説明

巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置

【課題】残芯受台が車体上のパンタグラフ機構によって昇降可能とするとともに、パンタグラフ機構のリンク群と昇降用シリンダの干渉をなくし、残芯回収装置をコンパクトとする巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置を提供すること。
【解決手段】巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置において、残芯受台を昇降させるパンタグラフ機構が、少なくとも三段二列のリンク群からなり、昇降用のシリンダが二列のリンク群の間に設けられ、最下部のリンクの最上端近傍と最上部のリンクの最下段近傍とが昇降用のシリンダに接続され、二列のリンク群の各関節のうち昇降用シリンダが干渉する関節が上下のリンクのみ接続され、二列の前後のリンクは接続されないこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輪転機に供給される新聞巻取紙や、加工機に供給される合成樹脂フィルムや布、金属ストリップ等のような、巻芯の外周に円筒状に巻かれた巻取シート状物を支持する受台とともに車体に搭載され、使用済みの残芯を受ける昇降自在な残芯受台を有する巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、輪転機にかけられる新聞巻取紙は、床面上を走行する無人搬送車によって、新聞巻取紙の保管場所から輪転機の設置されている場所まで搬送されている。
【0003】
そして、これらの無人搬送車の車体上には、輪転機で新聞巻取紙を使い切って残った残芯を回収するための残芯回収装置が搭載されている。前記残芯回収装置は、受台の側方位置に設けられた残芯受台、及び、これを昇降させるパンタグラフ機構を備えており、残芯受台の上昇位置において、その上面に設けられている芯受金具上に残芯を輪転機から回収するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−167530公報(第2、3頁、図4、11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
残芯回収装置は可能な限りコンパクトにすることが望ましく、特に巻取シート状物無人搬送車においてはその最低高さを極力低く抑える必要がある一方、残芯受台を昇降させるパンタグラフ機構の駆動源である昇降用のシリンダは、十分な作動力と作動ストロークを確保する必要があり、残芯回収装置は、その最下降位置においても昇降用のシリンダのスペース確保のためある程度の高さが必要であり、昇降作動時においては昇降用のシリンダとパンタグラフ機構の干渉を避けるため、昇降用のシリンダをパンタグラフ機構の外方まで突出して配置する必要がある等、残芯回収装置のコンパクト化が困難であった。
【0005】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、残芯回収装置の最下降位置における高さを低くするとともに、パンタグラフ機構と昇降用シリンダの干渉をなくし、残芯回収装置をコンパクトとした巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、巻取シート状物を支持する受台とともに車体に搭載され、使用済みの残芯を受ける昇降自在な残芯受台を有する巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置において、前記残芯受台が、前記車体上に設けられたパンタグラフ機構によって昇降可能とされ、前記パンタグラフ機構が、少なくとも三段二列のリンク群で構成され、前記二列のリンク群の間に設けた昇降用シリンダが、最下部のリンクの最上端関節の近傍と下から三段目のリンクの下端関節の近傍との間に接続され、前記二列のリンク群の各関節のうち前記昇降用シリンダが干渉する関節が、上下のリンクのみ接続され二列の前後を接続するピンが設けられていないことにより、前記課題を解決するものである。
【0007】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、前記最下段のリンクの前記昇降用シリンダを接続するピンの位置が、前記パンタグラフ機構の最下降時にその直近の関節より下にオフセットされ、前記下から三段目のリンクの前記昇降用シリンダを接続するピンの位置が、前記パンタグラフ機構の最下降時にその直近の関節より上にオフセットされていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置は、残芯受台を車体上のパンタグラフ機構によって昇降可能とすることにより、使用済みの残芯ををスムースに回収することができるとともに、以下のような格別の効果を奏することができる。
【0009】
すなわち、請求項1に係る本発明の巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置は、前記残芯受台が、前記車体上に設けられたパンタグラフ機構によって昇降可能とされ、前記パンタグラフ機構が、少なくとも三段二列のリンク群で構成され、前記二列のリンク群の間に設けた昇降用シリンダが、最下段のリンクの上端関節の近傍と下から三段目のリンクの下端関節の近傍との間に接続されることにより、パンタグラフ機構の二列のリンクの範囲内に昇降のための構成を収めることができるとともに、昇降用のシリンダをその伸縮方向においてもパンタグラフ機構の内部に収めることができ、残芯回収装置全体をコンパクトにすることができる。
【0010】
また、前記二列のリンク群の各関節のうち前記昇降用シリンダが干渉する関節が、上下のリンクのみ接続され二列の前後を接続するピンが設けられていないことによって、最下降位置においても昇降用シリンダを上下方向でパンタグラフ機構自体の最下降位置における高さの範囲内に収めることができ、最下降位置での最小高さを低くすることができる。
【0011】
請求項2に係る本発明の巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置によれば、請求項1記載の巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置が奏する効果に加えて、前記最下段のリンクの前記昇降用シリンダを接続するピンの位置が、前記パンタグラフ機構の最下降時にその直近の関節より下にオフセットされ、前記下から三段目のリンクの前記昇降用シリンダを接続するピンの位置が、前記パンタグラフ機構の最下降時にその直近の関節より上にオフセットされていることにより、前記それぞれのリンクと接続するピンと前記それぞれの関節を結ぶ方向と、最下降位置において前記昇降用シリンダの力の作用する方向とがなす角度を大きくすることができるため、最下降位置から上昇させ始める際の力が小さくでき、昇降用シリンダ自体をコンパクトにすることができる。
【0012】
なお、本明細書において、パンタグラフ機構の「段数」とは、二つのリンクをそれぞれの中間の関節で回動自在に接続したリンク対を「一段」とし、リンク対のそれぞれのリンクの端部と他のリンク対のそれぞれのリンクの端部とを関節で回動自在に接続して上下に重ねたリンク対の数のことを言い、パンタグラフ機構の「列数」とは、前記一段以上で構成されたリンク群を、平行に並べた数のことを言う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置は、前記パンタグラフ機構が、少なくとも三段二列のリンク群で構成され、前記二列のリンク群の間に設けた昇降用シリンダが、最下段のリンクの上端関節の近傍と下から三段目のリンクの下端関節の近傍との間に接続され、前記二列のリンク群の各関節のうち前記昇降用シリンダが干渉する関節が、上下のリンクのみ接続され二列の前後を接続するピンが設けられていないものであって、残芯回収装置をコンパクトとするものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0014】
すなわち、本発明の巻取シート状物は、巻芯の外周に円筒状に巻かれた巻取シート状物であれば良く、新聞巻取紙であっても良く、合成樹脂フィルムや布、金属ストリップ等であっても良い。
また、パンタグラフ機構のリンク群の上下方向の段数は四段以上であっても良く、前後方向の列数は三列以上であっても良い。
【実施例】
【0015】
以下に、本発明の一実施例である巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置について図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の適用される無人搬送車の正面概要図であり、図2は、図1に示す無人搬送車の残芯回収装置の側面概要図であり、図3は、残芯回収装置のパンタグラフ機構の上昇時の斜視図であり、図4は、残芯回収装置のパンタグラフ機構の上昇時の模式説明図であり、図5は、残芯回収装置のパンタグラフ機構の最下降時の模式説明図である。
【0016】
まず、本発明の一実施例である巻取シート状物無人搬送車は、図1に示すように、無人搬送車100は、車体110上に新聞巻取紙Pを支持する受台120がシリンダ装置(図示せず)で駆動される昇降機構130によって昇降自在に設けられている。
【0017】
前記受台120は、その上昇位置で新聞巻取紙Pを輪転機(図示せず)へ受け渡し、また、途中まで使用した新聞巻取紙Pを輪転機から回収するとともに、最下降位置で無人搬送車100を走行させて輪転機と新聞巻取紙Pの保管場所との間で新聞巻取紙Pを搬送するようにしている。
【0018】
また、図1、2に示すように、無人搬送車100には、輪転機に供給された新聞巻取紙Pを完全に使い切って残った残芯Cを回収するための残芯回収装置200が設けられており、残芯回収装置200は、残芯受台210が車体110の側方から突出した位置で前記受台120と同様に、シリンダ装置で駆動されるパンタグラフ機構230によって昇降自在に設けられている。
【0019】
図3に示すように、本発明の一実施例である残芯回収装置200は、車体110に取り付けられる基体220、残芯受台210、基体220に対して残芯受台210を昇降させるパンタグラフ機構230からなり、パンタグラフ機構230は、二列三段のリンク231A乃至233B、各列のリンク群のそれぞれのリンクを回動可能に接続する関節241乃至245、二列のリンク群の対応する関節を相互に接続するピン246、昇降用シリンダ250、昇降用シリンダ250をリンクに接続するピン251、252を備えている。昇降用シリンダ250は配管260から油圧を供給され伸縮作動する。
【0020】
また、図4、図5に示すように、本発明の一実施例である残芯回収装置200は、残芯受台210と最上段のリンク231Aとを回動可能に接続する関節246、残芯受台210と最上段のリンク231Bとを直線摺動及び回動可能に接続する関節248、基体220と最下段のリンク233Bとを回動可能に接続する関節247、基体220と最下段のリンク233Aとを直線摺動及び回動可能に接続する関節249を備えている。
【0021】
なお、本実施例においては、二列のリンク、関節群のうち、図3における図面視で手前(以降、この明細書中では「前方」と言う。)に位置する各リンク、各関節にのみ符号を付して説明しているが、図3における図面視で奥(以降、この明細書中では「後方」と言う。)に位置する各リンク、各関節も、前方のものと対応した同じ符号が付されるものとし、「前方」、「後方」の記載を省略して説明したものは両者同様の構成である。
【0022】
次に、本発明の実施例である残芯回収装置200の各部品の接続構成及び動作の詳細について図3乃至図5に基づいて以下に説明する。
【0023】
残芯受台210には、最上段リンク231Aの一端が関節246を介して回動可能に、最上段リンク231Bの一端が関節248を介して残芯受台210の長手方向に摺動可能かつ回動可能にそれぞれ接続されており、最上段リンク231Aと最上段リンク231Bは、それぞれの中間点で関節241を介して回動可能に接続されている。
【0024】
最上段リンク231Aの他端には、関節242Aを介して回動可能に中段リンク232Aの一端が、最上段リンク231Bの他端には、関節242Bを介して回動可能に中段リンク232Bの一端がそれぞれ接続されており、中段リンク232Aと中段リンク232Bは、それぞれの中間点で関節243を介して回動可能に接続されている。
【0025】
中段リンク232Aの他端には、関節244Aを介して回動可能に最下段リンク233Aの一端が、中段リンク232Bの他端には、関節244Bを介して回動可能に最下段リンク233Bの一端がそれぞれ接続されており、最下段リンク233Aと最下段リンク233Bは、それぞれの中間点で関節245を介して回動可能に接続されている。
【0026】
基体220には、関節249を介して基体220の長手方向に摺動可能かつ回動可能に最下段リンク233Aの他端が、関節247を介して回動可能に最下段リンク233Bの他端が、それぞれ接続されている。
【0027】
最上段リンク231Bには、関節242Bの近傍であって、両端の関節242B及び関節248の中心を結ぶ線より上方にオフセットした位置に、昇降用シリンダ250の一端がピン251を介して回動可能に接続され、最下段リンク233Bには、関節244Bの近傍であって、両端の関節244B及び関節247の中心を結ぶ線より下方にオフセットした位置に、昇降用シリンダ250の他端がピン252を介して回動可能に接続されている。
【0028】
ここで、昇降用シリンダ250の両端のピン251、252の位置の関節242B及び関節244Bの近傍とは、昇降用シリンダ250のストロークの範囲でパンタグラフ機構230が最下降位置から最上昇位置に至ることができる範囲の距離を言う。
前記近傍の範囲内であっても、距離が長いと、昇降用シリンダ250の作動力は小さくて済むが作動ストロークは長く取る必要があり、逆に距離が短いと作動ストロークは短くて済むがなるが作動力を大きくする必要があるため、前記近傍の範囲内で最適な位置を選択するのが望ましい。
【0029】
昇降用シリンダ250は、前方と後方のリンク群、関節群の間に設けられ、昇降用シリンダ250の一端に接続されたピン251は前方と後方の最上段リンク231Bの間で両方に接続され、昇降用シリンダ250の他端に接続されたピン252は前方と後方の最下段リンク233Bの間で両方に接続され、昇降用シリンダ250の作動力を前方と後方の両方のリンク群に伝えるように接続されている。
【0030】
残芯回収装置200の昇降時に昇降用シリンダ250が干渉しない位置にある、関節242A及び関節244Aは、前方と後方のそれぞれの関節をつなぐピン246が設けられている。
前方と後方のリンク群、関節群をつなぐピンは、パンタグラフ機構230の捩れ方向の強度を担保するものであるが、本発明の実施例のものにおいても、ピン251、252、246が、図4、図5で示す●で表すように、合計4点でほぼ均等に配置されることとなり、また、◎で表す残芯受台210及び基体220と接続する4つの関節246、247、248、249は残芯受台210及び基体220自体により前後方向は拘束されているため、○で表す昇降用シリンダが干渉する関節にピンが設けられていなくても、捩れ方向の強度に与える影響は無い。
【0031】
なお、図4、図5で示す○で表す関節においても、昇降用シリンダ250のサイズ、ピン251、252、の位置、あるいは、パンタグラフ機構230の作動範囲によって、干渉が生じない設計となる場合もあるが、その場合には、当該関節に前方と後方のそれぞれの関節をつなぐピン246を設けてもよい。
【0032】
以上の構成により、昇降用シリンダ250が干渉する部分には、前方と後方の接続するピンが設けられていないので、昇降用シリンダ250を前方及び後方のリンク群、関節群の間に収容しうる最大径のものを採用し作動力を確保しつつ、残芯回収装置200の昇降時の全ての工程において、昇降用シリンダ250は前方及び後方のリンク群、関節群からなるパンタグラフ機構230の作動範囲内に収まることとなり、残芯回収装置200をコンパクトすることができるなど、その効果は甚大である。
【0033】
さらに、最上段リンク231Bにピン251を、関節242Bの近傍であって、両端の関節242B及び関節248の中心を結ぶ線より上方にオフセットした位置で接続し、最下段リンク233Bにピン252を、関節244Bの近傍であって、両端の関節244B及び関節247の中心を結ぶ線より下方にオフセットした位置で接続することにより、図5に示すように、パンタグラフ機構230の最下降時に、前記それぞれのリンク231B、233Bと接続するピン251、252と前記それぞれの関節242B、244Bを結ぶ方向Sと、最下降位置において前記昇降用シリンダの力の作用する方向Tとがなす角度θを大きくすることができるため、最下降位置から上昇させ始める際の力が小さくできる。
【0034】
また、前記オフセット量を最上段リンク231A、及び、最下段リンク233Aの上下方向幅より小さく設定すれば、パンタグラフ機構230の最下降時の高さを増加させることがないため、オフセットがない場合と同じであり、変える必要がなく、残芯回収装置の最下降位置における高さを低くすることができるなど、その効果は甚大である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の適用される無人搬送車の正面図。
【図2】図1に示す無人搬送車の残芯回収装置の側面概要図。
【図3】残芯回収装置のパンタグラフ機構の上昇時の斜視図。
【図4】残芯回収装置のパンタグラフ機構の上昇時の模式説明図。
【図5】残芯回収装置のパンタグラフ機構の最下降時の模式説明図。
【符号の説明】
【0036】
100 ・・・無人搬送車
110 ・・・車体
111 ・・・チェーン進入側係合部
120 ・・・受台
130 ・・・昇降機構
200 ・・・残芯回収装置
210 ・・・残芯受台
220 ・・・基体
230 ・・・パンタグラフ機構
231A、231B ・・・最上段リンク
232A、232B ・・・中段リンク
233A、233B ・・・最下段リンク
241、242A、242B、243、244A、244B、245、
247、248、249 ・・・関節
246 ・・・ピン
250 ・・・昇降用シリンダ
251、252 ・・・ピン
P ・・・新聞巻取紙
C ・・・残芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取シート状物を支持する受台とともに車体に搭載され、使用済みの残芯を受ける昇降自在な残芯受台を有する巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置において、
前記残芯受台が、前記車体上に設けられたパンタグラフ機構によって昇降可能とされ、
前記パンタグラフ機構が、少なくとも三段二列のリンク群で構成され、
前記二列のリンク群の間に設けた昇降用シリンダが、最下段のリンクの上端関節の近傍と下から三段目のリンクの下端関節の近傍との間に接続され、
前記二列のリンク群の各関節のうち前記昇降用シリンダが干渉する関節が、上下のリンクのみ接続され二列の前後を接続するピンが設けられていないことを特徴とする巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置。
【請求項2】
前記最下段のリンクの前記昇降用シリンダを接続するピンの位置が、前記パンタグラフ機構の最下降時にその直近の関節より下にオフセットされ、
前記下から三段目のリンクの前記昇降用シリンダを接続するピンの位置が、前記パンタグラフ機構の最下降時にその直近の関節より上にオフセットされていることを特徴とする請求項1記載の巻取シート状物無人搬送車の残芯回収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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