説明

布の走査により得られる信号を処理する方法

本発明は、布(1)の走査により得られる信号を処理する方法に関する。布にある欠陥(4,5,6)の非常に細分化された評価を可能にしかつ確認された欠陥に基いて、適切な動作を行う方法を提供するため、まずパラメータの値に対して、布にある欠陥のカテゴリーを規定する値範囲が求められる。布にある欠陥のカテゴリーのために、続いて面にある欠陥の分布が求められ、求められたカテゴリー及び布にある欠陥の分布に応じて、布に関連して動作が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布の走査により得られる信号を処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第1100989号明細書から、例えば布の欠陥を判定する方法が公知であり、この方法により、布にある欠陥を許容するか否かが、欠陥のない布と比較して欠陥の長さ及びコントラストに基いて決定される。その際欠陥が長くコントラストが大きいほど、欠陥が望ましくないことの公算が大きい。その場合原則的に、欠陥と認識されかつ望ましくなく、従って受入れられない欠陥に対して、同じ動作が行われる。即ち布にある望ましくない欠陥の結果、可能ならばこの欠陥が除去されるか、又は布の該当する部分が低い価格で販売されるか全く販売されず、従って不良品となる。
【0003】
この公知の方法の欠点は、例えば許容される欠陥と許容されない欠陥との間に明確な限界が引かれていることである。この限界は、布の経済性及び品質のような相応する影響の重み付けに従って選ばれる。経済性を保証するためには、できるだけ僅かな欠陥が不良品となるように限界を選ぶ。品質を保証するためには、できるだけすべての欠陥を認めて除去するか、又は布を廃品に算入せねばならない。これらの矛盾する影響のため、許容される欠陥及び許容されない欠陥についての決定は、差異をつけられずかつ見出すことが困難な妥協である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って本発明の課題は、請求範囲において特徴づけられているように、布にある欠陥の非常に洗練された評価を可能にしかつ確認される欠陥に基いて適切な動作を行う方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、布の走査の際生じる。例えばコントラスト、強さ、長さ方向等のように規定されたパラメータの値が誘導される。パラメータ値に対して限界値も規定されて、布にある欠陥を求めるために利用されることによって解決される。欠陥即ちそれを特徴づけるパラメータに対して、布にある欠陥のカテゴリーを規定する値範囲が求められる。布にある欠陥の各カテゴリーに対して、布にある欠陥の分布が求められ、布にある欠陥のカテゴリー及び分布に応じて、必要な場合例えば欠陥の計数、布用駆動装置の停止警報の開始、欠陥の無視又は記号付け等のような布への動作が開始される。
【0006】
本発明により得られる利点は、欠陥及びその分布が、布の具体的に意図された使用に対してどのように有害であるかに非常に強く関係する動作をひき起こすことによって、布の製造の経済性及び布の品質を高めることが可能なことである。それにより欠陥の判定を非常に精密にかつ多様にすべての起こり得る事情に合わせることができる。
【0007】
実施例及び図面により本発明が以下に詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1には3つの軸x,y,zを持つ座標系が示され、x軸及びy軸は検査される布の広がりに関係している。例えばx軸が布に対して直角であり、y軸は布の縦方向を示すことができる。z軸は、布の例えば強さ、コントラスト、色等のような1つ又は複数のパラメータに対応せしめられている。それによりx軸及びy軸に沿ってかつz軸に沿って、強さ、コントラスト、色等の値を記入することができる。100で、x軸及びy軸が一緒に張るx−y面上にある領域が示されている。この領域100はパラメータの値のレベルを示している。それによりx−y面と領域100との間隔に対して、この間隔がパラメータの値を示すものといえる。センサによるこのような布の公知の走査では、行が形成される。ここでは若干の行がnへn+4で示されている。厳密に見ると、これらの行は、例えば、ここでは線105上にある画素103,104の中心101,102を結んでおり、このことは、線105〜112が簡単化された図示において画素の値を示していることを意味する。113で行n+4の値列又は線110が示されている。線106〜111の特別な偏位により、線106〜111に沿う測定値により認められる領域100にある隆起の形で特徴をこれらの数106〜111が示していることがわかる。この特徴は欠陥114と称することもできる。布では、行には例えば横糸又は縦糸の方向に延びている。
【0009】
図2には、図1から既知の値列113が認められ、この値列は1連の走査値115,116等から成っている。この値列はy軸の上方に記入され、このy軸に沿って例えば時間又は行程の値を記入することができる。z軸に沿って、測定された強さ、コントラスト又は色から誘導される電流、電圧等のような電気的量の値を記入することができる。値列113から、種々のパラメータの値を誘導することができる。このような値として、特に信号部分118の長さ又は持続時間117、又は値列113の偏位に比例するコントラスト、強さ等のように走査値から誘導されるパラメータ119が考えられる。パラメータ117及び119に対して、布にある欠陥を求めるのに役立つ限界値120,121を規定される。ここで限界値120はパラメータ119の直接測定される値に関係し、限界値121は、例えば所定の限界値121により監視される信号部分118の長さ又は持続時間のように値列113から誘導されるパラメータ117に関係している。
【0010】
図3には、例えば織機上で製造する際又は布展示、仕上げ等の際1つの巻き体から他の巻き体への巻き換えの際の場合のように、布帯として形成されてその縦方向に動かされる布1の一部が示されている。布1の前又は後に走査装置2が設けられ、公知のように、通過する布1を例えば光学的に走査する。布1のために、例えば駆動されるローラ又はローラ対から成る駆動装置3が設けられている。布1上に、例えば欠陥群4、周期的に現われる欠陥5a,5b,5c,5d及び面状欠陥6のような起こり得る欠陥の種々の例が認められる。布に沿って、例えば行程符号器を持つ回転車又は光学的に動作する装置から成る長さ測定器7も設けられている。しかし長さ測定器7は走査装置2に統合することもできる。
【0011】
走査装置2からのアナログ又はディジタル信号を処理するため、種々のメモリ8,9、11,カウンタ10,計算機12,13,14,入−出力装置15、及び操作器16が設けられ、互いにかつ他の素子と接続線17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27及び28を介して接続されている。
【0012】
本発明の作用は次の通りである。なるべく布1の走査を開始する前に、欠陥とみなされるもの及び欠陥とみなされないものを規定せねばならない。即ちまず欠陥を特徴づけるパラメータを選び、選ばれたパラメータの限界値を規定せねばならず、布にある欠陥がこれらの限界値の超過を示す。更に限界値を超過するパラメータの値に対して、欠陥のカテゴリーを規定する値範囲も規定せねばならない。それから欠陥の許容の分布、及び所定値を超過した時開始されねばならない動作についての指示も規定せねばならない。これは、入−出力装置15を介して手動入力により行うことができる。しかしその一部は固定的に規定することもでき、即ちこれらの値はメモリに既に記憶されている。
【0013】
駆動装置3により動かされる布1が走査装置2のそばを通って引張られる間に、例えば列n,n+1,n+2,n+3,n+4等(図1)に従って布が列状に走査され、各列に対して、例えば列n+4に対する値列113のように、各列に対して1つの値列が生じる。これらの値列115,116等は、偏位あるいは例えば電流又は電圧の値として測定可能な値を持っている。しかしこれらの走査値115,116等は、この環境では、例えば明るさ、コントラスト及び強さのような物理的量でもある。これらの走査値は、布1の走査の際どんな機器又はどんな測定原理が使用されるかに関係している。これらの量、及びこれから誘導される例えば信号部分118の長さ又は持続時間のような量は、パラメータと称され、布1にある欠陥4,5,6(図3)は、このようなパラメータ及びその値により特徴づけられる。従って接続線17を介してメモリ8へ走査値115,116等が供給される。メモリ8は例えばFIFOメモリであり、順次に得られる値から、再び図1に示すように布1の一部の画像を合成し、この画像中に欠陥もそのパラメータの値により現われる。メモリ9には、限界値、及び後で更に精確に記述される欠陥カテゴリーの群に属する特定の欠陥カテゴリーの欠陥を加算するのに役立つすべての情報が記憶されている。計算機12は、接続線18を介して現在のパラメータ値を受け、接続線19を介して現在のパラメータ値と比較される限界値を受ける。計算機に存在するパラメータと所定の限界値との比較により、計算機は欠陥をカテゴリーに関係づけ、接続線21を介して、求められたカテゴリーを示す適当な情報をカウンタ10へ供給することができる。ここで各カテゴリーにある欠陥は、利用者により規定される布1の基準長について計数されて、欠陥群が存在するか否かを確認する。走査される長さは、接続線23を介して長さ測定器7から計算機12及び13へ供給される。計算機13は、例えば各欠陥カテゴリーに対して、単位長さ当たり欠陥の数を計算し、接続線24を介してこの数を計算機14へ供給する。計算機14は、接続線25を介して、布1の単位長さ当たり計算される許容数の欠陥を各カテゴリーに対して記憶しているメモリ11から、所定値を受ける。この許容数は、入−出力装置15から接続線29を介してメモリ11へ供給され、そこに記憶される。接続線24からの現在の数及び接続線25からの所定の数から、計算機14が、操作器16に接続線26を介して動作を行うよう指示すべきか否か、又は接続線28を介して入−出力装置15へ情報を与えるべきか否かを決定する。どんな種類の情報及び動作が可能であるか、及びどんなカテゴリーを規定すべきかが、以下に説明される。
【0014】
従って本発明によれば、入−出力装置15を介して、存在する布1の種類に関係しかつ固有に規定される欠陥又は欠陥カテゴリーの種類を規定することが可能である。布に対して例えば次の欠陥カテゴリーが考えられる。
短い継糸欠陥
中位の縦糸欠陥
長い縦糸欠陥
短い横糸欠陥
中位の横糸欠陥
長い横糸欠陥
横糸締まり欠陥
縁欠陥
部分横糸欠陥
小さい面欠陥
中位の面欠陥
大きい面欠陥
しかし利用者は自身でも欠陥カテゴリーを規定し、パラメータの適当な値範囲を入力することもできる。
【0015】
編物に対しては次の欠陥カテゴリーが考えられる。
光、
薄い個所、
厚い個所、
汚れ。
これらすべての欠陥に対して、例えば次のようにカテゴリーを規定するパラメータの値が当てはまる。
場所、
寸法、
平均の明るさ。強さ又はコントラスト。
これらも同様に入−出力装置15を介して入力され、選ばれてカテゴリーに対応せしめられる。
【0016】
メモリ8に一時的に記憶されているパラメータは、計算機12において、カテゴリーを規定するメモリ9からのパラメータ用規定値と比較され、こうしてカテゴリーに割当てられる。例えばパラメータとして横糸方向における欠陥の長さを規定することができ、規定値として0.5cm及び10cmが適用される。さて横糸欠陥の測定された長さが10cmより大きいと、この欠陥は“長い横糸欠陥”のカテゴリーに入り、その長さが3〜10cmであると、“中位の横糸欠陥”のカテゴリーに入り、その長さが0.5〜3cmであると、“短い横糸欠陥”のカテゴリーに入る。
【0017】
欠陥の特性により決定される第1の種類の上記カテゴリーに加えて、布1における欠陥の分布を特徴づける別の種類のカテゴリーも規定される。これら別の種類のカテゴリーとして次のものがあげられる。
見分けることができる規則なしに現われる個別欠陥、又は最初に現われてから既に使用者に示したい欠陥、
等間隔で現われる欠陥、及び
それ自体では許容できると思われる個別欠陥から成る欠陥の局部的に限られた集積から成る欠陥群。そのため入−出力装置15を介して、例えば周期的欠陥に対して最小欠陥数が入力され、この欠陥数から、規則的に現われる欠陥が周期的なものとみなされる。
【0018】
欠陥群に対して、入−出力装置15を介して欠陥数が入力されるようにする。この場合欠陥数は、布1の基準長さ当り最小数に関係し、この最小数から欠陥が欠陥群とみなされる。カテゴリー及び分布を規定するために、個々のパラメータの値範囲を個々に選ぶことが可能である。
【0019】
値範囲により前もって固定的に入力される第1の種類の欠陥カテゴリーが、適当な入力により決定された後、図による装置は、欠陥の求められた分布により決定される別の種類のカテゴリーを求める。両方のカテゴリーから装置は、実行すべき動作を決定する。そのため計算機1において、欠陥の特性及び欠陥の分布が所定のプログラムに従って処理され、それから動作が決定される。動作の可能な例として次のものがあげられる。
計数する、
警報を発生する、
駆動装置を停止する、
無視する、
記号付けする。
【0020】
計算機14は、数えられた欠陥を、接続線28を介して入−出力装置15へ表示のため伝送することができる。これは警報にも当てはまる。駆動装置3を停止する場合、適当な信号が接続線26を介して操作器16へ、かつ接続線27を介して駆動装置3へ与えられる。
【0021】
利用者は、パラメータのために、入−出力装置15を介して、考えられる布に対して第1の種類の重要と思われるカテゴリーを規定する値を入力することができる。しかしパラメータの入力を直接行う代わりに、例えば接続線20´を介して測定値を入−出力装置15及びメモリ9へ与えて、入−出力装置15を介してこれらの測定値をカテゴリーに対応させることによって、走査装置2から信号の誘導によって行うことができる。
【0022】
図に示すメモリ、計算機等のような素子は、データ処理プログラムの機能ブロックとしてまとめることができる。しかしこれらの素子は、信号処理回路の個々のモジュールとして構成することもできる。
【0023】
上述した方法は、以下に再現される表に示すことができる。この例では、値範囲により規定されるパラメータのみが述べられている。しかし別の値又は範囲により規定される別のパラメータもあげることができる。欠陥カテゴリーは、常になるべく複数のパラメータと各パラメータの値範囲との組合せにより規定されている。
【0024】

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 方法の一部を示す。
【図2】 方法の一部を示す。
【図3】 方法の実施に適した装置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布(1)の走査により得られる信号を処理する方法において、信号から、予め選択されたパラメータ(117,119)が誘導されて、パラメータの値に対して、布にある欠陥の確認のために用いられる限界値(120,121)が規定され、パラメータの値に対して、布にある欠陥のカテゴリーを定義する値範囲が求められ、布にある欠陥のカテゴリーのために、布にある欠陥の分布が求められ、布にある欠陥の求められたカテゴリー及び分布に応じて、布に関連した動作が実行されることを特徴とする方法。
【請求項2】
布への動作として、欠陥の計数、欠陥の無視、布用駆動装置の停止、欠陥の記号付け及び警報の開始を含む群から、動作が選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
布にある欠陥のカテゴリーとして、縦糸欠陥、横糸欠陥、面欠陥、縁欠陥を含む群から、カテゴリーが求められることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
パラメータとして、少なくとも長さ、幅、コントラスト、強さ、直径、方向等を含む群から、パラメータが誘導されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−522349(P2007−522349A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538626(P2006−538626)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【国際出願番号】PCT/CH2004/000613
【国際公開番号】WO2005/035862
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(503169552)ウステル・テヒノロジーズ・アクチエンゲゼルシヤフト (37)
【Fターム(参考)】