説明

差替印付回転印

【課題】、容易に差替印を着脱することができる差替印付回転印を提供する。
【解決手段】回転可能に配設された回転子4と、その下端との間に、外表面に複数の印字6aが形成された無端印字ベルト6を巻き掛けた回転印10と、回転印10の下部に取り付けられ、無端印字ベルト6の下端にある印字6aを露出させる第1の印字穴が形成された固定印20と、回転印10の下端に取り付けられ、固定印20に形成された第2の印字穴から、その印字部32が露出する差替印31とからなる差替印付回転印において、固定印20を回転印10の下部に回動可能に回動可能、且つ、上下にスライド可能に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字を切り替えて押印することができる固定印付回転印に差替印を設けた印鑑に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、年月日やシリアルナンバー等を印字するための固定印付回転印が広く用いられている。このような固定印付回転印は、回転自在に配設された複数の回転子とその下端との間に、複数の無端印字ベルトを巻き掛け、前記複数の無端印字ベルトを固定印の印字穴から露出させた構造のものである。一方で、特許文献1や特許文献2に示されるように、前記固定印付回転印に脱着可能な差替印を設けた印鑑が知られている。このような差替印付回転印は、印字に応じて複数の回転印を用意することなく、差替印を差し替えることにより印字を変更できるので便利である。特許文献1や特許文献2に示されるような差替印付回転印は、その先端側面に着脱口が形成され、固定印に差替印用の印字穴が形成された構造のものである。このような差替印付回転印に差替印を取り付けるには、着脱口に差替印を斜めに挿入し、差替印の印字面を印字穴に差し込んだ後に、差替印を起立させるとともに上方に押し上げる操作により行われる。一方で、差替印付回転印から差替印を取り外すには、前記操作の逆の手順により行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−127577号公報
【特許文献2】特開2009−132012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1や特許文献2に示される差替印付回転印は、狭い着脱口から差替印を着脱する必要があり、差替印を取り付ける際には着脱口に差替印を斜めに挿入する必要があり、一方で、差替印を取り外す際にも差替印を斜めの姿勢にする必要があり、差替印の着脱が容易ではなかった。このため、差替印の脱着時に、手がインキで汚れてしまうという問題があった。本発明は、上記問題を解決し、容易に差替印を着脱することができる差替印付回転印を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
回転可能に配設された回転子と、その下端との間に、外表面に複数の印字が形成された無端印字ベルトを巻き掛けた回転印と、
前記回転印の下部に取り付けられ、前記無端印字ベルトの下端にある印字を露出させる第1の印字穴が形成された固定印と、
前記回転印の下端に着脱可能に取り付けられ、前記固定印に形成された第2の印字穴から、その印字部が露出する差替印とからなる差替印付回転印において、
前記固定印を前記回転印の下部に回動可能、且つ、上下にスライド可能に取り付けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、固定印を回転印の下部に回動可能、且つ、上下のスライド可能に取り付けたので、差替印を脱着する際に、固定印を下方にスライドさせて、固定印を回動させることにより、回転印の下方にある固定印を、回転印の下部の側方に退避させることができ、この状態では、回転印の下方には固定印が無いので、差替印を容易に着脱することが可能となる。
また、固定印を回転印に対して回動させた状態で、固定印に形成された第2の印字穴の裏側から差替印を差し込み、固定印を元の角度に回動させ、固定印上方にスライドさせることにより、差替印の差込部を切欠部の上部の側板に差し込み、差替印を回転印に容易に取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】差替印付回転印の斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】固定印を回動させた状態の差替印付回転印の斜視図である。
【図4】回転印の斜視図である。
【図5】差替印の斜視図である。
【図6】回転子及び無端印字ベルトの斜視図である。
【図7】固定印を下方にスライドさせた状態の差替印付固定印の断面図である。
【図8】別例の差替印付回転印の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を示す。図1や図3に示されるように、本発明の差替印付回転印100は、回転印10と、固定印20と、差替印30とから構成されている。本発明の差替印付回転印100は、図3に示されるように、回転印10の先端に、固定印20を回動可能、且つ、上下にスライド可能に取り付け、差替印30着脱時に固定印20を回動させることにより、差替印30の着脱を容易とした構造のものである。以下、詳細に説明する。
【0009】
図2、図6に示されるように、回転印10は、把持部1、外枠部材2、内枠部材3、回転子4、軸部材5、無端印字ベルト6とから構成されている。外枠部材2は、下方が開放した箱形形状である。外枠部材2の側板2eには、並列して複数のスリット2aが連通形成されている。外枠部材2の上端には、棒状の把持部1が取り付けられている。外枠部材2の内側には、内枠部材3、回転子4、軸部材5、無端印字ベルト6からなる回転印本体が配設されている。内枠部材3は、互いに対向する側板3aの上端が、上板3bで接続された構造である。側板3aの下端には、橋架片3cが取り付けられている。
【0010】
内枠部材3の側板3a間には、複数の回転子4が、並列して同軸に配設されている。回転子4は、操作円盤4aと、この操作円盤4aよりも外形の小さい係合部4bが同軸に、一体形成されている。回転子4の中心には軸穴4cが連通形成され、回転子4の軸穴4cに軸部材5が挿通し、軸部材5が側板3aに取り付けられて、複数の回転子4が内枠部材3に回転可能に取り付けられている。操作円盤4aは、外枠部材2のスリット2aから露出している。
【0011】
各回転子4の係合部4b及び橋架片3cの下端との間には、複数の無端印字ベルト6が並列して巻き掛けられている。無端印字ベルト6の外表面には、複数の印字部6aが形成されている。印字部6aには、連続気孔が形成され、インキが吸蔵されるようになっている。無端印字ベルト6の裏面と、回転子4の係合部4bとは係合している。回転子4が回転すると、係合部4bと係合している無端印字ベルト6も回転し、印字部6aが切り替わるようになっている。
【0012】
固定印20は、固定印保持部材21と、印字体22とから構成されている。固定印保持部材21は、板形状の保持部21aと、保持部21aの両端から上方へ突出する板部21bが一体に形成されている。板部21bの上部には、軸穴21cが連通形成されている。本実施形態では、保持部21aは円盤形状である。保持部21aの下面には、印字体22が取り付けられている。印字体22は連続気孔が形成され、インキが吸蔵されるようになっている。印字体22の中央には第1の印字穴22aが連通形成されている。また、第1の印字穴22aの外側には、第2の印字穴22bが連通形成されている。勿論、第1の印字穴22a及び第2の印字穴22bが形成されている箇所の保持部21aは連通している。
【0013】
図4に示されるように、外枠部材2及び内枠部材3の両側面の同位置には、それぞれ、上下方向に、長穴2b、長穴3dが形成されている。長穴2bは、側板2eと直交する面に形成されている。固定印保持部材21の軸穴21c、長穴2b、長穴3dに、軸部材23が挿通して、固定印20が回転印10に回動自在に取り付けられている。軸部材23は、長穴2b、3dに挿通しているので、固定印20は回転印10に対して、上下方向移動可能となっている。なお、本実施形態では、軸部材23はボルトであり、ナットにより、固定印保持部材21に固定されている。
【0014】
図3や図4に示されるように、外枠部材2の側板2eの下端には、切欠部2cが形成されている。
【0015】
図5に示されるように、差替印30は、保持部材31と、印字体32とから構成されている。保持部材31は、印字体保持部31aと、印字体保持部31aから上方に突出する第1の係止片31bと、この第1の係止片31bと対向する第2の係止片31cが一体に形成されている。第1の係止片31bと第2の係止片31cとの間には、所定間隔離間した差込部31dが形成されている。印字体保持部31aの下面には、印字体32が取り付けられている。
【0016】
差替印30を回転印10に取り付けるには、図7に示されるように、固定印20を下方にスライドさせる。すると、印字体22の第1の印字穴22aに挿通している無端印字ベルト6の印字部6aが第1の印字穴22aから脱出する。この状態では、固定印20は回転印10に対して回動させることができる。図3に示されるように、固定印20を回動させて、回転印10の下部の側方に退避させる。この状態では、側板2eの切欠部2cの下方には、固定印20が無いので、差替印30の差込部31dを切欠部2cの上部の側板2eに差し込むことにより、容易に差替印30を回転印10に取り付けることができる。差替印30が回転印10に取り付けられた状態では、第1の係止片31bと第2の係止片31cは、側板2eの下端を挟持している。この状態で、固定印20を元の角度に回動させて、固定印20を上方にスライドさせると、差替印30の印字体32が、印字体22の第2の印字穴22bから露出する。この状態では、差替印30の印字体保持部31aが、印字体22の第2の印字穴22bに挿通しているので、差替印30が回転印10及び固定印20で固定される。
【0017】
なお、固定印20を回転印10に対して回動させた状態で、固定印20に形成された第2の印字穴22bの裏側から差替印30を差し込み、固定印20を元の角度に回動させ、固定印20を上方にスライドさせることにより、差替印30の差込部31dを切欠部2cの上部の側板2eに差し込み、差替印30を回転印10に取り付けることにしても差し支えない。
【0018】
差替印30を回転印10から取り外すには、前記した差替印30を回転印10に取り付ける手順と逆の手順を行う。
【0019】
以上詳細に説明したように、本発明では、固定印20を回転印10下端に回動可能に取り付けたので、固定印20を回動させることにより、容易に、差替印30を脱着することが可能となる。
【0020】
図8に示されるように、側板2eを大きく切り欠いて切欠部2cを形成しても差し支えない。
【0021】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う差替印付回転印もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0022】
1 把持部
2 外枠部材
2a スリット
2b 長穴
2c 切欠部
2e 側板
3 内枠部材
3a 側板
3b 上板
3c 橋架片
3d 長穴
4 回転子
4a 操作円盤
4b 係合部
4c 軸穴
5 軸部材
6 無端印字ベルト
6a 印字部
10 回転印
20 固定印
21 固定印保持部材
21a 保持部
21b 板部
21c 軸穴
22 印字体
22a 第1の印字穴
22b 第2の印字穴
30 差替印
31 保持部
31a 印字体保持部
31b 第1の係止片
31c 第2の係止片
31d 差込部
32 印字部
100 差替印付回転印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に配設された回転子と、その下端との間に、外表面に複数の印字が形成された無端印字ベルトを巻き掛けた回転印と、
前記回転印の下部に取り付けられ、前記無端印字ベルトの下端にある印字を露出させる第1の印字穴が形成された固定印と、
前記回転印の下端に着脱可能に取り付けられ、前記固定印に形成された第2の印字穴から、その印字部が露出する差替印とからなる差替印付回転印において、
前記固定印を前記回転印の下部に回動可能、且つ、上下にスライド可能に取り付けたことを特徴とする差替印付回転印。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−177936(P2011−177936A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42274(P2010−42274)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(390017891)シヤチハタ株式会社 (162)