説明

巻取紙駆動型負圧移送

【課題】プリントヘッドを有する印刷機内で巻取紙を確実に水平に移送するための巻取紙扱いモジュールを提供する。
【解決手段】巻取紙扱いモジュール100は、プレナム240と、プレナム240と連結しているとともに空気処理部と連結しており、プレナム240内に負の空気圧を生じさせるように構成された空気孔と、プレナム240と密閉するように連結しており、空気が通過できる複数の開口を有する支持板120と、連続ループを形成するように支持板120に巻き付けられた多孔ベルト160であって、巻取紙150と多孔ベルトとの間に相対運動が生じることなく支持板120の周囲を多孔ベルト160が回転するように、負の空気圧に、多孔ベルト160と支持板120の上を移動する巻取紙150とを連結させる多孔ベルト160と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下において開示される装置及び方法は、概して、巻取紙の移送システムに関する。更に詳細には、巻取紙印刷の分野において使用されるモジュール式の巻取紙移送方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
巻取紙移送システムは、ある箇所から別の箇所へ巻取紙を移送するために、様々な用途において使用されている。印刷の用途においては、巻取紙の近傍に位置する一又は複数のプリントヘッドを含むプリント部が、その巻取紙の上に模様を印刷する。インクが巻取紙上に噴出する際には、巻取紙は平坦を保持し、プリント部から予測できる距離を維持しなければならない。巻取紙に起伏があったり、プリント部からの距離に変動があったりすると、印刷の質が低下する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7422132号明細書
【特許文献2】米国特許第7510069号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開2007/0119895号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
巻取紙を確実に平坦とするために、従来技術においてしばしば行われる一つの解決策は、巻取紙を二つのローラの間で引っ張ることである。ローラ間の距離は、巻取紙の平坦性に影響を及ぼす。例えば、二つのローラの相互間の距離が大きい場合、巻取紙は予測できない仕方で上下に揺れる。この揺れる動作を防止するために、巻取紙の経路上にさらにローラを追加することで隣のローラとの距離を短くすることができる。そして、ローラは巻取紙に対して弓形の経路を形成するように配置される。揺れる動作を減少させるためには、ローラを加えることとローラを弓形に配置することの両方が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
少なくとも一つのプリントヘッドを有する印刷機内で巻取紙を水平に移送するための巻取紙扱いモジュールが開発された。この巻取紙扱いモジュールは、プレナムと、前記プレナムと連結しているとともに空気処理部と連結しており、前記プレナム内に負の空気圧を生じさせるように構成された空気孔と、前記プレナムと密閉するように連結しており、空気が通過できる複数の開口を有する支持板と、連続ループを形成するように前記支持板に巻き付けられた多孔ベルトであって、前記巻取紙及び多孔ベルトの間に相対運動が生じることなく前記支持板の周囲を多孔ベルトが回転するように、前記負の空気圧に、多孔ベルトと前記支持板の上を移動する巻取紙とを連結させる多孔ベルトと、を備える。
【0006】
また、動いている巻取紙の上に印刷を行う印刷生産環境または印刷装置も開発された。この印刷生産環境は、少なくとも一つのプリントヘッドを有する印刷機内で巻取紙を水平に移送するための複数の巻取紙扱いモジュールであって、各巻取紙扱いモジュールが、プレナムと、前記プレナムと連結しているとともに空気処理部と連結しており、前記プレナム内に負の空気圧を生じさせるように構成された空気孔と、前記プレナムと密閉するように連結しており、空気が通過できる複数の開口を有する支持板と、連続ループを形成するように前記支持板に巻き付けられた多孔ベルトであって、前記巻取紙及び該多孔ベルトの間に相対運動が生じることなく前記支持板の周囲を該多孔ベルトが回転するように、前記負の空気圧に、該多孔ベルトと前記支持板の上を動く巻取紙とを連結させる多孔ベルトとを有する複数の巻取紙扱いモジュールと、前記巻取紙を巻取紙源から受け取り、該巻取紙を前記複数の巻取紙扱いモジュールへ供給するように構成された巻取紙供給部と、前記複数の巻取紙扱いモジュールから前記巻取紙を受け取り、該巻取紙を下流の巻取紙扱い部へ供給するように構成された巻取紙スタッカと、前記巻取紙上に配置された前記複数の巻取紙扱いモジュールのそれぞれに割り当てられ、前記支持板上を前記巻取紙が移動している際に巻取紙の上にインクを噴出するように構成された複数のプリントヘッドと、を備える。
【0007】
本発明の前述の態様及び他の特徴を、添付の図面を参照しつつ、以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】巻取紙が上に位置している巻取紙扱いモジュールであって、異なる特徴を示すために描かれた切欠きを含む巻取紙扱いモジュールの斜視図である。
【図2】図1に示された巻取紙扱いモジュールの、巻取紙がない状態の斜視図である。
【図3】巻取紙扱いモジュールにおいて用いられる支持板の斜視図である。
【図4】巻取紙扱いモジュールの概略図である。
【図5】巻取紙が上に位置している巻取紙扱いモジュールと、該巻取紙上に位置するプリントヘッドの概略図である。
【図6】巻取紙上に位置するプリントヘッドの概略図である。
【図7】巻取紙と関連したプリントヘッドの詳細図を示す、モジュールの一方の端部における、巻取紙扱いモジュールの概略図である。
【図8】巻取紙供給部、巻取紙スタッカに加えて、並列配置された一連の巻取紙扱いモジュールであって、各モジュールが、モジュール上に巻取紙を、巻取紙上にプリントヘッドを有するモジュールの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において用いられる「印刷機」なる用語は、プリンタ、ファクシミリ機、複写機、他の関連する多機能製品などの、例えば複製装置のことを指す。本明細書は、一連のプリントヘッドの下で巻取紙を移送することを制御する巻取紙移送システムに焦点を当てるが、この移送システムは、巻取紙をある場所から他の場所へ移送するあらゆる巻取紙移送システムと共に用いることができる。
【0010】
図1に、巻取紙扱いモジュール100を示す。図1に示されている主要素は、ハウジング110と、二つのローラ130、140と、支持板120と、支持板120の上にあって支持板120の幅の一部にわたる多孔ベルト160の上に位置する巻取紙150と、多孔ベルト160によって覆われていない支持板120の幅の部分の上に位置する密閉カバー180と、である。図2には、多孔ベルト160、密閉カバー180、及び支持板120の関係を示すために、巻取紙がない状態で巻取紙扱いモジュール100が描かれている。ハウジング100は、以下に記述される構成物を取り付けるための構造を提供する。ローラ130、140はハウジング110の両端部においてローラ軸132の周囲に取り付けられる。巻取紙の推進力によってローラ軸132の周囲のローラ130、140が回転する。支持板120はハウジング110の一番上に取り付けられる。支持板120をハウジング110に対して位置合わせしつつ確実に取り付けるために、固定・位置決め穴122が設けられる。支持板120上には、一連の孔124が設けられる。これらの孔124は支持板120に関して異なる角度関係で以て設けられる。孔124は支持板120の大部分に分布している。支持板120は表面摩擦が小さいように構成されている。低摩擦面は、適切なコーティング材料によって支持板120をコーティングすることによって得られる。このような用途に用いられる典型的なコーティング材料はテフロン(登録商標)である。または、支持板の低摩擦面は、円滑な表面を確保できる支持板用素材を選択することによっても得ることができる。孔124及び支持板120についての更なる詳細を以下に説明する。
【0011】
多孔ベルト160は支持板120の上面の上に設けられる。多孔ベルト160はローラ130、140の周囲に引張された状態で巻き付けられ、ローラ130及び140の周囲に連続ループを形成する。従って、支持板120上の多孔ベルト160を動かすと、ローラ130、140が回転する。以下に論じるように、ハウジングにおいて支持板120の下面に対して真空又は負圧がかけられる。その真空が孔124を介して引くことで、多孔ベルト160が巻取紙150に結合する。従って、真空がかけられている間、巻取紙扱いモジュール100上の巻取紙を移動させると、支持板120の周囲の多孔ベルト160が回転する。ローラ130、140が図1に示されているが、一実施形態においては、ローラを、丸い表面を有する固定端に替えてもよい。この場合、多孔ベルトはこの固定端の周囲を回転する。多孔ベルト160がローラ130、140の周囲に取り付けられる実施形態においては、これらのローラ及び多孔ベルト160と接触して取り付けられた他のローラは真空によって多孔ベルト160と結合した巻取紙150の動きによって駆動される。従って、図1に示された巻取紙扱いモジュール100には、巻取紙を動かすためにローラを回転させる例えば電動モータのようなアクチュエータを設ける必要がないという利点がある。後述するように、この利点は、モジュール化された印刷環境において一連の巻取紙扱いモジュール100を構築するのに利用することができる。
【0012】
多孔ベルト160は弾力性のある材料から成り、高い多孔性を有する。ベルト160に用いられる材料が特徴として多孔性を有していても良いし、又は、多孔性を得るために、一連の孔やスリットなどが非多孔性材料に形成されていてもよい。多孔ベルト160の材料は、多孔ベルト160がわずかな摩擦力で支持板120上を摺動するように選択する必要がある。すなわち、多孔ベルトの材料と、支持板のコーティング(又はコーティングが施されていない場合には支持板の素材)との摩擦係数は、多孔ベルト160と支持板120の間での円滑な滑り作用を可能にする必要がある。
【0013】
多孔ベルトの材料はまた、たとえ多孔ベルト160が支持板120の上を摺動しているときであっても、多孔ベルト160が支持板120の形状に容易に一致する程度にしなやかでなければならない。多孔ベルト160は、多孔ベルトが支持板120上を動いているときでさえ、支持板120の形状に一致する必要がある。さらに、多孔ベルト160が孔124に入り込むと、支持板120上の多孔ベルト160の滑り作用が抑制されたり妨げられたりするであろうから、多孔ベルトの材料と厚みは、多孔ベルトが支持板120の孔124を通して引っ張られないようなものとすべきである。さらに、多孔ベルト160の材料は、多孔ベルト160が支持板120及びローラ130、140の上を摺動しながら塵粒を出すことがないものを選択すべきである。一実施形態では、多孔ベルト160として、小さな孔を有する一巻きの金属薄板を用いることができる。
【0014】
一実施形態では、多孔ベルト160の幅が支持板120の幅よりも短い。この関係が図1、図2に示されているが、支持板120は巻取紙扱いモジュール100の幅全体にわたっており、多孔ベルト160は、その幅の一部のみにわたっている。図1では、支持板120と孔124が、巻取紙150の切欠きと多孔ベルト160の切欠きの左端側に示されている。支持板と孔は密閉カバー180の切欠きの右側にも示されている。密閉カバー180は、支持板120の、多孔ベルト160によって覆われていない部分を覆っている。以後、支持板120の密閉カバー180によって覆われている部分を、支持板の未使用部分と呼ぶ。支持板の未使用部分が存在しているのは、支持板120が巻取紙を利用する際の種類において巻取紙の最大幅を扱うように備えられているために、ある利用形態においては、巻取紙150、すなわち多孔ベルト160の幅が支持板120の幅よりも狭いからである。
【0015】
密閉カバー180は、支持板120の下面に真空がかけられたときに支持板120の孔124を通して密閉カバー180が引っ張られるのを防止するために、十分な弾力性を有する非多孔性材料で成る。この柔軟な素材は、支持板120の孔124を塞ぐために撓む必要がある一方で、密閉カバー180が孔を介して引っ張られないように十分な厚みを有している必要がある。密閉カバー180の典型的な材料はゴムである。ある実施形態では、多孔ベルト160が支持板120の幅全体を、または少なくとも、孔124が存在している支持板120の一部を覆う。この実施形態では、密閉カバー180を省くことができる。
【0016】
巻取紙150は矢印170の方向に沿って、巻取紙扱いモジュール100上で搬送される。巻取紙は多孔ベルト160の上に置かれる。図1に示されている切欠きにより、巻取紙150の下の多孔ベルト160と、多孔ベルト160の下の支持板120が示されている。巻取紙150の幅は、多孔ベルト160の幅とほぼ等しい。従って、巻取紙150は実質的に多孔ベルト160の上に位置し、支持板120の未使用部分の上には位置しない。
【0017】
作動時には、ハウジング110のプレナム(図1には描かれていない)と支持板120の下面に真空又は減圧がかけられる。真空は支持板120の孔124を介して、また、多孔ベルト160を介して空気を引く。密閉カバー180は、巻取紙150と多孔ベルト160が支持板120の幅全体を覆っていない場合に、支持板120の覆われていない孔124を介して真空が漏れないことを確保する。多孔ベルト160を介して引かれる真空は、巻取紙150を多孔ベルト160に押しつけるように、支持板120の方向に引く。巻取紙に働く真空力によって、巻取紙150が矢印170の方向に移動するときに多孔ベルト160が巻取紙150と共に移動できるのに十分な垂直力が、多孔ベルトと巻取紙に加えられる。真空はまた、多孔ベルト160と共に巻取紙150が、巻取紙150に対して硬くて水平な表面を提供する支持板120の形状に一致できるようにする。従って、真空には巻取紙150が少しでもはためいてしまうことを防止する。よって、この巻取紙扱いモジュール100は、図9に示される従来技術における巻取紙扱いシステムと比較して、より高い質の印刷を可能にする。
【0018】
巻取紙150は実質的に多孔ベルト160の上に位置し、支持板120の未使用部分の上には位置しないが、巻取紙の印刷幅、すなわちプリントヘッドがインクを堆積させる巻取紙の幅の部分が巻取紙の幅よりも狭い場合があり得る。そのような場合、巻取紙の印刷幅の外側の部分は密閉カバー180上に位置させても良い。この領域で生じるかもしれないはためき動作は印刷の質にたぶん影響を及ぼさないからである。
【0019】
利点として、図1に示されている巻取紙扱いモジュール100の構成によれば、巻取紙と何らかの表面との間の滑り接触が必要ではなく、これによって巻取紙から埃が出ることが実質的に排除される。支持板120上の多孔ベルト160の滑り動作は、幾つかの点において、図9に示される従来技術の巻取紙扱いシステムのローラ上の巻取紙の滑りと相違している。第一に、多孔ベルト160と支持板120が、摩擦が少ないように構成されている。第二に、多孔ベルト160の材料として、塵粒を出さないものが選択される。従って、支持板120上での多孔ベルト160が滑っても、従来知られた巻取紙がローラの上を滑る場合のように、破片を出すということがない。
【0020】
図3には、支持板120が描かれている。支持板120は、その全体に複数の孔124を有している。これらの孔124は、支持板120に対して様々な角度位置に設けられたスリット状に形成されている。孔124は異なるサイズ、例えば異なる幅及び長さを有するように設けられている。孔124はスリットとして示されているが、他の形状、例えば円形パターンなどを用いても良い。これらの孔124の設計基準は、二点から成る。第一に、孔124は、巻取紙150と必要な結合を行うため、多孔ベルト160に十分な真空を供給できるようにサイズが決定され、かつ近接して設けられるべきである。第二に、これらの孔124の構造は、支持板120を弱めるほど支持板120から過度の材料を取り除き、それによって支持板120の厚みを増さねばならないようなものであってはならない。さらに、多孔ベルト160が支持板120上を滑る際に、多孔ベルト160に損傷を与えること、又は多孔ベルト160の動作を妨げてしまうことを防止するために、孔124の端部は丸みを帯びているべきである。
【0021】
先に論じたように、支持板120は低い摩擦特性を有するように構成される。特に、支持板120は表面の凹凸がほとんどない材料で構成することができる。または、適切なコーティング材料でコーティングすることができる。目的は、支持板上で多孔ベルト160が妨げられることなく滑るために、多孔ベルトと支持板120との間で低摩擦表面を備えることである。
【0022】
図4には、巻取紙扱いモジュール100の図面が示されている。ローラ130、140が、巻取紙扱いモジュール100の反対端にある。ある実施形態では、ローラを、多孔ベルト160が機構の上を滑ることを可能にする固定されたアーチ型の構造に替えてもよい。とはいえ、多孔ベルト160の摩耗を減らすために、多孔ベルト160と共に回転するためにローラ130、140を用いることができる。ガイドローラ210、220は多孔ベルト160が巻取紙扱いモジュール100の周囲を連続的に回転する際に示す形状を規定する。二つのガイドローラ210、220が描かれているが、同一の機能を達成するためにローラを一つだけ、又は三つ以上のローラを用いることもできる。ローラ130、140の周囲及びガイドローラ210、220の周囲を運動している多孔ベルト160は、プレナム240の形状に類似した形を提供することができる。例えば、プレナム240及び多孔ベルト160の両者は台形のように成形される。しかし、プレナム及び多孔ベルト160が示す形状の両方は円錐形とすることもできる。この場合、ただ一つのガイドローラだけが多孔ベルト160上で用いられるであろう。
【0023】
プレナム240の内部では、矢印によって示される吸引230が生成される。この真空は、プレナム240の内部に配置された、支持板120を介して空気を引き、且つその空気を空気孔(図4には示されていない)を介して外へ排出する空気ポンプによって生成される。または、真空をプレナムの外部で生成し、その真空を支持板120へと供給するダクトを経由してプレナム240へかけることもできる。いずれにしても、プレナム240は支持板120と結合し、気密な界面を生じさせる。
【0024】
図5には、プリントモジュール300が描かれている。プリントモジュール300は、巻取紙扱いモジュール100と、複数のプリントヘッド310a〜310d、又は後述するように複数のプリントヘッドアレイ312a〜312dを有している。真空230が支持板120に加えられると、真空は巻取紙150と多孔ベルト160を支持板120に押しつけるように引く。支持板は巻取紙に対して平坦でむらのない表面を供給する。支持板150が移動している間、多孔ベルト160はローラ130、140、及びガイドローラ210、220の周囲を巻取紙150と共に移動する。一連のプリントヘッド310a〜310dは、プリントヘッドから巻取紙上にインクを適切に塗布することを可能にする間隔だけ巻取紙から離れた位置において、巻取紙150上に設けられる。四つのプリントヘッド310a〜310dが図5に示されている。
【0025】
プリントヘッド310a〜310dのそれぞれが、巻取紙の幅に沿って連続的に配置される複数のプリントヘッドを有するアレイの一部となり得る。図6に、プリントヘッド312a〜312dのアレイの典型的実施形態を示す。一連のプリントヘッド310aがアレイ312aを形成する。各アレイのプリントヘッドは巻取紙150の上にジグザグ状に配置されている。図6に示されているプリントヘッド312a〜312dのアレイの模様により、アレイ312a〜312dの間の距離にわたる巻取紙の長さの分が一度に印刷できるような構成が提供される。この、同時印刷できる能力により、高速印刷用途における巻取紙印刷の効率を高めることができる。ある実施形態では、プリントヘッドの各アレイ312a〜312dが異なる色を印刷するように構成することができる。この実施形態では、巻取紙が単一のプリントモジュール300を通過する度に、巻取紙上にフルカラー画像を印刷することができる。または、別の実施形態においては、各プリントモジュールの全てのアレイ312a〜312dが同じ色を印刷するように構成される。この実施形態では、巻取紙が、印刷環境の一部である複数のプリントモジュール300を通過した後に、フルカラー画像が巻取紙上に印刷される。
【0026】
図7が示しているのは、ローラ130の付近の端部における図5に示した図の拡大図である。真空が巻取紙150と多孔ベルト160を支持板120へ引き、これによりプリントヘッド310がインクを排出することができる、平坦でむらのない表面が得られる。巻取紙は、高品質の印刷を行うために必要なように、プリントヘッド310から一定の間隔320を置いて配置される。従って、全てのプリントヘッド310は巻取紙150から垂直方向に同じ間隔320を置いて配置することができる。この配置の利点は、図1に示されるプリントヘッドをアーチ型に配置する必要がないということである。プリントヘッド310を垂直方向に一定の距離に配置することには利点がある。なぜなら、このような配置構成により、アーチ型の経路のために長いモジュール型の実装が妨げられていた図9に描かれる従来技術の装置と比較して、巻取紙扱いモジュール100をモジュール式に備えることができるからである。図7において、参照番号250は多孔ベルトと巻取紙がもはや接触していない点を指している。
【0027】
図8には、印刷生産環境400が示されている。6つのプリントモジュール300a〜300fがあり、各プリントモジュール300は図6を参照しつつ先述した複数のアレイ312と一つの巻取紙扱いモジュール100を有している。右側にあるプリントモジュール300aは巻取紙供給部340から巻取紙150を受け取る。印刷される際に、巻取紙150は図8の左側にある最終プリントモジュール300fから排出され、巻取紙スタッカ350へ入る。巻取紙スタッカ350は一連のローラ上で巻取紙150を動かし、その巻取紙150を下流の他の処理ユニット(非図示)へと進めて処理する。
【0028】
上述したように、印刷生産環境400は、移動する巻取紙を利用して、巻取紙扱いモジュール100のローラ130、140を回転させる。巻取紙150が多孔ベルト160とローラ130、140を回転させるため、それらローラ130、140を駆動するためにアクチュエータは必要ない。従って、巻取紙の動作はアクチュエータによって駆動されるローラの回転と同期する必要がない。アクチュエータのローラを使用しないことによって同期する必要がなくなることで、巻取紙印刷用途において重要な、巻取紙150の動作の特性が向上する。
【0029】
図8には、モジュール式に他のプリントモジュール300を追加できることが明確に示されている。各巻取紙扱いモジュール100が、各モジュールの多孔ベルト160が他のモジュールの近傍に位置するように、他の巻取紙扱いモジュール100に隣接して設けられる。各モジュールが隣のモジュールに近いことは、設計面で必須の考慮事項ではない。近接していることによって、床面積を小さくすることができる。しかし、モジュールは多孔ベルト160が互いに接するほどに近くに配置するべきではない。このような状態では適切な運転ができなくなり、多孔ベルト160の耐用年数を縮める可能性があるからである。
【符号の説明】
【0030】
100 巻取紙扱いモジュール、110 ハウジング、120 支持板、122 固定・位置決め穴、124 孔、130、140 ローラ、132 ローラ軸、150 巻取紙、160 多孔ベルト、170 矢印、180 密閉カバー、210、220 ガイドローラ、230 真空、240 プレナムまたは空気室、250 多孔ベルトと巻取紙がもはや接触していない点、300 プリントモジュール、310a〜310d プリントヘッド、312a〜312d プリントヘッドアレイ、320 間隔、340 巻取紙供給部、400 印刷生産環境、350 巻取紙スタッカ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのプリントヘッドを有する印刷機内で巻取紙を水平に移送するための巻取紙扱いモジュールであって、
プレナムと、
前記プレナムと連結しているとともに空気処理部と連結しており、前記プレナム内に負の空気圧を生じさせるように構成された空気孔と、
前記プレナムと密閉するように連結しており、空気が通過できる複数の開口を有する支持板と、
連続ループを形成するように前記支持板に巻き付けられた多孔ベルトであって、前記巻取紙及び多孔ベルトの間に相対運動が生じることなく前記支持板の周囲を多孔ベルトが回転するように、前記負の空気圧に、多孔ベルトと前記支持板の上を移動する巻取紙とを連結させる多孔ベルトと、
を備える、巻取紙扱いモジュール。
【請求項2】
前記多孔ベルトと前記巻取紙の幅がほぼ等しく、前記多孔ベルトと巻取紙とが一列になっており、前記支持板の一部分が前記多孔ベルトによって覆われていないことを特徴とする請求項1に記載の巻取紙扱いモジュール。
【請求項3】
前記支持板の非被覆部分を覆う寸法を有し、前記支持板の非被覆部分にある複数の覆われていない開口を空気が通過することを防止するように構成された密閉カバーをさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の巻取紙扱いモジュール。
【請求項4】
前記巻取紙上に配置され、巻取紙が前記支持板上を移動している際に該巻取紙上にインクを噴出するように構成された少なくとも一つのプリントヘッドをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の巻取紙扱いモジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−63019(P2011−63019A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201877(P2010−201877)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】