説明

差厚板材製造装置

【課題】高度な制御が要求されない差厚板材製造装置を提供する。
【解決手段】回転軸方向が平行である1対のプレスロール3、3と、前記1対のプレスロール3、3を所定間隔となるように支持する支持部5と、前記1対のプレスロール3、3の前記所定間隔よりも小さい幅に形成された挿入凸部21を有するプレス体2と、前記1対のプレスロール3、3のそれぞれの上方に板材Bを載置する載置部11a、12aを有する保持体1と、前記プレス体2を昇降駆動させる駆動機構6と、を備え、前記保持体1に載置された前記板材Bを前記挿入凸部21により押圧し、前記板材Bの一部を前記1対のプレスロール3、3の間に押し込むことにより、前記プレスロール3、3と前記挿入凸部21の両側面とにより前記板材Bの一部にプレス成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板厚の異なる板材を製造する差厚板材製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板厚の異なる1枚の板材を製造する方法として、テーラードブランクと呼ばれる工法が一般的に用いられている。このテーラードブランク工法は、板厚等の異なる複数の板材を溶接することにより1枚の板材とする工法であることから、部品点数を削減することができるとともに、製品組み立て加工時の作業の簡易化を図ることができる。
【0003】
しかし、前記のテーラードブランク工法は、複数の板材を溶接することにより1枚の板材を製造しているため、組み立て加工時において溶接部が破断し易いといった問題や、レーザ溶接装置等の設備が必要となるため設備費が増大するといった問題が存在する。
特に、アルミニウム合金からなる板材を材料として使用する場合は、溶接部の破断という問題が避け難かった。
【0004】
前記のような問題を解消するため、溶接を用いずに板厚の異なる1枚の板材を製造する技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、2つの圧延ロールの間に金属板材を通過させる途中において、ロールギャップを変更する方法が開示されている。また、特許文献2には、2つの圧延ロールの間に金属板材を通過させる途中においてロールギャップを変更するとともにロールを逆回転させる方法が開示されている。
これらの技術によると、溶接を用いていないことから、レーザ溶接装置等の設備が必要なくなるとともに、溶接部が存在しないことから、溶接部の破断という問題を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−079607号公報
【特許文献2】特許第3520188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1および特許文献2に開示された技術は、2つの圧延ロールにより板厚を変化させる構成であることから、板方向に高い圧力で押圧されている圧延ロール自体を回転制御させなければならなかった。
加えて、2つの圧延ロールの間に金属板材を通過させる途中でロールギャップを変更する必要があり、当該圧延ロールに対し高度な制御が必要であった。
【0007】
そこで、本発明は、高度な制御が要求されない差厚板材製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る差厚板材製造装置は、板材の一部が所定厚さとなるようにプレス成形を行う差厚板材製造装置であって、回転軸方向が平行である1対のプレスロールと、前記1対のプレスロールを所定間隔となるように支持する支持部と、前記1対のプレスロールの前記所定間隔よりも小さい幅に形成された挿入凸部を有するプレス体と、前記1対のプレスロールのそれぞれの上方に前記板材を載置する載置部を有する保持体と、前記プレス体を昇降駆動させる駆動機構と、を備え、前記保持体に載置された前記板材を前記挿入凸部により押圧し、前記板材の一部を前記1対のプレスロールの間に押し込むことにより、前記プレスロールと前記挿入凸部の両側面とにより前記板材の一部にプレス成形することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る差厚板材製造装置は、前記保持体は、前記載置部がそれぞれ設けられた1対の筐体からなり、前記筐体のそれぞれの内部に、前記プレスロールと、前記支持部と、が設けられているとともに、前記1対のプレスロールの対向するロール面がそれぞれ前記筐体の側面から突出するように設置され、前記1対のプレスロールは、前記所定間隔から前記挿入凸部の幅を引いた値の半分の値が、前記板材の前記所定厚さとなるように設定されていることが好ましい。
【0010】
この差厚板材製造装置によれば、保持体の載置部に載置された板材をプレス体の挿入凸部により押圧することで、板材が挿入凸部の側面を覆うように変形しながら1対のプレスロールの間に押し込まれ、プレスロールと挿入凸部の側面とによりプレス成形される。そして、このプレス成形がされた部分の板材のみ、板厚が薄くなる。
このプレス成形処理の間、板材を挿入凸部により押圧することで1対のプレスロールの間を通過させているため、プレスロール自体を回転制御する必要はない。したがって、従来技術に要求されていたような、高い圧力で押圧された圧延ロールを所定速度で回転させるといった制御は必要ない。
【0011】
また、本発明に係る差厚板材製造装置は、前記1対のプレスロールのそれぞれの下方に配置されるとともに、プレス成形された前記板材を前記挿入凸部の両側から切断する切断刃をそれぞれ有する1対の切断機構を備えるとともに、前記挿入凸部には、前記切断機構の前記切断刃により前記板材を切断する際に、前記挿入凸部の両側面において前記切断機構の前記切断刃と対向する位置に逃げ部が形成されていることが好ましい。
【0012】
この差厚板材製造装置によれば、1対のプレスロールのそれぞれの下方に配置される1対の切断機構が、挿入凸部の両側面に形成されている逃げ部に切断刃を入り込ませるように動作することで、プレス成形された後の板材を挿入凸部の両側から切断することとなる。したがって、1対のプレスロールと挿入凸部の両側面とのそれぞれの間で各1枚の差厚板材を製造することができる。つまり、一度のプレス成形処理により2枚の差厚板材を得ることができる。
【0013】
また、本発明に係る差厚板材製造装置は、前記プレス体は、前記挿入凸部の両脇側にそれぞれ前記板材を保持し移動させる1対の保持移動機構を備え、前記保持移動機構は、前記板材の一部が前記挿入凸部により前記1対のプレスロールの間に押し込まれる際に前記板材の押し込まれていない部分を保持し、保持した状態で所定位置まで移動させるとともに、所定位置まで移動した後に保持状態を解除することが好ましい。
【0014】
この差厚板材製造装置によれば、プレス成形および切断して得られた2枚の差厚板材を保持移動機構により保持し所定位置まで移動し、その後、保持状態を解除する。したがって、得られた2枚の差厚板材を所定位置まで移動させることができる。
【0015】
また、本発明に係る差厚板材製造装置は、前記保持移動機構の移動端に対向する位置に移送機構を備え、前記移送機構は、前記保持移動機構により所定位置で保持状態を解除された前記板材を、所定の受け取り場所まで移送することが好ましい。
【0016】
この差厚板材製造装置によれば、保持移動機構により所定位置まで移動された2枚の差厚板材を移送機構により所定の受け取り場所まで移送させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る差厚板材製造装置によれば、板材を挿入凸部により押圧することで1対のプレスロールの間を通過させているため、プレスロール自体を回転制御する必要はない。したがって、従来技術に要求されていたような、高い圧力で押圧された圧延ロールを所定速度で回転させるといった高度な制御は要求されない。
【0018】
また、本発明に係る差厚板材製造装置によれば、板材を挿入凸部により押圧しながら下降させることで板材の一部に対してのみプレス成形を行った後、板材を保持移動機構で保持しながら上昇させることにより板材に差厚を設けていることから、プレス成形時にプレスロールの間隔をあえて制御する必要はない。
【0019】
そして、本発明に係る差厚板材製造装置によれば、一度のプレス成形により、挿入凸部の両側面と1対のプレスロールとのそれぞれの間でプレス成形していることから、従来技術のように1枚ずつ2つの圧延ロールで圧延する場合と比較し、成形処理の速度が向上する。加えて、プレスロールに何らの制御を行わなくても、昇降駆動の速度を向上させるだけで、容易にプレス成形の速度を向上させることができる。
【0020】
さらに、本発明に係る差厚板材製造装置によれば、1対のプレスロールのそれぞれの下方に備えられた切断機構がプレス成形後の板材を挿入凸部の両側から切断することから、一度のプレス成形により2枚の差厚板材を得ることができる。したがって、本発明に係る差厚板材製造装置は、差厚板材の製造効率を向上させることができる。
【0021】
またさらに、本発明に係る差厚板材製造装置によれば、保持移動機構および移送機構を備えていることから、得られた差厚板材を所定位置および所定の受け取り場所まで移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る差厚板材製造装置の構造を示した斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る差厚板材製造装置の構造を示した模式図であって、(a)は板材が保持体に載置されている状態を示した模式図、(b)は板材がプレス体とプレスロールとによりプレス成形されている状態を示した模式図、(c)は板材が切断機構により切断された状態を示した模式図、(d)は板材が保持移動機構により移動している状態を示した模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係る差厚板材製造装置により板材が切断される状態を示した拡大模式図であって、(a)は板材が切断される前の状態の拡大模式図、(b)は板材が切断された後の状態の拡大模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係る差厚板材製造装置により板材がプレス成形される状態を示した拡大模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施するための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下の説明において「上、下、左、右、前、後」を言うときは、図1に示す方向を基準としている。
【0024】
≪差厚板材製造装置の概略構成≫
差厚板材製造装置10は、保持体1の載置部11a、12aに載置された板材Bを、プレス体2の挿入凸部21により押圧することにより、板材Bの一部が1対のプレスロール3、3の間に押し込まれ、そして、押し込まれた板材Bの一部のみを1対のプレスロール3、3と挿入凸部21の側面によりプレス成形する構成になっている。
【0025】
そして、図1に示すように、差厚板材製造装置10は、設置面に設置される保持体1と、この保持体1の上方に設置されるプレス体2と、このプレス体2の上面に接続される駆動機構6、6と、保持体2の左右に配置される移送機構9、9と、から構成される。
そして、保持体1は、左保持部11(筐体11)と、右保持部12(筐体12)と、ベース13と、から構成されるとともに、1対のプレスロール3、3と、1対の補助ロール4、4と、支持部5、5と、を内部に収納し、切断機構7、7を側面に有している。そして、プレス体2は、挿入凸部21と、上プレス部22と、から構成されるとともに、1対の逃げ部21a、21aと、1対の保持移動機構8、8(図2(a)参照)と、を有している。
【0026】
≪各構成の説明≫
以下、差厚板材製造装置10の各構成について図1を参照して説明する。
<保持体>
保持体1は、プレス成形前の板材Bを載置部11a、12aにより保持する構造体である。
そして、保持体1は、全体として、上面を開口するような断面コ字形状を呈している。詳細には、直方体を呈するベース13と、略直方体を呈する左保持部11(筐体11)と、右保持部12(筐体12)と、から構成され、ベース13の上面に所定間隔を設けて対向するように左保持部11と、右保持部12とが立設されている。
【0027】
左保持部11と右保持部12との上面には、載置部11a、12a、が形成されているとともに、それぞれの内部には、前後方向に1対の支持部5、5が設けられるとともに、当該支持部5、5に支持されるプレスロール3と、補助ロール4とが設けられる。さらに、左保持部11の右側面と右保持部12の左側面には、それぞれ、切断機構7がプレスロール3、3の下方に設けられている。
なお、左保持部11の上方右端部11bと右保持部12の上方左端部12bとはテーパ状を呈しており、板材Bを挿入凸部21により押圧する際における板材Bの破断や位置ずれを回避することができる。
【0028】
(プレスロール)
プレスロール3は、後記する挿入凸部21により1対のプレスロール3、3間に押し込まれる板材Bに対して、挿入凸部21の側面とでプレス成形を行う部材である。
そして、プレスロール3は、円柱形状を呈し、回転軸が前後方向となるとともに、左保持部11の右側面または右保持部12の左側面からロール面が突出するように設置される。
【0029】
プレスロール3は、補助ロール4により左または右方向から回転および位置決めの補助がなされる。
また、プレスロール3は補助ロール4と供に、支持部5、5により左右方向の支持位置が調節される。例えば、図4に示すように、1対のプレスロール3、3の所定間隔(L)から挿入凸部21の幅(L)を引いた値の半分の値が、板材Bのプレス後の目的とする所定厚さ(L)となるように支持部5、5により支持位置を調節すればよい。
なお、支持部5、5は、プレスロール3の支持位置を調節しながら支持することができるが、支持機構については特に限定されず、例えば、スクリュー、カム等を用いた機械式の機構や油圧式の機構である。
【0030】
(切断機構)
切断機構7は、プレスロール3と後記する挿入凸部21の側面によりプレス成形された板材Bを切断する機構である。
そして、切断機構7は、前後方向に延在するように設置されるとともに、板材Bの方向に切断刃が突出する構成になっている(図3(b)参照)。
【0031】
<プレス体>
プレス体2は、プレス体2の挿入凸部21により1対のプレスロール3、3間に板材Bを押し込むとともに、挿入凸部21の側面とプレスロール3により板材Bをプレス成形する部材である。
そして、プレス体2は、プレス体2の一部(挿入凸部21)を1対のプレスロール3、3間に挿入可能なように、全体として、断面T字形状を呈している。詳細には、プレス体2は、直方体を呈する上プレス部22と、上プレス部22の左右方向中央部から下方に延在する厚みのある略板形状を呈する挿入凸部21と、から構成される。
【0032】
また、プレス体2の挿入凸部21の両側面において、切断機構7により板材Bを切断する際に切断機構7と対向する位置に逃げ部21aが形成されている。さらに、プレス体2は、挿入凸部21の両脇側に1対の保持移動機構8、8を備えている。
なお、挿入凸部21の下方の左右両端部21b、21bは曲面を呈しており、板材Bを挿入凸部21により押圧する際における板材Bの破断や位置ずれを回避することができる。
【0033】
(逃げ部)
逃げ部21aは、切断機構7から突出する切断刃を挿入凸部21内部に逃がす部分である。
そして、逃げ部21aは、挿入凸部21の両側面に前後方向に延在するように形成されるとともに、切断機構7から突出する切断刃を収容できるように断面凹形状を呈している。なお、板材Bのプレス成形は、プレスロール3と挿入凸部21の側面とで行われるため、挿入凸部21の側面の逃げ部21aの面積はできるかぎり小さくするのが好ましい。
【0034】
(保持移動機構)
保持移動機構8は、プレス成形後の板材Bを保持し、所定の場所まで移動する機構である。
そして、保持移動機構8は、エアを吸引可能であるとともにすり鉢形状を呈するバキュームカップ81と、バキュームカップ支持部82とから構成される(図2(a)参照)。このバキュームカップ81が板材Bに当接したときに、バキュームカップ81と板材Bとの間のエアを吸引することによって当該間が負圧となり、板材Bが吸引されバキュームカップ81に保持されることとなる。そして、板材Bを保持した後、エアの吸引を停止(または、エアを放出)することで、保持状態を解除することができる。
【0035】
また、バキュームカップ支持部82は、上下方向および左右方向に移動可能にプレス体2の上プレス部22に保持されている(図2(a)〜(d)参照)。
バキュームカップ支持部82を移動可能とする構造は、上プレス部22の下面に左右方向に溝が形成され、バキュームカップ支持部82の移動軌跡に沿うように当該溝の内壁に凹状の案内部(レール)が形成されるとともに、バキュームカップ支持部82の上端部に当該凹状の案内部に嵌まるような凸部が形成されているといった構造である(図2(a)〜(d)参照)。なお、バキュームカップ支持部82を移動させる機構については、従来公知の機構を用いればよく、例えば、チェーンやベルトに連結したモータで駆動する機構のものでよく、より精度を求める場合には、リニアスライダーや駆動ローラ等を連続して設けるといった機構でよい。
【0036】
<駆動機構>
駆動機構6、6は、プレス体2を昇降駆動させる機構である。
そして、駆動機構6、6は、油圧式のシリンダーまたはサーボモータおよびそれに付随した機構により構成されている。この駆動機構6、6がプレス体2を昇降駆動させることにより、プレス体2の挿入凸部21とプレスロール3により板材Bをプレス成形することができる。
【0037】
<移送機構>
移送機構9、9は、保持移動機構8、8により所定位置で保持状態を解除された板材Bを、所定の受け取り場所まで移送する機構である。
そして、移送機構9、9は、保持移動機構8、8の移動端に対向する位置(図2(d)参照)に設置され、ベルトコンベアにより構成されている。
【0038】
≪板材≫
差厚板材製造装置10によりプレス成形する板材については限定されない。特に、従来のテーラードブランク工法では溶接部の破断が避け難かったアルミニウム合金からなる板材等に好適に適用することができる。
【0039】
≪差厚板材製造装置によるプレス成形手順≫
差厚板材製造装置10によるプレス成形方法を図2および図3を参照して説明する。
まず、図2(a)に示すように、プレス成形の対象となる板材Bを載置部11a、12aに載置する。
【0040】
そして、図2(b)に示すように、駆動機構6によりプレス体2の挿入凸部21を降下させることで、板材Bを押圧し1対のプレスロール3、3の間に押し込む。この動作により、板材Bを挿入凸部21の側面とプレスロール3とでプレス成形することとなる。そして、切断機構7により板材Bを切断するとともに(図3(a)、(b)参照)、プレス成形されていない板材Bの上方部分を保持移動機構8、8により保持する。この切断動作と、保持動作との順番は、特に限定されない。
【0041】
その後、図2(c)に示すように、切断された2枚の板材B、Bが保持移動機構8、8に保持されながら、プレス体2とともに駆動機構6により上昇する。
そして、図2(d)に示すように、保持移動機構8、8が左右方向に備えられている移送機構9、9の上方まで移動する。その後、保持移動機構8、8による板材B、Bの保持状態を解除することで、板材B、Bが移送機構9、9の上に落下し、移送機構9、9により所定の受け取り場所まで板材B、Bが移送される。
【0042】
≪差厚板材製造装置の制御≫
差厚板材製造装置10の各機構は、コンピュータ等の処理手段(図示せず)により制御される。
まず、処理手段は駆動機構6、6に対し、下降駆動信号を出力する。当該信号が入力された駆動機構6、6は、下降駆動を行う。
駆動機構6、6が所定の位置まで下降したタイミングで、処理手段は切断手段7、7に対し、切断信号を出力する。当該信号が入力された切断機構7、7は切断刃を板材B方向に出し(図3(a)、(b)参照)、その後引っ込める。また、駆動機構6、6が所定の位置まで下降したタイミングで、処理手段は保持移動機構8、8に対し、下方移動保持信号を出力する。当該信号が入力された保持移動機構8、8は、バキュームカップ81が板材Bに対向・当接する位置まで下降移動するとともに、エアを吸引し板材Bを保持する(図2(b)参照)。
【0043】
前記の動作が終了したタイミングで、処理手段は駆動機構6、6に対し、上昇駆動信号を出力する。当該信号が入力された駆動機構6、6は、上昇駆動を行う。その後、処理手段は保持移動機構8、8に対し、左右移動信号を出力する。当該信号が入力された保持移動機構8、8は、左右方向に設置された移送機構9、9の上方位置まで移動する。その後、処理手段は保持移動機構8、8に対し、保持解除信号を出力する。当該信号が入力された保持移動機構8、8は、エアの吸引を停止(または、エアを放出)し、板材Bの保持状態を解除する。
【0044】
なお、前記制御は、所定のタイミングで、作業者がその都度各機構に対し制御信号を出力するような構成であってもよい。
また、切断機構7の制御については、降下した挿入凸部21の存在を検知する光センサー(図示せず)を切断機構7の近傍に設け、挿入凸部21の存在を検知した光センサーから切断機構7に切断信号が出力される構成であってもよい。
【0045】
≪プレスロールの間隔の調整≫
板材Bをプレス成形する間(挿入凸部21を下降させる間と挿入凸部21を上昇させる間)、プレスロール3、3の間隔は、常に図4に示すLという間隔に固定してもよい。また、挿入凸部21を下降させる間は、プレスロール3、3の間隔をLに固定し、挿入凸部21を上昇させる間は、プレスロール3、3の間隔をLよりも大きな間隔に固定してもよい。これにより、挿入凸部21を上昇させる際に、プレスロール3、3から板材Bに対して余計な負荷がかからず、少ない力で挿入凸部21を上昇させることができる。
【0046】
また、挿入凸部21を下降させる間は、プレスロール3、3の間隔をLに固定し、挿入凸部21を上昇させる間は、プレスロール3、3の間隔をLよりも小さな間隔に固定してもよい。板材Bに大きな差厚を設けたい場合であって、一度に所望の厚さまでプレスを行うと板材Bに破断や歪み等の不具合が生じるような場合に、挿入凸部21を下降させる間と、挿入凸部21を上昇させる間の2度にわたって段階的にプレス成形することにより、前記不具合の発生を回避することができるからである。
【0047】
さらに、板材Bをプレス成形する間(挿入凸部21を下降させる間と挿入凸部21を上昇させる間)、プレスロール3、3の間隔を様々な間隔に制御してもよい。これにより、一枚の板材Bに2つ以上の異なる板厚を形成させることができる。
【0048】
なお、挿入凸部21を上昇させる間に、板材Bに対し積極的にプレス成形を行う場合は、保持移動機構8から板材Bが脱落するのを防止するために、プレスロール3、3により板材Bを押し上げるようにロール自体を独自に回転制御する機構であることが好ましい。
【0049】
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されず、発明の主旨に応じた以下のような適宜の変更実施が可能である。
【0050】
プレスロール3、補助ロール4、支持部5、切断機構7が保持体1(左保持部11、右保持部12)の内部に設けられている場合について説明したが、当該構成には限定されない。
例えば、保持体1は、板状を呈する載置部11a、12aが、前後方向から棒状のもので設置面に支持され、プレスロール3、3、補助ロール4、4は、保持体1と接続することなく支持部5、5により設置面に支持され、切断機構7、7も、保持体1と接続することなく前後方向から棒状のもので設置面に支持されていてもよい。
また、保持体1の左保持部11と、右保持部12とが、直接設置面に設置されるような構成でもよく、この場合は、ベース13を設ける必要はない。
【0051】
加えて、プレスロール3の数についても特に限定されず、上下方向に複数設けてもよい。そして、補助ロール4については、支持部5、5によりプレスロール3が確実に固定支持されていれば、設けなくてもよい。
【0052】
また、駆動機構6、6が油圧式のシリンダーにより構成される場合について説明したが、プレス体2を昇降駆動できる構成のものであれば特に限定されず、例えば、パンタグラフジャッキ等でもよい。
【0053】
そして、1対の保持移動機構8、8を備える場合について説明したが、保持移動機構8、8の数については特に限定されない。対象となる板材Bの重量、および、使用する保持移動機構8、8の保持力(エア吸引力)により、設置する数を増やしてもよい。
また、保持移動機構8については、エアを吸引することにより板材Bを保持する構成のものには限定されず、例えば、板材Bを左右方向から掴持するような構成のものであってもよい。詳細には、板材Bを掴持する際、板材Bと挿入凸部21との間に板状の部材をすべり込ませるとともに、当該部材とは逆方向から板材Bを挟み込み掴持する構成(マジックハンドのような構成)のものでもよい。
【0054】
移送機構9、9が、ベルトコンベアにより構成される場合について説明したが、この構成には限定されず、板材Bを移送できる構成のものであればよい。例えば、板材Bが所定の受け取り場所まで滑りながら移動するような傾斜台であってもよい。
また、移送機構9、9による移送中に連続的に、焼鈍、レベリング(形状矯正)等の処理を行うような構成としてもよい。
【0055】
さらに、差厚板材製造装置10は、切断機構7、7の近傍に、エアや水を放出し切断屑を除去するようなインジェクタを設けてもよい。このようなインジェクタを設けることにより、切断屑が挿入凸部21に設けられた逃げ部21a、21aに溜まってしまい、切断機構7、7の切断刃が逃げ部21に入らず、十分に板材Bを切断することができないといった事態を回避することができる。
【0056】
なお、駆動機構6、6によりプレス体2を下方に駆動させる際に必要となる荷重は、対象とする板材Bの材質・板幅・板厚さ、および、1対のプレスロールの間隔Lとプレス体2の挿入凸部21の幅L(またはプレス成形後の板材Bの板厚さL)から算出すればよい。
【符号の説明】
【0057】
1 保持体
2 プレス体
3 プレスロール
4 補助ロール
5 支持部
6 駆動機構
7 切断機構
8 保持移動機構
9 移送機構
10 差厚板材製造装置
11 左保持部(筐体)
11a 載置部
11b テーパ面
12 右保持部(筐体)
12a 載置部
12b テーパ面
13 ベース
21 挿入凸部
21a 逃げ部
21b 挿入凸部の下方の左右両端部
22 上プレス部
81 バキュームカップ
82 バキュームカップ支持部
B 板材
1対のプレスロールの所定間隔
挿入凸部の幅
板材の所定厚さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材の一部が所定厚さとなるようにプレス成形を行う差厚板材製造装置であって、
回転軸方向が平行である1対のプレスロールと、
前記1対のプレスロールを所定間隔となるように支持する支持部と、
前記1対のプレスロールの前記所定間隔よりも小さい幅に形成された挿入凸部を有するプレス体と、
前記1対のプレスロールのそれぞれの上方に前記板材を載置する載置部を有する保持体と、
前記プレス体を昇降駆動させる駆動機構と、を備え、
前記保持体に載置された前記板材を前記挿入凸部により押圧し、前記板材の一部を前記1対のプレスロールの間に押し込むことにより、前記プレスロールと前記挿入凸部の両側面とにより前記板材の一部にプレス成形することを特徴とする差厚板材製造装置。
【請求項2】
前記保持体は、前記載置部がそれぞれ設けられた1対の筐体からなり、
前記筐体のそれぞれの内部に、前記プレスロールと、前記支持部と、が設けられているとともに、前記1対のプレスロールの対向するロール面がそれぞれ前記筐体の側面から突出するように設置され、
前記1対のプレスロールは、前記所定間隔から前記挿入凸部の幅を引いた値の半分の値が、前記板材の前記所定厚さとなるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の差厚板材製造装置。
【請求項3】
前記1対のプレスロールのそれぞれの下方に配置されるとともに、プレス成形された前記板材を前記挿入凸部の両側から切断する切断刃をそれぞれ有する1対の切断機構を備えるとともに、
前記挿入凸部には、前記切断機構の前記切断刃により前記板材を切断する際に、前記挿入凸部の両側面において前記切断機構の前記切断刃と対向する位置に逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の差厚板材製造装置。
【請求項4】
前記プレス体は、前記挿入凸部の両脇側にそれぞれ前記板材を保持し移動させる1対の保持移動機構を備え、
前記保持移動機構は、前記板材の一部が前記挿入凸部により前記1対のプレスロールの間に押し込まれる際に前記板材の押し込まれていない部分を保持し、保持した状態で所定位置まで移動させるとともに、所定位置まで移動した後に保持状態を解除することを特徴とする請求項3に記載の差厚板材製造装置。
【請求項5】
前記保持移動機構の移動端に対向する位置に移送機構を備え、
前記移送機構は、前記保持移動機構により所定位置で保持状態を解除された前記板材を、所定の受け取り場所まで移送することを特徴とする請求項4に記載の差厚板材製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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