説明

希土類磁石及びそれを用いた輸送機器用磁石モータ

【課題】保磁力と残留磁束密度を高めた希土類磁石を提供すること。
【解決手段】希土類元素、鉄又はコバルト及びフッ素原子の化合物を主成分とし、鉄及びフッ素原子の化合物を含有するブロック体の磁石であって、ブロック体の一部の鉄又はコバルトのフッ化物濃度が他の部分よりも高いことを特徴とする希土類磁石。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高エネルギー積あるいは高耐熱性を有する希土類磁石と、それを使用した輸送機器用磁石モータに関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素化合物あるいは酸フッ素化合物を含む希土類ボンド磁石は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6に記載されている。前記従来技術では、処理に使用するフッ素化合物は粉末状あるいは粉末と溶媒の混合物であり、磁石粉表面に沿って効率よくフッ素を含む相を形成することは困難である。また、フッ素原子が鉄原子間の侵入位置に配置した正方晶の生成に関する記載はない。また、上記従来手法では、磁粉表面の処理に使用するフッ素化合物が点接触しており、本手法のように容易にフッ素を含む相が磁粉に面接触しないため、従来手法の方がより多くの処理原料と高温での熱処理を要する。特許文献5には希土類フッ素化合物の微粉末(1から20μm)をNdFeB粉と混合しているが、鉄原子の間に配置したフッ素原子の分布に関する記載はない。
【0003】
非特許文献1では、DyFやTbFの微粉(1から5μm)を微小ボンド磁石表面に塗布しているが、フッ素原子が鉄原子間に配置する記載はなく、DyやFが磁石に吸収されNdOFやNd酸化物が形成されるという説明があり、侵入位置のフッ素による残留磁束密度の向上と3元フッ素化合物の高保磁力を両立した記載はない。また、非特許文献2に記載されたフッ素化合物の計算結果を基にフッ素が鉄原子間に侵入させた磁石を形成し、その構造を高精度で評価している例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−282312号公報
【特許文献2】特開2006−303436号公報
【特許文献3】特開2006−303435号公報
【特許文献4】特開2006−303434号公報
【特許文献5】特開2006−303433号公報
【特許文献6】US2005/0081959A1
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICSVOL.41 NO.10(2005) 3844−3846頁
【非特許文献2】PHYSICAL REVIEW B (1996)3296−303頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、希土類磁石の保磁力を損なうことなく残留磁束密度及びキュリー温度を向上し、それによってその磁石を用いたモータのトルクを増加し、コギングトルクを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鉄又はコバルトの原子間位置に侵入したフッ素が、磁石の残留磁束密度および保磁力の向上に寄与することを発見し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、
希土類元素、鉄又はコバルト及びフッ素原子の化合物と、鉄又はコバルトとフッ素の化合物とを主成分とするブロック体の磁石であって、該ブロック体の任意の方向に鉄又はコバルトとフッ素との化合物濃度が他の部分よりも高い部分を有することを特徴とする希土類磁石を提供するものである。
【0008】
フッ素原子は遷移金属の原子間位置に侵入することができる。図11A及び図11Bに、体心立方構造の鉄の結晶構造の模式図を示す。図中、401は鉄原子、402は鉄の結晶格子の原子間位置に侵入したフッ素原子を示す。図11Bのように、フッ素原子が鉄の原子間位置に侵入すると、鉄の結晶格子を歪ませる。このように、フッ素原子は鉄の原子間位置に侵入することができ、かつ電気陰性度が大きいことから、遷移金属の磁気モーメントを大きくすることができる。また、磁気異方性を大きくすることができ、高保持力、高磁束密度にすることが可能である。
【0009】
このため、鉄又はコバルトの原子間位置にフッ素を侵入させた希土類元素−鉄又はコバルト−フッ素化合物に着目した。例えば鉄又はコバルトを鉄とすると、フッ素が侵入していない鉄の飽和磁化は2.1Tであるが、フッ素が5at%侵入すると飽和磁化は2.4Tになる。これは希土類鉄フッ素化合物と、鉄の強磁性的結合を利用して、希土類鉄フッ素化合物と鉄の少なくとも2相が、磁気的に結合し、鉄の原子間位置にフッ素が侵入することによって磁化が増加し、その結果残留磁束密度が増加するためであると考えられる。2相間の強磁性的結合が消失するとフッ素含有鉄あるいはフッ素が侵入した鉄は軟磁性的な挙動となって、減磁曲線などの磁気特性測定結果に反映する。すなわち、軟磁性的な鉄の磁化は、希土類鉄のフッ素化合物の磁化と独立に反転し、保磁力が低下する。鉄はフッ素原子が侵入することで単位胞体積が膨張したり、正方晶に結晶が歪むことによって鉄原子の磁気モーメントが増加したりする。ここで、単位胞体積とは結晶の格子定数から求められる体積のことである。
【0010】
この磁気モーメントの増加が残留磁束密度の増加に貢献する。以下の説明において、鉄又はコバルトのうち、鉄を代表として説明する。フッ素原子が侵入した鉄の結晶と、希土類−鉄−フッ素3元系化合物の間に磁気的な結合を付加させることにより、前者の鉄の磁化を後者の結晶の磁化の向きに揃えることが可能となり、残留磁束密度、保磁力、キュリー点を増加できる可能性がある。このような特徴をもつ磁石をモータに適用することにより、局所的に高保磁力、高残留磁束密度および高キュリー温度のすべてを満足させることができ、モータの回転子に磁石を挿入し、磁束密度波形を制御できるので、モータのトルク増加やコギングトルク低減につながる。したがって、モータの小型化という課題を解決することができる。
【0011】
本発明によれば、光透過性のある低酸素フッ素化合物系溶液を使用し、希土類磁石に部分的にフッ素原子を拡散させることにより、磁石の高保磁力を維持しつつ、残留磁束密度を高める方法が提供される。フッ素化合物溶液はアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素あるいは希土類元素を1種類以上含む非晶質に類似の構造をもった炭素を含有するフッ素化合物または酸素を一部含むフッ酸化合物からなる溶液であり、透明性の高いもの、光透過性のあるものあるいは低粘度な溶液が望ましい。このような溶液を使用することで、磁粉の微小な隙間にフッ素化合物溶液を浸入させることができる。
【0012】
具体的には、フッ素化合物はPrF、LiF、MgF、CaF、ScF、VF、VF、CrF、CrF、MnF、MnF、FeF、FeF、CoF、CoF、NiF、ZnF、AlF、GaF、SrF、YF、ZrF、NbF、AgF、InF、SnF、SnF、BaF、LaF、LaF、CeF、CeF、NdF、SmF、SmF、EuF、EuF、GdF、TbF、TbF、DyF、NdF、HoF、HoF、ErF、ErF、TmF、TmF、YbF、YbF、LuF、LuF、PbF、BiFあるいはこれらのフッ素化合物に酸素や炭素あるいは鉄又はコバルトを含んだ化合物を使用してもよい。磁粉の仮成形体を、可視光線に対し透過性のある溶液あるいはCH基とフッ素の一部が結合した溶液を使用して含浸処理することによって、磁石表面から中心部あるいは磁石表面から反対側の磁石表面に連続したフッ素を含む層が形成される。また粒界や粒内に板状のフッ素化合物や酸フッ素化合物が認められることもある。
【0013】
磁粉成形体へのフッ素化合物溶液含浸処理は室温で行う。磁粉の仮成形体とフッ素化合物溶液の接触した面に沿ってフッ素化合物溶液が塗布され、塗布した面に1nmから1mmの隙間があればその隙間の磁粉面に沿ってフッ素化合物溶液が含浸される。含浸前に表面の酸素を除去するために水素ガス中で還元処理を施すことができる。この還元処理により、酸フッ化物の成長を防止し、鉄原子間に侵入するフッ素濃度を増加させることができる。含浸方向は磁石の仮成形体の連続隙間のある方向であり、仮成形条件や磁粉の形状に依存する。磁石の仮成形体と、フッ素化合物溶液の接触面と非接触面の付近とでは塗布量が異なるために、成形後にフッ素化合物を構成する元素の一部に濃度差が認められる。
【0014】
また、前記溶液接触面と垂直方向の面とでは平均的にフッ素化合物の濃度分布に差がみられる。このフッ素化合物系溶液を含浸した磁石を200℃から400℃の熱処理で溶媒を除去することが好ましい。さらに500℃から800℃の熱処理を行い、フッ素化合物と磁粉間や粒界に、炭素、希土類元素及びフッ素化合物構成元素を拡散させることが好ましい。
【0015】
磁粉表面に成長した一部溶媒を含む希土類フッ素化合物は、六方晶系の構造をもったREFe17(REは希土類元素)及びbct構造あるいはbcc構造のFeである。これらの化合物を400℃以下の熱処理で成長させ、真空度1×10−3Torr以下で400から900℃で30分間加熱保持する。この熱処理で、磁粉中の鉄原子や希土類元素と、フッ素化合物中のフッ素原子が相互に拡散し、非晶質あるいは結晶質のMFe17(Mは希土類元素、アルカルリ金属元素、あるいはアルカリ土類金属元素)とbccあるいはbct構造のFeの結晶が成長する。このFeの結晶では、その一部の原子間距離がフッ素原子の侵入により伸びている。
【0016】
以上のようにフッ素化合物系溶液を使用することにより、200℃から900℃の比較的低温度でフッ素が鉄原子の侵入位置に配置した化合物を磁性体内部に成長させることができる。
【0017】
フッ素化合物系溶液を磁粉成形体の部分的な処理に使用することにより得られる利点は以下の通りである。
【0018】
1)処理に必要なフッ素化合物量を低減できる。
【0019】
2)10mm以上の厚さの成形磁石に適用できる。このようなバルク磁石は、モータの磁石として利用することが容易である。
【0020】
3)フッ素原子の侵入化温度が低温化できる。即ち、溶液を磁粉の粒界に含浸することで、磁粉の構成元素と溶液の構成元素の拡散距離が小さくなり、比較的低温で磁粉中の鉄の結晶中にフッ素原子を拡散することができる。
【0021】
4)成形後の高温での拡散熱処理が不要である。
【0022】
これらの特徴より、厚板バルク磁石において、含浸部の残留磁束密度の増加、保磁力増加、減磁曲線の角型性向上、熱減磁特性向上、着磁性向上、異方性向上、耐食性向上、低損失化、キュリー点上昇、機械強度向上、製造コスト低減などの効果が顕著になる。
【0023】
磁粉がSmFe系の場合、Sm、Feあるいは添加元素、不純物元素とフッ素化合物中のフッ素原子が200℃以上の加熱温度で相互に拡散する。上記温度でフッ素化合物相内のフッ素濃度は場所により異なり、REF、REF(REは希土類元素)、あるいはこれらの酸フッ素化合物が層状あるいは板状に不連続に形成されるが、含浸する方向にはほぼ連続したフッ素化合物が層状に形成され、表面から反対側の表面までつながった層になる。
【0024】
拡散の駆動力は、温度、応力(歪)、濃度差、欠陥などである。電子顕微鏡などにより拡散した結果を確認すると、磁石の仮成形体のフッ素処理にフッ素化合物粉砕粉を使用せず、フッ素化合物の溶液を含浸させて使用することにより、室温で既に仮成形体の中央にフッ素化合物を形成していることを確認することができる。フッ素化合物の溶液を使用することにより、低温度で拡散させることが可能なため、フッ素化合物の使用量を少なくすることができる。このことは、特に高温にすると焼結しにくいSmFeF系磁石粉の場合有効である。
【0025】
また本発明によれば、磁粉中にフッ素化合物を含浸工程によって形成することにより、保磁力及び残留磁束密度が増加した磁石が提供される。SmFe系磁粉には、主相にSmFe17の結晶と、bctあるいはbcc構造のFe相が成長した磁粉を含んでいる。Al、Co、Cu、Tiなどの鉄又はコバルトが上記主相に含有されてもよい。また、主相のFの一部をCとしてもよい。この場合、含浸処理には炭素を含有するフッ素化合物またはフッ素を含有する炭素化合物を使用する。また主相以外に酸フッ化物が含まれてもよい。
【0026】
このようなフッ素化合物含浸処理工程によって形成された磁石は、フッ素が磁石表面から別の面まで連続した層を含むか、あるいは磁石内部に表面につながらないフッ素を含む層状粒界が含まれる。このように含浸した部分では粒界付近にフッ素化合物の偏在がみられ、保磁力及び残留磁束密度が増加する。保磁力の増加はPrF系溶液を使用した場合、含浸していない部分の1.1倍から3倍である。保磁力が増加した部分では、残留磁束密度が10%内の範囲で増加し、含浸部の耐熱性が向上するため、モータ内の逆磁界が印加される角付近の高保磁力化及び高残留磁束密度化が可能である。
【0027】
さらにREFe17は、REFe14B系よりもFeの含有量が多く、資源セキュリティ向上に繋がる。
【0028】
また、REFe17よりもFe濃度の高いREFe(m/n>7)の化合物に対しても高保磁力化と高残留磁束密度化が可能である。高保磁力及び高残留磁束密度が必要な部分は輸送機器用磁石モータにおいて、径方向の極中心からみて左右非対称であって、モータの軸方向に磁束密度の分布を変えることが可能である。左右非対称の高保磁力高残留磁束密度部分あるいは軸方向非対称の表面磁束密度分布を形成するために、含浸と拡散処理などの手法を用いることが可能であり、希土類の使用量を低減することが可能である。
【0029】
本発明の希土類磁石は、その長さ方向、厚さ方向或いは対角線方向若しくはそれ以外の任意の方向における、遷移金属元素と鉄又はコバルトとフッ素原子の化合物と鉄又はコバルトとフッ素原子の化合物の濃度分布が異なるものであって、特に鉄又はコバルトとフッ素原子の化合物濃度が希土類磁石の局部又は方向において他の部分よりも高い。この場合、濃度分布が異なるとは、0.3mm以上のサイズ、特に1mm以上のサイズでの濃度分布を言い、希土類磁石を構成する磁粉のレベルの濃度分布ではない。磁粉粒子内及び/又は磁粉粒界における鉄又はコバルトとフッ素原子の化合物の濃度分布程度では、保持力と残留磁石密度の両者を高くすることはできず、いずれかが低くなってしまう。
【0030】
本発明において、上記のような希土類磁石は、希土類金属元素−鉄又はコバルトーフッ素原子の多い磁石片と鉄又はコバルトとフッ素原子の化合物の多い磁石片とを幾何学的に組み合わせて一体化し、あるいは集合化し、全体としてこの複合磁石の鉄又はコバルトとフッ素原子の化合物の濃度が、磁石の長さ方向、厚さ方向又は対角線方向若しくはそれ以外の任意の方向に異なる磁石を構成することができる。複合磁石の一体化にあたっては、任意の接着剤或いは磁石片を焼結して結合することができる。また、磁石片群を任意の方法で固定し、それらの間に所望の磁気回路が形成されれば、磁石片群を密着させてもさせなくてもよい。
【0031】
本発明は、希土類元素‐鉄又はコバルト‐フッ素からなる化合物の濃度の高いまたはその化合物のみからなる磁片と、鉄又はコバルト‐フッ素原子からなる化合物濃度の高い又はその化合物にのみからなる磁片を、所定の磁気結合が形成されるように組み合わせた複合磁石を提供する。これらの磁片は接着剤或いは他の手段で一体化しても良いし、一体化しないで、回転子に固定しても良い。
【発明の効果】
【0032】
本発明の希土類磁石は、残留磁束密度、保持力、キュリー点が高く、この磁石を使用した磁石モータでは、モータの回転子に磁石を挿入し、磁束密度波形を制御できるので、モータのトルク増加やコギングトルク低減につながり、モータを小型化することができる。
【0033】
また、本発明の希土類磁石は、従来の希土類磁石よりも希土類元素の使用量を少なくし、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の第一の実施例による輸送機器用磁石モータの軸方向に垂直な断面図である。
【図2】本発明の第二の実施例による輸送機器用磁石モータの軸方向に垂直な断面図である。
【図3】本発明の第三の実施例による輸送機器用磁石モータの軸方向に垂直な断面図である。
【図4】本発明の第四の実施例による輸送機器用磁石モータの軸方向に垂直な回転子の断面図である。
【図5】本発明の第四の実施例による輸送機器用磁石モータの軸方向に垂直な回転子の断面図である。
【図6】本発明の第四の実施例による輸送機器用磁石モータの軸方向に垂直な回転子の断面図である。
【図7】本発明の第四の実施例による輸送機器用磁石モータの軸方向に垂直な回転子の断面図である。
【図8A】本発明の第二の実施例による輸送機器用磁石モータにおいて用いられる磁石におけるFeFの分布を示す概略斜視図である。
【図8B】本発明の第二の実施例による輸送機器用磁石モータにおいて用いられる磁石におけるFeFの分布を示す概略斜視図である。
【図8C】本発明の第二の実施例による輸送機器用磁石モータにおいて用いられる磁石におけるFeFの分布を示す概略斜視図である。
【図8D】本発明の第二の実施例による輸送機器用磁石モータにおいて用いられる磁石におけるFeFの分布を示す概略斜視図である。
【図8E】本発明の第二の実施例による輸送機器用磁石モータにおいて用いられる磁石におけるFeFの分布を示す概略斜視図である。
【図8F】本発明の第二の実施例による輸送機器用磁石モータにおいて用いられる磁石におけるFeFの分布を示す概略斜視図である。
【図8G】本発明の第二の実施例による輸送機器用磁石モータにおいて用いられる磁石におけるFeFの分布を示す概略斜視図である。
【図8H】本発明の第二の実施例による輸送機器用磁石モータにおいて用いられる磁石におけるFeFの分布を示す概略斜視図である。
【図9】本発明の第四の実施例による輸送機器用磁石モータの回転子の斜視図である。
【図10】本発明の第五の実施例において用いられた磁石の磁気特性のグラフである。
【図11A】本発明の第十の実施例によるフッ素原子導入前の鉄の結晶構造の模式図である。
【図11B】本発明の第十の実施例によるフッ素原子を鉄原子間に侵入させたときの結晶構造の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施例1)
Pr0.9Cu0.1(x=1−3)希土類フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
【0036】
1.硝酸プラセオジム4gを100mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
【0037】
2.10%に希釈したフッ化水素酸を上記溶液にPrF(X=1−3)が生成する化学反応の当量分徐々に加えた。
【0038】
3.ゲル状沈殿のPrF(X=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
【0039】
4.6000〜10000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同量のメタノールを加えた。
【0040】
5.上記4で得られたゲル状のPrFクラスタを含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
【0041】
6.上記4と5の操作を、酢酸イオン又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなくなるまで、3〜10回繰り返した。
【0042】
7.PrF系の場合、ほぼ透明なゾル状のPrFとなった。処理液としてはPrF
1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
【0043】
8.上記溶液にCuの有機金属化合物(例えばビスアセチルアセトナト銅(II))を、溶液中の粒子の分散状態を変えない範囲内で添加した。
【0044】
溶液あるいは溶液を乾燥させた膜のX線回折パターンは、半値幅が2度から10度の複数ピークから構成されていた。ピークの同定を行ったところ、Cu元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がRE(REは希土類元素、n、mは正の整数)と異なり、結晶構造もREやRE(F、O)と異なっていた。半値幅が2度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっていると考えられる。
【0045】
このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が上記化合物とは異なる配置をしているためであり、その原子は水素、炭素、酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素、炭素、酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REあるいはRE(F、O)の回折パターンの一部がみられるようになる。Cuを添加しても溶液中で長周期構造を持っていない。このREの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。
【0046】
溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに2度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。このような2度以上の半値幅のピークとREの回折パターンあるいは酸フッ素化合物のピークが含まれても良い。REあるいは酸フッ素化合物の回折パターンのみ、または1度以下の回折パターンが溶液の回折パターンに主として観測される場合、溶液中にゾルやゲルではない固相が混合しているため流動性が悪くなる。
【0047】
このような溶液を用いて次にSmFe17.2粉に塗布する。
9.SmFe17.2の仮成形体(10×10×10mm)を室温で圧縮成形し、100℃から800℃の水素雰囲気で1時間から5時間還元後、PrF系コート膜形成処理液中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った。
10.前記9.の操作を1回または2から5回繰り返し400℃から1100℃の温度範囲で0.5−5時間熱処理した。
11.前記表面コート膜を形成した異方性を有する磁粉の異方性方向に30kOe以上のパルス磁界を印加した。
【0048】
この着磁成形体を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁成形体に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
【0049】
この結果、Prフッ化物コート膜を形成したSmFe17.2のブロックの保磁力は10倍に増加し、bcc及びbct構造のFe相、及びSmFe17.2の2相が形成されていることをX線回折あるいは電子線回折から確認した。高保磁力を示すSmFe17.2に隣接してbctあるいはbcc構造のFe相が成長しており、磁区構造観察及び磁化曲線の形から両者は磁気的に結合していることを確認した。
【0050】
電子線回折や中性子線回折による結晶構造の解析から、フッ素原子の一部が鉄原子の一部に侵入しており、一部の界面では格子像がSmFe17.2とbct構造のFe相は連続しており、一部の界面では方位関係があることを確認した。フッ素原子がFe原子の格子間位置へ侵入すると、FeのX線回折ピークの回折角度が低角側にシフトすること、回折ピークが分離してbct構造のFe相の回折パターンと一致することのいずれかが観測される。
【0051】
Cuなどの添加元素及びFeの格子間位置に侵入したフッ素原子の役割は以下のいずれかである。
【0052】
1)粒界付近に偏在して界面エネルギーを低下させる。
【0053】
2)粒界の格子整合性を高める。
【0054】
3)粒界の欠陥を低減する。
【0055】
4)フッ素原子のFeの拡散を助長する。
【0056】
5)フッ素原子による磁気異方性エネルギーを高める。
【0057】
6)フッ化物、酸フッ化物あるいは炭酸フッ化物との界面を平滑化する。
【0058】
7)Feの格子間位置に侵入したフッ素原子の熱安定性を高める。
【0059】
8)酸素を母相から除去する。
【0060】
9)母相(Sm、Pr)Fe17のキュリー温度を高める。
【0061】
10)粒界中心にCuを含む添加元素が偏析し、粒界相を非磁性化する。
【0062】
11)母相と鉄の界面で結合を強める。
【0063】
これらの結果、保磁力の増加、減磁曲線の角型性向上、残留磁束密度増加、エネルギー積増加、キュリー温度上昇、着磁磁界低減、保磁力や残留磁束密度の温度依存性低減、耐食性向上、比抵抗増加、熱減磁率低減のいずれかの効果が認められる。Cuなどの遷移金属添加元素は溶液を用いて処理後加熱拡散させるため、あらかじめボンド磁石に添加された元素の組成分布とは異なり、希土類元素の偏在している粒界近傍で高濃度になる傾向がある。
【0064】
このようにして作製した(Sm,Pr,Cu)Fe17構造を主相とし、bccあるいはbct構造のFe相が成長した磁石を積層電磁鋼板、積層アモルファスあるいは圧粉鉄と接着させて回転子を作製する場合、あらかじめ磁石を挿入する位置に配置する。
【0065】
図1にモータの軸方向に垂直な断面の模式図を示す。モータは回転子100と固定子2から構成され、固定子にはコアバック5とティース4からなり、ティース4間のコイル挿入位置7には、コイル8a、8b、8c(3相巻線のU相巻線8a、V相巻線8b、W相巻線8c)のコイル群が挿入されている。ティース4の先端部9よりシャフト中心には回転子が入る回転子挿入部10が確保され、この位置に回転子100が挿入される。回転子100の外周側にはボンド磁石が挿入されておりフッ化物溶液で処理していない部分200とフッ化物処理部分201、202から構成されている。
【0066】
ボンド磁石のフッ化物処理部分201及び202の面積は異なり、回転子に使用する磁石の外周側を、フッ化物処理する面積を多くしている。すなわち、磁界設計により逆磁界が印加される磁界強度が大きい方を広い面積でフッ化物処理して保磁力及び残留磁束密度を高めている。このようにボンド磁石の外周側を部分的にフッ化物処理することにより、希土類元素の使用量を少なくし、かつ減磁耐力を向上させることができ、使用温度範囲の拡大、モータ出力増加に繋がる。
(実施例2)
SmF(x=1−3)希土類フッ化物コート膜の形成処理液は以下のようにして作製した。
【0067】
1.硝酸サマリウム4gを100mLの水に導入し、振とう器または超音波攪拌器を用いて完全に溶解した。
【0068】
2.10%に希釈したフッ化水素酸を上記溶液にSmF(x=1−3)が生成する化学反応の当量分徐々に加えた。
【0069】
3.ゲル状沈殿のSmF(x=1−3)が生成した溶液に対して超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
【0070】
4.6000〜10000r.p.mの回転数で遠心分離した後、上澄み液を取り除きほぼ同量のメタノールを加えた。
【0071】
5.ゲル状のSmFクラスタを含むメタノール溶液を攪拌して完全に懸濁液にした後、超音波攪拌器を用いて1時間以上攪拌した。
【0072】
6.前記4と5の操作を酢酸イオン、又は硝酸イオン等の陰イオンが検出されなくなるまで、3〜10回繰り返した。
【0073】
7.SmF系の場合、ほぼ透明なゾル状のSmFとなった。処理液としてはSmFが1g/5mLのメタノール溶液を用いた。
【0074】
8.上記溶液にCuの有機金属化合物(例えばビスアセチルアセトナト銅(II))を、溶液中の粒子の分散状態を変えない範囲内で添加した。
【0075】
溶液あるいは溶液を乾燥させた膜の回折パターンは、半値幅が1度以上(2度から10度)の複数ピークから構成されていた。これは添加元素とフッ素間あるいは金属元素間の原子間距離がREと異なり、結晶構造もREやRE(F、O、C)と異なることを示している。ここでREは希土類元素、Fはフッ素、Oは酸素、Cは炭素、n及びmは正の整数である。フッ素、酸素、炭素の比率は生成物によって異なり、ボンド磁石最表面ではフッ素と酸素が炭素よりも多い。半値幅が1度以上であることから、上記原子間距離が通常の金属結晶のように一定値ではなくある分布をもっている。
【0076】
このような分布ができるのは、上記金属元素あるいはフッ素元素の原子の周囲に他の原子が上記化合物とは異なる配置をしているためであり、その原子は水素、炭素、酸素が主であり、加熱など外部エネルギーを加えることでこれら水素、炭素、酸素などの原子は容易に移動し構造が変化し流動性も変化する。ゾル状およびゲル状のX線回折パターンは半値幅が1度より大きなピークから構成されているが、熱処理により構造変化がみられ、上記REあるいはRE(F、O、C)の回折パターンの一部がみられるようになる。Cuを添加しても溶液中で長周期構造を持っていない。このREの回折ピークは上記ゾルあるいはゲルの回折ピークよりも半値幅が狭い。溶液の流動性を高め塗布膜厚を均一にするためには、上記溶液の回折パターンに1度以上の半値幅をもつピークが少なくとも一つ見られることが重要である。このような1度以上の半値幅のピークとREの回折パターンあるいは酸フッ素化合物のピークが含まれても良い。REあるいは酸フッ素化合物の回折パターンのみ、または1度以下の回折パターンが溶液の回折パターンに主として観測される場合、溶液中にゾルやゲルではない固相が混合しているため流動性が悪くなる。このような溶液を用いて次にSmFe17.1に塗布する。
【0077】
9.SmFe17.1の成形体(10×10×10mm)を室温で圧縮成形し、水素ガス雰囲気中(300℃)で磁粉表面の酸素濃度を低減させた後、SmF系コート膜形成処理中に浸漬し、そのブロックを2〜5torrの減圧下で溶媒のメタノール除去を行った。
【0078】
10.前記9の操作を1または2から5回繰り返し400℃から600℃の温度範囲で0.5−5時間熱処理した。
【0079】
11.前記9で表面コート膜を形成した異方性磁石の異方性方向に30kOe以上のパルス磁界を印加した。
【0080】
この着磁成形体を直流M−Hループ測定器にて磁極間に成形体を着磁方向が磁界印加方向に一致するように挟み、磁極間に磁界を印加することで減磁曲線を測定した。着磁成形体に磁界を印加させる磁極のポールピースには、FeCo合金を使用し、磁化の値は同一形状の純Ni試料及び純Fe試料を用いて校正した。
【0081】
この結果、Smフッ化物コート膜を形成したSmFeNF成形体のブロックの保磁力は0.8からその2倍に増加した。また残留磁束密度が10%増加した。高保磁力を示す磁石では、鉄原子の格子間位置には窒素原子およびフッ素原子が侵入していることを確認した。フッ素原子の格子間位置への侵入により磁気異方性が高まる結果、保磁力が増加したものと推定できる。また、成形体に成長している鉄は全体の約5%であり、この鉄の一部にフッ素が侵入して単位胞体積の膨張あるいは正方晶の成長が確認できた。この単位胞体積の膨張により鉄の磁気モーメントが増加し残留磁束密度が増加したものと推定できる。尚、成形体に占める鉄の体積は、0.1から20%でありフッ素の侵入による格子の膨張あるいは歪が確認できた。成形体に占める鉄の体積が0.1%の場合は残留磁束密度の増加は10%未満であり、成形体に占める鉄の体積が20%以上では保磁力が最大値から減少する傾向を示した。
【0082】
このようにして作製したSmFeN成形体を積層電磁鋼板、積層アモルファスあるいは圧粉鉄と接着させて回転子を作製する場合、あらかじめ磁石を挿入する位置に挿入する。図2にモータの軸方向に垂直な断面の模式図を示す。モータは回転子100と固定子2から構成され、固定子はコアバック5とティース4からなり、ティース4間のコイル挿入位置7には、コイル8a、8b、8c(3相巻線のU相巻線8a、V相巻線8b、W相巻線8c)のコイル群が挿入されている。ティース4の先端部9よりシャフト中心には回転子が入る回転子挿入部10が確保され、この位置に回転子100が挿入される。
【0083】
回転子100の外周側には1極当り複数の磁石201が挿入されている。磁石に要求される性能は、使用環境温度、磁界強度、磁界波形、周波数、誘起電圧、トルク、コギングトルク、振動、騒音などによって変わる。
【0084】
図8A〜図8Hには種々のフッ化物処理した磁石の形状を示す。これらの磁石を図2の回転子100の磁石201に使用するために上記工程により製造した。図8の磁石は立方体であり、その長辺が軸方向に平行になり、短辺にほぼ平行方向が異方性の方向、すなわち着磁方向である。図8において磁石はフッ化物溶液処理した部分201とフッ化物溶液で処理していない部分202を形成している。いずれの磁石の場合も少なくとも1ケ所以上の角あるいは辺の一部がフッ化物処理されている。
【0085】
フッ化物溶液で処理していない部分202とフッ化物溶液で処理した部分201はそれぞれ、低保磁力、低残留磁束密度部と高保磁力、高残留磁束密度部に相当する。フッ化物処理部分201と未処理部分202の境界は、直線であったり曲線であったりするが、平均結晶粒の10倍から1000倍の距離でフッ素など塗布材料の濃度勾配がみられ、この境界部の幅は1μmから10000μmの範囲が好ましい。フッ化物溶液処理は、上記のように溶液を使用して塗布後、加熱拡散させている。加熱は400℃から800℃の温度範囲で0.5−5時間熱処理する手法以外に、電磁波を使用して含浸したフッ化物を発熱させる手法があり、後者の方が局所付近のみを選択的に高温にすることができ、未処理部分202の磁石成形体全体の熱処理による磁気特性劣化を抑制することができる。
【0086】
図8Aの磁石は、磁気特性に異方性を有する方向に垂直方向の両端部がフッ化物で処理されている。フッ化物処理部201は軸方向の中心部で狭く軸方向両端部で広くなっている。これは磁石の角が逆磁界に弱い部分の一つであると考えられるためである。
【0087】
図8Bは、4つの角と磁気特性に異方性を有する方向に平行な面全てをフッ化物処理したものである。フッ化物未処理部分202は異方性方向に垂直な2つの面の中心部のみであり、角及び辺付近の逆磁界に対して弱い場所の保磁力を高めている。
【0088】
図8Cは磁気特性に異方性を有する方向に平行な面4面の中で1つの面を全てフッ化物処理し、残りの面の一部がフッ化物処理されている磁石である。このような磁石は、磁石の片側付近に逆磁界が付加される場合に減磁しにくい磁石として適用でき、磁石の異方性方向が回転子の軸方向に垂直な断面において、中心からみた径方向から傾斜して配置されている場合に有効である。
【0089】
図8Dは図8Cの磁石よりもフッ化物処理領域を小さくして、フッ化物処理量を少なくしたものである。図8Dでは、フッ化物処理部分201が磁気特性に異方性を有する方向に平行な面でその面積が変化しており、フッ化物処理部分201と未処理部分202の境界が異方性方向から傾斜している。このような磁石は磁石の4つの角の中で2つの角及び異方性方向に平行な面の1面をフッ化物処理したものであり、長辺の1辺付近を特に高保磁力にする場合効果的である。
【0090】
図8Eは磁気特性に異方性を有する方向に垂直な2つの面でフッ化物処理部分の面積が異なる場合であり、面積が広い方が回転子において外周側に配置することで、逆磁界に対して磁石の磁化が回転子外周側で反転しにくく設計する場合に有効である。
【0091】
図8Fは磁石の8個の角と6個の辺のうち、4個の角と2つの辺近傍を高保磁力にする場合に、フッ化物処理部分201を溶液処理により形成する。
【0092】
図8Gは磁石の辺と傾斜させた方向にフッ化物処理することで、処理部201の残留磁束密度を高める。
【0093】
また図8Hは、磁石の端部を対称にフッ化物処理し、端部の残留磁束密度及び保磁力を増加させている。残留磁束密度の増加により磁石表面の磁束密度波形が変化し、磁束密度の最大値の位置が処理部のパターンに依存してシフトする。軸方向に磁束密度の最大値を変化させた磁石を回転子に採用することで、モータでの振動の軽減、コギングトルク低減、騒音低減につながる。表面にこのような図8A〜図8Hの8種類のボンド磁石をモータの回転子に採用することで希土類使用量を削減できる。また、リング磁石の場合も図2のボンド磁石挿入位置にリング磁石のフッ化処理部201と未処理部200を設けて配置することにより、残留磁束密度増加によるトルク増加が評価でき、希土類使用量を低減させた回転子を製造できることができる。
(実施例3)
主相である六方晶構造と、立方晶構造を有するSmFe17化合物磁石を積層鋼板、積層アモルファスあるいは圧粉鉄と接着させて回転子を作製する場合、あらかじめ磁石を挿入する位置に挿入する。図3にモータの軸方向に垂直な断面の模式図を示す。モータは回転子100と固定子2から構成され、固定子にはコアバック5とティース4からなり、ティース4間のコイル挿入位置7には、コイル8a、8b、8c(3相巻線のU相巻線8a、V相巻線8b、W相巻線8c)のコイル群が挿入されている。ティース4の先端部9よりシャフト中心には回転子が入る回転子挿入部10が確保され、この位置に回転子100が挿入される。回転子100の外周側には1極当り複数の磁石が挿入されている。
【0094】
磁石はフッ化物未処理部分200とフッ化物処理部分201とからなり、磁石ブロックの一部をフッ化物溶液に浸漬後熱処理して高保磁力、高残留磁束密度とすることができる。図3に示すように、フッ化物処理部分201は一つの極において中心から径方向に極をみた場合、左右対称ではなく、磁石角部分のフッ化物塗布位置は非対称である。左右対称にフッ化物処理しても、保磁力の分布は左右非対称とすることで、鉄の格子間位置に侵入したフッ素原子などの保磁力増加及び残留磁束密度増加に必要な元素の濃度を低減することができる。
【0095】
磁石に要求される性能は、使用環境温度、磁界強度、磁界波形、周波数、誘起電圧、トルク、コギングトルク、振動、騒音などによって変わる。図8には種々のフッ化物処理した磁石を示す。これらの磁石を図3の回転子100の磁石201に使用するために下記工程により製造した。フッ化物処理している部分201の特徴は以下の通りである。
【0096】
1)フッ素が少なくとも0.1at%以上含有する相が形成されている。
【0097】
2)鉄の格子間位置に侵入したフッ素原子の一部は、鉄原子の原子間距離を長くする。
【0098】
3)フッ素及び鉄濃度が偏在化あるいは分布している。
【0099】
4)フッ素や鉄あるいは炭素が粒界に多く存在している。
【0100】
5)最外周にはフッ素化合物あるいは酸素や炭素を含有する化合物層が一部Cuなどの偏在層と隣接して成長している。
【0101】
6)粒界のフッ素化合物の一部には鉄を含有している。
【0102】
7)粒界相の幅は磁石の外側で広く、平均1から20nmである。この粒界相の幅は粒界3重点近傍で広い。
【0103】
8)母相の結晶粒内に少なくとも1個フッ素の多い粒が成長している。
【0104】
9)フッ化物未処理部分と比較して保磁力が1.1から2倍大きく、残留磁束密度が5%大きい。
【0105】
10)Hkが1.05から1.1倍大きい。
このような特徴をもったフッ化物処理部分を以下のように作成した。
【0106】
粒径が10nmから500nmのSmFe17.1磁粉を攪拌しながら水素雰囲気で還元し、磁粉表面付近の酸素濃度を低減すると共に水素を磁粉内に10−100ppm残留させる。還元後の酸素濃度は500ppmである。この磁粉の表面にPrF(X=1−5)のアルコール膨潤溶液を塗布する。塗布膜厚は1−100nmである。塗布後、乾燥させてアルコールを除去後、フッ化物と磁粉を反応させる。
【0107】
反応温度は350℃以上であり、合金組成や粒径、酸素濃度などによって最適温度は異なるが、ここでは900℃、1時間とした。残留した水素により、磁粉のフッ化が進行し、熱処理時の急冷により、フッ素原子が鉄原子間の侵入位置に配置する。この磁粉を10kOeの磁界中で1t/cmの荷重で成形し、100×100×200mmの仮成形体を得た。これにAlを1原子%含有するPrF3溶液で含浸し、乾燥後600℃で焼結させた。
【0108】
焼結後、20kOe以上の磁界で着磁し磁気特性を直流磁化曲線の測定から求めた。その結果、残留磁束密度1.9T、保磁力25kOeの磁気特性を確認した。残留磁束密度は鉄の単位胞体積の膨張が大きく、単位胞体積が膨張した鉄の体積率が高いほど、大きくなる傾向を示した。これはフッ素原子が鉄の格子間位置に侵入し、鉄の格子を広げ、鉄原子の磁気モーメントを増加させていることが関連している。
【0109】
キュリー温度は未処理磁粉の120℃から処理磁粉の400℃に上昇することを確認している。REFe17系磁粉以外にもREFe11、REFe12磁粉にもフッ化が可能でありキュリー温度はいずれも330℃以上であった。
【0110】
上記のようなフッ化物処理した成形磁石は以下のような組成で示すことができる。
【0111】
R−Fe−F系(Rは希土類元素)磁石においてG成分(Gは鉄又はコバルト及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または鉄又はコバルト及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素)及びフッ素原子を反応させることによって得られ、組成は次の式(1)または(2)で表される。
(1)
(R・G)a+bFe(2)
(ここでRは希土類元素から選択される1種又は2種以上の元素、Mはフッ素を含有する溶液を塗布する前に磁石内に存在する希土類元素を除く2族からII6族のCとBを除く元素、Gは鉄又はコバルト及び希土類元素からそれぞれ1種以上選択される元素、または鉄又はコバルト及びアルカリ土類金属元素からそれぞれ1種以上選択される元素であるが、RとGが同一元素を含有していても良い。)
RとGが同一元素を含有していない場合は式(1)で表され、RとGが同一元素を含有している場合は式(2)で表される。TはFe及びCoから選ばれる1種又は2種、Aは水素H及び炭素Cから選ばれる1種又は2種以上、(a〜gは合金の原子比でa、bは式(1)の場合0.5≦a≦10、0.005≦b≦1であり、式(2)の場合は0.6≦a+b≦11であり、0.01≦d≦1、1≦e≦3、0.01≦f≦1、0.01≦g≦1、残部がcである。)で示される組成を有する磁石である。その構成元素であるフッ素が磁石を構成する結晶粒の中心から表面に向かって平均的に含有濃度が高くなるように分布し、かつ該磁石中のFeを主成分とするFe−F相が希土類元素を多く含有する主相よりも体積率が少ないことが、X線回折や電子顕微鏡の透過電子線回折、電子線後方散乱パターン、メスバウア効果の測定、中性子線回折などから判明している。
(実施例4)
鉄の格子間位置に侵入したフッ素原子を含んだSmFe17系磁石を積層電磁鋼板、積層アモルファスあるいは圧粉鉄と接着させて回転子を作製する場合、あらかじめ磁石を挿入する位置に挿入する。図4から図7にモータの軸方向に垂直な回転子101の1極の断面の模式図を示す。磁石はフッ化物未処理部分105と処理部分106とからなり、磁石ブロックの一部をフッ化物溶液に浸漬後熱処理して高保磁力とすることができる。
【0112】
図4から図7に示すように、フッ化物処理部分106は一つの極において中心から径方向に極をみた場合、左右対称ではなく、ボンド磁石角部分のフッ化物塗布位置は非対称である。左右対称にフッ化物処理しても、保磁力の分布は左右非対称とすることで、Smやフッ素などの保磁力増加に必要な元素の濃度を低減することができる。リラクタンストルク確保のため極中心に空間部104を設けている。
【0113】
磁石に要求される性能は、使用環境温度、磁界強度、磁界波形、周波数、誘起電圧、トルク、コギングトルク、振動、騒音などによって変わる。図4では、外周側の2個の磁石の端部1ケ所をフッ化物処理した磁石及び2ケ所の端部をフッ化物処理した磁石を配置している。フッ化物処理による残留磁束密度の減少は0.2%以下と小さいため、回転子の外周側で測定できる表面磁束密度の波形はフッ化物処理しない場合とほとんど変化しない。このため誘起電圧波形へのフッ化物処理部分の影響は少なく、逆磁界の大きい部分のみフッ化物処理することで、省資源と高効率モータ特性を両立できる。
【0114】
図5には外周側及び内周側のすべての磁石にフッ化物処理を施し、少なくとも1つの角がフッ化物処理により高保磁力化されている。このようなフッ化物処理部分106は未処理部分105よりも外周側あるいは角部に必要に応じて塗布拡散させれば高保磁力化が可能である。さらに図6では、フッ化物処理部分106の境界線がボンド磁石の辺に平行ではなく角度をもった部分に処理されているボンド磁石が配置されている。このようなフッ化物処理領域を限定することで希土類元素の使用量を低減できる。
【0115】
また図7では4個の磁石のすべてが外周側の角部のみフッ化物処理部分106を有し、他の部分は未処理部分105になっている。このような角部のみフッ化物処理を施し、その境界線が立方体の辺に平行でない磁石は、溶液を使用してマスクなしで作成することが可能である。
【0116】
また図9は、回転子の斜視図であり、シャフト301の外周側に磁石が配置され、フッ化物処理部303と未処理部分302から構成されている。フッ化物処理部303を軸方向から傾斜するように配置することで、フッ化物処理部及び近傍の残留磁束密度を増加させることが可能であり、モータの騒音や振動を低減することが可能である。
(実施例5)
SmFe17系粉末としてSmFe17構造を主相とする磁粉を作成し、これらの磁粉表面にフッ素化合物を形成する。PrFを磁粉表面に形成する場合、原料としてPr(CHCOO)をHOで溶解させ、HFを添加する。HFの添加によりゼラチン状のPrF・XHOあるいはPrF・X(CHCOO)(Xは正数)が形成される。これを遠心分離し、溶媒を除去し、光透過性のある溶液とする。磁粉を金型に挿入し10kOeの磁場中で1t/cmの荷重で仮成形体を作成する。
【0117】
仮成形体には連続した隙間が存在する。この仮成形体の底面のみ前記光透過性のある溶液に浸す。底面は、磁場を印加する方向に平行な面でも垂直な面でもよい。溶液は仮成形体の磁粉隙間に底面及び側面から浸み込み、磁粉表面に光透過性のある溶液が塗布される。次に前記光透過性のある溶液の溶媒を蒸発させ、加熱により水和水を蒸発させ、約700℃で成形する。成形時にフッ素化合物を構成するPr、C、Fが磁粉の表面や粒界に沿って拡散し、磁粉を構成するFeと交換するような相互拡散が生じる。特に粒界付近にはFがFeと交換する拡散が進行し、粒界に沿ってFの偏析した構造が形成される。すなわち、粒界を含む粒界近傍でFの濃度が高く、粒界から離れた場所でFの濃度が低くなる構造が形成される。
【0118】
粒界三重点には酸フッ素化合物やフッ素化合物が形成され、PrF、PrF、PrOFなどから構成されていることが判明した。10×10×10mmの磁石を上記工程により作成し、その断面を波長分散型X線分光により分析した結果、表面を含む100μm深さまでの平均のフッ素濃度と深さ4mm以上の磁石中心付近の平均フッ素濃度との比は100×100μmの面積で10ヶ所場所を変えて測定した結果、1.0±0.5であった。このような磁石はフッ素化合物を使用しない場合と比較して、保磁力が40%増加し保磁力増加による残留磁束密度の増加は40%であった。典型的な磁気特性を図10に示す。残留磁束密度の増加はフッ素原子が鉄の格子間に侵入し、フッ素原子に隣接する鉄原子の磁気モーメントが増加することに起因していると推定でき、この鉄原子と母相のフッ化物との間に磁気的な結合が生じている。
【0119】
PrF、PrFあるいはPr(O、F)などのフッ素化合物をそれらの溶液を準備し、その溶液を仮成形体の一つの面から含浸させ、反対側の面に含浸溶液が達する前に含浸処理を終了させることにより、磁石の一部のみフッ化物溶液で含浸させた部分を形成でき、加熱成形後に含浸部が高保磁力、高磁束密度部となる。このような高保磁力、高残留磁束密度部は磁石の表面から任意の位置で形成でき、モータにおいて逆磁界の大きい部分のみの高保磁力高残留磁束密度とすることが可能である。
(実施例6)
LaFe17系粉末としてLaFe17構造を主相とし、約1%の酸フッ化物や希土類リッチ相を有する平均粒径5μmの磁粉を作成し、これらの磁粉表面にフッ素化合物を形成する。SmFを磁粉表面に形成する場合、原料としてSm(CHCOO)をHOで溶解させ、HFを添加する。HFの添加によりゼラチン状のSmF・XHOあるいはSmF・X(CHCOO)(Xは正数)が形成される。これを遠心分離し、溶媒を除去し、光透過性のある溶液とする。
【0120】
磁粉を金型に挿入し10kOeの磁場中で1t/cmの荷重で仮成形体を作成する。仮成形体の密度は約60%であり、仮成形体の底面から上面に連続した隙間が存在する。仮成形体を水素雰囲気で還元し、表面の酸素を除去する。酸素濃度は還元処理後50ppm以下とする。この仮成形体の底面の一部のみを前記光透過性のある溶液に浸した。溶液は仮成形体の磁粉隙間に浸み込み始め、真空排気することで磁粉隙間の磁粉表面に光透過性のある溶液が含浸した。
【0121】
次に含浸した前記光透過性のある溶液の溶媒を連続隙間に沿って蒸発させ、加熱により水和水を蒸発させ、真空熱処理炉で約700℃の温度に3時間保持して成形した。成形時にフッ素化合物を構成するSm、C、Fが磁粉の表面や粒界に沿って拡散し、磁粉を構成するFやLaとSm、C、Fが交換するような相互拡散が生じた。特に粒界付近にはSmがLaと交換する拡散が進行し、粒界近傍に沿ってSmの偏析した構造が形成された。粒界三重点や粒界には酸フッ素化合物やフッ素化合物の粒が形成され、SmF、SmF、SmOF、SmF、SmFなどから構成され、一部の粒では粒内から粒界にかけてSmやフッ素の濃度が高濃度になっていることをTEM−EDX(電子顕微鏡、エネルギー分散X線)で直径1nmの電子線を使用して確認した。
【0122】
前記溶液を含浸した粒界の中心部にはフッ素原子が検出され、粒界中心部から平均1nmから500nmの範囲にSmが濃縮している。このSm濃縮部の近傍に、結晶粒中心から粒界方向にSm濃度が減少する領域がみられ、粒内にあらかじめ添加されたLa原子が粒界付近に拡散した結果として粒中心から粒界にかけてのSm濃度が一旦減少してさらに粒界近傍で増加する濃度勾配が存在している。すなわち、Laが粒界近傍に拡散する結果として、Smの相対的な濃度が勾配を持つことになる。粒界の中心から100nmの距離でSmの濃度はLaとの比率(Sm/La)で1/2から1/10である。このような磁石はフッ素を鉄原子の格子間位置に侵入しない場合と比較して、保磁力が40%増加し、残留磁束密度の増加は5%、Hkの増加が10%であった。このフッ素化合物を磁石の一部に含浸させた磁石をモータの回転子外周側に配置させる。
【0123】
含浸処理した部分、すなわち高保磁力を有する磁石は、回転子軸方向に垂直方向の断面において、磁石の外周側端部のみ、あるいは極中心から左右周方向に対して非対称でよい。このような含浸位置を磁石の特定部のみ施すことにより、プロセス全体に使用する重希土類元素の量を低減することができる。前記磁石の特定部とは、立方体磁石の場合、4つの角部付近のみ、4つの角部と辺近傍、あるいは2つの角部と辺近傍、4つの角を含み6面の一部など、モータ設計による磁界集中部の領域によって変えることが可能となる。またモータの軸方向に対して垂直な磁石断面は、一定ではなく軸方向に平行な端部において塗布面積を大きくすることにより、磁石の信頼性が向上することでモータの信頼性も向上する。
【0124】
含浸した領域と含浸していない領域の境界付近では、粒界近傍の組成が変化する。含浸した領域では、粒界中心や粒界3重点でのフッ素濃度が、エネルギー分散型X線分析装置を使用して含浸していない領域に比較すると、2倍以上となって分析できる。また含浸した領域での平均の粒界幅は、含浸していない領域の粒界幅よりも1.1から20倍広く、粒界の中心部よりも粒界に沿った粒内側においてSmの濃度が高い。また、含浸した領域では、Sm濃度は粒界3重点の位置よりも粒内側のフッ化物母相の結晶粒の外周で濃度が高い。
(実施例7)
PrF系処理液は、酢酸プラセオジムを水に溶解後、希釈したフッ化水素酸を徐々に添加させた。ゲル状沈殿のフッ素化合物に酸フッ素化合物や酸フッ素炭化物が混合した溶液に対して超音波攪拌器を用いて攪拌し、遠心分離後、メタノールを添加し、ゲル状のメタノール溶液を攪拌後、陰イオンを除去し透明化した。処理液は可視光において透過率が5%以上になるまで陰イオンを除去している。この溶液を仮成形体に含浸させる。仮成形体はSmFe17磁粉を10kOeの磁場で5t/cmの荷重を加えて作製した厚さ20mmのものであり、理論密度比が平均60%である。仮成形体はこのように密度100%とはならないため仮成形体中に連続した隙間が存在する。
【0125】
仮成形体を水素雰囲気で還元し、表面の酸素を除去する。酸素濃度は還元処理後50ppm以下とする。この隙間に前記溶液を約0.1wt%含浸させる。仮成形体の磁場印加方向と垂直な面を底面にして溶液と接触させると、溶液が磁粉隙間に浸み込む。この時真空排気することで、溶液が隙間に沿って含浸され底面と反対側の面まで溶液が塗布される。この含浸仮成形体を200℃で真空熱処理することにより塗布液の溶媒を蒸発させる。含浸した仮成形体を真空熱処理炉に入れて成形温度600℃まで真空加熱し加圧後、理論密度比99%の異方性磁石を得た。含浸処理なしの磁石と比較して、PrF系処理液の含浸処理をした磁石は、磁石中央でも粒界付近にPrが偏析し粒界にFやPrが多い特徴をもち、粒界付近の侵入位置に配置したフッ素が保磁力及び残留磁束密度を増大させ、保磁力25kOeかつ残留磁束密度1.9Tの特性を20℃で示す。
【0126】
PrやFの濃度は含浸の経路になって塗布された部分で高いため、濃度に差が認められ、含浸溶液に浸した面とその対面の方向では連続したフッ化物が形成されるのに対し、その垂直方向では不連続の部分もみられるため、平均的に含浸溶液の面と反対の面では高濃度で垂直方向では平均的に濃度が低い。これはSEM−EDXやTEM−EDXまたはEELS、EPMAで識別できる。また磁石表面を研磨した場合でも含浸処理により貫通隙間に沿ってフッ素を含有する相が形成されるため、表面から別の表面にかけて連続したフッ素含有相が形成されており、磁石中心部と磁石表面でのフッ素濃度に大きな差は生じない。
【0127】
100μm角の面でフッ素の平均濃度を分析した結果、磁石表面と中心部での比率は1±0.5であった。フッ素原子はThZn17構造あるいはThNi17構造の侵入位置に配置するが、一部のフッ素原子は置換位置に配置する。水素還元処理を施しているため、水素が磁石あるいは磁粉に約10ppm残留する。フッ素以外のSm、Pr、Cの平均濃度の比も1±0.5であった。PrFC系溶液の含浸処理と焼結により磁気特性の角型性向上、成形後の抵抗増加、保磁力の温度依存性低減、残留磁束密度の温度依存性低減、耐食性向上、機械的強度増加、熱伝導性向上、磁石の接着性向上のいずれかの効果が得られる。
(実施例8)
Mn51Al49合金(原子比)を真空溶解し、粉砕することにより粒径10μmの粉末を作製した。この粉砕粉に1wt%のMnF(xは1〜3)含有アルコール液を塗布し、アルコールを乾燥により除去することで粉の表面に非晶質のMnを含有するフッ化物が成長する。これを500℃、1時間熱処理することにより、フッ素を含有するMnAl規則相が成長する。この規則相はMnAl(lは50〜53、mは46〜49、nは1〜3)の組成であり、一部のフッ素はAlとフッ化物あるいは酸フッ化物を形成する。
【0128】
この規則合金の室温における磁気特性は、残留磁束密度が0.5T、保磁力7kOeである。Mnが54%以上の構造では保磁力が急激に減少する。残留磁束密度を増加させるために上記Mn51Al49合金に鉄(Fe)を9mol%添加したMn46Al45Fe合金を作製し、これを粉砕して粒径10μmの粉砕粉を得た。この粉の表面にMnF(xは1‐3)含有アルコール液を塗布して上記と同様の熱処理後急冷することによりFeの格子の一部にフッ素が侵入する。フッ素原子が侵入したFeは磁気モーメントが増加するため、Feを含有した規則相の磁気モーメントが増加する。
【0129】
作製したMn45Al44FeFには粒界近傍でのフッ素濃度が粒内の2‐10倍のAl含有フッ化物が成長し、粒界3重点の一部のフッ化物は酸素を含有した酸フッ化物として成長する。これらの規則相のキュリー温度は450℃であり、Feを9%添加したMn45Al44Feの残留磁束密度は0.6T、保磁力7kOeとなった。
【0130】
このような磁石材料は希土類元素やCoなどのレアメタルを含有しないため、磁石材料の低コスト化が可能である。MnAl合金系において、AlをCuに置換しても上記のような鉄へのフッ素侵入による磁束密度の増加が確認できる。このようなフッ素を含有するMnAl系磁石は、ボンド磁石あるいは熱間成形磁石としてモータの回転子の磁石位置に挿入し着磁して使用できる。
(実施例9)
Mn50Al50合金を真空溶解し、粉砕することにより粒径5μmの粉末を作製した。この粉砕粉に1wt%のMgF(xは1‐3)含有アルコール液を塗布し、アルコールを乾燥により除去することで粉の表面に非晶質が主のMgを含有する酸フッ化物が成長する。これを300℃、1時間熱処理後、超音波処理により粉末表面の酸フッ化物を除去する。この粉末を大気中に曝すことなくMnF(x=1-3)含有アルコール溶液を塗布後熱処理することで、フッ素を含有するMnAl規則相が成長する。この規則相はMn51Al49の組成であり、一部のフッ素はAlとフッ化物あるいは酸フッ化物を形成し、一部のフッ素はMnやAl原子間に配列する。
【0131】
この規則合金の室温における磁気特性は、残留磁束密度が0.7T、保磁力11kOeである。残留磁束密度を増加させるために上記Mn51Al49合金に鉄(Fe)を10%添加したMn46Al44Fe10合金を作製し、これを粉砕して粒径5μmの粉砕粉を得た。この粉の表面にMgF(xは1‐3)を塗布して酸化物を超音波処理により除去後、MnF(xは1-3)含有アルコール液を塗布して500℃、2時間の熱処理後、速度10℃/s以上の冷却速度で急冷することによりFeの格子の一部にフッ素が侵入する。フッ素原子が侵入したFeは磁気モーメントが増加するため、Feを含有した規則相の磁気モーメントが増加する。
【0132】
作製したMn45Al43Feは、粒界近傍でのフッ素濃度が粒内の10倍以上のフッ化物が成長し、粒界3重点の一部のフッ化物は酸素を含有した酸フッ化物として成長する。これらの規則相のキュリー温度は490℃であり、Feを約10%添加したMn45Al43Feの残留磁束密度は0.9T、保磁力11kOeとなった。残留磁束密度の増加は、FeやMn原子間に侵入する電気陰性度の大きなフッ素原子による状態密度の変化によると考えられる。侵入したフッ素原子により、Mn原子間隔が1から15%伸び、一部のMn原子のスピンの強磁性結合が強くなり磁化の増加に寄与する。
【0133】
このような磁石材料は希土類元素やCoなどのレアメタルを含有しないため、磁石材料の低コスト化が可能である。上記のようなMnAl合金系において、AlをCuなどの面心立方構造を有する遷移金属元素で置換し、フッ素の一部がC、N、B、Oであっても上記のような鉄へのフッ素侵入による磁束密度の増加が確認できる。このようなフッ素によるMnやFe格子間侵入による磁気モーメントの増加は、MnAl系に限らず他の合金系(MnFe系、MnSi系、MnBi系)で確認でき、規則化助長元素として他の添加元素を含有しても良い。またフッ素原子がMnAl合金系の格子間に侵入することでAl含有量を低減することで磁化が増加でき、フッ素5%、Al濃度1から10%においてMnを強磁性にすることにより1.2Tの残留磁束密度、保磁力15kOeが得られる。
【0134】
このようなフッ素原子の侵入による磁気モーメントの増加は、フッ化物溶液処理だけでなく、フッ素含有ガスによる熱処理やフッ素含有ターゲットを用いた薄膜形成、フッ化物ナノ粒子を使用したメカニカルアロイニング及びフッ素のイオン注入によっても実現できる。
(実施例10)
Mn75Al25合金を真空溶解し、粉砕することにより粒径5μmの粉末を作製した。この粉砕粉に1wt%のMgF(xは1‐3)含有アルコール液を塗布し、アルコールを乾燥により除去することで粉の表面に非晶質のMgおよび炭素を含有する酸フッ化物が成長する。これを300℃、1時間熱処理後、超音波処理により粉末表面の酸フッ化物を除去する。この粉末を大気中に曝すことなくMnF(x=1‐3)含有アルコール溶液を塗布後熱処理することで、フッ素を含有する面心立方格子のMnAl系規則相が成長する。この規則相はMn74Al24の組成であり、一部のフッ素はAlとフッ化物あるいは酸フッ化物を形成し、一部のフッ素はMnやAl原子間に配列する。この規則合金の室温における磁気特性は、残留磁束密度が0.9T、保磁力13kOeである。残留磁束密度をさらに増加させるために上記Mn74Al24合金に鉄(Fe)を添加したMn73Al23Fe合金を作製し、これを粉砕して粒径5μmの粉砕粉を得た。この粉の表面にMgF(xは1‐3)を塗布して酸化物を超音波処理により除去後、MnF(xは1‐3)含有アルコール液を塗布して500℃、2時間の熱処理後、速度20℃/s以上の冷却速度で急冷(300℃〜500℃の領域において実施)することにより、Feの格子の一部にフッ素が侵入する。図11Aは鉄の結晶格子、図11Bはフッ素原子がFe結晶格子の原子間位置に侵入したときの模式図である。図中、401は鉄原子、402は鉄の結晶格子の原子間位置に侵入したフッ素原子である。侵入したフッ素原子402により、鉄原子401の結晶格子は、図11Aから図11Bのように、局所的に鉄原子401の原子間隔が伸びる。このことにより、結晶格子に歪みが発生し、結晶構造は体心立方構造から体心正方構造に転移する。フッ素原子の一部はMnやAlの原子位置と置換する。フッ素原子が侵入したFeは磁気モーメントが増加するため、Feを含有した規則相の磁気モーメントが増加する。
【0135】
作製したMn73Al23Feでは、粒界近傍でのフッ素濃度が粒内の10倍以上のフッ素濃度のフッ化物あるいは酸フッ化物が成長し、粒界3重点の一部のフッ化物はAl及び酸素を含有した酸フッ化物として成長する。
【0136】
これらの規則相のキュリー温度は480℃であり、Feを添加したMn73Al23Feの残留磁束密度は1.2T、保磁力は15kOeとなった。残留磁束密度の増加は、FeやMn原子間に侵入する電気陰性度の大きなフッ素原子による状態密度の変化及び置換位置に入る高電気陰性度のフッ素原子による原子周囲の歪及び電子分布の対称性の異方化によると考えられる。侵入したフッ素原子により、Mn原子間隔が1〜15%伸びることにより、一部のMn原子のスピンの強磁性結合が強くなり磁化の増加に寄与する。
【0137】
このような磁石材料は希土類元素やCoなどのレアメタルを含有せず、地球埋蔵量が希土類元素の値を超えるため、磁石材料の低コスト化及び資源保護向上の両立が可能である。
【0138】
上記のようなMnAl合金系において、AlをCu、Mg、Siなどの遷移金属元素あるいは半金属元素で置換し、フッ素の一部がC、N、B、Oであっても上記のような鉄へのフッ素侵入による磁束密度の増加が確認できる。このようなフッ素によるMnやFe格子間侵入による磁気モーメントの増加は、MnAl系に限らず他の合金系(MnFe系、MnSi系、MnBi系、MnCr系、MnMg系、MnCu系、MnV系)で確認でき、規則化助長元素として他の添加元素を含有しても良い。またフッ素原子がMnAl合金系の格子間に侵入することでAl含有量を低減することで磁化が増加でき、フッ素3%、Al濃度2〜20%において一部のMn原子を強磁性にすることにより1.4Tの残留磁束密度、保磁力17kOeが得られる。このようなフッ素原子の侵入による磁気モーメントの増加は、フッ化物溶液処理だけでなく、フッ素含有ガスによる熱処理やフッ素含有ターゲットを用いたスパッタリングによる薄膜形成、フッ化物ナノ粒子を使用したメカニカルアロイニング及びフッ素のイオン注入によっても実現でき、全てのホイスラー(Heusler)合金にフッ素を0.1〜20at%添加して一部のフッ素原子が侵入位置あるいは置換位置に配列し格子歪み(0.1%〜10%)を導入することで磁気モーメントが増加し、磁石性能を向上することができる。
【符号の説明】
【0139】
100…回転子、2…固定子、4…ティース、5…コアバック、7…コイル挿入位置、8a…3相巻線のU相巻線、8b…3相巻線のV相巻線、8c…3相巻線のW相巻線、9…ティースの先端部、10…回転子挿入部、200…磁石の未処理部分、201…磁石のフッ化物処理部分、202…磁石のフッ化物処理部分、101…回転子、102…磁石挿入空間、103…磁石、104…空間、105…磁石の未処理部分、106…磁石のフッ化物処理部分、401…鉄原子、402…鉄の結晶格子の原子間位置に侵入したフッ素原子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類元素、鉄又はコバルト及びフッ素原子の化合物と、鉄又はコバルトとフッ素の化合物とを主成分とするブロック体の磁石であって、該ブロック体の任意の方向に鉄又はコバルトとフッ素との化合物濃度が他の部分よりも高い部分を有することを特徴とする希土類磁石。
【請求項2】
請求項1記載の磁石において、該磁石を構成する、鉄又はコバルト、希土類元素及びフッ素原子からなる化合物と、鉄又はコバルトとフッ素からなる化合物の結晶粒の内部あるいは粒界に偏在化していることを特徴とする希土類磁石。
【請求項3】
請求項1又は2記載の希土類磁石において、前記希土類磁石の鉄又はコバルトとフッ素原子の化合物の単位胞体積が、磁石の中心部よりも外周側が平均的に大きいことを特徴とする希土類磁石。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の希土類磁石において、前記磁石の外周側が中心部よりも平均的に残留磁束密度および保磁力が高いことを特徴とする希土類磁石。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の磁石を使用することを特徴とする磁石モータ。
【請求項6】
希土類元素と、鉄又はコバルトと、フッ素から構成された希土類―鉄又はコバルト―フッ素化合物と、鉄又はコバルトのフッ素化合物とを含有する希土類磁石であって、前記希土類―鉄又はコバルト―フッ素化合物は前記磁石の主成分であって、フッ素の一部が体心立方構造の鉄又はコバルトの原子間の侵入位置に配置したものであり、前記鉄又はコバルトのフッ素化合物は、前記希土類―鉄又はコバルト―フッ素化合物相に分散し、かつ前記磁石の任意の方向に前記鉄又はコバルトのフッ素化合物濃度に分布があることを特徴とする希土類磁石。
【請求項7】
前記希土類磁石の外周側が中心部よりも平均的に残留磁束密度、保磁力及びキュリー温度が高いことを特徴とする請求項6記載の希土類磁石。
【請求項8】
前記希土類磁石を構成する前記希土類―鉄又はコバルト―フッ素化合物の結晶粒の中心部と外周側とで前記鉄又はコバルト−フッ素化合物の濃度が異なり、かつ前記結晶粒の外周側が中心部よりも平均的に残留磁束密度、保磁力及びキュリー温度が高いことを特徴とする請求項6記載の希土類磁石。
【請求項9】
前記希土類磁石の外周側が中心部よりも平均的にエネルギー積、保磁力及びキュリー温度が高いことを特徴とする請求項6記載の希土類磁石。
【請求項10】
前記磁石のフッ素原子を含有する鉄の単位胞体積が磁石の中心部および外周側とで異なり、外周側が中心部よりも平均的に単位胞体積が大きくかつエネルギー積及びキュリー温度が高いことを特徴とする請求項6記載の希土類磁石。
【請求項11】
前記磁石の外周側が中心部よりも平均的に残留磁束密度及び保磁力が高いことを特徴とする請求項6記載の希土類磁石。
【請求項12】
前記希土類元素―鉄又はコバルト−フッ素化合物を主成分とする多面体形状の磁石を構成する結晶粒内部あるいは粒界部の一部に、アルカリ金属、アルカリ土類元素及び希土類元素の少なくとも1種及を含むフッ素化合物が形成され、フッ素原子の一部が侵入位置を占有していることを特徴とする請求項6記載の希土類磁石。
【請求項13】
請求項1および6のいずれかに記載の希土類磁石において、希土類元素、鉄元素、フッ素元素のうち少なくとも一つが、その一部または全部を遷移金属元素で置換されていることを特徴とする請求項6記載の希土類磁石。
【請求項14】
請求項1および6記載の磁石において、フッ素原子の一部が炭素であることを特徴とする希土類磁石。
【請求項15】
希土類元素、鉄又はコバルトとフッ素を含有する化合物及び鉄又はコバルトとフッ素原子の化合物とを主成分とするブロック体の磁石であって、前記希土類元素、鉄又はコバルトとフッ素を含有する化合物濃度の高い磁片と、鉄又はコバルトとフッ素原子の高い磁片とをそれらの磁路が結合する関係に配置された複合磁石。
【請求項16】
請求項15記載の希土類磁石において、該希土類磁石を構成する、鉄又はコバルト、希土類元素及びフッ素原子からなる化合物と、鉄又はコバルトとフッ素からなる化合物が、前記ブロック体の磁石の結晶粒の内部あるいは粒界に偏在化していることを特徴とする複合磁石。
【請求項17】
請求項1又は2記載の希土類磁石において、前記磁石のフッ素を含有する鉄又はコバルトの単位胞体積が、磁石の中心部よりも外周側が平均的に大きいことを特徴とする希土類磁石。
【請求項18】
請求項15に記載の磁石において、前記磁石の外周側が中心部よりも平均的に残留磁束密度および保磁力が高いことを特徴とする複合磁石。
【請求項19】
請求項1又は15に記載の磁石を使用することを特徴とする磁石モータ。
【請求項20】
回転子に配置された前記磁石の外周側の残留磁束密度が内周側よりも高い請求項6記載の希土類磁石を備えることを特徴とする輸送機器用磁石モータ。
【請求項21】
請求項6〜9のいずれかに記載の希土類磁石を備えた回転子を有し、該回転子の外周側の残留磁束密度、保持力及びキュリー温度が内周側より平均的に高いことを特徴とする輸送機器用磁石モータ。
【請求項22】
請求項10記載の希土類磁石を備えた回転子を有し、該回転子の外周側の残留磁束密度及び保持力が平均的に高いことを特徴とする輸送機器用磁石モータ。
【請求項23】
請求項11記載の希土類磁石を備えた回転子を有し、該回転子の外周側の残留磁束密度が平均的に高いことを特徴とする輸送機器用磁石モータ。
【請求項24】
希土類元素と、ニッケル、コバルト及び鉄から選ばれた遷移金属及びフッ素から構成された希土類―遷移金属―フッ素化合物を主成分とし、遷移金属とフッ素の化合物が前記希土類―遷移金属―フッ素化合物相に分散し、遷移金属とフッ素の化合物におけるフッ素原子の一部が体心立方構造の遷移金属原子間の侵入し、前記侵入位置に配置したフッ素原子の濃度分布が、回転子の軸方向、径方向あるいは周方向のいずれかで異なることを特徴とする輸送機器用磁石モータ。
【請求項25】
前記希土類磁石の磁気特性がその中心部および外周側で異なり、外周側が中心部よりも平均的に残留磁束密度、保磁力及びキュリー温度が高い磁石を使用していることを特徴とする請求項24記載の輸送機器用磁石モータ。
【請求項26】
前記希土類磁石の磁気特性が磁石を構成する結晶粒の中心部および外周側とで異なり、鉄の原子間位置に配置したフッ素原子の濃度に分布が存在し、外周側が中心部よりも平均的に残留磁束密度、保磁力及びキュリー温度が高い複数の結晶粒からなる磁石を使用していることを特徴とする請求項24記載の輸送機器用磁石モータ。
【請求項27】
前記磁石の磁気特性が磁石の中心部および外周側とで異なり、鉄の原子間位置に配置したフッ素原子の濃度に分布が存在し、外周側が中心部よりも平均的にエネルギー積、保磁力及びキュリー温度が高い磁石を使用していることを特徴とする請求項24記載の輸送機器用磁石モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図8G】
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【図8H】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【公開番号】特開2011−29293(P2011−29293A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−171733(P2009−171733)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】