説明

複数の第1の繊維又はフィラメント(4)と、複数の第2の繊維又はフィラメント(6)とから形成され、第1の繊維又はフィラメントは、非導電性であり、且つ、電気光学活性材料を有し、第2の繊維又はフィラメントは、導電性であり、2つの第2の繊維間の電圧差が、その間に位置付けられる第1の繊維における色変化をもたらす布(2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布に係わり、特に、少なくともそのうちの一部が電気光学特性を有するフィラメント又は繊維から形成された布に係る。
【背景技術】
【0002】
布において色変化又は発光効果を生成するための様々な方法が知られている。
【0003】
1つの既知の方法及び布は、Visson IP LLC社に譲受される特許文献1に開示される。この特許文献1において開示される布は、第1の繊維の組及び第2の繊維の組から形成され、各繊維は、長手方向の導電素子を有する。2組の繊維の組は、接続点のマトリクス構造を形成し、この構造は更に、第1の組の繊維を少なくとも部分的にコーティングする電気光学活性物質を有する。第1の組の繊維の長手方向導電素子と、第2の組の繊維の長手方向導電素子との間に電圧差があり、各組からの繊維は接続点において交わる。第1の組の繊維が第2の組の繊維を交差することにより形成される接続点は、電気光学活性材料をアクティブにし、表示素子を生成する。
【0004】
特許文献2は、導電糸の織り交ぜられた横糸と、発光ダイオード(LED)繊維の縦糸から形成された発光ダイオード(LED)マトリクスから形成される材料を説明する。発光ダイオード(LED)繊維は、pドープされた半導体でコーティングされ、その後に発光ポリマーのnドープされた半導体でコーティングされる導電コアから形成される。各導電糸は、各LED繊維を1つの位置において物理的及び電気的に結合し、それにより画素のように作動させられうるLEDを形成する。
【0005】
これらの既存の方法及び布における問題は、既知の布を作るために使用されるこれらの繊維の全ては長手方向導電コア電極を有するということである。一部の繊維は更に、電気光学活性物質を有する。そのような繊維の製造は複雑であり、従って高価である。更に、電気光学活性材料と合わせてコア電極を含む繊維は、比較的厚く且つ堅く、それにより、そのような繊維から布を形成するのに使用する織り込み処理といった任意の処理が複雑となってしまう。
【特許文献1】米国特許出願番号第2002/0187697号
【特許文献2】米国特許第6,490,402号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの問題を解決する布、即ち材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の面では、複数の第1の繊維又はフィラメントと、複数の第2の繊維又はフィラメントとから形成され、第1の繊維又はフィラメントは、非導電性であり、且つ、電気光学活性材料を有し、第2の繊維又はフィラメントは、導電性であり、2つの第2の繊維間の電圧差が、その間に位置付けられる第1の繊維における色変化をもたらす布を提供する。
【0008】
本発明により、それぞれ導電性材料から形成される第1の繊維の組と、それぞれ電気光学活性材料から形成される第2の繊維の組とから布を、電気光学活性材料から形成される繊維内に細長い導電コアを組み込む必要なく、形成することが可能である。
【0009】
従って、そのような布は、既知の同様の布より安い。更に、織る、又は、編むといった布を形成するために使用する任意の処理はあまり複雑ではなく、というのは、コア電極と電気光学活性物質を有する比較的厚く且つ堅い繊維を使用する必要がないからである。
【0010】
第2の繊維は、更に電気光学活性材料を有してもよい。
【0011】
本発明の第2の面では、布を形成する方法であって、複数の第1の繊維又はフィラメントを複数の第2の繊維又はフィラメントと織り交ぜる段階を有し、第1の繊維は、非導電性であり、且つ、電気光学材料を有し、第2の繊維は、導電性である方法を提供する。
【0012】
第1の繊維は、第2の繊維と織り交ぜられるよう織り合わされる、編まれる、又はかぎ針編みされることが好適である。
【0013】
第1の繊維又はフィラメントの少なくとも第1の複数は、第1の方向に延在し、且つ、第2の方向に延在する第2の繊維又はフィラメントの第1の複数と織り交わる。
【0014】
第2の繊維又はフィラメントが互いに重なる又は交差する点において第2の繊維又はフィラメントの対間において電圧差が形成される。この電圧差は、第2の繊維又はフィラメントが互いに重なる又は交差する点の付近の第1の繊維の少なくとも一部において、1つ以上のそのような第2の繊維の対間に位置付けられる任意の第1の繊維に色変化をもたらす。
【0015】
様々な第2の繊維に様々な電圧を印加することにより異なる色変化が、各第1の繊維の様々な部分にもたらされうる。或いは、又は、加えて、1つ以上の第1の繊維は、別の第1の繊維の電気光学活性材料とは異なる電気光学活性材料から形成されうる。
【0016】
第2の方向は、第1の方向に対して実質的に異なり、それにより、第2の繊維又はフィラメントにより覆い隠される第1の繊維又はフィラメントの度合いを低減することが好適である。
【0017】
布は、第3の方向に延在する第2の繊維又はフィラメントの第2の複数から形成されることが有利である。これは、導電繊維が2つの方向に延在することを意味する。
【0018】
第3の方向は、第1の方向及び第2の方向とは実質的に異なることが好適である。このことは、布が、例えば、第2の繊維の第1の複数が繊維の第2の複数と交差し、一方で同時に第2の繊維又はフィラメントにより覆い隠される第1の繊維又はフィラメントの度合いを低減するよう織ることにより、形成されることを可能にする。
【0019】
第2の方向と第3の方向とは実質的に直交することが有利である。
【0020】
第1の方向は、第1の方向及び第3の方向と任意の所望の角度を形成しうるが、第1の方向は、第2の方向又は第3の方向と実質的に45°の角度を形成することが好適である。
【0021】
第2の方向と第3の方向とが互いに実質的に直交する場合、第1の方向は、第2の方向及び第3の方向のそれぞれと実質的に45°の角度を形成する。結果として得られる布は、3軸織りパターンとして知られる複数の軸を持って織られた構造を有する。
【0022】
布は、それぞれ第4の方向に延在する第1の繊維又はフィラメントの第2の複数を有することが有利である。第4の方向は、第1の方向と、第2の方向、及び第3の方向のそれぞれとは異なることが好適である。
【0023】
第1の方向と第4の方向とは互いに実質的に直交し、第2の方向と第3の方向とは互いに実質的に直交し、第1の方向及び第4の方向は、第2の方向及び第3の方向とそれぞれ実質的に45°の角度を形成することが有利である。このような構成は、4軸織りパターンを結果としてもたらす。
【0024】
本発明により、導電性の第2の繊維によって繊維間に電界を形成することにより1つ以上の第1の繊維において局所的な色変化がもたらされる布、特に織布を生成することが可能である。このことは、布における局所的な色変化を可能にする。これは、内部に導電素子が組み込まれた色変化繊維を形成する必要なく実現可能である。
【0025】
導電性の第2の繊維により第1の繊維に亘って印加される最大電圧範囲は、第1の繊維を形成する光学活性材料と、第1の繊維の幾何学に依存する。
【0026】
一部の場合において、第1の繊維に亘って交流電圧を、その第1の繊維を形成する光学活性材料の性質により印加する必要がある。その他の場合において、第1の繊維を形成する光学活性材料の性質により、第1の繊維に亘って直流電圧を印加する必要がある。
【0027】
一部の光学活性材料は、「凍った」光学効果を生成するために短い電圧バーストのみがそれらに印加されることを必要とする。そのような光学活性材料の例は、例えば、電気泳動材料といった双安定材料である。
【0028】
第1の繊維又はフィラメント、及び第2の繊維又はフィラメントは、任意の所望の寸法を有しうるが、一般的には、10乃至1000μmの範囲内の直径を有する。
【0029】
第1の繊維又はフィラメント及び第2の繊維又はフィラメントは、任意の所望の断面を有しうる。例えば、これらの繊維又はフィラメントは、円形の断面を有しうる。或いは、第1の繊維又はフィラメント、又は、第2の繊維又はフィラメントのいずれかは、実質的に矩形の断面を有する実質的に矩形のリボン状の繊維を有しうる。
【0030】
第1の繊維又はフィラメントが、例えば、実質的に矩形の断面を有するリボン状繊維を有することは特に有利でありうる。
【0031】
第1の繊維又はフィラメントを形成する電気光学活性材料は、任意の適切な形状を取り、また、例えば、液晶、ポリマーLED材料、電気ルミネセント材料、電気泳動材料、事実上、色素細胞を模倣する光変調材料を含みうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明を、添付図面を参照しながら例示的にのみ更に説明する。
【0033】
図1を参照するに、本発明の第1の実施例による布を参照番号2として全体的に示す。
【0034】
布は、複数の第1の繊維4と複数の第2の繊維6から形成される。第1の繊維4のそれぞれは、透明又は半透明コア内に閉じ込められた電気光学活性物質から形成される。
【0035】
全ての第1の繊維は、同じ物質から形成されてもよい。或いは、1つ以上の第1の繊維は、他の第1の繊維を形成する電気光学活性材料とは異なる電気光学活性材料から形成されてもよい。第2の繊維6のそれぞれは、導電材料から形成される。第1の繊維4は第2の繊維6と織り交ぜられる。
【0036】
布2は、この例では、水平方向に延在するよう示される第2の繊維の第1の複数8と、この例では垂直方向に延在するよう示される第2の繊維の第2の複数10から形成される。第2の繊維の第1の複数8は、従って、第2の繊維の第2の複数10が延在する方向と実質的に直交する方向に延在する。この例では、第1の繊維4は、各複数8、10の第2の繊維が延在する方向に対して約45°の角度を形成する方向に延在する。
【0037】
第2の繊維の第1の複数8のそれぞれは、第2の繊維の第2の複数10のそれぞれと、接続点12において重なり、そして、第1の繊維4は、図1に示すように接続点12を通過する。
【0038】
第2の繊維8のうちの1つと、第2の繊維10のうちの1つとの間に電圧差を加え、接続点12のうちの1つにおいて局所的な電界が生じる。その結果、この接続点を通過する第1の繊維4は、その接続点の付近における色を変化させる。この例では、第2の繊維8の1つは、それに電圧+Vが印加され、第2の繊維10の1つは、それに電圧+Vが印加される。
【0039】
第2の繊維8のそれぞれと、第2の繊維10のそれぞれとの間に電圧差を印加することにより、各第1の繊維4は、各接続点の付近における色を変化させるようにされる。
【0040】
図1に示す布の織りパターンは、3軸織りパターンである。
【0041】
次に、図2を参照するに、本発明の第2の実施例による布を参照番号20として全体的に示す。布20は、図1に示す布2と類似し、従って、対応する部分には、参照を容易にするために対応する参照番号を付している。
【0042】
この実施例では、第1の繊維は、第1の繊維の第1の複数14と、第1の繊維の第2の複数16を有する。
【0043】
第1の繊維は、従って、2つの方向に延在する。この例では、互いに実質的に直交する方向に延在する。第1の繊維の第1の複数14は、第1の方向に延在し、第2の繊維の第1の複数18は、第2の方向に延在し、第2の繊維の第2の複数10は、第3の方向に延在し、第1の繊維の第2の複数16は、第4の方向に延在する。第1の方向、第2の方向、第3の方向、及び第4の方向のそれぞれは互いに異なり、この例では、第1の方向と第4の方向とは、互いに対して実質的に直交し、第2の方向と第3の方向とは、互いに対して実質的に直交する。
【0044】
この例では、第2の方向及び第3の方向は、それぞれ、水平方向及び垂直方向に延在するよう示され、また、第1の方向及び第4の方向は、それぞれ、第2の方向及び第3の方向のそれぞれと約45°の角度を形成する。
【0045】
図4に示す布は、4軸織りパターンを有する。
【0046】
本発明による布は、衣服、カーテン、カーペット、壁紙、室内用装飾用カーテン等の広い範囲の様々な製品を形成するのに使用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】3軸織りパターンを示す本発明の第1の実施例を示す図である。
【図2】4軸織りパターンを示す本発明の第2の実施例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の繊維又はフィラメントと、複数の第2の繊維又はフィラメントとから形成され、
前記第1の繊維又はフィラメントは、非導電性であり、且つ、電気光学活性材料を有し、
前記第2の繊維又はフィラメントは、導電性であり、
2つの第2の繊維間の電圧差が、該2つの第2の繊維の間に位置付けられる第1の繊維における色変化をもたらす、布。
【請求項2】
前記第1の繊維又はフィラメントは、前記第2の繊維又はフィラメントと織り交ぜられる請求項1記載の布。
【請求項3】
前記第1の繊維又はフィラメントの第1の複数は、第1の方向に延在し、
前記第2の繊維又はフィラメントの第1の複数は、第2の方向に延在する請求項1又は2記載の布。
【請求項4】
前記第2の方向は、前記第1の方向とは実質的に異なる請求項3記載の布。
【請求項5】
前記第2の繊維又はフィラメントの第2の複数は、第3の方向に延在する請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の布。
【請求項6】
前記第3の方向は、前記第1の方向とは実質的に異なる請求項3に従属する場合の請求項5又は請求項3に従属する任意の請求項記載の布。
【請求項7】
前記第2の方向は、前記第3の方向に対して直交する請求項3に従属する場合の請求項5又は請求項3に従属する任意の請求項又は請求項6記載の布。
【請求項8】
前記第1の繊維又はフィラメントの第2の複数は、第4の方向に延在する請求項1乃至7のうちいずれか一項記載の布。
【請求項9】
前記第1の方向は、前記第4の方向に対して直交する請求項3に従属する場合の請求項8又は請求項3に従属する任意の請求項記載の布。
【請求項10】
1つ以上の前記第2の繊維は、電気光学活性材料を有する請求項1乃至9のうちいずれか一項記載の布。
【請求項11】
前記複数の第1の繊維は、複数の電気光学活性材料から形成される請求項1乃至10のうちいずれか一項記載の布。
【請求項12】
前記布は、織られるか、編まれるか、又はかぎ針編みされる請求項1乃至11のうちいずれか一項記載の布。
【請求項13】
前記布は織られ、前記第1の繊維又はフィラメントは、前記第2の繊維又はフィラメントと織り交ぜられる請求項1乃至12のうちいずれか一項記載の布。
【請求項14】
請求項1乃至13のうちいずれか一項記載の布から作られる衣服。
【請求項15】
布を形成する方法であって、
複数の第1の繊維又はフィラメントを複数の第2の繊維又はフィラメントと織り交ぜる段階を有し、
前記第1の繊維は、非導電性であり、且つ、電気光学材料を有し、
前記第2の繊維は、導電性である、方法。
【請求項16】
前記第1の繊維又はフィラメントを前記第2の繊維又はフィラメントと織り交ぜる段階は、前記第1の繊維又はフィラメントと前記第2の繊維又はフィラメントを一緒に織る段階を有する請求項15記載の方法。
【請求項17】
重なる第2の繊維又はフィラメントの間に電圧差を印加する段階を更に有する請求項14又は15記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−524009(P2007−524009A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−500331(P2007−500331)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050596
【国際公開番号】WO2005/086128
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】