説明

巻線部品用コア及びその製造方法,巻線部品

【課題】巻線を引き出す角度及びテンションの調整を容易にして、巻線時の線材への負荷を軽減し、巻き乱れの少ない信頼性の高い巻線部品用コアを提供する。
【解決手段】巻線部品用のドラムコア10は、巻線が巻回される軸芯部12の両端に一対の鍔部14,24を備えており、その対向する内面16,26には、鍔部14,24の外辺に近付くにつれ対向する内面16,26間の間隔が拡大する略円錐面状のテーパ面18,28が形成されている。鍔部14,24は略長方形であって、長辺側の側面14A,24Aとテーパ面18,28の接する辺が、略中央部において凸状になった曲線形状20A,30Aを有している。前記曲線形状20A,30Aにより、鍔部14,24の角部15,25の基準面からの高さT2が、曲線形状20A,30Aの凸状部における基準面からの高さT1よりも低くなり、巻線時の線材への負荷を軽減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端部に鍔部を備えた軸芯部に巻線が巻回される巻線部品用コアとその製造方法,巻線部品に関し、更に具体的には、巻線の傷付き防止と巻線位置の調整に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軸芯の両端に一対の角型の鍔部を有する低背形状の巻線インダクタ用ドラムコアにおいては、巻線時に鍔部の角部の内側の稜線部が、巻線と干渉して線材に傷が付くことがある。そこで、巻線時の位置調整を容易にし、製品の信頼性を向上させる必要があった。この問題に対し、例えば、下記特許文献1には、巻芯部の両端部に、それぞれ巻芯部の端に近付くにつれて巻芯部を太くするテーパ部を設け、コイル巻線は、断面形状が四角形状の角線となし、巻芯部のテーパ部に面接触させながらコイル巻線をテーパ部に巻回することで、コイル巻線の巻回数の減少を回避しながら巻芯部の強度強化を図り、コイル巻線の巻回作業を容易にする巻線型コイル部品が開示されている。また、下記特許文献2には、巻芯部の両端に設けられる上鍔部と下鍔部のうち少なくとも一方の鍔部の他方の鍔部と対向する面にテーパ部が形成されて、巻芯部に巻回されるコイル導体の外周面から半径方向に離間するにつれて対向する鍔部間の間隔が拡大する拡大領域を設けた形状のドラムコアを利用した面実装チョークコイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−251933号公報
【特許文献2】特開2008−205245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1及び特許文献2の技術においても、線材(巻線)を巻いている途中で、線材が鍔部に引っかかるか乗り上げてしまい、線材に傷を付けてしまう場合があった。このように、軸芯部とその両端に設けられた一対の鍔部から形成される角型インダクタ用ドラムコアでは、巻線時に線材に傷が付かないように巻回時のテンションや、巻線を引き出す角度を最適に調整する必要があるが、設定可能な幅が狭いため、その調整が難しい。一般的には巻線をトラバースして整列させる方法が行われている。しかしながら、このようにしても巻線の巻き乱れが生じることがあった。
【0005】
本発明は、以上のような点に着目したもので、巻線の巻回時のテンションや、巻線を引き出す角度を最適に調整することで巻線時の線材への負荷を軽減し、巻き乱れの少ない信頼性の高い巻線部品用コアとその製造方法を提供することを、目的とする。他の目的は、前記巻線部品用コアを用いた巻線部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の巻線部品用コアは、巻線が巻回される軸芯部と、その両端に設けられた一対の鍔部とを備えた巻線部品用コアであって、前記一対の鍔部の対向する内面に、該鍔部の外辺に近付くにつれ対向する内面間の間隔が拡大するテーパ面を設けるとともに、少なくとも一方の鍔部が、前記軸芯部の軸方向から見た平面形状が多角形状であって、該多角形状の鍔部の少なくとも一つの側面と前記テーパ面の接する辺が、略中央部において凸状になった曲線形状を有していることを特徴とする。
【0007】
主要な形態の一つは、前記テーパ面を略円錐面状とすることで、前記テーパ面と前記多角形状の鍔部の側面との接する辺が、前記曲線形状となることを特徴とする。他の形態は、前記軸芯部の軸方向と直交する面に対する前記テーパ面の角度が3〜40°であることを特徴とする。更に他の形態は、前記鍔部の角部に、前記巻線を引き出すための切欠部を設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明の巻線部品用コアの製造方法は、巻線が巻回される軸芯部と、その両端に設けられた一対の鍔部とを備えた巻線部品用コアの製造方法であって、コア用素体を切削して、前記巻芯部と一対の鍔部を形成するにあたり、両主面の縁部にテーパ面が形成されたホイールと、前記コア用素体とを共に回転させて切削し、前記一対の鍔部の対向する内面側に、該鍔部の外辺に近付くにつれ対向する内面間の間隔が拡大する略円錐面状のテーパ面を形成する工程と、前記テーパ面と交わるように、少なくとも一方の鍔部の外辺近傍の少なくとも一部を、前記軸芯部と平行に切断することによって、該切断した断面と前記テーパ面との接する辺が、略中央部において凸状となるような曲線形状を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
他の発明の巻線部品用コアの製造方法は、巻線が巻回される巻芯部と、その両端に設けられた一対の鍔部とを備えた巻線部品用コアの製造方法であって、前記一対の鍔部のうち、少なくとも一方の鍔部が巻芯部の軸方向から見て多角形状となるようなコア用素体を用意し、該コア用素体を切削して前記巻芯部と、一対の鍔部を形成するにあたり、両主面の縁部にテーパ面が形成されたホイールと、前記コア用素体とをともに回転させて切削し、前記一対の鍔部の対向する内面側に、該鍔部の外辺に近付くにつれ対向する内面間の間隔が拡大する略円錐面状のテーパ面を形成するとともに、該テーパ面を、前記多角形状の鍔部の少なくとも一つの側面と交わるまで形成することによって、該鍔部の側面とテーパ面との接する辺が、略中央部において凸状となるような曲線形状を形成することを特徴とする。
【0010】
他の発明の巻線部品用コアは、前記いずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする。本発明の巻線部品は、前記いずれかに記載の巻線部品用コアの軸芯部に、巻線を巻回して導体部を形成し、前記曲線形状が形成されている鍔部の角部付近から、前記巻線を引き出して、該鍔部の外面に形成された電極に前記巻線の端部を接続した構造を有することを特徴とする。主要な形態の一つは、前記巻線上に外装を形成したことを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、巻線が巻回される軸芯部と、その両端に設けられた一対の鍔部とを備えた巻線部品用コアにおいて、前記一対の鍔部の対向する内面に、該鍔部の外辺に近付くにつれ対向する内面間の間隔が拡大するテーパ面を設けるとともに、少なくとも一方の鍔部が、前記軸芯部の軸方向から見た形状が多角形状であって、該多角形状の鍔部の少なくとも一つの側面と前記テーパ面の接する辺が、略中央部において凸状になった曲線形状を有しており、該曲線形状の端における前記鍔部の角部の基準面からの高さが、前記曲線形状の凸状部における前記基準面からの高さよりも低くなるように形成した。このため、巻線を引き出す角度及びテンションを最適に調整することが容易となり、巻線時の線材への負荷を軽減し、巻き乱れの少ない信頼性の高いコアが得られる。また、コアを、前記特徴を有するドラム形状とすることで、コア同士の鍔部がはまり込んだ時に、点での接触となり、噛み込み状態で固定されることがなくなるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例1を示す図であり、(A)はドラムコアの外観斜視図,(B)は前記(A)を矢印F1方向から見た側面図である。
【図2】前記実施例1と比較例のドラムコアに巻線を巻回したときの様子を示す側面図,底面図及び斜視図である。
【図3】前記実施例1の変形例を示す図であり、(A-1)及び(B-1)は外観斜視図,(A-2)及び(B-2)は前記(A-1)及び(B-1)を矢印F3方向から見た側面図である。
【図4】本発明の実施例2を示す図であり、(A)はドラムコアの外観斜視図,(B)は前記(A)を矢印F4a方向から見た側面図,(C)は前記(A)を底面側(矢印F4b方向)から見た平面図,(D)は前記(A)を上面側(矢印F4c方向)から見た平面図である。
【図5】前記実施例2のドラムコアとそれを用いた巻線部品の製造工程を示す図であ
【図6】巻線部品の底面側における巻線の引出部を示す図であり、(A)は前記実施例2の引出部,(B)及び(C)は変形例の引出部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
最初に、図1〜図3を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1(A)は、本実施例のドラムコアの外観斜視図,(B)は前記(A)を矢印F1方向から見た側面図である。図2は、本実施例と比較例のドラムコアに巻線を巻回したときの様子を示す図であり、(A-1)〜(A-4)は、本実施例の側面図,底面図,斜視図であり、(B-1)〜(B-4)は、前記(A-1)〜(A-4)に対応する比較例の図である。図3は、本実施例の変形例を示す図であり、詳細は後述する。本実施例のドラムコア10は、巻線部品用のコアであって、図1(A)及び(B)に示すように、巻線40が巻回される軸芯部12の両端に、一対の鍔部14,24を備えている。該ドラムコア10を形成する材料としては、例えば、フェライトなどが挙げられるが、これに限らず、合金系の磁性材(例えば、Fe−Cr−Si合金、Fe−Al−Si合金など)であってもよい。
【0015】
前記鍔部14,24の対向する内面16,26には、鍔部14,24の外辺に近付くにつれ対向する内面16,26間の間隔が拡大する略円錐面状のテーパ面18,28が形成されている。図示の例では、前記鍔部14,24は、前記軸芯部12の軸方向から見えた平面形状が略長方形であって、鍔部14は、側面14A〜14Aを備え、鍔部24は、側面24A〜24Dを備えている(符号の一部は図示を省略している)。このうち、鍔部14の長辺側の側面14Aとテーパ面18の接する辺は、略中央部において凸状になった曲線形状20Aを有している。前記側面14Aと対向する側面14C側においても、同様の曲線形状が形成されている(図示せず)。同様に、他方の鍔部24の長辺側の側面24Aとテーパ面28の接する辺,及び、図示しない側面24Bとテーパ面28の接する辺にも、略中央部が凸状になった曲線形状30Aが形成されている。
【0016】
前記凸状部分を有する曲線形状20A,30Aを設けることにより、鍔部14,24の角部15,25の基準面(ここでは、鍔部14についての基準面は、図1(A)及び(B)に示した状態における上面を底面とみなした場合の該底面をいう)からの高さT2が、曲線形状20A,30Aの凸状部における基準面からの高さT1よりも低くなる。前記曲線形状20A,30Aにより鍔部14,24に高さの差を設けることにより、巻線時に巻線40(線材)の鍔部14,24への乗り上げを防止することができる。また、前記テーパ面18の傾きαは、前記軸芯部12の軸方向と直交する面に対して3〜40°、好ましくは5〜30°、更に好ましくは10〜20°となるように設定すると、巻線40を巻回するときに緻密に整えて巻くことができる。
【0017】
例えば、図2(B-1)〜(B-4)には、比較例として、軸芯部52の両端に略長方形の一対の鍔部54,58を形成し、該鍔部54,58の内面側に、テーパ面56,60を設けたドラムコア50が示されている。本実施例のドラムコア10と、比較例のドラムコア50に巻線40を巻回したとき、比較例のドラムコア50においては、鍔部54,58の側面に本実施例のような曲線形状がないため、巻線40が鍔部54,58に乗り上げてしまう。そのため、図2(B-1)及び(B-2)に示すように、巻線40が鍔部54,58の外縁からはみ出してしまい、綺麗に巻くことができない。これに対し、本実施例1のドラムコア10では、鍔部14,24の長辺側の側面14A,24Aとテーパ面18,28の接する辺に、略中央部が凸状になった曲線形状20A,30Aが形成されているため、前記凸状部分で巻線40を内側にはじき、外周方向に広がるのを防止して、図2(A-2)に示すように巻線40が鍔部14,24の外縁からはみ出すことなく、ドラムコア10の形状に沿って緻密に巻回することができる。なお、前記図2(A-2)及び(B-2)は、前記図2(A-1)及び(B-1)を矢印F2方向,すなわち、底面側から見た平面図に相当する。
【0018】
また、比較例のドラムコア50では、鍔部54,58間にテーパ面56,60を設けてあるとはいえ、例えば、鍔部58の角部62と、略中央部では基準面(ここでは鍔部58の下面)からの高さが同じであり、巻線40を角部62付近から引き出すときに、前記角部62に巻線40が乗り上げて、巻線材を傷つけやすい(図2(B-3)参照)。これに対し、本実施例のドラムコア10では、前記曲線形状20A,30Aを設けることにより、鍔部14の角部15の基準面からの高さT2と略中央部の基準面からの高さT1に差を設けているため、巻線40を巻いている途中で、巻線40が角部25に乗り上げることがない。それにより、巻線40への負荷を軽減し、傷付きを防止することができる(図2(A-3)参照)。図2(A-4)には、本実施例のドラムコア10に巻線40を巻回し、引出部40A,40Bを引き出した様子が示されており、図2(B-4)には、比較例のドラムコア50に、巻線40を巻回し、引出部40A,40Bを引き出した様子が示されている。これらの比較から、ドラムコアを本実施例の形状とすることによって、巻線40を緻密に巻回し、更に、巻線40へかかる負荷を軽減して傷付きを防止し、巻き乱れの少ない信頼性の高い巻線コアを得られることが分かる。
【0019】
このように、実施例1によれば、巻線部品用のドラムコア10は、巻線が巻回される軸芯部12の両端に一対の鍔部14,24を備えており、その対向する内面16,26には、鍔部14,24の外辺に近付くにつれ対向する内面16,26間の間隔が拡大する略円錐面状のテーパ面18,28が形成されている。そして、前記鍔部14,24の平面形状を略長方形とし、長辺側の側面14A,24Aとテーパ面18,28の接する辺が、略中央部において凸状になった曲線形状20A,30Aを有することで、該曲線形状20A,30Aにより、鍔部14,24の角部15,25の基準面からの高さT2が、曲線形状20A,30Aの凸状部における鍔部14,24の基準面からの高さT1よりも低くなる。これにより、次のような効果がある。
(1)巻線40を引き出す角度及び巻回時のテンションを最適に調整することが容易となるため、巻回時の巻線材への負荷を軽減し、巻き乱れの少ない信頼性の高い巻線部品を製作することができる。
(2)一対の鍔部14,24の双方を略長方形とし、それぞれの長辺側の側面とテーパ面18,28の接する辺に上述した曲線形状20A,30Aを設けることとしたので、鍔部14,24のいずれの側から巻線40の引出部40A,40Bを引き出してもよく、設計の自由度が上がる。
(3)ドラムコア10を上述した形状とすることで、ドラムコア10同士の鍔部がはまり込んだ時に点での接触となり、噛み込み状態で固定されることがなくなる。
【0020】
<変形例>・・・次に、図3を参照して本実施例の変形例を説明する。図3(A-1)及び(B-1)は外観斜視図,図3(A-2)及び(B-2)は、前記(A-1)及び(B-1)を矢印F3方向から見た側面図である。上述した図1及び図2(A-1)〜(A-4)に示したドラムコア10は、軸芯部12の軸方向から見た一対の軸部14,24の平面形状を双方とも略長方形状としたが、鍔部の平面形状は多角形状であればよい。例えば、図3(A-1)及び(A-2)に示すドラムコア100は、軸芯部102の両端に一対の鍔部104,114を備えた構成となっており、前記鍔部104,114の平面形状はともに八角形状となっている。そして、前記鍔部104,114の内面側には、略円錐面状のテーパ面108,118が形成されており、該テーパ面108,118と前記鍔部104,114の側面106,116の接する辺は、全て曲線形状112,122となっている。本例においても、鍔部108,118の角部110,120における基準面(ここでは鍔部104の上面を底面とした場合の面)からの高さT4は、前記曲線形状112,122の略中央部の凸状部における基準面からの高さT3よりも低くなり、上述したドラムコア10と同様の効果を得ることができる。
【0021】
次に、図3(B-1)及び(B-2)に示すドラムコア200は、軸芯部202の両端に一対の鍔部204,214を備えた構成となっており、前記鍔部204,214の平面形状はともに方形状の角部を切り落とした形状となっている。そして、前記鍔部204,214の内面206,216側には、略円錐面状のテーパ面208,218が形成されている。そして、前記テーパ面208と前記鍔部204の側面204A〜204Dの接する辺には、全て曲線形状215が形成されており、他方の鍔部214の側面214A〜214Dと前記テーパ面218の接する辺には、全て曲線形状224が形成されている。本例においても、前記曲線形状215,224の略中央部は、角部212,222よりも基準面からの高さが高くなるように凸状に形成されている。更に、本例においては、前記角部212,222には、巻線40の引出部40A,40Bの引出位置を決めるための切欠部210,220が、4つの角に設けられている。従って、ドラムコア200においては、上述したドラムコア10と同様の効果に加え、角部212,222に設けた切欠部210,220により、巻線40の引出位置の位置決めが更に容易になるという効果が得られる。
【実施例2】
【0022】
次に、図4〜図6を参照しながら本発明の実施例2を説明する。上述した実施例1及びその変形例では、軸芯部の両端に設ける一対の鍔部を同一形状としたが、軸芯部の両端側に非対称形状の鍔部を設けるようにしてもよい。本実施例では、そのようなドラムコアの形状とその製造方法について説明する。図4(A)は、本実施例のドラムコアの外観斜視図,図4(B)は前記(A)を矢印F4a方向から見た側面図,図4(C)は前記(A)を底面側(矢印F4b方向)から見た平面図,図4(D)は前記(A)を上面側(矢印F4c方向)から見た平面図である。図5は、本実施例のドラムコアとそれを用いた巻線部品の製造工程を示す図である。図6は、巻線部品の底面側における巻線の引出部を示す図であり、(A)は前記実施例2の引出部,(B)及び(C)は変形例の引出部を示す図である。
【0023】
図4(A)及び(B)に示すように、本実施例のドラムコア300は、軸芯部302の両端に一対の鍔部304,314を備えた構成となっており、前記鍔部304の平面形状は略八角形状であり、他方の鍔部314の平面形状は、方形の角部を切り落とした形状となっている。そして、前記鍔部304,314の内面側には、略円錐面状のテーパ面306,318が形成されている。前記鍔部304側においては、前記テーパ面306と8つの側面304A〜304Hが接する辺には、全て曲線形状308A〜308Hが形成されている(一部符号の図示を省略)。前記曲線形状308A〜308Hの略中央部の基準面(ここでは鍔部304の上面を底面とした場合の面)からの高さT7は、角部312の基準面からの高さT8よりも高くなっている。
【0024】
他方の鍔部314側においては、前記テーパ面318と4つの側面314A〜314Dが接する辺の全てに、曲線形状324A〜324Dが形成されている。そして、前記曲線形状324A〜324Dの略中央部の基準面(ここでは鍔部314の底面)からの高さT9は、角部322の基準面からの高さT10よりも高く形成されている。更に、前記鍔部314には、前記角部322に、巻線40の引出部40A,40Bの引出位置を決めるための切欠部320A〜320Dが四隅に設けられている。そして、前記鍔部314の裏面には、図4(C)に示すように、前記切欠部320Aと320Bを結ぶように溝326Aが形成されており、前記切欠部320Cと320Dを結ぶように溝326Bが形成されている。従って、前記切欠部320A〜320Dのいずれかから引き出された巻線40の引出部40A,40Bは、鍔部314の裏面(ないし外面)において、溝326A又は326Bに沿うように収納され、電極と接続される。
【0025】
次に、図5を参照しながら本実施例のドラムコア300とそれを利用した巻線部品400の製造方法の一例を説明する。まず、図5(A)に示すように、コア用素体370の成形品を用意する。該コア用素体370は、最終的に八角形状の鍔部304に対応する八角形状部372と、切欠部320A〜320Dを有する四角形状の鍔部314に対応する四角形状部374からなっており、前記四角形状部374の裏面には、前記図4(C)に示した一対の溝326A,326Bがあらかじめ形成されている。このような形状のコア用素体370を、図5(B)に示すようにダイヤホイール340で切削加工する。加工の際には、コア用素体370の八角形状部372側を軸330で支え、四角形状部374側を軸332で支え、図示しない回転装置によりコア用素体370を回転させる。そして、前記ダイヤホイール340を図示しない駆動機構により回転させながら、回転中のコア用素体370に押し当てて加工する。
【0026】
前記ダイヤホイール340は、両主面340A,340Bの縁部340C側に、テーパ面342A,342Bが設けられている。該テーパ面342A,342Bを有するダイヤホイール340を用いて切削することにより、軸芯部302,鍔部304及び314,前記テーパ面306,318を形成することができる。なお、略円錐面状のテーパ面306,318を、その縁部が前記鍔部304,314の側面と交わるまで形成することにより、前記凸状部分を有する曲線形状314A〜314H,324A〜324Dを形成することができる(図5(C))。あるいは、略円錐面状のテーパ面306,318を形成した後、該テーパ面306,318と交わるように、鍔部304,314の側面を前記軸芯部302と略平行に切断することによって、該切断した断面と前記テーパ面306,318との接する辺に、前記曲線形状314A〜314H,324A〜324Dを形成してもよい(図5(C))。
【0027】
次に、前記切削加工を施した加工品380を焼成し、本実施例のドラムコア300を得る(図5(D))。次に、図5(E)に示すように、前記鍔部314の裏面側に、前記溝部326A,326Bを覆うように、電極350A,350Bを形成する。電極350A,350Bの形成は、例えば、めっき等により行う。次に、図5(F)に示すように、前記巻芯部302に巻線40を巻回し、引出部40A,40Bを切欠部320A,320Cから鍔部314の裏面側に引き出し、図6(A)に示すように、溝326A,326B内に形成された電極350A,350Bに接合する。そして、図5(G)に示すように、巻線40の巻回により形成された導体部を、外装材360の塗布により覆い、形成された巻線部品400(図5(H))を、電子機器等に実装する。なお、本実施例のドラムコア300に巻線40を巻回するときに得られる利点は、上述した実施例1及びその変形例と同様である。また、前記巻線40の引き出し方は、一例であり、図6(C)に示すように、引出部40Aを切欠部320B側から引出し、他方の引出部40Bを切欠部320Cから引き出すようにしてもよい。あるいは、図6(B)に示す鍔部314´のように、切欠部320A,320Cのみを設け、これらの位置で巻線40の引出を行うようにしてもよい。
【0028】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)前記実施例で示した形状,寸法は一例であり、必要に応じて適宜変更してよい。例えば、前記実施例1及び実施例2では、一対の鍔部の双方の平面形状を多角形状としたが、巻線40の引き出しを行う側の鍔部のみを多角形状とすれば、他方の鍔部の平面形状は多角形状でなくてもよい。また、多角形状の鍔部の辺部に形成する曲線形状は、多角形の少なくとも一つの辺部において形成すればよい。
(2)前記実施例で示したドラムコアの材料は一例であり、公知の各種の材料を利用してよい。
(3)前記実施例では、軸芯部の断面形状を略円形としたが、多角形状としてもよいし、楕円形状等であってもよい。
(4)前記実施例1では、テーパ面18,28の傾きの最適範囲を10〜20°としたが、むろん、これも一例であり、同様の効果を奏する範囲(3〜40°)内で適宜設計変更可能である。また、対向する鍔部の一方に設けるテーパ面と、他方の鍔部側に設けるテーパ面の傾きが異なっていてもよい。
(5)前記実施例では、鍔部の内面側に設けるテーパ面は略円錐面状としたが、これに限定されるものではない
(5)本発明の巻線部品用コアは、例えば、巻線インダクタなどの巻線部品が好適な利用例であるが、それに限定されるものではなく、トランス、コモンモードチョークコイルなどに広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、巻線が巻回される軸芯部の両端に設けられた一対の鍔部の対向する内面に、該鍔部の外辺に近付くにつれ対向する内面間の間隔が拡大するテーパ面を設けるとともに、少なくとも一方の鍔部が、前記軸芯部の軸方向から見た形状が多角形状であって、該多角形状の鍔部の少なくとも一つの側面と前記テーパ面の接する辺が、略中央部において凸状になった曲線形状を有しており、該曲線形状の端側における前記鍔部の角部の基準面からの高さが、前記曲線形状の凸状部における前記基準面からの高さよりも低くなるように形成した。このため、巻線を引き出す角度及び巻回時のテンションを最適に調整することが容易となり、巻線時の線材への負荷が軽減するため、巻線部品用コアの用途に適用できる。特に、低背型の巻線インダクタに好適である。
【符号の説明】
【0030】
10:ドラムコア
12:軸芯部
14,24:鍔部
14A〜14D,24A〜24D:側面
15,25:角部
16,26:内面
18,28:テーパ面
20A,20B,30A,30B:曲線形状
40:巻線
40A,40B:引出部
50:ドラムコア
52:軸芯部
54,58:鍔部
56,60:テーパ面
62:角部
100:ドラムコア
102:軸芯部
104,114:鍔部
106,116:側面
108,118:テーパ面
110,120:角部
112,122:曲線形状
200:ドラムコア
202:軸芯部
204,214:鍔部
204A〜204D,214A〜214D:側面
206,216:内面
208,218:テーパ面
210,220:切欠部
212,222:角部
215,224:曲線形状
300:ドラムコア
302:軸芯部
304,314,314´:鍔部
304A〜304H,314A〜314D:側面
306:テーパ面
312,322:角部
308A〜308H,324A〜324D:曲線形状
316:内面
318:テーパ面
320A〜320D:切欠部
326A,326B:溝
330,332:軸
340:ダイヤホイール
340A,340B:主面
340C:縁部
342A,342B:テーパ面
350A,350B:電極
360:外装材
370:コア用素体
372:八角形状部
374:四角形状部
380:加工品
400:巻線部品
T1〜T10:高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻線が巻回される軸芯部と、その両端に設けられた一対の鍔部とを備えた巻線部品用コアであって、
前記一対の鍔部の対向する内面に、該鍔部の外辺に近付くにつれ対向する内面間の間隔が拡大するテーパ面を設けるとともに、
少なくとも一方の鍔部が、前記軸芯部の軸方向から見た平面形状が多角形状であって、該多角形状の鍔部の少なくとも一つの側面と前記テーパ面の接する辺が、略中央部において凸状になった曲線形状を有していることを特徴とする巻線部品用コア。
【請求項2】
前記テーパ面を略円錐面状とすることで、前記テーパ面と前記多角形状の鍔部の側面との接する辺が、前記曲線形状となることを特徴とする請求項1記載の巻線部品用コア。
【請求項3】
前記軸芯部の軸方向と直交する面に対する前記テーパ面の角度が3〜40°であることを特徴とする請求項1又は2記載の巻線部品用コア。
【請求項4】
前記鍔部の角部に、前記巻線を引き出すための切欠部を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の巻線部品用コア。
【請求項5】
巻線が巻回される軸芯部と、その両端に設けられた一対の鍔部とを備えた巻線部品用コアの製造方法であって、
コア用素体を切削して、前記巻芯部と一対の鍔部を形成するにあたり、
両主面の縁部にテーパ面が形成されたホイールと、前記コア用素体とを共に回転させて切削し、前記一対の鍔部の対向する内面側に、該鍔部の外辺に近付くにつれ対向する内面間の間隔が拡大する略円錐面状のテーパ面を形成する工程と、
前記テーパ面と交わるように、少なくとも一方の鍔部の外辺近傍の少なくとも一部を、前記軸芯部と平行に切断することによって、該切断した断面と前記テーパ面との接する辺が、略中央部において凸状となるような曲線形状を形成する工程と、
を含むことを特徴とする巻線部品用コアの製造方法。
【請求項6】
巻線が巻回される巻芯部と、その両端に設けられた一対の鍔部とを備えた巻線部品用コアの製造方法であって、
前記一対の鍔部のうち、少なくとも一方の鍔部が巻芯部の軸方向から見て多角形状となるようなコア用素体を用意し、
該コア用素体を切削して前記巻芯部と、一対の鍔部を形成するにあたり、
両主面の縁部にテーパ面が形成されたホイールと、前記コア用素体とをともに回転させて切削し、前記一対の鍔部の対向する内面側に、該鍔部の外辺に近付くにつれ対向する内面間の間隔が拡大する略円錐面状のテーパ面を形成するとともに、
該テーパ面を、前記多角形状の鍔部の少なくとも一つの側面と交わるまで形成することによって、該鍔部の側面とテーパ面との接する辺が、略中央部において凸状となるような曲線形状を形成することを特徴とする巻線部品用コアの製造方法。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする巻線部品用コア。
【請求項8】
請求項1〜4又は7のいずれか一項に記載の巻線部品用コアの軸芯部に、巻線を巻回して導体部を形成し、前記曲線形状が形成されている鍔部の角部付近から、前記巻線を引き出して、該鍔部の外面に形成された電極に前記巻線の端部を接続した構造を有することを特徴とする巻線部品。
【請求項9】
前記巻線上に外装を形成したことを特徴とする請求項8に記載の巻線部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−33871(P2013−33871A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169655(P2011−169655)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】