説明

巾木

【課題】 巾木本体の背面の上端部と内壁面との間に隙間が生じるのを防止する。
【解決手段】巾木本体2の上面2cのうちの背面2e側の端部には、巾木本体2の長手方向に沿って延びる突条4を設ける。突条4は、柔軟性を有する樹脂によって構成する。突条4は、上方へ向かうにしたがって巾木本体2の背面2eから後方へ突出するように傾斜させる。突条4の厚さは、上方へ向かって薄くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、室内の壁の下端部に取り付けられ、壁の下端部と床との間の隙間を目隠しするための巾木に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、巾木は、比較的強度が高い平板状をなす巾木本体と、この巾木本体の下端部に設けられた柔軟性を有するシール部材とを備えている。巾木本体は、その背面が壁面に押し付けられた状態で壁の下端部に固定されている。シール部材は、その下端部が床面に押し付けられている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−49313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の巾木には、次の二つの問題があった。
第1に、巾木本体の背面の上端部と壁面との間に隙間が生じるという問題である。巾木本体は工場で成形加工されるので、その背面はうねりのない平面になっている。一方、壁面は、現場施工であるため、多少のうねりが不可避である。このため、巾木本体の背面を壁面に押し付けたときには、それらの間の各部に壁面のうねりに対応した隙間が生じる。この隙間は、背面の上端部と壁面との間の各部にも生じ、この隙間が室内から目視される。このため、室内の美観が損なわれるという問題があった。
第2に、シール部材の柔軟性の問題である。床面の各部は、人間の歩行等に伴って上下に変位する。シール部は、床面のこのような変位に追随して常時床面に接触することができるよう、柔軟性を有する樹脂によって形成されている。この場合、床面の変位によりよく追随させるには、シール部材の柔軟性を高くするのが望ましい。しかし、あまり柔軟にすると、シール部材の強度が低下し、簡単に傷付いたり、早期に摩耗してしまう。シール部材の柔軟性と強度とを両立することが困難であるという問題あった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記第1の問題を解決するために、第1の発明は、板状をなす巾木本体の上面にその長手方向に沿って延びる突条が形成され、この突条の少なくとも上端部が、柔軟性を有し、かつ上記巾木本体の背面から後方に突出させられていることを特徴としている。
この場合、上記巾木本体が硬質の樹脂によって所定の強度に形成され、上記突条が柔軟性を有する樹脂によって形成され、上記巾木本体と上記突条とが二色成形法によって一体に成形されていることが望ましい。を特徴とする請求項1に記載の巾木。
上記突条が上方へ向かうにしたがって後方へ向かうように傾斜して形成され、上記突条の前後方向の厚さが上方へ向かうにしたがって漸次薄くなっていることが望ましい。
第2の問題を解決するために、第2の発明は、板状をなす巾木本体の下部に、上記巾木本体の下面から下方に突出し、かつ上記巾木本体の長手方向に沿って延びるシール部材が設けられた巾木において、上記シール部材の少なくとも下部が中空の筒状部として形成され、この筒状部の少なくとも下部が柔軟性を有する樹脂によって形成されていることを特徴としている。
この場合、上記シール部材が、上記巾木本体の下部に取り付けられる取付部と、この取付部の下部に設けられた上記筒状部とを有し、上記取付部が所定の剛性を有していることが望ましい。
上記取付部には、上記巾木本体の下面に当接する基準面が形成されていることが望ましい。
上記巾木本体の上面にその長手方向に沿って延びる突条が形成され、この突条の少なくとも上端部が、柔軟性を有し、かつ上記巾木本体の背面から後方に突出させられていることが望ましい。
上記巾木本体が硬質の樹脂によって所定の強度に形成され、上記突条が柔軟性を有する樹脂によって形成され、上記巾木本体と上記突条とが二色成形法によって一体に成形されていることが望ましい。
上記突条が上方へ向かうにしたがって後方へ向かうように傾斜して形成され、上記突条の前後方向の厚さが上方へ向かうにしたがって漸次薄くなっていることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
上記特徴構成を有する第1の発明によれば、巾木本体の背面を壁面に押し付けると、突条の少なくとも上端部が壁面に押し付けられる。このとき、突条の上端部が柔軟性を有しているので、突条の上端部は壁面のうねりに対応して弾性変形する。したがって、突条の上端部と壁面との間には隙間が形成されることがない。よって、室内の美観を向上させることができる。
また、第2の発明によれば、床面に接触するシール部材の少なくとも下端部が中空の筒状に形成されているから、シール部材の下端部の強度を一定にした場合、シール部材の下端部の柔軟性を高くすることができる。したがって、シール部材の柔軟性と強度とを両立することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1及び図2は、この発明の第1実施の形態を示す。この実施の形態の巾木1は、巾木本体2、化粧フィルム3、突条4及びシール部材5を備えている。
【0008】
巾木本体2は、ABS樹脂等の比較的硬質の樹脂により、所定の剛性を有する平板として成形されており、その長手方向を左右に向けて配置されている。巾木本体2の下面2aの前後方向(図2において左右方向)における中央部には、巾木本体2の長手方向に沿ってその一端から他端まで延びる装着溝2bが形成されている。
【0009】
化粧フィルム3は、巾木本体2の室内から見える上面2c及び前面2dを室内の雰囲気に合うようにするためのものであり、その表面には適宜の模様又は色彩が印刷されている。化粧フィルム3は、巾木本体2の上面2cの背面2e側の端部を除く部分、前面2d全体及び下面2aの前面2dから装着溝2bまでの部分に至る範囲に貼着されている。なお、下面2aは、装着溝2bによって前後に二分されているが、下面2aの前側の部分は、後側の部分に対して化粧フィルム3の厚さの分だけ上側に位置している。したがって、下面2aの後側の部分と化粧フィルム3の下面とは、同一水平面上に位置している。
【0010】
巾木本体2の上面2cのうちの、化粧フィルム3が貼着されていない背面2e側の端部には、巾木本体2の長手方向に沿ってその一端から他端まで延びる突条4が設けられている。突条4は、柔軟性を有する樹脂によって構成されている。この実施の形態では、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系エラストマーによって構成されており、少なくとも巾木本体2より高い柔軟性を有している。突条4は、巾木本体1と別体に形成して巾木本体1に接着等によって固着してもよいが、二色成形法によって一体に成形するのが望ましい。そのようにすれば、見栄えがよくなるとともに、巾木本体2と突条4との間の接合強度が向上するからである。
【0011】
図3において想像線で示すように、突条4は、上方へ向かうにしたがって後方(巾木本体1の前面1dから背面1eに向かう方向)へ向かうように傾斜しており、突条4の背面4aの下端部は、巾木本体2の背面2eの上端部と交差している。したがって、突条4の背面4aは、その全体が巾木本体2の背面2eより後方に突出しており、背面4aの背面2eに対する突出量は、上方へ向かうにしたがって大きくなっている。突条4の厚さは、上方へ向かうにしたがって薄くなっている。したがって、突条4の柔軟性は、上方へ向かうにしたがって高くなっている。
【0012】
巾木本体2の下端部には、巾木本体2の長手方向に沿って水平に延びるシール部材5が取り付けられている。図4に示すように、シール部材5は、上側の取付部5Aと下側の筒状部5Bとから構成されている。取付部5Aは、ABS樹脂等の比較的硬質の樹脂からなものであり、巾木本体2に沿って水平に延びる平板部5aを有している。平板部5aの上面(基準面)5bは、巾木本体2の下面2aのうちの装着溝2bより後側の部分には直接に押し付けられ、装着溝2bより前側の部分に対しては化粧フィルム3を介して押し付けられている。これにより、平板部5aは、長手方向に沿ってうねることなく、巾木本体2の下面2aに沿って水平に延びている。平板部5aの上面5bの中央部には、係合部5cが形成されている。この係合部5cが装着溝2bに脱出不能に係合することにより、シール部材5が巾木本体2に固定されている。係合部5cは、装着溝2bに上下方向へ係脱可能に係合させ、それによってシール部材5を巾木本体2に着脱可能に取り付けてもよい。取付部5Aは、巾木本体2の下面2aに接着固定してもよい。
【0013】
筒状部5Bは、柔軟性を有する樹脂によって構成されている。この実施の形態では、突条4を構成する樹脂と同様の樹脂によって構成されている。筒状部5Bは、断面略U字状に形成されており、その両方の上端部が平板部5aの下面に固着されている。筒状部5Bは、U字状に形成することなく、周方向に連続した筒体として形成してもよい。
【0014】
図3及び図4に示すように、巾木1が固定される壁Wの室内I側の面には、壁紙Waが固着されており、巾木1の背面2aは、壁Wに壁紙Waを介して押圧固定されている。壁Wに壁紙Waを設けることなく、巾木1を壁Wに直接押圧固定してもよい。巾木1が壁紙Waに押圧固定された状態においては、図3に示すように、突条4が壁紙Waに押し付けられるとともに、図4に示すように、シール部材5が床Fに押し付けられている。
【0015】
突条4は、巾木1の背面2aから室外O側に突出しているので、巾木1が壁紙Waに押し付けられた状態においては、内壁面Wbに沿うように弾性変形させられる。この結果、突条4自体の弾性によってその背面4aが壁紙Waに押し付けられる。このとき、突条4が柔軟性を有しているので、壁紙Waの室内I側を向く内壁面Wbにうねりが生じていた場合には、突条4が壁紙Waのうねりに追随して弾性変形する。したがって、突条4の背面4aの上端部と壁紙Waの内壁面Wbとの間に隙間が生じるのを防止することができる。特に、この実施の形態においては、突条4が上方へ向かうにしたがって背面4aから離間するように傾斜しているので、突条4の上端部が下端部より壁紙Waに強く押し付けられる。しかも、突条4の厚さが上方へ向かうにしたがって薄くなっているので、突条4の上端部は下端部より柔軟になっている。したがって、突条4の背面4aの上端部と壁紙Wsとの間に隙間が生じるのをより一層確実に防止することができる。
【0016】
図4に示すように、シール部材5は、その筒状部5Bが上下に押し潰され、筒状部5B自体の弾性によってその下端部が床Fの床面Faに押し付けられる。ここで、筒状部5Bが中空に形成されているので、筒状部5Bを中実に形成し場合に比して柔軟にすることができる。したがって、筒状部5Bを中実のものと同程度の柔軟性をもって形成する場合には、筒状部5Bを構成する材質として中実のものを構成する材質より強度の高い材質を用いることができる。したがって、シール部材5のシール性の向上と傷や早期摩耗の防止との両者を同時に満足させることができる。
【0017】
また、シール部材5の取付部5Aが所定の強度を有しているので、シール部材5を巾木本体2の下面2aに容易に取り付けることができる。すなわち、シール部材5を筒状部5Bだけで構成することも可能であり、その場合には筒状部5Bが巾木本体2の下面2aに直接固着される。ところが、筒状部5Bが柔軟性を有しているため、取り扱いにくく、下面2aに固着することが難しい。この点、この実施の形態のシール部材5においては、巾木本体2に取り付けられる取付部5Aが所定の強度を有しているので、シール部材5を巾木本体2に容易に取り付けることができる。また、取付部5Aの上面5bが巾木本体2の下面2aに押し付けられるので、取付部5Aは上下にうねることなく、下面2aに沿って水平に延びる。したがって、取付部5Aに取り付けられる筒状部5Bも水平に延びる。よって、筒状部5Bを、その全長にわたって床面Faに一様に押し付けることができる。
【0018】
次に、この発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態に関しては、上記実施の形態と異なる構成についてのみ説明することとし、上記実施の形態と同様な部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0019】
図5は、この発明の第2実施の形態の要部を示す。この実施の形態においては、突条4の下端部が巾木本体2の背面2eから前面2d側に若干離間させられている。ただし、突条4の上端部は、前面2dから背面2eに向かう方向において背面2eから突出している。したがって、巾木本体2の背面2eが壁紙Wsに押し付けられると、突条4の背面4aの上端部が壁紙Wsに押し付けられる。
【0020】
図6は、この発明の第3実施の形態を示す。この実施の形態の巾木1′においては、シール部材5の筒状部5Bが、中心角がほぼ120°である扇形状に形成されている。そして、筒状部5Bは、その一側部が室内I側を向いた状態で他側部平板部2aの下面に固着されている。したがって、筒状部5Bの円弧状をなす部分は、その上部が室外O側を向き下部が床F側を向いている。筒状部5Bの下端部は、床Fに押し付けられている。
【0021】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、突条4全体を柔軟に形成しているが、上端部だけを柔軟にしてもよい。
また、突条4を上方へ向かうにしたがって背面2eから離間するように傾斜させているが、突条4を、巾木本体2の上面2cから鉛直上方に突出する基部と、この基部の上端部から室外O側に突出する突出部とによって構成し、突出部の先端面を壁W又は壁紙Wsに押し付けるようにしてもよい。この場合には、少なくとも突出部を柔軟性をもって形成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の第1実施の形態を示す一部省略正面図である。
【図2】図1のX−X線に沿う拡大断面図である。
【図3】巾木を壁に取り付けた状態で示す図2のY円部の拡大図である。
【図4】巾木を壁に取り付けた状態で示す図2のZ円部の拡大図である。
【図5】この発明の第2実施の形態を示す図3と同様の図である。
【図6】この発明の第3実施の形態を示す図4と同様の図である。
【符号の説明】
【0023】
1 巾木
1′ 巾木
2 巾木本体
2a 下面
2b 装着溝
2c 上面
2d 前面
2e 背面
4 突条
4a 背面
5 シール部材
5A 取付部
5B 筒状部
5a 平板部
5b 上面(基準面)
5c 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状をなす巾木本体の上面にその長手方向に沿って延びる突条が形成され、この突条の少なくとも上端部が、柔軟性を有し、かつ上記巾木本体の背面から後方に突出させられていることを特徴とする巾木。
【請求項2】
上記巾木本体が硬質の樹脂によって所定の強度に形成され、上記突条が柔軟性を有する樹脂によって形成され、上記巾木本体と上記突条とが二色成形法によって一体に成形されていることを特徴とする請求項1に記載の巾木。
【請求項3】
上記突条が上方へ向かうにしたがって後方へ向かうように傾斜して形成され、上記突条の前後方向の厚さが上方へ向かうにしたがって漸次薄くなっていることを特徴とする請求項1又は2に記載の巾木。
【請求項4】
板状をなす巾木本体の下部に、上記巾木本体の下面から下方に突出し、かつ上記巾木本体の長手方向に沿って延びるシール部材が設けられた巾木において、
上記シール部材の少なくとも下部が中空の筒状部として形成され、この筒状部の少なくとも下部が柔軟性を有する樹脂によって形成されていることを特徴とする巾木。
【請求項5】
上記シール部材が、上記巾木本体の下部に取り付けられる取付部と、この取付部の下部に設けられた上記筒状部とを有し、上記取付部が所定の剛性を有していることを特徴とする請求項4に記載の巾木。
【請求項6】
上記取付部には、上記巾木本体の下面に当接する基準面が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の巾木。
【請求項7】
上記巾木本体の上面にその長手方向に沿って延びる突条が形成され、この突条の少なくとも上端部が、柔軟性を有し、かつ上記巾木本体の背面から後方に突出させられていることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の巾木。
【請求項8】
上記巾木本体が硬質の樹脂によって所定の強度に形成され、上記突条が柔軟性を有する樹脂によって形成され、上記巾木本体と上記突条とが二色成形法によって一体に成形されていることを特徴とする請求項7に記載の巾木。
【請求項9】
上記突条が上方へ向かうにしたがって後方へ向かうように傾斜して形成され、上記突条の前後方向の厚さが上方へ向かうにしたがって漸次薄くなっていることを特徴とする請求項7又は8に記載の巾木。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−265985(P2006−265985A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87681(P2005−87681)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(505109336)株式会社T・E・C (1)
【出願人】(000111535)ハッポー化学工業株式会社 (8)