説明

工作機械

【課題】ワークの外周面の切削加工と転造加工の両方が可能で、簡素な構造でありながら、転造加工を精度良く行える工作機械を提供する。
【解決手段】ワークを支持して回転する主軸4と、その両側に主軸4に対し接近および離反する方向に位置変更可能に設けられた第1、第2の工具支持体5A,5Bとを備える。まず第1、第2の工具支持体5A,5Bにそれぞれ支持された両切削用工具により、ワークを両側から同時に切削加工をする。切削加工の後、工具を交換し、第1の工具支持体5Aに支持されて主軸4の中心Oと平行な軸回りに回転自在な転造用工具14と、第2の工具支持体5Bに支持されてワークと共回りによる回転が自在なサポート部材15とで、ワークの外周面に転造加工をする。転造加工は、ワークの外周面に転造用工具14を押付け、かつ転造用工具14の押付け力に対抗してサポート部材15によりワークを支持した状態で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ワークの外周面にローレット等の転造加工を行うことができる工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ローレット等の転造加工は、転造専用機で行うのが一般的であった。しかし、転造加工は、旋盤等の工作機械により切削加工された半製品に対して行われることが多く、切削用工作機械から転造専用機へのワークの付け替えを行わねばならず、作業能率に課題があった。また、切削加工に比べて転造加工の頻度が少ない場合、切削用工作機械と転造専用機の両方を準備しておくのは、転造専用機の稼働率が低くなり、コスト面で大きな負担となる。また、転造専用機は、2つの転造用工具をワークの両側から同時に押し付けて加工するが、上記2つの転造用工具を油圧で移動させるため、両転造用工具の押付け荷重のバランス調整が難しい。
【0003】
このような状況下、主に旋削用として用いられる工作機械で転造加工を可能にする試みがなされている。例えば、特許文献1に、タレット旋盤により転造でワークに球面加工をする場合の例が記載されている。一般的には、図5に示すように、主軸(図示せず)のチャック6に支持された円環状のワークWの外周面に、工具支持体(図示せず)に取付けた転造用工具14を押し付けて、転造加工を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−277803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図5の方法は、転造用工具14を強い力でワークWに押し付ける場合、図の例のように、主軸に曲がりが生じてワークWが転造用工具14の押付け方向に微小距離ΔXだけ変位することや、転造用工具14のワークWへの押付け力にチャック6のワーク把持力が負けることにより、転造寸法が軸方向で不均一になるという問題がある。
【0006】
この発明の目的は、1台でワークの外周面の切削加工と転造加工の両方が可能で、簡素な構造でありながら、転造加工を精度良く行える工作機械を提供することである。
この発明の他の目的は、簡単な制御で、転造加工をより一層高精度にできるようにすることである。
この発明のさらに他の目的は、転造加工時にワークをバランス良く支持して、良好に転造加工を行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の工作機械は、ワークを支持して回転する主軸と、この主軸を挟む両側に主軸に対し接近および離反する方向に位置変更可能に設けられ、それぞれが少なくとも1つの切削用工具を支持する第1および第2の工具支持体とを備え、前記第1および第2の工具支持体にそれぞれ支持された両切削用工具を、前記主軸に支持されたワークに接触させて、ワークの両側から同時に切削加工をすることが可能であって、前記第1の工具支持体で、前記切削用工具とは別に、ワークと共回りによる回転が自在な転造用工具を支持すると共に、前記第2の工具支持体で、前記切削用工具とは別に、前記主軸の中心と平行な軸回りに回転自在なサポート部材を支持し、前記主軸に支持されて回転するワークの外周面に前記転造用工具を押付け、かつこの転造用工具の押付け力に対抗して前記サポート部材によりワークを支持した状態で、ワークの外周面に転造加工を行うようにした。
【0008】
この構成によると、第1および第2の工具支持体にそれぞれ切削用工具を支持させて、これら切削用工具によりワークを両側から同時に切削する加工と、第1の工具支持体で転造用工具を支持すると共に、第2の工具支持体でサポート部材を支持し、転造用工具の押付け力に対抗してサポート部材によりワークを支持した状態で、転造用工具によりワークの外周面に転造する加工とを行える。
【0009】
転造加工をする際、転造用工具の押付け力に対抗してサポート部材でワークを支持するため、転造用工具の押付け力で主軸が曲がったり、転造用工具の押付け力にチャックのワーク把持力が負けたりすることがなく、軸方向に均一な転造加工を行える。サポート部材は直接には転造加工に関与しないため、転造用工具の位置を制御するだけで転造寸法が変わる。そのため、転造寸法の調整が容易である。また、サポート部材の位置は厳密に制御しなくてよいので、構成を簡素にできる。
【0010】
この発明において、前記第1および第2の工具支持体をそれぞれ主軸に対し接近および離反する方向に進退させる第1および第2の進退駆動源と、これら進退駆動源を数値制御する制御装置とを備え、前記転造用工具とサポート部材とによる転造加工時に前記第1の進退駆動源に作用する負荷、および前記第2の進退駆動源に作用する負荷のそれぞれを検出する検出手段を設け、これら検出手段の検出値に基づき、前記転造用工具がワークを押す力と前記サポート部材がワークを押す力とが設定許容範囲内で均衡するように、前記第1および第2の進退駆動源の少なくともいずれかの進退駆動源の出力を制御する押付けバランス制御手段を前記制御装置に設けてもよい。
【0011】
この構成であると、転造用工具がワークを押す力とサポート部材がワークを押す力とのバランスを取りながら、転造加工を行える。そのため、転造用工具の押付け力でワークの位置や姿勢が変化した状態で転造加工されることが精度良く防止され、より一層高精度に加工することができる。また、両側から転造用工具を押付ける場合と異なり、サポート部材は転造用加工に直接には関与しないため、転造用工具がワークを押す力とサポート部材がワークを押す力とは、ワークの位置や姿勢に変化が生じない程度に、ある程度の許容範囲内でバランスが取れていればよい。そのため、簡単な制御で、高精度の転造加工を行える。
【0012】
この発明において、前記サポート部材はワークの外周面にそれぞれ接触して回転する2つのローラを有し、1つの前記転造用工具をワークの外周面の一方側に接触させ、かつ前記サポート部材の前記2つのローラを、ワーク外周面の他方側における、前記転造用工具と前記主軸の中心とを結ぶ直線を挟んで両側の箇所にそれぞれ接触させて、転造加工を行ってもよい。
【0013】
転造用工具が1つであると、転造用工具の位置の制御が容易である。また、サポート部材の2つのローラを上記箇所に配置すれば、転造用工具のワークへの押付け力を2つのローラでバランス良く支持して、良好に転造加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の工作機械は、ワークを支持して回転する主軸と、この主軸を挟む両側に主軸に対し接近および離反する方向に位置変更可能に設けられ、それぞれが少なくとも1つの切削用工具を支持する第1および第2の工具支持体とを備え、前記第1および第2の工具支持体にそれぞれ支持された両切削用工具を、前記主軸に支持されたワークに接触させて、ワークの両側から同時に切削加工をすることが可能であって、前記第1の工具支持体で、前記切削用工具とは別に、ワークと共回りによる回転が自在な転造用工具を支持すると共に、前記第2の工具支持体で、前記切削用工具とは別に、前記主軸の中心と平行な軸回りに回転自在なサポート部材を支持し、前記主軸に支持されて回転するワークの外周面に前記転造用工具を押付け、かつこの転造用工具の押付け力に対抗して前記サポート部材によりワークを支持した状態で、ワークの外周面に転造加工を行うようにしたため、1台でワークの外周面の切削加工と転造加工の両方が可能で、簡素な構造でありながら、転造加工を精度良く行える。
【0015】
前記第1および第2の工具支持体をそれぞれ主軸に対し接近および離反する方向に進退させる第1および第2の進退駆動源と、これら進退駆動源を数値制御する制御装置とを備え、前記転造用工具とサポート部材とによる転造加工時に前記第1の進退駆動源に作用する負荷、および前記第2の進退駆動源に作用する負荷のそれぞれを検出する検出手段を設け、これら検出手段の検出値に基づき、前記転造用工具がワークを押す力と前記サポート部材がワークを押す力とが設定許容範囲内で均衡するように、前記第1および第2の進退駆動源の少なくともいずれかの進退駆動源の出力を制御する押付けバランス制御手段を前記制御装置に設けた場合は、簡単な制御で、転造加工をより一層高精度にできる。
【0016】
前記サポート部材はワークの外周面にそれぞれ接触して回転する2つのローラを有し、1つの前記転造用工具をワークの外周面の一方側に接触させ、かつ前記サポート部材の前記2つのローラを、ワーク外周面の他方側における、前記転造用工具と前記主軸の中心とを結ぶ直線を挟んで両側の箇所にそれぞれ接触させて、転造加工を行う場合は、転造加工時にワークをバランス良く支持して、良好に転造加工を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態にかかる工作機械の工作機械本体の斜視図に制御系のブロック図を加えた示した図である。
【図2】(A)は同工作機械による切削加工の一例を示す一部破断平面図、(B)はその正面図である。
【図3】(A)は同工作機械による転造加工の一例を示す一部破断平面図、(B)はその正面図である。
【図4】同工作機械による転造加工の異なる方法を示す一部破断平面図である。
【図5】従来の転造加工の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の一実施形態を図1〜図4と共に説明する。
図1に示すように、この工作機械は、工作機械本体1と、その制御装置2とでなる。工作機械本体1はタレット旋盤であって、ベッド3上に、前後方向(Z軸方向)に沿う1本の主軸4と、この主軸4の左右両側にそれぞれ配置された第1および第2の工具支持体5A,5Bとを備える。
【0019】
主軸4は、前端にワークW(図2〜図4)を把持するチャック6を有する。チャック6は、例えば円環状のワークWを内周側から把持するコレットチャックである。主軸4は、ベッド3上に設置された主軸台7に回転自在に支持され、主軸台7に設置された主軸モータ(図示せず)より回転駆動される。
【0020】
第1および第2の工具支持体5A,5Bは、いずれも正面形状が多角形のタレットからなり、その各外周面部分に複数種の工具13,14(図2〜図4)やサポート部材15(図3)が取付けられ、任意の工具13,14またはサポート部材15を主軸対面位置に回転割出可能とされている。各工具支持体5A,5Bは、送り台8に円筒状のタレットバー5aを介して前後方向(Z軸方向)に進退自在に支持され、第1および第2の前後進退駆動源9A,9B(図1)により前後に進退駆動させられる。また、送り台8は、ベッド3上に設けられた左右方向(X軸方向)の案内10上に移動自在に支持され、第1および第2の左右進退駆動源11A,11B(図1)により左右に進退駆動させられる。これにより、各工具支持体5A,5Bに取付けられた工具は、直交2軸方向に移動可能である。
なお、タレットバー5aを進退させる構成に代えて、送り台8を2段積み形式とし、その上側送り台が下側送り台に対して、第1および第2の前後進退駆動源9A,9Bで前後に進退させられる構成としてもよい。
【0021】
前記各前後進退駆動源9A,9Bおよび各左右進退駆動源11A,11Bは、いずれもサーボモータである。第1および第2の左右進退駆動源11A,11Bの両方に、これら左右進退駆動源11A,11Bに作用する負荷を検出する検出手段12A,12B(図1)が設けられる。これら検出手段12A,12Bは、例えばモータ電流を検出する電流計とされる。
【0022】
第1および第2の工具支持体5A,5Bには、工具として、切削用工具13(図2)が取付けられる。また、一方の工具支持体、例えば第1の工具支持体5Aには転造用工具14(図3、図4)が取付けられ、他方の工具支持体、例えば第2の工具支持体5Bには、上記転造用工具14と組み合わせて使用するサポート部材15(図3)が取付けられる。
【0023】
図3において、転造用工具14は、例えばローレットであり、第1の工具支持体5Aに固定される固定部14aに、転造ローラ14bが主軸4の中心Oと平行な回転中心軸Pの回りに回転自在に支持されている。サポート部材15は、第2の工具支持体5Bに固定される固定部15aに、揺動部15bが主軸4の中心Oと平行な揺動中心軸Qの回りに揺動自在に支持され、さらに前記揺動部15bに、上下一対のサポートローラ15c,15cが主軸4の中心Oと平行なローラ支持軸15dにより回転自在に支持されている。サポートローラ15cは、必ずしも主軸4の中心Oと平行な軸回りに回転自在でなくてもよく、例えばワークWと共回りによる回転が自在であってもよい。固定部15aに、左右方向に沿いばね部材15eにより主軸側へ付勢された上下一対のサポートピン15fが設けられ、これらサポートピン15fの先端が揺動部15bの背面に当接している。
【0024】
切削用工具13による切削加工は、図2に示すように、主軸4に支持されて回転するワークWに切削用工具13の刃先を接触させて行う。第1および第2の工具支持体5A,5Bのいずれかに支持された切削用工具13で切削加工してもよく、また第1および第2の工具支持体5A,5Bのそれぞれに支持された切削用工具13により左右両側から同時に切削加工をしてもよい。図2は、左右両側から同時に切削加工をする場合の例を示す。図の例では、ワークWの外周が段付き形状であり、第1の工具支持体5Aに支持された切削用工具13によりワークWの大径部Waを切削加工し、第2の工具支持体5Bに支持された切削用工具13によりワークWの小径部Wbを切削加工する。
【0025】
図3は、転造用工具14とサポート部材15とによる転造加工の一例を示す。転造用工具14が取付けられた第1の工具支持体5Aを、転造ローラ14bの回転中心軸Pと主軸4の中心Oとを結ぶ直線Lに沿って移動させて、転造ローラ14bをワークWの外周面に押し当てる。サポート部材15が取付けられた第2の工具支持体5Bを、揺動部15bの揺動中心軸Qと主軸4の中心Oとを結ぶ直線Mに沿って移動させて、サポートローラ15c,15cをワークWの外周面における転造用工具14と反対側に接触させ、転造ローラ14bのワークWへの押付け力を反対側から支える。サポートローラ15c,15cのワークWへの接触箇所は、転造ローラ14bの中心軸Pと主軸の中心Oとを結ぶ直線Lを挟んで両側の箇所、例えば前記直線Mから同じ距離とする。図の例では、前記直線Lと直線Mは一致する。これら直線L,Mは、送り台8の移動方向である左右方向(X軸方法)に沿っている。
【0026】
図1において、制御装置2は、コンピュータ式の数値制御装置およびプログラマブルコントローラ等からなり、製品毎に用意される加工プログラム20と、この加工プログラム20を実行する演算制御部21とを有する。演算制御部21は第1制御部21Aおよび第2制御部21Bからなり、第1制御部21Aにより、第1の前後進退駆動源9Aおよび第1の左右進退駆動源11Aを制御し、第2制御部21Bにより、第2の前後進退駆動源9Bおよび第2の左右進退駆動源11Bを制御する。第1制御部21Aおよび第2制御部21Bは、物理的に別に設けられたものあってもよく、また同じコンピュータ上に設けられていて概念上で使い分けられるものであってもよい。
【0027】
上記加工プログラム20および演算制御部21とは別に、または演算制御部21の一部として、加工プログラム20が転造加工用である場合に、前記検出手段12A,12Bの検出値に基づき、前記第2制御部21Bによる第2の左右進退駆動源11Bの制御に規制を与える押付けバランス制御手段22が設けられている。押付けバランス制御手段22は、例えば第2制御部21Bの第2の左右進退駆動源11Bを制御するサーボコントローラに設けられていてもよく、また加工プログラム20で一部が構成されていてもよい。
【0028】
前記押付けバランス制御手段22は、具体的には、前記両検出手段12A,12Bの検出値に基づき、転造用工具14がワークWを押す力とサポート部材15がワークWを押す力とが設定許容範囲内で均衡するように、第2の左右進退駆動源11Bの出力を制御する。前記設定許容範囲は、試し加工やシミュレーション等の結果により、適宜定めればよい。両検出手段12A,12Bの検出値に基づき、第1の左右進退駆動源11Aの出力を制御してもよく、あるいは両方の左右進退駆動源11A,11Bの出力を制御してもよい。
【0029】
加工プログラム20が切削加工用である場合、加工プログラム20により命令された切込み量となるように、第1および第2の左右進退駆動源11A,11Bのいずれか、または両方を制御し、かつ加工プログラム20により命令された送り量となるように、第1および第2の前後進退駆動源9A,9Bのいずれか、または両方を制御し、ワークWに対して切削加工を行う。
【0030】
加工プログラム20が転造加工用である場合、加工プログラム20により命令された転造寸法となるように、第1の左右進退駆動源11Aを制御して、転造用工具14の左右位置を調整すると共に、第2の左右進退駆動源11Bを制御して、サポート部材15の左右位置を調整する。このとき、検出手段12A,12Bの少なくともどちらかの検出値が前記設定許容範囲を超えると、押付けバランス制御手段22から第2制御部21Bに、検出値が前記設定許容範囲に入るようにサポート部材15の左右位置を変更する指令が出されて、第2の左右進退駆動源11Bの駆動によりサポート部材15の左右位置が調整される。すなわち、転造用工具14の押付け力に対して、サポート部材15の押付け力が弱すぎるときは、サポート部材15を主軸4の中心O側へ進め、弱すぎるときは後退させる。
【0031】
この構成であると、転造用工具14がワークWを押す力とサポート部材15がワークWを押す力とのバランスを取りながら、転造加工を行える。そのため、転造用工具14の押付け力でワークWの位置や姿勢が変化した状態で転造加工されることが精度良く防止され、より一層高精度に加工することができる。また、両側から転造用工具14を押付ける場合と異なり、サポート部材15は転造用加工に直接には関与しないため、転造用工具14がワークWを押す力とサポート部材15がワークWを押す力とは、ワークWの位置や姿勢に変化が生じない程度に、ある程度の許容範囲内でバランスが取れていればよい。そのため、簡単な制御で、高精度の転造加工を行える。
【0032】
図4は、異なる転造加工の方法を示す。この方法は、第2の工具支持体5Bに、主軸4の中心Oと平行な軸回りに回転自在なチャック16を取付け、ワークWの軸方向の内径部の両端を、主軸4のチャック6と第2の工具支持体5Bの前記チャック16とで支持し、第1の工具支持体5Bに取付けた転造用工具14により、ワークWの外周面に転造加工を行う。この場合、チャック16が、転造用工具14の押付け力に対抗してワークWを支持するサポート部材となる。この方法によっても、前記方法と同様に、転造ローラ14bのワークWへの押付け力を支えながら、ワークWの外周面に転造加工を行うことができる。
【0033】
このように、この工作機械は1台で、第1および第2の工具支持体5A,5Bにそれぞれ切削用工具13を支持させて、これら切削用工具13によりワークWを両側から同時に切削する加工と、第1の工具支持体5Aで転造用工具14を支持させると共に、第2の工具支持体5Bでサポート部材15を支持させて、転造用工具14の押付け力に対抗してサポート部材15(またはチャック16)によりワークWを支持した状態で、転造用工具14によりワークWの外周面に転造する加工とを行える。そのため、切削加工に比べて転造加工の頻度が少ない場合、転造専用機を準備する必要がなくなり、機械の設備コストを低減できる。
【0034】
転造用工具14とサポート部材15(またはチャック16)とで転造加工をする際、転造用工具14の押付け力に対抗してサポート部材15でワークWを支持するため、転造用工具14の押付け力で主軸4が曲がったり、転造用工具14の押付け力にチャック6のワーク把持力が負けたりすることがなく、軸方向に均一な転造加工を行える。サポート部材15は直接に転造に関与しないため、転造用工具14の位置を制御するだけで転造寸法が変わる。そのため、転造寸法の調整が容易である。また、サポート部材15の位置は厳密に制御しなくてよいので、構成を簡素にできる。
【0035】
上記実施形態では、主軸4の左右両側に2つの工具支持体5A,5Bがそれぞれ配置され、転造用工具14とサポート部材15をワークWに左右両側から押付ける構成であるが、左右両側以外、例えば上下両側から押付ける構成であってもよい。
また、上記実施形態の工作機械本体1は1軸のタレット旋盤であるが、2軸以上の旋盤であってもよい。その場合、少なくとも1つの主軸を挟む両側に2つの工具支持体が配置されており、両工具支持体にそれぞれ支持された切削用工具で、ワークを両側から同時に切削加工できるものとする。また、片方の工具支持体に支持された転造用工具と、他方の項工具支持体に支持されたサポート部材とでワークに転造加工を施すことができるものとする。
【符号の説明】
【0036】
1…工作機械本体
2…制御装置
4…主軸
5A…第1の工具支持体
5B…第2の工具支持体
13…切削用工具
14…転造用工具
15…サポート部材
11A…第1の左右進退駆動源(第1の進退駆動源)
11B…第2の左右進退駆動源(第2の進退駆動源)
12A,12B…検出手段
15c…サポートローラ
16…チャック(サポート部材)
W…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを支持して回転する主軸と、この主軸を挟む両側に主軸に対し接近および離反する方向に位置変更可能に設けられ、それぞれが少なくとも1つの切削用工具を支持する第1および第2の工具支持体とを備え、前記第1および第2の工具支持体にそれぞれ支持された両切削用工具を、前記主軸に支持されたワークに接触させて、ワークの両側から同時に切削加工をすることが可能な工作機械であって、
前記第1の工具支持体で、前記切削用工具とは別に、前記主軸の中心と平行な軸回りに回転自在な転造用工具を支持する共に、前記第2の工具支持体で、前記切削用工具とは別に、ワークと共回りによる回転が自在なサポート部材を支持し、前記主軸に支持されて回転するワークの外周面に前記転造用工具を押付け、かつこの転造用工具の押付け力に対抗して前記サポート部材によりワークを支持した状態で、ワークの外周面に転造加工を行うようにした工作機械。
【請求項2】
前記第1および第2の工具支持体をそれぞれ主軸に対し接近および離反する方向に進退させる第1および第2の進退駆動源と、これら進退駆動源を数値制御する制御装置とを備え、前記転造用工具とサポート部材とによる転造加工時に前記第1の進退駆動源に作用する負荷、および前記第2の進退駆動源に作用する負荷のそれぞれを検出する検出手段を設け、これら検出手段の検出値に基づき、前記転造用工具がワークを押す力と前記サポート部材がワークを押す力とが設定許容範囲内で均衡するように、前記第1および第2の進退駆動源の少なくともいずれかの進退駆動源の出力を制御する押付けバランス制御手段を前記制御装置に設けた請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
前記サポート部材はワークの外周面にそれぞれ接触して回転する2つのローラを有し、1つの前記転造用工具をワークの外周面の一方側に接触させ、かつ前記サポート部材の前記2つのローラを、ワーク外周面の他方側における、前記転造用工具と前記主軸の中心とを結ぶ直線を挟んで両側の箇所にそれぞれ接触させて、転造加工を行う請求項1または請求項2記載の工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200756(P2012−200756A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66967(P2011−66967)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】