説明

巻取り装置

【課題】長尺材に作用する引張力によって破壊されない十分な強度を確保しつつ、小型・軽量化を図ることができる、巻取り装置を提供する。
【解決手段】巻取り装置16は、リード紐14(長尺材)を巻き取る巻取り部70を有する回転体56と、回転体56を回転自在に支持するリード紐収容ケース18(基部)と、ゼンマイ48と、ロック部38と、ロック解除部32とを備え、巻取り部70は、ゼンマイ収容部76を有し、ロック部38は、回転体56の軸方向端面に一体的に形成され、回転軸Pの周囲に周方向に間隔を隔てて配置された複数の第1係止部88と、リード紐収容ケース18に一体的に形成され、複数の第1係止部88に周方向から同時に係止される複数の第2係止部40とを有し、ロック解除部32は、回転体56をその回転軸Pに対して平行方向に移動させることによって、係止状態を解除する移動機構Fを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紐状または帯状の長尺材を巻き取る機能を有し、ペット用リード、キーホルダーおよび自転車の盗難防止具等に用いられる、巻取り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、リード紐の長さを状況に応じて適宜変更することができる「巻取り式」のペット用リードが開発されており、たとえば、特許文献1には、係留紐体(3)(すなわちリード紐)の一方端部にフック具(4)(すなわち係止部)を設けるとともに、他方端部に把持部(7)および巻取部(8)を設けたペット用リード(1)が記載されている。このペット用リード(1)に用いられる巻取部(8)は、係留紐体(3)が巻き付けられるリール(30)と、リール(30)のフランジ部に周方向に間隔を隔てて設けられた複数の係合爪(32)と、複数の係合爪(32)の一つに径方向から係合されるロック爪(16)とを有しており、操作部(6)を押し込んだ押圧状態では、ロック爪(16)が係合爪(32)に係合されて、リール(30)の回転動作がロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−319729号公報(段落[0015]、図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたペット用リード(1)によれば、ロック爪(16)を操作部(6)で操作することによって係留紐体(3)の引出し長さを適宜調整することが可能であるが、ロック爪(16)を係合爪(32)に対して径方向から係合させていたので、ロック爪(16)を操作する操作部(6)がリール(30)の外周部から径方向外側に大きく突出し、巻取部(8)の全体サイズが大きくなるという課題があった。
【0005】
また、ロック爪(16)には、その移動方向に対して直交する方向から係合爪(32)が係合されるので、ロック爪(16)および操作部(6)がペットの牽引力で破壊されないようにするためには、これらを把持部(7)等で十分に補強する必要があり、その補強構造によっても巻取部(8)の全体サイズが大きくなるという課題があった。
【0006】
なお、これらの課題は、「ペット用リード」に限らず、「キーホルダー」および「自転車の盗難防止具」等に用いられる巻取り装置に共通の課題である。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、長尺材に作用する引張力(ペットの牽引力等)によって破壊されない十分な強度を確保しつつ、小型・軽量化を図ることができる、巻取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の巻取り装置は、長尺材を巻き取る筒状の巻取り部を有する回転体と、前記回転体を回転自在に支持する基部と、前記回転体に回転力を付与するゼンマイと、前記回転体の回転動作をロックするロック部と、前記ロック部による前記回転体のロック状態を解除するロック解除部とを備え、前記巻取り部は、前記ゼンマイを収容する内部空間を有し、前記ロック部は、前記回転体の軸方向端面に一体的に形成され、前記回転体の回転軸の周囲に周方向に間隔を隔てて配置された複数の第1係止部と、前記基部に一体的に形成され、前記複数の第1係止部に周方向から同時に係止される複数の第2係止部とを有し、前記ロック解除部は、前記回転体をその回転軸に対して平行方向に移動させることによって、前記複数の第1係止部に対する前記複数の第2係止部の係止状態を解除する移動機構を有する。
【0009】
この構成では、複数の第2係止部が複数の第1係止部に周方向から同時に係止されることによって回転体に作用する回転力(すなわち周方向の力)が複数の第2係止部に分散して受けられる。したがって、第1係止部および第2係止部のサイズが小さくても、ロック部全体として大きな係止力を発揮することが可能であり、巻取り部の内部空間にゼンマイがコンパクトに収容されることと相俟って、小型・軽量化を図ることができる。また、複数の第1係止部は、回転体の軸方向端面に一体的に形成されており、複数の第2係止部は、基部に一体的に形成されているので、これらの強度を、特別な補強構造を採用することなく十分に確保することができる。
【0010】
前記移動機構は、操作者の手指で押される入力部を有し、前記入力部から入力される押圧力によって前記回転体がその回転軸に対して平行方向に移動されてもよい。
【0011】
この構成では、操作者の手指で入力部が押されることによって回転体が移動され、ロック部による回転体のロック状態が解除される。
【0012】
前記ロック部は、前記複数の第1係止部に対する前記複数の第2係止部の係止状態を保持する弾性部材を有し、前記入力部から入力される押圧力によって前記弾性部材が弾性変形され、前記押圧力の解除後は、前記弾性部材の弾性復元力によって前記回転体が元の位置まで戻されてもよい。
【0013】
この構成では、操作者の手指で入力部が押されることによって回転体のロック状態が解除され、その後、入力部から手指を離すと、弾性部材の弾性復元力によって回転体が元の位置まで戻され、当該弾性部材によって回転体のロック状態が保持される。したがって、長尺材の長さを調節するときにだけ、回転体のロック状態を一時的に解除することが可能であり、長尺材の長さを調節した後には、回転体を直ちにロック状態にして長尺材の長さを固定することができる。
【0014】
前記ゼンマイの一方端部が前記基部に固定されており、かつ、前記ゼンマイの他方端部が前記回転体に固定されており、前記巻取り部に巻き取られた前記長尺材が引き出されるときに、前記回転体が回転されて前記ゼンマイが巻かれてもよい。
【0015】
この構成では、長尺材を引き出す力でゼンマイが巻かれ、ゼンマイの弾性復元力で回転体が回転されて巻取り部に長尺材が巻き取られる。
【0016】
前記回転体および前記巻取り部に巻き取られた前記長尺材を収容する長尺材収容ケースを備え、前記長尺材収容ケースの少なくとも一部で前記基部が構成されてもよい。
【0017】
この構成では、長尺材収容ケースの一部で基部が構成されるので、長尺材収容ケースの構造によって基部の強度を容易に確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る巻取り装置によれば、回転体に形成された複数の第1係止部と基部に形成された複数の第2係止部とを周方向から同時に係合させるようにしているので、長尺材に作用する引張力を回転体およびケースに分散させて受けることができる。したがって、回転体の内部空間にゼンマイがコンパクトに収容されることと相俟って、十分な強度を確保しつつ、小型・軽量化を図ることができる。また、回転体をその回転軸に対して平行方向に移動させることによって、複数の第1係止部に対する複数の第2係止部の係止状態を簡単に解除することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、第1実施形態に係る巻取り装置を用いたペット用リードの構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係る巻取り装置を用いたペット用リードの構成を示す分解斜視図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る巻取り装置を用いたペット用リードの構成を示す断面図である。
【図4】図4は、巻取り装置の一部の構成を示す図であり、(A)は上方斜視図、(B)は断面図、(C)は下方斜視図である。
【図5】図5は、巻取り装置の一部の構成を示す分解斜視図である。
【図6】図6は、リード紐収容ケース(長尺材収容ケース)および物品収容ケースの構成を示す斜視図である。
【図7】図7は、リード紐収容ケース(長尺材収容ケース)に対する物品収容ケースの取付構造を示す断面図である。
【図8】図8は、回転体のロック状態を解除した状態を示す断面図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係る巻取り装置を用いたペット用リードの構成を示す分解斜視図である。
【図10】図10は、第2実施形態に係る巻取り装置を用いたペット用リードの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
[ペット用リードの全体構造]
図1は本発明の第1実施形態に係る巻取り装置16を用いたペット用リード10の構成を示す斜視図であり、図2は、ペット用リード10の構成を示す分解斜視図であり、図3は、ペット用リード10の構成を示す断面図である。
【0021】
図1に示すように、ペット用リード10は、犬、猫および猿等のペット(図示省略)に装着された装着具12(図1)に取り付けられるものであり、図2に示すように、「長尺材」としてのリード紐14と、リード紐14を引き出し可能に巻き取る巻取り装置16と、巻取り装置16に設けられ、鑑札Aおよび注射済票B等を収容する物品収容ケース22(図1)とを備えている。
【0022】
図1に示した装着具12は、ペットの首に装着される「首輪」であり、合成樹脂、皮革、天然繊維、或いはその他の材料からなる装着ベルト12aを有しており、装着ベルト12aが巻取り装置16の取付部20に挿通されるようになっている。なお、装着具12の種類は、「首輪」に限定されるものではなく、たとえば、ペットの胴体に装着される「胴体ベルト」等であってもよい。
[長尺材の構成]
図2に示すように、リード紐14は、ペットの動きをその長さを限度として制限するものであり、ナイロン、ポリエステル、超高分子ポリエチレン、アラミド繊維、或いはその他の柔軟性を有する高強度材料によって紐状または帯状に形成されている。リード紐14の「太さ」および「長さ」は、リード紐14の全体を巻取り装置16に巻き取ってリード紐収容ケース18の内部に収容できるように設計されており、材料強度が高いほど、リード紐14の太さを細くして、長さを長くすることが可能である。
【0023】
そして、リード紐14の一方端部14aが、巻取り装置16に接合されており、リード紐14の他方端部14bには、飼い主等が把持する環状の把持部62が取り付けられている。把持部62の「大きさ」および「形状」は、飼い主等の手のひらに握り込んだり、手指を通したりすることができるように設計されており、本実施形態では、把持部62の全体が金属または合成樹脂等によってリング状に形成されている。
【0024】
なお、把持部62の形状は、リング状の他、フック状やブロック状であってもよく、また、把持部62よりも把持性に優れた補助把持部(図示省略)を把持部62に取り付けて用いるようにしてもよい。
[巻取り装置の構成]
図3は、ペット用リード10(巻取り装置16を含む。)の構成を示す断面図であり、図4は、巻取り装置16の一部の構成を示す上方斜視図、断面図および下方斜視図であり、図5は、巻取り装置16の一部の構成を示す分解斜視図である。
【0025】
図3に示すように、巻取り装置16は、「長尺材収容ケース」としてのリード紐収容ケース18と、「長尺材」としてのリード紐14が巻き付けられる回転体56と、回転体56にリード紐14を巻き付ける動力を発生させるゼンマイ48と、回転体56の回転動作をロックするロック部38と、ロック部38による回転体56のロック状態を解除するロック解除部32とを有している。以下、これらの構成を順に説明する。
【0026】
<リード紐収容ケースの構成>
図2に示すように、リード紐収容ケース18は、その内部にリード紐14を収容する収容空間S1を構成する略直方体状の箱状部材であり、ケース本体24と蓋体26とを有している。そして、後述するように、リード紐収容ケース18が、回転体56を回転自在に支持する「基部」として機能するようになっている。
【0027】
ケース本体24は、略長方形のロック板部28と、ロック板部28の周縁部にロック板部28の主面に対して垂直に形成された4つの側壁部30a〜30dとを有しており、ロック板部28における長手方向中央部より一方端部側(本実施形態では側壁部30c側)に偏った部分には、ロック解除部32のボタン34が配置される円形の貫通孔36が形成されており、ロック板部28の内面における貫通孔36の内周部には、ボタン34の一部が回転自在に嵌合される環状の段部36aが形成されている。また、ロック板部28の内面における貫通孔36の周囲には、ロック部38を構成する複数の第2係止部40が周方向に間隔を隔てて形成されている。
【0028】
そして、ロック板部28の長辺(すなわち長手方向に対して直交する方向の端縁)に形成された側壁部30aの外面中央部には、装着ベルト12a(図1)が挿通される環状の取付部20が一体的に設けられており、当該側壁部30aに対向する側壁部30bの中央部には、リード紐14が挿通される円形の貫通孔42が形成されている。さらに、ケース本体24におけるロック板部28に対向する面には、開口部44が形成されており、この開口部44に対して蓋体26が接合されている。本実施形態では、環状の取付部20の軸が側壁部30aの長手方向に対して平行方向に延びている。したがって、取付部20に挿通される装着ベルト12a(図1)は、側壁部30aの長手方向に対して平行方向に延びることとなり、リード紐収容ケース18の長手方向端部がペットの体(本実施形態では首)に当たるのを防止することができる。
【0029】
蓋体26は、ケース本体24の開口部44を閉塞する板状部材であり、蓋体26の内面周縁部には、開口部44の周縁部を受ける段部26aが形成されており、蓋体26における貫通孔36に対向する領域の中央部には、棒状の支柱46が収容空間S1内に突出するように形成されている。そして、支柱46の中央部には、ゼンマイ48の係止部92(図3)を係止するスリット50が軸方向に延びて形成されており、支柱46の先端部には、ロック部38のコイルばね52(図3)を係止する係止突起54が形成されている。さらに、蓋体26の内面における支柱46の周囲には、巻取り装置16の回転体56を回転方向に案内する円形のガイド溝58が形成されており、蓋体26の4つのコーナ部の近傍には、物品収容ケース22(図1、図3)を接合する4つの接合孔60が形成されている。
【0030】
リード紐収容ケース18の内部(収容空間S1)に回転体56を収容した状態では、回転体56の円筒状のガイド部90がガイド溝58に回転自在に嵌合され、回転体56が物品収容ケース22の全体で支持される。つまり、本実施形態では、物品収容ケース22の全体が回転体56を回転自在に支持する「基部」として機能する。
【0031】
ケース本体24、蓋体26および取付部20は、ペットの牽引力によって破壊されない強度を有する必要があり、ケース本体24と取付部20との接合部や、ケース本体24と蓋体26との接合部は、ペットの牽引力によって離脱されない強度を有する必要がある。そこで、本実施形態では、ケース本体24と取付部20とがアルミニウム合金等の高強度材料によって一体的に形成されるとともに、蓋体26が同じく高強度材料によって形成されており、ケース本体24と蓋体26とが溶接または接着等のような強固な接合手段を用いて一体的に接合されている。
【0032】
<回転体の構成>
図4(B)に示すように、回転体56は、その外面(以下、「巻取り面」という。)70aにリード紐14を巻き取る筒状の巻取り部70を有しており、巻取り部70の軸方向一方端部70bおよび軸方向他方端部70cのそれぞれの外周部には、巻き取ったリード紐14(図3)のずれを防止する第1鍔部72および第2鍔部74が形成されている。また、巻取り部70の内部には、ゼンマイ48を収容する内部空間(以下、「ゼンマイ収容部」という。)76が形成されており、巻取り部70および第2鍔部74の周方向の一部には、ゼンマイ48の一部を通すスリット78が形成されている。さらに、巻取り部70におけるスリット78の近傍には、ゼンマイ48の外側端部48bを挿通させてそのフック部80を係止するゼンマイ係止孔82と、リード紐14の一方端部14aを挿通させてその結び目83(図3)を係止する長尺材係止孔84とが形成されている。
【0033】
そして、巻取り部70の軸方向一方端部70bの内周部には、ロック解除部32のボタン34を回転自在に係止するボタン係止部86が形成されており、第1鍔部72の外側面72a(すなわち回転体56の軸方向一方端面)には、複数(本実施形態では8個)の第1係止部88が形成されており、第2鍔部74の外側面74a(すなわち回転体56の軸方向他方端面)には、円筒状のガイド部90が形成されている。
【0034】
図4(B)に示すように、ボタン係止部86は、巻取り部70の内周面に突出して形成された環状の係止部本体86aを有しており、係止部本体86aの軸方向一方部の端面には、環状のガイド溝86bが形成されており、軸方向他方端部の内周面には、環状の段部86cが形成されている。図5に示すように、複数の第1係止部88のそれぞれは、後述するロック部38を構成する略扇形の突部であり、回転体56の回転軸Pを中心として、周方向に一定の間隔(角度間隔)を隔てて配置されている。
【0035】
図4(B),(C)に示すように、ガイド部90は、回転軸P(図5)を中心として形成された円筒状の突部であり、ガイド部90の内面90aおよび外面90bは、滑らかな円筒面に形成されている。図3に示すように、ガイド部90の軸方向長さH1は、ガイド溝58の深さD1よりも短く、かつ、第2鍔部74とリード紐収容ケース18との最大離間距離D2よりも長く設計されている。したがって、ガイド部90とガイド溝58とは常に嵌合状態にあり、ボタン34を押したときには、ガイド部90がガイド溝58に案内されながら、回転体56の全体が回転軸Pに対して平行方向に移動され、第2鍔部74がリード紐収容ケース18に当接される。
【0036】
<ゼンマイの構成>
図5に示すように、ゼンマイ48は、渦巻状に巻かれた帯板状の弾性部材であり、ゼンマイ48の中心部に位置する内側端部48aには、平板状の係止部92が径方向に延びて形成されており、ゼンマイ48の外周部に位置する外側端部48bの幅方向両側には、凹状のフック部80が形成されている。そして、図4(C)に示すように、ゼンマイ48が回転体56のゼンマイ収容部76に収容されるとともに、その外側端部48bがスリット78を通して巻取り面70a側に引き出されており、当該外側端部48bがゼンマイ係止孔82に挿通されて、フック部80がゼンマイ係止孔82の内周縁に係止されている。また、図3に示すように、ゼンマイ48の係止部92が支柱46に形成されたスリット50に係止されている。
【0037】
本実施形態のゼンマイ48は、巻取り装置16から引き出されたリード紐14を、その弾性復元力を利用して巻き取るものである。したがって、ゼンマイ48が自然状態(或いは自然状態に近い状態)にあるときには、リード紐14の全体が回転体56の巻取り面70aに巻き取られた状態にあり、リード紐14を巻取り装置16から引き出すにつれて、ゼンマイ48が巻かれて弾性復元力を発生させるようになっている。
【0038】
<ロック部の構成>
図2および図3に示すように、ロック部38は、回転体56の回転動作をロックすることによって、回転体56から引き出されたリード紐14の長さを固定するものであり、回転体56の軸方向一方端面に形成された複数(本実施形態では8個)の第1係止部88と、「基部」としてのリード紐収容ケース18の内面に形成された複数(第1係止部88と同数)の第2係止部40と、回転体56を第2係止部40に向けて押圧するコイルばね52と、係止板93とを有している。
【0039】
複数の第1係止部88のそれぞれは、略扇形に形成された突部であり、第1係止部88の両側面88a,88bは、回転体56の回転軸Pを含む仮想平面内に位置して放射状に延びて形成されている。そして、複数の第1係止部88が、回転軸Pを中心として、周方向に一定の間隔(本実施形態では45度間隔)で配置されている。
【0040】
複数の第2係止部40のそれぞれは、複数の第1係止部88に周方向から同時に係止される略扇形の凹部であり、第2係止部40の両側面40a,40bは、回転軸Pを含む仮想平面内に位置して放射状に延びて形成されている。そして、複数の第2係止部40が、回転軸Pを中心として、周方向に一定の間隔(本実施形態では45度間隔)で配置されている。また、第2係止部40の大きさは、第1係止部88が嵌合可能なように、第1係止部88の大きさよりも大きく設計されている。
【0041】
なお、本実施形態では、第1係止部88を突状に形成するとともに、第2係止部40を凹状に形成しているが、これとは逆に、第1係止部88を凹状に形成するとともに、第2係止部40を突状に形成してもよいし、第1係止部88および第2係止部40の両方を突状に形成してもよい。また、第1係止部88および第2係止部40の形状は、互いに係止可能である限り特に限定されるものではなく、たとえば、第1係止部88を円柱状に形成するとともに、第2係止部40を任意形状の凹状に形成してもよい。
【0042】
コイルばね52(図3)は、ボタン34の内面に形成された嵌合突起94と、支柱46の先端部に形成された係止突起54との間で圧縮される弾性部材であり、コイルばね52からボタン34には、常に押圧力が付与されており、通常状態では、当該押圧力によって第1係止部88が第2係止部40に嵌め込まれて、複数の第1係止部88に対する複数の第2係止部40の係止状態が保持される。
【0043】
係止板93は、ボタン34の端部に一体的に接合されることによって、後述する係止部34cと協働して係止機能を発揮するものであり、コイルばね52からボタン34に押圧力が作用すると、この押圧力が係止部34cおよび係止板93を介して回転体56に与えられ、回転体56の全体(複数の第1係止部88を含む。)が第2係止部40の底面40c(図2)に向けて押圧される。
【0044】
<ロック解除部の構成>
図2および図3に示すように、ロック解除部32は、ロック部38による回転体56のロック状態を解除することによって、リード紐14の長さ調節を可能にするものであり、複数の第1係止部88が形成された回転体56をその回転軸Pに対して平行方向(すなわち軸方向)に移動させる移動機構Fと、移動機構Fの移動範囲を規定するリード紐収容ケース18とを有している。移動機構Fは、操作者の手指で押される「入力部」としてのボタン34と、回転体56を軸方向に案内するガイド部90およびガイド溝58とを有している。
【0045】
ボタン34は、通常状態において、ケース本体24の貫通孔36から外部に突出される有底筒状のボタン本体34aを有しており、図4(B)に示すように、ボタン本体34aの底部内面35の中央部には、コイルばね52の一方端部が嵌合される嵌合突起94が一体的に形成されている。また、ボタン本体34aの外周部には、回転体56のガイド溝86bに回転自在に係止される筒状の係止部34bと、回転体56の段部86cに回転自在に係止される鍔状の係止部34cとが一体的に形成されており、ボタン本体34aの開口側の端部には、回転体56のボタン係止部86に係止される係止板93が接着剤等によって一体的に接合されている。
【0046】
図3に示すように、第2係止部40が第1係止部88に係止された通常状態では、回転体56の第2鍔部74がリード紐収容ケース18の内面から離間しており、この離間距離D2が第1係止部88の高さH2よりも長くなっている。また、ガイド部90の軸方向長さH1は、第2鍔部74とリード紐収容ケース18との最大離間距離D2よりも長く設計されているので、回転体56のガイド部90とリード紐収容ケース18のガイド溝58との嵌合状態が保持されている。したがって、図8に示すように、ボタン34を押すことによって、回転体56を、ガイド溝58で案内しながら回転軸Pに対して平行方向(すなわち軸方向)に移動させることが可能であり、これにより複数の第1係止部88に対する複数の第2係止部40の係止状態を解除することができる。
[物品収容ケースの構成]
図6は、リード紐収容ケース18および物品収容ケース22の構成を示す斜視図であり、図7は、リード紐収容ケース18に対する物品収容ケース22の取付構造を示す断面図である。
【0047】
図6および図7に示すように、物品収容ケース22は、透明樹脂(アクリル、ポリカーボネート等)からなり、「収容物」としての鑑札Aおよび注射済票B等を収容する容器であり、収容空間S2を構成するケース本体96を有している。ケース本体96は、リード紐収容ケース18(蓋体26)の表面に固定される固定板部98と、固定板部98の周縁部に形成された4つの側壁部100a〜100dとを有しており、固定板部98の外面には、リード紐収容ケース18の接合孔60に嵌合される4つの嵌合突起102(図7)が形成されている。また、ケース本体96における固定板部98に対向する面には、「収容物」を出し入れする開口部104(図6)が形成されており、開口部104には、ヒンジ部106を介して蓋体108が開閉自在に設けられている。さらに、固定板部98の内面には、鑑札Aおよび注射済票B等を支持する「支持部」としての平坦面98aが形成されており、この平坦面98aに対して鑑札Aおよび注射済票B等が両面粘着テープ等の接合部材99を用いて取り付けられる。これにより、鑑札Aおよび注射済票B等を「透明部」としての蓋体108を通して外部から視認できるようになっている。
【0048】
図7に示すように、リード紐収容ケース18の接合孔60は、外側開口部60aから内側開口部60bに向かうにつれて断面積が広くなるように円錐状に形成されており、一方、物品収容ケース22の嵌合突起102は、軸部102aと軸部102aの先端部に形成された球状の係止部102bとを有しており、係止部102bの直径は、外側開口部60aの内径よりも大きく、かつ、内側開口部60bの内径よりも小さく設計されている。したがって、外側開口部60aから接合孔60の内部に係止部102bを無理入れすることによって、係止部102bを接合孔60の内面に嵌合することが可能であり、この嵌合構造によって物品収容ケース22をリード紐収容ケース18に強固に接合することができる。
【0049】
また、図7に示すように、蓋体108の先端部108aには、フック部110が形成されており、ケース本体96の側壁部100dには、フック部110を係止する係止部112が形成されており、係止部112でフック部110を係止することによって、蓋体108の閉状態が保持される。
【0050】
なお、本実施形態では、ケース本体96と蓋体108とが「透明樹脂」によって一体的に形成されているが、これらは、「不透明樹脂」または「金属」によって一体的に形成されてもよいし、同種または異種の材料によって別々に形成されてもよい。また、ケース本体96がアルミニウム合金等によってリード紐収容ケース18と一体的に形成されてもよい。
[ペット用リードの使用方法]
ペット用リード10を使用する際には、図6に示すように、物品収容ケース22の収容空間S2に「収容物」としての鑑札A、注射済票Bおよび飼い主の連絡先を書いたカード等を収容し、蓋体108を閉じるとともにフック部110を係止部112で係止する。また、図1に示すように、帯状の装着ベルト12aを環状の取付部20に挿通し、この装着ベルト12aを犬(ペット)の首に装着する。
【0051】
そして、図8に示すように、リード紐14を使用しないときには、ロック解除部32のボタン34を押すことによって第2係止部40に対する第1係止部88の係止状態を解除する。すると、ゼンマイ48の弾性復元力によって回転体56が回転され、巻取り部70の巻取り面70aにリード紐14が巻き取られ、把持部62がリード紐収容ケース18の外面における貫通孔42の近傍に配置される。この状態では、リード紐14のほぼ全体がリード紐収容ケース18の内部に収容されているので、リード紐14がペットの運動の邪魔になることはなく、ペットの自由を確保することができる。
【0052】
ペットを散歩に連れ出すときのように、ペットの動きを制限する必要がある場合には、ボタン34を押して第2係止部40に対する第1係止部88の係止状態を解除するとともに、把持部62を把持してリード紐14を必要な長さだけ引き出し、リード紐14の長さを調節する。そして、リード紐14の長さ調節が完了すると、ボタン34に対する押圧力を解除する。すると、コイルばね52の弾性復元力によってボタン34が元の位置に戻され、複数の第1係止部88に対する複数の第2係止部40の係止状態が保持される。この状態では、ロック部38によって回転体56の回転動作がロックされるので、リード紐14の長さが不所望に変化するのを防止することができる。
【0053】
散歩の途中にペットが迷子になったときには、多くの場合、第三者によってペットが保護されるが、本実施形態では、物品収容ケース22の収容空間S2に鑑札Aおよび注射済票B等が収容されており、しかも、これらを透明な蓋体108を通して外部から視認することができるので、第三者は、鑑札Aおよび注射済票B等に記載された情報を手掛かりとして、飼い主を迅速に探し出すことができる。
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態に係る巻取り装置116を用いたペット用リード120の構成を示す分解斜視図であり、図10は、ペット用リード120の構成を示す断面図である。
【0054】
巻取り装置116では、「長尺材収容ケース」としてのリード紐収容ケース122が円筒状に形成されており、ケース本体124の外面には、別部材からなる取付部128が回動自在に接合されている。なお、リード紐収容ケース122および取付部128を除いた部分は、第1実施形態に係る巻取り装置16(図2、図3)と同様に構成されているため、当該部分には巻取り装置16と同じ参照番号を付して重複する説明は省略する。
【0055】
リード紐収容ケース122は、ケース本体124と蓋体126とを有している。ケース本体124は、略円形のロック板部130と、ロック板部130の周縁部に形成された筒状の周壁部132とを有しており、ロック板部130の中央部には、ロック解除部32のボタン34が配置される円形の貫通孔134が形成されており、ロック板部130の内面における貫通孔134の周囲には、ロック部38を構成する複数の第2係止部40が周方向に間隔を隔てて形成されている。また、周壁部132の外面には、取付部128が係合される突起状の係合部138が形成されており、周壁部132の開口端部内面には、雌ねじ136が形成されている。さらに、周壁部132における係合部138が形成された部分に対向する部分には、リード紐14が挿通される円形の貫通孔42が形成されている。そして、係合部138には、取付部128が回動自在に挿入される貫通孔138aが、ケース本体124の軸に対して平行方向に延びて形成されている。
【0056】
蓋体126は、ケース本体124の開口部124aを閉塞する略円形の板状部材であり、蓋体126における貫通孔134に対向する領域の中央部には、棒状の支柱46が収容空間S1内に突出するように形成されており、蓋体126の外周面には、雄ねじ140が形成されている。そして、雄めじ140が雌ねじ136に螺合されることによって蓋体126がケース本体124に接合されている。
【0057】
取付部128は、金属、合成樹脂および皮革等から適宜選ばれた材料(本実施形態では金属)からなる無端リング状または有端リング状(本実施形態では有端リング状)の線状部材であり、取付部128の一部が係合部138の貫通孔138aに回動自在に挿入されている。
【0058】
第2実施形態によれば、取付部128がケース本体124に対して回動自在に係合されているので、装着具12(図1)に対するリード紐収容ケース122の位置の自由度を高めることが可能であり、ペット用リード120から装着具12(図1)に無理な力が作用するのを防止することができる。
【0059】
なお、ケース本体124と蓋体126との接合手段には、「ねじ接合」の他、「溶接」および「接着」等を用いてもよく、また、ケース本体124と取付部128との接合手段には、ボルト・ナット等のような「接合部材」を用いてもよい。また、第2実施形態では、物品収容ケースを省略しているが、鑑札Aおよび注射済票Bの少なくとも一方を収容する物品収容ケース(図示省略)をリード紐収容ケース122に接合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る巻取り装置は、「ペット用リード」の他、「キーホルダー」および「自転車の盗難防止具」等にも幅広く適用可能である。巻取り装置を「キーホルダー」に適用する場合には、「長尺部材」としてワイヤ等が用いられ、ワイヤ等の端部には、把持部62に代えてカラビナおよび有端リング等が設けられる。また、本発明に係る巻取り装置を「盗難防止具」に適用する場合には、「長尺部材」としてワイヤ等が用いられ、ワイヤ等の端部には、リード紐収容ケースにロック可能に係止される係止部が設けられる。
【符号の説明】
【0061】
F… 移動機構
P… 回転軸
S1,S2… 収容空間
10… ペット用リード
12… 装着具
14… リード紐(長尺材)
16… 巻取り装置
18… リード紐収容ケース(長尺材収容ケース、基部)
20… 取付部
22… 物品収容ケース
24… ケース本体
26… 蓋体
32… ロック解除部
34… ボタン
36… 貫通孔
38… ロック部
40… 第2係止部
42… 貫通孔
46… 支柱
48… ゼンマイ
50… スリット
56… 回転体
58… ガイド溝
70… 巻取り部
72… 第1鍔部
74… 第2鍔部
76… ゼンマイ収容部(内部空間)
78… スリット
80… フック部
82… ゼンマイ係止孔
83… 結び目
84… リード紐係止孔
86… ボタン係止部
88… 第1係止部
90… ガイド部
92… 係止部
116… 巻取り装置
120… ペット用リード
122… リード紐収容ケース(長尺材収容ケース)
128… 取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺材を巻き取る筒状の巻取り部を有する回転体と、
前記回転体を回転自在に支持する基部と、
前記回転体に回転力を付与するゼンマイと、
前記回転体の回転動作をロックするロック部と、
前記ロック部による前記回転体のロック状態を解除するロック解除部とを備え、
前記巻取り部は、前記ゼンマイを収容する内部空間を有し、
前記ロック部は、前記回転体の軸方向端面に一体的に形成され、前記回転体の回転軸の周囲に周方向に間隔を隔てて配置された複数の第1係止部と、前記基部に一体的に形成され、前記複数の第1係止部に周方向から同時に係止される複数の第2係止部とを有し、
前記ロック解除部は、前記回転体をその回転軸に対して平行方向に移動させることによって、前記複数の第1係止部に対する前記複数の第2係止部の係止状態を解除する移動機構を有する、巻取り装置。
【請求項2】
前記移動機構は、操作者の手指で押される入力部を有し、
前記入力部から入力される押圧力によって前記回転体がその回転軸に対して平行方向に移動される、請求項1に記載の巻取り装置。
【請求項3】
前記ロック部は、前記複数の第1係止部に対する前記複数の第2係止部の係止状態を保持する弾性部材を有し、
前記入力部から入力される押圧力によって前記弾性部材が弾性変形され、前記押圧力の解除後は、前記弾性部材の弾性復元力によって前記回転体が元の位置まで戻される、請求項2に記載の巻取り装置。
【請求項4】
前記ゼンマイの一方端部が前記基部に固定されており、かつ、前記ゼンマイの他方端部が前記回転体に固定されており、
前記巻取り部に巻き取られた前記長尺材が引き出されるときに、前記回転体が回転されて前記ゼンマイが巻かれる、請求項1ないし3のいずれかに記載の巻取り装置。
【請求項5】
前記回転体および前記巻取り部に巻き取られた前記長尺材を収容する長尺材収容ケースを備え、
前記長尺材収容ケースの少なくとも一部で前記基部が構成されている、請求項1ないし4のいずれかに記載の巻取り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−172496(P2011−172496A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37652(P2010−37652)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(510050823)
【出願人】(509190059)
【Fターム(参考)】