは入力領域140を操作し、修正された歯のフランクの幾何学的形状のモデルの計算をスタートするか、または歯のフランクの幾何学的形状を修正するための接触パターンエリアの決定およびパラメータの決定を含む、入力情報に基づく制御データの発生をスタートできる。
【0110】
要約すれば、本発明によれば、歯付き加工品の処理および/または製造が改善され、更に簡略化され、更に少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械上で、特に汎用工作機械、例えばフライス盤、汎用フライス盤およびマシニングセンターにて、加工品をフライス加工するためのオプションを拡張できる。特に本発明は、発生された制御データに基づき、フライスカッター、例えばエンドミルカッターまたは同様なフライスカッターを使用して、加工品上で歯のフランクを連続的および/または特定の切削を行うことにより、工作機械上、特に汎用工作機械にて、歯付き加工品を製造する新規な開発された方法のオプションを拡張する制御データを発生するための方法およびデバイスを提供することを可能にする。最後に本発明は、特に再処理を必要とすることなく、所望する接触パターンを有する加工品の少なくとも1つの歯のフランクを、簡単かつ効率的に製造できるよう、歯付き加工品の製造を可能にする。
【符号の説明】
【0111】
2a〜2h−−−削減位置
3−−−接触パターンエリア
4a〜4h−−−削減パラメータ
5−−−予め定められたフランクの幾何学的形状
6−−−修正されたフランクの幾何学的形状

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生された制御データに基づき、工作機械上でフライスカッターを連続的に通過させることにより、少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械上で、特に汎用工作機械上で、加工品をフライス加工することにより、歯のフランクを形成するための制御データを発生する方法であって、
歯のフランクの幾何学的形状(5)を定めるステップと、
前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)上の接触パターンエリア(3)を決定するステップと、
前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)を変更するためのパラメータ(2a〜2h、4a〜4h)を決定するステップと、
前記定められた接触パターンエリア(3)および前記定められたパラメータ(2a〜2h、4a〜4h)に応じて修正された歯のフランクの幾何学的形状(6)に基づき制御データを発生するステップを備える方法。
【請求項2】
制御データを発生する前記ステップは、前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)、前記定められた接触パターンエリア(3)、および前記定められたパラメータ(2a〜2h、4a〜4h)に基づき、前記修正された歯のフランクの幾何学的形状(6)のモデルを計算することを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記修正された歯のフランクの幾何学的形状(6)の場合に、前記定められた接触パターンエリア(3)に対応する領域は、前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)と比較して変更せず、特に前記修正された歯のフランクの幾何学的形状(6)は、前記定められた接触パターンエリア(3)の外側のみにおいて、前記定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)と異なっている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)は、歯のフランク(1c)が、かみ合いフランクと無負荷状態で転動する間、前記歯のフランク(1c)を横断する最大の接触パターンを有する歯のフランクの幾何学的形状に対応することを特徴とする、請求項1〜3のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項5】
特に、かみ合いフランクと無負荷状態で転動する間、前記定められた接触パターンエリア(3)に対応する接触パターンを有する歯のフランク(1c)の歯のフランクの幾何学的形状に、前記修正された歯のフランクの幾何学的形状(6)が対応するように、前記歯のフランクの幾何学的形状を修正した後の、前記定められた接触パターンエリア(3)は、前記歯のフランク(1c)がかみ合いフランクと共に無負荷状態で転動する間の接触パターンを描くことを特徴とする、請求項1〜4のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項6】
前記歯のフランク(1c)がかみ合いフランクと共に無負荷状態で転動する結果、所望するサイズ、構造および位置を有する接触パターンが生じるように、前記接触パターンエリア(3)を決定することを特徴とする、請求項1〜5のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項7】
前記接触パターンエリアを決定する前記ステップは、
前記接触パターンエリアの形状を決定するステップ、
前記歯のフランク上の前記接触パターンの位置を決定するステップ、
前記接触パターンエリアのサイズを決定するステップ、
および/または前記歯のフランク上の前記接触パターンエリアのアライメントを決定するステップを含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記接触パターンエリア(3)の前記形状を、円形、楕円形、四角形、正方形または台形として決定することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
負荷を受けた状態でかみ合いフランクと共に前記歯のフランク(1c)が横断する結果、所望するサイズ、構造および位置を有する接触パターンが生じるように、前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)を修正するための前記パラメータを決定することを特徴とする、請求項1〜8のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項10】
前記定められた歯のフランクの幾何学的形状を修正するためのパラメータを決定する前記ステップは、前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状上の少なくとも1つの決定された削減位置(2a〜2h)上の特定の削減パラメータ(4a〜4h)のうちの少なくとも1つを決定するステップを含むことを特徴とする、請求項1〜9のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項11】
前記特定の決定された削減パラメータ(4a〜4h)に対応する少なくとも1つの決定された削減位置(2a〜2h)の各々において、前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)に対する前記修正された歯のフランクの幾何学的形状(6)を削減することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)上の1つまたは複数の削減位置(2a〜2h)を決定する追加ステップを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)の外側に少なくとも1つの削減位置(2a〜2h)が位置することを特徴とする、請求項10〜12のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項14】
前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)のコーナーに少なくとも1つの削減位置(2a;2c;2e;2g)が位置することを特徴とする、請求項10〜13のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項15】
前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)の2つの隣接するコーナーの間に少なくとも1つの削減位置(2b;2d;2f;2h)が位置することを特徴とする、請求項10〜14のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項16】
前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)のコーナーに4つの削減位置(2a、2c,2e,2g)が位置し、前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状(5)の2つの隣接するコーナーの間に各1つの削減位置(2b;2d;2f;2h)が位置するよう、少なくとも8つの削減位置(2a〜2h)を決定することを特徴とする、請求項10〜15のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項17】
前記修正された歯のフランクの幾何学的形状(6)を表示する追加ステップを特徴とする、請求項1〜16のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項18】
前記修正された歯のフランクの幾何学的形状(6)のモデル上での、前記決定された負荷の値に対応する負荷で、前記歯のフランク(1c)がかみ合いフランクと共に横断するときの負荷の値および予想される接触パターンの表示を決定する追加ステップを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
歯のフランクの幾何学的形状を予め定める前記ステップは、
前記歯集合体のデータを定めるステップと、
前記予め定められた歯集合体のデータに基づき、前記予め定められる歯のフランクの幾何学的形状を計算するステップとを備えることを特徴とする、請求項1〜18のうちの少なくとも1項に記載の方法。
【請求項20】
歯集合体のデータを定めるステップと、
前記予め定められた歯集合体のデータに基づき、予め定められる歯のフランクの幾何学的形状を計算するステップを含む、前記予め定められた歯集合体のデータに基づき、前記加工品のモデルを計算するステップと、
請求項1〜19のうちの少なくとも1項に記載の方法に従って前記加工品上で歯集合体のうちの歯のフランクを形成するための制御データを発生するステップを含む、前記加工品を製造するための制御データを発生するステップとを備える、歯付き加工品を製造するための制御データを発生する方法。
【請求項21】
前記歯集合体のデータは、
前記加工品のサイズおよび形状を示すデータ、
前記歯集合体のタイプおよび形状、特に平歯車、ベベルギア、クラウンホイール、円筒ギアおよび歯付きラックの形状から選択された形状を示すデータ、
歯集合体の形状、特に平歯集合体、ヘリカル歯集合体、カーブした歯集合体、スパイラル歯集合体の歯集合体形状から選択された歯集合体の形状を示すデータ、 歯のフランクのプロフィル形状、特にインボリュートプロフィル、サイクロイドプロフィルおよび円形プロフィルの歯のフランクのプロフィル形状から選択された歯のフランクのプロフィル形状を示すデータ、
歯集合体の幾何学的形状のサイズおよび形状を示すデータ、および/または
歯集合体の歯数を示すデータを含むことを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
請求項1〜19のうちの少なくとも1項に記載の方法にしたがって、発生された制御データに基づき、工作機械上でフライスカッターを連続的に通過させることにより、少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械上で、特に汎用工作機械上で、加工品をフライス加工することにより、歯のフランクを形成するための制御データを発生する装置であって、
歯のフランクの幾何学的形状を定めるための第1入力手段と、
前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状の接触パターンエリアを決定するための第2入力手段と、
前記予め定められた歯のフランクの幾何学的形状を変更するためのパラメータを決定するための第3入力手段と、
前記定められた接触パターンエリアおよび前記定められたパラメータに応じて修正された歯のフランクの幾何学的形状に基づき制御データを発生するための制御データ発生手段とを備える装置。
【請求項23】
歯集合体のデータを定めるための入力手段(210)と、
前記予め定められた歯集合体のデータに基づき、予め定められる歯のフランクの幾何学的形状を計算することを含む、前記予め定められた歯集合体のデータに基づき、前記加工品のモデルを計算するため手段と、
請求項1〜19のうちの少なくとも1項に記載の方法に従って前記加工品上で歯集合体のうちの歯のフランクを形成するための制御データを発生するステップを含む、前記加工品を製造するための制御データを発生するための手段とを備え、
請求項20または21記載の方法に従って、歯付き加工品を製造するための制御データを発生する装置。
【請求項24】
請求項22〜23に記載の制御データを発生するための装置を含む、発生された制御データに基づき、工作機械上でフライスカッターを連続的に通過させることにより、加工品をフライス加工するための少なくとも5本の軸を有する数値制御式工作機械、特に汎用工作機械。
【請求項25】
請求項22または23に記載の制御データを発生するための装置が形成されるよう、データ処理装置のデータ処理手段によって処理されるようになっているコマンドに対応する、ステートのシーケンスとしてコンピュータプログラムを制御する、コンピュータで読み取り可能なメディアおよびその上に記憶されたコンピュータプログラムを含むコンピュータプログラム製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−40680(P2012−40680A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−178987(P2011−178987)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(506381599)ディッケル マホ プロンテン ゲーエムベーハー (16)
【Fターム(参考)】