説明

巻取り装置

【課題】長尺のフープ材等のワークをたるみを一定の状態で巻取るようにした巻取り装置を提供する。
【解決手段】プレス機から供給される長尺のフープ材から成るワーク45を一対のガイドバー25、26間に案内し、これらのガイドバー25、26間におけるワーク45のたるみ量を、超音波センサ27の長音波発信部35から発信する超音波が超音波受信部36で受信されるまでの時間差から、距離を演算して求め、この距離の演算に応じて、巻取りドラム20を駆動するモータ22に印加される電圧を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は巻取り装置に係り、とくに長尺のワークを巻取り手段によって巻取るようにした巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
帯状をなす金属シートを用いてコネクタを連結した状態で打抜いてフープ材を製造し、これを巻取るための巻取り装置として、特開2003−40527号公報に開示されている装置が提案されている。この装置は、リールから引出される層間紙を検尺ローラに巻付け、検尺ローラの回転速度を第1の検出器によって検出し、リールの回転数を第2の検出器によって検出し、これら一対の検出器の検出パルスを制御装置によってカウントならびに演算処理し、その演算結果に基いて駆動装置を介してパウダーブレーキのコイルに流れる電流を制御し、これによってリールに付加される制動力を調整し、層間紙の繰出し張力を一定の値に維持するようにしたものである。
【0003】
このような巻取り装置によって、打抜かれたフープ材を巻取ることが可能になる。ところがこの種の巻取り装置は、張力あるいはたるみの調整範囲が狭く、このために大幅に異なる張力を制御する場合には、別の装置あるいは機械を用いるようにし、あるいはまた制御系を全面的に別の制御系によって置換える必要があった。またこのような装置は、別の種類のワークに対して柔軟に対応することができない欠点がある。
【特許文献1】特開2003−40527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の課題は、ワークの張力あるいはたるみ量の変化に対応することが可能な巻取り装置を提供することである。
【0005】
本願発明の別の課題は、各種のワークに柔軟に対応することが可能な巻取り装置を提供することである。
【0006】
本願発明のさらに別の課題は、長尺のワークを円滑に巻取ることができるようにした巻取り装置を提供することである。
【0007】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の主要な発明は、長尺のワークを巻取り手段によって巻取るようにした巻取り装置において、
発信した超音波がワークに当たって反射して返ってくるまでの時間からワークまでの距離を計測する超音波センサと、
前記巻取り手段を駆動するモータと、
前記モータに印加する駆動電圧を調整する電圧調整手段と、
を有し、前記超音波センサによって計測される距離から前記巻取り手段の前方におけるワークのたるみ量を検出し、前記ワークのたるみ量がほぼ一定になるように前記電圧調整手段によって前記モータに印加する電圧を制御することを特徴とする巻取り装置に関するものである。
【0009】
ここで、前記電圧調整手段は、前記ワークのたるみ量に応じて前記モータに印加する駆動電圧を段階的に変化させてよい。また前記電圧調整手段は、前記ワークのたるみ量が予め設定された所定の値を超えたら前記モータに印加する電圧を0Vにすることが望ましい。前記超音波センサの前方に一対のガイドが配され、該ガイド内における前記ワークのたるみ量を前記超音波センサが検出するようにしてよい。
【発明の効果】
【0010】
本願の主要な発明は、長尺のワークを巻取り手段によって巻取るようにした巻取り装置において、発信した超音波がワークに当たって反射して返ってくるまでの時間からワークまでの距離を計測する超音波センサと、巻取り手段を駆動するモータと、モータに印加する駆動電圧を調整する電圧調整手段と、を有し、超音波センサによって計測される距離から巻取り手段の前方におけるワークのたるみ量を検出し、ワークのたるみ量がほぼ一定になるように電圧調整手段によってモータに印加する電圧を制御するようにしたものである。
【0011】
従ってこのような巻取り装置によると、超音波センサによって計測される距離から巻取り手段の前方におけるワークのたるみ量を検出するとともに、このワークのたるみ量がほぼ一定になるように電圧調整手段によってモータに印加する電圧を調整することにより、たるみ量に応じてモータの回転数が変化し、このためにたるみ量がほぼ一定になるように巻取り手段によって長尺のワークを巻取ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下本願発明を図示の実施の形態によって説明する。図1〜図3は、本実施の形態の巻取り装置の機械的な構成を示すものであって、この巻取り装置はフレーム10を備えるとともに、フレーム10によって上側の基台11と下側の基台12とがそれぞれ支持されている。上下の基台11、12はほぼ同一の構成になっており、これらの基台11、12上にはそれぞれ比較的大径のねじりロール13が配されており、このねじりロール13の周囲に小径のガイドロール14、15、16が直立して配される。
【0013】
基台11、12に対して後方であって巻取り側には、ステー19が延びており、このステー19によって巻取りドラム20が支持される。巻取りドラム20は上下のフランジ21を備え、しかもその下側に配されたモータ22によって巻取るようになっている。
【0014】
また上記基台11、12の前方側であって入口側の部分には、水平案内ロール24が配され、この水平案内ロール24の前方側に、左右一対のガイドバー25、26が前方に突出するように配されている。そしてガイドバー25、26の根元側の下方に超音波センサ27が配されている。また上記ガイドバー25、26の側方にはステー29を介して層間紙供給ドラム30が配されるようになっており、この層間紙供給ドラム30によって層間紙46が供給されるようになっている。
【0015】
次に上記超音波センサ27を備える制御系の構成について説明すると、図4に示すように、超音波センサ27は超音波発信部35と超音波受信部36とを備えている。これらの超音波発信部35および超音波受信部36はともに制御ユニット37に接続され、この制御ユニット37によって制御される。また超音波受信部36のパルス信号は、演算部38に供給される。演算部38は超音波発信部35が発射する超音波の発射タイミングと、超音波受信部36が受信する超音波の受信のタイミングとを検出し、これに応じた演算動作を行なうものである。なおこのような演算動作は、プログラム格納部39に格納されているプログラムによって行なわれる。そして上記演算部38の出力がD/A変換部40に供給され、このD/A変換部40で変換されたアナログ信号が、モータ駆動電源回路41に供給され、このモータ駆動電源回路41の出力によって、上記巻取りドラム20のモータ22が駆動されるようになっている。
【0016】
次に以上のような構成になる巻取り装置の動作を説明する。図1〜3に示すように、高速プレス機から打抜かれる長尺のフープ材、すなわちワーク45は一対のガイドバー25、26間によって案内されながら供給され、水平案内ロール24によって引出され、この後ねじりロール13に導かれる。このときにワーク45は90度ひねられ、ワーク45の幅方向が水平である状態から垂直である状態に変化する。そしてねじりロール13を通過した後に、巻取りドラム20によって巻取られる。このときに層間紙供給ドラム30から供給される層間紙46が補助ガイドロール15、16によってワーク45に重合わされた状態で巻取りドラム20に巻取られる。すなわちワーク45は層間紙46と一緒に巻取られる。
【0017】
なお層間紙供給ドラム30は上記ワーク45を案内する水平案内ロール24に対してステー29によってその左右の何れかの位置をとり得るようになっており、巻取りドラム20が上から見て右方向あるいは時計方向に回転しながらワーク45を巻取る場合には、ワーク45の進行方向に対して右側に層間紙供給ドラム30を配置する。これに対して巻取りドラム20が上から見て左方向あるいは反時計方向に回転する場合には、水平案内ロール24によるワーク45の供給方向に対して左側に層間紙供給ドラム30が配されることになる。
【0018】
このような巻取り動作において、ガイドバー25、26の下側に配されている超音波センサ27はガイドバー25、26間のワーク45のたるみ量を検出するとともに、この検出に応じて図4に示す制御回路によって巻取りドラム20を回転駆動するモータ22の回転数を制御する。
【0019】
図5に示すように超音波センサ27の超音波発信部35から発信された超音波がワーク45に当って反射し、反射した超音波を超音波受信部36によって検出する。演算部38は上記の超音波の発信のタイミングT1と受信のタイミングT2の時間差ΔTを演算する。そしてこの演算から、超音波センサ27の前方におけるワーク45までの距離を演算して求める。そしてこのような演算に応じて、モータ22に印加される電圧を変更し、これによって巻取りドラム20が巻取るワーク45の巻取り速度を調整するようにしている。
【0020】
図6は上記モータ22に印加される電圧を設定する動作を示しており、電源を投入するとこの演算装置38がリセットされ(S11)、初期設定(S12)が行なわれる。そしてこの後に図5に示すフローチャートに基づいて距離の測定(S13)が行なわれる。この距離の測定(S13)において、37cm以上の場合には(S15)、Break Routineに移行する。そしてこのBreak Routineにおいて再び距離測定(S16)を行ない、37cm以下かどうかの判断(S17)を行なう。ここで37cm以下の場合には、最初のS15の判断の動作に移行する。これに対して37cm以上の場合には、1〜2秒の遅延動作(S18)を行なう。この遅延動作は、遅延ループが完了かどうかの判断によって行なわれる。そして遅延ループが完了した場合には、モータ22に印加する出力電圧を0Vに設定する(S19)。従ってこの場合には巻取りドラム20が停止する。そしてこの後再び距離設定(S20)を行ない、37cm以上かどうかの判断を行なう(S21)。ここで37cm以上の場合には、出力電圧を0Vに設定するステップに移行する。これに対して37cm以下の場合には、最初のリセット(S11)のステップに戻る。
【0021】
次に最初の距離測定(S13)において37cm以下(S15)であって、しかも7cm以下(S25)の場合には、出力電圧が例えば5Vに設定されるとともに(S33)、再び距離測定(S34)を行ない、7cm以下であると判断された場合には遅延ループ(S35)が完了するまで遅延動作を行なう。そしてこの後に初期設定(S12)後の距離測定(S13)の動作に移行する。
【0022】
次に距離測定において7〜12cmの範囲内である場合には(S26)、出力電圧を4Vに設定するとともに(S33)、この後再び距離測定を行ない(S34)、遅延ループが完了したら(S35)、初期設定(S12)の後の距離測定(S13)の動作に移行する。次に距離測定によって得られた距離が12〜17cmの範囲内(S27)である場合には、出力電圧設定(S33)において、モータ22に印加される電圧を3Vに設定する。そしてこの後再び測定範囲内の距離かどうかを判別し(S34)、その範囲内にある場合には遅延ループ(S35)が完了した後に初期設定の後の距離測定(S13)の動作に移行する。
【0023】
以降の動作も同様であって、距離が17cm以上であって22cm以下の場合(S28)には、出力電圧の設定を2.5Vにする(S33)。そしてこの後に再び距離設定において上記の範囲内かどうかの判断を行なうとともに(S34)、遅延ループが完了した後に(S35)初期設定(S12)の後の距離測定の動作(S13)に移行する。次に距離測定において22〜27cmの範囲内(S29)である場合には、出力電圧設定のステップで、2Vに電圧を設定する。そしてここでも距離が測定範囲内かどうか(S34)の判断を行なうとともに、遅延ループ(S35)が完了した後に最初の距離測定(S13)の動作に移行する。距離測定において27〜32cmの範囲内である場合(S30)には、出力電圧を2Vに設定する。そしてこの後に再び測定範囲内かどうかの判断を行なうとともに(S34)、遅延ループ(S35)が完了した後に最初の距離測定(S13)の動作に戻る。次に距離測定において27〜32cmの範囲内である場合(S30)には、出力電圧を1.5Vに設定する。そしてこの後に再び距離が測定範囲内かどうかの判断(S34)を行ない、その範囲内である場合には、遅延ループ(S35)が完了した後に最初の距離測定(S13)の動作に戻る。
【0024】
このような制御動作によって、巻取りドラム20を駆動するモータ22に印加される電圧がワーク45のたるみ量に応じて検出される距離に応じて、最適な値に調整され、このためにワーク45を巻取りドラム20によって適正に巻取ることが可能になる。
【0025】
以上本願発明を図示の実施の形態によって説明したが、本願発明は上記実施の形態によって限定されることなく、本願に含まれる発明の技術的思想の範囲内において各種の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本願発明は、例えば高速プレス機から供給される打抜かれたフープ材の巻取り装置に利用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】巻取り装置の要部斜視図である。
【図2】巻取り装置の平面図である。
【図3】巻取り装置の正面図である。
【図4】制御系の構成を示すブロック図である。
【図5】制御系の演算部の動作を示すフローチャートである。
【図6】距離に応じた電圧設定の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
10 フレーム
11 基台(上)
12 基台(下)
13 ねじりロール
14〜16 補助ガイドロール
19 ステー
20 巻取りドラム
21 フランジ
22 モータ
24 水平案内ロール
25、26 ガイドバー
27 超音波センサ
29 ステー
30 層間紙供給ドラム
35 超音波発信部
36 超音波受信部
37 制御ユニット
38 演算部
39 プログラム格納部
40 D/A変換部
41 電源回路
45 ワーク(長尺のフープ材)
46 層間紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のワークを巻取り手段によって巻取るようにした巻取り装置において、
発信した超音波がワークに当たって反射して返ってくるまでの時間からワークまでの距離を計測する超音波センサと、
前記巻取り手段を駆動するモータと、
前記モータに印加する駆動電圧を調整する電圧調整手段と、
を有し、前記超音波センサによって計測される距離から前記巻取り手段の前方におけるワークのたるみ量を検出し、前記ワークのたるみ量がほぼ一定になるように前記電圧調整手段によって前記モータに印加する電圧を制御することを特徴とする巻取り装置。
【請求項2】
前記電圧調整手段は、前記ワークのたるみ量に応じて前記モータに印加する駆動電圧を段階的に変化させることを特徴とする請求項1に記載の巻取り装置。
【請求項3】
前記電圧調整手段は、前記ワークのたるみ量が予め設定された所定の値を超えたら前記モータに印加する電圧を0Vにすることを特徴とする請求項1に記載の巻取り装置。
【請求項4】
前記超音波センサの前方に一対のガイドが配され、該ガイド内における前記ワークのたるみ量を前記超音波センサが検出することを特徴とする請求項1に記載の巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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