説明

布帛の親水化処理方法

【課題】 布帛を親水化する方法、特にカチオン界面活性剤を基剤とする柔軟仕上げ剤処理に起因する親水性の低下を防止して、布帛を親水化させるための布帛の親水化処理方法及び親水化処理剤の提供。
【解決手段】 (a)カチオン性基を有する構成単位及び(b)一般式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物を、水性媒体を通じて布帛に処理する布帛の親水化処理方法、並びにこの高分子化合物を含有する親水化処理剤、この高分子化合物を含有する洗浄剤、この高分子化合物を含有する柔軟仕上げ剤。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛を親水化させるための布帛の親水化処理方法及び親水化処理剤に関する。
【背景技術】
【0002】
柔軟仕上げ剤は、洗濯の際のすすぎ工程において、タオルや衣類にふっくらした心地よい柔らかさや優しい肌触り感などの風合い及び帯電防止効果を付与するために処理される。その反面、一般に柔軟基剤が疎水性であるために本来の親水性を低下させてしまう欠点がある。
【0003】
このような欠点を改善するために特許文献1〜7には特殊なカチオン界面活性剤を基剤とする親水性を低下させない柔軟仕上げ剤が開示されている。
【特許文献1】特開昭55−66546号公報
【特許文献2】特開昭56−92251号公報
【特許文献3】特開昭59−30965号公報
【特許文献4】特開昭63−69894号公報
【特許文献5】特開平1−229877号公報
【特許文献6】特開平4−333667号公報
【特許文献7】特開平6−228874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、布帛を親水化する方法、特にカチオン界面活性剤を基剤とする柔軟仕上げ剤処理に起因する親水性の低下を防止して、布帛を親水化させるための布帛の親水化処理方法及び親水化処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)カチオン性基を有する構成単位(以下構成単位(a)という)及び(b)一般式(1)で表される構成単位(以下構成単位(b)という)を有する高分子化合物を、水性媒体を通じて布帛に処理する布帛の親水化処理方法、並びにこの高分子化合物を含有する親水化処理剤、この高分子化合物を含有する洗浄剤、この高分子化合物を含有する柔軟仕上げ剤を提供する。
【0006】
【化3】

【発明の効果】
【0007】
本発明の親水化処理方法及び親水化処理剤により、カチオン界面活性剤を基剤とする柔軟仕上げ剤処理に起因する布帛の親水性の低下を防止することができ、カチオン界面活性剤を基剤とする柔軟仕上げ剤を処理した場合にも布帛の親水性を低下させない効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
[高分子化合物]
本発明の高分子化合物は、構成単位(a)及び構成単位(b)を有する。
【0009】
構成単位(a)のカチオン性基としては、4級アンモニウム基、アミノ基等が挙げられる。構成単位(a)としては、一般式(2−1)、一般式(2−2)、一般式(2−3)又は一般式(2−4)で表される少なくとも1種が好ましい。
【0010】
【化4】

【0011】
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示し、Z-は陰イオンを示す。R3は水素原子、水酸基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
一般式(2−1)〜一般式(2−4)において、R1、R2及びR3で示される水酸基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基は直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert-ブチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基等の水酸基を有してもよい炭素数1〜4のアルキル基又はシクロヘキシル基が好ましい。また、炭素数7〜10のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が好ましい。これらのうち、R1としては、メチル基、エチル基が、R2としては、水素原子、メチル基、エチル基が、R3としては、水素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0012】
-で示される陰イオンとしては、Cl-、Br-、I-等のハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオン、硫酸イオン、硝酸イオン、メタスルホン酸イオン等が挙げられ、ハロゲンイオン、炭素数1〜3のアルキル硫酸エステルイオンが好ましく、ハロゲンイオンがより好ましい。
【0013】
本発明の高分子化合物は、構成単位(a)及び構成単位(b)以外の構成単位(以下構成単位(c)という)を有していてもよい。
【0014】
本発明の高分子化合物を形成する全構成単位中の構成単位(a)の割合は、10〜90モル%が好ましく、25〜80モル%がより好ましい。構成単位(b)の割合は5〜60モル%が好ましく、10〜50モル%がより好ましい。構成単位(c)の割合は0〜80モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましい。
【0015】
本発明の高分子化合物の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリエチレングリコール換算の重量平均分子量で、500〜200,000が好ましく、800〜100,000が更に好ましい。
【0016】
本発明の高分子化合物は、例えば以下に示す方法により製造することができる。
即ち、溶媒中で、ラジカル重合開始剤の存在下、一般式(3−1)又は(3−2)で表される化合物の中から選ばれる少なくとも1種(以下モノマー(a)という)と、二酸化イオウ又は亜硫酸(以下モノマー(b)という)、更に必要により他のモノマー(以下モノマー(c)という)とを共重合させることにより得ることができる。また、一般式(3−1)で表される化合物と、モノマー(b)、必要によりモノマー(c)を共重合させた後に、酸又は4級化剤を反応させることによっても得ることができる。
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、R1、R2、R3及びZ-は前記の意味を示す。)
一般式(3−1)で表される化合物としては、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン等が好ましく、一般式(3−2)で表される化合物としては、ジアリルアミン又はジアリルメチルアミンを、酸又は4級化剤と反応させて得られる酸付加塩又は第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0019】
酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、酢酸、コハク酸、クエン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、グリコール酸等の有機酸が挙げられ、無機酸、特に塩酸が好ましい。4級化剤としては、アルキル(炭素数1〜4)クロライド、アルキル(炭素数1〜4)ブロミド、アルキル(炭素数1〜4)ヨージド、アルキル(炭素数1〜2)サルフェート等が挙げられ、メチルクロライド、メチルサルフェート等が好ましい。
【0020】
本発明に用いられるモノマー(c)としては、アクリル酸、メタクリル酸、4−ペンテン酸、5−ヘキセン酸、6−ヘプテン酸、7−オクテン酸、8−ノネン酸、9−デセン酸、10−ウンデセン酸、11−ドデセン酸、マレイン酸、イタコン酸、スチレンカルボン酸等のカルボキシル基を有する炭素数3〜22のビニル化合物又はそれらの塩;アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するビニル化合物又はそれらの塩;アリルアルコール等の不飽和アルコールなどが挙げられる。これらのモノマー(c)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。 モノマー(c)の中では一般式(4)で表されるカルボキシル基を有するビニル化合物、一般式(5)で表されるスルホン酸基を有するビニル化合物、マレイン酸又はそれらの塩が好ましく、マレイン酸又はその塩が最も好ましい。
【0021】
【化6】

【0022】
(式中、R4は水素原子又はメチル基、R5は炭素数1〜10の2価の炭化水素基、n1は0又は1、X1は水素原子又は陽イオン基を示す。)
【0023】
【化7】

【0024】
(式中、R6は水素原子又はメチル基、R7はCONH基及び/又はCOO基を含んでもよい炭素数1〜10の2価の炭化水素基、n2は0又は1、X2は水素原子又は陽イオン基を示す。)
上記酸の塩を構成する塩基としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2等)、有機アミン化合物(アンモニア、トリエタノールアミン等)が挙げられる。
【0025】
上記以外の不飽和基を有するモノマーも本発明の性能を妨げない範囲で共重合してもよい。
【0026】
本発明の高分子化合物は、上記モノマー(a)、モノマー(b)、更に必要によりモノマー(c)が、ランダム結合したものであっても、ブロック結合したものであってもよい。
【0027】
モノマー(a)、(b)、及び(c)は、モノマー全量に対し、モノマー(a)10〜90モル%、更に25〜80モル%、モノマー(b)5〜60モル%、更に10〜50モル%、モノマー(c)0〜80モル%、更に20〜50モル%の割合で反応させることが好ましい。
【0028】
本発明の高分子化合物の製造に用いられるラジカル重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル等の過酸化物;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、モノマー全量に対し、好ましくは0.1〜10モル%、より好ましくは0.5〜7モル%の割合で添加する。
【0029】
重合反応は、極性溶媒中で常法に従って行われる。重合に用いられる極性溶媒としては、水、アルコール等が挙げられる。反応温度は0〜100℃が好ましく、25〜75℃が更に好ましい。
【0030】
[布帛の親水化処理方法及び親水化処理剤]
本発明の布帛の親水化処理方法は、本発明に係わる高分子化合物を、水性媒体を通じて布帛に処理する方法である。水性媒体としては、水、及びエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの水溶性溶媒を挙げることができ、混合溶液の場合には水を50重量%以上、好適には80重量%以上である。本発明では水を80重量%以上含有する水溶性媒体がより好ましい。
【0031】
処理液中の本発明に係わる高分子化合物の濃度は特に限定されないが、10ppm〜1000ppmが好ましく、1〜10ppmがより好ましい。また、本発明の高分子化合物は、布帛1kgに対して、0.01〜5g使用することが好ましく、0.05〜1g使用することがより好ましく、0.05〜0.5g使用することが更に好ましい。
【0032】
本発明に係わる高分子化合物は、柔軟仕上げ剤処理に起因する親水性の低下を防止する観点から、カチオン界面活性剤を含む柔軟仕上げ剤で処理する前、同時/又は後に布帛に処理することが好ましく、柔軟仕上げ剤で処理する前に布帛に処理することがより好ましい。
【0033】
本発明に係わる高分子化合物は、衣料用洗剤又は柔軟仕上げ剤と同時に用いて布帛に処理することが好ましく、衣料用洗剤又は柔軟仕上げ剤に配合して用いてもよい。
【0034】
本発明に係わる高分子化合物を布帛へ処理する方法は特に限定されず、洗濯機での洗濯中に本発明の高分子化合物と衣料用洗剤を添加したり、あるいは手洗い時に本発明に係わる高分子化合物と衣料用洗剤を含む処理液中に布帛を浸漬して、洗浄を行う方法等が挙げられる。
【0035】
衣料用洗剤としては、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤を配合するものが用いられる。
【0036】
アニオン界面活性剤としては、例えば、炭素数8〜15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数8〜16のアルキル硫酸エステル塩、平均付加モル数が1〜4、アルキル基の炭素数8〜16のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。非イオン界面活性剤としては、平均付加モル数が4〜20、アルキル基の炭素数が8〜14のポリオキシエチレン(及び/又はポリオキシプロピレン)アルキルエーテル等が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、エステル基又はアミド基で分断されていてもよい炭素数12〜22のアルキル基を1つまたは2つ有する4級アンモニウム塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン型又はカルボベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0037】
これらの中でもアニオン界面活性剤、特にアルキルベンゼンスルホン酸塩が洗浄力向上の点で好ましい。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、アルカリ金属、アンモニウム、アルカノールアミン等が挙げられる。
【0038】
衣料用洗剤中の界面活性剤の含有量は、良好な洗浄力を得る観点から、0.1〜40重量%が好ましく、5〜35重量%がより好ましく、10〜30重量%が更に好ましい。
【0039】
衣料用洗剤には、ポリカルボン酸系化合物、結晶性アルミノ珪酸塩、キレート剤等の2価金属イオン捕捉剤、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ剤成分、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼ等の酵素成分、過炭酸ナトリウム、過硼酸ナトリウム等の漂白剤、珪酸マグネシウム等の過酸化物の安定化剤、ポレエチレングリコール、ポリビニルピロリドン等の再汚染防止剤、蛍光染料、色素、ケーキング防止剤、可溶化剤、香料等を必要に応じて配合することができる。
【0040】
柔軟仕上げ剤としては、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤を配合するものが用いられる。カチオン界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等が、非イオン界面活性剤としては、高級アルコールのエチレンオキシド(以下「EO」という)付加物、若しくはEO/プロピレンオキシド(以下「PO」という)付加物、脂肪酸アルカノールアミド、アルキル(ポリ)グリコシド等、好ましくは炭素数が10〜16のアルコールのEO平均1〜10モル付加物が、両性界面活性剤としては、カルボベタイン型、スルホベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。柔軟仕上げ剤には、シリコーン系化合物等を必要に応じて配合することができる。
【0041】
本発明の方法により処理される布帛としては特に限定されず、疎水性繊維、親水性繊維のいずれでも良い。疎水性繊維としては、例えば、タンパク質系繊維(牛乳タンパクガゼイン繊維、プロミックスなど)、ポリアミド系繊維(ナイロンなど)、ポリエステル系繊維(ポリエステルなど)、ポリアクリロニトリル系繊維(アクリルなど)、ポリビニルアルコール系繊維(ビニロンなど)、ポリ塩化ビニル系繊維(ポリ塩化ビニルなど)、ポリ塩化ビニリデン系繊維(ビニリデンなど)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)、ポリウレタン系繊維(ポリウレタンなど)、ポリ塩化ビニル/ポリビニルアルコール共重合系繊維(ポリクレラールなど)、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維(ベンゾエートなど)、ポリフルオロエチレン系繊維(ポリテトラフルオロエチレンなど)、ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、シリコーンカーバイト繊維、岩石繊維(ロックファーイバー)、鉱滓繊維(スラッグファイバー)、金属繊維(金糸、銀糸、スチール繊維)等が例示される。親水性繊維としては、例えば、種子毛繊維(綿、もめん、カポックなど)、靭皮繊維(麻、亜麻、苧麻、大麻、黄麻など)、葉脈繊維(マニラ麻、サイザル麻など)、やし繊維、いぐさ、わら、獣毛繊維(羊毛、モヘア、カシミヤ、らくだ毛、アルパカ、ビキュナ、アンゴラなど)、絹繊維(家蚕絹、野蚕絹)、羽毛、セルロース系繊維(レーヨン、ポリノジック、キュプラ、アセテートなど)等が例示される。
【0042】
これらの繊維の中では、ナイロン、ポリエステル、アクリル、綿あるいはこれらの混紡繊維が好ましい。
【0043】
[本発明の高分子化合物を含有する洗浄剤]
本発明の洗浄剤は、本発明の高分子化合物を含有する。本発明の洗浄剤中の本発明の高分子化合物の含有量は、0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、1.0〜5重量%がさらに好ましい。
【0044】
本発明の洗浄剤は本発明の高分子化合物以外に、界面活性剤、水不溶性無機物、水溶性ポリマー、水溶性塩類等を含有することができる。
【0045】
界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、カチオン界面活性剤から選ばれる1種以上が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルコールのエトキシル化物の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩、痾−オレフィンスルホン酸塩、痾−スルホ脂肪酸塩若しくはそのエステル塩、又は脂肪酸塩が挙げられる。特に、アルキル鎖の炭素数が10〜18、より好ましくは12〜14の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数が10〜20の痾−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩が好ましい。また、対イオンとしては、洗浄力向上の点で、アルカリ金属イオンが好適である。特に、溶解速度向上の観点から、カリウムイオンが好ましく、全対イオン中カリウムイオンは5重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、40重量%以上が特に好ましい。
【0046】
非イオン界面活性剤としては、高級アルコールのエチレンオキシド(以下、EOという)付加物、若しくはEO/プロピレンオキシド付加物、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。特に炭素数が10〜16のアルコールのEO1〜10モル付加物が皮脂汚れの除去、耐硬水性、生分解性の点、及び直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩との相性の点で好ましい。カチオン界面活性剤として、長鎖アルキルトリメチルアンモニウム塩等が、両性界面活性剤として、カルボベタイン型、スルホベタイン型活性剤等が挙げられる。
【0047】
水不溶性無機物としては、一次粒子の平均粒径が0.1〜20・mのものが好ましく、例えば、結晶性又は非晶質のアルミノシリケート、二酸化ケイ素、水和ケイ酸化合物、ゼオライト、パーライト、ベントナイト等の粘土化合物等が挙げられる。中でも金属イオン封鎖能及び界面活性剤の吸油能の点で結晶性アルミノシリケートが好ましい。
【0048】
水溶性ポリマーとしては、カルボン酸系ポリマー、カルボキシメチルセルロース、可溶性澱粉、糖類等が挙げられる。中でも金属イオン封鎖能、固体汚れ・粒子汚れの分散能及び再汚染防止能の点で、分子量が数千〜10万のカルボン酸系ポリマーが好ましい。特に、アクリル酸−マレイン酸コポリマーの塩とポリアクリル酸塩が好ましい。
【0049】
水溶性塩類としては、炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、亜硫酸塩、硫酸水素塩、塩酸塩、リン酸塩等の水溶性無機塩類や、クエン酸塩やフマル酸塩等の水溶性有機酸塩が挙げられる。該水溶性塩類を配合することは、該水溶性塩類と水との反応で生じた水和熱、溶解熱により、洗剤粒子から発生する気泡を熱膨張させ、それにより粒子の崩壊性を促進できる点でより好ましい。
【0050】
本発明の洗浄剤には、その他に酵素、漂白剤(過炭酸塩、過ホウ酸塩、漂白活性化剤等)、再汚染防止剤(カルボキシメチルセルロース等)、柔軟化剤、蛍光染料、抑泡剤(シリコーン等)、香料等を適宜含有させることができる。酵素としては、プロテアーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が挙げられ、特にプロテアーゼとセルラーゼの組合せが好ましい。
【0051】
[本発明の高分子化合物を含有する柔軟仕上げ剤]
本発明の柔軟仕上げ剤は、本発明の高分子化合物を含有する。本発明の柔軟仕上げ剤中の本発明の高分子化合物の含有量は、0.1〜20重量%が好ましく、0.5〜10重量%がより好ましく、1.0〜5重量%がさらに好ましい。
【0052】
本発明の柔軟仕上げ剤は、本発明の高分子化合物以外に、長鎖アルキル基を有する4級アンモニウム塩や3級アミンの酸塩等の柔軟基剤を含有する。本発明の柔軟仕上げ剤中の柔軟基剤の含有量は、3〜50重量%が好ましく、3〜40重量%がより好ましく、5〜35重量%が特に好ましい。
【0053】
また、本発明の柔軟仕上げ剤は、貯蔵安定性の点から、さらに非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。非イオン界面活性剤としては、炭素数8〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。本発明の柔軟仕上げ剤中の非イオン界面活性剤の含有量は、安定性の点から0.5〜10重量%、特に1〜8重量%が好ましい。
【0054】
本発明の柔軟仕上げ剤は繊維製品の風合いを向上させる目的でアニオン界面活性剤、中でも脂肪酸又はその塩類を含有することが好ましく、具体的にはカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、あるいはこれらの混合物が挙げられる。本発明の柔軟仕上げ剤中の、アニオン界面活性剤の含有量は、0.01〜5重量%、特に0.5〜3重量%が好ましい。
【0055】
本発明の柔軟仕上げ剤は、貯蔵安定性の点から、炭素数8〜22の飽和又は不飽和脂肪酸と多価アルコールとのエステル化合物を、組成物中0.1〜10重量%、特に0.5〜5重量%含有することが好ましい。エステル化合物としては、トリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリエステル、ソルビタンエステルが好ましい。
【0056】
本発明の柔軟仕上げ剤は、無機塩、例えば塩化カルシウム等を0〜1000ppm、好ましくは10〜500ppm含有することが貯蔵安定性の点で望ましい。但し、脂肪酸塩類等の界面活性剤にはナトリウム塩やカリウム塩が含まれているが、このような界面活性剤の使用によって組成物に混入する無機塩は上記制限を受けるものではない。
【0057】
さらに本発明の柔軟仕上げ剤は、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール及びポリオキシエチレンフェニルエーテルから選ばれる溶媒成分を含有することが貯蔵安定性の点から好ましい。これら溶媒成分は、柔軟仕上げ剤中に0〜20重量%、特に0.5〜10重量%含有することが好ましい。
【0058】
本発明の柔軟仕上げ剤には、通常柔軟仕上げ剤に配合されるシリコーン、香料(特に好ましくは特開平8−11387号公報記載の成分(c)及び(d)にて示された香気成分の組み合わせ)あるいは色素等の成分を配合しても差し支えない。
【実施例】
【0059】
以下の例中の%は、特記しない限り重量%である。
【0060】
実施例1〜4及び比較例1〜4
本発明に係わる高分子化合物として下記ポリマーA〜D、及び比較のポリマーとして下記ポリマーE〜Gを用い、下記方法で布帛の親水化処理を行い、親水化を評価した。また、処理前の布帛、ポリマーを添加しないで処理した布帛についても同様に親水化を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
<本発明ポリマー>
ポリマーA:PAS92(日東紡績績(株)製)、下記構造式(6)で表される構造を有するジアリルアミン塩酸塩/SO2共重合体、構成比(50.0/50.0(mol%))重量平均分子量5.0×103
【0062】
【化8】

【0063】
ポリマーB:PAS−A−5(日東紡績(株)製)、下記構造式(7)で表される構造を有するジアリルジメチルアミン塩酸塩(DADMAC)/SO2共重合体、構成比(50.0/50.0(mol%))重量平均分子量4.0×103
【0064】
【化9】

【0065】
ポリマーC:下記構造式(8)で表される構造を有するジアリルジメチルアミン塩酸塩(DADMAC)/SO2/マレイン酸(MA)共重合体、構成比(50.0/25.0/25.0(mol%))、平均分子量2.3×104
【0066】
【化10】

【0067】
ポリマーD:上記構造式(8)で表される構造を有するジアリルジメチルアミン塩酸塩(DADMAC)/SO2/マレイン酸(MA)共重合体、構成比(50.0/25.0/25.0(mol%))、平均分子量4.0×105
<比較ポリマー>
ポリマーE:マーコート3333(ナルコジャパン製)、下記構造式(9)で表される構造を有するDADMAC/アクリル酸(AA)/アクリルアミド(AAm)共重合体、重量平均分子量1.6×106
【0068】
【化11】

【0069】
ポリマーF:マーコート3331(ナルコジャパン製)、上記構造式(9)で表される構造を有するDADMAC/AA/AAm共重合体、重量平均分子量1.6×106
ポリマーG:マーコート370(ナルコジャパン製)、下記構造式(10)で表される構造を有するDADMAC/AA共重合体、重量平均分子量4.5×105
【0070】
【化12】

【0071】
<布帛の親水化処理及び親水化の評価方法>
(1)各種試験布の親水化と柔軟仕上げ剤処理布の作製
全自動洗濯機(JW-Z20A Haier)の設定を給水量15L(水位‘中’)、標準コース(洗い15分、ためすすぎ2回)に合わせ、20℃に温度調整した水道水を使用し、市販の衣料用粉末洗剤(花王(株)製ニュービーズ)を洗剤濃度0.0833質量%と各ポリマーA〜Gを処理浴中の濃度8.33mg/Lになるように溶解させた。そこに、40×40cm角の各種試験布(アクリルニット、ナイロンニット、T/Cニット:全て色染社(株)よりの購入品)を各3枚ずつ入れ標準コースで処理した。比較例4は、ポリマー無添加で処理した。途中のためすすぎ2回目の最初に市販柔軟仕上げ剤(花王(株)製ハミング1/3)を濃度0.5ml/Lの割合で投入した。上記処理を5回繰り返した後、自然乾燥させ、各ポリマー処理によるサンプル布を得た。
(2)親水化の評価方法
上記のポリマー処理を行った試験布(アクリルニット、ナイロンニット、T/Cニット)を6×6cm角に裁断後、水滴を滴下し、10秒静値後及び40秒静値後の接触角を接触角計(協和界面科学(株)CA−X150型)を用いて測定した。
【0072】
【表1】

【0073】
本発明のポリマーを用いた実施例1〜4はポリマー無およびポリマーE、F、Gを用いた比較例より接触角が低く、特にポリマーCを用いた実施例3は全ての測定条件において水滴が存在しない0°になっているので充分な親水化処理がされていることが分かる。
【0074】
洗剤の処方例1
洗剤ベースで、ポリマーC:1%、直鎖アルキル(炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸カリウム10%、α−オレフィンスルホン酸カリウム(炭素数14〜18)10%、ノニオン(アルキル基の炭素数が12〜14でエチレンオキシド平均付加モル数が7であるポリオキシエチレンアルキルエーテル)7%、ポリエチレングリコール(平均分子量8500)1%、ゼオライト15%、アクリル酸−マレイン酸コポリマー(アクリル酸−マレイン酸コポリマーのナトリウム塩(70モル%中和)であり、モノマー比はアクリル酸/マレイン酸=3/7(モル比)、重量平均分子量70000)0.5%、脂肪酸石鹸(パーム核油由来)5.5%、1号ケイ酸塩4%、炭酸カリウム8%、硫酸ナトリウム10%、亜硫酸ナトリウム1%、及び蛍光染料(チノパールCBS−X(チバガイギー社製))0.1%からなる、水スラリー(固形分50%)を調製し、噴霧乾燥して噴霧乾燥組成物を得た。これに洗剤ベースで、炭酸ナトリウム12%をリボンミキサーに投入して混合を行った。得られた混合物を前押し出し式2軸型押し出し造粒機(ペレッターダブル:不二パウダル(株)製)で直径が10mmの円柱状に押し出し成形して圧密化した。得られたペレット状物を、洗剤ベースで5%のゼオライトとともにフラッシュミル(不二パウダル(株)製)で粉砕造粒して表面被覆を行った。2000μmの篩を通過させた後、リボンミキサーに移し、洗剤ベースで、ゼオライト6%、酵素(セルラーゼK(特開昭63−264699号公報記載)、リポラーゼ100T(ノボ社製)を3:1の質量比で混合したもの)1%、香料0.4%を加え、混合して、水分2.5%の洗剤1を得た。
【0075】
洗剤の処方例2
固形分48%の水スラリーを、熱風温度250℃で噴霧乾燥し、洗剤ベースで、ポリマーC:1%、ポリアクリル酸ナトリウム(重量平均分子量10000)7%、炭酸ナトリウム20%、硫酸ナトリウム10%、蛍光染料(洗剤1と同じもの)0.1%、ゼオライト18%、水0.5%のベース顆粒を得た。次に、レディゲミキサー(松阪技研(株)製、容量20L、ジャケット付き)にベース顆粒を投入し、主軸(150rpm)の攪拌下、ノニオン(洗剤1と同じもの)9%、直鎖アルキル(炭素数10〜13)ベンゼンスルホン酸ナトリウム10%、脂肪酸石鹸(パーム核油由来)2%、ポリエチレングリコール(洗剤1と同じもの)1%、水2%の混合液を、3分間で投入し、その後5分間攪拌を行った。更に、このミキサーに、洗剤ベースで8%の結晶性シリケート〔粉末SKS−6、ヘキストトクヤマ(株)製〕、10%のゼオライトを投入し、表面被覆を行った。2000μmの篩を通過させた後、リボンミキサーに移し、酵素(洗剤1と同じもの)1%、香料0.4%を加え、混合して、洗剤2を得た。
【0076】
洗剤の処方例3
ポリマーC:1%、直鎖アルキル(炭素数12〜14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム:10%、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム:8%、ポリオキシエチレン(平均付加モル数3)フェニルエーテル:5%、無水硫酸ナトリウム:2%、ポリオキシエチレン(平均付加モル数8)ラウリルエーテル:15%、ラウリルジメチルアミンオキシド:2%、エタノール:5%、モノエタノールアミン:5%、ポリアクリル酸Na:1%、酵素(エバラーゼ16.0L−EX(プロテアーゼ、ノボザイムズ社製)):1%、香料:0.4%、残部:水、を混合して洗剤3を得た。
【0077】
柔軟剤の処方例1
ポリマーC:1%、2−ジメチルアミノエタノール脂肪酸エステル:14%、ステアリル硫酸ナトリウム:6%、ステアリン酸:0.5%、炭素数12の飽和アルコールにエチレンオキシドを平均20モル付加させたもの:3%、エキセル150〔ステアリン酸モノ、ジ、トリグリセリド混合物(モノ:ジ:トリ=60:35:5)、花王(株)製〕:0.5%、塩化ナトリウム:0.005%、エチレングリコール:1%、シリコーン(ジーイー東芝シリコーン製、TSA730):0.1%、香料:0.2%、残部:水、を混合し、48%水酸化ナトリウム水溶液を用い20℃のpHが7になるように調整し、柔軟剤1を得た。
【0078】
本発明のポリマーCを配合した洗剤1〜3および柔軟剤1で処理した布帛の水に対する接触角は水滴が存在しない0度になった。本発明のポリマーC無しの比較洗剤1〜3および柔軟剤1で処理した布帛の水に対する接触角と比較して十分に親水化処理されていることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)カチオン性基を有する構成単位及び(b)一般式(1)で表される構成単位を有する高分子化合物を、水性媒体を通じて布帛に処理する布帛の親水化処理方法。
【化1】

【請求項2】
(a)カチオン性基を有する構成単位が、一般式(2−1)、一般式(2−2)、一般式(2−3)又は一般式(2−4)で表される少なくとも1種である請求項1記載の布帛の親水化処理方法。
【化2】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、水酸基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示し、Z-は陰イオンを示す。R3は水素原子、水酸基を有してもよい炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基を示す。)
【請求項3】
衣料用洗剤を同時に用いて、高分子化合物を布帛に処理する請求項1又は2記載の布帛の親水化処理方法。
【請求項4】
カチオン界面活性剤を含む柔軟仕上げ剤で処理する前、同時/又は後に高分子化合物を布帛に処理する請求項1〜3いずれかに記載の布帛の親水化処理方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の高分子化合物を含有する親水化処理剤。
【請求項6】
請求項1又は2記載の高分子化合物を含有する洗浄剤。
【請求項7】
請求項1又は2記載の高分子化合物を含有する柔軟仕上げ剤。

【公開番号】特開2008−190091(P2008−190091A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−27699(P2007−27699)
【出願日】平成19年2月7日(2007.2.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】