説明

工作機械用の角度割出し装置

【課題】モータを内蔵する部品の外径寸法を大型化することなく、大きなトルクを回転軸に得ること、軸受の支持剛性を高めること。
【解決手段】回転駆動対象部材が固定される回転軸と、回転軸の外周を囲み工作機械本体に着脱するハウジングと、ハウジングと回転軸の間に配置する軸受と、ハウジングと回転軸の間に設けられ回転軸を回転して角度位置を割出す駆動手段を含み、駆動手段としてハウジング内で回転軸の周りに同心円状に配置されたモータロータとモータステータの駆動モータを用いた工作機械用の角度割出し装置であって、駆動手段が複数の駆動モータを回転軸の軸線方向に離間して直列的に配置する。複数の軸受を軸線方向に離間して配置し、そのうち最も回転駆動対象部材側の軸受に、アキシアル、ラジアル方向の荷重を支持可能な複列形式のころ軸受を採用し、他の軸受の一つを複数の駆動モータの間に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は工作機械用の角度割出し装置に関し、より詳しくは、五軸加工機(同時五軸制御可能な加工機)、回転テーブル装置等に使用する、角度割出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械用の角度割出し装置の一例としては、角度を割出す第5のサーボモータをヘッド下部に内蔵し、第5のサーボモータで回す鉛直な回転軸の真下に、下部ヘッドを下向きにコ字状に分岐して設け、下部ヘッドの二股部内に、工具装着用の首振りヘッドを回転可能に支持するという、直列的な支持形態のものが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、工作機械用の角度割出し装置の別例としては、角度を割出す旋回駆動モータをヘッド支持部材に内蔵し、旋回駆動モータで回す斜めの駆動軸の下部に、鉛直なヘッドの下部を接続し、ヘッド内に鉛直な工具主軸を回転可能に支持するという、並列的な支持形態であって、しかも、旋回駆動モータにロータとステータからなるもの、即ち俗称DDモータを単独で(1個)用いるものも知られている(特許文献2)。
【0004】
ところで工作機械においては、加工方法や加工物によってDDモータに要求される特性は異なる。そして、現状よりも大きなトルクが要求される場合に、1個のDDモータでトルクを大きくするには、DDモータ自身の外径を大型化しなければならない。そうすると、DDモータを取り囲むヘッドの外径も大型化することになり、望ましくない。通常、角度割出し装置は、既存の工作機械の所定の取り付け位置へ取り付けられるが、ヘッドの外径を現状よりも大型化すると、既存の工作機械にそのまま取り付けることができず、工作機械自体に改造を施さねばならない。
【0005】
また、回転軸を支持する軸受にはローラギアカム(クロボダイルカム)や(特許文献1)、クロスローラベアリングが用いられている(特許文献2)。
【0006】
従来よりも大きなトルクを回転軸に伝える場合、軸受の支持剛性を高め、割出し精度の低下を防止する必要もある。
【特許文献1】特開2006−26835号公報(段落番号0010、0011、図1、図3)
【特許文献2】特開平2−116437号公報(3頁左下欄、9頁下欄、第16図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記実情を考慮して創作されたもので、その解決課題は、モータを内蔵する部品の外径寸法を大型化することなく、現状よりも大きなトルクを回転軸に得ることである。また、回転軸の出力可能なトルクを大きくした場合の解決課題は、軸受の支持剛性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一端に回転駆動対象部材が固定される回転軸と、該回転軸を支持するためにその外周を少なくとも囲むと共に工作機械に着脱可能なハウジングと、該ハウジングと前記回転軸との間に設けられる軸受と、前記ハウジングと前記回転軸との間に設けられると共に前記回転軸を回転駆動してその角度位置を割出す駆動手段とを含み、前記駆動手段として、前記ハウジング内で前記回転軸の周りに同心円状に配置されたモータロータとモータステータとからなる駆動モータを採用した、工作機械用の角度割出し装置を前提とする。
【0009】
そして、解決手段は、前記駆動手段が、複数の前記駆動モータを、前記回転軸の軸線方向に離間して直列的に配置してあることである。
【0010】
複数の駆動モータを軸線方向に直列的に配置する関係上、回転軸が軸線方向に長くなる。回転軸を支持する軸受は一つであっても良いが、支持剛性を高め、回転精度を高めるには、その解決手段として、前記回転軸を支持するための前記軸受を前記軸線方向に離間して複数配置し、そのうちの最も回転駆動対象部材側の軸受に、アキシアル方向及びラジアル方向の荷重を支持可能な複列形式のころ軸受を採用し、他の軸受のうちの少なくとも一つが、前記複数の駆動モータの間に配置されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は回転軸の軸線方向に離間して直列的に複数個の駆動モータを配置してあるので、1個の駆動モータよりも大きなトルクを得ることができ、それ故1個の駆動モータで同等のトルクを得る場合よりも駆動モータの外径を小さくでき、その結果、ハウジングの小型化ひいては割出し装置全体の外径寸法を小さくできる。また、既存の割出し装置の駆動モータと同等の外径のものを複数個採用した場合、ハウジングの外径も既存のものと同等となり、取り付けることも容易となる。
【0012】
また、駆動モータの配置関係に伴って長くなる回転軸を複数の軸受で支持することによって支持剛性を高め回転精度を高めることができる。その上、最も回転駆動対象部材側の軸受に、アキシアル方向及びラジアル方向の荷重を支持可能な複列形式のころ軸受を採用するので、回転軸の支持をさらに高い剛性で行なうことができる。しかも、複数の軸受を回転軸の両端部に配置したのではなく、最も回転駆動対象部材側以外の軸受のうちの少なくとも一つを、複数の駆動モータの間に配置したので、軸受間の距離が短くなる。軸受間の距離が長いときは、回転軸に撓みが生じて回転精度が低下するという問題が発生するが、上記構成にすることにより、このような問題の発生を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明が適用される工作機械1の一例として、図5に示すように、門型工作機械(マシニングセンタ)を五軸加工機や多面加工機などの複合化加工機として用いるものを挙げる。図示の工作機械1は、同時五軸制御可能な加工機であって、ベッド2の両側から起立する左右のコラム3,3と、両コラム3,3の間に跨って両コラム3の前後面の片面上を上下方向(Z軸方向)に移動するクロスレール4と、クロスレール4の前面上(コラム3に対してクロスレール4を設けた面と同一面上)を水平に左右方向(Y軸方向)に移動するサドル5と、サドル5の前面上をZ軸方向に移動するラム6と、ベッド2の上面を前後方向に移動するテーブル7とを工作機械本体として備えるものである。さらに、工作機械本体のラム6には加工用ヘッド8を着脱可能に取り付け、工具が取り付けられるスピンドル9を備えたスピンドルユニット10を、加工用ヘッド8の一部品として備えている。
【0014】
かかる工作機械1は、ワークの加工時において、予め設定されたプログラムに基づく数値制御により、テーブル7、クロスレール4、サドル5及びラム6を移動させると共に、加工用ヘッド8がスピンドルユニット10の角度位置(回転位置)の割出しを行なう。これにより、門型工作機械では、ワークの各加工面に対して工具を最適な角度で当てて加工を行なうことができ、複雑な形状のワークの切削加工等を可能としている。
【0015】
加工用ヘッド8は、図4に示すように、工具が取り付けられるスピンドル9を有するスピンドルユニット10と、スピンドルユニット10を角度調節を可能な状態で回転可能に支持する第一の支持ヘッド11と、スピンドルユニット10とは反対側で第一の支持ヘッド11を回転可能に支持する第二の支持ヘッド20を含むものである。そして、第一の支持ヘッド11(第一の支持ヘッド11の基部12)が本願発明の回転駆動対象部材に相当し、第二の支持ヘッド20が本願発明の角度割出し装置に相当する。
【0016】
スピンドルユニット10は、モータ内蔵型のスピンドルヘッドであって、そのケーシング13内に回転可能に支持されたスピンドル9を、内蔵された図示しないモータで高速回転駆動するものである。
【0017】
第一の支持ヘッド11は、スピンドルユニット10をA軸を中心にして回転可能に支持すると共に、内蔵するモータでスピンドルユニット10を、その鉛直方向の軸線方向(以下「C軸方向」という)と直交する軸線(以下、「A軸」という)を中心に回転させてその角度位置を割出すものである。C軸は、工作機械1のZ軸と平行である。
【0018】
第一の支持ヘッド11は、基部12(第二の支持ヘッド20側の部分)に対し一対の脚部14,14が離間して(間隔をあけて)取り付けられたフォーク形に構成されており、一対の脚部14,14の間でスピンドルユニット10を支持する。詳しくは、スピンドルユニット10の両側面には、各脚部14の内部で回転可能に支持されると共に回転軸線をA軸に一致させて配置された一対の支持軸(図示せず)が取付けられ、この支持軸によって一対の脚部14,14間で回転可能に支持される。そして、支持軸が脚部14に内蔵されたモータによって回転駆動されることにより、スピンドルユニット10がA軸を中心に回転されてその角度位置が割り出される。
【0019】
第二の支持ヘッド20は、第一の支持ヘッド11をC軸を中心に回転可能に支持し、内蔵する駆動手段で第一の支持ヘッド11を回転させてその角度位置を割出すことにより、延てはスピンドルユニット10の角度位置を割出すものである。第二の支持ヘッド20は、工作機械1のラム6に取り付けられ、その一端側に第一の支持ヘッド11が取り付けてある。なお、以後の説明において、第二の支持ヘッド20を構成する各パーツは、基本的にC軸を軸線とする筒状やリング状に形成されているものとする。また、連結とは、ネジ、ボルト等によって締結固定することをいうものとする。
【0020】
第二の支持ヘッド20は、図1に示すように、ハウジング30と、ハウジング30の内部に回転可能に支持する回転軸40と、ハウジング30と回転軸40との間に介在する軸受B1、B2と、同じくハウジング30と回転軸40との間に介在する駆動手段M1、M2と、同じくハウジング30と回転軸40との間に介在するクランプ機構50(回転軸40を回転不能に保持するもの)とから構成される。駆動手段M1、M2及び軸受B1、B2は何れも複数であって、C軸方向に間隔をあけて直列的に配置してある。また、図示の例では、回転駆動対象部材とは反対側(上側)の軸受B1にクロスローラベアリングを採用し、回転駆動対象部材側(下側)の軸受B2にアキシアル方向及びラジアル方向の荷重を支持可能な複列形式のころ軸受を採用してある。
【0021】
駆動手段M1、M2は、工作機械1に固定されるハウジング30に対して回転軸40を回転駆動するものであって、駆動モータM1、M2を採用し、各駆動モータM1、M2は、ギヤ等の減速器を使わずに直接負荷に繋いで運転するタイプのもの(俗に、直接駆動型モータ/DDモータと言われる。)である。そして、各駆動モータM1、M2は、固定鉄心にコイルを捲回して構成されたモータステータM1b、M2bと、モータステータM1b、M2bの内周面に近設して対向する複数のマグネットを周方向に亘って配置したモータロータM1a、M2aと、モータステータM1b、M2bを保持するステータスリーブM1c、M2cとを同心円状に配置した構成となっている。
【0022】
ハウジング30は、複数のハウジング部材31、32と、ロータリジョイントRのディストリビュータR1を主として構成される。ハウジング30は、C軸方向に分割可能であって、図ではハウジング部材31,32の2つから構成されている。このハウジング部材31,32について、図面上側のハウジング部材31を第一のハウジング部材、下側のハウジング部材32を第二のハウジング部材とする。また、ディストリビュータR1は、その外径を、第一ハウジング部材31の内径よりも小径としてある。そして、第一ハウジング部材31と第二ハウジング部材32を縦長の筒型に連結し、第一ハウジング部材31の内周側に間隔をあけてディストリビュータR1を同心円状に配置すると共に、第一ハウジング部材31の上端部に、ディストリビュータR1の上端部から半径方向外向きに突出するフランジ部R1aの外周部を連結するものである。これにより、第一ハウジング部材31とディストリビュータR1との間、ディストリビュータR1の内周側、及び第二ハウジング部材32の内周側に、それぞれ空間を連通して形成し、これら空間に回転軸40、軸受B1、B2及び駆動モータM1、M2を配置してある。
【0023】
第一ハウジング部材31は、その本体31aをその下端部が内向きに屈曲する片側断面L字状に形成し、その本体31aの上端部に、ディストリビュータR1に向かって半径方向内側に突出する第一ハウジングスリーブ31bを連結し、全体としての片側断面を内向きに開口するコ字状に形成してある。
【0024】
ロータリジョイントRは、径の異なる筒状のディストリビュータR1とシャフトR2とから構成され、ディストリビュータR1とシャフトR2を二重管状に回転可能に嵌め合わせてある。ここでは、ディストリビュータR1の外側にシャフトR2を嵌め合わせてある。ディストリビュータR1とシャフトR2のそれぞれには、円周方向に位置をずらして複数の流体流路R11、R21が形成されており、更に、ディストリビュータR1とシャフトR2の間の嵌合周面には、各流体流路R11、R21が通じる環状溝R0が形成されている。この構成により、ディストリビュータR1とシャフトR2とが相対回転してもディストリビュータR1の流体流路R11とシャフトR2の流体流路R21との連通状態が維持される。ディストリビュータR1の流体流路R11はフランジ部R1aにおいて外部に通じる構造とし、シャフトR2の流体流路R21は第一の支持ヘッド11側へ通じる構造としてある。
【0025】
第二ハウジング部材32は、その本体32aの上端部に半径方向内向きに突出する第二ハウジングスリーブ32bを連結し、更に、本体32aの下端部に半径方向内向きに突出する係止スリーブ32cを連結して構成してある。そして、第二ハウジング部材32は、第二ハウジングスリーブ32bを第一ハウジング部材31の下部に連結することにより第一ハウジング部材31に対し固定される。
【0026】
回転軸40は、複数の筒状の軸部材41、42、40aを主として構成され、ハウジング30の分割箇所に対応する箇所でC軸方向に分割可能に設けてある。図では、回転軸40はC軸方向に関し2つに分割可能であり、第一ハウジング部材31とディストリビュータR1との間の空間に配置する軸部材41を第一軸部材、第二ハウジング部材32の内周側の空間に配置する軸部材41を第二軸部材とする。また、ディストリビュータR1の内周側の空間に配置する軸部材40aを回転検出用軸部材とする。そして、ディストリビュータR1の内外に配置した回転検出用軸部材40aと第一軸部材41を、第二軸部材42の上端に、C軸を中心として突き合わせて連結し、第一軸部材41と第二軸部材42をハウジング30の分割箇所に対応する箇所で分割可能としてある。
【0027】
第一軸部材41は、その本体をロータリジョイントRのシャフトR2とするもので、第一ハウジング部材31の下部に対向してシャフトR2の下部を半径方向外向きに突出すると共に、シャフトR2の上部に、半径方向外向きに突出する第一シャフトスリーブR2aを連結して構成してある。そして、第一軸部材41と第一ハウジング部材31との間の筒形の空間に、駆動モータM1と軸受B1を一つずつ配置し、且つ駆動モータM1の下側に軸受B1を配置してある。即ち、上側の軸受B1は上下の駆動モータM1,M2の間に配置してある。
【0028】
上側の軸受B1(クロスローラベアリング)は、その外周部(外輪)を第一ハウジング部材31の下部に、その内周部(内輪)を第一軸部材41の下部に、それぞれ連結してある。
【0029】
上側の駆動モータM1は、第一ハウジング部材31の内周側にステータスリーブM1cを介してモータステータM1bを固定し、第一軸部材41の外周側にモータロータM1aを固定したものである。より詳しく言えば、モータステータM1bをステータスリーブM1cの内周面に同心円状に嵌め込んで固定し、ステータスリーブM1cを第一ハウジングスリーブ31bの下側に連結して第一ハウジング部材31に対しモータステータM1bを固定している。また、第一軸部材41(ロータリジョイントRのシャフトR2)の外周面にモータロータM1aを嵌め込み、第一シャフトスリーブR2aの下面にモータロータM1aを連結して第一軸部材41に対しモータロータM1aを固定している。
【0030】
また、上側の駆動モータM1には、コネクタc1を介してケーブルc11を接続してある。ケーブルc11は、例えば、モータステータに内蔵されるコイルに電流を供給するためのU、V、W相用の電流供給ケーブル、アース線、駆動モータM1の異常を検出するための検出線等である。コネクタc1を配置するために、第一ハウジングスリーブ31bの下面の一部に局部的に窪んだ空間を形成し、その窪んだ空間にコネクタc1を配置している。また、ケーブルc11を通すために第一ハウジングスリーブ31bには上下に貫通するケーブル用配線孔H1を設けてある。
【0031】
第二軸部材42は、その本体42aの上端面の中央部に凹部42bを形成し、ディストリビュータR1の下部、及び回転検出用軸部材40aの下部を凹部42bに配置する。凹部42bは、下部に比べて上部の内径を広くした段差形状であって、上部の内周側にディストリビュータR1の下部の外周面が当接し、下部の内周側に回転検出用軸部材40aの下部の外周面が当接する。また、第二軸部材42は、その本体42aの上部に連結された半径方向外向きに突出する第二シャフトスリーブ42cを有し、その第二シャフトスリーブ42cをその上の第一軸部材41に連結してある。
【0032】
また、第二軸部材42は、その本体42aの下側に配置されたフランジ部材42e、及びフランジ部材42eを挟むようにして配置された連結部材42dを有し、フランジ部材42eと共に連結部材42dを第二軸部材42の下面に連結して構成してある。なお、連結部材42dの下端面と第一の支持ヘッド11の基部12の上端面とは、凹凸の嵌め合いによる位置決めをしてある。
【0033】
第二軸部材42と第二ハウジング部材32は、その適宜箇所を内向き又は外向きに突出することによって、両部材42,32の間に環状の三つの空間を上下に間隔をあけて形成し、その三つの空間に、下側の駆動モータM2、クランプ機構50、下側の軸受B2を分けて配置してある。
【0034】
下側の駆動モータM2は、三つの空間のうちの上側の空間に配置され、上側の駆動モータM1と同様にモータロータM2a、モータステータM2b、ステータスリーブM2cとから構成され、各々を同様に、第二ハウジングスリーブ32bを介して第二ハウジング部材32に固定し、第二シャフトスリーブ42cを介して第二軸部材42に固定してある。
【0035】
また、下側の駆動モータM2にもコネクタc2を介して複数のケーブルc21を接続してある。コネクタc2を配置するために、第ニハウジングスリーブ32bの下面に局部的に窪んだ空間を形成してある。また、ケーブルc21を通すためにケーブル用配線孔H2を、第ニハウジングスリーブ32b、第一ハウジング部材31、第一ハウジングスリーブ31bの各内部に軸線方向に沿って連通して形成してある。さらに、第一ハウジング部材31は、その下端部の外周に、ケーブルc21に通じる外向窓31cを設けている。外向窓31cは、第一ハウジング部材31と第二ハウジングスリーブ32bとを連結後にケーブルc21ケーブル用配線孔H2に通す際に使用される。
【0036】
クランプ機構50は、三つの空間のうちの中間の空間に配置され、回転軸40を相対的に締め付けて回転軸40を相対回転不能とするクランプスリーブ51と、クランプスリーブ51を変形させる流体を導く受圧部材52とから構成され、第二ハウジング部材32の内周側に受圧部材52、クランプスリーブ51を順次同心円状に配置して連結してある。クランプスリーブ51は、その外周に溝を有し、その溝により上下の厚肉部51a,51aの間に変形可能な薄肉部51bが形成される。また、その溝と受圧部材52とにより、薄肉部51bの外側と受圧部材52との間に圧力室53を形成してある。そして、クランプスリーブ51は、薄肉部51bを第二軸部材42に近接させて配置される。更に、受圧部材52には、その内部に圧力室53に通じる流体通路54が形成してあり、その流体通路54の出口部54aが圧力室53に開口している。流体通路54は、ハウジング部材31,32に形成した流体流路であってハウジングスリーブ31bにおいて外部に通じる流体流路(図示せず)に通じている。そして、流体通路54に流体を供給することにより、薄肉部51bを小径方向に変形させて第二軸部材42を締め付けて回転軸40を回転不能な状態に保持する。
【0037】
下側の軸受B2は、具体的には三列ローラベアリング(三列円筒ころ軸受/アキシアル・ラジアルローラベアリングとも言う)を採用してある。詳しく言えば、図3に示すように、軸受B2(三列ローラベアリング)は、内輪B2aと、外輪B2bと、内輪B2aと外輪B2bの間に介在する複数の円筒ころB2cによって構成される。内輪B2aを複数のパーツの組み付けによって片側断面コ字状に外向きに開口して形成し、その開口する溝部の高さ中間部に外輪B2bの内周部を配置し、内輪B2aを回転軸40に、外輪B2bをハウジング30にそれぞれ連結し、外輪B2bの上、下、内側に円筒ころB2cをそれぞれ配置し、上下の円筒ころB2c、B2cでアキシアル方向の荷重を支持し、内側の円筒ころB2cでラジアル方向の荷重を支持してある。内側の円筒ころB2cは、図示しない保持部材によって保持される。
【0038】
なお、回転軸40の回転量、即ち第一の支持ヘッド11の角度位置を検出するための回転検出器60が、ハウジング30(ディストリビュータR1)と、回転軸40(回転検出用軸部材40a)の上端にベアリング等を介して固定してある。回転検出器60は、検出器ステータ61をディストリビュータR1に、検出器ロータ62を回転検出用軸部材40aの上端部にそれぞれ固定してある。そして、回転検出器60の検出信号は、工作機械1の制御装置に送られ、第一の支持ヘッド11の回転制御に用いられる。
【0039】
図2は第二の支持ヘッド20の他の実施形態を示す。これは、ハウジング30と回転軸40の間に、三つの駆動モータM1、M2、M3をC軸方向に間隔をあけて直列的に配置した例である。また、この例においても、各駆動モータM1、M2、M3の配置箇所に対応させてハウジング30及び回転軸40をC軸方向に三分割可能に形成してある。すなわち、図2に示す第二の支持ヘッド20では、三つのハウジング部材31,32,33、即ち第一、第二、第三ハウジング部材31,32,33をC軸方向に沿って直線的に連結したものを採用し、各ハウジング部材31,32,33の内側に駆動モータM1,M2,M3、及び第一、第二、第三軸部材41,42,43を対応させてそれぞれ配置し、第一、第二、第三軸部材41,42,43をC軸方向に沿って直線的に連結してある。
【0040】
この場合の第二、第三軸部材42,43は、前記実施形態の第二軸部材42を軸線方向中間部で分割してその間にスペーサ軸部材42fを介して連結したものに相当し、第二、第三ハウジング部材32,33は前記実施形態の第二ハウジング部材32を軸線方向中間部で分割してその間にスペーサスリーブ32dを介して連結したものに相当する。
【0041】
一番下側の駆動モータM3の、モータロータM3a、モータステータM3b、ステータスリーブM3cの配置は他の駆動モータM1、M2と同様である。また、一番下側の駆動モータM3に対するコネクタc3、ケーブルc31、ケーブル用配線孔H3を、前記実施形態と同様に設け、中間のケーブル用配線孔H2と一番下のケーブル用配線孔H3を円周方向に位置をずらして設けてある。なお、第二ハウジング部材32の下端部に外向窓32eを、第一ハウジング部材31の外向窓31cと同様に設けてある。
【0042】
さらに本発明は上記した実施形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【0043】
最も下側(回転駆動対象部材側)の軸受B2の複列形式のころ軸受は、前述の三列円筒ころ軸受に限らず、複列円錐ころ軸受等の、アキシアル方向及びラジアル方向の荷重を支持可能な他の複列形式のころ軸受であっても良い。
【0044】
また、図2の実施形態では、上側と中間の駆動モータM1,M2の間に軸受を配置していないが、この駆動モータM1,M2の間にも軸受を配置するものであっても良い。また、上側の駆動モータM1の上方にも軸受を配置してもよい。すなわち、軸受の数は、回転軸40の長さや回転軸40に掛かる負荷に応じて適宜に設定されるが、本発明では、複数の軸受のうちの最も回転駆動対象部材側の軸受以外の軸受は、そのうちの少なくとも一つが、離間して直列的に配置された駆動モータ間に配置されていればよい。例えば、三つの軸受が用いられる場合には、最も回転駆動対象部材側の軸受以外の二つの軸受は、その少なくとも一つが駆動モータ間に配置されていればよく、残りの一つは、三つ以上の駆動モータが採用される場合において駆動モータ間に配置されて良いし、回転駆動対象部材とは反対側の回転軸40の端部に配置されるものであっても良い。なお、三つ以上の駆動モータが採用される場合において、各駆動モータ間の全てに軸受を配置すれば支持剛性がさらに高まることは言うまでもないことである。
【0045】
また、最も下側以外の軸受B1は、前述のクロスローラベアリングに限らず、他の軸受であっても良い。クロスローラベアリングはアキシアル方向及びラジアル方向の荷重を支持可能なものであるが、その様な両方向の荷重を支持可能なものでなくても良く、加工用ヘッド8が装着される工作機械1の形態に応じたものとすれば良い。例えば、工作機械1が横型のマシニングセンタの場合は、回転軸40のC軸方向は水平方向となるので、ラジアル方向の荷重のみを支持可能な軸受(ラジアル軸受、より具体低にはラジアルニードルベアリング、ラジアルボールベアリング、ラジアルローラベアリング等)であっても良い。
【0046】
また、工作機械1が縦型のマシニングセンタの場合、回転軸40のC軸方向は鉛直方向となるので、アキシアル方向の荷重のみを支持可能な軸受(アキシアル軸受、スラスト軸受、より具体的にはスラストニードルベアリング、スラストボールベアリング、スラストローラベアリング等)であっても良い。
【0047】
また、本発明の角度割出し装置は、上記した五軸加工機等に限らず、たとえばワークが載置される円テーブルを回転駆動してその角度位置を割出す回転テーブル装置に適用しても良い。角度割出し装置を回転テーブル装置として使用する場合、円テーブルが本発明でいう回転駆動対象部材となる。
【0048】
さらに、本発明の角度割出し装置によれば、使用される駆動モータの数は前述で説明したものに限らず、四つ以上の駆動モータを軸線方向に離間して直列的に配置することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】工作機械用の角度割出し装置の一実施形態を示す断面図である。
【図2】工作機械用の角度割出し装置の別の実施形態を示す断面図である。
【図3】複列形式のころ軸受を示す拡大断面図である。
【図4】加工用ヘッドの概略を示す正面図である。
【図5】工作機械の全体を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1工作機械、2ベッド、3コラム、4クロスレール、5サドル、6ラム、7テーブル、
8加工用ヘッド、9スピンドル、10スピンドルユニット、
11第一の支持ヘッド、12基部、13ケーシング、14脚部、
20第二の支持ヘッド、
30ハウジング、31第一ハウジング部材、31a本体、31b第一ハウジングスリーブ、
31c外向窓、32第二ハウジング部材、32a本体、32b第二ハウジングスリーブ、
32c係止スリーブ、32dスペーサスリーブ、32e外向窓
c1コネクタ、c11ケーブル、H1ケーブル用配線孔、c2コネクタ、c21ケーブル、
H2ケーブル用配線孔、c3コネクタ、c31ケーブル、H3ケーブル用配線孔
40回転軸、40a回転検出用軸部材、41第一軸部材、42第二軸部材、42a本体、42b凹部、
42c第二シャフトスリーブ、42d連結部材、42eフランジ部材、43第三軸部材、
50クランプ機構、51クランプスリーブ、51a厚肉部、51b薄肉部、52受圧部材、
53圧力室、54流体通路、54a出口部、
Rロータリジョイント、R1ディストリビュータ、R1aフランジ部、R2シャフト、
R2a第一シャフトスリーブ、R0環状溝、R11流体流路、R21流体流路、
B1軸受、B2軸受、B2a内輪、B2b外輪、B2c円筒ころ、
M1駆動モータ、M1aモータロータ、M1bモータステータ、M1cステータスリーブ、
M2駆動モータ、M2aモータロータ、M2bモータステータ、M2cステータスリーブ、
60回転検出器、61検出器ステータ、62検出器ロータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に回転駆動対象部材が固定される回転軸と、該回転軸を支持するためにその外周を少なくとも囲むと共に工作機械に着脱可能なハウジングと、該ハウジングと前記回転軸との間に設けられる軸受と、前記ハウジングと前記回転軸との間に設けられると共に前記回転軸を回転駆動してその角度位置を割出す駆動手段とを含み、
前記駆動手段として、前記ハウジング内で前記回転軸の周りに同心円状に配置されたモータロータとモータステータとからなる駆動モータを採用した、工作機械用の角度割出し装置において、
前記駆動手段が、複数の前記駆動モータを、前記回転軸の軸線方向に離間して直列的に配置してあることを特徴とする工作機械用の角度割出し装置。
【請求項2】
前記軸受を前記軸線方向に離間して複数配置し、そのうちの最も回転駆動対象部材側の軸受に、アキシアル方向及びラジアル方向の荷重を支持可能な複列形式のころ軸受を採用し、他の軸受のうちの少なくとも一つが、前記複数の駆動モータの間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の工作機械用の角度割出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−279582(P2008−279582A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−128331(P2007−128331)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000215109)津田駒工業株式会社 (226)
【Fターム(参考)】