説明

巻取り装置

【課題】カールが強いウエブであっても、巻取り軸に綺麗に巻き付けることができる巻取り装置を提供する。
【解決手段】切断装置34を新軸28に接近させることによって、バキュームボックス40が新軸28にウエブWを固定し、その後に走行カッター38によってウエブWを切断し、その後に新軸28を巻取り方向とは反対方向に回転させることによって、バキュームボックス40がウエブWを吸引したまま移動し、バキュームボックス40がウエブWを接着テープ68を介して新軸28に押圧固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛、紙、フィルムなどの長尺状のウエブを巻き取る巻取り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人が提案した特許文献1に示されている巻取り装置は、ウエブが全く巻かれていない新軸から、ウエブが満巻などになった旧軸に向かうウエブを吸引部で吸引した後、走行カッターでウエブの幅方向に沿って直線に切断し、その後に新軸を走行方向とは反対方向に回転させて、新軸にある接着部にウエブを貼り付け、その後に走行方向に回転して新軸にウエブを巻き付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−143707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、カールの強いウエブの場合には、新軸が反対方向へ回転して吸引部による吸引力がなくなった場合に、カールしている部分が新軸の外周面に沿って移動せず新軸に巻き付かないことがある。そのため、巻き付けようとしているウエブの先端部が、新軸の接着部に綺麗に固定されず、その上にウエブを巻き付けた場合に、ウエブを綺麗に巻き付けることができないという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、カールが強いウエブであっても、巻取り軸に綺麗に巻き付けることができる巻取り装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、旧軸と新軸の間のウエブを切断するときに、前記新軸に接近する切断装置と、前記切断装置に取り付けられ、前記新軸を押圧すると共に、前記新軸の回転と共に切断位置から固定位置に移動可能な吸引手段と、前記切断装置に取り付けられ、前記ウエブを幅方向に切断する切断手段と、前記新軸の表面に設けられた接着テープと、(1)前記切断装置を前記新軸に接近させることによって、前記切断位置にある前記吸引手段を前記ウエブを挟んで前記新軸に押圧し、(2)前記吸引手段によって前記ウエブを吸引面に吸引固定し、(3)前記切断手段を用いて、吸引固定した前記ウエブを切断し、(4)前記新軸を巻取り方向とは反対方向に回転させて、前記吸引手段が、前記ウエブを吸引したまま前記切断位置から前記固定位置まで移動することによって、前記ウエブを前記接着テープを介して前記新軸に押圧固定させる制御部と、を有することを特徴とする巻取り装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カールの強いウエブであっても、吸引手段がウエブを吸引したまま切断位置から固定位置に移動することによって、新軸の接着部に綺麗に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を示す巻取り装置における切断装置の拡大図である。
【図2】同じく切断装置の拡大図であって、ウエブを新軸に固定した場合の図である。
【図3】巻取り装置の第1工程における説明図である。
【図4】巻取り装置の第2工程における説明図である。
【図5】巻取り装置の第3工程における説明図である。
【図6】巻取り装置の第4工程における説明図である。
【図7】巻取り装置の第5工程における説明図である。
【図8】巻取り装置のブロック図である。
【図9】切断装置の動作状態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のウエブWの巻取り装置10について図1〜図9に基づいて説明する。本実施形態のウエブWとしては、例えば、フィルム、紙、金属箔等である。
【0010】
(1)巻取り装置10の構成
巻取り装置10の構成について、図3〜図8に基づいて説明する。
【0011】
巻取り装置10は、支持台12から立設された左右一対の支持脚14,14に支持軸16が水平に設けられ、4組のアーム18,20,22,24が支持軸16を中心に90°毎に設けられている。一対のアーム18,18には、ウエブWを巻き取るための軸26が回転自在に架設され、一対のアーム20,20には、ウエブWを巻き取るための軸28が回転自在に架設され、一対のアーム22,22には、ガイドロール30が回転自在に架設され、一対のアーム24,24には、ガイドロール32が回転自在に架設されている。以後の説明では、軸26は、ウエブWが満巻に巻かれたり、又は、ウエブWが満巻ではなくとも次の軸に切り替えるための切り替え前の巻取り軸である「旧軸26」と呼び、軸28は、ウエブWが巻かれていない空の巻取り軸である「新軸28」と呼ぶ。
【0012】
また、巻取り装置10は、切断装置34を有している。この切断装置34は、ウエブWを旧軸26から新軸28に交換するときに、回転軸45を中心に回転して待機位置から動作位置に移動し、ウエブWを幅方向に切断する。切断装置34は、ガイドロール36、吸引手段であるバキュームボックス40、バキュームボックス40を移動させる移動手段42を有している。この切断装置34については、後から詳しく説明する。
【0013】
また、新軸28の近傍には、タッチロール74を有するタッチロール装置72が設けられている。このタッチロール装置72についても、後から詳しく説明する。
【0014】
巻取り装置10にウエブWを供給する走行路には、不図示のダンサー装置とアキューム装置とが設けられている。ダンサー装置は、巻取り装置10に供給されるウエブWの張力を一定の張力に制御する装置である。また、アキューム装置は、巻取り装置10において巻取り軸を旧軸26から新軸28に切り換える場合に、ウエブWの走行を所定時間停止する必要があるため、その停止の間、ウエブWを一定量収容するための装置である。
【0015】
(2)切断装置34の構成
次に、切断装置34の構成について図1及び図2に基づいて説明する。
【0016】
切断装置34の切断アーム44の基部には、切断装置34を回転させるための回転軸45が設けられ、切断アームアクチュエータ66によって回転する。
【0017】
切断アーム44の先端下部にはガイドロール36が回転自在に取り付けられ、また、切断アーム44の下部には、バキュームボックス40が、移動手段42によって切断装置34の長手方向に沿って移動自在に取り付けられている。移動手段42は、バキュームボックス40を支持するボックス支持部46、このボックス支持部46を長手方向に沿って移動させるためのスライドレール48、前記ボックス支持部46を移動させるためのエアーシリンダー50とを有している。
【0018】
バキュームボックス40は、新軸28の幅方向とほぼ同じ幅寸法を有し、吸引面52がゴムによって形成されている。この吸引面52は、平らであり、吸引孔54が複数開口している。この吸引孔54は、切断装置34の先端部に行くほど開口密度が多くなっている。
【0019】
バキュームボックス40を支持するボックス支持部46は、前記したようにスライドレール48に移動自在に固定され、このボックス支持部46に取り付けられたエアーシリンダー50は、バキュームボックス40が切断装置34の基部側に移動する場合にはその移動を阻止しないように取り付けられ、ボックス支持部46を基部側から先端部側にのみ移動させる。以下、バキュームボックス40が、先端部側に位置している場合を「切断位置」といい、基部側に位置している場合を「固定位置」という。
【0020】
バキュームボックス40が切断位置にある場合における先端部側の近傍に、切断手段である走行カッター38が設けられている。この走行カッター38は、カッター刃56をウエブWの幅方向に移動させることにより、ウエブWを幅方向に切断する。
【0021】
さらに、新軸28の近傍には、タッチロール74を有するタッチロール装置72が設けられている。このタッチロール装置72は、図1と図2に示すように、ウエブWをバキュームボックス40が新軸28に押圧したときに、タッチロール74をエアーシリンダー76で突出させて、ウエブWを新軸28に押しつける。
【0022】
(3)巻取り装置10の電気的構成
次に、巻取り装置10の電気的構成について図9のブロック図に基づいて説明する。
【0023】
巻取り装置10を制御するために、コンピュータよりなる制御部58が設けられている。この制御部58には、4本のアーム18,20,22,24を回転する主モータ60、旧軸26を支持軸16を中心に回転させる旧軸モータ62、新軸28を回転させる新軸モータ64、走行カッター38、エアーシリンダー50及び切断装置34を待機位置から動作位置及び動作位置から待機位置に回転させる切断アームアクチュエータ66、新軸28の回転角又は回転時間を検出するための光センサ、エンコーダなどのセンサ70、タッチロール装置72が接続されている。
【0024】
(4)巻取り装置10の動作
次に、巻取り装置10の動作について、図3〜図8に基づいて説明する。
【0025】
まず、図3に示すように、第1の工程では、旧軸26にウエブWが巻き取られている。制御部58は、旧軸モータ62をウエブWの走行速度に合わせて時計回りの方向に回転させて、ウエブWを上巻取りで巻き取っている。また、制御部58は、切断装置34を待機位置で固定している。
【0026】
次に、図4に示すように、第2工程では、旧軸26に巻き取られているウエブWが満巻状態に近くなると、制御部58は、旧軸26でウエブWを巻き取らせながら、主モータ60を時計回りの方向に回転させる。また、制御部58は、切断装置34を待機位置で固定している。
【0027】
次に、図5に示すように、第3工程では、制御部58は、旧軸26を時計回りの方向に回転させながら、切断装置34を待機位置から動作位置に移動を開始する。なお、旧軸26から新軸28に掛け渡されているウエブWは、ガイドロール30を経て掛け渡されるようにする。
【0028】
次に、図6に示すように、第4行程では、制御部58は、旧軸26と新軸28が水平状態になるようにして主モータ60による回転を停止させると共に、切断アーム44を動作位置で固定する。この状態で、ウエブWの搬送を停止し、旧軸26から新軸28に掛け渡されているウエブWをバキュームボックス40とタッチロール74で新軸28に固定して切断装置34で切断し、新軸28にウエブWを固定する。この工程については、更に後から詳しく説明する。以下では、旧軸26に巻き取られるウエブWを「切断されたウエブW」と呼び、新軸28に上巻取りで巻き取られるウエブWを「残ったウエブW」と呼ぶ。なお、タッチロール74については、第1行程から第5行程を示す図3から図7においては、タッチロール74が動作する図6のみ記載している。
【0029】
次に、図7に示すように、第5工程では、制御部58は、切断装置34を動作位置から待機位置に復帰させ、新軸28を時計回りの方向に回転させて、残ったウエブWを上巻取りで巻き取る。一方、切断されたウエブWを旧軸26によって最後まで巻き取り、旧軸26における巻き取りを終了する。
【0030】
(5)切断装置34の動作状態
次に、切断装置34によって、ウエブWを切断する動作状態について図9のフローチャートに基づいて説明する。この動作状態は、上記で説明した巻取り装置10の第4工程における説明である。
【0031】
ステップ1において、制御部58は、ウエブWの走行を停止させる。
【0032】
ステップ2において、制御部58は、切断装置34を動作位置で停止させる。この場合に、図1に示すように、切断装置34の先端にあるガイドロール36が停止しているウエブWに当接され、バキュームボックス40の吸引面52がウエブWを吸引して固定すると共に、タッチロール装置72がタッチロール74をエアーシリンダー76で突出させて、タッチロール74がウエブWを新軸28に押圧する。そして、走行カッター38が、ガイドロール36とバキュームボックス40との間に位置している。また、ウエブWは、バキュームボックス40の吸引面52と新軸28によって押圧固定されている。
【0033】
ステップ3において、制御部58は、走行カッター38のカッター部56を移動させ、ウエブWを幅方向に切断する。このとき、カールが強いウエブWであっても、バキュームボックス40で切断部分の近傍まで吸引されているため、従来のように残ったウエブWの切断部分が上を向いたり下を向いたりすることがない。特に、吸引面52がゴムであって平らであり、吸引孔54が切断装置34の先端部に行くほど開口密度が多くなっているので、カールが強いウエブWであっても、より確実に吸引できる。
【0034】
ステップ4において、制御部58は、残ったウエブWをバキュームボックス40で吸引しながら、新軸28を巻き取り方向とは反対方向(図2において反時計回り)回転させる。このとき、制御部58は、接着テープ68がバキュームボックス40と新軸28の間の位置するまで、センサ70によって反対方向にθ°回転させる。バキュームボックス40は、新軸28が反対方向に回転すると、それに伴って、スライドレール48に沿って切断装置34の基部側に移動する。図1においては、左側に移動する。この場合に、ウエブWはバキュームボックス40に吸引されたままの状態となっている。なお、バキュームボックス40は、スライドレール48に沿って切断位置から固定位置に移動する場合に、新軸28の回転に伴って、新軸28の接線方向に沿って他動で移動する。さらに、反対方向への回転時にはタッチロール74がウエブWを新軸28に押圧しているため、ウエブWが安定して新軸28に固定できる。すなわち、タッチロール74による押圧がないと、新軸28へのウエブWの接触時に切断のストール張力がそのままウエブWにかかるため、ウエブWに余計なストレスがかかり、貼り付け時に皺などの不具合を発生させることとなる。
【0035】
ステップ5において、制御部58は、図2に示すように、新軸28の反対方向への回転をθ°で停止させる。すると、残ったウエブWの切断部分は、バキュームボックス40のゴムよりなる吸引面52と新軸28の外周面との間に接着テープ68によって押圧固定される。
【0036】
ステップ6において、制御部58は、切断装置34を動作位置から待機位置に移動させる。このとき、制御部58は、同時にエアーシリンダー50によってバキュームボックス40を固定位置から切断位置に復帰させる。制御部58は、新軸28を巻き取り方向(時計回りの方向)に回転させて、新軸28に残ったウエブWを巻き取りを開始する。
【0037】
なお、ステップ1〜ステップ6において、制御部58は、ウエブWを停止させているが、バキューム装置によってその間に搬送されてくるウエブWを収容できる。
【0038】
(6)効果
以上により、本実施形態によれば、ウエブWを切断する場合に、バキュームボックス40で吸引された状態でウエブWを切断し、残ったウエブWを吸引したまま新軸28にある接着テープ68に押圧固定するため、ウエブWに強いカールがあっても、新軸28の表面に綺麗に固定できる。
【0039】
(7)変更例
上記実施形態では、バキュームボックス40を固定位置から切断位置に復帰させる装置としてエアーシリンダー50を用いたが、これ以外の装置でもよく、例えばモータなどによって復帰させてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では、4組のアーム18,20,22,24が支持軸16を中心に90°毎に設けたが、これに限らず、2組のアームを180°毎に設けたり、3組のアームを120°毎に設けてもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、旧軸26が満巻状態に近くなったときに新軸28と取り替えたが、これに限らず、任意のタイミングで新軸28に取り替えてもよい。例えば、旧軸26の巻取りを停止させて新軸28に巻取りを変更する場合などである。
【0042】
また、上記実施形態では、新軸28に対しウエブWを上巻き取りで行ったが、これに限らず、下巻取りで行ってもよい。この場合には、切断アーム44を第1の実施形態における位置とは上下対称に配置する。さらに、上下対称に切断アーム44をそれぞれ配置し、タッチロール74の配置により上巻き取りと下巻き取りの切り替えができるようにしてもよい。
【0043】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
10・・・巻取り装置、26・・・旧軸、28・・・新軸、34・・・切断装置、36・・・ガイドロール、38・・・走行カッター、40・・・バキュームボックス、42・・・移動手段、52・・・吸引面、54・・・吸引孔、58・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旧軸と新軸の間のウエブを切断するときに、前記新軸に接近する切断装置と、
前記切断装置に取り付けられ、前記新軸を押圧すると共に、前記新軸の回転と共に切断位置から固定位置に移動可能な吸引手段と、
前記切断装置に取り付けられ、前記ウエブを幅方向に切断する切断手段と、
前記新軸の表面に設けられた接着テープと、
(1)前記切断装置を前記新軸に接近させることによって、前記切断位置にある前記吸引手段を前記ウエブを挟んで前記新軸に押圧し、(2)前記吸引手段によって前記ウエブを吸引面に吸引固定し、(3)前記切断手段を用いて、吸引固定した前記ウエブを切断し、(4)前記新軸を巻取り方向とは反対方向に回転させて、前記吸引手段が、前記ウエブを吸引したまま前記切断位置から前記固定位置まで移動することによって、前記ウエブを前記接着テープを介して前記新軸に押圧固定させる制御部と、
を有することを特徴とする巻取り装置。
【請求項2】
前記吸引手段が、前記新軸の接線方向に沿って移動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の巻取り装置。
【請求項3】
前記吸引手段を、前記固定位置から前記切断位置に復帰させる復帰手段が前記切断装置に設けられている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の巻取り装置。
【請求項4】
前記吸引手段の前記吸引面が平らである、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の巻取り装置。
【請求項5】
前記吸引面がゴムによって形成され、前記吸引面に複数の吸引口が開口している、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の巻取り装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−1496(P2013−1496A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133421(P2011−133421)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000240341)株式会社ヒラノテクシード (58)
【Fターム(参考)】