説明

巻線装置及び巻線方法

【課題】 巻線を連続的に施すことを可能とすることで、生産性を向上した巻線装置及び巻線方法を提供すること。
【解決手段】 巻線装置を、略円形のインデックステーブル16と、インデックステーブル16の外縁部に、略等間隔に交互に配されたボビン固定ユニット14、線材ガイド15と、巻線ユニット11とで構成する。巻線ユニット11を用いて第一のボビン12に線材を巻き回した後、インデックステーブル16をボビン固定ユニット14の間隔分だけ回動させ、線材を線材ガイド15に係止するとともに、第二のボビン12に巻き回す。この際、ボビン12と線材ガイドにより線材が弛まない状態で係止されるので、連続的な巻線が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子機器に使用されるコイルの巻線装置及び巻線方法に関し、特に巻線を連続的に施すことで、生産性を向上した巻線装置及び巻線方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導体からなる線材を巻き回して得られるコイルは、電気電子機器に不可欠の部品として、種々の仕様のものが多量に用いられている。線材の巻き回しにはボビンが用いられることが多いが、ボビンに巻線を施す巻線装置も、種々の仕様のものが開発され、実用に供されている。
【0003】
このような巻線装置には、ボビンを回転させる型と、線材を繰り出すノズルなどの線材供給装置を、ボビンの巻枠周囲を旋回させて線材を巻き回す型、ボビンと線材供給装置の両方を可動とした型がある。
【0004】
図2は、このような巻線装置のうち、従来のボビンを回転させる型の巻線装置を模式的に示した図である。図2において、21はボビン、22は巻線、23は線材、24はノズル、25は線材供給用プーリー、26はボビン固定治具、27は回転軸、28aはボビン固定治具26側に取り付けられた線材固定治具、28bはノズル24側に取り付けられた線材固定治具、29は線材切断装置である。
【0005】
この例では、線材23の端末をボビン21またはボビン固定治具26に固定し、ノズル24から線材23を繰り出しながら、ボビン21を回転させて必要なターン数だけ線材23を巻き回した後、線材固定治具28a、28bで、線材を弛まないように固定して、線材切断装置29の刃で線材を切断するという工程を経て、巻線を完了する。
【0006】
また、図3は、従来の線材供給装置をボビンの巻枠周囲を旋回させる型の巻線装置を模式的に示した図である。図3において、31はボビン、32は巻線、33は線材、34はノズル、35はフライヤである。巻線終了後の線材33の切断は、この場合も図2に示したのと同様なので省略した。この場合は、ノズルが取り付けられたフライヤ35が回転することで、ノズル34がボビン31の軸周囲を旋回し、ノズル34から繰り出される線材33がボビン31に巻き回される。
【0007】
前記の従来の巻線装置においては、いずれの場合もボビンに巻き回した後の線材を、図2に示したように、ボビン固定治具側の線材固定治具と、ノズル側の線材固定治具の両方で、弛みが生じないように固定して切断する必要があり、これが巻線を連続的に行うために解決すべき課題となっている。
【0008】
そして、前記のように、巻線装置は種々の型のものが開発、実用化されていて、例えば特許文献1には、カムなどの機械的な要素の組み合わせにより、フライヤの動作の自由度を高めることで、巻線装置の汎用性と生産性を向上する技術が開示されている。この他にも、巻線装置に関しては、多様な技術が開示されているが、前記の問題に対処する方法は、未だに開示されていないのが現状である。
【0009】
【特許文献1】特開2002−15936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、ボビンへ線材を巻き回した後の、線材の余長部分の固定方法を改善し、巻線を連続的に施すことを可能とすることで、生産性を向上した巻線装置及び巻線方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、前記課題の解決のため、巻線を施す対象であるボビン自体に、線材を固定する機能を付与することと、ボビンを固定するユニットの配置を検討した結果なされたものである。
【0012】
即ち、本発明は、間歇的に回動する略円形のインデックステーブルと、前記インデックステーブルの外縁部に略等間隔に交互に設けられた複数のボビン固定ユニット及び複数の線材ガイドと、前記ボビン固定ユニットに固定されたボビンに巻線を施すための、巻線ユニットを有することを特徴とする巻線装置である。
【0013】
また、本発明は、前記巻線ユニットが、前記インデックステーブルとは別個に設置され、線材を供給する部材が前記ボビンの軸の周囲を旋回し、かつ前記ボビンの軸方向に移動するフライヤ方式であることを特徴とする、前記の巻線装置である。
【0014】
また、本発明は、外縁部に略等間隔に複数のボビン固定ユニット及び複数の線材ガイドが交互に設けられた、間歇的に回動する略円形のインデックステーブルにおける、第一のボビン固定ユニットに固定された第一のボビンに、巻線ユニットを用いて線材を巻き回す工程と、前記インデックステーブルを、前記ボビン固定ユニットの間隔分だけ回動させながら、前記第一のボビンに巻き回された線材の延長部分を、前記第一のボビン固定ユニットと前記巻線ユニットの間に位置する第一の線材ガイドに、前記第一のボビンとの間に弛みが生じないように係止する工程と、係止後の前記線材の延長部分を、前記巻線ユニットを用いて第二のボビン固定ユニットに固定されている第二のボビンに巻き回す工程と、前記第二のボビンへの線材の巻き回しが終了した後、前記第一のボビンと前記第一の線材ガイドの間における線材を切断する工程を有することを特徴とする巻線方法である。
【0015】
また、本発明は、前記巻線ユニットとして、前記インデックステーブルとは別個に設置され、線材を供給する部材が前記ボビンの軸の周囲を旋回し、かつ前記ボビンの軸方向に移動するフライヤ方式を用いることを特徴とする、前記の巻線方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の巻線装置においては、最初に巻線を施したボビン、つまり第一のボビンの終端から延長される線材を、次のボビン、つまり第二のボビンに巻き回す際に、第一のボビンと第二のボビンの間の線材を、弛まない状態で線材ガイドに係止し、これらの部材を回動可能な略円形のインデックステーブル上に配置することで、連続的な巻線を可能としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に本発明の実施の形態について説明する。本発明の巻線装置は、基本的に、間歇的に回動可能な略円形のインデックステーブルと、インデックステーブルの外縁部に略等間隔に交互に複数配置された、ボビン固定ユニット、線材ガイド、巻線ユニットを備えていれば、特に細部の仕様などは、限定されないものである。
【0018】
例えば、ボビン固定ユニットは、エアシリンダなどで駆動するクランプとすることが可能で、単にバネを用いてボビンを把持する機構とすることも可能である。また、線材ガイドは、プーリーに線材を巻き回す方式を用いることが可能であり、クランプで挟んで係止することも可能である。
【0019】
また、巻線ユニットは、ボビンを回転させる型、線材を供給する部材をボビン周囲で旋回させる型の両方を用いることが可能である。しかし、前者を用いた場合では、インデックステーブルの外縁部に配されたボビン固定ユニット毎に、巻線ユニットを設置する必要が生じるので、後者の方が装置の小型化などの点で有用である。
【0020】
図1は、本発明による巻線装置の一例を示した模式図である。図1において、11は巻線ユニット、12はボビン、13は巻線、14はボビン固定ユニット、15は線材ガイド、16はインデックステーブルである。この例では、ボビン固定ユニット14と線材ガイド15はインデックステーブルの外縁に各6セット設置してある。次に、図1を参照して本巻線装置による巻線方法を説明する。
【0021】
図1に示した巻線ユニット11は、線材を繰り出すノズルがボビン12の軸の周囲を旋回するフライヤ型である。まず、図1において右側に示した第一のボビン固定ユニット14に、第一のボビン12を固定する。この際、線材の始端は適宜ボビン固定ユニットなどに固定しておく。
【0022】
次に、第一のボビン12に必要なターン数の巻線13を形成し、インデックステーブル16を、図1中の矢印の方向に60°回動させる。この際、線材ガイド15に巻線13の終端の延長部分を弛まないようにして引っ掛ける。なお、ここに示した線材ガイド15はプーリーを有する型である。
【0023】
インデックステーブル16を60°回動させると、図1において左側に示した第二のボビン固定ユニット14が巻線ユニット11の近傍に移動して来るので、再び巻線ユニット11を作動させ、第二のボビン12に線材を巻き回すことができる。第二のボビンへの線材の巻き回しが終了した後、インデックステーブル16を、さらに60°回動させることで、線材は第二のボビン12、第二の線材ガイド15、第三のボビン12により、弛まない状態で係止され、最初に線材を巻き回した第一のボビン12の巻線13の終端の延長部分を切断しても、第三以降のボビンへの線材の巻き回しには影響を及ぼさない。
【0024】
つまり、巻線装置をこのように構成すると、ボビン12自体が線材の固定治具として機能するので、それだけ巻線装置の小型化可能となる。このような動作を繰り返すことで、ボビン12への巻線13の連続的な形成が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による巻線装置の一例を示した模式図。
【図2】従来のボビンを回転させる型の巻線装置を模式的に示した図。
【図3】従来の線材供給装置をボビンの巻枠周囲を旋回させる型の巻線装置を模式的に示した図。
【符号の説明】
【0026】
11 巻線ユニット
12,21,31 ボビン
13,22,32 巻線
14 ボビン固定ユニット
15 線材ガイド
16 インデックステーブル
23,33 線材
24,34 ノズル
25 線材供給用プーリー
26 ボビン固定治具
27 回転軸
28a (ボビン固定治具側に取り付けられた)線材固定治具
28b (ノズル側に取り付けられた)線材固定治具
29 線材切断装置
35 フライヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間歇的に回動する略円形のインデックステーブルと、前記インデックステーブルの外縁部に略等間隔に交互に設けられた複数のボビン固定ユニット及び複数の線材ガイドと、前記ボビン固定ユニットに固定されたボビンに巻線を施すための、巻線ユニットを有することを特徴とする巻線装置。
【請求項2】
前記巻線ユニットは、前記インデックステーブルとは別個に設置され、線材を供給する部材が前記ボビンの軸の周囲を旋回し、かつ前記ボビンの軸方向に移動するフライヤ方式であることを特徴とする、請求項1に記載の巻線装置。
【請求項3】
外縁部に略等間隔に複数のボビン固定ユニット及び複数の線材ガイドが交互に設けられた、間歇的に回動する略円形のインデックステーブルにおける、第一のボビン固定ユニットに固定された第一のボビンに、巻線ユニットを用いて線材を巻き回す工程と、前記インデックステーブルを、前記ボビン固定ユニットの間隔分だけ回動させながら、前記第一のボビンに巻き回された線材の延長部分を、前記第一のボビン固定ユニットと前記巻線ユニットの間に位置する第一の線材ガイドに、前記第一のボビンとの間に弛みが生じないように係止する工程と、係止後の前記線材の延長部分を、前記巻線ユニットを用いて第二のボビン固定ユニットに固定されている第二のボビンに巻き回す工程と、前記第二のボビンへの線材の巻き回しが終了した後、前記第一のボビンと前記第一の線材ガイドの間における線材を切断する工程を有することを特徴とする巻線方法。
【請求項4】
前記巻線ユニットとして、前記インデックステーブルとは別個に設置され、線材を供給する部材が前記ボビンの軸の周囲を旋回し、かつ前記ボビンの軸方向に移動するフライヤ方式を用いることを特徴とする、請求項3に記載の巻線方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−5217(P2006−5217A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180946(P2004−180946)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000134257)NECトーキン株式会社 (1,832)
【Fターム(参考)】