説明

工具容器

【課題】棒状工具のための収容空間を構成すべく容易に嵌め合わせ可能な同一形状の両ケーシング部材を備える工具容器を提供する。
【解決手段】一側及び他側ケーシング部材10、20は、同一の構成に形成され、ケーシング部材20がその左壁20b及び右壁20cにて、それぞれケーシング部材10の左壁10b及び右壁10cに上方から係合している。ケーシング部材20の左壁20bの内壁部22及び右壁20cの内壁部24が、それぞれケーシング部材10の左壁10bの内壁部12及び右壁10cの内壁部11に上方から係合し、ケーシング部材20の左壁20bの外壁部21及び右壁20cの外壁部23が、それぞれケーシング部材10の左側突出壁部P1及び右側突出壁部P2上に係合し、ケーシング部材20の左側突出壁部Q1及び右側突出壁部Q2が、それぞれケーシング部材10の左壁10bの外壁部12及び右壁10cの外壁部13上に係合している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドリルやエンドミル等の棒状工具を収容するに適した工具容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の工具容器においては、下記特許文献に記載の工具ケースが提案されている。この工具ケースは、断面正方形状の下ケースと、この下ケースにその開口端部から嵌装される断面正方形状の上ケースとを備えている。
【0003】
しかして、棒状工具を上記工具容器に収容するにあたっては、棒状工具を下ケース内に挿入した後、下ケースの開口端部から露出する棒状ケースの露出部位を包囲するようにして下ケースにその開口端部から上ケースを嵌装することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−284267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記工具容器においては、下ケース及び上ケースが、共に、合成樹脂を用いて、ブロー成型により形成されている。ここで、下ケース及び上ケースは、相互に形状を異にするため、下ケース及び上ケースをそれぞれブロー成型により形成するには、下ケース用金型及び上ケース金型が、それぞれ、独自に必要とされる。従って、下ケース及び上ケースの製造工程が複雑になるとともに製造コストの上昇を招くという不具合がある。
【0006】
また、上記工具容器においては、下ケース及び上ケースが共に断面正方形状にて筒状に形成されている。このため、上述のように棒状工具を収容するにあたり、上ケースを下ケースに嵌装するには、上ケースの開口端部を下ケースの開口端部に同軸的に対向させなければならない。しかしながら、上ケース及び下ケースの各開口端部の開口形状は、相互に嵌め合わせ形状となっていることから、上述のような嵌装作業は面倒であるという不具合もある。
【0007】
そこで、本発明は、以上のようなことに対処するため、棒状工具のための収容空間を構成すべく共に同一形状でもって容易に嵌め合わせ可能に形成するように工夫を凝らしてなる両ケーシング部材を備えてなる工具容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の解決にあたり、本発明に係る工具容器は、請求項1の記載によれば、
同一の構成を有するように形成してなる一側及び他側の両ケーシング部材(10、20)を備えて、
これら一側及び他側の両ケーシング部材の各々は、
長手矩形状底壁(10a、20a)と、
この底壁の左縁部、右縁部、前端部及び後端部からそれぞれ上記底壁に対しL字状に折れ曲がるように延出されて上記底壁とともに断面コ字状収容部(S、Sa)を構成する左壁(10b、20b)、右壁(10c、20c)、前壁(10d、20d)及び後壁(10e、20e)と、
上記前壁の前方へ突設してなる前側ヒンジ部(10g、20g)と、
上記後壁の後方へ突設してなる後側ヒンジ部(10h、20h)とを具備しており、
一側ケーシング部材の上記前側ヒンジ部(10g)及び上記他側ケーシング部材の上記後側ヒンジ部(20h)は、互いに係脱可能にヒンジ結合するように第1ヒンジ機構(Hf)として構成されており、
一側ケーシング部材の上記後側ヒンジ部(10h)及び他側ケーシング部材の上記前側ヒンジ部(20g)は、それぞれ、他側ケーシング部材の上記後側ヒンジ部(20h)及び一側ケーシング部材の上記前側ヒンジ部(10g)と同様に形成されて、互いに係脱可能にヒンジ結合するように第2ヒンジ機構(Hr)として構成されており、
他側ケーシング部材の上記前側ヒンジ部及び上記後側ヒンジ部をそれぞれ一側ケーシング部材の上記後側ヒンジ部及び上記前側ヒンジ部にヒンジ結合させるようにして、他側ケーシング部材の上記収容部を一側ケーシング部材の上記収容部に係合させたとき、当該両収容部は棒状工具を収容するための収容空間を構成する。
【0009】
これによれば、両ケーシング部材は、共に、同一の構成を有するように形成されている。従って、工具容器が、例えば、合成樹脂製或いは金属製である場合に、両ケーシング部材の各成形用金型が必要であるとき、当該各成型用金型は、一側ケーシング部材及び他側ケーシング部材の各々に対し別々に準備することを必要とせず、両ケーシング部材の一方に対する金型を準備すればよい。
【0010】
その結果、両ケーシング部材の各成形は、同一の金型を用いて行うことで、当該工具容器の製造工程や製造作業が非常に簡素化されるのは勿論のこと、金型コスト、ひいては、当該工具容器の製造コストが低減され得る。
【0011】
また、上述のように構成した工具容器を閉じるにあたっては、上述のごとく、他側ケーシング部材の上記前側ヒンジ部及び上記後側ヒンジ部をそれぞれ一側ケーシング部材の上記後側ヒンジ部及び上記前側ヒンジ部にヒンジ結合させるようにして、他側ケーシング部材の上記収容部を一側ケーシング部材の上記収容部に係合させる。すると、これに伴い、当該両収容部は棒状工具を収容するための収容空間を構成する。
【0012】
従って、棒状工具を当該工具容器内に収容した場合、当該棒状工具は、上述のような当該工具容器の閉状態のもとに、両ケーシング部材の各収容部からなる収容空間内にて密封されることとなる。その結果、上記棒状工具に油が付着していても、この油が両ケーシング部材の間から漏れ出にくく、また、異物が両ケーシング部材の間から上記収容空間内に混入しにくい。
【0013】
また、上述のように他側ケーシング部材の上記収容部を一側ケーシング部材の上記収容部に係合させることで、他側ケーシング部材の左壁、右壁、前壁及び後壁が、その各延出端部にて、それぞれ、一側ケーシング部材の左壁、右壁、前壁及び後壁の各延出端部に係合する。
【0014】
従って、当該工具容器が一側ケーシング部材の底壁にて例えば作業台上に置かれた状態にあるとき、当該工具容器を、他側ケーシング部材の底壁から下方に向けて指で押さえ込んでも、この押さえ込みによる外力が、他側ケーシング部材の左壁、右壁、前壁及び後壁を介しその各壁面方向に沿い一側ケーシング部材の左壁、右壁、前壁及び後壁にその各壁面方向に向けて作用することとなる。その結果、上述のように外力が工具容器に作用しても、当該工具容器は潰れる等の変形を生じにくく上記外力に対し良好な強度を確保し得る。
【0015】
また、上述のように閉じた状態にある当該工具容器をその後端部側から開くにあたっては、他側ヒンジ機構のヒンジ結合を解除することで、例えば、他側ケーシング部材を一側ケーシング部材に対しその後端部側から傾斜状に開く。一方、当該工具容器をその前端部側から開くにあたっては、一側ヒンジ機構のヒンジ結合を解除することで、例えば、一側ケーシング部材を他側ケーシング部材に対しその前端端部側から傾斜状に開く。
【0016】
これにより、当該工具容器を、その後端部側或いは前端部側から容易にかつ確実に開くことができるのは勿論のこと、棒状工具が当該工具容器に収容してあれば、当該棒状工具を容易に工具容器から取り出すことができる。
【0017】
また、上述のごとく当該工具容器をその後端部側或いは前端部側から開く過程においては、一側ケーシング部材は、一側ヒンジ機構或いは他側ヒンジ機構を介し他側ケーシング部材とヒンジ結合しているので、両ケーシング部材の一方が他方のケーシング部材から外れて、棒状工具と共に落下するという事態が発生することはない。
【0018】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の工具容器において、
一側及び他側の両ケーシング部材の各々にて、
上記左壁は、上記底壁の左縁部のうちその長手方向一側部位から当該底壁に対しL字状に折れ曲がって延出する左側外壁部(11、21)と、この左側外壁部にその内側から沿うように上記底壁の前後方向に亘り当該底壁から延出する左側内壁部(12、22)とからなり、
上記右壁は、上記底壁の右縁部のうち上記左縁部の上記長手方向一側部位に対向する長手方向一側対向部位から上記底壁に対しL字状に折れ曲がって延出する右側外壁部(13、23)と、この右側外壁部にその内側から沿うように上記底壁の前後方向に亘り当該底壁から延出してこの底壁、上記前後両壁及び上記左側内壁部とともに上記断面コ字状収容部(S、Sa)を構成する右側内壁部(14、24)とを設けてなり、
上記底壁の上記左縁部のうち長手方向他側部位(P1、Q1)は、その少なくとも一部にて、上記左側外壁部よりも左側へ突出して左側爪部(P1a、Q1a)を形成し、一方、上記底壁の上記右縁部のうち上記左縁部の上記長手方向他側部位に対向する長手方向他側対向部位(P2、Q2)は、その少なくとも一部にて、上記右側外壁部よりも右側へ突出して右側爪部(P2a、Q2a)を形成してなり、
他側ケーシング部材の上記前側ヒンジ部及び上記後側ヒンジ部をそれぞれ一側ケーシング部材の上記後側ヒンジ部及び上記前側ヒンジ部にヒンジ結合させるようにして、他側ケーシング部材の上記収容部を一側ケーシング部材の上記収容部に係合させたとき、当該両収容部は棒状工具を収容するための収容空間を構成し、
他側ケーシング部材(20)の上記左右両側外壁部(21、23)は、それぞれ、一側ケーシング部材(10)の上記底壁のうち上記左右両縁部の上記各長手方向他側部位(P1、P2)に係合し、一側ケーシング部材(10)の上記左右両側外壁部(11、13)は、それぞれ、他側ケーシング部材の上記底壁のうち上記左右両縁部の上記各長手方向他側対向部位(Q1、Q2)に係合し、
一側ケーシング部材(10)の上記左右両縁部の上記各長手方向他側部位(P1、P2)は、それぞれ、その上記左右両側爪部(P1a、P2a)にて、他側ケーシング部材(20)の上記左右両側外壁部(21、23)よりも左右に突出し、かつ、他側ケーシング部材の上記底壁のうち上記左右両縁部の上記各長手方向他側対向部位(Q1、Q2)は、それぞれ、その上記左右両側爪部(Q1a、Q2a)にて、一側ケーシング部材の上記左右両側外壁部(11、13)よりも左右に突出することを特徴とする。
【0019】
これによれば、上述のごとく、一側及び他側のケーシング部材の各左壁及び各右壁が、それぞれ、外壁部及び内壁部でもって構成されても、両ケーシング部材は、共に、同一の構成を有するように形成されている。従って、両ケーシング部材の各成形用金型は、請求項1と同様に、両ケーシング部材の一方に対する金型を準備して、両ケーシング部材の各成形を、同一の金型を用いて行うことで、当該工具容器の製造工程や製造作業が非常に簡素化されるのは勿論のこと、金型コスト、ひいては、当該工具容器の製造コストが低減され得る。
【0020】
また、上述のように構成した工具容器を閉じるにあたっては、上述のごとく、他側ケーシング部材の前側ヒンジ部及び後側ヒンジ部をそれぞれ一側ケーシング部材の後側ヒンジ部及び前側ヒンジ部にヒンジ結合させるようにして、他側ケーシング部材の収容部を一側ケーシング部材の収容部に係合させて、当該両収容部は棒状工具を収容するための収容空間を構成したとき、他側ケーシング部材(20)の左右両側外壁部(21、23)は、それぞれ、一側ケーシング部材(10)の底壁のうち左右両縁部の各長手方向他側部位(P1、P2)に係合し、一側ケーシング部材(10)の左右両側外壁部(11、13)は、それぞれ、他側ケーシング部材の底壁のうち左右両縁部の各長手方向他側対向部位(Q1、Q2)に係合する。
【0021】
従って、棒状工具を当該工具容器内に収容した場合、当該棒状工具は、上述のような当該工具容器の閉状態のもとに、両ケーシング部材の各収容部からなる収容空間内にて密封されることとなる。
【0022】
このとき、一側ケーシング部材の左側内壁部及び左側外壁部が、他側ケーシング部材の左側内壁部及び左側外壁部と共に、両ケーシング部材の各左壁を2重壁構造として構成し、かつ、一側ケーシング部材の右側内壁部及び右側外壁部が、他側ケーシング部材の右側内壁部及び右側外壁部と共に、両ケーシング部材の各右壁を2重壁構造として構成する。その結果、上記棒状工具に油が付着していても、この油がより一層両ケーシング部材の間から漏れ出にくく、また、異物が両ケーシング部材の間から上記収容空間内により一層混入しにくい。
【0023】
また、上述のように、一側ケーシング部材の左側内壁部及び左側外壁部が、他側ケーシング部材の左側内壁部及び左側外壁部と共に、両ケーシング部材の各左壁を2重壁構造として構成し、かつ、一側ケーシング部材の右側内壁部及び右側外壁部が、他側ケーシング部材の右側内壁部及び右側外壁部と共に、両ケーシング部材の各右壁を2重壁構造として構成するので、当該工具容器が一側ケーシング部材の底壁にて例えば作業台上に置かれた状態にあるときに、外力が当該工具容器に対しその両左側外壁部或いは両右側外壁部を介し底壁に平行な方向に作用しても、上述のような2重壁構造のもとに、両左側外壁部或いは両右側外壁部が左側内壁部或いは右側内壁部とともに、左右方向に対する外力に対し良好な強度を確保し得る。従って、当該工具容器が上述の左右方向に対する外力によって変形することはない。
【0024】
また、当該工具容器においては、他側ケーシング部材の両内壁部がそれぞれ一側ケーシング部材の両内壁部上に係合するのに加えて、上述のように、他側ケーシング部材(20)の上記左右両側外壁部(21、23)は、それぞれ、一側ケーシング部材(10)の上記底壁のうち上記左右両縁部の上記各長手方向他側部位(P1、P2)に係合し、一側ケーシング部材(10)の上記左右両側外壁部(11、13)は、それぞれ、他側ケーシング部材の上記底壁のうち上記左右両縁部の上記各長手方向他側対向部位(Q1、Q2)に係合する。
【0025】
従って、当該工具容器が一側ケーシング部材の底壁にて例えば作業台上に置かれた状態にあるとき、当該工具容器を、他側ケーシング部材の底壁から下方に向けて指で押さえ込んでも、この押さえ込みによる外力が、上述した両ケーシング部材の各2重壁構造のもとに、他側ケーシング部材の左壁、右壁、前壁及び後壁を介しその各壁面方向に沿い一側ケーシング部材の左壁、右壁、前壁及び後壁にその各壁面方向に向けて作用することとなる。その結果、上述のように外力が工具容器に作用しても、当該工具容器はより一層潰れる等の変形を生じにくく上記外力に対しより一層良好な強度を確保し得る。
【0026】
また、上述のように、他側ケーシング部材の収容部を一側ケーシング部材の収容部に係合させたとき、一側ケーシング部材(10)の左右両縁部の各長手方向他側部位(P1、P2)は、それぞれ、その左右両側爪部(P1a、P2a)にて、他側ケーシング部材(20)の左右両側外壁部(21、23)よりも左右に突出し、かつ、他側ケーシング部材の底壁のうち左右両縁部の各長手方向他側対向部位(Q1、Q2)は、それぞれ、その左右両側爪部(Q1a、Q2a)にて、一側ケーシング部材の左右両側外壁部(11、13)よりも左右に突出する。
【0027】
従って、上述のように閉じた状態にある当該工具容器をその後端部側或いは前端部側から開くにあたり、他側ヒンジ機構或いは一側ヒンジ機構のヒンジ結合は、一側ケーシング部材或いは他側ケーシング部材をその左右両側爪部とともに両指で挟持して行えば、両指の左右両側爪部からの外れを招くことなく、容易に解除し得る。
【0028】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項2に記載の工具容器において、
一側ヒンジ機構の上記前側ヒンジ部(10g)及び上記後側ヒンジ部(20h)の一方(10g)は、一側ケーシング部材の前壁からその前方へ突設されて当該前壁の延出方向に向け開口するように形成してなる凹部(15a)と、この凹部から前方へ突出する舌片(16)とを備え、
一側ヒンジ機構の上記前側ヒンジ部及び上記後側ヒンジ部の他方(20h)は、他側ケーシング部材の左右両壁のうち後壁に対する各後方延出部位の間に上記凹部と係脱可能に支持されるロッド(28)を備えており、
前記他側ヒンジ機構の上記前側ヒンジ部(20g)及び上記後側ヒンジ部(10h)の一方(20g)は、他側ケーシング部材の前壁からその前方へ突設されて当該前壁の延出方向に向け開口するように形成してなる凹部(25a)と、この凹部から前方へ突出する舌片(26)とを備え、
他側ヒンジ機構の上記前側ヒンジ部(20g)及び上記後側ヒンジ部(10h)の他方(10h)は、一側ケーシング部材の左右両壁のうち後壁に対する各後方延出部位の間に一側ケーシング部材の上記前側ヒンジ部の上凹部と係脱可能に支持されるロッド(18)を備えることを特徴とする。
【0029】
これによれば、工具容器を前端部側から開くにあたっては、前側ヒンジ機構の前側ヒンジ部の舌片を一側ケーシング部材の底壁の前端部側へ傾斜させるように軽く指で押さえる。
【0030】
このような状態では、前側ヒンジ部の凹部が広く開く。このため、一側ケーシング部材を、その両外壁部を両指で挟み込むようにして、他側ケーシング部材に対しその左右両側爪部に指を引っかけて下方へ引っ張ると、前側ヒンジ部が、その凹部にて、後側ヒンジ部のロッドから容易に外れて、他側ヒンジ機構を基準にして、他側ケーシング部材から下方へ傾斜状に回動する。
【0031】
これにより、当該工具容器を、その前端部側から容易にかつ確実に開くことができるのは勿論のこと、棒状工具が当該工具容器に収容してあれば、当該棒状工具を容易に工具容器から取り出すことができる。
【0032】
また、当該工具容器を後端部側から開くにあたっては、他側ヒンジ機構の前側ヒンジ部の舌片を他側ケーシング部材の底壁の後端部側へ傾斜させるように軽く指で押さえる。
【0033】
このような状態では、他側ヒンジ機構の前側ヒンジ部におけるブロックの凹部が広く開く。このため、他側ケーシング部材を、その両外壁部を挟み込むようにして、一側ケーシング部材に対しその左右両側爪部に指を引っかけて上方へ引っ張ると、他側ヒンジ機構の前側ヒンジ部が、その凹部にて、他側ヒンジ機構の後側ヒンジ部のロッド18から容易に外れて、一側ヒンジ機構を基準にして、一側ケーシング部材から上方へ傾斜状に回動する。
【0034】
これにより、当該工具容器を、その後端部側から容易にかつ確実に開くことができるのは勿論のこと、棒状工具が当該工具容器に収容してあれば、当該棒状工具を容易に工具容器から取り出すことができる。
【0035】
また、上述のごとく当該工具容器をその後端部側或いは前端部側から開く過程においては、一側ケーシング部材は、一側ヒンジ機構或いは他側ヒンジ機構を介し他側ケーシング部材とヒンジ結合しているので、両ケーシング部材の一方が他方のケーシング部材から外れて、棒状工具と共に落下するという事態が発生することはない。
【0036】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る工具容器の一実施形態を閉状態にて示す斜視図である。
【図2】図1の工具容器を開状態にて示す斜視図である。
【図3】図1の一側ケーシング部材或いは他側ケーシング部材を示す斜視図である。
【図4】図3の一側ケーシング部材或いは他側ケーシング部材を示す平面図である。
【図5】図4の一側ケーシング部材或いは他側ケーシング部材を示す左側面図である。
【図6】図4の一側ケーシング部材或いは他側ケーシング部材を示す右側面図である。
【図7】図4の一側ケーシング部材或いは他側ケーシング部材を示す背面図である。
【図8】図4の一側ケーシング部材或いは他側ケーシング部材を示す前面図である。
【図9】図4の一側ケーシング部材或いは他側ケーシング部材を示す後面図である。
【図10】図4にて10−10線に沿う縦断面図である。
【図11】図4にて11−11線に沿う横断面図である。
【図12】図1の工具容器をその後端部側から開く状態を示す斜視図である。
【図13】図1の工具容器をその前端部側から開く状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の一実施形態を図面により説明する。
【0039】
図1は、本発明に係る工具容器の一実施形態を示している。当該工具容器は、長手状のもので、この工具容器は、ドリルやエンドミル等の棒状工具を収容するために用いられる。
【0040】
なお、図1において、当該工具容器の図示長手方向左側及び図示長手方向右側が、当該工具容器の前側及び後側に対応する。従って、当該工具容器の幅方向両側が、当該工具容器の左右両側に対応する。また、図1において、当該工具容器の厚さ方向両側が当該工具容器の上下両側に対応する。
【0041】
当該工具容器は、図1或いは図2にて示すごとく、長手状の両側ケーシング部材10、20でもって構成されている。これら両側ケーシング部材10、20は、共に、合成樹脂射出成形機(図示しない)による射出成形によって、例えば、ポリプロピレン(PP)を用いて、同一の構成を有するように形成されており、当該両側ケーシング部材10、20は、互いに係脱可能に嵌め合わされて、当該工具容器を構成する。なお、一側ケーシング部材10は、黒色のポリプロピレンにより形成され、他側ケーシング部材20は、白色透明のポリプロピレンにより形成されている。
【0042】
一側ケーシング部材10は、図2〜図7のいずれかにて示すごとく、細幅長手状の底壁10aと、左右両壁10b、10cと、前後両壁10d、10eとを備えている。
【0043】
ここで、底壁10aは、平板状に形成されている。左右両壁10b、10cは、それぞれ、底壁10aの左右両縁部から当該底壁10aに直交して上方へ一体的に延出されており、前後両壁10d、10eは、それぞれ、底壁10aの前後両端部から当該底壁10aに直交して上方へ一体的に延出されている。
【0044】
左壁10bは、図2〜図5のいずれかにて示すごとく、外壁部11及び内壁部12を有している。なお、以下、外壁部11及び内壁部12は、それぞれ、左側外壁部11及び左側内壁部12ともいう。
【0045】
左側外壁部11は、底壁10aの左縁部のうち前側半分部位から当該底壁10aに直交して上方へ一体的に延出されている。この左側外壁部11は、図2、図3或いは図5にて示すごとく、両円弧部11a、11bを有しており、これら両円弧部11a、11bは、左側外壁部11の後端部にて、当該工具容器の下面から上面までの厚さ方向中央部から互いに逆向きに凸な円弧状に延出するように上下方向へ形成されている。ここで、両円弧部11a、11bは、その各延出基部にて、当該工具容器の上記厚さ方向中央部を通る厚さ方向線と接するように互いに上下方向へ延出している(図5参照)。
【0046】
また、左側内壁部12は、左側外壁部11の内側に沿い、底壁10aのうちその前端部よりも後側部位(図3及び図4参照)から底壁10aの後端部(図3及び図4参照)にかけて位置するように、底壁10aに直交して上方へ延出されている。
【0047】
ここで、左側内壁部12は、上記工具容器の下面から上面までの厚さの半分の厚さのうち底壁10aの肉厚の2倍を除く長さだけ当該底壁10aの上面から上方へ延出している。また、左側内壁部12は、その前側半分部位12a(図4参照)にて、左側外壁部11に沿いその内側から一体的に形成されており、左側内壁部12の後側半分部位12bは、左側外壁部11の後方にて左方に向け露出している。これに伴い、底壁10aの左縁部は、その後側半分部位(以下、符号P1にて示す)にて、左側外壁部11の後方にて、左側内壁部12の後側半分部位12bから左側へ突出している。ここで、当該後側半分部位P1は、その左端突出部にて、左側外壁部11よりも左側へ突出し、左側爪部P1aを形成する。
【0048】
右壁10cは、図2〜図4及び図6のいずれかにて示すごとく、外壁部13及び内壁部14を有している。なお、以下、外壁部13及び内壁部14は、右側外壁部13及び右側内壁部14ともいう。
【0049】
右側外壁部13は、左壁10bの左側外壁部11に平行となるように対向して、底壁10aの右縁部のうち前側半分部位から当該底壁10aに直交して上方へ一体的に延出されている。
【0050】
この右側外壁部13は、図2、図3或いは図6にて示すごとく、両円弧部13a、13bを有しており、これら両円弧部13a、13bは、両円弧部11a、11bと同様の構成を有するとともに両円弧部11a、11bに対向するように、
右側外壁部13の後端部にて、当該工具容器の上記厚さ方向中央部から互いに逆向きに凸な円弧状に延出するように上下方向へ形成されている。ここで、両円弧部13a、13bは、その各延出基部にて、当該工具容器の上記厚さ方向中央部を通る厚さ方向線と接するように互いに上下方向へ延出している(図6参照)。
【0051】
また、右側内壁部14は、左壁10bの内壁部12に平行となるように対向するとともに底壁10aのうちその前端部よりも後側部位(図3及び図4参照)から底壁10aの後端部(図3及び図4参照)にかけて位置するように、右側外壁部13の内側に沿い、底壁10aに直交して上方へ延出している。
【0052】
ここで、右側内壁部14は、左壁10bの左側内壁部12と同一の長さだけ当該底壁10aの上面から上方へ延出している。また、右側内壁部14は、その前側半分部位14aにて、右側外壁部13に沿いその内側から一体的に形成されており、右側内壁部14の後側半分部位14bは、右側外壁部13の後方にて右側へ露出している。これに伴い、底壁10aの右縁部は、その後側半分部位(以下、符号P2により示す)にて、右側外壁部13の後方において、右側内壁部14の後側半分部位14bから右側へ突出している。ここで、当該後側半分部位P2は、その右端突出部にて、右側外壁部13よりも右側へ突出し、右側爪部P2aを形成する。
【0053】
前後両壁10d、10eのうち、前壁10dは、底壁10aのうちその前端部の後側部位から上方へ延出されており、当該前壁10dは、その左右両側端部にて、両内壁部12、14に直交するように当該両内壁部12、14の各前端部と一体的に形成されている。
【0054】
また、後壁10eは、底壁10aのうちその後端部よりも前側部位から上方へ延出されており、当該後壁10eは、その左右両側端部にて、両内壁部12、14に直交するように当該両内壁部12、14のうちその各後端部よりも各前側部位と一体的に形成されている。
【0055】
以上のように構成することにより、左右両壁10b、10cの各内壁部12、14及び前後両壁10d、10eは、断面コの字状の収容部Sa(図3或いは図4参照)を一側ケーシング部材10の底壁10a上に形成する。なお、収容部Saは、その開口部にて、上方へ開口している。
【0056】
また、一側ケーシング部材10は、図3〜図7のいずれかにて示すごとく、両ヒンジ部10g、10hを有しており、ヒンジ部10gは、一側ケーシング部材10の前端部に設けられており、一方、ヒンジ部10hは、一側ケーシング部材10の後端部に設けられている。
【0057】
ヒンジ部10gは、他側ケーシング部材20のヒンジ部20h(後述する)と共に、前側ヒンジ機構Hfを構成する。このヒンジ部10gは、立方体状のブロック15と、舌片16とを備えており、ブロック15は、左右両側外壁部11、13の各前端部の間にて底壁10aの前端部及び前壁10dの左右方向中央部と一体になるように底壁10aの前端部上に突出形成されている。
【0058】
ここで、ブロック15は、その上端部にて、前壁10dの上端部よりも上方へ突出されており、当該ブロック15の前端部は、底壁10a及び左右両側外壁部11、13の前端部よりも前方へ突出されている(図3、図4、図5及び図8参照)。
【0059】
また、当該ブロック15は、図4及び図10にて示すごとく、U字状凹部15aを有しており、この凹部15aは、ブロック15をその上面から下方に向けてU字状に切り欠くことで、形成されている。これにより、凹部15aは、上方及び左右方向に開口するように形成されており、この凹部15aのU字状内面のうち前側上端部には、左右方向に延在する隆起部15bが、上記U字状内面のうち後側上端部に向けて隆起形成されている。なお、盗み孔部17が、図4にて例示するごとく、底壁10aの前端部の左右方向中央部位及びこの左右方向中央部位に対するブロック15の対応部位に亘り、U字状凹部15aから底壁10aの前端部の左右方向中央部位にかけて形成されており、この盗み孔部17は、一側ケーシング部材10の樹脂成形の際に形成される。
【0060】
舌片16は、底壁10aの上面に平行となるように、ブロック15の前側上端部から前方を延出されており、この舌片16の上面には、滑り止め部16aが、左右方向に延在するように隆起形成されている。
【0061】
ヒンジ部10hは、他側ケーシング部材20のヒンジ部20g(後述する)と共に、後側ヒンジ機構Hrを構成する。このヒンジ部10hは、図2、図4、図5或いは図6にて示すごとく、ロッド18を有しており、このロッド18は、その左右両端部にて、後壁10eの上端部から前方へ間隔をおいて、ケーシング部材10の左右両側内壁部12、14の各後端部上に固着されている。これにより、当該ロッド18は、後壁10eの上端部との間に係止孔部18a(図4参照)を形成する。
【0062】
一方、ケーシング部材20は、上述したごとく、ケーシング部材10と同様の形状に構成されている。従って、このケーシング部材20は、ケーシング部材10の底壁10a、両後側半分部位P1、P2、左右両側爪部P1a、P2a、左右両壁10b、10c、前後両壁10d、10e及び両ヒンジ部10g、10hにそれぞれ対応する底壁20a、両後側半分部位Q1、Q2、左右両側爪部Q1a、Q2a、左右両壁20b、20c、前後両壁20d、20e及び両ヒンジ部20g、20hでもって、ケーシング部材10と同様の形状に形成されている(図1〜図7参照)。
【0063】
ここで、ケーシング部材20において、左壁20bは、左壁10bの左側外壁部11及び左側内壁部12にそれぞれ対応する左側外壁部21及び左側内壁部22でもって左壁10bと同様に形成され、右壁20cは、右壁10cの右側外壁部13及び右側内壁部14にそれぞれ対応する右側外壁部23及び右側内壁部24でもって右壁20bと同様に形成されている(図1〜図6参照)。これにより、左側内壁部22、右側内壁部24及び前後両壁20d、20eが、ケーシング部材10の収容部Sに対応する収容部Sa(図2或いは図3参照)を構成する。
【0064】
なお、左側外壁部21は、左側外壁部11の両円弧部11a、11bに対応する両円弧部21a、21bを有するとともに、右側外壁部23は、右側外壁部12の両円弧部12a、12bに対応する両円弧部23a、23bを有する。
【0065】
また、ケーシング部材20において、ヒンジ部20gは、ヒンジ部10gのブロック15及び舌片16にそれぞれ対応するブロック25及び舌片26でもって、ヒンジ部10gと同様の構成にて、ケーシング部材20の前端部に設けられ、ヒンジ部20hは、ヒンジ部10hのロッド18に対応するロッド28を有して、ヒンジ部10hと同様の構成にて、ケーシング部材20の後端部に設けられている(図3及び図4参照)。
【0066】
なお、本実施形態では、当該工具容器は上述のごとくポリプロピレン(PP)でもって形成されているが、当該工具容器の各外壁部及び各内壁部は、それぞれ、ポリプロピレン(PP)の硬さのもと指による力程度では変形しにくい厚さに形成されている。
【0067】
以上のように構成した本実施形態において、当該工具容器を構成する両側ケーシング部材10、20は、上述のごとく、共に、合成樹脂射出成形機による射出成形でもって、同一の構成を有するように形成されている。
【0068】
従って、合成樹脂射出成形機による射出成形にあたり必要とされる両ケーシング部材10、20の各成形用金型は、双方を別々に準備することを必要とせず、両ケーシング部材10、20の一方に対する金型を準備すればよい。
【0069】
その結果、両ケーシング部材10、20の各射出成形は、同一の金型を用いて行うことで、当該工具容器の製造工程や製造作業が非常に簡素化されるのは勿論のこと、金型コスト、ひいては、当該工具容器の製造コストが低減され得る。
【0070】
また、上述のように構成した当該工具容器が、例えば、図1にて示す状態にあるものとする。このとき、ケーシング部材20が、その収容部Sbの開口部にて、ケーシング部材10の収容部Sの開口部に係合するようにして当該ケーシング部材10に嵌め合わされて当該工具容器を閉じている。このことは、両ケーシング部材10、20の各収容部S、Saが閉じてエンドミル等の棒状工具を収容する収容空間を形成することを意味する。
【0071】
このように工具容器を閉じた状態においては、ケーシング部材20が、その左壁20b及び右壁20cにて、それぞれ、ケーシング部材10の左壁10b及び右壁10cに上方から係合している。
【0072】
このとき、ケーシング部材20の左壁20bの左側内壁部22及び右壁20cの右側内壁部24が、それぞれ、ケーシング部材10の左壁10bの左側内壁部12及び右壁10cの右側内壁部14に上方から係合し、ケーシング部材20の左壁20bの左側外壁部21及び右壁20cの右側外壁部23が、それぞれ、ケーシング部材10の後側半分部位P1及びの後側半分部位P2上に係合し、かつ、ケーシング部材20の後側半分部位Q1及び後側半分部位Q2が、それぞれ、ケーシング部材10の左壁10bの左側外壁部12及び右壁10cの右側外壁部13上に係合している。
【0073】
ここで、ケーシング部材20の左右両壁20b、20cが、上述のごとく底壁20aから延出するように構成され、ケーシング部材10の左右両壁10b、10cが、上述のごとく底壁10aから延出するように構成されている。さらに、ケーシング部材20の左側外壁部21の両円弧部21a、21b及び右側外壁部23の両円弧部23a、23bが、それぞれ、上述のごとく、ケーシング部材10の左側外壁部11の両円弧部11a、11b及び右側外壁部13の両円弧部23a、13bと同様に構成されている。
【0074】
従って、上述のように工具容器を閉じた状態では、左壁20bの左側外壁部21及び左側内壁部22の各延出端部が、それぞれ、ケーシング部材10の後側半分部位P1上及び左側内壁部12の延出端部上に一様に係合し、右壁20cの右側外壁部23及び右側内壁部24の各延出端部が、それぞれ、ケーシング部材10の後側半分部位P2上及び右側内壁部14の延出端部上に一様に係合し、ケーシング部材20の後側半分部位Q1及び後側半分部位Q2が、それぞれ、ケーシング部材10の左壁10bの左側外壁部11の延出端部上及び右壁10cの右側外壁部13の延出端部上に一様に係合し、また、左側外壁部21の両円弧部21a、21bが左側外壁部11の両円弧部11a、11bに一様に係合し、かつ、右側外壁部23の両円弧部23a、21bが右側外壁部12の両円弧部12a、11bに一様に係合している。このため、当該工具容器は、両ケーシング部材10、20により一様に閉じられている。
【0075】
また、このような状態にあっては、ケーシング部材20のヒンジ部20hが、ケーシング部材10のヒンジ部10gにヒンジ結合するとともにケーシング部材20のヒンジ部20gが、ケーシング部材10のヒンジ部10hにヒンジ結合している。
【0076】
ここで、ヒンジ部20hが、ロッド28にて、ヒンジ部10gのブロック15の凹部15a内に係合して、隆起部15bにより抜け止めされている。一方、ヒンジ部10hが、ロッド18にて、ヒンジ部20gのブロック25の凹部25a内に係合して、隆起部25bにより抜け止めされている。このため、上述した工具容器は、上述した両ヒンジ部20h、10gのヒンジ結合及び両ヒンジ部20g、10hのヒンジ結合のもとに、確実に閉状態に保持され得る。
【0077】
従って、棒状工具を当該工具容器内に収容した場合、当該棒状工具は、上述のような当該工具容器の閉状態のもとに、両ケーシング部材10、20の各収容部S、Saからなる収容空間内にて密封されることとなる。その結果、上記棒状工具に油が付着していても、この油が両ケーシング部材10、20の各収容部S、Saの開口部の間から漏れ出ることがなく、また、異物が両ケーシング部材10、20の各収容部S、Saの開口部の間から上記収容空間内に混入することもない。
【0078】
また、当該工具容器においては、上述のごとく、ケーシング部材20の両内壁部22、24がそれぞれケーシング部材10の両内壁部12、14上に係合するのに加えて、ケーシング部材20の両外壁部21、23がそれぞれケーシング部材10の両後側半分部位P1、P2上に係合するとともにケーシング部材20の両後側半分部位Q1、Q2がケーシング部材10の両外壁部11、13上に係合している。
【0079】
これにより、当該工具容器は、外壁部11及び後側半分部位Q1の相互係合と外壁部21及び後側半分部位P1の相互係合との双方からなる2重壁相互係合と、外壁部13及び後側半分部位Q2の相互係合及び外壁部23及び後側半分部位P2の相互係合との双方からなる2重壁相互係合のもとに、閉状態に保持されることとなる。ここで、当該工具容器の各外壁部及び各内壁部は、上述したごとく、それぞれ、ポリプロピレン(PP)の硬さのもと指による力程度では変形しにくい厚さに形成されている。
【0080】
従って、当該工具容器は、外力によっては容易には変形しない強度を維持することとなる。その結果、当該工具容器がケーシング部材10の底壁10aにて例えば作業台上に置かれた状態にて、当該工具容器を、ケーシング部材20の底壁20aから下方に向けて指で押さえ込んでも、指による外力がケーシング部材20の底壁20aの厚さ方向にケーシング部材10の底壁10aに向けて作用する。
【0081】
換言すれば、指による押さえ力が、ケーシング部材20の左壁20b、右壁20c、前壁20d及び後壁20eを介しその各壁面方向に沿いケーシング部材10の左壁10b、右壁10c、前壁10d及び後壁10eにその各壁面方向に向けて作用する。その結果、上述のように指による押さえ力が工具容器に作用しても、当該工具容器は潰れる等の変形を生じることなく上記外力に対し良好な強度を確保し得る。
【0082】
また、上述のように、ケーシング部材20の左側内壁部22及び左側外壁部21が、ケーシング部材10の左側内壁部12及び左側外壁部11と共に、両ケーシング部材20、10の各左壁を2重壁構造として構成し、かつ、ケーシング部材20の右側内壁部24及び右側外壁部23が、ケーシング部材10の右側内壁部14及び右側外壁部13と共に、両ケーシング部材10、20の各右壁を2重壁構造として構成する。
【0083】
従って、当該工具容器がケーシング部材10の底壁10aにて例えば作業台上に置かれた状態にあるときに、指による外力が当該工具容器に対しその両左側外壁部或いは両右側外壁部を介し底壁に平行な方向に作用しても、上述のような2重壁構造のもとに、両左側外壁部11、21或いは両右側外壁部13、23が両左側内壁部12、22或いは両右側内壁部14、24とともに、左右方向に対する外力に対し良好な強度を確保し得る。従って、当該工具容器が上述の左右方向に対する外力によって変形することはない。
【0084】
また、上述のように閉じた状態にある当該工具容器は、次のようにして、後端部側或いは前端部側から開く。
【0085】
例えば、当該工具容器を後端部側から開くにあたっては、上述のヒンジ機構Hr(ケーシング部材20のヒンジ部20g及びケーシング部材10のヒンジ部10h)のヒンジ連結を次のようにして解除する。即ち、ヒンジ部20gの舌片26をその隆起部26aを介しケーシング部材20の底壁20aの後端部側へ傾斜させるように軽く指で押さえる。このとき、隆起部26aが指の滑り止めの役割を果たすので、上述のごとく舌片26を指で押さえる際に指が舌片26から外れることなく当該舌片26を指でもって確実に抑えることができる。
【0086】
このような状態では、ヒンジ部20gにおけるブロック25の凹部25aの隆起部25bと後壁20dとの間隔が、ブロック25の弾力に抗して広くなる。このため、ケーシング部材20を、その両外壁部21、23にて一方の手の両指で挟み込むようにし、かつ、ケーシング部材10の左右両側爪部P1a、P2aを他方の手の両指で挟持するようにして、ケーシング部材10に対し上方へ引っ張る。ここで、左右両側爪部P1a、P2aが両外壁部11、13よりも左右両側へ突出しているので、ケーシング部材10をしっかりと把持することができる。
【0087】
従って、上述のようにケーシング部材20をケーシング部材10に対し上方へ引っ張ると、ヒンジ部20gが、その凹部25aにて、ケーシング部材10のヒンジ部10hのロッド18から容易に外れて、ヒンジ機構Hf(ケーシング部材20のヒンジ部20h及びケーシング部材10のヒンジ部10g)を基準にして、ケーシング部材10から上方(図12に図示矢印の方向参照)へ傾斜状に回動する。
【0088】
これにより、当該工具容器を、その後端部側から容易にかつ確実に開くことができるのは勿論のこと、棒状工具が当該工具容器に収容してあれば、当該棒状工具を容易に工具容器から取り出すことができる。
【0089】
一方、当該工具容器を前端部側から開くにあたっては、上述のヒンジ機構Hfのヒンジ連結を次のようにして解除する。即ち、ヒンジ部10gの舌片16をその隆起部16aを介しケーシング部材10の底壁10aの前端部側へ傾斜させるように軽く指で押さえる。このとき、隆起部16aが指の滑り止めの役割を果たすので、上述のごとく舌片16を指で押さえる際に指が舌片16から外れることなく当該舌片26を指でもって確実に抑えることができる。
【0090】
このような状態では、ヒンジ部10gにおけるブロック15の凹部15aの隆起部15bと後壁10eとの間隔がブロック15の弾力に抗して広くなる。このため、ケーシング部材10を、その両外壁部11、13にて一方の手の両指で挟み込むようにし、かつ、ケーシング部材20の左右両側爪部Q1a、Q2aを他方の手の両指で挟持するようにして、ケーシング部材20に対し下方へ引っ張る。
ここで、左右両側爪部Q1a、Q2aが両外壁部21、23よりも左右両側へ突出しているので、ケーシング部材10をしっかりと把持することができる。
【0091】
従って、上述のようにケーシング部材10をケーシング部材20に対し下方へ引っ張ると、ヒンジ部10gが、その凹部15aにて、ケーシング部材20のヒンジ部20hのロッド28から容易に外れて、ヒンジ機構Hrを基準にして、ケーシング部材20から下方(図13に図示矢印の方向参照)へ傾斜状に回動する。
【0092】
これにより、当該工具容器を、その前端部側或いは後端部側から容易にかつ確実に開くことができるのは勿論のこと、棒状工具が当該工具容器に収容してあれば、当該棒状工具を容易に工具容器から取り出すことができる。
【0093】
また、上述のごとく当該工具容器をその後端部側或いは前端部側から開く過程においては、ケーシング部材10は、ヒンジ機構Hf或いはヒンジ機構Hrを介しケーシング部材20とヒンジ結合しているので、両ケーシング部材10、20の一方が他方のケーシング部材から外れて、棒状工具と共に落下するという事態が発生することはない。
【0094】
なお、本発明の実施にあたり、上記実施形態に限ることなく、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)本発明の実施にあたり、両ヒンジ部10g、10hは、ケーシング部材10とは別の構成部として把握してもよく、また、両ヒンジ部20g、20hは、ケーシング部材20とは別の構成部として把握してもよい。即ち、工具容器は、ヒンジ機構Hf及びヒンジ機構Hrを、両ケーシング部材10、20には含まれない別の各機構を有するものと把握してもよい。
(2)本発明の実施にあたり、ケーシング部材10の両外壁部11、13の各後端部は、上記実施形態とは異なり、底壁10aの前後方向中央部にて当該底壁10aに対し直交するように形成されていてもよく、また、ケーシング部材20の両外壁部21、23の各後端部は、上記実施形態とは異なり、底壁20aの前後方向中央部にて当該底壁20aに対し直交するように形成されていてもよい。
(3)本発明の実施にあたり、当該工具容器の形成材料は、上記実施形態にて述べたポリプロピレンに限ることなく、各種の合成樹脂材料であってもよく、また、金属であってもよい。
(4)本発明の実施にあたり、両ケーシング部材10、20において、各左側外壁部11、21及び各右側外壁部13、23を廃止してもよい。なお、各左側内壁部12、22及び各右側内壁部14、24の各厚さは、それぞれ、各左側外壁部11、21及び各右側外壁部13、23の厚さを含む厚さであってもよい。
【符号の説明】
【0095】
10…一側ケーシング部材、10a、20a…底壁、10b、20b…左壁、
10c、20c…右壁、10d、20d…前壁、10e、20e…後壁、
10g、10h、20g、20h…ヒンジ部、11、13、21、23…外壁部、
12、14、22、24…内壁部、15a、25a…凹部、16、26…舌片、
18、28…ロッド、20…他側ケーシング部材、Hf、Hr…ヒンジ機構、
P1、P2、Q1、Q2…後側半分部位。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の構成を有するように形成してなる一側及び他側の両ケーシング部材を備えて、
これら一側及び他側の両ケーシング部材の各々は、
長手矩形状底壁と、
この底壁の左縁部、右縁部、前端部及び後端部からそれぞれ前記底壁に対しL字状に折れ曲がるように延出されて前記底壁とともに断面コ字状収容部を構成する左壁、右壁、前壁及び後壁と、
前記前壁の前方へ突設してなる前側ヒンジ部と、
前記後壁の後方へ突設してなる後側ヒンジ部とを具備しており、
前記一側ケーシング部材の前記前側ヒンジ部及び前記他側ケーシング部材の前記後側ヒンジ部は、互いに係脱可能にヒンジ結合するように第1ヒンジ機構として構成されており、
前記一側ケーシング部材の前記後側ヒンジ部及び前記他側ケーシング部材の前記前側ヒンジ部は、それぞれ、前記他側ケーシング部材の前記後側ヒンジ部及び前記一側ケーシング部材の前記前側ヒンジ部と同様に形成されて、互いに係脱可能にヒンジ結合するように第2ヒンジ機構として構成されており、
前記他側ケーシング部材の前記前側ヒンジ部及び前記後側ヒンジ部をそれぞれ前記一側ケーシング部材の前記後側ヒンジ部及び前記前側ヒンジ部にヒンジ結合させるようにして、前記他側ケーシング部材の前記収容部を前記一側ケーシング部材の前記収容部に係合させたとき、当該両収容部は棒状工具を収容するための収容空間を構成する工具容器。
【請求項2】
前記一側及び他側の両ケーシング部材の各々において、
前記左壁は、前記底壁の左縁部のうちその長手方向一側部位から当該底壁に対しL字状に折れ曲がって延出する左側外壁部と、この左側外壁部にその内側から沿うように前記底壁の前後方向に亘り当該底壁から延出する左側内壁部とからなり、
前記右壁は、前記底壁の右縁部のうち前記左縁部の前記長手方向一側部位に対向する長手方向一側対向部位から前記底壁に対しL字状に折れ曲がって延出する右側外壁部と、この右側外壁部にその内側から沿うように前記底壁の前後方向に亘り当該底壁から延出してこの底壁、前記前後両壁及び前記左側内壁部とともに前記断面コ字状収容部を構成する右側内壁部とを設けてなり、
前記底壁の前記左縁部のうち長手方向他側部位は、その少なくとも一部にて、前記左側外壁部よりも左側へ突出して左側爪部を形成し、一方、前記底壁の前記右縁部のうち前記左縁部の前記長手方向他側部位に対向する長手方向他側対向部位は、その少なくとも一部にて、前記右側外壁部よりも右側へ突出して右側爪部を形成してなり、
前記他側ケーシング部材の前記前側ヒンジ部及び前記後側ヒンジ部をそれぞれ前記一側ケーシング部材の前記後側ヒンジ部及び前記前側ヒンジ部にヒンジ結合させるようにして、前記他側ケーシング部材の前記収容部を前記一側ケーシング部材の前記収容部に係合させたとき、当該両収容部は棒状工具を収容するための収容空間を構成し、
前記他側ケーシング部材の前記左右両側外壁部は、それぞれ、前記一側ケーシング部材の前記底壁のうち前記左右両縁部の前記各長手方向他側部位に係合し、前記一側ケーシング部材の前記左右両側外壁部は、それぞれ、前記他側ケーシング部材の前記底壁のうち前記左右両縁部の前記各長手方向他側対向部位に係合し、
前記一側ケーシング部材の前記左右両縁部の前記各長手方向他側部位は、それぞれ、その前記左右両側爪部にて、前記他側ケーシング部材の前記左右両側外壁部よりも左右に突出し、かつ、前記他側ケーシング部材の前記底壁のうち前記左右両縁部の前記各長手方向他側対向部位は、それぞれ、その前記左右両側爪部にて、前記一側ケーシング部材の前記左右両側外壁部よりも左右に突出することを特徴とする請求項1に記載の工具容器。
【請求項3】
前記一側ヒンジ機構の前記前側ヒンジ部及び前記後側ヒンジ部の一方は、前記一側ケーシング部材の前記前壁からその前方へ突設されて当該前壁の延出方向に向け開口するように形成してなる凹部と、この凹部から前方へ突出する舌片とを備え、
前記一側ヒンジ機構の前記前側ヒンジ部及び前記後側ヒンジ部の他方は、前記他側ケーシング部材の前記左右両壁のうち前記後壁に対する各後方延出部位の間に前記凹部と係脱可能に支持されるロッドを備えており、
前記他側ヒンジ機構の前記前側ヒンジ部及び前記後側ヒンジ部の一方は、前記他側ケーシング部材の前記前壁からその前方へ突設されて当該前壁の延出方向に向け開口するように形成してなる凹部と、この凹部から前方へ突出する舌片とを備え、
前記他側ヒンジ機構の前記前側ヒンジ部及び前記後側ヒンジ部の他方は、前記一側ケーシング部材の前記左右両壁のうち前記後壁に対する各後方延出部位の間に前記一側ケーシング部材の前記前側ヒンジ部の前記凹部と係脱可能に支持されるロッドを備えることを特徴とする請求項2に記載の工具容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−12102(P2012−12102A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152615(P2010−152615)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(501298568)イトモル株式会社 (2)
【Fターム(参考)】