説明

巻取ユニット及びそれを備える自動ワインダ

【課題】パッケージ側の糸端を確実に糸継部に導くとともに、パッケージの生産効率を上げることができる自動ワインダの巻取ユニットを提供する。
【解決手段】ワインダユニット10は、ドラム駆動モータによって逆回転させたパッケージ30から解舒された上糸90をサクションマウス34により捕捉してスプライサ装置へ導く上糸案内パイプ26を備える。また、ワインダユニット10は、上糸案内パイプ26を回動させるためのステッピングモータ41と、制御部と、を備える。この制御部は、糸を捕捉した前記サクションマウス34が、パッケージ30の逆回転により前記糸層から糸が解舒される速度V1以下の速度V2で移動するように、ステッピングモータ41を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ワインダに関するものであり、詳細には、自動ワインダの巻取ユニットにおいて、糸継作業を行う際にパッケージの糸端を捕捉して糸継部へ導くための構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動ワインダの巻取ユニットには、従来から、糸切れやクリアラによる糸切断等が発生した際に、パッケージから引き出された上糸と給糸ボビンから引き出された下糸とを糸継ぎする糸継装置が備えられている。この糸継装置へ上糸を導くための構成としては、巻取ユニットに捕捉手段を備え、この捕捉手段の端部に形成されたマウス部でパッケージから糸端を吸引することにより上糸を捕捉し、糸を保持した状態で前記捕捉手段を回動させることによって糸継装置まで上糸を導くものが知られている。
【0003】
このような捕捉手段を備える自動ワインダの巻取ユニットは、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1の巻取ユニットは撚継ぎ装置及び吸込ノズルを備えている。この吸込ノズルの開口にはニードルコームが配置されている。この特許文献1の巻取ユニットにおいて、糸が切れて、又は糸むらの検知によって糸切断装置が作動して、巻返しの中断が生じた場合は、綾巻きパッケージの表面に巻き取られた上糸を受容するために吸込ノズルが旋回し、その開口が綾巻きパッケージの表面の領域に位置決めされる。前記吸込ノズル内にはセンサ装置が組み込まれており、吸込ノズルに吸い込まれた糸始端を前記センサ装置が検知した後に、吸込ノズルは下方の出発位置に旋回して戻る。これにより、上糸は撚継ぎ装置内へ導入される。
【特許文献1】特開平10−167577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の巻取ユニットでは、綾巻きパッケージ側の糸端を吸込ノズルに十分に吸引していない状態で当該吸込ノズルを旋回させると、吸込ノズルから糸が抜けてしまうことがあり(糸外れ)、これは糸継失敗の原因となる。この点、前記特許文献1の構成は、吸込ノズルに糸が十分に吸い込まれたことをセンサ装置によって検知してから当該吸込ノズルを旋回させるので、上記の糸外れを防止できると考えられる。
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成において吸込ノズル内に吸い込まれた糸端は、吸引流によって振り回されたり流されたりする等、不安定な挙動を示すことが多い。従って、前記センサ装置によって糸端を安定して検出することは難しく、糸端の存在を確実に検出するためには結局のところ必要以上の糸を吸引する必要がある。吸込ノズルに余分に吸引された糸は糸継作業後に切断して廃棄されることになるので、特許文献1の構成は糸の無駄が多くなってしまい、コスト低減等の観点から改善の余地が残されていた。
【0006】
また、糸の巻取を素早く再開するためには、前記吸込ノズルが糸端を捕捉した後は高速で旋回して撚継ぎ装置に糸を案内することが望ましいが、特許文献1の構成において吸込ノズルを高速で回動させると、捕捉されている糸がノズルの開口部(特に、前記ニードルコーム)に擦れて、糸にダメージを与えるおそれがあった。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パッケージ側の糸端を確実に糸継部に導いてパッケージの生産効率を上げることができるとともに、糸の品質低下を防止できる自動ワインダの巻取ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の観点によれば、以下のように構成される自動ワインダの巻取ユニットが提供される。即ち、この巻取ユニットは、駆動源によって逆回転させたパッケージから解舒された糸をマウス部により捕捉して糸継部へ導く捕捉手段を備える。また、巻取ユニットは、前記捕捉手段を回動させるための捕捉手段駆動源と、制御部と、を備える。この制御部は、糸を捕捉した前記マウス部が、前記パッケージの逆回転により前記糸層から糸が解舒される速度以下の速度で移動するように制御可能に構成される。
【0010】
これにより、パッケージから糸が繰り出される速度以下でマウス部が移動するので、捕捉手段が糸を捕捉した後の下方回動時において糸が捕捉手段から外れること(糸外れ)を防止して、糸を確実に糸継部へ導くことができる。また、糸が捕捉手段に吸引される長さが短くても糸外れを防止できるので、パッケージの逆回転により糸を繰り出す長さを短くでき、糸の無駄を防止できるとともに作業時間を短縮できる。また、捕捉手段の回動時に糸が引っ張られないので、糸が捕捉手段に擦れたり引っ掛かったりして損傷することを防止できる。また、捕捉手段駆動源がパッケージの駆動源と独立していることから、パッケージの逆回転と捕捉手段の下方への回動とを上記の速度の関係を満たすように容易に連係させて制御することができる。
【0011】
前記の自動ワインダの巻取ユニットにおいては、前記制御部が、前記パッケージの逆回転による糸の解舒速度と前記マウス部の移動速度とが等しくなるように制御することが好ましい。
【0012】
これにより、余分な糸の解舒を抑えて糸の無駄を防止できるとともに、捕捉手段に捕捉した糸を糸継部まで素早く導くことができる。
【0013】
前記の自動ワインダの巻取ユニットにおいては、前記捕捉手段駆動源はステッピングモータであることが好ましい。
【0014】
これにより、回転角度を調整できるステッピングモータによって捕捉手段の回動の制御を正確に行うことができる。
【0015】
前記の自動ワインダの巻取ユニットにおいては、前記マウス部を前記パッケージの外周面に近接させた状態で、糸層の径にかかわらず前記パッケージを所定の周回分逆回転させることが好ましい。
【0016】
これにより、糸端がマウス部によって捕捉される機会を糸層の径の大小にかかわらず良好に確保することができ、糸を安定してマウス部に捕捉させることができる。また、パッケージの駆動源と捕捉手段駆動源とが独立しているので、糸層の径に応じてパッケージの駆動源の制御を柔軟に変更することも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動ワインダが備えるワインダユニット10の側面図である。図2はワインダユニット10の概略的な構成を示した正面図である。
【0018】
図1及び図2に示すワインダユニット10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30とするものである。本実施形態の自動ワインダは、並べて配置された複数のワインダユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。
【0019】
それぞれのワインダユニット10は、正面視で左右一側に設けられたユニットフレーム11(図1)と、このユニットフレーム11の側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。
【0020】
前記巻取ユニット本体16は、巻取ボビン22を保持可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して接触又は離間される。図2に示すように、前記巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、この綾振溝27によって糸20をトラバースさせるように構成している。
【0021】
前記クレードル23には、図略のリフトアップ機構及びパッケージブレーキ機構が備えられている。リフトアップ機構は、糸切れ時にクレードル23を上昇させて、パッケージ30を巻取ドラム24から離間させることができるようになっている。パッケージブレーキ機構は、前記リフトアップ機構によってクレードル23が上昇するのと同時に、クレードル23に把持されたパッケージ30の回転を停止させるように構成されている。
【0022】
前記巻取ユニット本体16は、給糸ボビン21と巻取ドラム24との間の糸走行経路中に、給糸ボビン21側から順に、バルーンコントローラ12と、テンション付与装置13と、スプライサ装置(糸継部)14と、クリアラ(糸太さ検出器)15と、を配置した構成となっている。
【0023】
前記ワインダユニット10は、図1に示すように、給糸ボビン21を供給するためのマガジン式供給装置60を備えている。このマガジン式供給装置60は、図1に示すように、ワインダユニット10の下部から正面上方向に斜めに延出するマガジン保持部61と、このマガジン保持部61の先端に取り付けられているボビン収納装置62と、を備えている。
【0024】
このボビン収納装置62はマガジンポケット63を備え、このマガジンポケット63には複数の収納孔が円状に並べて形成されている。この収納孔のそれぞれには、供給ボビン70を傾斜姿勢でセットすることができる。前記マガジンポケット63は図略のモータによって間欠的な回転送り駆動が可能であり、この間欠駆動とマガジンポケット63が備える図略の制御弁とによって、マガジン保持部61が有する図略のボビン供給路に供給ボビン70を1つずつ落下させることができる。前記ボビン供給路に供給された供給ボビン70は、傾斜姿勢のまま給糸ボビン保持部71へ導かれる。
【0025】
給糸ボビン保持部71は図略の回動手段を備えており、供給ボビン70を前記ボビン供給路から受け取った後、当該供給ボビン70を斜め姿勢から直立姿勢に引き起こすように回動する。これによって、供給ボビン70が巻取ユニット本体16の下部に給糸ボビン21として適切に供給され、ワインダユニット10による巻取作業を行うことができる。
【0026】
バルーンコントローラ12は、給糸ボビン21の芯管に被さる規制部材40を給糸ボビン21からの糸の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン21からの糸の解舒を補助するものである。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。規制部材40の近傍には前記給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが備えられており、このセンサがチェース部の下降を検出すると、それに追従して前記規制部材40を例えばエアシリンダ(図略)によって下降させることができる。
【0027】
テンション付与装置13は、走行する糸20に所定のテンションを付与するものである。テンション付与装置13としては、例えば、固定の櫛歯に対して可動の櫛歯を配置するゲート式のものを用いることができる。可動側の櫛歯は、櫛歯同士が噛み合わせ状態又は解放状態になるように、ロータリー式のソレノイドにより回動することができる。このテンション付与装置13によって、巻き取られる糸に一定のテンションを付与し、パッケージ30の品質を高めることができる。
【0028】
スプライサ装置14は、クリアラ15が糸欠点を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸と、パッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。スプライサ装置14としては、機械式のものや、圧縮空気等の流体を用いるもの等を使用することができる。
【0029】
クリアラ15は、糸20の太さを適宜のセンサで検出することで欠陥を検出するように構成されており、このクリアラ15のセンサからの信号をアナライザ52(図2)で処理することで、スラブ等の糸欠点を検出可能に構成されている。なお、前記クリアラ15は、糸20の走行速度を検知するセンサ、及び、単に糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。前記クリアラ15の近傍には、当該クリアラ15が糸欠点を検出したときに直ちに糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
【0030】
スプライサ装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して案内する下糸案内パイプ25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して案内する上糸案内パイプ(捕捉手段)26と、が設けられている。下糸案内パイプ25の先端には吸引口32が形成され、上糸案内パイプ26の先端にはサクションマウス(マウス部)34が備えられている。下糸案内パイプ25及び上糸案内パイプ26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0031】
この構成で、糸切れ時又は糸切断時においては、下糸案内パイプ25の吸引口32が図1及び図2で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することでスプライサ装置14に下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、上糸案内パイプ26が図示の位置から軸35を中心として上方へ回動し、ドラム駆動モータ53によって逆転されるパッケージ30表面上に存在する上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、上糸案内パイプ26が軸35を中心として下方へ回動することで、スプライサ装置14に上糸を案内するようになっている。
【0032】
給糸ボビン21から解舒された糸は、スプライサ装置14の下流側に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。図2に示すように、この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の作動はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0033】
以上の構成で、前記マガジン式供給装置60からボビンが給糸側に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、前記給糸ボビン21から解舒された糸20が前記巻取ボビン22に巻き取られることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0034】
次に図3を参照して、上糸案内パイプ26について説明する。図3は、上糸案内パイプ26がパッケージ30から上糸90を引き出す様子を示す拡大側面図である。
【0035】
図3に示すように、ユニットフレーム11には、上糸案内パイプ26を回動させるためのステッピングモータ41が設置されている。このステッピングモータ41の出力軸には出力ギア45が固定されている。一方、上糸案内パイプ26の基部には従動ギア43が固定され、前記出力ギア45と従動ギア43とが、歯付きベルト44を介して連結されている。
【0036】
図2に示すように、前記ステッピングモータ41はステッピングモータ制御部51に接続されており、このステッピングモータ制御部51がステッピングモータ41に駆動パルス信号を出力してステッピングモータ41を駆動するようになっている。ステッピングモータ制御部51はユニット制御部50に接続されており、スプライサ装置14、クリアラ15、巻取ドラム24等の各部の制御と上糸案内パイプ26の制御を連動させることができる。
【0037】
以上の構成で、給糸ボビン21から解舒される糸が切れたとき、又は前記クリアラ15が糸欠点を検出してカッタにより糸を切断したときは、クリアラ15からの信号に基づき、前記ユニット制御部50は前記リフトアップ機構及びパッケージブレーキ機構を直ちに動作させる。この結果、パッケージ30が巻取ドラム24から離間されるとともに、パッケージ30の回転が制動される。ただし、パッケージブレーキ機構によって完全に停止するまではパッケージ30はある程度慣性回転し、これにより、切れてフリーとなった糸端はパッケージ30の外周面に巻き付くことになる。
【0038】
糸切れ又は糸切断が検知されると、ユニット制御部50はステッピングモータ制御部51に制御信号を送信し、これを受信したステッピングモータ制御部51はステッピングモータ41に駆動パルス信号を送る。これにより、上糸案内パイプ26はステッピングモータ41の駆動によって上方へ回動され、図3の実線で示す位置(捕捉位置)で静止する。
【0039】
この捕捉位置では、上糸案内パイプ26の先端のサクションマウス34が、パッケージ30の外周面に対し小さな隙間をおいて対面している。前述のとおり上糸案内パイプ26には負圧源が接続されており、従って、パッケージ30の外周面に対しサクションマウス34からの吸引流を作用させることができる。このサクションマウス34は前記パッケージ30の巻き幅を含むように細長く形成されており、これにより、前記パッケージ30の外周面に対し、その巻き幅方向全体にわたって吸引流を作用させることができる。
【0040】
この状態でユニット制御部50はモータ制御部54に信号を送り、巻取ドラム24を糸巻取時とは反対方向に一定の速度で回転させる。なお、上述のリフトアップ機構及びパッケージブレーキ機構は、この時点で作動が解除されている。この逆転駆動により、パッケージ30の外周面に巻き付けられている糸端(上糸90)が、当該パッケージ30とともに回転する。そして上糸90の糸端は、サクションマウス34との対面部分を通過するときに、前記吸引流の作用によって上糸案内パイプ26内に吸い込まれる。
【0041】
なお、このときユニット制御部50は、上糸案内パイプ26を図3の実線に示す捕捉位置に静止させながら巻取ドラム24を逆回転させる時間(言い換えれば、巻取ドラム24の逆回転量)を、パッケージ30の糸層の径に応じて変更するように制御する。
【0042】
この制御は、具体的には以下のように行われる。即ち、ユニット制御部50は、巻取ドラム24に設置した図略のエンコーダ(回転センサ)からの信号をカウントすることにより、空の巻取ボビン22への巻取開始時点から巻取ドラム24が何回転したかを取得することができる。そしてユニット制御部50は、この累計回転回数と、巻取ドラム24の径、糸の太さ、糸に付与するテンション等のパラメータを使用して、現時点でのパッケージ30の糸層の径を計算して取得することができる。
【0043】
ここで一般に、巻取ドラム24を等しい量だけ逆回転させた場合でも、パッケージ30の糸層の径が大きい場合は、小さい場合に比べて、サクションマウス34に上糸90の糸端が対面する回数(上糸90を捕捉できる機会)が少なくなる。この点、本実施形態において前記ユニット制御部50は、前述の計算により得られた糸層の径に応じて巻取ドラム24の逆回転量を増減させるようにモータ制御部54を制御し、糸層の径の大小に関係なく、パッケージを所定の周回分逆回転させる。これにより、パッケージ30の糸層の径が大きい場合でも、パッケージ30の外周面にある上糸90の糸端をサクションマウス34に対し十分な回数繰り返して対面させ、確実に捕捉することができる。
【0044】
前記サクションマウス34の内部には、コーム部材42が当該サクションマウス34の長手方向に沿うように配置されている。従って、サクションマウス34に吸引された上糸90は、このコーム部材42に引っ掛かることによって保持される。なお、このコーム部材42に代えて鋸刃状の部材やサンドペーパーを貼り付けた部材とする等、例えば糸種等の事情に応じて構成を適宜変更することができる。
【0045】
上記のようにして巻取ドラム24を必要なだけ逆回転させた後、ユニット制御部50はステッピングモータ制御部51に信号を送り、上糸案内パイプ26を直ちに下方の案内位置まで回動させる。なお、上糸案内パイプ26が下方への回動を開始した後でも、巻取ドラム24の逆回転は継続される。そして、この巻取ドラム24の逆回転によるパッケージ30からの上糸90の解舒速度(言い換えれば、逆回転するパッケージ30の周面速度)V1と、上糸案内パイプ26の下方回動による前記サクションマウス34の移動速度V2とが等しくなるように、ユニット制御部50によって制御されている(V1=V2)。
【0046】
従って、上糸案内パイプ26の回動中において、パッケージ30の逆転により繰り出される糸の速度を、サクションマウス34により引き出される糸の速度と等しくすることができる。これにより、サクションマウス34が一度吸引した上糸90が、サクションマウス34から引き出されることにより前記上糸90がサクションマウス34から外れてしまい、スプライサ装置14への案内に失敗するのを防止することができる。また一方で、上糸90に過大な張力が加わることを防止でき、更に、サクションマウス34の部分に設置されるコーム部材42に上糸90が擦れて損傷を受けることも防止できる。
【0047】
次に図4を参照して、糸継作業時における上糸案内パイプ26及びパッケージ30の制御について説明する。図4のフローが開始されると、ユニット制御部50は、巻取作業中に糸が切れたことを示す信号、又はクリアラ15によって糸欠陥が発見されて糸が切断されたことを示す信号を、クリアラ15から受信するまで待機する(S101)。糸切れ信号又は糸切断信号を受信すると、ユニット制御部50は上糸案内パイプ26を図3の実線で示す捕捉位置に回動させて静止させる(S102)。そして、サクションマウス34による吸引流をパッケージ30の外周面に作用させながら、巻取ドラム24の逆回転を開始し、上糸の吸引捕捉を行う(S103、S104)。なお、前述したように、パッケージ30の糸層の径の大小にかかわらず当該パッケージ30が所定の周回分逆回転するように、巻取ドラム24の逆回転量は前記糸層の径の大小に応じて決定される。ユニット制御部50は、こうして決定された回転量だけ巻取ドラム24が逆回転するまで待機する(S105)。
【0048】
必要なだけの逆回転が終了すると、ユニット制御部50は巻取ドラム24の逆回転を維持したまま、上糸案内パイプ26を下方の案内位置へ回動させる(S106)。このとき、パッケージ30の逆回転により糸が解舒される速度V1と、上糸案内パイプ26の先端のサクションマウス34が移動する速度V2とが等しくなるように、ユニット制御部50はステッピングモータ制御部51を介してステッピングモータ41を制御する。
【0049】
上糸案内パイプ26の案内位置への回動が完了すると、ユニット制御部50はクリアラ15の信号を調べる(S107)。即ち、本実施形態では、上糸案内パイプ26によって上糸90がスプライサ装置14に正常に導かれると、それと同時に上糸90の糸道がクリアラ15を通過し、クリアラ15によって糸が検知されるようになっている。従って、クリアラ15が糸を検知した場合は、スプライサ装置14への上糸の案内に成功したことを意味するので、巻取作業の邪魔にならない待機位置まで上糸案内パイプ26を移動させた後(S108)、上糸の案内に関する制御フローを終了する。クリアラ15が上糸を検知しなかった場合は、上糸の案内に失敗したことを意味するので、S102の処理に戻り、再び上糸案内パイプ26による上糸90の糸端の捕捉を試みる。
【0050】
以上に示すように、本実施形態の自動ワインダにおけるワインダユニット10は、ドラム駆動モータ53によって逆回転させたパッケージ30から解舒された上糸90をサクションマウス34により捕捉してスプライサ装置14へ導く上糸案内パイプ26を備える。また、このワインダユニット10は、前記上糸案内パイプ26を回動させるためのステッピングモータ41と、ユニット制御部50と、を備える。このユニット制御部50は、糸を捕捉した上糸案内パイプ26のサクションマウス34が、パッケージ30の逆回転により前記糸層から上糸90が繰り出される速度V1以下の速度V2で移動するようにステッピングモータ41を制御可能に構成される。
【0051】
この構成により、パッケージ30から上糸90が繰り出される速度以下でサクションマウス34が移動するので、上糸案内パイプ26が糸20を捕捉した後の回動時において上糸90がサクションマウス34から外れること(糸外れ)を防止して、上糸90を確実にスプライサ装置14へ導くことができる。また、上糸90が上糸案内パイプ26に吸引される長さが短くても前記糸外れを防止できるので、パッケージ30の逆回転により上糸90を繰り出す長さを短くでき、糸の無駄を防止できるとともに作業時間を短縮できる。また、上糸案内パイプ26の回動時に上糸90が無理に引き出されることがないので、上糸90がサクションマウス34の部分(特に、前記コーム部材42)に擦れたり引っ掛かったりして損傷することを防止できる。また、ステッピングモータ41がパッケージ30のドラム駆動モータ53と独立していることから、パッケージ30の逆回転と上糸案内パイプ26の下方への回動とを上記の速度の関係を満たすように容易に連係させて制御することができる。
【0052】
また、本実施形態のワインダユニット10において、ユニット制御部50が、前記パッケージ30の逆回転による上糸90の解舒速度と前記サクションマウス34の移動速度とを等しくさせるように制御する。
【0053】
この構成により、余分な上糸90の解舒を抑えて糸の無駄を防止できるとともに、上糸案内パイプ26に捕捉した上糸90をスプライサ装置14まで素早く導くことができる。
【0054】
また、本実施形態のワインダユニット10において、上糸案内パイプ26の駆動源はステッピングモータ41で構成される。
【0055】
この構成により、回転角度を調整できるステッピングモータ41によって、上糸案内パイプ26の回動の制御を正確に行うことができる。
【0056】
また本実施形態のワインダユニット10は、糸層の径にかかわらずパッケージ30を所定の周回分逆回転させた後に上糸案内パイプ26をスプライサ装置14へ回動させる。
【0057】
この構成により、パッケージ30の糸層が大きい場合でも、上糸90の糸端がサクションマウス34によって捕捉される機会を良好に確保することができ、上糸90をサクションマウス34に安定して捕捉させることができる。また、ドラム駆動モータ53と前記ステッピングモータ41とが独立して設けられているので、糸層の径に応じてドラム駆動モータ53の制御(だけ)を柔軟に変更することも容易である。
【0058】
以上に本発明の好適な実施形態を説明したが、上記の構成は更に以下のように変更することができる。
【0059】
上記実施形態は、パッケージ30を所定の周回分逆回転させることによってパッケージ30の糸端を上糸案内パイプ26に捕捉させる構成であるが、この構成に代えて、糸端検知センサ80を上糸案内パイプ26の内部に取り付ける構成とすることもできる。図5に上糸案内パイプ26に糸端検知センサを備えた変形例を示す。なお、この変形例において上記実施形態と同一及び類似する構成には、図面に同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
この変形例のワインダユニット10においては、図5に示すように、上糸案内パイプ26内に糸端検知センサ80が配置されている。この糸端検知センサ80としては、例えば光センサを使用することができる。この糸端検知センサ80は前記ユニット制御部に電気的に接続され、前記ユニット制御部に糸端検知信号を送信できるように構成されている。この構成で、ユニット制御部は、上糸案内パイプ26を図5の実線に示す捕捉位置に静止させ、パッケージ30を逆回転させる。そしてユニット制御部は、前記糸端検知信号を受信すると上糸案内パイプ26を下方へ回動させるようにステッピングモータ制御部51を制御する。
【0061】
この変形例においても、上糸案内パイプ26を下方回動させるときは、前記ユニット制御部は、前記パッケージ30の逆回転による上糸90の解舒速度V1と前記サクションマウス34の移動速度V2とが等しくなるように制御する。従って、糸端検知センサ80を上糸案内パイプ26の先端側(例えば、サクションマウス34の近傍)に設置し、上糸90が上糸案内パイプ26に少量吸引された段階でそれを検知して上糸案内パイプ26の下方回動を開始したとしても、糸外れを防止し、糸をスプライサ装置14に確実に案内することができる。
【0062】
上記実施形態及び変形例では巻取ドラム24によってパッケージ30が駆動される構成であるが、この構成に代えて、パッケージ30の軸部(前記巻取ボビン22)にモータの駆動力を直接伝達する構成とすることもできる。
【0063】
上記実施形態及び変形例では、上糸案内パイプ26を下方回動させる場合は、前記ユニット制御部50は、前記パッケージ30の逆回転による上糸90の解舒速度V1と前記サクションマウス34の移動速度V2が等しくなるように制御している(V1=V2)。しかしながら、これに代えて、前記解舒速度V1よりも前記サクションマウス34の移動速度V2が小さくなるように制御することもできる(V1>V2)。
【0064】
パッケージ30の糸層の径は、巻取ドラム24の累計回転回数に基づいて取得することに代えて、例えばクリアラ15で検出した糸走行速度に巻取時間を乗じて累積巻取長さを求め、これに基づいて糸層の径を計算する構成に変更することができる。また、例えば前記クレードル23の回動角を検出することで糸層の径を検出する径センサを備え、この径センサからの信号に基づいて糸層の径を取得する構成に変更することができる。
【0065】
上記実施形態のワインダユニット10は、マガジン式供給装置60によって給糸ボビン21を供給しているが、この構成に限らず、例えば、給糸ボビン21をセットしたトレーを適宜の経路に沿って搬送することでワインダユニット10に供給する構成に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係るワインダユニットの側面図。
【図2】本実施形態のワインダユニットの概略的な構成を示す正面図。
【図3】本実施形態の上糸案内パイプの捕捉位置からの回動の様子を示す拡大側面図。
【図4】上糸案内パイプの回動の制御を示すフローチャート。
【図5】上糸案内パイプに糸端検出手段を備える変形例を示す拡大側面図。
【符号の説明】
【0067】
10 ワインダユニット(自動ワインダの巻取ユニット)
14 スプライサ装置(糸継部)
22 巻取ボビン
24 巻取ドラム
26 上糸案内パイプ(捕捉手段)
30 パッケージ
34 サクションマウス
41 ステッピングモータ(捕捉手段駆動源)
50 ユニット制御部
51 ステッピングモータ制御部
53 ドラム駆動モータ
54 モータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源によって逆回転させたパッケージから解舒された糸をマウス部により捕捉して糸継部へ導く捕捉手段を備える自動ワインダの巻取ユニットにおいて、
前記捕捉手段を回動させるための捕捉手段駆動源と、
糸を捕捉した前記マウス部が、前記パッケージの逆回転により前記糸層から糸が解舒される速度以下の速度で移動するように前記捕捉手段駆動源を制御可能な制御部と、
を備えることを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の自動ワインダの巻取ユニットであって、
前記制御部は、前記パッケージの逆回転による糸の解舒速度と前記マウス部の移動速度とが等しくなるように制御することを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の自動ワインダの巻取ユニットであって、
前記捕捉手段駆動源はステッピングモータであることを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の自動ワインダの巻取ユニットであって、
前記マウス部を前記パッケージの外周面に近接させた状態で、糸層の径にかかわらず前記パッケージを所定の周回分逆回転させることを特徴とする自動ワインダの巻取ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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